(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
  腹腔鏡手術のように小さな切開創から行われる手術では、該切開創の制限から手術で切除した臓器等を直接体外に取り出すことが困難なため、また、取り出すさいに体内に切除片を溢液、飛散することがないように、体外から外筒管などを通して体腔に挿入した袋(バッグ)内に切除片を収納し、バッグごと体外に取り出す回収バッグが用いられる。
【0003】
  このような従来の回収バッグとしては、バッグ開口部の通し穴(トラップ部)と外筒管(長手のスリーブ)内腔を通して、該スリーブの外部まで引き出された自由端部を有する一連の細糸と、前記トラップ部の全周囲にわたって取り付けられるバッグと、前記スリーブの近位端より引き出された細糸の自由端を手前に引くことのできる手段を有し、該細糸の自由端を引くことによりトラップ部の径を連続的に狭めて、バッグの開口部を連続的に閉止できるようにした器具であって、前記細糸のトラップ部は滑り止め用の結び目によって固定されており、この結び目により細糸の自由端部が手前側に移動することは許すが、トラップ部が閉止されたのち緩むことを防止する器具が提案されている。(特許文献1)
【0004】
  また、前記のようなバック(袋)をスリーブ(シースパイプ)内に折りたたんだ状態で収容し、外筒管を通してシースパイプを体内に挿入したのち、手元操作によりシースパイプから袋を押し出して用いる器具であって、細糸の代わりに扁平形状で少なくとも先端部近傍の一方側の面に凹凸形状が設けられたバンドを備え、該バンドの一方端部は通し穴の端部に取り付けた留め具に固定され、他端部側は留め具の開口部、シースパイプの内腔を経て後端部に導出されていて、該バンドの後端部を引っ張ることにより袋の口元が絞られて閉まり、留め具とバンドの凹凸が係合して再び緩むことがないようにした器具(特許文献2)、あるいは、前記のようなバッグ(袋体)の通し穴に通す細糸などに代わるバッグの開閉部材として超弾性ワイヤーを用い、該弾性ワイヤーを外筒管より袋体が突出するのと同時に、袋体を開口状態に維持するように形状記憶して形成する器具(特許文献3)などが提案されている。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  しかし、従来の器具では、体内で切除片を収納し、バッグの開口部を閉塞した後に、該バッグの開口を再展開することは考慮されていないため、例えば、回収したい組織等が複数あり時間をおいてバッグに収容したい場合など、体内でバッグを複数回開閉するといった操作に適用することができないものが多く、また、適用可能であっても操作が面倒なものとなっている。
  むしろ、特許文献1、2によると、トラップ部の滑り止め用の結び目でバッグの閉塞を固定したり、バンドを凹凸形状とし留め具と係止したりすることにより、一度閉じた開口部が緩むことがない構成となっている。一方、特許文献3は再展開を示唆している器具であるが、一度閉止した開口部は、外筒から超弾性ワイヤーを再度突出させて、該ワイヤーを開いた状態としても、柔軟な袋体は追従して再展開するものではなく、参考に示した
図8の従来の動作に示すように、袋体100は、ワイヤー200遠位端に閉塞された状態で留まり(
図8D)、これを再展開するには、別ルートから体内に挿入する鉗子を用いることが前提とされることから、他の器具が必要となり、操作が面倒なものとなる。また、スムーズな展開には押え用の鉗子も必要なことから鉗子2本が必要なことも考えられる。
【0007】
  また、外科手術の低侵襲への流れは、腹腔鏡手術から、現在急速に普及している単孔式手術へ、更に一部の手術では、体表に一つの創も設けることなく、口や肛門などの自然開口部から軟性内視鏡を通して外科的手術を行おうとする経管腔的内視鏡手術(NOTES)へと発展している。
  このNOTESで使用される鉗子など手術器具は、軟性内視鏡の細径で限られた数の鉗子チャンネルを通して挿入していく必要があるなど制約が多く、これまでの腹腔鏡手術に用いられたような従来の医療用回収バッグ等の器具をそのまま適用することができない。
【0008】
  そこで本発明は、体内で開口部を一旦閉塞したバッグを、他の器具を使用することなく、手元操作により容易に再展開することができる医療用回収バッグを提供することを課題とした。
【0009】
  また、軟性内視鏡のチャンネルを通して操作可能なNOTESに適用することができる手術用回収バッグを提供することを課題とした。
 
【課題を解決するための手段】
【0010】
  本発明の医療用回収バッグは、開口部周囲に切込み部を設けた通し穴を備え、該開口部が展開及び閉塞するバッグと、該バッグの切込み部から通し穴に挿通され、自然状態で開口部を展開する態様に記憶付された弾性バンドと、前記バッグ及び弾性バンドを折りたたんだ状態で遠位端に収納する外筒管と、前記弾性バンドの近位端に接続し、前記外筒管の内腔を通して外部まで延設して、該外筒管内を摺動することで、前記バッグ及び弾性バンドを外筒管から押し出してバッグを展開し、また、前記弾性バンドを外筒管内へ引きもどし再収納してバッグを閉塞する接続ケーブルと、前記外筒管及び接続ケーブルの近位端に備える操作部と、前記バッグを外筒管から押し出したのち、該バックの開口部を外部から自在に展開、閉塞することが可能な再展開手段とを備えて構成し、
前記再展開手段は、一方端部をバッグの近位端に接続し、他端部を前記接続ケーブルの内腔、または、外筒管の内腔を通して外部まで延設してなる紐部材より形成した。
【0011】
  そして、前記紐部材の接続部を次の構成としても良い。
・バッグ近位端への接続部は、前記通し穴の切込み部を挟んだ両側に2箇所設ける。
・紐部材近位端部は操作部となる基部に接続される。
【0012】
  また、別の再展開手段として、一方端部をバッグ近位端に接続し、他端部を前記接続ケーブル遠位端に接続してなり、その一部あるいは全部をバネ状伸縮部材として形成する。
  そして、このバネ状伸縮部材は、近位端は接続ケーブルの遠位端に接続することが好ましく、遠位端はバッグの近位端に接続線を介してつなげて形成することが好ましい。
【0013】
  更に、前記外筒管及び接続ケーブルは可撓性を備えることが好ましく、また、該外筒管は、外径1.4mm以上、5.5mm以下とすることが好ましい。
 
【発明の効果】
【0014】
  前記手段によると、バッグを外筒管から押し出したのち、該バッグの開口部を外部より自在に展開、閉塞することが可能な再展開手段を備えることにより、体内で開口部を一旦閉塞したバックを他の鉗子等の器具を使用することなく再展開することができる。そして、この再展開手段を、バッグ近位端から外部まで延設された紐部材とすることで、外筒管や接続ケーブル、あるいは、紐部材の近位端に設けた操作部の相対的な動作によりバッグ開口部の開閉が可能となり、外部からバッグを容易に再展開することができる。また、再展開手段をバッグと接続ケーブルの間に接続されるバネ状伸縮部材とすることで、接続ケーブルの動作に連動してバネ状伸縮部材が伸縮し、外筒管から押し出された後のバッグ近位端の位置を保持し、該近位端を弾性バンドのスライドに追従させないことにより、接続ケーブル近位端に設ける操作部からの操作のみで該バッグを容易に再展開することができる。
【0015】
  また、前記のように他の器具を使用することなく再展開できる手段に加え、外筒管及び接続ケーブルを可撓性とし、外筒管の外径を前記範囲とすることで、軟性内視鏡のチャンネルからも扱うことができ、腹腔鏡手術に加え、NOTESにも適用可能な医療用収納バッグとすることができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0017】
  以下、本発明の実施の形態につき図面を参考にしながら詳細に説明する。
  
図1は本発明の第一の実施の形態を示す構成図を示し、
図2は本形態のバッグ部分の拡大図で、Aがバッグ部分全体を、Bがバッグ近位端部分を示している。本形態の医療用回収バッグは、NOTESに適用して軟性内視鏡のチャンネルから挿入して操作ができる、手術により切除した組織片をバッグ内に収容し、バッグを閉塞した状態で体外に回収することを目的とした回収バッグである。
  本回収バッグは、開口部となる縁部周囲に通し穴11を備え、該通し穴11の一か所に切込み部12を設けた、開口部が展開及び閉塞して前記組織片を収納するためのバッグ10と、該バック10の切込み部12から通し穴11を通して挿通され、バッグ10の展開を維持するように自然状態(内筒管から突出した状態)で開口部が展開される形状に記憶付けられた弾性ワイヤー20と、前記バッグ10と弾性ワイヤー20を折りたたんだ状態で遠位端部に収容可能な内径と、軟性内視鏡の鉗子チャンネルより挿入可能な外径を備え、該鉗子チャンネルより長尺に形成される可撓性樹脂からなる外筒管30と、前記弾性ワイヤー20の両端部に遠位端で接続し、外筒管30の内腔を通して外筒管30の外部まで延設される、内腔を備えた可撓性管よりなる接続ケーブル40と、遠位端端部をバッグ10の近位端部に接続し、他方端部を接続ケーブル40の内腔を通して接続ケーブル40の外部まで延設する開口部を再展開するための紐部材となる糸50と、前記外筒管30の基部に接続する外筒管基31、接続ケーブル40の基部に接続するケーブル基41、糸50の基部となる糸終端部51からなる操作部により基本構成される。
 
【0018】
  次に各部について詳細に説明する。
  臓器等の切除片を収納回収するバッグ10は、薄く柔軟で容易に破損しない強度、及び体腔内での形状回復性を考慮してポリオレフィン系、ポリアミド系樹脂等のフイルム状シートを、特定しない形状の有底袋に形成したもので、該バッグ10の開口部となる縁部周囲を折り返えし、後記する弾性ワイヤー20を内挿する環状通路となる通し穴11を設けて熱溶着し、該通し穴11の一部で、バッグの近位端となる位置に前記弾性ワイヤー20の挿入口(取り出し口)となる切込み部12を設けて構成した。バッグ10の大きさや形状は用途に応じて適当に設定すれば良いが、本例においては、本発明の主要な用途となるNOTESに適用させるため、後記する外筒管内30に収容可能で、無理なく使用できる大きさとして長手方向の長さ、15mm以上、60mm以下、短手方向の長さ15mm以上、40mm以下、深さ20mm以下の円あるいは楕円状半球体として、フイルム厚0.03mmのポリアミド系樹脂により形成した。
 
【0019】
  前記バッグ10開口部の展開維持及び閉塞のための開閉手段となる弾性ワイヤー20は、前記バッグ10縁部周囲の通し穴11となる環状通路内部に内挿され、両端部は前記切込み部12より引き出され、後記する接続ケーブル40の端部に接続して形成する。また、弾性ワイヤー20は外筒管30より押し出されたさいにバッグ10が開口した環状形状(本例においては円あるいは楕円形状)となるように記憶付されるが、遠位端となる先端部分は、内筒管30へ収納のさいの折りたたみと、展開時の環状を両立させるための形状として先端が折りまがった突状部23を形成して構成される。一方、環状形状に続く近位端となる両端は、直線的に延出される直線部22として、後記する接続ケーブル30に接続する。
 
【0020】
  外筒管30は、本形態の目的であるNOTESに適用して、軟性内視鏡の細径で長尺なチャンネルにスムーズに挿入できるものとして、表面の摩擦抵抗の小さなフッ素樹脂など可撓性樹脂チューブにより形成し、本形態においては、そのサイズは、一般的な軟性内視鏡に適合し、また、手術部位までの長さや操作性を併せて考慮し、長さを1100mm以上、1800mm以下とし、一般的な軟性内視鏡のチャンネルの内径範囲(2.0mm〜5.5mmタイプ)に適合するものとして、外径を1.4mm以上、5.5mm以下(本例では1.8mm(2.0mmタイプ)と2.5mm(2.8mmタイプ))として構成する。
  ここで、外筒管30の外径を1.4mm未満に設定すると、当然内径も小さくなるため、切除片90の回収バッグとして有効な大きさのバッグ10を収納するのが困難となってしまう。一方、外径を5.5mmより大きく設定すると軟性内視鏡のチャンネルへの挿入ができないため、NOTESに適用することができない。
 
【0021】
  また、外筒管30遠位端の内腔には、前記バッグ10及び弾性ワイヤー20が折りたたんだ状態で挿入され、後記する接続ケーブル40も内挿されることから潰れなどの強度に問題のない範囲でなるべく大きな内径が確保できることが望ましく、この意味でも肉薄で強度の高いフッ素樹脂などの適用が推奨される。一方、近位端は後記する外筒管基31に接続して構成される。
 
【0022】
  接続ケーブル40は、ステンレスなどの金属細線をコイル状に密に巻いた可撓性の巻線により、後記する糸50を挿通する内腔を備えて形成され、前記外筒管30内腔をスムーズに摺動可能な外径のものが選択される。そして、遠位端は前記弾性ワイヤー20の両端の直線部22と接続するが、本形態においては、作業性や製造容易性を考慮して中空パイプよりなるワイヤー収納管24を設け、該ワイヤー収納管24の一方側の内腔に弾性ワイヤー20の端部を収納し、加締め、あるいは、接着により接続し、他方側の内腔に接続ケーブル40の遠位端を接着により接続している。一方、近位端は後記する接続ケーブル基41に接続して構成される。
 
【0023】
  バッグ開口部の再展開手段の紐部材となる糸50は、伸展性のない高強度のポリアミド樹脂や金属線など(本例ではポリアミド樹脂の糸)により、遠位端部をバッグ10の近位端部に結紮などにより固定し、前記接続ケーブル40の内腔を通して近位端を外部まで引き出して糸終端部51として本器具の最後端に位置させる。また、糸終端部51には留め部や基部を設けるなどして、バッグ10を内筒管30から押し出したのち、それ以上の前方へのスライドを制御する手段を備えている。更に、該糸50は接続ケーブル40の内腔で自由状態であり、該接続ケーブル40の動作に連動しないように形成される。
 
【0024】
  本回収バッグの操作部は、外筒管30の近位端に接続する外筒管基31と、接続ケーブル40の近位端に接続するケーブル基41と、糸50の終端部に設ける留め具51とにより構成し、外筒管基31は、外筒管30と接着、あるいは、接続子を介しての圧着などにより接続される筒状部材として形成し、内部にケーブル基41を収容し、適当な長さを摺動可能な内腔(スライド部)32、外部よりケーブル基を操作可能な操作窓33、ケーブル基41などを内部に収容するための後端部に設ける蓋部34を備えて構成される。ケーブル基41は、先端部に接続ケーブル40を接着により接続し、前記外筒管基31の内腔に収容し、前記の通り外筒管30の操作窓33から手指によりスライド部32を前後に摺動することで、接続ケーブル40の遠位端に接続する弾性ワイヤー20を外筒管30から出没することができる。糸50終端部は、外筒管30から弾性ワイヤー20を押し出すさいのスライドの長さ(内筒管内を摺動するケーブル基のスライドの長さ)と同等の長さを前記外筒管基31の後端より突出させて延設し、糸50終端部に設けた留め部51により、該留め部51が外筒管基31の後端部で留止することで、前方へのスライドを規制される。
 
【0025】
  尚、本形態においては糸50終端部を外筒管基31より突出させ留め部51を設けたが、該糸50終端部を外筒管基31の後端などに固定し、バッグを外筒管30内に収納している段階では糸50を外筒管基31の内腔など適当な位置で、外筒管30から弾性ワイヤー20を押し出すさいのスライドの長さ弛ませておき、内筒管30からバッグ10を突出させた後は、前記外筒管基31の後端などに固定されていることで、前方へのスライドを規制するようなものであっても良い。
  また、本形態の操作部は、前記に特定するものではなく、外筒管30から弾性ワイヤー20を押し出してバッグ10を展開し、展開したバッグ10を閉塞し、更に、バッグ10を再展開するといった操作がスムーズに、かつ、容易にできるものであれば良い。
 
【0026】
  図3は、本形態の操作及び作動を示す模式図で、Aが使用前のバッグ収納時、Bがバッグ展開時、Cがバッグ閉塞時、Dが再展開された状態を示している。
  使用前は、弾性ワイヤー20は軸方向に押しつぶされ、バッグ10は弾性ワイヤー20に纏わり付け折りたたまれた状態で外筒管30遠位端に収納されており、操作部のケーブル基41は外筒管基31のスライド部の最後端に位置し、糸50は糸終端部51がスライド部の長さ分外筒管基31の最後端より突出した状態となっている。(
図A)
 
【0027】
  前記の状態で軟性内視鏡のチャンネルを通して体内の手術部位まで挿入し、目的位置でケーブル基41を前方にスライドし、外筒管基31のスライド部32最先端に位置させると、接続ケーブル40連設している弾性ワイヤー20が外筒管30遠位端から外部に押し出され、同時に弾性ワイヤー20に接続するバッグ10も押し出され、バッグ10に接続する糸50も前方にスライドされて終端部51は外筒管基30の後端部に位置される。そして、弾性ワイヤー20が外部に押し出されると、開口部を展開する態様に記憶付された弾性復元力により自然にバッグ10が展開された状態に変形する。(
図B)
 
【0028】
  前記展開されたバッグ10に切除片90を収納したら操作部のケーブル基41を外筒管基31のスライド部32の最後端までスライドすることで、接続ケーブル40に接続された弾性ワイヤー20が内筒管30内腔に引き戻され、展開されたバッグ10は外筒管30の先端で引っかかり外筒管30内腔に戻れず、巾着状に開口部が閉塞される。また、バッグ10近位端に接続された糸50は接続ワイヤー40やワイヤー基41と連動しないことからそのまま外筒管基31の後端部に位置している。(
図C)
 
【0029】
  通常この状態で軟性内視鏡ごとバッグ10を体外に回収するが、何らかの事情によりバッグ10を再展開する場合、再度ケーブル基41を外筒管基31のスライド部32最先端までスライドさせることで、接続ケーブル40に接続された弾性ワイヤー20が外筒管30より押し出され自然開口され、一方バッグ10は、近位端が糸50に接続しており、該糸50の終端部51が外筒管基31後端部で留止されているため、弾性ワイヤー20や接続ケーブル30と連動して前方にスライドすることがなく、バッグ10の近位端の位置は変わらないため、弾性ワイヤー20の開口と共にバッグ10が自然に再展開される。(
図D)
 
【0030】
  上記実施の形態によると手元操作部の外筒管基31とケーブル基41のスライド操作のみにより、一度閉じてしまったバッグ10を再展開、閉塞することができる。
 
【0031】
  図4は、第二の実施の形態の構成及び作動の様子を示し、
図5は、その再展開時のバッグ部分を示している。
  本形態の手術用回収バッグは、第一の形態と同様にNOTESでの適用が可能な器具で、バッグ10、弾性ワイヤー20、外筒管30、及び、接続ケーブル40は第一の実施の形態と同様に形成される。再展開手段となる紐部材は、ポリアミド樹脂の糸でも良いが、本例ではより強度の高いステンレス細線などの金属線60により形成し、該金属線60を2本並列に設け、各々の遠位端をバッグ10近位端の弾性ワイヤー20を挿通するための通し穴11の切込み部12を挟んで両側に対称となるように接続し、接続ケーブル40内腔を通して外部まで延設して、近位端部を操作部となる金属線基61に接続して形成される。また、該金属線60は接続ケーブル40の内腔で自由状態であり、該接続ケーブル40の動作に連動しないように形成される。
 
【0032】
  本形態の操作部は、外筒管30に接続する外筒管基35と、接続ケーブル20に接続するケーブル基42と、金属線60に接続する金属線基61より構成し、外筒管基35は筒状部材として形成し、接続ケーブル40が接続されたケーブル基42が内腔を摺動するように構成され、該ケーブル基42は前記の通り外筒管基35の内腔を摺動する構成であるが、内腔を備えており、該内腔を金属線60が接続された金属線基61が摺動するように構成される。そして、前記ケーブル基42、及び、金属線基61は各々摺動部となるパイプ部43、62と、パイプ部43、62に接続される把持部42、61とからなり、各々の摺動する長さ(スライド巾)は、外筒管30に収納された弾性ワイヤー20の長さに適合され同等の長さとして設定される。
 
【0033】
  本形態の操作及び作動を説明する。
図4Aが使用前のバッグ収納時、Bがバッグ展開時、Cがバッグ閉塞時、D、Eが再展開途中の状態、Fが再展開された状態を示している。
  使用前は、弾性ワイヤー20、及び、バッグ10は折りたたまれた状態で外筒管30遠位端に収納されており、操作部のケーブル基42、及び、金属線基61は、各々いっぱいに引かれた最後端位置に配置されている。(
図A)
 
【0034】
  前記の状態で軟性内視鏡のチャンネルを通して体内の手術部位まで挿入し、目的位置でケーブル基42のみを前方にスライドさせ外筒管基35と近接すると、接続ケーブル40に連設している弾性ワイヤー20が外筒管30遠位端から外部に押し出され、該弾性ワイヤー20に接続しているバッグ10も押し出されることで、該バッグ10に接続されている金属線60及び金属線基61も連動して前方にスライドされ、開口部を展開する態様に記憶付された弾性ワイヤー20の弾性復元力により自然にバッグ10が展開された状態に変形する。(
図B)
 
【0035】
  前記展開されたバッグ10に切除片90を収納したら操作部のケーブル基42のみを後方に引き戻することで、接続ケーブル40に接続された弾性ワイヤー20が外筒管30内腔に引き戻され、展開されたバッグ10は外筒管30の先端で引っかかり巾着状に開口部が閉塞される。この時、バッグ10近位端に接続された金属線60は接続ワイヤー40やワイヤー基42と連動しないことからそのままの位置に留まり、金属線基60とワイヤー基42が近接した状態となる。(
図C)
 
【0036】
  前記閉塞した状態からバッグ10を再展開する場合、再度ケーブル基42を前方にスライドし、外筒管基35に近接することで、接続ケーブル40に接続された弾性ワイヤー20が外筒管30より押し出され、弾性ワイヤー20に接続されたバッグ10も追従するが、一度開口部を巾着状に閉塞されたバッグ10は、大きく開口することなく弾性ワイヤー20遠位端に閉塞状態を維持した状態で位置される。(
図D)尚、この操作のさいにバッグ10に追従して前方にスライドしてしまう金属線60及び金属線基61を、金属線基61をそのままの位置に固定した状態に保持し、ケーブル基42のみを前方にスライドするようにすると、該ケーブル基42のスライド操作のみによりバッグ10を再展開することもできる。(
図F)
 
【0037】
  前記閉塞したバッグ10が弾性ワイヤー20遠位端に位置した状態で、金属線基61を後方にスライドすることにより、バッグ10は、該バッグ10の2箇所に接続された金属線60により弾性ワイヤー20に沿って引き戻され、開口部を再展開する。(
図E、
図F)
 
【0038】
  上記実施の形態によると、バッグ10と金属線60の接続部を、該金属線60を2本とし遠位端をバッグ10の通し穴11の切込み部12を挟んで対称に設けたことで、弾性ワイヤー20遠位端に閉塞された状態のバッグ10を手元操作により引き戻し、再展開するさい、バッグ10との接続部が弾性ワイヤー20の開口形状に沿うように、切込み部11の両側を均等に引き戻すことができるため、柔軟なバッグ10に損傷を与えることなく再展開することができる。また、手元操作部の外筒管基35、ケーブル基42、及び、金属線基61のスライド操作のみにより、一度閉じてしまったバッグ10を再展開、閉塞することができる。
 
【0039】
  図6は、第三の実施の形態の構成及び作動の様子を示し、
図7は、本形態の再展開手段となるバネ状伸縮部材の作動を示している。
  本形態の手術用回収バッグは、第一及び第二の形態と同様にNOTESでの適用が可能な器具で、バッグ10、弾性ワイヤー20、及び、外筒管30は前記形態と同様に形成されるもので、接続ケーブル44は前記形態の巻線によるものであっても良いが、本形態では接続ケーブル44に内腔を必要としないためステンレス等の金属からなる可撓性の撚線を使用している。
 
【0040】
  本形態の再展開手段は、バネ状伸縮部材として金属よりなる自然状態で縮んだ形態のバネ70を用い、該バネ70の一方端部(近位端)を接続ケーブル44の遠位端に接続し、遠位端を金属線あるいはポリアミド樹脂など高強度樹脂の糸よりなる接続糸80を介してバッグ10の近位端に接続して構成した。ここで、バネ70をバッグ10に接続するのに接続糸80を介しているのは、バッグの閉塞時に外筒管30内腔に弾性ワイヤー20を収納するさい、該弾性ワイヤー20の開口展開部分21とバネ70が干渉してスライド操作を阻害させないためで、接続糸80の長さを該弾性ワイヤー20の開口展開部分21と同じか、僅かにより長く設定して、弾性ワイヤー20の近位端側の直線部分22を、前記接続糸80の長さと自然状態でのバネ70の長さを加えた長さに設定し、該弾性ワイヤー20の外筒管30収納時、開口展開部分21を前記バネ70の内腔に位置させないように形成される。尚、弾性ワイヤー20はバネ70の内腔を通して接続ケーブル44に接続されるため、当然、該弾性ワイヤー20の直線部分22はバネ70の内腔をスムーズに移動できるサイズとして形成されている。
 
【0041】
  本形態の操作部は、前記第二の形態の外筒管基とケーブル基と同様に形成されればよいが、ケーブル基45に金属線60を内挿する必要がないため内腔は設ける必要がない。
 
【0042】
  本形態の操作及び作動を説明する。
図6Aが使用前のバッグ収納時、Bがバッグ展開時、Cがバッグ閉塞時、Dが再展開された状態を示し、
図7Cがバック展開時、Dがバッグ閉塞時の再展開手段部分の拡大図を示している。
  使用前は、弾性ワイヤー20、及び、バッグ10は折りたたまれた状態で外筒管30遠位端に収納され、バネ70は自然状態である縮められた状態をとり、操作部の接続ケーブル基45は、最後端のいっぱいに引かれた位置に配置されている。(
図A)
 
【0043】
  前記の状態で軟性内視鏡のチャンネルを通して体内の手術部位まで挿入し、目的位置でケーブル基45のみを前方にスライドさせ外筒管基35と近接すると、接続ケーブル44に連設している弾性ワイヤー20が外筒管30遠位端から外部に押し出され、弾性ワイヤー20に接続するバッグ10も押し出されて、開口部を展開する態様に記憶付された弾性ワイヤー20の弾性復元力により自然にバッグ10が展開された状態に変形する。そのさい、接続ワイヤー44及びバッグ10に接続されているバネ70や接続糸80も前方に移動する。(
図B)
 
【0044】
  前記展開されたバッグ10に切除片90を収納したら操作部のケーブル基45を後方に引き戻することで、接続ケーブル44に接続された弾性ワイヤー20が内筒管30内腔に引き戻され、展開されたバッグ10は外筒管30の先端で引っかかり巾着状に開口部が閉塞されると同時に、バッグ10近位端に接続糸80を介して接続されているバネ70が接続ケーブル44に引っ張られて弾性ワイヤー20が収納される分伸ばされる。ここで、バネ70の自然状態へ戻ろうとする復元力を、弾性ワイヤー20による開口しようとする張力(外筒管30を押圧する力)に摩擦力等を加味した収納状態を維持しようとする力よりも小さく設定することで、自然に弾性ワイヤー20が外筒管30から突出し、バネ70が収縮し閉塞部を緩めるようなことはない。(
図C)
 
【0045】
  前記閉塞した状態からバッグ10を再展開する場合、再度ケーブル基45を前方にスライドし、外筒管基35に近接することで、接続ケーブル44に接続された弾性ワイヤー20が外筒管30より押し出され、弾性ワイヤー20に接続されたバッグ10も追従するが、同時にバネ70が自然状態に縮められるため、該バネ70に接続糸80を介して接続されているバッグ10近位端は前方に移動せずそのままの位置に留まることで自然にバッグ10開口部が再展開する。(
図D)
 
【0046】
  また、本例においてはバネ70とバッグ10との接続に接続糸80を用いているが、外筒管30内腔でバネ70と弾性ワイヤー20が干渉しないような構成(例えば、バネのバッグ接続側に長尺な直線部を備えたバネを使用するなど)を採ったり、外筒管30内腔の空間に余裕があったりする場合には、前記接続糸80を用いることなく直接バネ70の端部をバッグ10に接続しても良い。
 
【0047】
  前記構成のように、弾性ワイヤー20とバネ状伸縮部材を並行して設け、各々を接続ケーブル44、及び、バッグ10の前述した位置に接続して備えると、内筒管30からバック10を展開した後、バッグ10を閉塞するさいに弾性ワイヤー20が内筒管30に再収納されると同時に、バネ70が伸展した状態となり、再度弾性ワイヤー20を押し出すと、バネ70が自然状態の縮んだ状態に戻るといったバネ70の伸縮性を利用したバッグ10の再展開が可能でとなり、手元操作部の外筒管基35、及び、ケーブル基45のスライド操作のみにより、一度閉じてしまったバッグ10を容易に再展開、閉塞することができる。