特許第5919072号(P5919072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919072
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20060101AFI20160428BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   G02B7/04 E
   G02B7/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-89188(P2012-89188)
(22)【出願日】2012年4月10日
(65)【公開番号】特開2013-218145(P2013-218145A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 学
(72)【発明者】
【氏名】三原 直哉
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−203475(JP,A)
【文献】 特開2000−153231(JP,A)
【文献】 特開平11−217276(JP,A)
【文献】 特開2009−122332(JP,A)
【文献】 実開平05−001246(JP,U)
【文献】 特開2010−217467(JP,A)
【文献】 特開2003−295033(JP,A)
【文献】 特開2012−118213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持し前記レンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、前記可動体を前記光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、駆動用コイルと複数の駆動用磁石とを有し前記可動体を前記光軸方向へ駆動する駆動機構と、複数の前記駆動用磁石のそれぞれに固定される複数の磁性部材とを備え、
前記駆動用磁石は、前記可動体または前記固定体の一方に固定され、
前記駆動用コイルは、前記可動体または前記固定体の他方に固定され、
前記磁性部材は、平板状に形成されるとともに、その厚さ方向と前記光軸方向とが略一致するように、前記光軸方向における前記駆動用磁石の端面に固定され、
前記駆動用磁石の表面および前記磁性部材の表面には、少なくともニッケルを含むニッケルメッキ層が形成され、
前記駆動用磁石と前記磁性部材とは、少なくともスズを含むスズ系金属からなり前記駆動用磁石と前記磁性部材との間に配置される接合層によって接合され、
前記駆動用磁石に接合される前の複数の前記磁性部材は、複数の前記磁性部材を一体化するための連結部材によって連結されているレンズ駆動装置の製造方法であって、
複数の前記磁性部材が前記連結部材によって一体化された状態の磁性部材原体と複数の前記駆動用磁石とを接合する接合工程と、前記接合工程後に前記磁性部材原体から前記連結部材を除去する除去工程とを備え、
前記除去工程後の複数の前記磁性部材のそれぞれには、前記連結部材が接続されていた接続部が繋がっており、
前記接続部は、前記光軸方向から見たときに前記駆動用磁石の輪郭の中に配置され、
前記接続部の、前記駆動用磁石側の面は、前記磁性部材の、前記駆動用磁石側の面よりも前記駆動用磁石から離れる方向へ窪んでいることを特徴とするレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項2】
前記磁性部材は、プレスの打ち抜き加工で形成され、
前記磁性部材のカエリ側が前記駆動用磁石に接合されていることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項3】
前記接続部の、前記駆動用磁石側の面は、前記接続部の先端に向かうにしたがって前記駆動用磁石から離れる方向へ傾斜する傾斜面となっており、
前記磁性部材原体の、前記駆動用磁石側の面には、前記傾斜面と、前記連結部材側から前記接続部の先端に向かうにしたがって前記駆動用磁石から離れる方向へ傾斜する第2の傾斜面とが形成され、
前記傾斜面の傾斜角度と前記第2の傾斜面の傾斜角度とが異なっていることを特徴とする請求項1または2記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の傾斜面の傾斜角度は、前記傾斜面の傾斜角度よりも緩やかであることを特徴とする請求項3記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【請求項5】
前記接続部の、前記駆動用磁石側の面と反対の面は、前記磁性部材の、前記駆動用磁石側の面と反対の面よりも前記駆動用磁石に近づく方向へ窪んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法
【請求項6】
前記接続部の厚みは、前記接続部の先端に向かうにしたがって次第に薄くなっていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法
【請求項7】
前記接続部の幅は、前記接続部の先端に向かうにしたがって次第に狭くなっていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレンズ駆動装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等で使用される比較的小型のカメラに搭載されるレンズ駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用レンズを駆動するレンズ駆動装置として、複数のレンズを保持して光軸方向に移動する可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、可動体を光軸方向へ駆動するための駆動機構とを備えるレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレンズ駆動装置は、略直方体状に形成されている。
【0003】
このレンズ駆動装置では、駆動機構は、略三角柱状に形成された4個の駆動用磁石と、略三角筒状に巻回された4個の駆動用コイルとを備えている。駆動用磁石は、2個の駆動用磁石片と磁性板とによって構成されており、光軸方向において2個の駆動用磁石片が磁性板を挟むように2個の駆動用磁石片と磁性板とが互いに固定されている。2個の駆動用磁石片と磁性板とは、接着剤によって固定されている。2個の駆動用磁石片は、磁性板を介して対向する対向面の磁極が同じ磁極となるように着磁されている。
【0004】
また、駆動用磁石は、レンズ駆動装置の四隅に配置されており、光軸方向における駆動用磁石の一端面は、固定体を構成するカバー部材に接着剤によって固定されている。また、光軸方向における駆動用磁石の他端面には、磁性片が接着剤によって固定されている。駆動用コイルは、駆動用磁石の外周面と駆動用コイルの内周面とが所定の隙間を介して対向するように可動体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−217467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、携帯電話等に搭載されるカメラの市場では、カメラの小型化の要求が一段と高まっており、そのため、カメラに使用されるレンズ駆動装置の小型化の要求も一段と高まっている。特許文献1に記載のレンズ駆動装置において、装置をさらに小型化するためには、駆動用磁石および駆動用コイルを小型化すれば良い。一方で、駆動用磁石および駆動用コイルを小型化すると、可動体を駆動する駆動機構の駆動力が低下するため、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間(ギャップ)を狭くして、駆動機構の駆動力の低下を防止する必要がある。
【0007】
ここで、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合、この隙間が精度良く形成されていないと、駆動用磁石が固定される固定体と駆動用コイルが固定される可動体とが干渉して、可動体の移動に支障を来すおそれがある。しかしながら、特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、2個の駆動用磁石片と磁性板とが接着剤によって固定されているため、接着剤の塗布量や塗布位置の厳密な管理を行わないと、駆動用磁石片と磁性板との間から接着剤がはみ出すおそれがある。したがって、このレンズ駆動装置では、駆動用磁石や駆動用コイルの小型化に伴って、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合に、駆動用磁石片と磁性板との間からはみ出した接着剤の影響で、可動体の移動に支障を来すおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合であっても、可動体を適切に移動させることが可能なレンズ駆動装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のレンズ駆動装置の製造方法は、レンズを保持しレンズの光軸方向へ移動可能な可動体と、可動体を光軸方向へ移動可能に保持する固定体と、駆動用コイルと複数の駆動用磁石とを有し可動体を光軸方向へ駆動する駆動機構と、複数の駆動用磁石のそれぞれに固定される複数の磁性部材とを備え、駆動用磁石は、可動体または固定体の一方に固定され、駆動用コイルは、可動体または固定体の他方に固定され、磁性部材は、平板状に形成されるとともに、その厚さ方向と光軸方向とが略一致するように、光軸方向における駆動用磁石の端面に固定され、駆動用磁石の表面および磁性部材の表面には、少なくともニッケルを含むニッケルメッキ層が形成され、駆動用磁石と磁性部材とは、少なくともスズを含むスズ系金属からなり駆動用磁石と磁性部材との間に配置される接合層によって接合され、駆動用磁石に接合される前の複数の磁性部材は、複数の磁性部材を一体化するための連結部材によって連結されているレンズ駆動装置の製造方法であって、複数の磁性部材が連結部材によって一体化された状態の磁性部材原体と複数の駆動用磁石とを接合する接合工程と、接合工程後に磁性部材原体から連結部材を除去する除去工程とを備え、除去工程後の複数の磁性部材のそれぞれには、連結部材が接続されていた接続部が繋がっており、接続部は、光軸方向から見たときに駆動用磁石の輪郭の中に配置され、接続部の、駆動用磁石側の面は、磁性部材の、駆動用磁石側の面よりも駆動用磁石から離れる方向へ窪んでいることを特徴とする。
【0010】
本発明のレンズ駆動装置では、駆動用磁石と磁性部材とは、スズ系金属からなり駆動用磁石と磁性部材との間に配置される接合層によって接合されている。そのため、たとえば、磁性部材が接合される前の駆動用磁石の表面のニッケルメッキ層を被覆するように形成されるスズメッキ層を、駆動用磁石と磁性部材との接合時に溶融、固化させて、接合層を形成し、駆動用磁石と磁性部材とを接合することが可能になる。したがって、本発明では、接着剤を用いて駆動用磁石と磁性部材とを固定するときのような接着剤の塗布量や塗布位置の厳密な管理を行わなくても、接合された駆動用磁石と磁性部材との間からの接合層のはみ出しを防止することが可能になる。その結果、本発明では、駆動用磁石や駆動用コイルの小型化に起因する駆動力の低下を防止するために、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合であっても、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を精度良く形成することが可能になり、可動体側と固定体側との干渉を防止することが可能になる。すなわち、本発明では、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合であっても、可動体側と固定体側との干渉を防止して、可動体を適切に移動させることが可能になる。
【0011】
また、本発明では、接合前の複数の磁性部材は、連結部材によって一体化されており、一体化された複数の磁性部材と複数の駆動用磁石とを接合した後に、連結部材を除去している。そのため、本発明では、分割された複数の磁性部材と複数の駆動用磁石とを接合する場合と比較して、複数の磁性部材と複数の駆動用磁石との接合作業が容易になる。また、本発明では、磁性部材と駆動用磁石とを接合する際の、複数の磁性部材間の相対位置のずれを防止することが可能になり、接合後の複数の磁性部材間の相対位置精度を高めることが可能になる。また、本発明では、接続部は、光軸方向から見たときに駆動用磁石の輪郭の中に配置されているため、接続部が、光軸方向へ移動する可動体の移動に支障を来すのを防止することが可能になる。
【0012】
ここで、連結部材によって一体化された複数の磁性部材と複数の駆動用磁石とを接合した後に連結部材を除去する場合、本発明では、光軸方向から見たときに駆動用磁石の輪郭の中に接続部が配置されているため、磁性部材と駆動用磁石とを接合する際に駆動用磁石と連結部材との間に溶融したメッキのフィレットが形成されると、連結部材を除去するときに、駆動用磁石の表面からニッケルメッキ層が剥離するおそれがある。駆動用磁石の表面からニッケルメッキ層が剥離すると、駆動用磁石に錆が発生して、駆動用磁石の磁力が低下するおそれがある。しかしながら、本発明では、接続部の、駆動用磁石側の面が、磁性部材の、駆動用磁石側の面よりも駆動用磁石から離れる方向へ窪んでいるため、駆動用磁石と連結部材との間に溶融したメッキのフィレットが形成されるのを防止することが可能になる。その結果、本発明では、連結部材を除去する際に、駆動用磁石の表面からニッケルメッキ層が剥離するのを防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、接続部の、駆動用磁石側の面は、接続部の先端に向かうにしたがって駆動用磁石から離れる方向へ傾斜する傾斜面となっていることが好ましい。このように構成すると、接続部の先端の厚さを薄くすることが可能になる。したがって、一体化された複数の磁性部材と複数の駆動用磁石とを接合した後、接続部の先端を境にして、連結部材を除去しやすくなる。
【0014】
本発明において、接続部の、駆動用磁石側の面と反対の面は、磁性部材の、駆動用磁石側の面と反対の面よりも駆動用磁石に近づく方向へ窪んでいることが好ましい。このように構成すると、接続部の厚さを薄くすることが可能になるため、一体化された複数の磁性部材と複数の駆動用磁石とを接合した後に、連結部材を除去しやすくなる。
【0016】
本発明において、接続部の厚みは、接続部の先端に向かうにしたがって次第に薄くなっていることが好ましい。また、本発明において、接続部の幅は、接続部の先端に向かうにしたがって次第に狭くなっていることが好ましい。このように構成すると、一体化された複数の磁性部材と複数の駆動用磁石とを接合した後、接続部の先端を境にして、連結部材を除去しやすくなる。
【0017】
本発明において、磁性部材は、プレスの打ち抜き加工で形成され、磁性部材のカエリ側が駆動用磁石に接合されていることが好ましい。磁性部材の、駆動用磁石側の面と反対の面が、光軸方向における可動体の可動範囲を規制する規制面となっている場合に、磁性部材の、駆動用磁石側の面と反対の面が磁性部材のカエリ側になると、磁性部材の、駆動用磁石側の面と反対の面に生じたカエリによって可動体の可動範囲が狭くなるおそれがあるが、このように構成すると、プレスの打ち抜き加工時に生じたカエリに起因して、可動体の可動範囲が狭くなるのを防止することが可能になる。また、このように構成すると、プレスの打ち抜き加工時に生じたカエリを接合層に食い込ませることが可能になるため、プレスの打ち抜き加工時に生じたカエリに起因して、駆動用磁石に対して磁性部材の位置がずれるのを抑制することが可能になる。
【0018】
本発明において、たとえば、接続部の、駆動用磁石側の面は、接続部の先端に向かうにしたがって駆動用磁石から離れる方向へ傾斜する傾斜面となっており、磁性部材原体の、駆動用磁石側の面には、傾斜面と、連結部材側から接続部の先端に向かうにしたがって駆動用磁石から離れる方向へ傾斜する第2の傾斜面とが形成され、傾斜面の傾斜角度と第2の傾斜面の傾斜角度とが異なっている。
【0019】
この場合には、第2の傾斜面の傾斜角度は、傾斜面の傾斜角度よりも緩やかであることが好ましい。このように構成すると、光軸方向から見たときに接続部が駆動用磁石の輪郭の中に配置されていても、第2の傾斜面の連結部材側の端部と駆動用磁石の側面との距離を離すことが可能になる。したがって、駆動用磁石と磁性部材とを接合する際に駆動用磁石と連結部材との間に溶融したメッキのフィレットが形成されるのを効果的に防止することが可能になる。また、このように構成すると、傾斜面の磁性部材側の端部と駆動用磁石の側面との距離を近づけることが可能になる。したがって、駆動用磁石と磁性部材との接合面積を広くして、駆動用磁石と磁性部材との接合強度を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明では、駆動用磁石と駆動用コイルとの隙間を狭くした場合であっても、可動体を適切に移動させることが可能になる。また、本発明によれば、駆動用磁石と磁性部材とを接合する際に駆動用磁石と連結部材との間に溶融したメッキのフィレットが形成されるのを効果的に防止すること、および、駆動用磁石と磁性部材との接合強度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の斜視図である。
図2図1のE−E断面の断面図である。
図3図1に示すカバー部材に駆動用磁石および磁性部材が固定されている状態を反被写体側から示す斜視図である。
図4図1に示すレンズ駆動装置から可動体およびベース部材等を取り外した状態を反被写体側から示す図である。
図5図3に示すカバー部材、駆動用磁石および磁性部材原体の接合方法を説明するための斜視図であり、(A)はカバー部材、駆動用磁石および磁性部材原体を接合した後の状態を示す図、(B)は(A)に示す状態から第2基部を除去した状態を示す図である。
図6】(A)は、図5(A)のG部の構成を説明するための拡大図であり、(B)は、(A)のH−H断面の断面図である。
図7】(A)は、図4のJ部の拡大図であり、(B)は、(A)のK−K断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(レンズ駆動装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示すカバー部材10に駆動用磁石13および磁性部材17が固定されている状態を反被写体側から示す斜視図である。図4は、図1に示すレンズ駆動装置1から可動体2およびベース部材11等を取り外した状態を反被写体側から示す図である。なお、以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、図1等のZ1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0024】
本形態のレンズ駆動装置1は、撮影用のレンズを光軸Lの方向(光軸方向)へ移動させて光学像の焦点位置を合わせるための装置であり、携帯電話、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等で使用される比較的小型のカメラに搭載されて使用される。レンズ駆動装置1は、図1に示すように、全体として略四角柱状に形成されている。すなわち、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成されている。本形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。また、レンズ駆動装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0025】
本形態では、Z方向(上下方向)が光軸方向とほぼ一致している。また、本形態のレンズ駆動装置1が搭載されるカメラでは、下側に図示を省略する撮像素子が配置されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0026】
レンズ駆動装置1は、図1図2に示すように、撮影用のレンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体2と、可動体2を光軸方向へ移動可能に保持する固定体3と、可動体2を光軸方向へ駆動するための駆動機構4とを備えている。可動体2は、図示を省略する板バネを介して固定体3に移動可能に保持されている。板バネは、たとえば、可動体2に固定される可動体側固定部と、固定体3に固定される固定体側固定部と、可動体側固定部と固定体側固定部とを繋ぐバネ部とから構成されており、可動体2の上端側および下端側に配置されている。
【0027】
可動体2は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ7を保持するスリーブ8を備えている。固定体3は、レンズ駆動装置1の4つの側面(外周面)を構成するカバー部材10と、レンズ駆動装置1の下端面を構成するベース部材11とを備えている。
【0028】
レンズホルダ7は、略円筒状に形成されており、レンズホルダ7の内周側に、複数のレンズが固定されている。スリーブ8は、鍔部8aを有する鍔付きの略筒状に形成されている。スリーブ8の内周面には、レンズホルダ7の外周面が固定されている。鍔部8aは、スリーブ8の下端側に形成されている。また、鍔部8aは、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されている。
【0029】
カバー部材10は、磁性材料で形成されている。本形態のカバー部材10は、磁性を有する薄鋼板で形成されている。カバー部材10の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。カバー部材10は、底部10aと筒部10bとを有する底付きの略四角筒状(略有底四角筒状)に形成されている。底部10aは、上側に配置されており、レンズ駆動装置1の被写体側の端面を構成している。底部10aの中心には、貫通孔10cが形成されている。カバー部材10は、駆動機構4および可動体2の外周側を囲むように配置されている。ベース部材11は、略正方形の枠状に形成されており、カバー部材10の下端側に取り付けられている。
【0030】
駆動機構4は、レンズ駆動装置1の四隅(具体的には、カバー部材10の内側の四隅)に配置される略三角柱状の4個の駆動用磁石13と、スリーブ8に固定される1個の駆動用コイル14とを備えている。
【0031】
駆動用磁石13は、ネオジム、鉄およびボロンを主成分とするネオジム磁石である。この駆動用磁石13は、光軸方向から見たときの形状が略直角三角形状となるように形成されており、光軸Lに略平行でかつ互いに直交する矩形状の2個の第1の側面(第1側面)13aと、光軸Lに略平行でかつ2個の第1側面13aを繋ぐ矩形状の1個の第2の側面(第2側面)13bとを備えている。駆動用磁石13の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。
【0032】
駆動用磁石13は、カバー部材10の筒部10bの内周面と第1側面13aとが略平行に、かつ、所定の隙間をあけて対向するように配置されており、カバー部材10の内側の対角位置に配置される2個の駆動用磁石13の第2側面13bは、互いに対向している。また、4個の駆動用磁石13は、カバー部材10の底部10aに固定されている。具体的には、4個の駆動用磁石13の上端面が、底部10aの下面に当接した状態で、底部10aの下面に固定されている。また、4個の駆動用磁石13の上端面は、底部10aによって完全に覆われている。
【0033】
本形態では、駆動用磁石13は、少なくともスズを含むスズ系金属からなる接合層15によって底部10aと接合されている。すなわち、図2に示すように、底部10aの下面と駆動用磁石13の上面との間に配置される接合層15によって、駆動用磁石13と底部10aとが接合されている。接合層15は、スズ、銅を含むスズ合金、金を含むスズ合金、銀を含むスズ合金、あるいは、ビスマスを含むスズ合金等によって構成されている。
【0034】
駆動用磁石13の下端面には、磁性材料で形成された平板状の磁性部材17が固定されている。本形態の磁性部材17は、磁性を有するステンレス鋼板で形成されている。磁性部材17の表面には、ニッケルを主とするニッケル合金、または、ニッケルからなるニッケルメッキ層が形成されている。
【0035】
磁性部材17は、光軸方向から見たときの形状が駆動用磁石13と同様の略直角三角形状となるように形成されており、互いに直交する2個の第1の端面(第1端面)17aと、2個の第1端面17aを繋ぐ1個の第2の端面(第2端面)17bとを備えている。本形態では、光軸方向から見たときの磁性部材17の外形は、駆動用磁石13の外形よりもわずかに大きくなっている。この磁性部材17は、その厚さ方向と上下方向とが略一致するように駆動用磁石13の下端面に固定されている。また、磁性部材17は、第1端面17aが駆動用磁石13の第1側面13aと同一平面状に配置され、かつ、第2端面17bが駆動用磁石13の第2側面13bと略平行になるように、駆動用磁石13の下端面に固定されている。
【0036】
磁性部材17の下面17cには、スリーブ8の鍔部8aの上面が当接可能となっている。磁性部材17の下面17cは、可動体2の上方向への可動範囲を規制する規制面となっている。なお、本形態では、磁性部材17の上面は、磁性部材17の、駆動用磁石13側の面であり、磁性部材17の下面17cは、磁性部材17の、駆動用磁石13側の面と反対の面である。
【0037】
本形態では、磁性部材17は、少なくともスズを含むスズ系金属からなる接合層18によって駆動用磁石13と接合されている。すなわち、図2に示すように、駆動用磁石13の下面と磁性部材17の上面との間に配置される接合層18によって、駆動用磁石13と磁性部材17とが接合されている。接合層18は、接合層15を構成するスズ系金属と同様のスズ系金属で構成されており、スズ、銅を含むスズ合金、金を含むスズ合金、銀を含むスズ合金、あるいは、ビスマスを含むスズ合金等によって構成されている。
【0038】
本形態の磁性部材17は、プレスの打ち抜き加工で形成されており、そのカエリ(バリ)側が磁性部材17の上面となり、そのダレ側が磁性部材17の下面17cとなるように駆動用磁石13に固定されている。すなわち、本形態では、磁性部材17のカエリ側が駆動用磁石13に接合されている。
【0039】
駆動用磁石13は、上端面の磁極と下端面の磁極とが異なるように、上下方向で2極に着磁されている。たとえば、駆動用磁石13の上端面がS極となり、駆動用磁石13の下端面がN極となるように着磁されている。また、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aは、カバー部材10の筒部10bによって外周側から覆われている。
【0040】
そのため、図2に示すように、レンズ駆動装置1では、カバー部材10の筒部10b、底部10a、駆動用磁石13および磁性部材17を通過するとともに、磁性部材17の下面17cや第1端面17aから筒部10bの内周面に向かって回り込む磁界Fが形成されている。この磁界Fは、筒部10bの内周面の、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aに略平行に対向配置される部分に向かって、磁性部材17の下面17cや第1端面17aから回り込んでいる。なお、図2では、図示を省略しているが、駆動用磁石13の下端面と磁性部材17の上面との当接部分の近傍からも筒部10bの内周面に向かって磁界Fが回り込んでいる。
【0041】
駆動用コイル14は、上下方向から見たときの形状が略正方形状となるように扁平な略四角筒状に巻回されている。上下方向における駆動用コイル14の幅は、磁性部材17の厚さよりも厚くなっている。この駆動用コイル14は、スリーブ8の鍔部8aの上面に接着等で固定されている。
【0042】
駆動用コイル14は、図4に示すように、カバー部材10の筒部10bの内周面に沿って配置されており、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分は、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aとカバー部材10の筒部10bとの隙間に配置されている。すなわち、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分の内周面は、前後方向または左右方向において、駆動用磁石13の第1側面13aおよび磁性部材17の第1端面17aと所定の隙間を介して対向している。すなわち、駆動用コイル14の一部は、駆動用磁石13および磁性部材17の一部を外周側から覆うように駆動用磁石13および磁性部材17の一部と所定の隙間を介して対向配置されている。また、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分の内周面は、前後方向または左右方向において、駆動用磁石13の下面と磁性部材17の上面との間に配置される接合層18とも所定の隙間を介して対向している(図2参照)。また、駆動用コイル14の四隅およびその近傍部分は、磁性部材17の下面17cや第1端面17aから筒部10bの内周面に向かって回り込む磁界Fの中に配置されている。
【0043】
本形態では、可動体2の可動範囲において、駆動用コイル14の内周側に磁性部材17が常に配置されるように、駆動用コイル14が配置されている。すなわち、可動体2の可動範囲において、駆動用コイル14の下端面が磁性部材17の下面17cよりも上側へ移動せず、かつ、駆動用コイル14の上端面が磁性部材17の上面よりも下側へ移動しないように、駆動用コイル14が配置されている。駆動用コイル14に電流が供給されると、駆動用磁石13と駆動用コイル14との作用で、可動体2が上下方向(光軸方向)へ移動する。すなわち、駆動用磁石13と駆動用コイル14とは、固定体3に対して可動体2を光軸方向へ相対移動させる。
【0044】
(駆動用磁石、カバー部材および磁性部材の接合方法)
図5は、図3に示すカバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21の接合方法を説明するための斜視図であり、(A)はカバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21を接合した後の状態を示す図、(B)は(A)に示す状態から第2基部20bを除去した状態を示す図である。
【0045】
以下、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17との接合方法を説明する。
【0046】
カバー部材10および磁性部材17と接合される前の駆動用磁石13の表面には、接合後に接合層15、18となるスズメッキ層がニッケルメッキ層を覆うように形成されている。また、カバー部材10および磁性部材17と接合される前の駆動用磁石13は、着磁されていない。なお、本形態では、駆動用磁石13と接合される前のカバー部材10の表面および磁性部材17の表面に、ニッケルメッキ層を覆うようにスズメッキ層が形成されていないが、ニッケルメッキ層を覆うようにスズメッキ層が形成されても良い。ただし、スズメッキ層は、後述の誘導加熱によって溶融して変色するため、レンズ駆動装置1の外周面を構成するカバー部材10には、スズメッキ層が形成されていないことが好ましい。
【0047】
本形態では、駆動用磁石13に接合される前の4個の磁性部材17は、4個の磁性部材17を一体化するための連結部材20によって連結されており、連結部材20によって連結された4個の磁性部材17は、磁性部材原体21となっている。磁性部材原体21は、全体として、厚さが略一定の平板状に形成されている。連結部材20は、図5(A)に示すように、略V形状に形成される2個の第1基部20aと、2個の第1基部20aを繋ぐ2個の第2基部20bと、第1基部20aから外周側へ突出する連結部20cとを備えている。この連結部材20は、駆動用磁石13と磁性部材17との接合後に除去される。
【0048】
連結部材20では、1個の第1基部20aに2個の連結部20cが形成されており、連結部20cによって、1個の第1基部20aと2個の磁性部材17とが繋がれている。連結部20cと磁性部材17との間には、連結部20cと磁性部材17とを繋ぐ接続部22が形成され、第1基部20aと第2基部20bとの間には、第1基部20aと第2基部20bとを繋ぐ接続部23が形成されている。接続部22は、その先端22aに向かうにしたがって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されている。また、連結部20cの、接続部22側の部分は、その先端に向かうにしたがって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されている。接続部23の幅は、略V形状に形成される第1基部20aの幅よりも狭くなっている。
【0049】
カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とを接合する際には、まず、接合用治具に形成される窪みの中へ磁性部材原体21をセットして、磁性部材原体21を位置決めする。
【0050】
その後、接合用治具に形成される4個のガイド部材25(図4参照)のそれぞれに4個の駆動用磁石13のそれぞれを押し当てて、駆動用磁石13を磁性部材17上にセットする。ガイド部材25は、図4に示すように、略L形状に形成されており、駆動用磁石13の第1側面13aをガイド部材25の内側面に押し当てると、第1側面13aが磁性部材17の第1端面17aと同一平面状に配置され、駆動用磁石13の第2側面13bが磁性部材17の第2端面17bと略平行に配置されて、磁性部材17上に駆動用磁石13がセットされる。その後、4個の駆動用磁石13の第2側面13bに当接するように形成された略円柱状の入れ子(図示省略)がセットされて、駆動用磁石13が位置決めされる。
【0051】
その後、カバー部材10の底部10aの下面と駆動用磁石13の上端面とが当接するように、駆動用磁石13および磁性部材原体21にカバー部材10をかぶせて、カバー部材10をセットする。このときには、カバー部材10の筒部10bの内周面がガイド部材25の外側面に案内されて、カバー部材10が位置決めされる。
【0052】
その後、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21を誘導コイルの中に配置する。また、カバー部材10と駆動用磁石13とが密着し、かつ、駆動用磁石13と磁性部材原体21とが密着するように加圧しながら、誘導コイルに電流を供給する。誘導コイルに電流が供給されると、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21に生じる渦電流の作用で、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21が加熱されて、駆動用磁石13の表面のスズメッキ層が溶融する。すなわち、駆動用磁石13の表面のスズメッキ層は、誘導加熱によって溶融する。また、誘導コイルへの電流の供給を停止すると、溶融したスズ系金属が固化して接合層15、18が形成され、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材原体21とが接合層15、18によって接合される。なお、誘導加熱時には、カバー部材10、駆動用磁石13および磁性部材原体21は、約230℃〜300℃に加熱される。
【0053】
その後、磁性部材原体21の連結部材20を除去する。具体的には、まず、接続部23を、繰り返しで折り曲げて切断することで、図5(B)に示すように、第2基部20bを除去する。その後、連結部20cと接続部22との境界を、繰り返しで折り曲げて切断することで、図3に示すように、第1基部20aを除去する。連結部材20が除去された後の磁性部材17には、図4に示すように、接続部22が繋がっている。なお、本形態では、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17とが接合された後に、4個の駆動用磁石13を同時に着磁する。
【0054】
(磁性部材と連結部材との接続部分の構成)
図6(A)は、図5(A)のG部の構成を説明するための拡大図であり、図6(B)は、図6(A)のH−H断面の断面図である。図7(A)は、図4のJ部の拡大図であり、図7(B)は、図7(A)のK−K断面の断面図である。
【0055】
図7(A)に示すように、第2端面17bの2箇所には、曲面状に切り欠かれた切欠部17fが形成されている。接続部22は、2個の切欠部17fの間に形成されており、接続部22の基端は、磁性部材17に繋がっている。また、上述のように、接続部22は、その先端22aに向かって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されている。具体的には、接続部22の幅は、図7(A)に示すように、その先端22aに向かうにしたがって次第に狭くなり、接続部22の厚さは、図7(B)に示すように、その先端22aに向かうにしたがって次第に薄くなっている。
【0056】
接続部22の上面(駆動用磁石13側の面)は、その基端から先端22aに向かうにしたがって下側へ傾斜する(すなわち、駆動用磁石13から離れる方向へ傾斜する)傾斜面22bとなっている。すなわち、接続部22の上面(傾斜面22b)は、磁性部材17の上面(駆動用磁石13側の面)よりも駆動用磁石13から離れる方向へ窪んでいる。また、接続部22の下面(駆動用磁石13側の面と反対側の面)は、その基端から先端22aに向かうにしたがって上側へ傾斜する(すなわち、駆動用磁石13に近づく方向へ傾斜する)傾斜面22cとなっている。すなわち、接続部22の下面(傾斜面22c)は、磁性部材17の下面17c(駆動用磁石13側の面と反対側の面)よりも駆動用磁石13に近づく方向へ窪んでいる。
【0057】
接続部22は、図7(A)に示すように、光軸方向から見たときに、駆動用磁石13の輪郭の中に配置されている。すなわち、接続部22の先端22aは、光軸方向から見たときに、駆動用磁石13の第2側面13bよりも突出していない。
【0058】
また、上述のように、連結部20cの、接続部22側の部分は、接続部22の先端22aに向かって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されている。具体的には、連結部20cの、接続部22側の部分の幅は、図6(A)に示すように、接続部22の先端22aに向かうにしたがって次第に狭くなっている。また、この部分の先端側の厚さは、図6(B)に示すように、先端22aに向かうにしたがって次第に薄くなっている。
【0059】
連結部20cの、接続部22側の部分の先端側の上面(駆動用磁石13側の面)は、接続部22の先端22aに向かうにしたがって下側へ傾斜する(すなわち、駆動用磁石13から離れる方向へ傾斜する)傾斜面20dとなっている。すなわち、この部分の上面(傾斜面20d)は、連結部20cの上面よりも駆動用磁石13から離れる方向へ窪んでおり、磁性部材17の上面よりも駆動用磁石13から離れる方向へ窪んでいる。また、連結部20cの、接続部22側の部分の先端側の下面(駆動用磁石13側の面と反対側の面)は、先端22aに向かうにしたがって上側へ傾斜する(すなわち、駆動用磁石13に近づく方向へ傾斜する)傾斜面20eとなっている。すなわち、この部分の下面(傾斜面20e)は、連結部20cの下面よりも駆動用磁石13に近づく方向へ窪んでおり、磁性部材17の下面17cよりも駆動用磁石13に近づく方向へ窪んでいる。
【0060】
このように、磁性部材17と連結部材20との接続部分の上面には、接続部22の傾斜面22bと連結部20cの傾斜面20dとによってV溝状の凹部が形成されている。また、磁性部材17と連結部材20との接続部分の下面には、接続部22の傾斜面22cと連結部20cの傾斜面20eとによってV溝状の凹部が形成されている。
【0061】
本形態では、傾斜面22bの傾斜角度と傾斜面22cの傾斜角度とが略等しくなっている。また、傾斜面20dの傾斜角度と傾斜面20eの傾斜角度とが略等しくなっている。また、傾斜面22b、22cの傾斜角度と傾斜面20d、20eの傾斜角度とは異なっている。具体的には、傾斜面20d、20eの傾斜角度は、傾斜面22b、22cの傾斜角度よりも緩やかになっている。本形態の傾斜面20dは、連結部材20側から接続部22の先端22aに向かうにしたがって駆動用磁石13から離れる方向へ傾斜する第2の傾斜面である。
【0062】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、カバー部材10および磁性部材17と接合される前の駆動用磁石13の表面のスズメッキ層が溶融、固化して形成された接合層18によって、駆動用磁石13と磁性部材17とが接合されている。そのため、接着剤を用いて駆動用磁石13と磁性部材17とを固定するときのような接着剤の塗布量や塗布位置の厳密な管理を行わなくても、駆動用磁石13と磁性部材17との間から接合層18がはみ出さない。したがって、本形態では、駆動用磁石13や駆動用コイル14の小型化に起因する駆動力の低下を防止するために、駆動用磁石13と駆動用コイル14との隙間を狭くした場合であっても、駆動用磁石13、磁性部材17および接合層18と駆動用コイル14との隙間を精度良く形成することが可能になり、その結果、可動体2側と固定体3側との干渉を防止することが可能になる。すなわち、本形態では、駆動用磁石13と駆動用コイル14との隙間を狭くした場合であっても、可動体2側と固定体3側との干渉を防止して、可動体2を適切に移動させることが可能になる。
【0063】
また、本形態では、駆動用磁石13と磁性部材17との間から接合層18がはみ出さないため、駆動用磁石13、磁性部材17および接合層18とスリーブ8の外周面との隙間を精度良く形成することが可能になる。したがって、駆動用磁石13の内周側においても、可動体2側と固定体3側との干渉を防止することが可能になる。
【0064】
本形態では、駆動用磁石13に接合される前の4個の磁性部材17は、連結部材20によって連結され、一体化されている。そのため、本形態では、分割された4個の磁性部材17と4個の駆動用磁石13とを接合する場合と比較して、磁性部材17と駆動用磁石13との接合作業が容易になる。また、本形態では、駆動用磁石13に接合される際の4個の磁性部材17間の相対位置精度を高めることが可能になり、その結果、組立後のレンズ駆動装置1において、4個の磁性部材17間の相対位置精度を高めることが可能になる。
【0065】
本形態では、連結部材20が接続されていた接続部22は、光軸方向から見たときに、駆動用磁石13の輪郭の中に配置されている。そのため、本形態では、接続部22によって光軸方向への可動体2の移動が妨げられることはない。ここで、本形態では、光軸方向から見たときに、接続部22が駆動用磁石13の輪郭の中に配置されているため、磁性部材17と駆動用磁石13とを接合する際に駆動用磁石13と連結部材20との間に溶融したメッキのフィレットが形成されると、連結部材20を除去するときに、駆動用磁石13の表面からニッケルメッキ層が剥離するおそれがあり、駆動用磁石13の表面からニッケルメッキ層が剥離すると、駆動用磁石13に錆が発生して、駆動用磁石13の磁力が低下するおそれがある。
【0066】
本形態では、接続部22の上面(傾斜面22b)は、磁性部材17の上面よりも駆動用磁石13から離れる方向へ窪んでおり、かつ、連結部20cの、接続部22側の部分の先端側の上面(傾斜面20d)も、磁性部材17の上面よりも駆動用磁石13から離れる方向へ窪んでいる。そのため、本形態では、駆動用磁石13と連結部材20との間に溶融したメッキのフィレットが形成されるのを防止することが可能になる。特に本形態では、傾斜面20dの傾斜角度が傾斜面22bの傾斜角度よりも緩やかになっているため、接続部22が駆動用磁石13の輪郭の中に配置されていても、傾斜面20dの連結部20c側の端部と駆動用磁石13の第2側面13bとの距離D1(図6(B)参照)を離すことが可能になる。したがって、本形態では、駆動用磁石13と連結部材20との間に溶融したメッキのフィレットが形成されるのを効果的に防止することが可能になる。その結果、本形態では、連結部材20を除去する際の、駆動用磁石13の表面からのニッケルメッキ層の剥離を防止することが可能になる。
【0067】
また、本形態では、傾斜面22bの傾斜角度が傾斜面20dの傾斜角度よりも急になっているため、傾斜面22bの磁性部材17側の端部と駆動用磁石13の第2側面13bとの距離D2(図6(B)参照)を近づけることが可能になる。したがって、本形態では、駆動用磁石13と磁性部材17との接合面積を広くして、駆動用磁石13と磁性部材17との接合強度を高めることが可能になる。
【0068】
本形態では、接続部22の下面(傾斜面22c)は、磁性部材17の下面17cよりも、駆動用磁石13に近づく方向へ窪んでいる。そのため、本形態では、連結部材20を除去する際に、接続部22の先端の下面側にカエリが生じたとしても、可動体2の上方向への可動範囲を規制する規制面となる磁性部材17の下面17cからカエリが突出するのを防止することが可能になる。また、本形態では、プレスの打ち抜き加工で形成された磁性部材17は、そのダレ側が磁性部材17の下面17cとなるように配置されているため、打ち抜き加工時に生じたカエリが下面17cから突出することはない。したがって、本形態では、連結部材20を除去する際に生じるカエリおよび打ち抜き加工時に生じるカエリに起因して、可動体2の可動範囲が狭くなるのを防止することが可能になる。
【0069】
また、本形態では、プレスの打ち抜き加工で形成された磁性部材17は、そのカエリ側が磁性部材17の上面となるように配置されているため、打ち抜き加工時に生じたカエリを接合層18に食い込ませることが可能になる。したがって、本形態では、打ち抜き加工時に生じたカエリに起因して、駆動用磁石13に対して磁性部材17の位置がずれるのを抑制することが可能になる。
【0070】
本形態では、接続部22は、その先端22aに向かって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成され、連結部20cの、接続部22側の部分は、接続部22の先端22aに向かって、その幅が狭くなるとともにその厚みが薄くなるように形成されている。そのため、本形態では、磁性部材原体21と4個の駆動用磁石13とを接合した後、接続部22の先端22aを境にして、連結部材20を除去しやすくなる。
【0071】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0072】
上述した形態では、接続部22の下面は、磁性部材17の下面17cよりも駆動用磁石13に近づく方向へ窪んでおり、連結部20cの、接続部22側の部分の先端側の下面は、磁性部材17の下面17cよりも駆動用磁石13に近づく方向へ窪んでいる。この他にもたとえば、磁性部材17の下面17cが、可動体2の上方向への可動範囲を規制する規制面となっていないのであれば、接続部22の下面は、磁性部材17の下面17cと同一平面上に配置されても良いし、連結部20cの、接続部22側の部分の先端側の下面は、磁性部材17の下面17cと同一平面上に配置されても良い。
【0073】
上述した形態では、傾斜面20dの傾斜角度は、傾斜面22bの傾斜角度よりも緩やかになっている。この他にもたとえば、傾斜面20dの傾斜角度と傾斜面22bの傾斜角度とが同じであっても良い。また、上述した形態では、磁性部材17と連結部材20との接続部分の上面に、傾斜面22bと傾斜面20dとによってV溝状の凹部が形成されているが、このV溝状の凹部に代えて、磁性部材17と連結部材20との接続部分の上面に、U溝状等の凹部が形成されても良い。同様に、上述した形態では、磁性部材17と連結部材20との接続部分の下面に、傾斜面22cと傾斜面20eとによってV溝状の凹部が形成されているが、このV溝状の凹部に代えて、磁性部材17と連結部材20との接続部分の下面に、U溝状等の凹部が形成されても良い。
【0074】
上述した形態では、接続部22の厚さは、その先端22aに向かうにしたがって次第に薄くなっている。この他にもたとえば、接続部22の厚さは、磁性部材17の厚さよりも薄く、かつ、一定となっていても良い。この場合には、たとえば、接続部22の上面は、磁性部材17の上面と略平行になっており、接続部22の下面は、磁性部材17の下面17cと略平行になっている。また、上述した形態では、接続部22の幅は、その先端22aに向かうにしたがって次第に狭くなっているが、接続部22の幅は、一定であっても良い。
【0075】
上述した形態では、光軸方向から見たときの磁性部材17の外形は、駆動用磁石13の外形よりもわずかに大きくなっている。この他にもたとえば、光軸方向から見たときの磁性部材17の外形と駆動用磁石13の外形とが略一致していても良い。この場合には、磁性部材17の第2端面17bが駆動用磁石13の第2側面13bと同一平面状に配置される。また、上述した形態では、光軸方向から見たときの磁性部材17の形状は、光軸方向から見たときの駆動用磁石13と同様の略直角三角形状となっているが、光軸方向から見たときの磁性部材17の形状は、光軸方向から見たときの駆動用磁石13と異なっていても良い。
【0076】
上述した形態では、駆動機構4は、カバー部材10の筒部10bの内周面に沿って配置される1個の駆動用コイル14を備えているが、駆動機構4は、駆動用コイル14に代えて、略三角筒状に巻回され、その内周側が駆動用磁石13の側面と所定の隙間を介して対向配置される4個の駆動用コイルを備えていても良い。この場合には、この駆動用コイルは、上下方向から見たときの形状が略直角三角形状となるように巻回され、駆動用コイルの内周面と駆動用磁石13の側面とが所定の隙間を介して略平行になるように、スリーブ8に固定されている。
【0077】
上述した形態では、駆動用磁石13は略三角柱状に形成されているが、駆動用磁石13は略三角柱状以外の略多角柱状、略円柱状または略楕円柱状に形成されても良い。また、上述した形態では、駆動用磁石13は固定体3に固定され、駆動用コイル14は可動体2に固定されているが、駆動用磁石13が可動体2に固定され、駆動用コイル14が固定体3に固定されても良い。
【0078】
上述した形態では、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17との接合時に、駆動用磁石13の表面に形成されるスズメッキ層を誘導加熱によって溶融させている。この他にもたとえば、カバー部材10と駆動用磁石13と磁性部材17との接合時に、カバー部材10や磁性部材17等にヒータチップを接触させて、駆動用磁石13の表面に形成されるスズメッキ層を溶融させても良いし、カバー部材10と駆動用磁石13との境界部、および、駆動用磁石13と磁性部材17との境界部にレーザを照射することで、駆動用磁石13の表面に形成されるスズメッキ層を溶融させても良い。
【0079】
上述した形態では、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状となるように形成されているが、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見たときの形状が略四角形状以外の略多角形状となるように形成されても良いし、光軸方向から見たときの形状が略円形状あるいは略楕円形状となるように形成されても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 レンズ駆動装置
2 可動体
3 固定体
4 駆動機構
13 駆動用磁石
14 駆動用コイル
17 磁性部材
17c 下面(磁性部材の、駆動用磁石側の面と反対の面)
18 接合層
20 連結部材
20d 傾斜面(第2の傾斜面)
21 磁性部材原体
22 接続部
22a 先端
22b 傾斜面(接続部の、駆動用磁石側の面)
22c 傾斜面(接続部の、駆動用磁石側の面と反対の面)
L 光軸
Z 光軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7