特許第5919075号(P5919075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5919075-保育器の手入れ窓用パッキン及び保育器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919075
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】保育器の手入れ窓用パッキン及び保育器
(51)【国際特許分類】
   A61G 11/00 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A61G11/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-91072(P2012-91072)
(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-215528(P2013-215528A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】松原 一雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 照巳
(72)【発明者】
【氏名】本間 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 涼子
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−088466(JP,A)
【文献】 特開昭64−083792(JP,A)
【文献】 特開2010−236236(JP,A)
【文献】 特開平11−241573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
児収容室の側方の処置扉に設けられ、手入れ扉により開閉される手入れ窓の内周縁部を形成する手入れ窓用パッキンであって、前記手入れ窓の内周縁部に設けられる環状の取付部と、前記手入れ扉に当接するシール片とからなり、前記取付部は、前記シール片よりも硬度が高く、その外周部に、取り付け用凹溝が周方向に沿って形成され、前記シール片は、前記取付部の内周部に接着され、前記取付部の内周面を延長するようにかつ該取付部の上方かつ半径方向外方に向けて拡がるように延びる薄肉状に形成されており、前記シール片と前記取付部との対向面に凸部がそれぞれ一体に設けられ、前記手入れ扉の閉止により前記シール片が押しつぶされたときに前記凸部どうしが押圧状態に当接することを特徴とする保育器の手入れ窓用パッキン。
【請求項2】
シリコーンゴムからなり、前記取付部のゴム硬度は60°〜80°であり、前記シール片のゴム硬度は30°〜50°であることを特徴とする請求項1記載の保育器の手入れ窓用パッキン。
【請求項3】
児収容室の側方に配置される処置扉に手入れ窓を開閉可能な手入れ扉を有する手入れ窓ユニットが設けられるとともに、該手入れ窓ユニットに請求項1又は2記載の手入れ窓用パッキンが備えられた保育器であって、前記処置扉に開口部が形成されるとともに、前記手入れ窓ユニットに、前記開口部の内周部に取り付けられる環状のベース枠と、前記手入れ扉を開閉自在に支持するヒンジ部と、手入れ窓を閉止状態に保持可能なロック部とが設けられ、前記ベース枠の内周部に前記手入れ窓用パッキンにおける取付部の取り付け用凹溝が嵌合することにより、該手入れ窓用パッキンが前記ベース枠に取り付けられ、前記凸部が前記ヒンジ部側に配置されていることを特徴とする保育器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、児収容室の側面に手入れ扉により開閉される手入れ窓が形成され、その手入れ窓を閉じたときに密封するパッキン及びこのパッキンを備えた保育器に関する。
【背景技術】
【0002】
未熟児等に対して適切な生理的環境を提供するための保育器には、児のケア時に器内の環境温度への影響を少なくするために、児収容室の側面を構成する処置扉に手入れ窓が形成され、この手入れ窓を開閉する手入れ扉が設けられている。日常のケアで、手入れ窓の開閉の頻度は多く、その際、児にストレスがかからないように、開閉音は静かでなければならない。また器内の環境温度等に影響を与えないように、手入れ窓は、シール性を確保しなければならない。
【0003】
特許文献1には、保育器の手入れ窓の周縁に沿う周縁部と、手入れ窓を部分的に被覆する被覆部とを具備する手入れ窓用パッキンが開示されている。このパッキンは、軟質ポリ塩化ビニルの射出成形により一体に形成されている。
また、特許文献2に開示の保育器では、手入れ窓の周縁に、手入れ扉との当接部の大部分がひれ状部となったシリコーンゴム製のパッキンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−28198号公報
【特許文献2】特開2010−88466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、手入れ窓の開口周縁部は、ケアする人によって汚れやすいため、清拭・消毒が、確実且つ容易に出来なければならない。児収容室内でケアした後の手が最も触れ易いのがパッキンであり、これを簡単に清拭・消毒できることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、手入れ扉を閉めるときに静かに閉まり、確実にシールできるとともに、簡単に清拭・消毒できる手入れ窓用パッキン及びこのパッキンを備えた保育器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の保育器は、児収容室の側方の処置扉に設けられ、手入れ扉により開閉される手入れ窓の内周縁部を形成する手入れ窓用パッキンであって、前記手入れ窓の内周縁部に設けられる環状の取付部と、前記手入れ扉に当接するシール片とからなり、前記取付部は、前記シール片よりも硬度が高く、その外周部に、取り付け用凹溝が周方向に沿って形成され、前記シール片は、前記取付部の内周部に接着され、前記取付部の内周面を延長するようにかつ該取付部の上方かつ半径方向外方に向けて拡がるように延びる薄肉状に形成されており、前記シール片と前記取付部との対向面に凸部がそれぞれ一体に設けられ、前記手入れ扉の閉止により前記シール片が押しつぶされたときに前記凸部どうしが押圧状態に当接することを特徴とする。
【0008】
パッキンを取付部とシール片との二つの部品により構成し、取付部の硬度をシール片より高くしたので、このパッキンを着脱する際に、取付部の一部をつかんで変形させれば、広い範囲で追従するように変形させることができ、全体を容易に着脱することができる。もちろん、シール片は硬度が低いので、手入れ扉を開閉する際の音は静かであり、かつ閉じた際の弾性変形により確実に密封することができる。したがって、このパッキンは、硬度の低いシール片による静かな開閉及びその弾性変形による密封性の確保と、硬度の高い取付部による着脱作業性の向上との両方の機能を満足させることができる。
なお、このパッキンの材料としては、合成樹脂、ゴム等を用いることができる。
この場合、シール片は硬度が低いため、これを単独で変形させても、密封性を確保し得る弾性力が発生するだけで、大きな反発力を生じさせることはない。本発明では、シール片と取付部との対向面に凸部を設けたことにより、手入れ扉の閉止時に凸部どうしが押圧して大きな反発力を生じさせることができ、手入れ扉を開ける方向に付勢することができる。
【0009】
本発明の手入れ窓用パッキンにおいて、シリコーンゴムからなり、前記取付部のゴム硬度は60°〜80°であり、前記シール片のゴム硬度は30°〜50°であるとよい。
取付部のゴム硬度が60°未満では、着脱の際に局部的に変形や伸びが生じて着脱しにくく、80°を超えると硬すぎるために変形が少なくなり、着脱作業を困難にする。一方、シール片のゴム硬度が30°未満では軟らかすぎて密封性を損なうおそれがあり、50°を超えると、手入れ扉を閉じる際に大きな力が必要になるとともに、当接時の衝撃音も大きくなる。
【0012】
また、発明の保育器は、児収容室の側方に配置される処置扉に手入れ窓を開閉可能な手入れ扉を有する手入れ窓ユニットが設けられるとともに、該手入れ窓ユニットに前記凸部を有する手入れ窓用パッキンが備えられた保育器であって、前記処置扉に開口部が形成されるとともに、前記手入れ窓ユニットに、前記開口部の内周部に取り付けられる環状のベース枠と、前記手入れ扉を開閉自在に支持するヒンジ部と、手入れ窓を閉止状態に保持可能なロック部とが設けられ、前記ベース枠の内周部に前記手入れ窓用パッキンにおける取付部の取り付け用凹溝が嵌合することにより、該手入れ窓用パッキンが前記ベース枠に取り付けられ、前記凸部が前記ヒンジ部側に配置されている。
閉じた状態の手入れ扉に開く方向に大きい付勢力を作用させることができ、手入れ扉の回動をより円滑に行わせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手入れ窓用パッキンが、硬度の低いシール片による静かな開閉及びその弾性変形による密封性の確保と、硬度の高い取付部による着脱作業性の向上との両方の機能を有しているので、手入れ扉を閉めるときに静かに閉まり、確実にシールできるとともに、着脱作業が容易で簡単に清拭・消毒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の手入れ窓用パッキンの斜視図である。
図2図1のA−A線に沿う縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態の保育器における手入れ扉ユニットの一つを示す正面図である。
図4図3のB−Bに沿う断面図である。
図5図3のC−C線に沿う断面図である。
図6】手入れ窓ユニットにおけるベース枠の斜視図である。
図7】保育器の全体斜視図である。
図8】保育器の左側処置扉を正面視した正面図である。
図9図8に対する右側面図である。
図10図8に示す状態から左側処置扉を開けた状態を示す正面図である。
図11図7に示す状態からキャノピー及び加熱器を上昇させた状態を示す斜視図である。
図12】本発明の他の実施形態のパッキンを示す斜視図である。
図13図13の矢印D方向から見たパッキンの要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の保育器の一実施形態について説明する。
[保育器の全体構成]
保育器1は、図7図9に全体を示したように、キャスター2により移動自在な架台3と、この架台3の上に垂直に立設された支柱4と、この支柱4の上端に設けられたフレーム5と、このフレーム5の上に設置された基台6と、この基台6の上に設けられ児収容室7を囲むフード8と、フレーム5の一端部でフード8の側方位置に垂直に設けられた2本のガイド柱9,10と、これらガイド柱の一方(ガイド柱10)の上端に設けられた加熱器11とを備えており、ガイド柱の他方(ガイド柱9)の上端には、フード8の天井を構成するキャノピー(天蓋)12が取り付けられている。
支柱4は内部にフレーム5を上下移動する昇降機構を内蔵しており、架台3の側部に、昇降機構を操作するためのペダル13が設けられている。
【0016】
フード8は、児を寝かせる臥床台15が設置される床板16と、児の左右に配置される左側処置扉17及び右側処置扉18と、児の足側に配置される足側処置扉19と、児の頭側に配置される頭側処置扉20と、これら左右側処置扉17,18、足側処置扉19及び頭側処置扉20により囲まれた児収容室7の上方を閉塞するキャノピー12とにより、ほぼ直方体状に構成される。左側処置扉17、右側処置扉18、足側処置扉19、頭側処置扉20及びキャノピー12は、ほぼ全体が透明樹脂によって構成されており、外部から児収容室7内の児を目視確認できる。
また、図7図9ではキャノピー12を下降させてフード8を閉じた状態、図11はキャノピー12を上昇させて児収容室7の上方を開放した状態を示している。また、この図11においては、加熱器11も上昇させ、児収容室7を加熱した状態を示している。
このように、この保育器1は、図7図9に示す閉鎖型保育器、及び図11に示す開放型保育器の両方の形態の機能を有している。
【0017】
各処置扉17〜20のうち、頭側処置扉20は、児収容室7の頭側に立設した垂直姿勢に維持される。これに対して、左右側処置扉17,18及び足側処置扉19は、その下端部が基台6に対して水平な軸(図示略)を中心に揺動自在に取り付けられており、児に対する診察、処置などを任意の方向から行えるようにするために、これら処置扉17〜19の一つあるいは複数を下方に倒すことにより、児収容室7の側方の一部又は三方を開放状態とすることができる。図10は左側処置扉17を回動させて、児収容室7の一側方を開放状態としている。
閉鎖型保育器として使用する場合は、各処置扉17〜19とも閉鎖した状態とされ、児のケアのために左右側処置扉17,18を開閉する。開放型保育器として使用する場合は、児のケアのために左側処置扉17、右側処置扉18及び足側処置扉19の三方を開閉することができる。
【0018】
さらに、左側処置扉17、右側処置扉18及び足側処置扉19には手入れ窓ユニット25,26が設けられ、閉鎖型保育器として使用する際に、処置扉17〜19を起立させた状態のまま手入れ窓27を手入れ扉28,29により開閉することができるようになっている。頭側処置扉20には、ケーブルやチューブ等を挿通させるためのスリットを有するグロメット部材30が取り付けられている。
また、児収容室7内の床板16の上には、児を載せる臥床台15が設けられている。この臥床台15は、長さ方向の中央部が水平な軸(図示略)により揺動自在に支持されるとともに、頭側の一端部が昇降機構31に支持され、この一端部を持ち上げることにより、水平方向に対して傾斜した姿勢に保持できるようになっている。その昇降機構31は、フード8の外側に設けられる。
【0019】
ガイド柱9,10は、同軸上にロッド32が収容され、このロッド32を上下移動させる昇降機構が内蔵されている。キャノピー12は、ガイド柱9のロッド32の上端に取り付けられており、その下降位置で各処置扉17〜20の上端に当接して児収容室7を閉鎖し、上昇位置では、図11に示すように、処置扉17〜20から児の処置のための十分な間隔を明けて退避できるようになっている。加熱器11は、他方のガイド柱10のロッド(図には見えないが、図11のガイド柱9と同様に設けられる)の上端に水平な軸33を中心に回動可能に取り付けられており、その下降位置では、図7等に示すように、ガイド柱10とほぼ平行な垂直方向に折り畳まれた収納姿勢とされ、上昇位置では、垂直方向に対して所定の角度に起こされて児収容室7に上方から熱線を供給する加熱姿勢とされる。
【0020】
[処置扉及び手入れ窓ユニットの構成]
足側処置扉19及び頭側処置扉20は一枚の壁により構成されるが、左側処置扉17及び右側処置扉18は、二重壁構造の内壁35と外壁36とを備えており、これら内壁35と外壁36との間に、基台6内から送風される温風を下方から上方に向けて流して児収容室7内に供給するための隙間37が形成されている。
これら左側処置扉17及び右側処置扉18には、内壁35と外壁36とを貫通する開口部41,42が、各処置扉17,18においてその正面視で左右に並んで二つずつ形成されており、一方、足側処置扉19には、その壁を貫通する一つの開口部42が形成されている。そして、左右側処置扉17,18の外壁36に形成される開口部42と足側処置扉19に形成される開口部42とにそれぞれ手入れ窓ユニット25,26が設けられている。これら手入れ窓ユニット25,26は、手入れ扉28,29が左右側処置扉用と足側処置扉用とで若干異なるが、その他の形状、大きさはすべて同じである。
以下では、左右側処置扉17,18に設けられる手入れ窓ユニット25について説明し、足側処置扉19に設けられる手入れ窓ユニット26については異なる部分のみ説明する。
【0021】
手入れ窓ユニット25は、図3図5に示すように、開口部42に固定される戸当たり枠体45と、この戸当たり枠体45に回動自在に支持される手入れ扉28とから構成される。
戸当たり枠体45は、開口部42の内周縁に取り付けられる環状のベース枠46と、このベース枠46の内周縁に取り付けられるパッキン47と、ベース枠46の一端部に設けられ手入れ扉28を支持するヒンジ部48と、ベース枠46の他端部に設けられ手入れ扉28を閉止状態に保持可能なロック部49とから構成される。
ベース枠46は、図6に示すように、全体が硬質樹脂により環状に形成され、開口部42の内側に嵌合される枠体部51に、ヒンジ部48及びロック部49の取り付け箇所となる比較的広い面積の板状部53,54が一体に形成されている。枠体部51の内周部には、パッキン47に嵌まり込む二つの凸条55が周方向に沿って形成されている。その一方の凸条55は、水平方向内方に向けて形成され、他方の凸条55は、処置扉17,18の表面に垂直に形成されていることにより、これら二つの凸条55が90°の角度で交差するアングル状に形成されている。
【0022】
[手入れ窓用パッキンの構成]
パッキン47は、図1及び図2に示すように、ベース枠46の枠体部51に取り付けられる環状の取付部56と、この取付部56の内周部から内周面を延長するように延びるシール片57とからなり、その内側開口により手入れ窓27を構成している。このパッキン47は、取付部56、シール片57ともシリコーン系ゴムにより形成されるが、取付部56は、シール片57に比べてゴム硬度が高く、シール片57は軟質に形成されている。
具体的には、取付部56のゴム硬度は60°〜80°、シール片57のゴム硬度は30°〜50°が好ましい。取付部56は、ベース枠46に着脱されるものであり、硬度が60°未満では、着脱の際に局部的に変形や伸びが生じて着脱しにくく、硬度が80°を超えると硬すぎるために変形が少なくなり、着脱作業を困難にする。一方、シール片57は、手入れ扉28に当接して手入れ窓27を密封するものであり、硬度が30°未満では軟らかすぎて密封性を損なうおそれがあり、硬度が50°を超えると、手入れ扉28を閉じる際に大きな力が必要になるとともに、当接時の衝撃音も大きくなる。このため、取付部56の硬度は60°〜80°、シール片57の硬度は30°〜50°が好ましい。例えば、取付部56が70°で、シール片57が40°がより好ましい。
なお、このゴム硬度は、デュロメータにより、通常ゴム用としてJIS K 6253に準拠して測定される。
【0023】
また、取付部56の外周部には、ベース枠46の枠体部51における二つの凸条55に被さるように嵌合する凹溝58が周方向に沿って形成されている。一方、取付部56の内周面は、その厚さ方向の断面が滑らかな円弧状となるように形成される。さらに、取付部56の外周部の一部、後述する手入れ扉28のヒンジ部48側に向けて配置される部分に、張り出し部59が一体に形成されている。この張り出し部59は、凹溝58よりもシール片57側に設けられており、裏面が平坦面に形成され、ベース枠46の凸条55に凹溝58を嵌合状態に取り付けたときに、張り出し部59の裏面がベース枠46の板状部53の表面に接触させられる。
【0024】
シール片57は、その内周面が、取付部56の内周面の円弧を取付部56の上方に延長するように、取付部56の内周面から面一に延びる滑らかな円弧状に形成されている。また、先端部60に向かうに従って半径方向外方に拡がるように形成され、その先端部60ではシール片57の裏面が取付部56の上面に対向するように配置されている。
この場合、これら取付部56とシール片57とは別々に作製され、加硫接着により一体化されている。図2の符号Sが接着界面を示しており、取付部56の内周の上部には凹部61が周方向に沿って形成され、この凹部61に係合する基部62がシール片57に一体に形成されている。基部62は、シール片57の先端部60に比べて厚肉に形成されている。そして、これら取付部56とシール片57とはそれぞれ別個に成形した後、熱プレスをかけて加硫と同時に接着することにより一体化される。
【0025】
[手入れ窓ユニットのその他の構成]
一方、ベース枠46の一方の板状部53にヒンジ部48が設けられ、他方の板状部54にロック部49が設けられている。
ヒンジ部48では手入れ扉28を軸65により回動自在に支持している。ロック部49では、手入れ扉28の先端の舌片部81を係止可能なラッチ部材84と、このラッチ部材84の係止状態を解除するための解除レバー85とが設けられている。
手入れ扉28は、手入れ窓27を閉鎖した時にパッキン47のシール片57に当接される板状部91と、この板状部91におけるパッキン47への当接部を除く中央部分を突出させパッキン47の内側に挿入される突起部92と、板状部91の一端部に設けられる軸保持部66と、他端部に設けられる舌片部81とから構成される。板状部91は突起部92に対してフランジ状に張り出しており、突起部92は、手入れ窓27を閉鎖状態としたときに左右側処置扉17,18の内壁35の開口部41内に入り込み、この内壁35の内面とほぼ面一となる寸法に形成される。
なお、足側処置扉19に設けられる手入れ窓ユニット26は、その手入れ扉29が、左右側処置扉17,18の手入れ窓ユニット25における手入れ扉28のような突起部92がなく、手入れ窓27の全体を覆うほぼ平坦な板状部を有している点が異なるが、その他の構成は手入れ窓ユニット25と全く同じであり、説明を省略する。
【0026】
このように構成した手入れ窓ユニット25において、手入れ扉28により手入れ窓27を閉じた状態から、手入れ窓27を開放する場合、ロック部49における解除レバー85を処置扉17,18に向けて押圧すると、ラッチ部材84が舌片部81の係止状態を解除する。手入れ扉28は、閉止状態ではパッキン47のシール片57を弾性変形させながら押圧しており、また、ヒンジ部48の軸65に取り付けられたねじりコイルばね(図示略)により開く方向に付勢されているので、ロック部49によりロック状態が解除されると、パッキン47の弾性力及びねじりコイルばねの付勢力により、開く方向に回動し、手入れ窓27を開放する。
【0027】
一方、開放した手入れ窓27を閉じる場合は、手入れ扉28を回動して、舌片部81をロック部49に上方から処置扉17,18に向けて押圧するように押し込むと、舌片部81がラッチ部材84に係止され、手入れ扉28が閉止状態にロックされる。このとき、手入れ扉28の板状部91がパッキン47のシール片57に当接する。このシール片57は硬度が低く、30°〜50°に形成されているので、柔軟性に富み、手入れ扉28を閉じたときの衝撃音を緩和することができ、静かに閉めることができ、また、閉止時にはシール片57の弾性変形により手入れ窓27を確実に密封することができる。
【0028】
次に、清拭・消毒等のためにパッキン47を着脱する場合について説明する。
このパッキン47を手入れ窓ユニット25のベース枠46から取り外す場合は、取付部56を変形させながらベース枠46の内周縁から外せばよい。この場合、取付部56の側方に突出している張り出し部59をつかんで外すと、作業し易い。また、この取付部56は硬度が高く、60°〜80°の範囲に設定されているので、張り出し部59など、周方向の一部分をつかんで手入れ窓27の内方に向けてパッキン47を変形させた場合に、取付部56の比較的広い範囲で追従するように変形して、全体を容易に取り外すことができる。
【0029】
また、パッキン47を取り付ける場合は、周方向の一部分からベース枠46に取り付けていくことになるが、その場合も取付部56の硬度が高いので、外周部の凹溝58の広い範囲に一度にベース枠46の凸条55を嵌合させることができ、順次周方向に沿って嵌合する操作を容易にすることができる。
このように、このパッキン47は、その着脱が容易であることから、清拭・消毒等の作業を容易にすることができる。
【0030】
図12及び図13は本発明の手入れ窓用パッキンの他の実施形態を示している。
このパッキン95は、取付部56とシール片57とを一体化した基本構造は先の実施形態と同様であるが、これら取付部56とシール片57とが一体化したパッキン95の周方向の一部、具体的には処置扉17,18に取り付けたときにヒンジ部48に向けて配置される部分に、シール片57と取付部56との対向面に凸部96,97がそれぞれ一体に設けられている。これら凸部96,97は、手入れ扉28が閉止状態となってシール片57が押しつぶされたときに、凸部96,97どうしが押圧状態に当接するようになっている。
【0031】
したがって、手入れ扉28を閉じてロックした状態とすると、図13の矢印で示すようにシール片57とともに凸部96,97が押圧され、鎖線で示すように変形する。この凸部96,97の変形により、弾性力(反発力)が手入れ扉28を開く方向に付勢することになり、ロック部49を解除したときに、その付勢力が補助することによって手入れ扉28をより円滑に開くことができる。
この場合、凸部96,97は、必ずしもシール片57と取付部56との両方になければならないわけではなく、少なくともシール片57に設けられ、手入れ扉28を閉じたときに取付部56の上面に押圧接触するように配置されていればよい。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 保育器
2 キャスター
3 架台
4 支柱
5 フレーム
6 基台
7 児収容室
8 フード
11 加熱器
12 キャノピー
17 左側処置扉
18 右側処置扉
19 足側処置扉
20 頭側処置扉
25,26 手入れ窓ユニット
27 手入れ窓
28 手入れ扉
30 グロメット部材
35 内壁
36 外壁
37 隙間
41,42 開口部
45 戸当たり枠体
46 ベース枠
47 パッキン
48 ヒンジ部
49 ロック部
51 枠体部
53 板状部
54 板状部
55 凸条
56 取付部
57 シール片
58 凹溝
59 張り出し部
60 先端部
61 凹部
62 基部
65 軸
81 舌片部
84 ラッチ部材
85 解除レバー
91 板状部
92 突起部
95 パッキン
96,97 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13