(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919076
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形方法及び加熱装置
(51)【国際特許分類】
B29C 53/04 20060101AFI20160428BHJP
B29C 43/22 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
B29C53/04
B29C43/22
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-94845(P2012-94845)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-220626(P2013-220626A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】500003453
【氏名又は名称】クオドラント・プラスチック・コンポジット・ジャパン 株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592253345
【氏名又は名称】中部エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】白木 行雄
(72)【発明者】
【氏名】舘 正喜
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 高司
【審査官】
大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−019998(JP,A)
【文献】
特開2007−268799(JP,A)
【文献】
国際公開第87/002618(WO,A1)
【文献】
特開2004−042534(JP,A)
【文献】
特開2004−230854(JP,A)
【文献】
特開平09−066563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 − 43/58
B29C 53/00 − 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートにおいて成形時に折曲部として加工される局所の両側領域にのみそれぞれ加熱装置により予め加熱する加熱工程と、
その加熱工程終了後の繊維強化熱可塑性樹脂シートの前記両側領域をロールフォーミング装置により加工して成形する成形工程と
を連続処理する繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形方法において、
前記加熱装置は、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートが通過する加熱路を挟む両側にそれぞれ加熱手段と遮熱板とを備え、前記加熱工程において、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートの移動に伴い、前記遮熱板に設けた貫通部が、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートで成形時に折曲部として加工される局所の両側領域に相対向した際に、前記遮熱板の貫通部と、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートにおける前記局所の両側領域との間の間隔を、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対し直交する幅方向に沿う加熱寸法が大きくなるに従って大きく設定し、前記貫通部を通る加熱手段の熱により前記局所の両側領域を加熱することを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形方法。
【請求項2】
前記加熱工程において、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートで成形時に折曲部として加工される局所の両側領域のうち、折曲後に折曲向き側になる一方の側の領域で成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対し直交する幅方向に沿う加熱寸法を、折曲後に折曲向きに対する反対向き側になる他方の側の領域で成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対し直交する幅方向に沿う加熱寸法より小さく設定することを特徴とする請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形方法。
【請求項3】
成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートが通過する加熱路を挟む両側にそれぞれ加熱手段と遮熱板とを備え、遮熱板に設けた貫通部を通る加熱手段の熱により成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートの両側を加熱する繊維強化熱可塑性樹脂シートの加熱装置において、
前記遮熱板の貫通部は、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートにおいて成形時に折曲部として加工される局所の両側領域に相対向し、
前記遮熱板の貫通部と、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートにおける前記局所の両側領域との間の間隔は、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対し直交する幅方向に沿う加熱寸法が大きくなるに従って大きくなることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂シートの加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂シートを成形する成形方法、並びに、その成形方法の実施に適した加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスタンピング成形法(例えば下記の特許文献1を参照)では、加熱した熱可塑性樹脂板を金型に投入した後に型締めにより加圧して成形品を得る。また、従来のロールフォーミング成形法では、並設した冷間ロール間に金属薄板を通すことにより複数回に分けて順次成形加工して成形品を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−23319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のスタンピング成形法は、アンダーカットのない単品成形に適しているが、成形品に成形機や金型を原因とする寸法的制限があるとともに、長尺品やアンダーカット形状品の成形に適していない。一方、従来のロールフォーミング成形法は、長尺品やアンダーカット形状品の成形に適し、金属薄板を冷間ロール成形する場合に採用され、ガラスなどの繊維を積層して強化した熱可塑性樹脂シートを冷間ロール成形する場合には、成形時の折曲部に歪みが生じたり、折曲部の加工精度が悪くなったり、折曲部の強度が低下するなどの問題があるために通常は行われていない。
【0005】
この発明は、ガラスなどの繊維を積層して強化した熱可塑性樹脂シートをロールフォーミングにより成形する場合に、折曲部の歪みや折曲部の加工精度の悪化や折曲部の強度の低下を抑制することを可能とする成形方法、並びに、折曲部の歪みや折曲部の加工精度の悪化や折曲部の強度の低下を抑制するために採用する加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態(
図1,3に示す第1実施形態、
図2,3に示す第2実施形態)の図面の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発
明にかかる繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形方法においては、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)で成形時に折曲部(22,23)として加工される局所(24,25)の両側領域(26,27)にのみそれぞれ加熱装置(2)により予め加熱する加熱工程と、その加熱工程終了後の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の前記両側領域(26,27)をロールフォーミング装置(3)により加工して成形する成形工程とを連続処理する
繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形方法において、前記加熱装置(2)は、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)が通過する加熱路(7)を挟む両側にそれぞれ加熱手段(8,9)と遮熱板(10,11)とを備え、前記加熱工程において、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の移動に伴い、前記遮熱板(10,11)に設けた貫通部(15,16)が、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)で成形時に折曲部(22,23)として加工される局所(24,25)の両側領域(26,27)に相対向した際に、前記遮熱板(10,11)の貫通部(15,16)と、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)における前記局所(24,25)の両側領域(26,27)との間の間隔(S15,S16)を、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の搬送方向(X)に対し直交する幅方向(Y)に沿う加熱寸法(W26,W27)が大きくなるに従って大きく設定し、前記貫通部(15,16)を通る加熱手段(8,9)の熱により前記局所(24,25)の両側領域(26,27)を加熱する。
【0007】
請求項1の発明では、繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)をロールフォーミング成形する前に、成形時に折曲部(22,23)として加工される局所(24,25)の両側領域(26,27)にのみそれぞれ予め加熱して、その局所(24,25)に熱による柔軟性を持たせたので、折曲部(22,23)を成形する際に、折曲部(22,23)の歪みや折曲部(22,23)の加工精度の悪化や折曲部(22,23)の強度の低下を抑制することができる。
また、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)に対する貫通部(15,16)の間隔(S15,S16)を変えることにより、局所(24,25)の両側領域(26,27)に対する加熱寸法(W26,W27)を変えて局所(24,25)の両側領域(26,27)を所望範囲で加熱することができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発
明にかかる加熱工程において、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)で成形時に折曲部(22,23)として加工される局所(24,25)の両側領域(26,27)のうち、折曲後に折曲向き側になる一方の側の領域(26)で成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の搬送方向(X)に対し直交する幅方向(Y)に沿う加熱寸法(W26)を、折曲後に折曲向きに対する反対向き側になる他方の側の領域(27)で成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の搬送方向(X)に対し直交する幅方向(Y)に沿う加熱寸法(W27)より小さく設定する。請求項2の発明では、折曲部(22,23)において折曲後に折曲向き側になる一方の側と折曲後に折曲向きに対する反対向き側になる他方の側とで加工範囲が異なるため、それらの加工範囲に合わせて局所(24,25)の両側領域(26,27)における加熱寸法(W26,W27)を設定したので、折曲部(22,23)の歪みや折曲部(22,23)の加工精度の悪化や折曲部(22,23)の強度の低下をより一層抑制することができる。
【0010】
請求項
3の発
明にかかる繊維強化熱可塑性樹脂シートの加熱装置おいては、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)が通過する加熱路(7)を挟む両側にそれぞれ加熱手段(8,9)と遮熱板(10,11)とを備え、遮熱板(10,11)に設けた貫通部(15,16)を通る加熱手段(8,9)の熱により成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の両側を加熱する
繊維強化熱可塑性樹脂シートの加熱装置において、前記遮熱板(10,11)の貫通部(15,16)は、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)において成形時に折曲部(22,23)として加工される局所(24,25)の両側領域(26,27)に相対向し、前記遮熱板(10,11)の貫通部(15,16)と、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)における前記局所(24,25)の両側領域(26,27)との間の間隔(S15,S16)は、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の搬送方向(X)に対し直交する幅方向(Y)に沿う加熱寸法(W26,W27)が大きくなるに従って大きくなる。
【0011】
請求項
3の発明では、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)で成形時に折曲部(22,23)として加工される局所(24,25)の両側領域(26,27)を加熱することができる。
また、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)に対する貫通部(15,16)の間隔(S15,S16)を変えることにより、局所(24,25)の両側領域(26,27)に対する加熱寸法(W26,W27)を変えて局所(24,25)の両側領域(26,27)を所望範囲で加熱することができる。
【0014】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項1〜
2の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第
4の発
明にかかる加熱工程において、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)は加熱装置(2)を一定の移動速度で通過してロ−ルフォーミング装置(3)に至る。第
4の発明では、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)の局所(24,25)の両側領域(26,27)を平均的に加熱することができる。
【0015】
請求項1〜
2の発明のうちいずれか一つの発明または第
4の発明を前提とする第
5の発
明にかかる加熱工程において、加熱される前記局所(24,25)以外の非加熱部にのみ加熱装置(2)の案内ローラ(6)を接触させて成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)を搬送する。第
5の発明では、加熱された局所(24,25)の両側領域(26,27)に対する案内ローラ(6)の接触を避けて両側領域(26,27)における加熱温度の低下を抑制して、折曲部(22,23)の歪みや折曲部(22,23)の加工精度の悪化や折曲部(22,23)の強度の低下をより一層抑制することができる。
【0016】
請求項1〜
2の発明または第
4〜
5の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第
6の発
明において、成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)は、加熱装置(2)及びロ−ルフォーミング装置(3)を通過する際、加熱装置(2)において搬送方向(X)の上流側及び下流側でそれぞれ案内ローラ(5,6)により支持されて加熱路(7)を通過した後、各案内ローラ(5,6,12)により順次支持されながら、ロ−ルフォーミング装置(3)において搬送方向(X)の上流側及び下流側でそれぞれ案内ローラ(12)により支持されて成形ローラ(13,14)を通過する。第
6の発明では、加熱装置(2)及びロ−ルフォーミング装置(3)において成形時に繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)を安定して円滑に搬送することができる。
【0017】
請求項
3の発明を前提とする第
7の発
明にかかる加熱装置(2)において、両遮熱板(10,11)間の加熱路(7)で搬送方向(X)の上流側及び下流側にそれぞれ案内ローラ(5,6)を設けた。第
7の発明では、加熱装置(2)において成形前の繊維強化熱可塑性樹脂シート(1)を安定して円滑に搬送することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、長尺品やアンダーカット形状品の成形に適したロールフォーミングにより、ガラスなどの繊維を積層して強化した熱可塑性樹脂シート(1)を成形する場合に、折曲部(22,23)の歪みや折曲部(22,23)の加工精度の悪化や折曲部(22,23)の強度の低下を抑制することを可能とする成形方法、並びに、折曲部(22,23)の歪みや折曲部(22,23)の加工精度の悪化や折曲部(22,23)の強度の低下を抑制するために採用する加熱装置(2)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は第1実施形態にかかる加熱装置及びロールフォーミング装置を概略的に示す側面図であり、(b)はその加熱装置を概略的に示す側面図である。
【
図2】(a)は第2実施形態にかかる加熱装置及びロールフォーミング装置を概略的に示す側面図であり、(b)はその加熱装置を概略的に示す側面図である。
【
図3】(a)(b)は繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形途中状態とその際の成形ローラとを概略的に示す側面図であり、(c)は繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形品を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の第1実施形態について
図1,3を参照して説明する。
図1(a)に示すように、成形前のシート1(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)の搬送方向Xに沿って、加熱装置2とロールフォーミング装置3とが順次並べられて配設されている。
【0021】
加熱装置2において、コンベヤ(図示せず)により運ばれた成形前のシート1が搬入される搬入ローラ4に対する搬送方向Xの下流側で、搬送方向Xの上流側と下流側とに設けられた両案内ローラ5,6間には、加熱路7を挟む上下両側にそれぞれヒータ8,9(加熱手段)と遮熱板10,11とが設けられている。搬入ローラ4に搬入された成形前のシート1は、上流側の案内ローラ5と加熱路7と下流側の案内ローラ6とを通過してロールフォーミング装置3に搬入される。ロールフォーミング装置3においては、各案内ローラ12と各案内ローラ12間の成形ローラ13,14とが搬送方向Xに沿って並設されている。
【0022】
図1(b)に示すように、上下両側のヒータ8,9間に設けられた上下両側の遮熱板10,11において、上下方向で相対向して貫設された複数組の貫通孔15,16(貫通部)は、搬送方向Xに対し直交する幅方向Yに沿って所定間隔で並設されているとともに、搬送方向Xに沿って延びる長孔状に形成されている。ちなみに、各貫通孔15,16は、成形前のシート1の搬送速度に応じて、成形前のシート1において搬送方向Xに沿う長手方向の長さ以上またはその長さ以下の長さに設定することができる。各貫通孔15,16の開口15a,16aは、加熱路7に搬入されたシート1の上下両側に面し、幅寸法W15,W16(開口寸法)を有しているとともに、シート1の上下両側に対し間隔S15,S16を有している。ヒータ8,9及び遮熱板10,11については、着脱して交換したり、上下の取付位置を変更したりすることができる。また、ヒータ8,9の温度調節を可能にすることができる。
【0023】
図3(c)に示すように、成形品17は、底壁部18と、幅方向Yに沿う幅方向両側で底壁部18から立ち上がる側壁部19と、幅方向両側の側壁部19から溝20をあけて相対向して折り曲げられた天壁部21とを有している。底壁部18と幅方向両側の側壁部19との間、幅方向両側の側壁部19と幅方向両側の天壁部21との間には、それぞれ、搬送方向Xに沿う長手方向の全体に延びる折曲部22,23が設けられている。
【0024】
このような成形品17は、下記の加熱工程と成形工程とで連続処理されて成形される。
ちなみに、上側の遮熱板10における各貫通孔15の開口15aの幅寸法W15は、下側の遮熱板11における各貫通孔16の開口16aの幅寸法W16より小さく設定され、また、その各貫通孔15の開口15aとシート1の上側との間隔S15と、その各貫通孔16の開口16aとシート1の下側との間隔S16とは、互いに同一に設定されている。
【0025】
成形前のシート1は、加熱装置2及びロ−ルフォーミング装置3を一定の移動速度で通過する際、加熱装置2において搬送方向Xの上流側及び下流側でそれぞれ案内ローラ5,6により支持されて加熱路7を通過した後、各案内ローラ5,6,12により順次支持されながら、ロ−ルフォーミング装置3において搬送方向Xの上流側及び下流側でそれぞれ案内ローラ12により支持されて成形ローラ13,14を通過する。
【0026】
加熱工程においては、
図1(b)に示すように成形前のシート1が加熱路7における所定位置に搬入されると、上下両側のヒータ8,9が上下両側の遮熱板10,11を介して成形前のシート1を加熱する。そのため、上下両側の遮熱板10,11における各貫通孔15,16の開口15a,16aが対向する中間の両局所24と外側の両局所25とは、各開口15a,16aを通って若干広がるヒータ8,9の熱により搬送方向Xに沿う帯状に加熱される。その各局所24,25において、成形前のシート1の上側で開口15aに面する帯状の加熱領域26で幅方向Yに沿う加熱寸法W26は上側の開口15aの幅寸法W15に応じて決まり、また、成形前のシート1の下側で開口16aに面する帯状の加熱領域27で幅方向Yに沿う加熱寸法W27は下側の各開口16aの幅寸法W16に応じて決まり、上側の加熱領域26の加熱寸法W26が下側の加熱領域27の加熱寸法W27より小さくなっている。
【0027】
成形工程において、
図1(a)(b)に示すように加熱装置2により予め加熱されたシート1がロールフォーミング装置3の成形ローラ13を通過する際には、成形前のシート1が中間の両局所24で
図3(a)に示すように折り曲げられて、
図3(c)に示す成形品17における底壁部18から幅方向両側の折曲部22を介して立ち上がる幅方向両側の壁部28を有する成形途中品29が成形される。また、その成形途中品29がロールフォーミング装置3の成形ローラ14を通過する際には、壁部28が外側の両局所25で
図3(b)に示すように折り曲げられて、
図3(c)に示すように幅方向両側の側壁部19から幅方向両側の折曲部23を介して折り曲げられた天壁部21を有する成形品17が成形される。成形前のシート1における各局所24,25の上下両側加熱領域26,27のうち、上側加熱領域26は成形品17の折曲部22,23において折曲後に折曲向き側になる内側アール面22a,23aとなり、下側加熱領域27は成形品17の折曲部22,23において折曲後に折曲向きに対する反対向き側になる外側アール面22b,23bとなる。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態について第1実施形態との相違点を中心に
図2,3を参照して説明する。
図2(a)(b)に示す第2実施形態の加熱装置2は、
図1(a)(b)に示す第1実施形態の加熱装置2と比較して、遮熱板10,11を変更している。すなわち、
図2(b)に示すように、上側の遮熱板10における各貫通孔15の開口15aの幅寸法W15と、下側の遮熱板11における各貫通孔16の開口16aの幅寸法W16とは、互いに同一に設定され、また、その各貫通孔15の開口15aとシート1の上側との間隔S15は、その各貫通孔16の開口16aとシート1の下側との間隔S16より小さく設定されている。第1実施形態では、同じ間隔S15,S16で、各開口15a,16aの幅寸法W15,W16に差を持たせて成形前のシート1に対する加熱寸法W26,W27にも差を持たせているが、第2実施形態では、同じ幅寸法W15,W16で、間隔S15,S16に差を持たせることにより、加熱寸法W26,W27にも差を持たせている。同じ幅寸法W15,W16でも間隔S15より間隔S16を大きくすれば、ヒータ8,9の熱の広がり度合が大きくなって加熱寸法W26より加熱寸法W27が大きくなる。
【0029】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) シート1をロールフォーミング成形する前に、成形時に折曲部22,23として加工される局所24,25の上下両側加熱領域26,27にのみそれぞれ予め加熱したので、その局所24,25が熱による柔軟性を持ち、折曲部22,23を成形する際に、折曲部22,23の歪みや折曲部22,23の加工精度の悪化や折曲部22,23の強度の低下を抑制することができる。
【0030】
(2) 成形前のシート1で局所24,25の上下両側加熱領域26,27のうち、折曲後に折曲向き側になる上側加熱領域26で成形前のシート1の幅方向Yに沿う加熱寸法W26を、折曲後に折曲向きに対する反対向き側になる下側加熱領域27で成形前のシート1の幅方向Yに沿う加熱寸法W27より小さく設定したので、上側加熱領域26及び下側加熱領域27の加工範囲に合わせて加熱寸法W26,W27を変えて、折曲部22,23の歪みや折曲部22,23の加工精度の悪化や折曲部22,23の強度の低下をより一層抑制することができる。
【0031】
(3) 成形前のシート1の移動に伴い、遮熱板10,11の貫通孔15,16が局所24,25の上下両側加熱領域26,27に相対向した際に、貫通孔15,16を通るヒータ8,9の熱により局所24,25の上下両側加熱領域26,27を加熱するので、局所24,25の上下両側加熱領域26,27を所望範囲で加熱することができる。
【0032】
(4) 貫通孔15,16の幅寸法W15,W16を変えたり、成形前のシート1に対する貫通孔15,16の間隔S15,S16を変えたりすることにより、局所24,25の上下両側加熱領域26,27に対する加熱寸法W26,W27を変えて、局所24,25の上下両側加熱領域26,27を所望範囲で加熱することができる。
【0033】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 図示しないが、成形前のシート1において加熱される各局所24,25以外にその局所24,25に対し幅方向Yで隣接する非加熱部を有する場合には、加熱装置2において、加熱された局所24,25の上下両側加熱領域26,27に対する案内ローラ6の接触を避けて上下両側加熱領域26,27における加熱温度の低下を抑制して、折曲部22,23の歪みや折曲部22,23の加工精度の悪化や折曲部22,23の強度の低下をより一層抑制するために、幅方向Yで分割されて配置された複数の案内ローラ6を非加熱部にのみ接触させて成形前のシート1を搬送する。
【0034】
・ ヒータ8,9以外の加熱手段を採用する。
【符号の説明】
【0035】
1…繊維強化熱可塑性樹脂シート、2…加熱装置、3…ロールフォーミング装置、7…加熱路、8,9…ヒータ(加熱手段)、10,11…遮熱板、15,16…遮熱板の貫通孔(貫通部)、22,23…成形品の折曲部、24,25…シートの局所、26,27…局所の加熱領域、X…シートの搬送方向、W26,W27…加熱領域の加熱寸法、W15,W16…貫通孔の幅寸法(開口寸法)、S15,S16…間隔。