特許第5919077号(P5919077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919077
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/017 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   A01K89/017
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-95502(P2012-95502)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-220087(P2013-220087A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137878
【氏名又は名称】株式会社ミヤマエ
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】宮前 利昭
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−227183(JP,A)
【文献】 特開平07−246050(JP,A)
【文献】 特開平10−080056(JP,A)
【文献】 特開2001−286250(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3000736(JP,U)
【文献】 特開2005−210963(JP,A)
【文献】 特開2010−166839(JP,A)
【文献】 特開2001−224288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/012−89/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの釣糸を巻き取る正転方向の回転をクラッチを介してスプールに伝達すると共に、前記ハンドルの回転を補助するモータを備えた魚釣用リールであって、ハンドルの回転センサと、スプールの回転センサと、これら2つの回転センサからの検出信号に基づいて前記モータを制御する制御部とを備え、当該制御部は、前記ハンドルの回転中に前記スプールの逆転を検知したとき前記モータを駆動した後、前記ハンドルが回転し、且つ、前記スプールの正転中は前記ハンドルの回転速度に応じて前記モータの回転速度を調整することを特徴とした電動アシスト魚釣用リール。
【請求項2】
制御部は、スプールの逆転を検知するタイミングに代えて、ハンドルの回転中に前記スプールの回転速度と比較してクラッチのすべり量を算出し、当該すべり量が所定値を超えたことを検知したとき、モータを駆動した後、前記ハンドルが回転し、且つ、前記スプールの正転中は前記すべり量が前記所定値以下となるように前記モータの回転速度を調整する請求項1記載の電動アシスト魚釣用リール。
【請求項3】
制御部は、さらにモータの負荷電流を検知し、ハンドルの回転中、前記モータの負荷電流が所定の上限値を超えたことを検知したとき、当該負荷電流が前記上限値以下となるように前記モータの回転速度を下げる請求項1または2記載の電動アシスト魚釣用リール。
【請求項4】
制御部は、モータの負荷電流が所定の下限値以下であることを検知したとき、前記モータを停止する請求項3記載の電動アシスト魚釣用リール。
【請求項5】
制御部は、ハンドルが停止し、且つ、モータの負荷電流が所定の上限値を超えたことを検知したとき、前記モータを停止する請求項3または4記載の電動アシスト魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンドルによる釣糸の手動巻き上げをモータにより補助(アシスト)する魚釣用リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の魚釣用電動リールは、モータの性能やプログラム制御の発達により、初心者や力の弱い者でも大魚や深海魚を手軽に釣り上げるようになっている。その反面、経験者にとっては魚とのやりとりを実感しにくく、釣り本来の楽しみが犠牲になっている一面も有している。
【0003】
そこで、釣り本来の楽しみと釣り人の負担軽減を両立させるために、ハンドルの巻き上げ動作をモータにより補助する魚釣用リール(以下、「電動アシストリール」という。)が提案されている(特許文献1〜5)。特許文献1のリールは、手動と電動の双方にて巻き上げ可能なリールにおいて、モータの出力軸とスプールの回転軸とを結ぶ動力伝達経路にトルク調整装置を装備したことを特徴とする。特許文献2のリールは、ハンドル操作でモータの回転速度を制御するリールにおいて、モータの巻取り動力に対する反力をハンドル軸に作用させることにより、モータにかかる負荷を釣り人がハンドルを通じて感知できるようにしたことを特徴とする。特許文献3のリールは、ハンドル操作時の動力を検出して、その動力に応じて予め設定している補助比率でモータを駆動させることに技術的特徴を有する。特許文献4のリールは、ハンドルの正回転時にハンドルにかかるトルクが一定以上となったときモータを駆動すると共に、ハンドルの回転数及びトルクの強弱に比例して駆動モータの出力を変化させることを特徴としたものである。特許文献5のリールは、ハンドルの回転とモータの回転とを検出して、2つの回転速度差が所定以下となるようにモータを制御することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−175126号公報
【特許文献2】特開平7−227183号公報
【特許文献3】特開平11−308949号公報
【特許文献4】特開2000−32887号公報
【特許文献5】特開2001−286250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動アシストリールは、釣り本来の楽しみを得ることが目的であるから、ハンドルによる巻き上げ操作が優先されなければならない。この点に関して、特許文献1のリールは、最初にモータを駆動させることが前提であり、ハンドル操作を停止してもモータ単独で巻き上げ動作を継続するから、むしろ、ハンドル操作によってモータ動力をアシストする構成であり、上記目的に沿うものではない。
【0006】
また、上記目的のためには、アシスト量が過度とならない範囲でモータを制御する必要があるが、特許文献2のリールは、ハンドルを操作すれば常にモータによる巻き上げアシストが行われるものであるから、ハンドル操作のみで魚を釣り上げることがある状況においてもモータが駆動してしまい、魚とのやりとりが十分に実感できない。そのうえ、ハンドルを停止してもモータ駆動は継続するため、バッテリの消耗が激しいという問題もある。
【0007】
特許文献4のリールは、ハンドルにかかるトルクが一定以上にならなければモータが駆動しないが、当該トルクを検出する手段が必要であるため、リールの構造が複雑化するという別の問題を有している。
【0008】
ところで、実際の釣りでは、常にハンドルを操作するのではなく、特に魚が元気で引きが強い間は、まず釣竿をしゃくり上げて釣糸を引き寄せ、次にこの状態から釣竿を下ろすと同時にハンドルを操作して釣糸を巻き上げる動作とを繰り返すことが多い。つまり、モータアシストを最も必要とするのは魚が元気な間であるが、このような態様に特許文献4のリールを用いれば、シャクリ動作のときにハンドルにかかるトルクが所定以上となって不用意にモータが駆動してしまう恐れがある。したがって、モータアシスト(モータ始動)の契機となるパラメータとして、ハンドルにかかるトルクを採用することは、実際の釣り態様に沿わないといえる。
【0009】
他方、特許文献5のリールは、アシストモードのとき、ハンドルとモータの双方の回転数を検出して、その差が所定以下となるようにモータを制御することから、ハンドルの操作時にはモータが必ず駆動するものと理解できる。したがって、特許文献5のリールも、アシストモードを選択したときは、ハンドル操作時に常にモータが駆動するものであるから、特許文献2のリールと同様の課題を有している。
【0010】
本発明は上述した課題を解決するためになされもので、その目的とすることは、ハンドル操作時に、より適確にモータアシストすることができる魚釣用リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、ハンドルの釣糸を巻き取る正転方向の回転をクラッチを介してスプールに伝達すると共に、前記ハンドルの回転を補助するモータを備えた魚釣用リールであって、ハンドルの回転センサと、スプールの回転センサと、これら2つの回転センサからの検出信号に基づいて前記モータを制御する制御部とを備え、当該制御部は、前記ハンドルの回転中に前記スプールの逆転を検知したとき前記モータを駆動した後、前記ハンドルが回転し、且つ、前記スプールの正転中は前記ハンドルの回転速度に応じて前記モータの回転速度を調整するという手段を用いた。
【0012】
上記手段によれば、釣糸の巻き上げはハンドル操作(手動)により行うことを主とし、魚の引きが強く、スプールが釣糸繰り出し方向に回転(逆転)したことを契機としてモータを駆動する。モータは、スプール逆転検知時のハンドルの回転速度を上昇させるような回転速度で駆動する。これによってハンドル操作による釣糸の巻き上げ動力が補助され、釣り人の負担を軽減する。その後、ハンドルの回転速度が変化すれば、これに連動してモータの回転速度も変化させる。これによって、モータのアシスト量を適正な範囲とすることができる。
【0013】
上記手段において、2つの回転センサは、ハンドルとスプールそれぞれの回転の有無を検出するうえ、ハンドルの回転センサでは少なくとも回転速度、スプールの回転センサは少なくとも回転方向を検出する。そして、スプールの回転センサに基づいてスプールの逆転が検知されたタイミングでモータを駆動(始動)するものであるが、これとは別の手段として、制御部は、ハンドルの回転中に前記スプールの回転速度と比較してクラッチのすべり量を算出し、当該すべり量が所定値を超えたことを検知したとき、モータを駆動した後、前記ハンドルが回転し、且つ、前記スプールの正転中は前記すべり量が前記所定値以下となるように前記モータの回転速度を調整することも可能である。スプールが逆転する場合と同様、クラッチが所定以上すべった状態も、魚の引きが強く、電動アシストすることが好ましいからである。
【0014】
上記二つの手段において、制御部は、さらにモータの負荷電流を検知し、ハンドルの回転中、前記モータの負荷電流が所定値を超えたことを検知したとき、当該負荷電流が前記上限値以下となるように前記モータの回転速度を下げることが好ましい。魚の引き(負荷)に応じてアシスト量を調整すると共に、モータを保護するためである。これと共に、制御部は、モータの負荷電流が所定の下限値以下であることを検知したとき、前記モータを停止することが好ましい。モータの負荷電流が所定の下限値以下となれば、魚の引き(負荷)が弱く、ハンドルのみで巻取り動作を行うことができ、釣り本来の楽しみに沿うからである。
【0015】
一方、制御部は、モータの駆動中に、ハンドルの回転が停止し、且つ、モータの負荷電流が所定以上となったとき、モータを停止することで、何らかの理由でハンドル操作が中断したときであっても、モータの焼き付きを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スプールが逆転またはクラッチが所定量以上にすべったときにモータを駆動するため、電動アシストのタイミングが適正で、ハンドルを操作すれば常にモータが駆動するリールに比べて、モータの消費電力も抑えられる。また、モータの回転速度は、ハンドルの回転速度に応じて調整するため、適度なアシスト量によって、釣り本来の楽しみを体感しながら、楽に釣糸を巻き上げることができる。
【0017】
また、ハンドルの操作中は、モータの負荷電流が所定以下となるようにモータの回転速度を制御するので、負荷電流上昇によりモータが焼き付く等の故障が防止され、巻取り中に電動アシストが得られなくなるという事態も回避することができる。一方、モータの負荷電流が下限値以下となればモータを停止するため、例えば魚の引きが弱くなれば、ハンドルの巻き上げ操作のみで魚を釣り上げることができる。
【0018】
さらに、モータが駆動している電動アシスト中にハンドルの操作が停止した場合、モータの負荷電流が所定以上となれば、モータを停止するので、いかなる場面においても、モータを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示したリール全体の概略説明図
図2】回転センサの構成例を示す説明図
図3】制御部の構成例を示す説明図
図4】制御部による処理手順を示したフローチャート
図5】クラッチのすべり量とモータ始動のタイミングを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明リールの一実施形態を示す概略説明図であり、図中、1は回転により釣糸を繰り出したり、巻き上げたりするスプール、2は回転操作によりスプール1に巻き上げ動力を付与するハンドル、3はハンドル2の巻き上げ動力を補助(アシスト)するモータである。
【0021】
スプール1は、両端をリール本体の側板間に回動可能に支持してなり、一方の端部にはハンドル2の伝達ギア2aと歯合する減速ギア1aを備えている。この減速ギア1aとスプール一端の間には制動板と摩擦板を積層したクラッチ4を装備している。これと反対側のスプール他端にはクラッチ4の圧接力を可変するツマミ5を設けている。これらクラッチ4とツマミ5によってドラグ機構を構成している。
【0022】
ハンドル2は、スプール1の回転軸と並列にリール本体の側板間に回動可能に支持したハンドル軸2bを備え、その一端にはスプール1の減速ギア1aと歯合する伝達ギア2aを設けると共に、他端にはノブ2cをハンドル軸2bから偏心した位置に設けている。
【0023】
モータ3は、その軸にハンドル2の伝達ギア2aと歯合するピニオンギア3aを有して、バッテリなどの図示しない外部電源から電力供給を受けて駆動し、駆動中、ハンドル2の巻き上げ動力を補助する。
【0024】
なお、伝達ギア2aと、減速ギア1a及びピニオンギア3aとは、それぞれ巻き上げ方向の回転のみを許容するワンウェイクラッチ(図示なし)を介して歯合させることで、釣糸の巻き上げ動作中、スプール1に逆転方向(釣糸の繰り出し方向の回転)の力が作用したとしても、ハンドル2及びモータ3にはこの逆転力が伝達しないようにしている。なお、これらワンウェイクラッチは、それぞれ単独でギア結合と切り離しを選択操作できるように構成されている。
【0025】
上述のような基本的な構成において、本発明では、スプール1とハンドル2について、これらの回転の有無、回転方向、回転速度を検知する回転センサ6・7を備えている。これら3要素を検出するために、スプール1の回転センサ6は、図2に示すように、スプール1のドラグ機構のツマミ5側の側面に、少なくとも3個のホール素子6a・6b・6cを回転軸回りに等間隔に設けると共に、これに対向してリール本体の側板に前記ホール素子6a・6b・6cを順にオンオフする磁石6dを設けてなる。
【0026】
当該構成によれば、ハンドル2の動力、若しくは魚の引きによって、スプール1が正転または逆転することで、3つのホール素子が順にオンされる。これを検出することによって、ハンドルが回転したと判別できる。そして、各ホール素子の信号発生間隔からハンドルの回転速度を計算することもできる。そして、各ホール素子にアドレスを付与することで、6a・6b・6c・6a・6b・・・の順でアドレスを検出すれば、スプール1は正回転(釣糸の巻き上げ方向回転)していると判別できる。一方、6a・6b・6c・6b・6a・・・となれば、スプール1は逆転していると判別することができる。
【0027】
ハンドル2の回転センサ7もスプール1の回転センサ6と同様に構成することができる。ただし、ハンドル2は上述したワンウェイカムによって逆転することがないため、ハンドル2の回転センサ7は回転の有無と、回転速度を検出対象とするものである。つまり、ハンドル2の回転センサ7については、ホール素子と磁石は一対一の関係でもよいが、検出精度の面からは、ホール素子を複数設けることが好ましい。また、ホール素子に代えて、磁気によりオンオフするリードスイッチを採用することも可能であり、さらには、ホール素子と磁石の組合せに代えて、光、音波あるいは電磁波等を用いた他の回転センサも利用することができる。
【0028】
次に、図1中、10は制御部であり、上記2つの回転センサ6・7から回転検出信号を入力して、予め設定した条件に基づいてモータのオンオフと回転速度を制御するものである。このような作用を行う制御部10の具体的構成としては、図3に示すように、設定条件を格納したハードディスク等のメモリ11と、当該メモリ11内のデータとセンサ6・7からの検出データを対比してモータ制御データを出力するプロセッサ等の処理部12と、該処理部12からのモータ制御データに基づきモータをPWM制御するPWM制御部13を例示することができる。ただし、制御部10は、回転センサ6・7の検出信号に基づいてモータ3を始動及び停止させ、さらに回転速度を可変できるものであれば、公知の技術を採用することができる。
【0029】
図4は、上記構成のリールについてモータによる電動アシストモードを選択した場合の処理手順を示したフローチャートである。ステップ(以下、単に「S」と表記する。)1では、ハンドル2の回転センサ7による検出結果に基づいて、ハンドル2が巻取り方向に正転しているかどうかを判別する。このS1においてハンドル2が釣り人によって操作されることによってYES判定の場合はS2に進む。ハンドル2が停止(静止)している場合は回転センサ7が検出信号を発せず、NO判定となり、モータ保護ルーチンCのS13に進む。なお、モータ保護ルーチンCの処理については後述する。
【0030】
S2ではスプール1の回転センサ6による検出結果に基づいて、スプール1が逆転しているかを判別する。つまり、そのときのドラグ機構の設定では魚の引きが大きくクラッチ4が完全に滑ると、スプール1は釣糸を繰り出す方向に逆転する。そして、スプール1の逆転を検知したYES判定の場合は、S3として制御部10がモータ3を駆動(始動)する。このときのモータ3の回転速度は、初期値として設定されている。そして、最初にモータ3を駆動したときは、一旦、スタートに戻り、ハンドルの回転有無およびスプールの回転方向を再度確認する。なお、ハンドル2を回転しているにも拘わらず、スプール1が逆転している間は、メインルーチンAであるS1・2の判別を繰り返すが、これによって、釣り人は、かかった魚に対して、現在のドラグ調整(クラッチ4の圧接力)が適正でないと判断でき、クラッチ4が滑らないようにツマミ5を締め増す作業を行うことができる。
【0031】
そして、スプール1の回転方向が正転となることによって、メインルーチンAのS2でNO判定とされれば、S4〜12からなるモータ制御ルーチンBに進む。このモータ制御ルーチンBでは、クラッチ4のすべり量とモータ3の負荷電流が所定値を超えないように、ハンドル2の回転速度に応じてモータ制御を行うものである。つまり、S4にてモータ3の駆動を判別してYES判定であれば、ハンドル2の回転速度を検出すると共に(S5)、スプール1の正転方向の回転速度を検出する(S6)。なお、S5・6の順序は逆であってもよい。また、S4でNO判定の場合はメインルーチンAに戻り、再度、モータ3の始動条件に当てはまるかを見直す。これは、当初、ハンドル2だけで巻取り操作を行っており、途中、スプール1が逆転することがない場合は、そのままハンドル2単独の操作を継続させ、過度に電動アシストしないようにするための処理である。
【0032】
S7では、制御部10がS5・6にて検出されたハンドル2とスプール1の回転速度を比較してクラッチ4のすべり量を演算すると共に、これに応じた条件を制御部10内のメモリ11から読み出してモータ3の回転速度を制御する。つまり、メモリ11にはすべり量の許容上限値が記憶され、制御部10は実際のすべり量が前記許容上限値内となるようにモータ3の回転速度を調整する。
【0033】
S7によるモータ3の回転速度の制御後は、モータ3の電流検出部(図示なし)によってモータ3の負荷電流を監視し(S8)、制御部10にて過負荷と判断されれば(S9)、モータ速度を下げる処理を行い(S10)、過負荷によるモータの焼き付きを防止している。一方、S9でNO判定となれば、さらにS11で実際の負荷電流が予め設定した下限値以下かどうか判別し、YES判定であれば、スプール1にかかる負荷が小さく、ハンドル2のみで釣糸を巻き上げることができることから、モータ3を停止する(S12)。何れの場合も、以降、リターン処理によってS1に戻る。
【0034】
ところで、本実施形態では、一度はスプール1が逆転し、モータアシストが実行されているにも拘わらず、ハンドル2が操作されない(手動巻取りが行われていない)ときに、モータ保護を目的としたモータ保護ルーチンCを有している。そのS13〜5ではモータ制御ルーチンBのS4〜9と同様の処理を行うが、このモータ保護ルーチンCの場合、S15にてモータ電流が過負荷状態にあることを検知すればモータ3を停止してモータ3の焼き付きを防止する。これによって、リールは手動・電動とも完全に巻取り停止の状態となり、メインルーチンAのスタートに戻る。この点、モータ制御ルーチンBのS10では、同じ過負荷状態であっても、モータ速度を下げることでアシスト状態を維持するもので、両ルーチンB・Cは異なったモータ制御を行う。なお、モータ保護ルーチンCのS13でのNO判定は、アシストモードを選択した後、モータ3を始動する必要がなく、ハンドル2の操作のみで釣糸を巻き上げているときに機能する。
【0035】
このようなモータ保護ルーチンCはアシストモードの処理から省略することも可能であり、その場合、代わる処理として、ハンドル操作を促すように、リール本体のモニタまたは/および音によって釣り人に警告することが望ましい。
【0036】
なお、上記実施形態では、モータ3の始動タイミングとして、スプール1が逆転したときに、これを契機としてモータ3を駆動するようにした。これは魚の引きが初期のドラグ調整を超えてクラッチが完全に滑っている状態であるが、モータ始動の契機は、スプール1が逆転に至らなくても、クラッチのすべり量が所定以上となったときであってもよい。すべり量が大きくなった場合も、スプール1が逆転するときと同様、魚の引きが強く、電動アシストすることが好ましいからである。即ち、図5のクラッチのすべり量とモータ始動タイミングの関係を示した説明図において、すべり量が最大となってスプール1が逆転するT1のタイミングのほか、このT1とクラッチがすべり始めるT2の間の任意のタイミングでモータ3を始動することも可能である。この場合、クラッチのすべり量は、ハンドル1とスプール2の回転速度の差に基づき、ギア比を考慮して算出することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 スプール
2 ハンドル
3 アシストモータ
4 クラッチ
6 スプールの回転センサ
7 ハンドルの回転センサ
10 制御部
図1
図2
図3
図4
図5