(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維強化プラスチック線材は、厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w)1.0mm〜10.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
前記強化繊維束の撚り回数は、5回/m〜20回/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
前記樹脂含浸された強化繊維束は、500g/本〜3000g/本の強さにて緊張されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
前記強化繊維束における前記強化繊維に対する前記マトリックス樹脂の含浸量は、体積比率(Vf)で36%〜60%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
前記強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、PBO(ポリフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維、ポリエステル繊維のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
前記高密度織物は、インチ長さ間の縦糸、緯糸の合計本数が210本以上投入された織物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
前記高密度織物は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、などの連続フィラメント糸の単独織物、若しくは、混合織物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載の連続した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、扁平形状の繊維強化プラスチック格子状筋は、主に、補強筋として土木建築構造物であるコンクリート構造物の中に埋め込まれて使用されている。
【0003】
本願添付の
図3(b)に、扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1の一例を示す。扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1は、通常、直角に交差して格子状に配置された複数の扁平形状繊維強化プラスチック線材(筋)、即ち、縦格子筋101と横格子筋102とを備えている。従来、各筋101、102は、主にガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の強化繊維を一方向に並べて、ビニルエステル樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維を複数積層し、硬化して形成される。扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋、即ち、FRP格子材1は、通常、各筋101、102は、筋幅(w1、w2)3〜10mm、厚さ(t)1〜5mm、であり、格子間距離(W1、W2)3〜15cmとされる。上述のように、各筋101、102は、互いに直交して配置されるが、所望に応じて互いに90度以外の所定の角度にて交差し、格子状となるように構成することも可能である。
【0004】
通常、強化繊維としてガラス繊維を使用した場合には、FRP格子材1は500N/mm
2以上の引張強度、30000N/mm
2以上の引張弾性率を有している。
【0005】
又、このような構成のFRP格子材1は、軽量で、耐食性であり、又、曲げ易く、施工性に優れている。また、図示するように、筋101、102の交差部分が他の筋部分と略同一平面上にあり、薄いシート状とされ、重ねてもかさばらない。
【0006】
特許文献1に、斯かる繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法が開示されている。特許文献1に記載される製造方法によれば、ベルトコンベアなどとされる担体に、未硬化樹脂材料を含浸させた連続繊維から成る線状縦部材を複数本、担体の進行方向に並列配置する。一方、この線状縦部材に対して直交するように、未硬化樹脂材料を含浸させた連続繊維から成る線状横部材を、担体の両端部でコの字状に折り返しながら線状縦部材の上に積層して格子状体とする。その後、この格子状体を押圧手段により上方から押圧して、縦部材と横部材の交点を圧着させた状態で、未硬化樹脂材料を熱硬化炉にて加熱硬化する。
【0007】
上記特許文献1に記載の発明によれば、繊維強化樹脂製格子状筋を連続的に製造することができる。
【0008】
しかしながら、本発明者らの研究実験の結果によれば、上記特許文献1に記載の繊維強化樹脂製格子状筋の製造方法によれば、線状縦部材及び線状横部材は、複数本の連続繊維を並列配置して、未硬化の樹脂を含浸させた繊維束であり、このような樹脂含浸繊維束からなる線状縦部材及び線状横部材を単に押圧手段にて押圧して格子状としているために、成形後の製品「格子状筋」に鋭いエッジ面が発生し、補強筋として使用する際、安全面での取り扱い性に問題があった。また、特許文献1に記載の方法では、メッシュの細かい、即ち、各筋の間隔W1、W2が小さい格子状筋を成形するのが困難である。
【0009】
本発明者らは、上記問題点を解決するべく多くの研究実験を行った結果、特許文献2に記載する本発明者らにより提案された丸形状繊維強化プラスチック線材の製造方法に注目した。
【0010】
特許文献2に開示される丸形状繊維強化プラスチック線材の第一の製造方法は、
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束に撚りを入れながら連続的に送給する工程、
(b)連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)樹脂含浸された強化繊維束を、所定の強さにて緊張させながら加熱して、強化繊維束の横断面を円形状として樹脂を硬化させる工程、
を備えた製造方法である。
【0011】
又、第二の製造方法は、
(a)一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束を連続的に送給する工程、
(b)連続的に送給される強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させる工程、
(c)樹脂含浸された強化繊維束に撚りを入れる工程、
(d)樹脂含浸され且つ撚りが入った強化繊維束を、所定の強さにて緊張させながら加熱して、強化繊維束の横断面を円形状として樹脂を硬化させる工程、
を備えた製造方法である。
【0012】
特許文献2に記載される製造方法は、
(1)強化繊維に撚りを入れ、マトリックス樹脂の樹脂含浸量をコントロールし、樹脂含浸強化繊維を加熱硬化させる際、強化繊維にテンション力を付与することにより、金型を用いなくても、丸形状の繊維強化プラスチック線材を製造することができる。
(2)金型を使用することがないため、一度に30本以上の線材製造も可能となり、且つ、マトリックス樹脂に離型剤を入れる必要もないことから、丸形状繊維強化プラスチック線材の表面目粗し作業も不要となり、大幅なコスト削減と品質改善を達成することができる。
といった利点を有している。
【0013】
本発明者らは、斯かる特許文献2に記載される製造方法にて得られる丸形状繊維強化プラスチック線材を利用して格子状筋を極めて効率よく製造し得ることが分かった。
【0014】
つまり、格子状筋を作製する未硬化の樹脂含浸繊維束に対して撚りを入れ、且つ、成形時には、テンションを付与することにより、一旦繊維束の断面形状を丸形状とした上で、一定厚みで押し潰すことにより、格子を構成する筋材の巾の均一性が確保され、且つ、その筋材の断面も丸みを帯び、鋭いエッジ面の発生がなく、補強筋として使用する際の安全性が格段に向上することが分かった。また、小さなメッシュの格子状筋も安定して作製し得ることも分かった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造方法と、その製造方法にて製造される扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋について、図面に即して詳しく説明する。
【0032】
本発明に従った、扁平形状繊維強化プラスチック線材を格子状に配置して形成される扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の全体構成は、先に
図3(b)を参照して説明した従来の扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋と同様の構成とされる。従って、扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の全体構成についての再度の説明は省略する。
【0033】
実施例1
[製造装置100の全体構成]
図1〜
図4に、本発明に従って、長尺の扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋を連続して製造するための製造装置100(100A、100B)の一実施例を示す。また、
図6に、本発明に従って作製された扁平形状の繊維強化プラスチック格子状筋1(
図3(b))の線材101、102の断面構造を示す。
【0034】
本実施例にて、扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造装置100(100A、100B)は、線材製造部100Aと、格子状筋製造部100Bとにて構成される。線材製造部100Aは、繊維送給、樹脂含浸、巻取りセクション100A1〜A3を備えており(
図1)、格子状筋製造部100Bは、繊維送給緊張、扁平格子筋成形、加熱硬化、巻取りセクション100B1〜B4を備えている。
【0035】
図1は、線材製造部100Aの繊維送給、樹脂含浸、巻取りセクション100A1〜A3を示しており、図面上、左側から右側に複数本の強化繊維fから成る強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が移動し、その間に撚り加工と樹脂含浸を行う。
【0036】
図2(a)、(b)は、格子状筋製造部100Bの繊維送給緊張、扁平格子筋成形、加熱硬化、巻取りセクション100B1〜B4を示しており、図面上、左側から右側に撚り加工と樹脂含浸工程を施された未硬化樹脂強化繊維束f2(f21、f22)が移動し、所定の緊張下に扁平格子筋成形、樹脂硬化、及び格子状筋巻取りを行う。線材製造部100A及び格子状筋製造部100Bについて更に説明する。
【0037】
[線材製造部100A]
図1に示す繊維送給、樹脂含浸、巻取りセクション100A1〜A3から成る線材製造部100Aでは、複数(通常、3〜18個)の、本実施例では図面を簡単とするために3つの繊維供給用の巻出しボビン(筒状の糸巻き)11(11a、11b、11c)が用意され、各ボビン11には、樹脂未含浸の強化繊維fを所定本数収束した強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が巻回されている。
【0038】
各ボビン11に巻回された強化繊維束f1は、樹脂含浸槽17が配置された樹脂含浸工程へと連続的に送給される。同時に、強化繊維束f1には撚りが入れられる(強化繊維束供給、撚り加工工程)。
【0039】
つまり、樹脂含浸工程へと送給された強化繊維束f1は、樹脂含浸槽17にて樹脂含浸され、樹脂含浸された強化繊維束f2は、撚りを入れながら巻取り用ボビン22(22a、22b、22c)に巻き取られる(樹脂含浸、撚り加工工程)。
【0040】
次に、上記各工程を、更に詳しく説明する。
【0041】
(強化繊維束供給、撚り加工工程)
本実施例では、
図5をも参照するとより良く理解されるように、繊維送給、樹脂含浸、巻取りセクション100A1〜A3では、ボビン11(11a、11b、11c)は、巻出し装置51に設けられた回転軸12(12a、12b、12c)に取り付けられ、さらに、この回転軸12は、巻出し装置の回転主軸13(13a、13b、13c)に回転自在に取り付けられている。
【0042】
各ボビン11(11a、11b、11c)は、駆動モータM及び歯車伝達機構Gにより、各ボビン11(11a、11b、11c)の回転軸12(12a、12b、12c)の回りに回転して、ボビン11(11a、11b、11c)に巻回された強化繊維束f1を巻き出す。同時に、各ボビン11(11a、11b、11c)は、それぞれ、上述のように、回転軸12(12a、12b、12c)の回りに回転しながら、回転軸12(12a、12b、12c)と共に回転主軸13(13a、13b、13c)の回りに回転される。
【0043】
つまり、ボビン11は、回転軸12の回りに回転し、同時に回転主軸13の回りにも回転して、強化繊維束f1を巻き出す。
【0044】
ボビン11から巻き出された一方向に配列された複数本の強化繊維から成る強化繊維束f1は、ガイド14に形成したガイド穴15(15a、15b、15c)により案内され、入口ガイドロール16により樹脂含浸槽17内へと導入される。
【0045】
上記構成により、樹脂含浸槽17を設けた含浸工程へと供給される強化繊維束f1には撚りが入ったものが供給される。
【0046】
ボビン11の回転主軸13の回りの回転数と、強化繊維束f1の巻出しスピードとを調節することにより、1m当たりに入れる撚り回数を制御することができる。
【0047】
強化繊維束f1の撚り回数は、5回/m〜20回/mであることが好ましい。詳しくは、後述するが、
図3(b)、
図6に本発明の格子状筋1の線材(筋)101、102が示されているが、このような矩形状断面を有する、即ち、扁平形状の線材は、樹脂含浸した未硬化の複数本の繊維(繊維束)に撚りを入れ、一定張力で引っ張り、丸形状にした後、平板形状の型(金型)で一定厚みに成形しないと、均一に近い幅で製作できない。つまり、扁平にする前の形状がランダムな形状では、一定板厚(t)で、均一に近い幅(w)での成形はできない。
【0048】
5回/m未満であると樹脂硬化前にテンションをいれても安定した円形状(丸形状)を確保するのが難しく、撚りが20回/mを越えると扁平の形状の成形が難しくなり、20回/mを越えることは好ましくない。特に、撚りは、10回/mから15回/mの範囲が最適である。
【0049】
なお、本実施例によると、格子状筋1の各筋101、102は、厚み(t)0.2mm〜5.0mm、幅(w1、w2)1.0mm〜10.0mmとされる。厚み(t)が0.2mm未満であると、扁平押し付け時に線材へダメージを与え、強化繊維fの破断が発生したり、また、薄くなりすぎて製品の端面が鋭くなる。一方、厚み(t)が5.0mmを超えると、線材f2を巻取りボビン31に巻き取る際に、繊維fの腰折れが発生し、硬化後の筋材101、102の強度等の物性低下が著しくなる。格子状筋1の各筋101、102は、特に、厚み(t)0.4mm〜1.5mm、幅(w1、w2)1.2mm〜4.5mm、が好適である。従って、扁平形状とされる前の未硬化樹脂含浸線材f2(f21、f22)の線径は、直径0.5mm〜8.0mmであることが好ましい。
【0050】
従って、含浸工程へと供給される強化繊維束f1は、例えば、強化繊維として炭素繊維を使用する場合には、線径6〜10μmの炭素繊維(フィラメント)fを3000〜320000本を収束した炭素繊維ストランド(炭素繊維束)f1を使用することとなる。
【0051】
線材の強化繊維fとしては、炭素繊維の他に、ガラス繊維、アラミド繊維、PBO(ポリフェニレンベンズビスオキサゾール)繊維、ポリエステル繊維が使用可能であるが、中でも炭素繊維が好適に使用される。電気絶縁を要するマーケット、金属との電気腐食のあるマーケット等の特殊用途向けに他の繊維が使用される。
【0052】
(樹脂含浸工程)
樹脂含浸槽17には、マトリックス樹脂Rが収容されている。マトリックスス樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂が使用可能であるが、中でもエポキシ樹脂が好適に使用される。高温で使用されるマーケット、特殊耐食性の要求されるマーケット等の特殊用途向けに他の樹脂が用いられる。
【0053】
含浸槽17の入口部には、上述のように、強化繊維束f1を案内する入口ガイドローラ16が配置されている。また、含浸槽17内には、含浸ローラ18が配置されており、含浸槽17の出口部には出口ガイドローラ対19(19a、19b)が配置されている。
【0054】
入口ガイドローラ16は、強化繊維束f1に樹脂を含浸させる工程において、含浸槽17に供給される強化繊維束f1を構成する複数の繊維fを、含浸前に揃える役目である。
【0055】
含浸ローラ18は、強化繊維束f1を強制的に樹脂Rに浸ける役目で、含浸槽17に溜められた樹脂Rの中に、少なくとも下半分以上は浸かった状態で使用される。
【0056】
出口ガイドローラ対19(19a、19b)は、樹脂が含浸された強化繊維束f2をしごく役目で、ここで樹脂付着量が制御される。
【0057】
つまり、上下のローラ19a、19bの押し付け圧力を制御することにより、強化繊維束f2に含浸される樹脂量が制御される。
【0058】
本実施例では、樹脂含浸線材f2を構成する強化繊維fとマトリックス樹脂Rとの比率は、マトリックス樹脂の体積比率(Vf)で、36%から60%の範囲が使用可能である。36%未満であると樹脂が不足し、製造後の繊維強化プラスチック線材101、102の強度等の物性が低下する。一方、60%を越えると樹脂が過剰となり、樹脂硬化時に樹脂ダレが発生し丸形状を確保するのが難しくなる。特に、マトリックス樹脂の体積比率は、40%から50%の範囲が最適である。
【0059】
樹脂含浸された強化繊維束f2は、ガイド20に形成したガイド穴21(21a、21b、21c)により案内され、巻取り装置52における巻取りボビン22(22a、22b、22c)により巻き取られる。
【0060】
各巻取りボビン22は、それぞれ、回転軸23(23a、23b、23c)の回りに回転駆動されている。
【0061】
樹脂含浸された強化繊維束f2を巻きつけたボビン22は、取り外され、
図2に示す繊維送給緊張、扁平格子筋成形、加熱硬化、巻取りセクション100B1〜B4から成る格子筋製造部100Bへと供給される。
【0062】
[格子状筋製造部100B]
先ず、
図2(a)、(b)を参照して、格子状筋製造部100Bの全体構成について説明する。
【0063】
格子状筋製造部100Bは、上記線材製造部100Aの巻取り装置52にて未硬化樹脂含浸強化繊維束f2を巻き取った複数のボビン22(22a、22b、22c)を設置する縦線材巻出し装置53Aと、前記線材製造部100Aで製造された線材f2の巻取りボビン22a〜22cと同様の他のボビン、本実施例ではボビン22dを設置する横線材巻出し装置53Bとを有している。
【0064】
格子状筋製造部100Bは、縦線材巻出し装置53A及び横線材巻出し装置53Bに隣接して、これら装置53A、53Bから供給される線材(未硬化樹脂含浸強化繊維束f2)、即ち、縦線材f21、横線材f22を格子状に配置しながら一次硬化炉27aへと送給する搬送手段40を有している。
【0065】
搬送手段40は、長尺とされる格子状筋1の長手方向(製造方向)に沿って配置される。即ち、本実施例では、搬送手段40は、縦線材f21の長手軸線方向、即ち、格子状筋1の製造方向に沿って互いに平行に配置された対をなすチェーンコンベア41(41A、41B)とされる。両チェーンコンベア41(41A、41B)は、同じ構成とされ、駆動ローラ42及び従動ローラ43と、これらローラ42、43間に張設されたチェーンベルト44とを備えており、矢印方向に駆動されている。また、チェーンベルト44にはその外周にガイドピン45が所定の間隔にて設置されている。
【0066】
格子状筋製造部100Bは、一次硬化炉27aへと送給された格子状の線材f21、f22を更に硬化するための二次硬化炉27bと、二次硬化炉27bにて完全に加熱硬化された格子状筋1を巻き取るための巻取りボビン31を備えた巻取り装置54とを備えている。
【0067】
次に、格子状筋製造部100Bの各セクション100B1〜100B4について更に説明する。
【0068】
上記線材製造部100Aの巻取り装置52にて未硬化樹脂含浸強化繊維束f2を巻き取った複数のボビン22(22a〜22d)が、縦線材(f21)及び横線材(f22)の巻出し装置53A、53Bの回転軸24(24a〜24d)に設置される。即ち、
図1に示す前工程の巻取りボビン22(22a〜22d)は、格子筋製造部100Bにおける縦線材(f21)及び横線材(f22)の巻出しボビン22(22a〜22d)として機能する。
【0069】
巻出しボビン22(22a〜22d)に巻かれた樹脂含浸した、撚り加工済みの縦線材(未硬化強化繊維束)f21及び横線材(未硬化強化繊維束)f22は、ボビン22を回転軸24(24a〜24d)の回りに回転させることにより巻き出される。
【0070】
縦線材f21は、格子状筋1の製造方向に沿って、ガイド25に形成したガイド穴26(26a〜26c)により搬送手段40、一次、二次硬化炉27a、27bを通され、巻取り装置54の巻取りボビン31に巻き取られる。各線材の駆動は、巻取り装置54の巻取り引張力で行う。
【0071】
横線材巻出し装置53Bから巻き出された横線材(未硬化強化繊維束)f22は、
図3(a)を参照すると、横線材供給装置70により、搬送手段40を構成するチェーンコンベア41(41A、41B)に直交(或いは所定の角度傾斜)して、即ち、チェーンコンベア41(41A、41B)の移動方向に沿って送給される縦線材f21と交差するように送給される。横線材供給装置70により送給される横線材f22が、チェーンコンベア(一側のチェーンコンベア41A)のガイドピン45に到達すると、横線材供給装置70は一端停止する。チェーンコンベア41Aの移動により、チェーンコンベア41Aの移動方向上流側のガイドピン45が横線材位置に到達したとき、横線材供給装置70は、先に横線材を送給した時とは反対の方向へと他側のチェーンコンベア41Bの方に移動する。これにより、横線材f22は、一側のチェーンコンベア41Aの外周に設けたガイドピン45にコの字状に係止される。
【0072】
次いで、横線材供給装置70は、他側のチェーンコンベア41Bの方へと横線材f22を送給し、前回と同様に、横線材f22が、チェーンコンベア(他側のチェーンコンベア41B)のガイドピン45に到達すると、横線材供給装置70は一端停止する。チェーンコンベア41Bの移動により、チェーンコンベア41Bの移動方向上流側のガイドピン45が横線材位置に到達したとき、横線材供給装置70は、先に横線材f22を送給した時とは反対の方向へと一側のチェーンコンベア41Aの方へと移動する。これにより、横線材f22は、他側のチェーンコンベア41Bの外周に設けたガイドピン45にコの字状に係止される。上記実施例では、チェーンコンベア41(41A、41B)は連続駆動されるものとして説明したが、間欠駆動(タクト駆動)も可能である。この場合は、横線材供給装置70は、チェーンコンベア41が停止している時に一側のチェーンコンベアから他側のチェーンコンベアへと横線材f22を移動させることができる。また、チェーンコンベア41(41A、41B)の動きと同じ動きを巻取り装置54に行わせ、チェーンコンベア41(41A、41B)が動いた距離と同一距離だけ縦線材f21を進行させる。
【0073】
このような横線材供給装置70の作動を繰り返し行うことにより、横線材f22は、折り返されながら縦線材f21に対して交差するように配置される。従って、縦線材21の上に横線材f22がチェーンコンベア41(41A、41B)の移動方向に対して直交(或いは所定の角度で交差)する態様で、所定の間隔を持って配置され、縦線材f21と横線材f22とが交差して格子形状が形成されるように積層された縦線材f21と横線材f22の積層体が形成される。
【0074】
上記縦線材f21及び横線材f22の搬送手段40、一次硬化炉27aへの送給時には、縦線材f21及び横線材f22は所定の張力が付与された状態にて送給される。これにより、縦線材f21及び横線材f22は、その断面形状が丸形状とされた状態にて格子状に配置され、一次硬化炉27a内へと送給される。
【0075】
つまり、格子状筋製造部100Bにおける繊維送給緊張セクション100B1及び扁平格子筋形成セクション100B2は、樹脂含浸、撚り加工済みの未硬化強化繊維束f21、f22を丸形状の断面とすると同時に、縦線材f21と横線材f22とを格子形状に配置する作動をなす。
【0076】
従って、本実施例では、巻出し装置53(53A、53B)には、電磁ブレーキ等の機能が付与されており、ボビン22(22a〜22d)から巻き出される未硬化樹脂含浸強化繊維束f21、f22に適切な緊張力を与えることができる。
【0077】
つまり、縦線材巻出し装置53Aと加熱板装置27aとの間で、また、横線材巻出し装置53Bとチェーンコンベア40との間で、撚りが入れられた、且つ、未硬化樹脂含浸の強化繊維束f21、f22に適切な緊張力が与えられ、それによって、束となっている強化繊維fが一様に緊張され、強化繊維束f21、f22の横断面形状を円形断面、即ち、丸形状とすることができる。
【0078】
尚、本願明細書、特許請求の範囲にて、「円形」とは、断面における縦方向、横方向における直径比が1.0〜1.5の範囲内とされる「略円形」をも含めて意味するものとする。
【0079】
このように、本実施例によれば、巻出しボビン22(22a〜22d)に電磁ブレーキをかけつつ、未硬化強化繊維束f21、f22を巻出し、適切な緊張力をかけながら、搬送手段40へと送給して格子状に配置し、加熱板装置27aにて扁平形状へと成形し、且つ1次硬化(半硬化)させ、次いで、加熱硬化炉27bにて樹脂を完全に硬化させる。
【0080】
本実施例にて、緊張力としては、樹脂含浸された強化繊維束f21、f22に500g/本〜3000g/本の強さを付与するのが好ましい。
【0081】
つまり、マトリックッス樹脂を硬化させる際にいれるテンション(緊張)力に関しては繊維束(ストランド)f1に対し500g/本から3000g/本が妥当である。500g/本未満だと、丸形状を確保するのが難しくなり、3000g/本を越えると製造途中で強化繊維fが破断するというトラブルが発生し、安定した製造ができなくなるという問題がでてくる。テンション力は、特に、1000g/本から2000g/本の範囲が最適である。
【0082】
横線材f22は、加熱板装置27aに挟持された後、加熱板装置27aの入口端切欠き部27a10に配置した耳取り手段としての回転刃80により両端コ字状の耳部が切除される。
【0083】
図4を参照して、加熱板装置27aについて説明する。
【0084】
加熱板装置27aは、本実施例では、上下方向に対称配置され、且つ、互いに平行にしかも本実施例では水平に配置された2枚の第1及び第2加熱板27a1、27a2とを備えている。各加熱板27a1、27a2は、それぞれ、互いに対向する内側面を構成する、通常、例えば、鋼、ステンレススチールなどの金属製とされる成形用平板27a3、27a4と、この成形用平板27a3、27a4の外側に一体に設けられたパネルヒータ(熱源)27a5、27a6と、を備えている。
【0085】
各加熱板27a1、27a2は、互いに対向する内側面間に挿入される丸形状線材f21、f22を厚み(t)、幅(w1、w2)の扁平形状の線材へと成形するために(
図3(a)、
図6参照)、少なくとも幅方向(加熱板装置27a内へと挿入される縦線材f21の移動方向に対して直交する方向)両側に厚み調整用シム板27a6が配置され、所定の距離(t1、ここで、t1>t)だけ離間されている。
【0086】
図示するように、各加熱板27a1、27a2は、厚み調整用シム板27a7を挟持して上下加熱板締付金具270にて一体とされる。即ち、上下加熱板締付金具270は、第1加熱板27a1の外側(
図4にて上側)に位置した水平金具271と、第2加熱板27a2の外側(
図4にて下側)に位置した水平金具272とを備えている。水平金具271、272は、幅方向において、第1、第2加熱板27a1、27a2の幅(W27a)より大とされ、両側へと突出している。水平金具271、272は、この突出した部分を利用して、ボルト273が貫通して配置され、ナット274にて締め付けることにより、各加熱板27a1、27a2及び厚み調整用シム板27a7を挟持して一体に保持する。
図4では、上下加熱板締付金具270は、加熱板装置27aの長さL27aに沿って一つだけ図示されているが、加熱板装置27aの長さL27aに応じて適当数、例えば、2〜4個程度配置される。
【0087】
なお、本実施例によれば、加熱板装置27aの入口端側、即ち、線材f21、f22の送給入口側には切欠き部27a10(
図3参照)が形成され、線材f22のコ字状耳部を切除するための回転刃80が配置されている。
【0088】
上述のように、本発明によれば、型が平板であることから上下間の隙間を調整することにより1つの型で種々の厚みの形状を作り出すことができる。
【0089】
また、単に平板形状型内に樹脂を含浸した丸形状繊維束を引き込むだけでよいこと、及び、後述するように、その上下が離型用の薄い布で保護され、金属の型と樹脂含浸の繊維束とが直接触れないことから、樹脂含浸の繊維束へのダメージが少なく、製造中の糸切れの頻度が殆どなく、大幅に成形歩留まりを上げることができる。
【0090】
一方、加熱硬化炉27bは、入口と出口以外、基本的には閉構造となっており、内部にヒーター機能、若しくは、熱風循環機能等を持ち、加熱板装置27aから送給される半硬化された線材f3、即ち、縦線材f31及び横線材f32を加熱できるようになっている。
【0091】
ここで、本発明によれば、
図2(a)、(b)、
図4をも参照すると理解されるように、加熱板装置27aは、上下方向に対称配置された第1及び第2加熱板27a1、27a2の内側を、加熱板装置27a内へと挿入される線材の移動方向(即ち、加熱板装置27aの長さL27aの方向)に沿って上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64が配置される。同様に、2次硬化炉27bにおいても、硬化炉27b内へと挿入される線材の移動方向(即ち、硬化炉27bの長さL27bの方向)に沿って上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64が配置される。
【0092】
本実施例では、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、
図2(a)、(b)に示すように、加熱板装置27aの入口側から2次硬化炉27bの出口側へと貫通して配置されている。つまり、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、それぞれ、加熱板装置27aの入口側に配置された巻出しリール61a、62aから巻き出され、2次硬化炉27bの出口側に配置された巻取りリール61b、62bに巻き取られる。しかし、成形後のハンドリング等による油付着などを嫌うユーザーの希望により、このピールプライを付けたまま製品とすることも可能である。
【0093】
上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、成形1次硬化セクション100B2(即ち、加熱板装置27a内)及び2次硬化セクション100B3(即ち、2次硬化炉27b内)において、搬送手段40にて格子状に配置された縦線材f21(f31)及び横線材f22(f32)にて形成された積層体の両側面、本実施例では上下面を挟持する態様で配置されている。
【0094】
従って、縦、横巻出し装置53A、53Bから巻き出され、搬送手段40及び横線材供給装置70にて格子状に配置された撚り加工済みの未硬化樹脂含浸強化繊維束f21、f22は、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64にて上下方向から挟持された態様にて成形1次硬化セクション100B2(即ち、加熱板装置27a内)を移動される。この工程にて、強化繊維束f21、f22は、丸形状から扁平形状へと成形され、且つ、縦線材f21及び横線材f22は交点において互いに接着され、半硬化された線材f31、f32にて格子状筋が成形される。引き続いて、2次硬化セクション100B3(即ち、2次硬化炉27b内)へと導入され更なる加熱硬化が行われ、格子状筋1が作製される。
【0095】
通常、成形硬化セクション100B2、100B3を移動する格子状に積層された強化繊維束f21、f22(f31、f32)の移動速度は0.3〜2.0m/分とされ、また、加熱板装置27a1内の温度は、120〜140℃、2次硬化炉27b内の温度は、130〜150℃とされる。
【0096】
成形硬化セクション100B2、100B3を移動する強化繊維束の移動速度、並びに、加熱板装置27a内の温度及び2次硬化炉27b内の温度は、含浸されている樹脂の種類によって決められる。
【0097】
加熱板装置27a、硬化炉27bの長さ(L27a、L27b)を長くすることにより、繊維強化プラスチック格子状筋1の製造スピードを上げることができる。
【0098】
上記上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64は、強化繊維束に含浸された樹脂との離型性を持った高密度織物とされる。
【0099】
本発明において、「高密度織物」とは、加熱板装置内に強化繊維束を引き込み、通過させる際、強化繊維束を傷つけないように、金型との間の緩衝材として働き、強化繊維束を守る役目と、2次硬化炉内で一方向に撚りを入れられた扁平形状の製品が捻じれないように拘束し、出側の巻取り装置に捻じれのない扁平ストランドを供給する役目、及び高密度織物を剥いだ後、扁平ストランドの表面に、微小な凹凸を発生させ、構造物に貼り付けて補強する時、若しくは、樹脂の中に入れて補強材として使用する時、樹脂との付着性を大きく向上させる役目を持っている。
【0100】
そのためには、樹脂との離型性をある程度持っていることは、勿論であるが、織物の折り目の間で入り込まないように、緻密な織り構造であることが必要である。そのためには、インチ長さ間の縦糸、緯糸の合計本数が210本以上投入された、高密度の織物が必須となる。例えば、縦糸×緯糸(50D×75D、75D×75D、84D×84Dなど)をインチ長さ間で投入本数が合計210本以上となるように配置された高密度織物である。
【0101】
このような役目を果たすものとして、離型フィルムも考えられるが、離型フィルムは剥がれやすくするために、離型剤が必要となったり、フィルムを剥いだ後、表面が円滑で樹脂との付着性が十分でないという問題があり、あまり推薦できない。
【0102】
本実施例にて、高密度織物は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、などの連続フィラメント糸の単独織物、若しくは、混合織物のいずれかとされる。
【0103】
上述のように、高密度織物は、インチ長さ間の縦糸、緯糸が合計210本以上、通常400本以下、配置された織物であり、平織物であるのが好ましい。また、インチ長さ間の縦糸、緯糸の合計が210本未満であると、剥がれ難いといった問題がある。また、400本を越えると高価となるといった問題がある。また、本実施例にて、織物の厚みt2は、0.1〜0.3mmとされ、通常0.15〜0.2mmの厚みが好適である。
【0104】
上記説明した本発明に従った製造方法によれば、次のような利点がある。
【0105】
本発明者らの研究実験の結果によると、扁平形状の線材は、樹脂含浸した複数本の繊維(繊維束)に撚りを入れ、一定張力で引っ張り、丸形状にした後、平板形状の型(金型)で一定厚みに成形しないと、均一に近い幅で製作できないことが分かった。つまり、扁平にする前の形状がランダムな形状では、一定板厚(t)で、均一に近い幅(w)での成形はできない。
【0106】
更に、本発明者らは、丸形状を扁平形状とするために平板形状の型(金型)を使用し、平板形状型と扁平な製品との離型は、離型剤を使用するのではなく、接着剤と接着しない薄い布(ポリエステル系の織物とされるピールプライ)を、成形する上下面に連続して挿入し、硬化後、剥ぎ取ることで対応し得ることが分かった。
【0107】
一方、型が平板であることから上下間の隙間を調整することにより1つの型で種々の厚みの形状のものを作り出すことができる。
【0108】
また、本実施例では、丸形状線材を成形するには、強化繊維にある一定以上の撚りを入れた樹脂含浸した強化繊維に、適切な緊張力を付与することにより達成することができる。また、本実施例では、樹脂含浸の丸形状繊維束を単に平板形状型内に引き込むだけでよいこと、及び、その上下に離型用の薄い布(高密度織物)で保護され、金属の型と樹脂含浸の繊維束とが直接触れないことから、樹脂含浸の繊維束へのダメージが少なく、製造中の糸切れの頻度が殆どなく、大幅に成形歩留まりを上げ得ることが分かった。
【0109】
上述のように、一定厚で、略一定幅とされる扁平形状の繊維強化プラスチック線材を連続的に極めて効率よく製造することができることから、扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋を、効率良く、連続して製造することができる。また、このようにして製造した扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋は、離型剤不要、製作後の製品の目粗し不要、更に、別工程でシート化する作業が不要等で、大幅なコスト削減と品質改善を達成できる。
【0110】
つまり、本発明によれば、成形後の製品「格子状筋」に鋭いエッジ面の発生がなく、補強筋として使用する際の安全面での取り扱い性の問題を解決し、また、メッシュの細かい格子状筋を成形することができる。
【0111】
(変更実施例1)
図7を参照して、格子状筋製造部100Bの他の変更実施例について説明する。
【0112】
上記実施例では、
図2(a)、(b)を参照して、縦線材f21と横線材f22を使用して縦格子筋101と横格子筋102が1本毎で作製された格子状筋1の製造方法について説明した。
【0113】
上記実施例で説明した製造方法を応用して、縦線材f21と横線材f22とを複数本重ねて格子状筋1を製造することができる。本変更実施例では、
図7を参照して、縦線材f21と横線材f22とを複数本重ねて格子状筋1を製造する方法について説明する。
【0114】
図7に示す本変更実施例では、縦線材f21と横線材f22とを3層重ねて格子状筋1を製造する方法を示している。
【0115】
図7に示す本変更実施例の格子状製造部100Bは、
図2に示す格子状製造部100Bと全体構成は同じとされ、同じ構成及び機能をなす部材には同じ参照番号を付し、詳しい説明は上記実施例の説明を援用して、ここでの再度の説明は省略する。
【0116】
本変更実施例における、上記実施例との相違点は、次の構成にある。
【0117】
つまり、上記実施例では、縦格子筋101を形成する縦線材f21を供給するために、格子状製造部100Bの入口側に配置した一つの縦線材巻出し装置53Aを使用していたが、本変更実施例では、高さ方向に3段にて縦線材巻出し装置53A1、53A2、53A3が配置して設けられ、縦線材f21を同一箇所で3層重ねることが可能とされる。
【0118】
また、上記実施例では、横格子筋102を形成する横線材f22を供給するために、チェーンコンベア41(41A、41B)の移動方向に沿って一つの横線材巻出し装置53Bを配置していたが、本変更実施例では、チェーンコンベア41(41A、41B)の長さを長くして、横線材巻出し装置53B1、53B2、53B3を並列に3個並べ、同じ作業を並列に並べた横線材供給装置70(70−1、70−2、70−3)に行わせ、横線材f22を同一箇所で3層重ねることが可能とされる。
【0119】
本変更実施例で使用する上記縦線材巻出し装置53A1、53A2、53A3、チェーンコンベア41(41A、41B)、横線材巻出し装置53B1、53B2、53B3及び横線材供給装置70(70−1、70−2、70−3)は、上記実施例で説明した縦線材巻出し装置53A、チェーンコンベア41(41A、41B)、横線材巻出し装置53B及び横線材供給装置70と同じ構成及び機能を有し、同じ作動をなすものである。
【0120】
上述のように、本変更実施例では、横線材供給装置70(70−1、70−2、70−3)の作動を繰り返し行うことにより、横線材f22は、折り返されながら縦線材f21に対して交差するように配置される。従って、縦線材21の上に横線材f22がチェーンコンベアの移動方向に対して直交(或いは所定の角度で交差)する態様で、所定の間隔を持って配置され、縦線材f21と横線材f22とが3層重ね合わせられた状態で交差して格子形状が形成され、それにより、3層に重ね合わせて積層された縦線材f21と横線材f22の積層体が形成される。
【0121】
上記縦線材f21及び横線材f22の搬送手段40、一次硬化炉27aへの送給時には、縦線材f21及び横線材f22は所定の張力が付与された状態にて送給される。これにより、縦線材f21及び横線材f22は、その断面形状が丸形状とされた状態にて格子状に配置され、一次硬化炉27a内へと送給される。
【0122】
つまり、3層に重ね合わせて積層された縦線材f21と横線材f22の積層体は、扁平格子筋形成セクション100B2に送り込むことにより、縦格子筋101、横格子筋102それぞれが3層重ねた扁平形状の格子状筋が成形され、その後、2次硬化部B3を通り、
図7には示してはいないが巻取り部B4(
図2参照)で巻き取ることで、3層重ねた扁平形状格子状筋を得ることができる。
【0123】
勿論、本変更実施例で説明した製造方法を用いれば、2層構造は勿論、4層以上のものも得ることができる。
【0124】
(実験例1:扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造)
次に、本実施例の扁平形状繊維強化プラッスチック格子状筋1の製造について更に具体的に実験例について説明する。
【0125】
本実験例1では、
図1〜
図4の装置を用いて、下記の態様にて格子状筋1を製造した。
【0126】
強化繊維fは、平均径7μm、収束本数15000本のPAN系炭素繊維ストランド(炭素繊維束f1)(三菱レイヨン株式会社製「TR50」(商品名))を用い、マトリックス樹脂Rとして、120℃硬化のエポキシ樹脂(三井化学株式会社製「エポミックR140P」(商品名))を使用した。
【0127】
本実験例にて、撚り回数は10回/mとし、樹脂含浸量として、樹脂体積比率(Vf)45%で樹脂未硬化の樹脂含浸ストランド(炭素繊維束f2(f21、f22))を製造した。加熱板装置27aの両加熱板間隔(t1)は0.8mmとし、ストランド走行方向長さ(L27a)は、1.5m、幅(W27a)は、300mm、とした。加熱板27a1、27a2の温度は、120℃とした。
【0128】
2次加熱炉27bは、幅(W27b)400mm、長さ(L27b)10m、硬化炉内温度140℃であった。
【0129】
縦線材f21、横線材f22は、テンション力2000g/本が付加され、搬送手段40へと送給され、格子状に配置された。格子状に配置され積層された縦線材f21及び横線材f22は、上面、下面ピールプライ63、64の間に挟持されて、加熱板装置27a及び硬化炉27b内を移動速度5mm/secにて移動された。
【0130】
本実験例では、上面、下面ピールプライ63、64としては、エアーテック社製の高密度織物である「Release Ply F」(商品名)を使用した。この高密度織物の仕様は以下の通りであった。
【0131】
高密度織物
繊維 ポリエステル繊維
目付け 95g/m
2
縦糸、緯糸の合計:230本/インチ間
厚さ(t2) 0.15mm
【0132】
上記構成にて、縦線材及び横線材とされる樹脂含浸ストランドf2(f21、f22)は、加熱板装置27aにて断面が矩形状に成形された1次硬化(半硬化)状態のストランドf3(f31、f32)とされ、その後、2次硬化炉27b内にて完全に硬化された繊維強化プラスチック格子状筋1が得られた。繊維強化プラスチック格子状筋1は、2次硬化炉27bの出口にて、上面、下面ピールプライ63、64から極めて円滑に、何ら問題なく剥離された。
【0133】
このようにして得られたベルト状の連続した繊維強化プラスチック格子状筋1の各筋101、102は、厚さ(t)0.6mm、幅(w1、w2)1.7mmの扁平形状の断面を有していた。
【0134】
また、成形後の製品「格子状筋」に鋭いエッジ面の発生はなく、補強筋として使用する際の安全面での取り扱い性の問題はなかった。補強筋の幅精度も、1.7mm±0.4mm以内に収まっており、格子間隔を小さくできる目処を得た。
【0135】
(実験例2:扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋によるコンクリート構造物の補強)
本発明のシート状補強材である扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1を使用してコンクリート梁を補強した。
【0136】
本実験例では、上記実験例1で作製した
図3(b)に示す構成の格子状筋1を使用した。
【0137】
つまり、格子状筋1における各筋材101、102は、厚み(t)0.6mm、幅(w1=w2)1.7mmの扁平断面を有していた。また、各筋材101、102の間隔(W1=W2)(
図3(b))は、50mmであった。実験では、格子状筋1の長手方向の長さは500cm、長さに直交する幅は50cmに切断して使用した。格子状筋1は、1000N/mm
2以上の引張強度、100000N/mm
2以上の引張弾性率を有していた。
【0138】
次に、上記格子状筋1をコンクリート構造物の表面に埋め込み、補強した。設計通りの所期の補強強度を得ることができた。
【0139】
実施例2
本発明に係る繊維強化プラスチック格子状筋を製造する際の線材製造部100Aは、実施例1で説明した構成に限定されるものではない。
【0140】
次に、
図8を参照して、本発明の繊維強化プラスチック格子状筋1を製造する際の線材製造部100Aの他の実施例について説明する。
【0141】
本実施例の線材製造部100Aは、
図1を参照して説明した実施例1の線材製造部100Aと同様の構成とされ、繊維送給、樹脂含浸、巻取りセクション100A1〜A3を有している。
【0142】
ただ、本実施例にて、線材製造部100Aは、
図8に示すように、繊維に対する撚り加工を樹脂含浸後において実施している点でのみ、実施例1の線材製造部100Aと異なっている。従って、実施例1と同じ構成及び同じ機能をなす部材には、同じ参照番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0143】
図8は、本実施例における線材製造部100Aを示しており、図面上、左側から右側に複数本の強化繊維fから成る強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が移動し、その間に樹脂含浸と撚り加工とを行う。
【0144】
つまり、
図8を参照すると、巻出し装置51に、複数の強化繊維供給用の巻出しボビン(筒状の糸巻き)11(11a、11b、11c)が用意され、各ボビン11には、樹脂未含浸の強化繊維fを所定本数収束した強化繊維ストランド(強化繊維束)f1が巻回されている。
【0145】
各ボビン11(11a〜11b)に巻回された強化繊維束f1は、ガイド14のガイド穴15a、15b、15cにガイドされて、樹脂含浸工程へと連続的に送給される(強化繊維束供給工程)。
【0146】
樹脂含浸工程へと送給された強化繊維束f1は、樹脂含浸槽17にて樹脂含浸される。
樹脂含浸工程の構成及びその作業内容は、実施例1と同様である。
【0147】
樹脂含浸された強化繊維束f2は、巻取り装置52における巻取り用ボビン22(22a、22b、22c)に巻き取られる。
【0148】
この時、巻取りボビン22(22a、22b、22c)は、
図9をも参照するとより良く理解されるように、巻取り装置52に設けられた回転軸23(23a、23b、23c)に取り付けられ、さらに、この回転軸23は、巻取り装置52の回転主軸32(32a、32b、32c)に回転自在に取り付けられている。
【0149】
各ボビン22は、駆動モータM及び歯車伝達機構Gにより、各ボビン22の回転軸23の回りに回転して、樹脂含浸された強化繊維束f2を巻き取る。同時に、各ボビン22(22a、22b、22c)は、それぞれ、上述のように、回転軸23(23a、23b、23c)の回りに回転しながら、回転軸23(23a、23b、23c)と共に回転主軸32(32a、32b、32c)の回りに回転される。
【0150】
つまり、ボビン22は、回転軸23の回りに回転し、同時に回転主軸32の回りにも回転して、強化繊維束f2を巻き取る。
【0151】
従って、樹脂含浸槽17から、出口ガイドローラ対19(19a、19b)及びガイド20に形成したガイド穴21(21a、21b、21c)により案内され、ボビン22により巻き取られた強化繊維束f2には、撚り加工が施される。
【0152】
ボビン22の回転主軸32の回りの回転数と、強化繊維束f2の巻取りスピードとを調節することにより、1m当たりに入れる撚り回数を制御することができる。
【0153】
本実施例によると、実施例1と同様に、丸形状の未硬化樹脂含浸強化繊維束f2(f21、f22)の線径は、直径0.5mm〜8.0mmであることが好ましい。従って、含浸工程へと供給される強化繊維束f1は、例えば、強化繊維として炭素繊維を使用する場合には、線径6〜10μmの炭素繊維(フィラメント)fを3000〜320000本を収束した炭素繊維ストランド(炭素繊維束)f1を使用することとなる。
【0154】
また、強化繊維束f1の撚り回数は、5回/m〜20回/mであることが好ましい。
【0155】
樹脂含浸された強化繊維束f2を巻きつけたボビン22は、取り外され、次の、格子状筋製造部100Bに供給される。
【0156】
本実施例においても、格子状筋製造部100Bは、
図2(a)、(b)を参照して説明した実施例1と同様の構成とされる。
【0157】
つまり、上記線材製造部100Aの巻取り装置52にて未硬化樹脂含浸強化繊維束f2を巻き取った複数のボビン22が、例えば、
図2(a)、(b)に示す格子筋製造部100Bにて、縦線材(f21)及び横線材(f22)の巻出し装置53A、53Bの回転軸24(24a〜24d)に設置される。即ち、
図8に示す前工程の巻取りボビン22は、格子筋製造部100Bにおける縦線材(f21)及び横線材(f22)の巻出しボビン22(22a〜22d)として機能する。
【0158】
巻出しボビン22に巻かれた樹脂含浸した、撚り加工済みの縦線材(未硬化強化繊維束)f21及び横線材(未硬化強化繊維束)f22は、ボビン22を回転軸24(24a〜24d)の回りに回転させることにより巻き出される。
【0159】
その後の、格子状筋1の製造工程は、実施例1にて説明したと同様であり、説明は省略する。
【0160】
実施例1の製造方法と、本実施例の製造方法とを比較すると、両実施例の製造方法の違いは、実施例1の製造方法によると、線材製造部100Aの繊維送給、樹脂含浸、巻取りセクション100A1〜A3と、格子状筋製造部100Bの繊維送給緊張、扁平格子筋成形、加熱硬化、巻取りセクション100B1〜B4とを接続して製造工程を連続化することが可能である。これに対して、本実施例の製造方法によると、製造工程の連続化が難しい。
【0161】
一方、実施例1の製造方法では、厚み(t)1.0mm、幅(w)3.3mmを超えるような大きい扁平(矩形断面)形状の繊維強化プラスチック線材を製造する際、撚りを入れた後樹脂含浸すると、強化繊維束f1の内部まで充分に樹脂が含浸するのが難しくなるという問題がある。
【0162】
従って、実施例1、2の製造方法は、製造する品種により使い分けるのが妥当である。
【0163】
(実験例3:扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋の製造)
次に、本実施例の扁平形状繊維強化プラッスチック格子状筋1の製造について更に具体的に実験例について説明する。
【0164】
本実験例1では、
図1〜
図4の装置を用いて、下記の態様にて格子状筋1を製造した。
【0165】
本実験例3では、
図8、
図2の装置を用いて繊維強化プラスチック線材2を製造した。
【0166】
実施例1で説明した実験例1と同様に、強化繊維fは、平均径7μm、収束本数15000本のPAN系炭素繊維ストランド(炭素繊維束f1)(三菱レイヨン株式会社製「TR50」(商品名))を用い、マトリックス樹脂Rとして、120℃硬化のエポキシ樹脂(三井化学株式会社製「エポミックR140P」(商品名))を使用した。
【0167】
又、撚り回数は10回/m、樹脂含浸量は樹脂体積比率45%、として実施例1と同様にして、繊維強化プラスチック線材2を製造した。
【0168】
その後、実施例1と同様に、
図2(a)、(b)に示す格子状筋製造部100Bにて格子状筋1を作製した。
【0169】
尚、搬送手段40、加熱板装置27a、硬化炉27b等の製造装置100の構成は、実験例1と同じとした。
【0170】
その結果、製品の断面形状は、実施例1の実験例1の製造方法で製造された格子状筋と外観及び性能において殆ど実験例1のものと同じであった。
【0171】
また、実験例3で製造した繊維強化プラスチック格子状筋1を使用して、実験例2で説明したと同様にして実験を行った。その結果、実験例1で説明した格子状筋1と同様の結果を得ることができた。
【0172】
このことから、格子状筋1を製造する方法として、実施例1、2で製造される製品に差がないことが分かった。
【0173】
上記各実施例にて説明した本発明の製造方法によれば、
図3(b)に示すように、例えば、直角に交差して格子状に配置された複数の扁平形状繊維強化プラスチック線材(筋)、即ち、縦格子筋101と横格子筋102とを備えて構成される扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1が好適に製造された。
【0174】
本発明によれば、
図3(c)に示すように、扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1のいずれかの片面に、或いは、両面に布状メッシュ90を樹脂で接着した構成の布状メッシュ付き扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1Aを製造することができる。
図3(c)には、片面に布状メッシュ90が接着して配置された格子筋1Aを示している。
【0175】
布状メッシュ90は、図示するように、ガラス繊維或いは有機繊維にて作製された所定径の糸条とされる縦糸91及び緯糸92を2軸配向(或いは、3軸配向など)の構成にて作製することができ、糸条間隔W91、W92は、それぞれ、格子状筋1の格子間隔W1、W2より小さくされる(W91<W1、W92<W2)。即ち、布状メッシュ90は、格子状筋1よりメッシュ(開口面積)が小さくされる。
【0176】
従って、
図3(c)に示すような布状メッシュ付き扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1Aを用いて、例えば、トンネル天井壁などのコンクリート構造物(被補強物)等の補強工事を行う際に、作業中に被補強物表面から細片が剥離して、格子状筋1Aの開口部を通り抜けて落下することを防止することができる。
【0177】
このような布状メッシュ付き扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1Aは、例えば、
図2に示すように、格子状をなすように、配置された縦線材f21と横線材f22とにて形成された積層体の片面、或いは、両面に供給リール90aから布状メッシュ90を供給し、その後、その上に樹脂との離型性を持った高密度織物、即ち、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64を配置する。その後、上面ピールプライ63及び下面ピールプライ64を配置した状態にて、積層体を加熱された2枚の平板の間に引き込み、縦線材f21及び横線材f22の横断面を扁平形状に形成しながら縦線材f21及び横線材f22を交点にて接着し、且つ同時に布状メッシュ90も接着し、更に、1次硬化させ、次いで、2次硬化させる。これによって、
図3(c)に示す布状メッシュ付き扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1Aが作製される。勿論、
図7を参照して説明した本発明の製造方法にても上記と同様にして布状メッシュ付き扁平形状繊維強化プラスチック格子状筋1Aが作製することができる。