特許第5919095号(P5919095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919095
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】導電性高分子塗料及び導電性塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20160428BHJP
   C09D 165/00 20060101ALI20160428BHJP
   C09D 125/18 20060101ALI20160428BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160428BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20160428BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D165/00
   C09D125/18
   C09D7/12
   H01B1/20 Z
   H01B1/12 E
   H01B1/12 F
   H01B1/12 G
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-124513(P2012-124513)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249368(P2013-249368A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196022(JP,A)
【文献】 特開2011−038002(JP,A)
【文献】 特開2012−031256(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/095649(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/095651(WO,A1)
【文献】 特開2011−150818(JP,A)
【文献】 特開2012−064498(JP,A)
【文献】 特開2012−097132(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/056906(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/041032(WO,A1)
【文献】 特開2006−117906(JP,A)
【文献】 特開2007−324142(JP,A)
【文献】 特開2012−017398(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0284802(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0309308(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/073474(WO,A1)
【文献】 特開2012−102304(JP,A)
【文献】 特開2012−162598(JP,A)
【文献】 特開2012−172024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
H01B1/00〜H01B1/24
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子とポリアニオンと下記化学式(1)で表される化合物とアミン化合物とアクリル化合物と分散媒とを含有し、
化学式(1)で表される化合物の含有量Aと、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計含有量Bとの質量比(A/B)が5〜35であり、
前記アクリル化合物が、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリアクリルアクリレートよりなる群からなる1種以上であることを特徴とする導電性高分子塗料。
【化1】
(式中、R,Rは、各々独立して、水素原子または任意の置換基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の導電性高分子塗料が塗布されて形成されたことを特徴とする導電性塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子塗料及び導電性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖がπ電子を含む共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、電解重合法及び化学酸化重合法により合成することができる。
電解重合法では、ドーパントとなる電解質とπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーとの混合溶液中に、予め形成した電極材料などの支持体を浸漬し、支持体上にπ共役系導電性高分子をフィルム状に形成する。そのため、大量に製造することが困難である。
一方、化学酸化重合法では、このような制約がなく、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーに酸化剤及び酸化重合触媒を添加し、溶液中で大量のπ共役系導電性高分子を製造できる。
しかし、化学酸化重合法では、π共役系導電性高分子主鎖の共役系の成長に伴い、溶媒に対する溶解性が乏しくなるため、不溶の固形粉体で得られるようになる。不溶性のものでは支持体表面上にπ共役系導電性高分子膜を均一に形成することが困難になる。
【0003】
そのため、π共役系導電性高分子に官能基を導入して可溶化する方法、バインダに分散して可溶化する方法、アニオン基含有高分子を添加して可溶化する方法が試みられている。
例えば、水への分散性を向上させるために、分子量が2,000〜500,000の範囲のアニオン基含有高分子酸(ポリアニオン)であるポリスチレンスルホン酸の存在下で、酸化剤を用いて、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合してポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)の分散液を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、ポリアクリル酸の存在下で化学酸化重合してπ共役系導電性高分子コロイド分散液を製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1,2記載の方法によれば、π共役系導電性高分子を含有する水分散液を容易に製造できる。しかし、これらの方法において製造した水分散液を塗布して形成した導電性塗膜は、可視光または紫外光が当たると、表面抵抗が急激に上昇するという問題を有していた。
そこで、ポリリン酸等を添加することによって、π共役系導電性高分子を含有する水分散溶液から形成した導電性塗膜の表面抵抗の上昇を抑える方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3に記載の方法でも、紫外光照射後の表面抵抗の上昇を充分に抑制することはできず、しかもポリリン酸を添加すると、水分散液の安定性が低下するという新たな問題も生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2636968号公報
【特許文献2】特開平7−165892号公報
【特許文献3】特表2006−505099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、得られる導電性塗膜の耐光性が高く、紫外光が照射されても表面抵抗が上昇しにくい導電性高分子塗料を提供することを目的とする。また、耐光性が高く、紫外光が照射されても表面抵抗が上昇しにくい導電性塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] π共役系導電性高分子とポリアニオンと下記化学式(1)で表される化合物とアミン化合物とアクリル化合物と分散媒とを含有し、化学式(1)で表される化合物の含有量Aと、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計含有量Bとの質量比(A/B)が5〜35であり、前記アクリル化合物が、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリアクリルアクリレートよりなる群からなる1種以上であることを特徴とする導電性高分子塗料。
(式中、R,Rは、各々独立して、水素原子または任意の置換基である。)
[2] [1]に記載の導電性高分子塗料が塗布されて形成されたことを特徴とする導電性塗膜。
【0008】
【化1】
【発明の効果】
【0009】
本発明のπ共役系導電性高分子塗料から得られる導電性塗膜の耐光性が高く、紫外光が照射されても表面抵抗が上昇しにくい。また、本発明のπ共役系導電性高分子塗料は安定性に優れる。
本発明の導電性塗膜は、耐光性が高く、紫外光が照射されても表面抵抗が上昇しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<導電性高分子塗料>
本発明の導電性高分子塗料は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと化学式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」という。)とアミン化合物とアクリル化合物と分散媒とを含有する。
【0011】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であり、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。なかでも、重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。さらに、極性溶剤との相溶性及び透明性の点から、ポリオフェン類が好ましい。
【0012】
π共役系導電性高分子は無置換のままでもよいが、充分な導電性、バインダ樹脂との相溶性を得るためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0013】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0014】
(ポリアニオン)
ポリアニオンとは、アニオン基を有する構成単位を有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、スルホン酸基、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホン酸基、一置換硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0015】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、分散性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0016】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、分散性および溶解性が低くなり、均一な溶液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0017】
ポリアニオンがπ共役系導電性高分子にドープすることにより、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体が形成される。
ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるから、複合体を水に可溶化させる役割を果たす。
【0018】
(化合物1)
化合物1中、R、Rは、各々独立して、水素原子または任意の置換基である。
好ましいRとしては、水素原子、アルキル基が挙げられ、好ましいRとしては、アルキル基、1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン基が挙げられる。前記アルキル基の一部の水素は、化合物1のR以外の部分で置換されてもよい。
化合物1の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(以下、「化合物1−a」という。)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(以下、「化合物1−b」という。)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、β−メルカプトプロピオン酸、メチル−3−メルカプトプロピオネート、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、メトキシブチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスルトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0019】
化学式(1)で表される化合物の含有量Aと、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計含有量Bとの質量比(A/B)は5〜35であり、15〜35であることが好ましい。(A/B)が前記下限値未満であると、該導電性高分子塗料から形成される塗膜の耐光性が不充分になり、前記上限値を超えると、導電性が不充分になる。
【0020】
(アミン化合物)
アミン化合物はポリアニオンのアニオン基に配位もしくは結合して、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体の有機溶剤に対する分散性を向上させることができる。したがって、分散媒として有機溶剤を用いた場合には、複合体の有機溶剤分散液を調製することができる。
アミン化合物としては、ポリアニオンのアニオン基に配位もしくは結合するものであれば特に制限されない。ここで、「配位もしくは結合する」とは、ポリアニオンとアミン化合物とが電子を互いに供与/受容することにより、それらの分子間距離が短くなる結合形態のことである。
アミン化合物としては、分子内に窒素原子を有する化合物が挙げられる。具体的には、1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミンが挙げられる。
1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン等が挙げられる。
3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、イミダゾール、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾール、N−ペンチル−イミダゾール、N−ヘキシル−イミダゾール、N−ヘプチル−イミダゾール、N−オクチル−イミダゾール、N−デシル−イミダゾール、N−ウンデシル−イミダゾール、N−ドデシル−イミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等が挙げられる。
【0021】
導電性高分子塗料へのアミン化合物の添加量は、導電性高分子塗料を100質量%とした際の0.1〜50質量%とすることが好ましく、1〜20質量%とすることがより好ましい。アミン化合物の添加量が前記下限値以上であれば、導電性高分子の析出性が高くなり、固形物を確実に得ることができる。しかし、前記上限値を超えても、析出性の向上効果は頭打ちとなるから、無益である。
【0022】
(アクリル化合物
導電性高分子塗料がアクリル化合物を含有することにより、実用性の高い塗膜強度を得ることができる。
アクリル化合物としては、活性エネルギー線硬化性アクリル化合物が好ましい。活性エネルギー線硬化性アクリル化合物を含有すると、活性エネルギー線を照射して硬化する際に、化合物1の一部がアクリル化合物と反応して塗膜強度を向上させることができる。
【0023】
アクリル化合物としては、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート類、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アルキルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート類、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−ビニルホルムアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等のアクリル(メタクリル)アミド類、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、酪酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類の単官能モノマー並びに多官能モノマーが挙げられる。
さらに、アクリルモノマーを反応させ合成した、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリアクリルアクリレートなどの多官能アクリレート等が挙げられる。これらアクリル化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
アクリル化合物の含有量は、前記複合体100質量部に対して1000〜100000質量部であることが好ましく、3000〜50000質量部であることがより好ましい。アクリル化合物が前記下限値以上であれば、得られる導電性塗膜の強度を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、充分な導電性を確保できる。
【0025】
(分散媒)
分散媒としては、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶剤との混合物としてもよい。
【0026】
<導電性塗膜>
本発明の導電性塗膜は、上記導電性高分子塗料が塗布されて形成された塗膜である。
導電性塗膜は、通常、基材上に塗布されて形成される。ここで、基材としては樹脂製の基材であれば特に制限されないが、導電性塗膜は透明性を有するため、基材も透明であることが好ましい。
透明基材を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。また、ガラスなども使用できる。
【0027】
導電性高分子塗料の塗布方法として、例えば、バーコーティング、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、スプレーコーティング、フレキソ印刷、グラビア印刷などが適用される。導電性高分子塗料の塗布後には、硬化処理を施すことが好ましい。
硬化方法としては、加熱または光照射が適用される。加熱方法としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。また、光照射により硬化する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外光を照射する方法を採用できる。
紫外光照射における照度は100mW/cm以上が好ましい。照度が100mW/cm未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本発明における照度は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300〜390nm、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
【0028】
(導電性塗膜の厚さ)
導電性塗膜の厚さは0.001〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましい。導電性塗膜の厚みが0.001μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、10μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0029】
(作用効果)
本発明者が調べた結果、本発明の導電性高分子塗料から得られる導電性塗膜は、上記化合物1を含有することにより耐光性が高くなり、紫外光が照射されても表面抵抗が上昇しにくいことがわかった。
【実施例】
【0030】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0031】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の水分散液の合成
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
【0032】
(製造例3)導電性高分子塗料の調製
PEDOT−PSS分散液1000gを凍結乾燥して、12gのPEDOT−PSSの粉体を得た。得られたPEDOT−PSSの粉体12.0gにイソプロパノール2882gとトリオクチルアミン106gを加え、攪拌して、濃度0.4質量%のPEDOT−PSSのイソプロパノール分散液を得た。
【0033】
(実施例1)
製造例3で得たPEDOT−PSSの分散液75gに、10gのペンタエリスリトールトリアクリレートと15gのジアセトンアルコールと0.2gのチバ・ジャパン社製イルガキュア127と1.5gの化合物1−aを添加し、撹拌して導電性高分子塗料を得た。
そして、その導電性高分子塗料を#16のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、乾燥して導電性塗膜を形成し、該塗膜の表面抵抗値を測定した。また、導電性塗膜にカーボンアークにより紫外光を48時間照射した後、表面抵抗値を測定した。
なお、導電性塗膜の表面抵抗値(Ω/□)はハイレスタ(三菱化学製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0034】
(実施例2)
実施例1において化合物1−aの添加量を5gとしたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、紫外光照射前と紫外光照射後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0035】
(実施例3)
実施例1において化合物1−aの添加量を10gとしたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、紫外光照射前と紫外光照射後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0036】
(実施例4)
実施例1において化合物1−aの代わりに化合物1−bを3g添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、実施例1と同様に紫外光照射前と紫外光照射後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
実施例1において化合物1−aの添加量を1gとしたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、紫外光照射前と紫外光照射後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0038】
(比較例2)
実施例1において化合物1−aの添加量を15gとしたこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し、紫外光照射前と紫外光照射後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0039】
(比較例3)
実施例1において化合物1−aの代わりにドデカンチオール5gを添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を形成し 紫外光照射前と紫外光照射後の表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
化合物1の含有量とπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計含有量との質量比が本発明の範囲内であった実施例1〜4の導電性塗膜は、紫外線照射前の表面抵抗が小さく、紫外光照射後の表面抵抗の上昇が抑えられていた。
これに対し、化合物1の含有量とπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計含有量との質量比が本発明の範囲内より小さかった比較例1の導電性塗膜は、紫外光照射後の表面抵抗の上昇が抑えられていなかった。
化合物1の含有量とπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計含有量との質量比が本発明の範囲内より大きかった比較例2の導電性塗膜は、紫外線照射前の表面抵抗が大きかった。すなわち、導電性が不充分であった。なお、比較例2では、紫外線照射前の表面抵抗が大きかったため、紫外線照射後の表面抵抗は測定しなかった。
また、π共役系導電性高分子とポリアニオンを含むが、化合物1の代わりにドデカンチオールを含む比較例3の導電性塗膜は、紫外光照射後の表面抵抗の上昇が大きかった。このことは、一般的構造のチオール化合物は、紫外光照射による表面抵抗の上昇を抑える効果を有さないことを示している。