【文献】
ABDUL AWWAL et al.,Characterization and Operation of a Liquid Crystal Adaptive Optics Phoropter,Proc. of SPIE,2003年12月31日, VOL.5169,p.104-122
【文献】
HONGXIN HUANG et al.,Adaptive aberration compensation sysytem using a high-resolution liquid crystal on silicon spatial phase modulator,Proc. of SPIE,2008年12月 3日,VOL.7156,p.71560F-1-71560F-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源若しくは観察対象物からの光像を受ける波面変調素子と、前記波面変調素子からの光像を受けて該光像の波面形状を計測する波面センサとを備え、前記波面変調素子に表示されるパターンを前記波面センサにより計測された前記波面形状に基づいて制御することにより波面歪みを補償する補償光学システムの調整方法であって、
所定位置に特異点を含むパターンである特異点生成パターンを前記波面変調素子に表示させる第1ステップと、
前記特異点生成パターンにより変調された光像が前記波面センサに入射したときの波面形状である調整用波面形状を前記波面センサにおいて計測する第2ステップと、
前記波面センサにおける計測結果から、前記調整用波面形状における前記特異点の位置を検出する第3ステップと、
前記第3ステップにおいて検出された前記特異点の位置の、前記所定位置に対する位置ずれに基づいて、前記波面センサにおいて計測される波面形状と前記波面変調素子に表示される補償用のパターンとの位置ずれを調整する第4ステップと
を含むことを特徴とする、補償光学システムの調整方法。
前記第3ステップの際、前記調整用波面形状において、前記波面センサを構成する単位領域毎に位相勾配の閉経路積分値を算出し、該閉経路積分値がピークとなる前記単位領域の位置(以下、ピーク位置という)を求め、前記特異点が前記ピーク位置の前記単位領域に含まれるものとして前記特異点の位置を検出することを特徴とする、請求項1に記載の補償光学システムの調整方法。
前記ピーク位置の周囲に位置する前記単位領域の前記閉経路積分値に基づいて、前記ピーク位置の前記単位領域内での前記特異点の位置を算出することを特徴とする、請求項2に記載の補償光学システムの調整方法。
前記特異点検出部が、前記調整用波面形状において、前記波面センサを構成する単位領域毎に位相勾配の閉経路積分値を算出し、該閉経路積分値がピークとなる前記単位領域の位置(以下、ピーク位置という)を求め、前記特異点が前記ピーク位置の前記単位領域に含まれるものとして前記特異点の位置を検出することを特徴とする、請求項6に記載の補償光学システム。
前記特異点検出部が、前記ピーク位置の周囲に位置する前記単位領域の前記閉経路積分値に基づいて、前記ピーク位置の前記単位領域内での前記特異点の位置を算出することを特徴とする、請求項7に記載の補償光学システム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明による補償光学システムの調整方法および補償光学システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
(実施の形態)
図1は、本実施形態に係る補償光学システム10Aの概要を示す図である。補償光学システム10Aは、例えば眼科検査装置、レーザ加工装置や、顕微鏡装置、または補償光学装置に組み込まれる。
【0026】
この補償光学システム10Aは、波面センサ11、波面変調素子12、制御部13A、ビームスプリッタ14、リレーレンズ15及び16を備えている。波面センサ11は、波面変調素子12から到達した光像L1の波面形状(典型的には光学系の収差によって現れ、波面の歪み、すなわち基準波面からの波面のずれを表す)を計測して、その計測結果を示す計測信号S1を制御部13Aに提供する。波面変調素子12は、光像L1の波面を制御する素子であり、例えば空間光変調素子(SLM)によって構成される。制御部13Aは、波面センサ11から得られた計測信号S1に基づいて、波面変調素子12に適切なパターンを与えるための制御信号S2を生成する。
【0027】
ビームスプリッタ14は、波面センサ11と波面変調素子12との間に配置され、光像L1を分岐する。ビームスプリッタ14は偏光方向非依存型、偏光方向依存型、或いは、波長依存型(ダイクロイックミラー)のビームスプリッタのいずれでもよい。ビームスプリッタ14によって分岐された光像L1は、例えばCCDや光電子増倍管、アバランシェ・フォトダイオードといった光検出素子に送られる。この光検出素子は、例えば走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope;SLO)、光断層撮影装置(Optical Coherence Tomography;OCT)、眼底カメラ、顕微鏡、望遠鏡等に組み込まれたものである。リレーレンズ15及び16は、波面センサ11と波面変調素子12との間において光軸方向に並んで配置される。これらのリレーレンズ15,16によって、波面センサ11と波面変調素子12とは、互いに光学的な共役関係に保たれる。なお、波面センサ11と波面変調素子12との間には、光学結像レンズ及び/又は偏向ミラーなどが更に配置されてもよい。
【0028】
図2は、本実施形態の波面センサ11の構成を概略的に示す断面図であって、光像L1の光軸に沿った断面を示している。波面センサ11には干渉型と非干渉型とがあるが、本実施形態では、波面センサ11として、レンズアレイ110及びイメージセンサ112を有する非干渉型のシャックハルトマン型波面センサを用いる。このような非干渉型の波面センサ11を用いると、干渉型の波面センサ11を用いる場合と比較して、耐震性が優れており、また、波面センサの構成及び計測データの演算処理を簡易にできる利点がある。
【0029】
イメージセンサ112は、レンズアレイ110を構成する複数のレンズ114の後焦点面と重なる位置に受光面112aを有しており、レンズ114による集光像の強度分布を検出する。レンズ114による集光像の位置と基準位置とのずれの大きさは、レンズ114に入射する光像L1の局所的な波面の傾きに比例するので、基準位置からの集光像位置のずれの大きさをレンズ114毎に検出することによって、入射波面の位相勾配の分布を容易に得ることができる。
【0030】
ここで、集光像位置のずれの大きさを計算する為に用いられる基準位置としては、複数のレンズ114それぞれの光軸と、イメージセンサ112の受光面112aとが交わる位置が好適である。この位置は、平行平面波を各レンズ114に垂直入射させて得られる集光像を用いて、重心計算により容易に求められる。
【0031】
図3は、レンズアレイ110を光像L1の光軸方向から見た図である。
図3に示されるように、レンズアレイ110の複数のレンズ114は、例えばM行N列(N,Mは2以上の整数)の二次元格子状に配置されている。なお、イメージセンサ112の受光面112aを構成する各画素も二次元格子状に配置されており、その水平方向および垂直方向はレンズアレイ110の水平方向および垂直方向とそれぞれ一致する。但し、イメージセンサ112の画素ピッチは、基準位置からの集光像位置のずれの大きさを高い精度で検出できるように、レンズ114のピッチよりも十分に小さくなっている。
【0032】
波面変調素子12は、光源若しくは観察対象物からの光像L1を受け、その光像L1の波面を変調して出力する素子である。具体的には、波面変調素子12は、二次元格子状に配列された複数の画素(制御点)を有しており、制御部13Aから入力される制御信号S2に応じて各画素の変調量(例えば位相変調量)を変化させる。なお、波面変調素子12は、空間光変調素子(Spatial Light Modulator;SLM)とも称される。波面変調素子12には、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)型空間光変調器、液晶表示素子と光アドレス式液晶空間光変調器とが結合されて成る電気アドレス式の空間光変調器、微小電気機械素子(Micro Electro Mechanical Systems;MEMS)、といったものがある。なお、
図1には反射型の波面変調素子12が示されているが、波面変調素子12は透過型であってもよい。
【0033】
図4は、本実施形態の波面変調素子12の一例として、LCOS型の波面変調素子を概略的に示す断面図であって、光像L1の光軸に沿った断面を示している。この波面変調素子12は、透明基板121、シリコン基板122、複数の画素電極123、液晶部(変調部)124、透明電極125、配向膜126a及び126b、誘電体ミラー127、並びにスペーサ128を備えている。透明基板121は、光像L1を透過する材料からなり、シリコン基板122の主面に沿って配置される。複数の画素電極123は、シリコン基板122の主面上において二次元格子状に配列され、波面変調素子12の各画素を構成する。透明電極125は、複数の画素電極123と対向する透明基板121の面上に配置される。液晶部124は、複数の画素電極123と透明電極125との間に配置される。配向膜126aは液晶部124と透明電極125との間に配置され、配向膜126bは液晶部124と複数の画素電極123との間に配置される。誘電体ミラー127は配向膜126bと複数の画素電極123との間に配置される。誘電体ミラー127は、透明基板121から入射して液晶部124を透過した光像L1を反射して、再び透明基板121から出射させる。
【0034】
また、波面変調素子12は、複数の画素電極123と透明電極125との間に印加される電圧を制御する画素電極回路(アクティブマトリクス駆動回路)129を更に備えている。画素電極回路129から何れかの画素電極123に電圧が印加されると、該画素電極123と透明電極125との間に生じた電界の大きさに応じて、該画素電極123上の液晶部124の屈折率が変化する。したがって、液晶部124の当該部分を透過する光像L1の光路長が変化し、ひいては、光像L1の位相が変化する。そして、複数の画素電極123に様々な大きさの電圧を印加することによって、位相変調量の空間的の分布を電気的に書き込むことができ、必要に応じて様々な波面形状を実現することができる。
【0035】
再び
図1を参照する。この補償光学システム10Aでは、まず、図示しない光源若しくは観察対象物からの光像L1が、ほぼ平行な光として波面変調素子12に入射する。そして、波面変調素子12によって変調された光像L1は、リレーレンズ15及び16を経てビームスプリッタ14に入射し、2つの光像に分岐される。分岐後の一方の光像L1は、波面センサ11に入射する。そして、波面センサ11において光像L1の波面形状(例えば位相分布)を含むデータが取得され、その結果を示す計測信号S1が制御部13Aに提供される。制御部13Aは、波面センサ11からの計測信号S1に基づいて、必要に応じて光像L1の波面形状(位相分布)を算出し、光像L1の波面歪みを適切に補償するためのパターンを含む制御信号S2を波面変調素子12へ出力する。その後、波面変調素子12によって補償された歪みのない光像L1は、ビームスプリッタ14により分岐して、図示しない光学系を経て光検出素子に入射し、撮像される。
【0036】
ここで、波面変調素子12の変調面、および波面センサ11の検出面における座標系を次のように設定する。すなわち、波面変調素子12の変調面に平行であり且つ互いに直交する二方向を該変調面におけるx軸方向およびy軸方向とし、波面センサ11の検出面に対して平行であり且つ互いに直交する二方向を該検出面におけるx軸方向およびy軸方向とする。但し、波面変調素子12の変調面におけるx軸と、波面センサ11の検出面におけるx軸とは互いに逆向きであり、波面変調素子12の変調面におけるy軸と、波面センサ11の検出面におけるy軸とは互いに逆向きである。また、波面変調素子12の変調面中心を原点とする座標を(Xs,Ys)とし、波面センサ11の検出面中心を原点とする座標を(Xc,Yc)とする。
【0037】
このとき、波面変調素子12の変調面上の位置(Xs,Ys)における波面の位相は、波面センサ11の検出面上の位置(Xc,Yc)における波面の位相に一対一で写像されることとなり、変調面と検出面とに回転ズレがない場合、これらの関係は次式(1)で表される。
【数1】
但し、Mはリレーレンズ15,16の倍率である。また、(Xs
0,Ys
0)は、波面センサ11の検出面上の座標原点に投影された、波面変調素子12の変調面上の座標であり、変調面と検出面との位置ずれ量を表す。倍率Mは既知であることが多いので、変調面と検出面とに回転ズレが無い場合、補償光学システム10Aの調整(キャリブレーション)とは、上記(Xs
0,Ys
0)の値を調べ、この値をゼロに近づける(若しくは、波面変調素子12に与えるパターンと波面センサ11から得られる波面形状との対応付けに際し、上記(Xs
0,Ys
0)の値を考慮する)ことに相当する。
【0038】
本実施形態に係る補償光学システムの調整方法では、調整のための特殊なパターンを波面変調素子12に表示させ、波面センサ11においてそのパターンにより生じる特徴を検出することで、波面センサ11において計測される波面形状と波面変調素子12に表示されるパターンとの位置ずれ量を取得し、その位置ずれ量に基づいて調整(キャリブレーション)を行う。
【0039】
具体的には、所定位置に特異点を含むパターン(以下、特異点生成パターンという)を制御部13Aが生成し、この特異点生成パターンを示す制御信号を波面変調素子12へ送る。特異点生成パターンの例としては、例えば、らせん状の波面形状を有するラゲールガウスビームのモードを発生させるホログラムがある。波面変調素子12は、この特異点生成パターンを表示する。そして、波面センサ11は、波面変調素子12から出力された、特異点生成パターンの影響を受けた光像L1の波面形状(以下、調整用波面形状という)を計測して、その計測結果を示す計測信号S1を制御部13Aに提供する。制御部13Aは、波面センサ11から得られた計測信号S1に基づいて、特異点を検出する。そして、制御部13Aは、その特異点の中心位置と、波面変調素子12に表示されている特異点生成パターンの特異点の中心位置とを相互に対応付けることによって、キャリブレーションを行う。
【0040】
ここで、制御部13Aにおける特異点の検出は、例えば、波面センサ11によって計測された位相勾配から、調整用位相分布において波面センサ11を構成する単位領域毎に閉経路積分を計算し、その閉経路積分値の分布を求めることによって好適に行われる。なお、ここでいう単位領域とは、波面センサ11を構成するレンズアレイ110において一つのレンズ114が占める領域に相当する。すなわち、閉経路積分値がピークとなる単位領域の位置(以下、ピーク位置という)を求め、特異点が該ピーク位置の単位領域に含まれるものとして、特異点の位置を検出することができる。更に、ピーク位置の周囲に位置する単位領域の閉経路積分値に基づいて、ピーク位置の単位領域内での特異点の更に詳細な位置を算出することができる。
【0041】
このような閉経路積分による特異点の検出方法について更に詳しく説明する。一般的に、閉経路に沿った位相関数の位相勾配の積分値は、次の数式(2)及び(3)によって求められる。
【数2】
【数3】
【0042】
ここで、「(ナブラ)φ」は位相分布φの位相勾配(一次微分)である。また、Cは、互いに直交するx軸及びy軸によって構成される平面内の或る閉経路であり、dlは閉経路Cに沿った微小積分線素であり、mは整数である。
【0043】
上式(2)及び(3)は、位相勾配の閉経路積分値が2πのm倍であることを意味する。ここで、整数mは、閉経路Cにより囲まれる領域内の特異点の総トポロジカル・チャージである。閉経路Cにより囲まれる領域内に特異点が無い場合には、上式(2)の閉経路積分値はゼロとなる。一方、閉経路Cにより囲まれる領域内に特異点が存在する場合には、上式(2)の閉経路積分値はゼロとはならない。従って、位相勾配の閉経路積分値を計算することにより、当該閉経路Cにより囲まれる領域内に特異点が存在するか否かがわかる。
【0044】
しかしながら、上述した方法では、閉経路Cにより囲まれる領域内での特異点の詳細な位置は不明である。
【0045】
通常、一つの閉経路を特定するためには3つ以上のサンプリング点が必要であるが、上述した方法により得られる特異点の位置精度は、サンプリング間隔の程度でしかない。つまり、特異点の位置精度は波面センサ11の空間分解能と同等の精度でしかなく、例えば波面センサ11としてシャックハルトマン型波面センサを用いる場合、この位置精度は、波面センサ11が有するレンズアレイ110のピッチと同等になる。したがって、特異点の位置精度を高めるためには、例えば波面センサ11のレンズアレイ110のピッチができるだけ小さいことが望ましい。しかし、ピッチを含めたレンズアレイ110の仕様は、計測しようとする波面の歪みの大きさによって主に決定されるので、レンズアレイ110のピッチを変更することは容易ではない。
【0046】
また、上の数式(2)のような連続的な積分式は理論解析では有効であるが、実用上は、連続的な積分式に代えて、次の数式(4)のような離散的な積分式を用いることが多い。数式(4)によって求められるD(i,j)は、厳密には数式(2)の近似値であるが、実用上、これを閉経路積分値と称して差し支えない。以下、数式(4)のような離散的な式を用いて算出される閉経路積分値を循環値と称する。
【数4】
【0047】
なお、上の数式(4)において、wは波面センサ11のレンズ114のピッチであり、(i,j)は波面センサ11の各レンズ114の位置であり、Gx(i,j)及びGy(i,j)は、それぞれ各レンズ位置(i,j)において計測された位相勾配のx成分及びy成分である。各レンズ位置(i,j)において計測された位相勾配の成分Gx(i,j)及びGy(i,j)は、各レンズによって分割された単位波面内の位相分布の一次微分の平均値である(次の数式(5)を参照)。また、数式(4)により求められる循環値D(i,j)は、
図5に示されるように、互いに隣接する2×2のレンズ114の中心同士を結ぶ四角形(すなわち、上述した単位領域)の経路Cに沿った値である。
【数5】
【0048】
また、
図6は、特異点位置を様々に変化させて数値計算を行った結果得られた、循環値の分布を示す図である。なお、
図6において、縦軸および横軸は、
図5のx軸およびy軸と同じである。また、
図6では、循環値の大きさが色の明暗によって示されており、明るい領域ほど循環値が大きい。
図6から明らかなように、循環値は、特異点の位置によって大きく異なる。特異点が閉経路の中心に存在する場合(すなわち、レンズ交点と一致する場合)に循環値が最大となり、その位置から遠ざかるほど循環値が小さくなる。
【0049】
本実施形態では、調整用位相分布において波面センサ11を構成するこのような単位領域毎に循環値D(i,j)を算出し、その循環値D(i,j)の分布を求める。そして、循環値D(i,j)のピーク位置を求め、特異点の位置を、該ピーク位置の単位領域内にて特定する。更に、このピーク位置の周囲に位置する単位領域の循環値に基づいて、ピーク位置の単位領域内での特異点の更に詳細な位置を算出することができる。なお、その詳細な方法については、以下の各実施例および各変形例にて詳述する。
【0050】
(第1の実施例)
続いて、本発明に係る補償光学システムの調整方法の第1実施例について説明する。
図7は、本実施例における補償光学システム10Bの構成を示す図である。
図7に示されるように、この補償光学システム10Bは、波面センサ11、波面変調素子12、制御部13B、ビームスプリッタ14、及び制御回路部19を備えている。なお、波面センサ11及び波面変調素子12の詳細な構成は、上記実施形態と同様である。また、制御回路部19は、制御部13Bから制御信号S2を受けて、この制御信号S2に基づく電圧を波面変調素子12の複数の電極に与える電子回路である。
【0051】
本実施例の制御部13Bは、特異点生成パターン作成部101及び特異点検出部102を備えている。以下、これらの構成及び動作の詳細について説明する。なお、
図8は、補償光学システム10Bにおける調整方法(キャリブレーション方法)を示すフローチャートである。
【0052】
特異点生成パターン作成部101は、制御部13Bにおいて特異点生成パターンを作成する部分である。特異点生成パターン作成部101が作成する特異点生成パターンは、例えば、次の数式(6)に示されるような、らせん状の位相分布を有するホログラムである。数式(6)に示される特異点生成パターンによって生成される光像は、動径指数p=0、偏角指数q=mのラゲールガウス(LG)モードのビーム(光渦ビームとも称される)となる。
【数6】
但し、数式(6)において、
【数7】
である。なお、arctan()の範囲は0〜2πである。θ
0は或る定数である。
【0053】
上の数式(6)及び(7)において、(x,y)は波面変調素子12における画素座標の変数であり、(x
0,y
0)はらせん状位相分布の中心点の座標であり、(r,θ)は中心点(x
0,y
0)を原点とする極座標の変数である。また、mは、生成される特異点の次数を表すトポロジカル・チャージ(topological charge)であって、ゼロではない整数である。mが正である場合には、上の数式(6)で表される位相分布は順時計回りのらせん状位相分布となり、mが負である場合には逆時計回りのらせん状位相分布となる。
【0054】
本実施例では、特異点生成パターン作成部101が例えば数式(6)のような位相分布を発生する制御信号S2を生成する。この制御信号S2は制御回路部19へ出力され、制御回路部19は、この制御信号S2に基づく電圧を、波面変調素子12の各画素電極に印加する(
図8のステップS01、第1ステップ)。また、これと並行して、キャリブレーション用の光が波面変調素子12に入射される。このキャリブレーション用の光は、波面変調素子12に呈示されているらせん状位相分布によって位相変調されたのち、波面変調素子12から出射する。このとき、波面変調素子12から出射する光像は、特異点を有する光渦ビームとなる。この光像は、波面センサ11に入射する。波面センサ11は、この光像を計測して計測信号S1を出力する(
図8のステップS02、第2ステップ)。
【0055】
波面変調素子12と波面センサ11との間に、光の位相分布の不連続性を発生させる媒体がない場合、波面センサ11に入射する光は、波面変調素子12から出射された直後の光とほぼ同様の、らせん状位相分布を有することとなる。この光像は、波面センサ11によって検出される。
【0056】
なお、光の位相分布の不連続性を発生させる媒体がないとは、光の振幅分布や位相分布を大きく乱す散乱媒体がないことをいう。例えばレンズやミラーといった光学素子は光の位相を大きく乱さないので、これらの光学素子は波面変調素子12と波面センサ11との間に配置されてもよい。
【0057】
特異点検出部102は、例えば前述したような位相勾配の閉経路積分法によって特異点の位置を検出する(
図8のステップS03、第3ステップ)。以下、特異点検出部102における特異点の位置検出方法の詳細について説明する。
【0058】
いま、波面センサ11のレンズアレイ110において、複数のレンズ114が等間隔の2次元格子状(M行N列)に配列されているものとする。このとき、
図5に示されたように、互いに隣接する4つのレンズ114の交点(以降、レンズ交点という)Pを囲む閉経路(単位領域)Cに沿った位相勾配の循環値は、前述した数式(4)によって求められる。
【0059】
なお、数式(4)によって算出される位相勾配の循環値は、2πの整数倍ではなく、特異点の位置によって変化する。具体的には、特異点が閉経路Cの中心にあるとき、すなわち特異点がレンズ交点Pと一致するときには、位相勾配の循環値は最大となる。そして、特異点がレンズ交点Pから離れるほど、位相勾配の循環値は小さくなる。このような循環値の特性は、波面センサ11の平均化及び離散化によって得られる効果である。
【0060】
本実施例では、以下に説明する方法を用いて特異点を検出する。
図9は、本実施例に係る特異点検出方法を示すフローチャートである。
【0061】
<多点重心の計算>
まず、多点重心を算出する(
図9のステップS11)。いま、波面センサ11から得られる計測信号S1が示す多点画像をI(u,v)とする。或るレンズ(i,j)によって形成される点像の重心座標(u
c(i,j),v
c(i,j))は、次の数式(8)、(9)により算出される。ここで、A
ijは、イメージセンサ112の受光面112aに投影されるレンズ(i,j)の領域である。また、(u,v)はイメージセンサ112の画素座標である。以下、画素(u,v)を計測点と称する。
【数8】
【数9】
【0062】
なお、上述した多点重心計算を行う前に、多点画像I(u,v)において平均処理、バイアス引き算処理、ノイズ低減処理などの前処理を行ってもよい。また、上述した多点重心計算は、イメージセンサ112に内蔵された重心演算回路によって行われても良い。
【0063】
<擬似位相勾配の計算>
次に、擬似位相勾配の計算を行う(
図9のステップS12)。いま、レンズ(i,j)の基準位置を(u
r(i,j),v
r(i,j))とする。なお、基準位置(u
r(i,j),v
r(i,j))は、波面センサ11の構造によって決定され、このキャリブレーション作業の前に予め取得される。典型的には、この基準位置は、各々のレンズ114の光軸とイメージセンサ112の受光面112aとの交点である。或いは、ほぼ平行な光を予め波面センサ11に垂直入射させ、そのときに記録した多点画像から重心計算により求められた重心位置を基準位置としてもよい。また、波面変調素子12に一様な位相パターンが表示されている状態で、ほぼ平行な光ビームを波面変調素子12に入射させ、そのとき波面センサ11から出力された多点画像から重心計算により求められた重心位置を基準位置としてもよい。
【0064】
特異点を含む光がレンズ(i,j)に入射したときの、基準位置からの点像位置のずれ量は次の数式(10)によって算出される。
【数10】
【0065】
なお、上の数式(10)に代えて、次の数式(11)を用いて擬似位相勾配を計算してもよい。数式(11)において、aはゼロではない任意の定数である。a=1/f(fはレンズアレイ110のレンズ114の焦点距離)である場合、S
x,S
yは点像ずれにより計測される実際の位相勾配となる。
【数11】
【0066】
<循環値分布の計算>
続いて、循環値分布の計算を行う(
図9のステップS13)。すなわち、次の数式(12)を用いて、互いに隣接する2×2のレンズ交点Pを中心点とする四角形の閉経路C上の循環値を計算する(
図5を参照)。なお、数式(12)において、i=0,・・・,N−2であり、j=0,・・・,M−2である。
【数12】
なお、閉経路Cの中心点、すなわち4つのレンズ交点Pは、次の数式(13)によって計算できる。
【数13】
【0067】
<特異点位置の整数部の計算>
続いて、特異点位置の整数部の計算を行う(
図9のステップS14)。数式(12)によって算出された循環値の分布に基づいて、循環値がピーク(すなわち絶対値が最大)となるレンズ位置(i
max,j
max)を求める。そして、4つのレンズの位置(i
max,j
max)、(i
max+1,j
max)、(i
max,j
max+1)、及び(i
max+1,j
max+1)の交わる点の位置(u
c1,v
c1)を、次の数式(14)によって計算する。
【数14】
なお、(u
r(i
max,j
max),v
r(i
max,j
max))は、レンズ位置(i
max,j
max)における基準位置である。上記の計算の結果得られる位置(u
c1,v
c1)は、特異点の位置座標の整数部となる。
【0068】
<特異点位置の小数部の計算>
続いて、特異点位置の小数部の計算を行う(
図9のステップS15)。すなわち、<特異点位置の整数部の計算>において算出された、循環値がピークとなるレンズ位置(i
max,j
max)の近傍における循環値の分布に基づいて、特異点の位置座標の小数部を計算する。具体的には、次の数式(15)のように、循環値C(i
max,j
max)の近傍において重心計算を行うことにより、小数部(u
c2,v
c2)を算出する。
【数15】
但し、数式(15)において、wはレンズアレイ110のレンズピッチであり、p
ccdはイメージセンサ112の画素ピッチである。また、m
0は、循環値C(i
max,j
max)の近傍で計算される0次モーメントであり、m
x及びm
yは、それぞれx方向及びy方向の1次モーメントである。例えばピーク位置の3×3近傍で重心計算の場合には、m
0、m
xおよびm
yは、次の数式(16)によって算出される。
【数16】
【0069】
<整数部と少数部の合計>
最後に、整数部と少数部とを合計することにより、特異点の位置座標を求める(
図9のステップS16)。すなわち、次の数式(17)に示されるように、<特異点位置の整数部の計算>において算出された整数部と、<特異点位置の小数部の計算>において算出された小数部との和を求めることにより、特異点の正確な位置を算出する。
【数17】
つまり、本実施例により算出された特異点の位置は数式(17)の(u
c,v
c)となる。この特異点は、波面変調素子12上の位置(x
0,y
0)を中心とするらせん状の位相パターンによって発生したものである。従って、波面センサ11の検出面における座標(u
c,v
c)は、波面変調素子12の変調面上における座標(x
0,y
0)に対応していることとなる。
【0070】
なお、波面センサ11の検出面上における1つの位置座標(u
c1,v
c1)と、波面変調素子12の変調面上の位置座標(x
01,y
01)との対応関係が判明すれば、他の任意の位置同士の関係は容易に得られる。
【0071】
以上のようにして求められた特異点の位置の検出面における座標(u
c,v
c)と、波面変調素子12の変調面上における座標(x
0,y
0)とに基づいて、制御部13Bは、波面センサ11から得られる計測信号S1と、波面変調素子12へ送る制御信号S2との間の位置ずれの調整(キャリブレーション)を行う(第4ステップ)。
【0072】
ここで、特異点の検出方法に関する幾つかの変形例を説明する。まず、第1の変形例として、以下の検出方法がある。
【0073】
(第1の変形例)
上述した<特異点位置の小数部の計算>において、0次モーメントおよび1次モーメントを算出する際、循環値がピークとなる位置(i
max,j
max)の循環値と、その位置(i
max,j
max)に隣接する周囲の循環値、すなわち3×3=9個の循環値を用いた。この方法に限らず、例えば9個の循環値のうち一部(例えば5個や4個の循環値)を使用して0次モーメントおよび1次モーメントを算出してもよい。
【0074】
例えば、9個の循環値のうち5個の循環値を使用する場合、次の数式(18)によって小数部(u
c2,v
c2)を算出する。
【数18】
但し、数式(18)において、wはレンズアレイ110のレンズピッチであり、p
ccdはイメージセンサ112の画素ピッチである。また、Δ
xおよびΔ
yは、例えば次の数式(19)によって算出される。
【数19】
【0075】
なお、9個の循環値の中から上記の演算に使用する循環値を選択する際、例えば予め設定された閾値より大きい循環値を選択してもよい。或いは、9個の循環値のうち、最も値の大きいものから順に所定の個数の循環値を選択して演算に使用してもよい。
【0076】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例として、次のような検出方法がある。すなわち、上記の実施例において、特異点の検出は、制御部13Bの特異点検出部102が行っている。このような形態に限らず、特異点検出部の検出を波面センサ11の内部で行い、その結果(すなわち特異点の位置(u
c,v
c))のみを波面センサ11が出力するように補償光学システムが構成されてもよい。或いは、特異点の検出のための計算の一部(例えば多点重心の計算)を波面センサ11の内部で行い、他の処理を制御部13Bにて行ってもよい。
【0077】
(第3の変形例)
次に、第3の変形例として、次のような検出方法がある。すなわち、第1実施例では、特異点の位置(u
c,v
c)の小数部(u
c2,v
c2)を、循環値がピークとなるレンズ位置(i
max,j
max)の近傍における循環値の分布に基づく重心計算により求めている。このような重心計算による方法の他に、例えば、予め求められた循環値の理論値と、波面センサ11からの計測信号S1に基づく循環値とを比較することによって、小数部(u
c2,v
c2)を求めることができる。
【0078】
まず、循環値の理論値の分布を求める方法について説明する。
図10は、レンズアレイ110に含まれる4×4=16個のレンズ114を示す平面図である。いま、
図10において、トポロジカル・チャージmの特異点Sが一つだけ存在するものとする。そして、この特異点Sに最も近いレンズ交点を座標原点Oとし、xy直交座標系を
図10のように設定する。このxy直交座標系において、特異点Sの座標は(x
o,y
o)と記す。また、原点Oの周囲に存在する8個のレンズ交点をそれぞれA、B、C、D、E、F、G、Hとする。
【0079】
このとき、点(x,y)の位相は次の数式(20)によって表される。
【数20】
なお、arctan()の範囲は0〜2πである。
【0080】
また、点(x,y)での1次微分は、次の数式(21)によって算出される。
【数21】
【0081】
ここで、波面センサ11により計測される各レンズ114での位相勾配は、それぞれレンズ114領域内部での位相分布の1次微分の平均と等しい。したがって、例えば、
図10のようなレンズアレイの配置の場合には、左から右へのk番目、上から下へl番目のレンズ(k,l)における位相勾配は、次の数式(22)及び(23)によって求められる。
【数22】
【数23】
なお、式(22)及び(23)において、k及びlは−1、0、1、2の何れかである。また、
図10には、各レンズ114の中心点114aが示されている。
【0082】
また、原点Oは特異点Sに最も近いレンズ交点であるため、特異点の座標(x
0,y
0)の存在範囲は、次の数式(24)によって規定される。
【数24】
したがって、循環値の理論値の分布は、次の数式(25)によって算出される。
【数25】
なお、数式(25)において、k及びlは−1、0、及び1の何れかである。また、上の数式(25)によって算出される値としては、以下のものがある。
T(−1,−1;x
0,y
0):レンズ交点Aを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(0,−1;x
0,y
0):レンズ交点Bを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(1,−1;x
0,y
0):レンズ交点Cを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(−1,0;x
0,y
0):レンズ交点Dを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(0,0;x
0,y
0):レンズ交点Oを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(1,0;x
0,y
0):レンズ交点Eを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(−1,1;x
0,y
0):レンズ交点Fを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(0,1;x
0,y
0):レンズ交点Gを囲む四角形閉経路に沿った循環値
T(1,1;x
0,y
0):レンズ交点Hを囲む四角形閉経路に沿った循環値
【0083】
数式(25)は、特異点Sに最も近いレンズ交点Oと、これに隣接する8つの交点A〜H、計9個の交点における循環値の理論値である。そして、循環値の理論値の分布は、特異点座標(x
0,y
0)に依存する。特異点座標(x
0,y
0)が決まれば、循環値の理論値の分布も一意的に定まる。
【0084】
続いて、上述した方法により求められた循環値の理論値の分布と、波面センサ11の計測結果から算出される循環値の分布とを比較し、相関係数が最大となる(x
0,y
0)を求める。こうして求められた(x
0,y
0)は、特異点Sの特異点位置(u
c,v
c)の小数部となる。
【0085】
具体的には、波面センサ11の計測結果から得られる、循環値がピークとなる位置を(i
max,j
max)とすると、相関係数R(x
0,y
0)は次の数式(26)によって求められる。
【数26】
但し、
【数27】
【数28】
である。そして、特異点位置(u
c,v
c)の小数部(u
c2,v
c2)は、次の数式(29)によって求められる。
【数29】
こうして得られた小数部(u
c2,v
c2)と、整数部(u
c1,v
c1)とを足し合わせることにより、特異点の位置(u
c,v
c)が得られる。
【0086】
なお、上記の方法では、循環値の理論値の分布T(k,l;x
0,y
0)を数値計算により求めているが、循環値の理論値の分布T(k,l;x
0,y
0)は、特異点の位置(u
c,v
c)が既知であるテストパターンを波面センサ11に入射させて得られる測定結果から求めてもよい。
【0087】
(第4の変形例)
次に、第4の変形例について説明する。本実施例では、
図11に示されるように、レンズアレイ110における3行3列のレンズ領域を用いて、循環値すなわち擬似位相勾配積分値を計算する。このとき、循環値を計算する際の閉経路Cとして、中央のレンズ114の基準位置を中心とする四角形を設定する。循環値C(i,j)は、次の数式(30)によって求められる。
【数30】
【0088】
上述した第1実施例では、互いに隣接する2行2列のレンズ領域において計測された擬似位相勾配を用いて循環値を求めている。その場合、このレンズ領域の中に特異点が存在するとき、特異点は、必ず何れかのレンズの領域内に属する。したがって、4個のレンズの各領域における擬似位相勾配のうち、少なくとも1つは特異点の影響を受ける。すなわち、特異点の中心では、光強度がゼロとなり、且つ位相が不確定性を有する。これらの特性によって、僅かではあるが、位相勾配の計算に影響を及ぼすおそれがある。
【0089】
これに対し、本変形例のように、3行3列のレンズ領域の擬似位相勾配を用いて循環値を計算することにより、特異点は当該レンズ領域のうち中央の領域にのみ存在することとなり、その周囲の8個の領域には特異点は存在しない。したがって、上述したような特異点による影響を受けないという利点がある。
【0090】
(第2の実施例)
図12は、本発明の第2実施例に係る補償光学システム10Cの構成を示す図である。この補償光学システム10Cは、波面センサ11、制御部13C、ビームスプリッタ14、波面変調素子21及び22、並びに制御回路部23及び24を備えている。なお、波面センサ11の詳細な構成は、上記実施形態と同様である。また、本実施例では2つの波面変調素子21及び22が配置されているが、これらの詳細な構成は、上記実施形態の波面変調素子12と同様である。制御回路部23及び24それぞれは、制御部13Cから制御信号S3及びS4それぞれを受けて、これらの制御信号S3,S4に基づく電圧を波面変調素子21,22それぞれの複数の電極に与える電子回路である。
【0091】
この補償光学システム10Cでは、まず、図示しない光源若しくは観察対象物からの光像L1が、ほぼ平行な光として波面変調素子21に入射し、位相変調を受けて反射する。そして、波面変調素子21において反射した光像L1は、図示しない光学系を経て波面変調素子22に入射し、再び位相変調を受けて反射する。波面変調素子22において反射した光像L1は、ビームスプリッタ14において2つの光像に分岐される。分岐後の一方の光像L1は、図示しない光学系を経て光検出素子30に入射し、撮像される。また、分岐後の他方の光像L1は、波面センサ11に入射する。そして、波面センサ11において光像L1の波面の形状が計測され、その計測結果を示す計測信号S1が制御部13Cに提供される。制御部13Cは、波面センサ11からの計測信号S1に基づいて光像L1の波面の形状を算出し、光像L1の波面を適切に補正するための制御信号S3,S4を制御回路部23,24へ出力する。
【0092】
このように2つの波面変調素子21,22を備える補償光学システム10Cの調整方法について説明する。まず、制御部13Cの特異点生成パターン作成部101において作成された特異点生成パターンを含む制御信号S3を、制御回路部23へ送る。これにより、波面変調素子21には、特異点生成パターンが表示される。同時に、平面波パターンを含む制御信号S4を、制御部13Cから制御回路部24へ送る。これにより、波面変調素子22には、平面波パターンが表示される。そして、この状態で波面変調素子21に光を入射させ、波面変調素子21,22を経た光像を波面センサ11において検出する。
【0093】
そして、上述した各実施例若しくは各変形例による方法を用いて、波面センサ11における特異点の座標(u
ca,v
ca)を検出する。この座標(u
ca,v
ca)は、波面変調素子21の変調面における制御点と、波面センサ11の検出面における計測点との位置ずれを表す。
【0094】
次に、平面波パターンを含む制御信号S3を、制御部13Cから制御回路部23へ送る。これにより、波面変調素子21には、平面波パターンが表示される。同時に、制御部13Cの特異点生成パターン作成部101において作成された特異点生成パターンを含む制御信号S4を、制御回路部24へ送る。これにより、波面変調素子22には、特異点生成パターンが表示される。そして、この状態で波面変調素子21に光を入射させ、波面変調素子21,22を経た光像を波面センサ11において検出する。
【0095】
そして、上述した各実施例若しくは各変形例による方法を用いて、波面センサ11における特異点の座標(u
cb,v
cb)を検出する。この座標(u
cb,v
cb)は、波面変調素子22の変調面における制御点と、波面センサ11の検出面における計測点との位置ずれを表す。
【0096】
最後に、波面変調素子21に関する波面センサ11上の特異点の座標(u
ca,v
ca)と、波面変調素子22に関する波面センサ11上の特異点の座標(u
cb,v
cb)との差を求めることにより、波面変調素子21の変調面における制御点と、波面変調素子22の変調面における制御点との位置ずれを求める。こうして、2つの波面変調素子21,22の対応関係を容易に求めることができる。
【0097】
以上のようにして求められた2つの波面変調素子21,22の対応関係に基づいて、制御部13Cは、波面変調素子21へ送る制御信号S3と、波面変調素子22へ送る制御信号S4との間の位置ずれの調整(キャリブレーション)を行う。
【0098】
(第3の実施例)
第3実施例として、第1実施例における波面変調素子12と波面センサ11との間の光学結像倍率Mを求める方法について説明する。
【0099】
まず、制御部13Cの特異点生成パターン作成部101において、2つの特異点を生成可能なパターンを作成する。例えば、波面変調素子12の位置(x
1,y
1)に偏角係数m1のらせん状位相パターンLG1を表示させ、(x
1,y
1)とは異なる位置(x
2,y
2)に偏角係数m2のらせん状位相パターンLG2を表示させ得るパターンである。そして、このような特異点生成パターンを含む制御信号S2を制御回路部19へ送ることにより、らせん状位相パターンLG1,LG2を波面変調素子12に表示させる。そして、この状態で波面変調素子12に光を入射させ、波面変調素子12を経た光像を波面センサ11において検出する。
【0100】
このとき、波面センサ11の検出面において、らせん状位相パターンLG1により発生する光渦の中心位置を(p
1,q
1)とし、らせん状位相パターンLG2により発生する光渦の中心位置を(p
2,q
2)とすると、光学結像倍率Mは次の数式(31)によって算出される。
【数31】
【0101】
また、上述した第2実施例における2つの波面変調素子21,22の間の光学結像倍率もまた、本実施例と同様の方法によって容易に算出される。
【0102】
(第5の変形例)
前述した各実施例および変形例では、波面センサ11のレンズアレイ110として、複数のレンズ114が二次元格子状に配列された形態を例示したが、波面センサ11のレンズアレイはこのような形態に限られない。
図13は、本変形例における波面センサ11のレンズアレイ116の構成を示す平面図であって、波面センサ11に入射する光像L1の光軸方向から見た様子を示している。
【0103】
図13に示されるように、本変形例のレンズアレイ116は、正六角形の複数のレンズ118が隙間無く並んだハニカム構造を有している。この場合、特異点位置を算出する際の閉経路積分の経路としては、
図14に示されるように、互いに隣接する3つのレンズ118の中心同士を結ぶ経路(すなわち、3つのレンズ118のレンズ交点Qを囲む閉経路)が好適である。或いは、
図15に示されるように、1つのレンズ118の周囲に隣接する6つのレンズ118の中心同士を結ぶ経路(すなわち、中央のレンズ118の中心Qを囲む閉経路)でもよい。
図15のような閉経路の場合には、次の数式(32)により閉経路積分値を算出することができる。
【数32】
但し、添え字A〜Fは、1つのレンズ118の周囲に隣接する6つのレンズ118それぞれの中心点を表す。
【0104】
(第6の変形例)
前述した各実施例および変形例では、特異点生成パターンとしてらせん状位相分布を有する位相パターンを使用したが、特異点生成パターンとしては、このような分布に限らず、特異点を生成可能な様々な位相パターンを使用可能である。例えば、ブレーズ格子の位相分布、若しくはフレネル(Fresnel)レンズ効果を有する位相分布をらせん状位相分布に加えた位相パターンが好適である。また、特異点を生成できる他の様々な位相パターン、例えば通常のラゲールガウス(LG)ビーム形成用ホログラムを使用してもよい。
【0105】
(第7の変形例)
前述した各実施例および変形例では、波面変調素子12及び波面センサ11が、移動不可能な支持部材に固定されているが、波面変調素子12及び波面センサ11のうち少なくとも一方が、移動可能な支持部材(例えばXYステージ)上に固定されてもよい。この場合、前述した各実施例および変形例の方法により算出される特異点の位置(u
c,v
c)と、波面変調素子12に表示されている特異点生成パターンの特異点の位置とを相互に対応付け、これらが互いに近づくように、波面変調素子12及び波面センサ11のうち少なくとも一方を移動させることによって、キャリブレーションを行うことができる。
【0106】
以上に説明した、上記実施形態、実施例および変形例に係る補償光学システム10A〜10C及びその調整方法によって得られる効果について説明する。
【0107】
これらの補償光学システム10A〜10C及びその調整方法では、調整のための特殊な位相パターン(すなわち特異点生成パターン)を波面変調素子12に表示させた上で、波面センサ11においてその位相パターンにより生じる特徴(すなわち特異点の位置)を検出することにより、波面センサ11において計測される調整用位相分布と波面変調素子12に表示される特異点生成パターンとの位置ずれ量を取得する。そして、その位置ずれ量に基づいて、波面センサ11から得られる計測信号S1と、波面変調素子12に送られる制御信号S2との間のずれを調整する。或いは、波面センサ11の検出面と波面変調素子12の変調面との物理的な位置の調整を行う。
【0108】
したがって、上述した補償光学システム10A〜10C及びその調整方法によれば、波面センサ11の計測信号からの位相分布の計算を省略できるので、波面変調素子12の位相変調精度と波面センサ11の位相計測精度とに依存せず、高い精度で調整を行うことができる。また、上述した補償光学システム10A〜10C及びその調整方法によれば、高精度な調整用光ビームも不要であり、システム構成を簡素にすることができる。更に、波面センサ11の計測信号からの位相分布の計算を省略でき、またホログラム表示や計算を繰り返し行う必要もないので、調整時間を短縮することができる。
【0109】
このように、上述した補償光学システム10A〜10C及びその調整方法によれば、波面センサ11において計測される位相分布と、波面変調素子12に表示される補償用の位相パターンとの位置ずれを短時間でかつ高精度に補正することができる。
【0110】
ここで、
図16は、補償光学システムの調整(キャリブレーション)の精度が高いことによる利点について説明する図である。
図16(a)は、比較として、調整精度が低い場合の入射波面61、補償用波面62、及び補償済み波面63(入射波面61と補償用波面62との和)を概念的に示している。また、
図16(b)は、調整精度が高い場合の入射波面71、補償用波面72、及び補償済み波面73(入射波面71と補償用波面72との和)を概念的に示している。
【0111】
図16(a)に示されるように、調整精度が低いため入射波面61と補償用波面62との間に位置ずれがある場合、補償済み波面63において波面の歪みが完全には除去されない。従って、結像特性が悪化する可能性があり、またフィードバック制御の影響によって、波面歪みが増大してしまうおそれもある。これに対し、
図16(b)に示されるように、調整精度が高く入射波面71と補償用波面72との間の位置ずれが小さい場合、波面歪みが適切に補正されて、補償済み波面73はほぼ平面波となることができる。
【0112】
また、上述した補償光学システム10A〜10C及びその調整方法では、波面センサ11としてシャックハルトマン型の波面センサを用いている。これにより、レンズアレイ110によって形成される多点像の基準位置からのずれに基づいて位相勾配を直接的に求めることができるので、位相勾配の分布を容易に得ることができる。
【0113】
また、上述した補償光学システム10A〜10C及びその調整方法では、位相勾配の閉経路積分値(循環値)を用いて特異点位置を求めている。通常、波面変調素子12や他のレンズ等の光学系、更には波面変調素子12に入射する光は、光学収差を有する。しかし、通常の光学収差は連続な位相分布を有するので、その位相勾配の閉経路積分値(循環値)は常にゼロか、若しくは定数となる。一方、位相分布の不連続成分(例えば特異点成分)は、閉経路積分値(循環値)に有意な値として表れる。したがって、閉経路積分値(循環値)がゼロであるときは、閉経路(単位領域)内に特異点が存在しないと判断できる。逆に、循環値がゼロではないときは、閉経路内に特異点が存在すると判断でき、特異点の位置を特定することができる。このように、上述した補償光学システムの調整方法によれば、位相勾配の閉経路積分値(循環値)を用いて特異点位置を求めることによって、キャリブレーション用の光と波面変調素子12等の光学収差に拘わらず、特異点位置を精度良く算出することができる。
【0114】
また、上述した補償光学システム10A〜10C及びその調整方法では、ピーク位置の周囲に位置する閉経路(単位領域)の閉経路積分値(循環値)に基づいて、ピーク位置の閉経路内での特異点の位置を算出している。波面センサ11によって計測される位相勾配は、各レンズ114により規定される領域における一次微分値の平均値である。したがって、その領域の閉経路積分値(循環値)は、特異点とその閉経路との相対位置に依存する。すなわち、上述したようにピーク位置の周囲に位置する閉経路(単位領域)の閉経路積分値(循環値)に基づけば、特異点の位置をより詳細に特定することができる。
【0115】
ここで、上述した補償光学システム10A〜10C及びその調整方法による上記効果を確認するための実験結果について、以下に説明する。
【0116】
図17は、本実験に用いられた光学システム50の構成を概略的に示す図である。光学システム50は、波面センサ11と、波面変調素子12と、光源51と、アパーチャ52と、ビームスプリッタ53と、2つのレンズ54,55からなるリレー光学系とを備えている。なお、波面センサ11及び波面変調素子12の詳細な構成は、上述した実施形態と同様である。
【0117】
光源51は、波長633nmのレーザ光Laを出射する。レーザ光Laは、ほぼ平行光である。レーザ光Laは、アパーチャ52を通過し、ビームスプリッタ53と透過して波面変調素子12に入射する。そして、レーザ光Laは、波面変調素子12によって反射されるとともに変調され、光像Lbとして波面変調素子12から出力される。光像Lbはビームスプリッタ53において反射し、レンズ54,55を通過して波面センサ11に入射する。波面センサ11は、光像Lbの位相勾配の分布を示すデータを出力する。なお、波面センサ11は、波面変調素子12の光学共役面に配置されている。
【0118】
図18は、本実験において波面変調素子12に表示させる特異点生成パターンの例を示す図である。なお、
図18では、特異点生成パターンの位相の大きさが明暗によって示されており、最も暗い部分の位相は0(rad)であり、最も明るい部分の位相は2π(rad)である。また、暗色と明色との境界線は、位相が2π(rad)から0(rad)へ変化する部分であって、実際には当該部分の位相は連続している。つまり、
図18に示される特異点生成パターンは、時計回りのらせん状の位相分布を有しており、1周回のうちに3つの境界線を有しているので、この特異点生成パターンのトポロジカル・チャージは3である。そして、そのらせんの中心部分が特異点である。
【0119】
図19は、波面センサ11によって得られる多点画像の例を示す図である。波面センサ11に入射する光像の範囲内に、複数の点像が見られる。これらの点像は、レンズアレイ110の複数のレンズ114によって集光された光による像であり、これらの点像の基準位置からの位置ずれが、その位置における位相勾配を表す。なお、波面センサ11のほぼ中心部に、点像の欠損が見られる。この欠損は、特異点の影響によるものである。すなわち、特異点の中心点では、光強度がゼロであり、且つ位相値が不確定である。また、その周囲はらせん状の位相分布が形成されている。これらの特性により、このような点像の欠損が発生したと考えられる。
【0120】
図20は、
図19に示された多点画像から計算された擬似位相勾配の循環値の分布を示す図であり、明るい部分ほど循環値が大きいことを示す。
図20に示されるように、この循環値の分布では、中央付近に一つのピークが存在するので、このピークの位置の近傍に、特異点が存在する。
図21は、この循環値の分布を三次元グラフとして表示したものを示しており、高さ方向の軸は循環値の大きさを表している。この例では、循環値が最大となるピーク位置は(18,19)番目の交点であった。また、ピーク位置での3行3列の重心計算(
図11を参照)をした結果、得られた重心位置は(−0.366,0.146)であった。実験に使用された波面センサ11のレンズピッチが280μmであり、イメージセンサ112の画素ピッチが20μmであったため、波面センサ11の検出面における座標に換算すると、この特異点の位置は(246.88、268.04)となる。但し、換算式は(18−0.366)×280/14=248.88,(19+0.146)×280/20=268.04である。
【0121】
続いて、波面変調素子12に表示させる特異点生成パターンの中心を1画素ずつ移動しながら、波面センサ11において多点画像を複数回撮像し、特異点位置を計算した。
図22は、計測された特異点位置のずれと波面変調素子12に表示されている特異点生成パターンの中心移動量との関係を示すグラフである。なお、横軸は特異点生成パターンでの特異点位置を示しており、縦軸は計測された位相分布での特異点位置を表しており、縦軸および横軸の単位は、波面センサ11のレンズアレイ110のレンズピッチである。また、図中のプロットは計測値を示しており、直線Aは理論値を示している。
【0122】
図22から明らかなように、本実験で計測された特異点の位置ずれ量は、特異点生成パターンの中心移動量とほぼ等しい結果となった。また、計測値と理論値との誤差の最大値は0.06であり、また誤差のRMS値は0.03であり、この補償光学システムの調整方法が高い位置計測精度を有することが確認された。
【0123】
本発明による補償光学システムおよびその調整方法は、上述した実施形態及び変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、波面変調素子に表示させる特異点生成パターンとして特異点を含む位相パターンを例示しており、また、波面センサにおいて検出される位相勾配から循環値を算出して特異点位置を検出しているが、本発明が適用される補償光学システム及びその調整方法は、このような位相変調型のものに限られない。例えば、非位相変調型(典型的には振幅変調型)の補償光学システムや、或いは位相及び振幅の双方を変調するタイプの補償光学システムにも、本発明を適用可能である。なお、その場合、制御部は、所定位置に位相特異点を含む振幅パターンを特異点生成パターンとして波面変調素子に表示させ、この特異点生成パターンにより変調された光像のうちの、例えば1次回折光像が波面センサに入射したときの位相及び振幅の分布における位相特異点の位置を、波面センサにおける計測結果に基づいて検出し、位相特異点の位置の上記所定位置に対する位置ずれに基づいて、波面センサにおいて計測される振幅分布と波面変調素子に表示される補償用の振幅パターンとの位置ずれを調整するとよい。
【0124】
また、本発明の調整方法は、上記のような波面センサが常に波面変調素子から出射する光像を受ける位置に配置されている補償光学システムに限らない。例えば、オープンループ制御される補償光学システムにも、或いは、無波面センサの補償光学システムにも、本発明を適用可能である。オープンループ制御される補償光学システムとは、例えば、光源若しくは観察物体からの光像は波面変調素子に入射する前に、ビームスプリッタによって2つの光像に分岐し、1つは波面変調素子に、もう一つは波面センサに入射する構成を有する補償光学システムである。なお、その場合は、上記の波面センサ、或いは、別の波面センサを一時的に、波面変調素子からの光像を受ける波面変調素子の変調面の共役面に配置し、本発明の調整方法によって波面変調素子の位置を所望の位置に調整することができる。
【0125】
また、本発明にて使用される特異点生成パターンとしては、
図18に示されたパターン以外にも、様々なものがある。
図23〜
図28は、特異点生成パターンの他の例を示す図である。なお、
図23〜
図28では、
図18と同様に、特異点生成パターンの位相の大きさが明暗によって示されており、最も暗い部分の位相は0(rad)であり、最も明るい部分の位相は2π(rad)である。また、暗色と明色との境界線は、位相が2π(rad)から0(rad)へ変化する部分であって、実際には当該部分の位相は連続している。
【0126】
図23に示される特異点生成パターンは、時計回りのらせん状の位相分布を有しており、1周回のうちに1つの境界線を有しているので、この特異点生成パターンのトポロジカル・チャージは1である。そして、そのらせんの中心部分が特異点である。
【0127】
また、
図24は、
図18に示されたらせん状の位相分布に、ブレーズの位相格子を加えた例を示している。この例では、らせんの中心部分が特異点である。
【0128】
また、
図25および
図26は、2つの特異点を有する特異点生成パターンを示す図である。
図25に示される特異点生成パターンは、トポロジカル・チャージが3である時計回りのらせん状位相分布(左側)と、トポロジカル・チャージが1である時計回りのらせん状位相分布(右側)とを有している。また、
図26に示される特異点生成パターンは、トポロジカル・チャージが3である時計回りのらせん状位相分布(左側)と、トポロジカル・チャージが3である反時計回りのらせん状位相分布(右側)とを有している。
【0129】
また、
図27に示される特異点生成パターンは、4つの領域に分割されており、それぞれの領域に各一つの特異点が含まれている。また、
図28に示される特異点生成パターンは、中心点が異なる2つのらせん状位相分布を全領域において重ね合わせることにより作成された特異点生成パターンの例である。
図28に示される特異点生成パターンには、左右に離れている2つの特異点が含まれている。
【0130】
また、
図25〜
図28に示される特異点生成パターンに対して、
図24と同様にブレーズの位相格子を加えてもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、波面センサとして非干渉型のシャックハルトマン型波面センサが用いられているが、本発明に係る補償光学システム及びその調整方法では、他の非干渉型の波面センサや、或いは干渉型の波面センサ(例えば曲率センサやシアリング干渉計など)が用いられてもよい。