(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体装置のボンディングパッドを構成する配線層には、アルミを主とするアルミ合金が用いられる場合が多い。アルミ合金は、反射率が高いため、リソグラフィー工程でパターニング異常が発生するおそれがある。そのパターニング異常を防止するために、アルミ合金は反射防止膜との積層構造で使用される。その反射防止膜として、窒化チタンが用いられる場合が多い。その反射防止膜上にはパッシベーション膜が形成されている。パッシベーション膜には、ボンディングパッド用の開口部であるパッド開口部が設けられている。その反射防止膜は、パッド開口部では除去されている。その結果、そのパッド開口部ではアルミ合金が露出している。
【0003】
半導体装置の品質確認の一つとして高温、高湿の環境下で長時間、電圧を印加する高温高湿バイアス試験がある。この試験を実施している時、水分が半導体装置の封入樹脂を通ってパッド開口部まで浸入する場合がある。その場合、パッド開口部のアルミ合金に電圧が印加されていると、パッド開口部を囲むパッシベーション膜とその下のアルミ合金との間に僅かに露出している反射防止膜の窒化チタンが酸化され、酸化チタンが形成されることがある。この酸化現象は窒化チタンの露出している部分に留まらず、パッシベーション膜で覆われている内部の領域へも進行する場合がある。窒化チタンが酸化される過程は体積膨張を伴っており、酸化された領域が拡大すると体積膨張による応力によりパッシベーション膜にクラックが発生する場合がある。パッシベーション膜にクラックが発生し、そのクラックが下層の部分に伝播すると、そのクラックに沿って水分が侵入する可能性がある。水分が浸入すると、層間絶縁膜を構成する低誘電率膜の膜質の変化や配線層を構成する配線金属の腐食などの不良を誘発するおそれがある。従って、パッシベーション膜のクラックは避けなければならない。
【0004】
このため、長期間の使用が見込まれ、高品質が要求される半導体装置では、以下のような工夫が必要になってきている。すなわち、ボンディングパッドを構成するアルミ合金の配線層(パッド配線層又はパッドアルミ配線層)の反射防止膜として窒化チタンを用いる場合、その窒化チタンの酸化を抑制するか、酸化してもパッシベーション膜のクラックを発生させないような工夫である。言い換えると、反射率の高いパッド配線層上に、反射率の低い反射防止膜を形成したとき、その反射防止膜が水分により酸化し、体積膨張して、パッシベーション膜にクラックが発生する、という現象を防止する工夫が必要である。一方、半導体装置の低コスト化の要求も強くなっており、この工夫を低コストで実現する必要がある。
【0005】
窒化チタンの酸化によりパッシベーション膜にクラックが発生する現象を防止する技術として、特開2010−272621号公報(US2010/0295044(A1))に半導体装置が開示されている。この半導体装置では、パッド開口部より広く窒化チタンが除去されている。具体的には、パッドアルミ配線層の形成後、窒化チタンの除去工程を追加し、パッド開口部より広く窒化チタンを除去する。この後、パッシベーション膜を成膜し、そのパッシベーション膜にパッド開口部を形成している。このような構造を採用することで、パッシベーション膜のパッド開口部の底部とその下のアルミ合金との間に窒化チタンが露出することはない。その結果、窒化チタンの酸化によりパッシベーション膜にクラックが発生する現象を防止できる。
【0006】
また、窒化チタンの酸化によりパッシベーション膜にクラックが発生する現象を防止する技術として、特開2010−251537号公報(US2010/0264414(A1))に半導体集積回路装置が開示されている。この半導体集積回路装置では、パッド開口部を取り巻くように周回状に窒化チタンを除去した領域を設けている。この場合、パッシベーション膜のパッド開口部の底部とその下のアルミ合金との間に窒化チタンは露出する。しかし、窒化チタンが酸化されても、その酸化された領域を狭い範囲に限定することができる。酸化された領域が限定されるのでクラックが生じない。このようなクラックが生じないパッシベーション構造を採用することで、窒化チタンの酸化によりパッシベーション膜にクラックが発生する現象を防止できる。
【0007】
また、窒化チタンの酸化によりパッシベーション膜にクラックが発生する現象を防止する技術として、特開2006−303452号公報(US2006/0249845(A1))に半導体装置が開示されている。この半導体装置では、露出した窒化チタンを覆うように追加的に絶縁膜を形成している。具体的には、パッド開口部を形成した後に絶縁膜を形成する工程と、パッド開口部に露出していた窒化チタンを覆いつつ、パッド開口部を再び開口するようにその絶縁膜をエッチングする工程とを追加している。このような構造を採用することで、パッシベーション膜のパッド開口部の底部とその下のアルミ合金との間に窒化チタンが露出することはない。その結果、窒化チタンの酸化によりパッシベーション膜にクラックが発生する現象を防止できる。
【0008】
関連する技術として特開2007−103593号公報には、半導体装置が開示されている。この半導体装置は、導電膜と、保護膜と、開口とを有している。導電膜は、第1の金属膜と第1の金属膜上に堆積された第1の金属膜とは異なる第2の金属膜とを含む。保護膜は、前記導電膜の上部に堆積した絶縁膜からなる。開口は、前記保護膜及び前記第2の金属膜を除去して前記第1の金属膜を露出させている。前記保護膜の除去領域が、前記第2の金属膜における除去領域の内側となる。
【0009】
また、特開2010−080772号公報(US2010/0078780(A1))には、半導体装置が開示されている。この半導体装置は、配線と、層間絶縁膜と、開口内金属膜と、表面金属膜と、導通確保膜とを含む。層間絶縁膜は、前記配線上に形成され、その表面から前記配線に達する開口を有する。開口内金属膜は、前記開口内において前記配線上に形成され、アルミニウムを含む金属材料からなる。表面金属膜は、前記層間絶縁膜上に形成され、前記金属材料からなる。導通確保膜は、前記開口の側面上に形成され、前記開口内金属膜と前記表面金属膜との導通を確保する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態に係る半導体装置に関して、添付図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略平面図である。
図2は、第1の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略断面図である。この図は、
図1のAA’断面を示している。
実施の形態に係る半導体装置としての半導体チップ2aは、金属配線層としてのパッドアルミ配線層50と、絶縁層としてのパッシベーション膜60とを具備している。パッドアルミ配線層50は、パッド用である。パッシベーション膜60は、パッドアルミ配線層50を覆うように設けられ、パッドアルミ配線層50の一部表面が露出する開口部としてのパッド開口部5を有する。パッドアルミ配線層50は、第1金属層としての配線金属52と、第2金属層としての反射防止膜53とを含む。反射防止膜53は、パッド開口部5を除いた配線金属52上に設けられ、配線金属52よりも薄く反射率が低い。パッドアルミ配線層50は、パッド開口部5を除いた所定の領域に溝部7を有する。配線金属52は、溝部7に対してひさし状に張り出している。溝部7の内部の側壁の反射防止膜53は、溝部7の外側の反射防止膜53よりも薄い。
【0020】
本実施の形態では、パッド用の金属配線層としてのパッドアルミ配線層50において、パッド用の開口部としてのパッド開口部5を除いた所定の領域に溝部7を有している。そして、第1金属層としての配線金属52は、溝部7の凹みに対してひさし状に張り出し、溝部7の凹みの内側の側壁上の第2金属層としての反射防止膜53は、溝部7の外側の平面上の反射防止膜53よりも薄くなっている。その結果、反射防止膜53がパッド開口部5付近で酸化されて、その酸化が溝部7に達したとしても、溝部7から先の酸化を防止することができる。それは、その溝部7が、溝部7の凹みの内側の側壁では反射防止膜53が薄いため、酸化が抑制されたり、酸化されたとしてもその体積膨張は極めて小さかったり、酸素又は水分の移動が抑制されたりする効果を奏するからである。それにより、反射防止膜53が酸化されて、体積膨張を起こし、パッドアルミ配線層50上の絶縁層としてのパッシベーション膜60にクラックが発生する、という現象を防止することができる。すなわち、半導体装置としての半導体チップ2aの品質劣化を避けることができる。
【0021】
以下、実施の形態に係る半導体装置について詳細に説明する。
図1では、半導体装置としての半導体チップ2a、2b、2c、2dがダイシング領域3を介して半導体ウェハ上に設けられている例を示している。そして、半導体チップ2a、2b、2c、2dについては、それらの全体ではなく一部が示されている。半導体チップ2a、2bについては、それらのボンディングパッド4が示されている。以下では、半導体チップ2a、2b、2c、2dを区別する必要が無いので、半導体チップ2aを代表として説明する。
【0022】
半導体チップ2aは、ボンディングパッド4と、パッシベーション膜(60)とを備えている。パッシベーション膜(60)は、ボンディングパッド4を覆うように設けられ、ボンディングパッド4の一部表面が露出するパッド開口部5を有している。ただし、この図では、パッド開口部5を示しているが、パッシベーション膜(60)の記載を省略している。パッド開口部5に露出したボンディングパッド4(のパッドアルミ配線層50;後述)には、ボンディングワイヤ9などの配線が接続される。ボンディングワイヤ9は、パッド開口部5に露出したボンディングパッド4(のパッドアルミ配線層50)の周辺領域4aを除く、中央領域に接続される。ボンディングパッド4は、溝部7を含んでいる。溝部7は、パッド開口部5を囲むように周回状にボンディングパッド4(のパッドアルミ配線層50)に設けられた溝構造であり、基板方向に凹み(窪み)を有している。
【0023】
図2では、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50の1つ下層の下層アルミ配線層20の下に位置する層間絶縁層11から上の部分を示している。なお、作図の都合上、パッド開口部5の大きさは小さくされ、全体は膜厚方向に拡大された図となっている。
【0024】
パッシベーション膜60は、第1パッシベーション膜61と第2パッシベーション膜62とを備えている。第1パッシベーション膜61は、酸化シリコン(SiO
2)と酸窒化シリコン(SiON)との積層構造に例示される。第2パッシベーション膜62は、ポリイミドに例示される。
【0025】
ボンディングパッド4は、下層アルミ配線層20と、ビア40と、パッドアルミ配線層50とを備えている。下層アルミ配線層20は、層間絶縁層11上に形成されている。層間絶縁層11は酸化シリコン(SiO
2)に例示される。下層アルミ配線層20は、バリアメタル21と配線金属22と反射防止膜23とを含む積層構造を有している。バリアメタル21はチタン/窒化チタン(Ti/TiN)に例示され、配線金属22はアルミ合金(Al合金)に例示され、反射防止膜23は窒化チタン(TiN)に例示される。下層アルミ配線層20の上には層間絶縁層31が形成されている。層間絶縁層31は酸化シリコン(SiO
2)に例示される。パッドアルミ配線層50は、層間絶縁層31の上に形成されている。パッドアルミ配線層50は、バリアメタル51と配線金属52と反射防止膜53とを含む積層構造を有している。バリアメタル51はチタン/窒化チタン(Ti/TiN)に例示され、配線金属52はアルミ合金(Al合金)に例示され、反射防止膜53は窒化チタン(TiN)に例示される。ビア40は、層間絶縁層31を貫通し、下層アルミ配線層20とパッドアルミ配線層50との間を接続するように形成されている。ビア40は、層間絶縁層31を貫通するビアホール71を、バリアメタル41と埋設金属42とを含む積層構造で埋設して形成されている。バリアメタル41は窒化チタン(TiN)に例示され、埋設金属42はタングステン(W)に例示される。パッドアルミ配線層50は、ボンディングパッド本体に相当するパッド部50aとそこから側方へ延びる延在部50bとを備えている。延在部50bは、他のビア40を介して、他の下層アルミ配線層20に接続している。
【0026】
パッドアルミ配線層50には、上述のように溝部7が設けられている。溝部7は、層間絶縁層31を貫通するビア溝72を、バリアメタル41と埋設金属42とを含む積層構造で不完全(部分的)に埋め込み、更にバリアメタル51と配線金属52と反射防止膜53とを含む積層構造で埋め込んでいる。従って、溝部7の(ビア溝72の)ビア40aは、バリアメタル41と埋設金属42とバリアメタル51と配線金属52と反射防止膜53とを含む積層構造で形成されている。ただし、その積層構造でビア溝72を埋め切っている必要はない。溝部7の上部(ビア溝72の上方)には、溝73が形成されている。その溝73は、その底面の位置が、ビア溝72の開口面より下であっても良い。
【0027】
図3は、
図2における領域αを示す概略拡大断面図である。
溝部7では、ビア溝72の側壁及び底面にバリアメタル41と埋設金属42とが積層されている。しかし、他のビア40と異なり、この溝部7のビア40aは、幅が広くなっている。そのため、バリアメタル41と埋設金属42は、ビア溝72を埋め切れず、溝(又は凹み、窪み)が残る。バリアメタル51と配線金属52とはこの溝(又は凹み、窪み)の上に形成されている。そのため、配線金属52の上部には、その溝(又は凹み、窪み)に対応して溝73が形成されている。このとき、配線金属52は、溝73に対してひさし状に張り出した(オーバーハングした)形状となっている。すなわち、配線金属52は、溝部7の内部に落ち込む部分(ひさし部分55)が、溝部7の内部の側壁の部分(内壁部分56)よりも、溝部7の中央へ向かって張り出している。従って、溝73を上から見ると、両側のひさし部分55が溝73の中央へ向かって張り出して、底部57の視認可能な領域を狭めている。反射防止膜53は、配線金属52上に形成されている。しかし、配線金属52のひさし部分55の陰になる部分、すなわち内壁部分56の反射防止膜53は、溝73の外側部分58の反射防止膜53よりも薄い。好ましくは、内壁部分56の反射防止膜53は、少なくとも一部において膜厚ゼロである。より好ましくは、内壁部分56の反射防止膜53は、膜厚ゼロである。ただし、いずれの場合にも反射防止膜53は底部57にあっても良い。
【0028】
その結果、パッド開口部5近傍の反射防止膜53が酸化されて、体積膨張を起こしても、溝部7で反射防止膜53が極めて薄くなるか又は無くなるので、その酸化が溝部7で停止することになる。すなわち、反射防止膜53の酸化が、パッド開口部5から溝部7までの極めて狭い範囲に限定され、それ以上広がることが無くなる。それにより、反射防止膜53が広範囲に酸化してパッドアルミ配線層50上のパッシベーション膜60にクラックが発生する、という現象を防止することができる。従って、パッド開口部5近傍の窒化チタン(反射防止膜53)が酸化され体積膨張しても、溝部7によりその酸化及び体積膨張を極めて狭い範囲に限定することができる。それにより、窒化チタンが広範囲に酸化してアルミ合金(パッドアルミ配線層50)上のパッシベーション膜60にクラックが発生する、という現象を防止することができる。
【0029】
なお、ボンディングパッド4としては、少なくともボンディングワイヤ9から電圧V0(≠0)が印加されるものを対象とすることが好ましい。そのようなボンディングパッド4は、接地用のボンディングパッド4と比較して、反射防止膜53が酸化され易いからである。
【0030】
次に、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図4A〜
図4Dは、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。この図は、ボンディングパッド4が形成される領域について示している。ただし、下層アルミ配線層20までの製造方法については、従来の半導体装置の製造方法と同じなので、その説明は省略する。
【0031】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、第1〜第7の工程を具備している。第1の工程は、下層配線としての下層アルミ配線層20上の層間絶縁層30にビアホール71と溝としてのビア溝72とを形成する工程である。第2の工程は、ビアホール71を埋め、ビア溝72を途中の深さまで埋めるように埋め込み金属層としての埋設金属42を形成する工程である。第3の工程は、層間絶縁層30及び埋設金属42を覆うように第1金属層としての配線金属52をスパッタリング法で形成する工程である。第4の工程は、配線金属52を覆うように、配線金属52よりも薄く反射率の低い第2金属層としての反射防止膜53をスパッタリング法で形成する工程である。第5の工程は、配線金属52及び反射防止膜53をエッチングしてパッドとしてのボンディングパッド4を形成する工程である。第6の工程は、ボンディングパッド4を覆うように絶縁層としてのパッシベーション膜60を形成する工程である。第7の工程は、ボンディングパッド4の配線金属52の一部表面が露出するように、ビア溝72のある領域を除いた領域のパッシベーション膜60と反射防止膜53とをエッチングして開口部としてのパッド開口部5を形成する工程である。配線金属52は、ビア溝72に対してひさし状に張り出している。ビア溝72の内部の側壁の反射防止膜53は、ビア溝72の外側の反射防止膜53よりも薄い。
【0032】
本実施の形態では、パッド用の開口部としてのパッド開口部5のある領域を除いた所定の領域に、ビア溝72を形成する。ビア溝72は、ビア用の埋め込み金属層としての埋設金属42、及び、パッド配線層用の第1金属層としての配線金属52及び反射防止膜用の第2金属層としての反射防止膜53ではきちんと埋設されない溝である。それにより、ビア溝72の領域には、ビア用の埋め込み金属層としての埋設金属42の成膜後、パッド配線層の成膜前に溝72aによる段差が生じている。パッド配線層用の配線金属52(例示:アルミ合金)は、スパッタリング法を用いて成膜されるが、溝73(段差)が残り、その段差により溝73の内側に向かってひさし状に張り出した(オーバーハングした)形状になる。そのため、その後にスパッタリング法で成膜される反射防止膜用の反射防止膜53(例示:窒化チタン)は、ひさし状に張り出した(オーバーハングした)形状の“ひさし”の陰になる部分、すなわち溝73の内壁の部分には成膜され難くなる。その結果、溝73の内壁の反射防止膜53は、溝73の外側の反射防止膜53よりも薄くなる。そのため、反射防止膜53がパッド開口部5付近で酸化されて、その酸化が溝73に達したとしても、溝73から先の酸化を防止することができる。それは、溝73が、溝73の内側の側壁では反射防止膜53が薄いため、酸化が抑制されたり、酸化されたとしてもその体積膨張が極めて小さかったり、酸素又は水分の移動が抑制されたりする効果を奏するからである。それにより、反射防止膜53が酸化されて、体積膨張を起こし、金属配線層としてのパッドアルミ配線層50上の絶縁層としてのパッシベーション膜60にクラックが発生する、という現象を防止することができる。この場合、反射防止膜用の反射防止膜53の薄い(又は除去された)領域を、新たに工程を追加することなく、既存工程の部分的な変更だけで設けることが可能となる。すなわち、半導体装置の品質劣化を避けることができる。
【0033】
以下、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について詳細に説明する。
図4Aに示すように、下層アルミ配線層20(例示:バリアメタル21:チタン/窒化チタン、配線金属22:アルミ合金、反射防止膜23:窒化チタン)の上部に層間絶縁層31を成膜する。続いて、その層間絶縁層31を、CMP技術を用いて平坦化する。その後、層間絶縁層31にリソグラフィー及びエッチングの工程によりビアホール71、ビア溝72を同時に開口する。ここで、溝部7を形成するためのビア溝72について説明する。通常のビアホール71がホール状に開口されているのに対して、ビア溝72は、
図1に示すように、パッド開口部5を取り囲むように、溝状に開口されている。更に、通常のビアホール71の開口寸法(一辺又は直径)と比較して、ビア溝72の開口寸法(幅)の方が大きい。例えば、通常のビアホール71が0.30μm×0.30μmの大きさのホール状に開口されているとすると、ビア溝72は2.0μm幅の溝状に開口されている。
【0034】
次に、
図4Bに示すように、層間絶縁層31、ビアホール71及びビア溝72を覆うように、バリアメタル41を成膜する。続いて、バリアメタル41を覆うように、埋設金属42を成膜する。その後、CMP技術を用いて平坦化して、層間絶縁層31上のバリアメタル41、埋設金属42を除去する。それにより、通常のビアホール71は、バリアメタル41、埋設金属42が埋め込まれて、ビア40が形成される。そのとき、ビア溝72は、バリアメタル41、埋設金属42では埋まらず、溝72a(段差)が残っている。バリアメタル41としては、例えば膜厚50nmの窒化チタンが成膜される。埋設金属42としては、例えば膜厚200nmのタングステンが成膜される。その結果、下層アルミ配線層20上の層間絶縁層31の厚さが、例えば1.0μmの場合、ビア溝72は埋設金属42できちんと埋め込まれず、750nmの段差の溝72aができることになる。
【0035】
続いて、
図4Cに示すように、層間絶縁層31、バリアメタル41及び埋設金属42を覆うように、バリアメタル51をスパッタリング法により成膜する。バリアメタル51としては、例えば膜厚30nmのチタンと膜厚40nmの窒化チタンの積層膜が成膜される。次に、バリアメタル51を覆うように、配線金属52をスパッタリング法により成膜する。配線金属52としては、例えば膜厚1.6μmのアルミ合金が成膜される。このとき、配線金属52の上部には、ビア溝72内の溝72a(段差)に対応して溝73が形成される。そして、配線金属52は、その溝73の内側に向かってひさし状に張り出した(オーバーハングした)形状になる。続いて、配線金属52を覆うよう反射防止膜53をスパッタリング法により成膜する。反射防止膜53としては、例えば膜厚30nmの窒化チタンが成膜される。このとき、反射防止膜53は、ひさし状に張り出した(オーバーハングした)形状のひさしの陰になる部分、すなわち溝73の内壁部分には成膜され難くなる。その結果、溝73の内壁部分の反射防止膜53は、溝73の外側の反射防止膜53よりも薄くなるか、又は、膜厚ゼロとなる。その後、リソグラフィー及びエッチングの工程により、バリアメタル51、配線金属52及び反射防止膜53の積層構造で形成されたパッドアルミ配線層50をボンディングパッド4の形状にパターニングする。この段階で、ビア溝72には、バリアメタル41、埋設金属42、バリアメタル51、配線金属52、反射防止膜53が埋め込まれる。その結果、ビア40aが概ね形成される。ただし、ビア溝72が深い場合、ビア溝72は完全には埋め込まれず、溝73が層間絶縁層31の上面よりも低くなる場合もある。
【0036】
その後、
図4Dに示すように、第1パッシベーション膜61と第2パッシベーション膜62を成膜する。第1パッシベーション膜61としては、例えば膜厚100nmの酸化シリコン膜と膜厚1000nmの酸窒化シリコン膜の積層構造が成膜される。第2パッシベーション膜62としては、例えばポジ型感光性ポリイミドが用いられ、10μmの膜厚で塗布される。続いて、ポジ型感光性ポリイミドにおいて、パッド開口部5の位置を露光した後に現像を行なうことで、露光した部分が除去される。その後、第2パッシベーション膜62をマスクとして第1パッシベーション膜61とパッドアルミ配線層50の反射防止膜53をドライエッチングにて除去して、パッド開口部5(例示:一辺70μmの略矩形)を形成する。その後、ボンディングワイヤ9(例示:直径約50μm)が接続される。
【0037】
以上のようにして、半導体装置は製造される。
【0038】
この製造方法を既存の製造方法と比較すると、通常のビアホール71を製造する工程において、同時にビア溝72を形成するようにしたことが変更点となる。すなわち、ビアホール71のマスクを一部変更して、ビア溝72も形成できるようにしている。このように、既存の工程の一部を変更するだけで、新たな工程を追加する必要はない。
【0039】
配線金属52をひさし状に張り出した(オーバーハングした)形状とするには、ビア溝72の幅と深さを調整することで実現することができる。例えば、幅を広くし過ぎると、横から来る成膜成分が多くなるので、オーバーハング形状にならなくなる。幅としては、例えばビアホール71の幅よりも大きい必要はある。溝部7の外側部分58での配線金属52の膜厚の2倍よりも小さくてもよい。また、スパッタリング条件を調整することでも実現することができる。
【0040】
本実施の形態では、パッドアルミ配線層50のバリアメタル51、配線金属52、反射防止膜53は、スパッタリング法で成膜される。ここで、スパッタリング法は、金属ターゲットにイオンを衝突させ、ターゲット表面からはじき飛ばされた原子が基板に到達して成膜される成膜方法であり、成膜量は成膜部位から見たターゲットの視野角の大きさに依存する。すなわち、スパッタリング法による成膜は、平坦部は均一に成膜できるが、段差があるとその側面部は成膜量が薄くなる特徴がある。従って、例えば、段差(深さ)が750nm、幅が1.5μmの溝72aに、スパッタリング法で1.6μmのアルミ合金(配線金属52)を成膜する場合、成膜後のアルミ合金の形状はオーバーハングした形状となる。これは、上述のスパッタリング法の特徴から、成膜中に溝72a内に成膜粒子が侵入し難くなり、溝72aの内部の側壁の部分において膜厚が薄くなるからである。
【0041】
その上に窒化チタン(反射防止膜53)がスパッタリング法で成膜されることになるが、オーバーハング形状のひさしの影になった部分には窒化チタンは成膜されないか、極めて薄くなる。これも、上述のスパッタリング法の特徴から、成膜中に、溝73の内部のひさしの陰になった領域に成膜粒子が侵入し難くなり、溝73の内部の側壁の部分において成膜が困難になるからである。その結果、パッド開口部5となる領域の周囲に適切な幅と深さのビア溝72を形成することで、窒化チタン(反射防止膜53)の極薄部又は未成膜部を作り出すことができる。それにより、パッド開口部5において、第1パッシベーション膜61とアルミ合金との間で露出した窒化チタンが酸化しても、酸化される領域は溝部7までの領域に限定することが可能となる。その結果、通常のビアホール71と同時にビア溝72を形成するというように、既存の工程の一部を変更するだけで、新たな工程を追加することなく窒化チタンの酸化によるパッシベーション膜のクラックの発生を抑制することができる。このとき、パッシベーション膜の膜種や膜厚を調整することは、より窒化チタンの酸化によるパッシベーション膜のクラックの発生を抑制することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る半導体装置について説明する。
本実施の形態は、ビア溝72(溝部7)の下方に下層アルミ配線層20を無くして、ビア溝72(溝部7)をより深くした点で第1の実施の形態と相違している。言い換えると、ビア溝72(溝部7)をより深くするために、ビア溝72(溝部7)の下方の下層アルミ配線層20を無くしている。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0043】
図5は、第2の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略断面図である。この図も、
図1のAA’断面を示し、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50の1つ下層の下層アルミ配線層20の下に位置する層間絶縁層11から上の部分を示している。なお、作図の都合上、パッド開口部5の大きさは小さくされ、全体は膜厚方向に拡大された図となっている。また、ボンディングワイヤ9の記載は省略されている。
【0044】
上記の
図2に示した第1の実施の形態に係る半導体装置では、ビア溝72(溝部7)の下部には下層アルミ配線層20を配置し、下層アルミ配線層20がビア40のエッチングのストッパーにもなっている。しかし、この
図5に示す本実施の形態に係る半導体装置では、ビア溝72(溝部7)の下部には下層アルミ配線層20を配置しておらず、ビア40aのエッチングが下層アルミ配線層20の高さの中程まで達している。すなわち、ビア40aは、ビア40よりもの厚く(深く)なっている。
【0045】
例えば、パッドアルミ配線層50と下層アルミ配線層20との間の層間絶縁層31の膜厚が薄い場合、パッドアルミ配線層50の成膜前のビア溝72の段差が十分では無く、配線金属52であるアルミ合金の形状がオーバーハング形状とはならなくなるおそれがある。その場合、反射防止膜53である窒化チタンの極薄又は未成膜の領域を作り出すことが出来なくなる。その事態を回避するには、ビア溝72下の下層アルミ配線層20を無くし、ビア溝72を下層アルミ配線層20の上表面の位置よりも深くすれば良いと考えられる。すなわち、ビア溝72の深さをより深くする。それにより、配線金属52のアルミ合金の形状を所望のオーバーハング形状とすることができ、反射防止膜53の窒化チタンの極薄又は未成膜の領域を作り出すことが可能となる。
【0046】
それを実現する製造方法としては、まず、下層アルミ配線層を形成する工程において、下層アルミ配線層20の形状を一部変更して、ビア溝72の下に下層アルミ配線層20を配置しない形状にエッチングする。そして、ビアホール71及びビア溝72をエッチングする工程において、エッチング時間を長くする。それにより、ビアホール71のエッチングは下層アルミ配線層20でストップする一方、ビア溝72のエッチングは継続するので、ビア溝72をビアホール71よりも深くすることができる。
【0047】
この製造方法を既存の製造方法と比較すると、以下の相違点がある。第1の相違点は、通常の下層アルミ配線層20を所望の形状にエッチングする工程において、下層アルミ配線層20の形状を一部変更することである。すなわち、下層アルミ配線層20のマスクを一部変更して、下層アルミ配線層20の形状を変更している。第2の相違点は、通常のビアホール71を製造する工程において、同時にビア溝72を形成するようにしたことである。すなわち、ビアホール71のマスクを一部変更して、ビア溝72も形成できるようにしている。第3の相違点は、通常のビアホール71を製造する工程において、エッチング時間を少し長めにしていることである。これらの各相違点は、既存の工程の一部を変更するだけで実現可能であり、新たな工程を追加する必要はない。
【0048】
この場合にも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
加えて、パッドアルミ配線層と下層アルミ配線層との間の層間絶縁膜の膜厚が薄い場合であっても、所望のビア溝及び溝部を形成することが可能となる
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る半導体装置について説明する。
本実施の形態は、パッドアルミ配線層50と下層アルミ配線層20との間の接続を、埋設金属42を用いたビア40ではなく、配線金属52を用いたビア40bとする点で第1の実施の形態と相違している。言い換えると、ビアを太くし、埋設金属42を成膜する工程を無くしている。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0049】
図6は、第3の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略断面図である。この図も、
図1のAA’断面を示し、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50の1つ下層の下層アルミ配線層20の下に位置する層間絶縁層11から上の部分を示している。なお、作図の都合上、パッド開口部5の大きさは小さくされ、全体は膜厚方向に拡大された図となっている。また、ボンディングワイヤ9の記載は省略されている。
【0050】
上記の
図2に示した第1の実施の形態に係る半導体装置では、下層アルミ配線層20とパッドアルミ配線層50とを接続するビア40にタングステンなどの埋設金属42を用いている。しかし、内部配線に使用されるビアの寸法が例えば2.5μm×2.5μmというように大きなサイズとなっていて、埋設金属42を用いなくても導通や品質に問題なければ、埋設金属42で埋設しなくても構わない。この
図6に示す本実施の形態に係る半導体装置では、下層アルミ配線層20とパッドアルミ配線層50とを接続するビアとして、配線金属52を用いたビア40bを用いている。こうすると、ビア溝72の底部にバリアメタル41及び埋設金属42が無くなるので、ビア溝72の深さ(段差)を、大きく取ることができる。それにより、より容易に、配線金属52のアルミ合金の形状を所望のオーバーハング形状とすることができ、反射防止膜53の窒化チタンの極薄又は未成膜の領域を作り出すことが可能となる。
【0051】
それを実現する製造方法としては、まず、ビアホール71及びビア溝72をエッチングする工程において、通常のビアホール71を大きなサイズとして、ビア溝72と共に開口する。そして、バリアメタル41及び埋設金属42の成膜工程とCMP工程を省略する。
【0052】
この製造方法を既存の製造方法と比較すると、以下の相違点がある。第1の相違点は、通常のビアホール71を製造する工程において、ビアホール71のサイズを大きくし、同時にビア溝72を形成するようにしたことである。すなわち、ビアホール71のマスクを一部変更して、ビアホール71のサイズを変更し、ビア溝72も形成できるようにしている。第2の相違点は、バリアメタル41及び埋設金属42の成膜工程とCMP工程を省略したことである。これらの各相違点は、既存の工程の一部を変更するだけで実現可能であり、新たな工程を追加する必要はない。
【0053】
この場合にも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
加えて、配線金属52を成膜する際のビア溝72の段差(深さ)を、大きく取ることができる。なお、本実施の形態は、パッドアルミ配線層と下層アルミ配線層との間の層間絶縁膜の膜厚が薄い場合にも適用できる。
【0054】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る半導体装置について説明する。
本実施の形態は、溝部7(ビア40a)が反射防止膜53である窒化チタンの極薄又は未成膜の領域を造りだすだけでなく、内部回路に繋がる下層配線への接続機能を持たせている点で第1の実施の形態と相違している。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0055】
図7は、第4の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略断面図である。この図も、
図1のAA’断面を示し、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50の1つ下層の下層アルミ配線層20の下に位置する層間絶縁層11から上の部分を示している。なお、作図の都合上、パッド開口部5の大きさは小さくされ、全体は膜厚方向に拡大された図となっている。また、ボンディングワイヤ9の記載は省略されている。
【0056】
上記の
図2に示した第1の実施の形態に係る半導体装置では、溝部7(ビア40a)は反射防止膜53である窒化チタンの極薄又は未成膜の領域を造りだす機能だけを有し、内部回路に繋がる下層アルミ配線層20への接続機能は別の通常のビア40が担っている。しかし、溝部7(ビア40a)に内部回路に繋がる下層アルミ配線層20への接続機能を持たせても良い。この
図7に示す本実施の形態に係る半導体装置では、溝部7(ビア40a)は反射防止膜53である窒化チタンの極薄又は未成膜の領域を造りだす機能に加えて、内部回路に繋がる下層アルミ配線層20への接続機能を担っている。このような構成とすることで、内部回路に繋がる下層アルミ配線層20に通常のビア40で接続させる領域の分(例示:
図2の延在部50bの分)だけ、半導体装置を小さくすることができる。それにより、低コストの半導体装置の製造に寄与することができる。
【0057】
この製造方法を既存の製造方法と比較すると、通常のビアホール71を製造する工程において、ビアホール71の数を少なくし、同時にビア溝72を形成するようにしたことが変更点となる。すなわち、ビアホール71のマスクを一部変更して、ビアホール71の数を少なくし、ビア溝72も形成できるようにしている。このように、既存の工程の一部を変更するだけで、新たな工程を追加する必要はない。
【0058】
この場合にも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
加えて、半導体装置の面積を低減でき、半導体装置を低コストで製造することができる。
【0059】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る半導体装置について説明する。
本実施の形態は、下層配線層として銅を用いている点で第1の実施の形態と相違している。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0060】
図8は、第5の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略断面図である。この図も、
図1のAA’断面を示し、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50の1つ下層の下層アルミ配線層20の下に位置する層間絶縁層11から上の部分を示している。なお、作図の都合上、パッド開口部5の大きさは小さくされ、全体は膜厚方向に拡大された図となっている。また、ボンディングワイヤ9の記載は省略されている。
【0061】
上記の
図2に示した第1の実施の形態に係る半導体装置では、下層配線層としてアルミ合金の配線金属22を含む下層アルミ配線層20を用いている。しかし、下層配線は銅を用いても構わない。この
図8に示す本実施の形態に係る半導体装置では、下層配線層として銅(Cu)の配線金属92を含む下層銅配線層90を用いている。下層銅配線層90は、タンタル/窒化タンタル(Ta/TaN)を含むバリアメタル91と銅(Cu)を含む配線金属92とを備えている。なお、層間絶縁層81、82、83は、それぞれ酸化シリコン膜(SiO
2)、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiO
2)に例示される。また、このような銅配線は、第2〜第4の実施の形態に対しても適用可能である。
【0062】
この製造方法と既存の製造方法との比較については、第1の実施の形態と同様である。
【0063】
この場合にも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
加えて、下層配線層がアルミ配線の半導体装置だけでなく、下層配線層が銅配線の半導体装置へも第2〜第4の実施の形態を適用でき、多くの半導体装置に適用可能である。
【0064】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係る半導体装置について説明する。
本実施の形態は、溝部7がパッド開口部5を囲っていない点で第1の実施の形態と相違している。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0065】
図9は、第6の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略平面図である。この図でも、
図1と同様に、半導体装置としての半導体チップ2a、2b、2c、2dがダイシング領域3を介して半導体ウェハ上に設けられている例を示している。そして、半導体チップ2a、2b、2c、2dについては、それらの全体ではなく一部が示されている。半導体チップ2a、2bについては、それらのボンディングパッド4が示されている。以下では、半導体チップ2a、2b、2c、2dを区別する必要が無いので、半導体チップ2aを代表として説明する。
【0066】
上記の
図1に示した第1の実施の形態に係る半導体装置では、パッド開口部5を取り囲むように溝部7を配置している。しかし、例えば、狭ピッチのボンディングパッドを使用している半導体装置においては、パッド開口部5を取り囲むように溝部7を配置しようとすると、パッド開口部5を著しく小さくする(狭くする)必要がある。そうなると、半導体装置のテスティング時のプロービング性が悪くなったり、パッケージへの組み立て時のボンディング性が悪くなったりする可能性がある。従って、狭ピッチのボンディングパッドを有する半導体装置には、
図1のように溝部7を配置する構成は、必ずしも適当とはいえない場合がある。
【0067】
しかし、本実施の形態に示す半導体装置では、溝部7を、パッド開口部5を取り囲むように配置しない。本実施の形態に示す半導体装置では、溝部7を、ボンディングパッド4の本体部分と引き出し部分との接続部における引き出し部分のみに、その幅方向に沿って配置する。そのとき、溝部7は、その一方の端がボンディングパッド4の引き出し部分における幅方向の一方の端に、他方の端がボンディングパッド4の引き出し部分における幅方向の他方の端に達するように配置される。また、ボンディングワイヤ9の記載は省略されている。
【0068】
図10は、第5の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略断面図である。この図は、
図9のBB’断面を示し、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50の1つ下層の下層アルミ配線層20の下に位置する層間絶縁層11から上の部分を示している。なお、作図の都合上、パッド開口部5の大きさは小さくされ、全体は膜厚方向に拡大された図となっている。
【0069】
溝部7は、ボンディングパッド4の本体部分に相当するパッドアルミ配線層50のパッド部50aと引き出し部分に相当する延在部50bとの接続部における延在部50bに配置される。このように溝部7を延在部50bに配置することで、パッド開口部5を従来の大きさで開口することが可能となる。この場合、パッド開口部5において、パッシベーション膜60と配線金属52との間に露出している反射防止膜53の窒化チタンが酸化されて、パッド部50aの上面の窒化チタンが全て酸化される場合が考えられる。しかし、その場合であっても、酸化現象はその範囲で収まり、溝部7を超えて延在部50bの範囲で発生することはない。従って、酸化現象の発生する領域が非常に狭い範囲に限定されるので、窒化チタンが酸化され体積膨張したとしても、パッシベーション膜60にクラックを発生させるほどにはならないと考えられる。それにより、狭ピッチのボンディングパッド4を有する半導体装置においても、反射防止膜53の窒化チタンの酸化現象が引き起こすパッシベーション膜60のクラックを防止する対策が可能となる。
【0070】
言い換えると、酸化現象の発生する領域を非常に狭い範囲に限定するように、溝部7を配置すればよいということができる。従って、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50(反射防止膜53を含む層)が、パッド開口部5に対して非対称な形状を有している場合、パッド開口部5に対してパッドアルミ配線層50の面積が広い側に溝部7を設ければ酸化を抑制できると考えられる。それにより、その溝部7で、その面積が広い側の酸化を防止することができ、クラックを効果的に防止することができる。
図9の場合では、パッドアルミ配線層50(反射防止膜53を含む層)は、延在部50b(引き出し部分)の側に長く延びているような、パッド開口部5に対して非対称な形状を有している。従って、パッド開口部5に対して、その延在部50b(引き出し部分)の側に溝部7を設ければよいことになる。そのため、
図9の場合では、引き出し部分と本体部分との接続部分に溝部7を設けている。また、酸化抑制という点について見れば、溝部7は、溝だけでなく、凹みや窪みや段差であっても良い、ということができる。
【0071】
この製造方法と既存の製造方法との比較については、第1の実施の形態と同様である。
【0072】
この場合にも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
加えて、本実施の形態は、第2〜第5の実施の形態においても同様に適用でき、多くの半導体装置に適用可能である。
【0073】
次に、第6の実施の形態に係る半導体装置の変形例について説明する。
図11A〜
図11Cは、第6の実施の形態に係る半導体装置の変形例の概略平面図である。
図11Aでも、溝部7を、ボンディングパッド4の本体部分と引き出し部分との接続部における引き出し部分のみに、その幅方向に沿って配置している。ただし、
図11Aの場合では、溝部7は、その一方の端がボンディングパッド4の引き出し部分における幅方向の一方の端に達している。また、他方の端がボンディングパッド4の引き出し部分における幅方向の他方の端の近傍にあるが、その他方の端には達していない。このように、引き出し部分において、幅方向に、僅かに溝部7が無い部分があっても、他の大部分に溝部があるので、酸化の抑制効果を奏することができる。
【0074】
同様に、
図11Bでも、溝部7を、ボンディングパッド4の本体部分と引き出し部分との接続部における引き出し部分のみに、その幅方向に沿って配置している。ただし、
図11Bの場合では、溝部7は、その一方の端がボンディングパッド4の引き出し部分における幅方向の一方の端の近傍にあるが、その一方の端には達していない。また、他方の端がボンディングパッド4の引き出し部分における幅方向の他方の端の近傍にあるが、その他方の端には達していない。このように、引き出し部分において、幅方向に、僅かに溝部7が無い部分があっても、他の大部分に溝部があるので、酸化の抑制効果を奏することができる。
【0075】
同様に、
図11Cでも、溝部7を、ボンディングパッド4の本体部分と引き出し部分との接続部における引き出し部分のみに、その幅方向に沿って配置している。ただし、
図11Cの場合では、溝部7は、その途中において、一部途切れている。このように、引き出し部分において、幅方向に、僅かに溝部7が無い部分があっても、他の大部分に溝部があるので、酸化の抑制効果を奏することができる。
【0076】
図12A〜
図12Cは、第6の実施の形態に係る半導体装置の他の変形例の概略平面図である。
図12Aでも、溝部7を、パッド開口部5を取り囲むように配置しない。
図12Aの場合では、溝部7を、ボンディングパッド4の本体部分と引き出し部分との接続部における本体部分のみに、その幅方向に沿って配置している。そのとき、溝部7は、その一方の端がボンディングパッド4の本体部分の一方の端に、他方の端がボンディングパッド4の本体部分の他方の(対向する)端に達するように配置される。この場合にも実質的に
図9の場合と同様であるので、同様の効果を奏することができる。なお、この場合、
図11A〜
図11Cのように、僅かに溝部7の無い箇所があっても良い。
【0077】
図12Bでも、溝部7を、パッド開口部5を取り囲むように配置しない。
図12Bの場合では、溝部7を、パッド開口部5を部分的に取り囲むように配置している。具体的には、ボンディングパッド4の本体部分(パッド部50a)の直角に交わる二辺に沿って直角な形状の溝部7を配置している。溝部7の両端は、ボンディングパッド4の本体部分の端に達している。このような場合にも実質的に
図9の場合と同様であるので、同様の効果を奏することができる。なお、この場合、
図11A〜
図11Cのように、僅かに溝部7の無い箇所があっても良い。
【0078】
図12Cでも、溝部7を、パッド開口部5を取り囲むように配置しない。
図12Bの場合では、溝部7を、パッド開口部5を部分的に取り囲むように配置している。具体的には、
図1の場合と比較して、ボンディングパッド4の引き出し部分(延在部50b)の側の約半分の溝部7を配置している。このように、ボンディングパッド4の本体部分において、溝部7が無い部分があっても、他の大部分に溝部があるので、酸化の抑制効果を奏することができる。
【0079】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態に係る半導体装置について説明する。
本実施の形態は、ボンディングワイヤ9がパッド開口部5に露出したボンディングパッド4(のパッドアルミ配線層)の全面に設けられている点で第1の実施の形態と相違している。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0080】
図13Aは、第7の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略平面図である。この図では、半導体装置としての半導体チップ2aのうちの一つのボンディングパッド4について示している。このボンディングパッド4では、パッド開口部5に露出したボンディングパッド4(のパッドアルミ配線層)の全面に、ボンディングワイヤ9が設けられている。
【0081】
図13Bは、第7の実施の形態に係る半導体装置の一例の概略断面図である。この図は、
図13AのCC’断面を示し、ボンディングパッド4のパッドアルミ配線層50の1つ下層の下層アルミ配線層20の下に位置する層間絶縁層11から上の部分を示している。なお、作図の都合上、パッド開口部5の大きさは小さくされ、全体は膜厚方向に拡大された図となっている。
【0082】
このボンディングパッド4では、パッド開口部5に露出したパッドアルミ配線層50の配線金属52の全面に、ボンディングワイヤ9が設けられている。このとき、一見、パッド開口部5において、パッシベーション膜60と配線金属52との間の反射防止膜53は、ボンディングワイヤ9に覆われて、水分が到達しないようにも見える。しかし、製造ばらつきや長期使用による劣化等によるパッシベーション膜60とボンディングワイヤ9との間にわずかな隙間が生じて、水分がパッシベーション膜60とボンディングワイヤ9との間に侵入し、反射防止膜53に到達する場合がある。しかし、そのような場合であっても、溝部7を設けることで、反射防止膜53が酸化され、体積膨張して、パッシベーション膜60にクラックが発生する、という現象を防止することができる。
【0083】
この場合にも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、他の実施の形態においても、本実施の形態を適用可能である。
【0084】
また、上記各実施の形態では、反射防止膜として窒化チタンを例にして説明しているが、各実施の形態はその例に限定されるものではない。反射防止膜として使用されたとき、酸化が進行し易く、体積膨張するような材料を用いた膜に対しても、同様に適用可能である。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、各実施の形態の各技術は、技術的矛盾の発生しない限り、他の実施の形態にも適用が可能である。