【文献】
堤宏守 他,電界紡糸法と無電解めっき法を用い調製した極細酸化銅チューブの特性,表面技術協会第123回講演大会講演要旨集,2011年 3月 7日,Pages203-204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Pt粒子は、前記Pt担持マイクロチューブ全体を100質量%として、1質量%以上40質量%以下の割合で担持されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のPt担持マイクロチューブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの貴金属担持触媒体においては、高価な貴金属触媒の使用量を削減し、かつ、効率的な触媒反応を実現するために、燃料や空気等の気体と、電解質と、触媒との三相界面を良好に形成することが検討されている(例えば、特許文献1および2参照)。例えば、特許文献1に開示される構成の貴金属担持触媒体によると、かかる三相界面が良好に機能し、例えば、水素は酸化されずにCOのみが選択的に酸化されるCO選択性触媒が実現され得ること等が知られている。
しかしながら、このような特許文献1および2に開示される、特殊な担体により構成される貴金属担持触媒体は、所望の貴金属触媒コロイド等を含む溶液を含浸させるなどして担持させている。
【0006】
本発明は、かかる状況を鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、触媒機能を有する白金ナノ粒子を、セラミックからなる多孔性のマイクロチューブに担持させた、触媒体等として有用なPt担持マイクロチューブを提供することである。また本発明の他の目的は、かかる構成のPt担持マイクロチューブを好適に製造する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される発明が提供するPt担持マイクロチューブは、セラミック粒子が中空管状に結合してなるセラミック製のマイクロチューブの表面に、白金(Pt)粒子が担持されていることを特徴としている。
かかる構成によるマイクロチューブは、中空形状であることに加え、セラミック粒子が結合することでマイクロチューブを構成しているため、比表面積が極めて大きい。したがって、単位体積あたりに多量のPt粒子を担持することができ、触媒能の高い触媒を実現することができる。
【0008】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの好ましい態様において、上記Pt粒子の平均粒径は、15nm以下であることを特徴としている。
上記のPt粒子は、本質的にはナノメートルサイズ(典型的には、1nm〜100nmの範囲)の粒径を有するナノ粒子であり得る。そして、かかる構成において、Pt粒子(以下、「Ptナノ粒子」と表現する場合もある。)の平均粒径は15nm以下であることが好ましく、典型的には、10nm以下、さらに好ましくは5nm以下であり得る。したがって、高価なPtの使用量を減らしつつ、触媒活性表面を大きく確保することができ、低コストで触媒能の高いPt担持マイクロチューブを実現することができる。
【0009】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの好ましい態様において、上記セラミック粒子の平均粒径は、200nm以下であることを特徴としている。
セラミック粒子が粗大になると、マイクロチューブの比表面積が減少してしまうために好ましくない。また、粒子同士の接合面積も相対的に減少し、マイクロチューブの強度が低減し得る。かかるセラミック粒子の平均粒径は、200nm以下であることが好ましく、典型的には100nm以下、より好ましくは75nm以下である。
【0010】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの好ましい態様においては、上記Pt粒子は、上記マイクロチューブの内壁および外壁にそれぞれ担持されていることを特徴としている。
かかる構成によると、マイクロチューブの外壁と内壁の両方がPt粒子の担持表面となり、より多くのPt粒子の担持が可能とされる。
【0011】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの好ましい態様において、上記Pt粒子は、上記Pt担持マイクロチューブ全体を100質量%として、1質量%以上40質量%以下の割合で担持されていることを特徴としている。
かかる構成によると、Pt粒子はナノ粒子でありながらも、担体であるマイクロチューブの比表面積が大きいことから、1質量%以上40質量%の範囲で所望の量だけ担持することができ、例えば40質量%と多量に担持され得る。これにより、より触媒能の高いPt担持マイクロチューブが実現される。
【0012】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの好ましい態様において、上記マイクロチューブは、平均外径が200nm以上700nm以下、平均内径が40nm以上600nm以下であることを特徴としている。
マイクロチューブにおける平均外径は、200nm以上700nm以下程度の範囲で調製することができ、また、マイクロチューブの平均内径は40nm以上600nm程度の範囲で調製することができる。これにより、例えば、かかるPt担持マイクロチューブをPEMFCの電極用触媒として用いた時の、燃料や空気等の気体と、電解質と、触媒との三相界面の形態を制御することが可能とされる。
【0013】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの好ましい態様において、上記マイクロチューブが、多孔質構造であることを特徴とする。
マイクロチューブは、セラミック粒子が結合することで構成されているが、セラミック粒子の間隔が疎である部分等においてチューブ壁に細孔が形成され、全体としては多孔質構造となり得る。かかる細孔は、1nmから数十nmの大きさの孔(メソポア)を含むため、担体の比表面積を極端に大きくすることができる。このように、マイクロチューブがメソポアを含む多孔質構造であることにより、担体の比表面積がさらに大幅に増大し、より多くのPt粒子を担持することが可能となる。またこの細孔を通じてマイクロチューブの内側と外側とをつなぐ通路が形成されることとなり、マイクロチューブの内壁に担持されるPt粒子と気体等との接触効率が高められる。
【0014】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの好ましい態様においては、上記セラミック粒子が酸化スズ粒子であることを特徴としている。酸化スズ(IV)は、セラミックとしては比較的高い導電性を有する半導体材料である。また、酸化スズ(IV)は、透明性を有し、物理的および化学的安定性に優れた材料であり、電気・電子分野での新規な機能性材料として期待される材料である。かかるPt担持マイクロチューブはこの酸化スズ粒子によりマイクロチューブを構成することが可能なことから、新たな機能の発現の可能性を有するPt・酸化スズ複合体が提供される。
【0015】
ここに開示される発明が他の側面で提供するPt担持マイクロチューブの製造方法は、セラミック源と白金(Pt)源と樹脂成分とを含む紡糸原料液を調製する工程、上記紡糸原料液を紡糸して繊維状の前駆体を用意する工程、上記前駆体を、不活性気流中で、450℃以上900℃以下の温度範囲に設定される第一の焼成温度で焼成する第一焼成工程、および、上記第一焼成工程により焼成された焼成物を、酸化雰囲気中で、400℃以上で上記第一の焼成温度を超えない温度範囲に設定される第二の焼成温度で焼成する第二焼成工程、を包含することを特徴としている。
【0016】
すなわち、ここに開示する発明においては、紡糸原料液を調整する段階で、この紡糸原料液の中に、Pt担持マイクロチューブを構成する材料であるセラミックとPtの原料を共に含むようにしている。そして、かかる紡糸原料液を繊維状に成形して前駆体を形成し、上記の通りの特徴的な2段階での焼成処理を施すことで、ここに開示されるPt担持マイクロチューブを製造するようにしている。上記の紡糸原料液中において、セラミック源とPt源とは、ほぼ均一に混合された状態で存在している。また、前駆体においても、セラミック源とPt源とは、ほぼ均一に混合された状態で存在している。ここで、前駆体は中実の、すなわち中身の詰まった繊維状である。そして、2段階での焼成処理により、前記の樹脂成分を焼失させ、セラミック源からセラミック粒子が中空管状に結合したマイクロチューブを形成させるとともに、その表面にPtナノ粒子を形成するようにしている。詳細は不明ではあるものの、本発明者らは、上記の2段階での焼成処理において、(1)不活性気流中で行われる第一の焼成により、前駆体が、樹脂成分を芯部とし、セラミック源およびPt源を鞘部とする芯鞘構造に変成され、(2)酸化雰囲気中で行われる第二の焼成により、かかる芯鞘構造における芯部が消失されるとともに、鞘部を構成するセラミック源およびPt源が酸化されてセラミック粒子およびPt粒子となったものと考えている。以下、特にことわりのない限り、本明細書において単に「繊維状」と記す場合は、中実の繊維形態を意味し、中空の繊維形態(チューブ状等を含む。)は含まないものとする。
【0017】
かかる構成によると、例えば、セラミック製のマイクロチューブを形成した後に、その表面にPtナノ粒子を担持させるといった手間を要することなく、マイクロチューブの形成と同時にその表面にPtを担持させることができる。また、セラミック粒子同士、セラミック粒子とPt粒子とは、焼結により強固に結合している。そのため、Pt粒子が滑落する可能性が低いPt担持マイクロチューブを得ることができる。
また、セラミック粒子とPtナノ粒子とは、その割合を紡糸原料液の調製段階で制御することができるため、Ptナノ粒子の担持量を比較的正確に制御することが可能となる。
さらに、セラミック原料とPt原料とは、紡糸原料液を調整する段階で均一な系を形成しているため、得られるPt担持マイクロチューブにおいて、Ptナノ粒子をセラミック粒子の表面に均一に分散した状態で担持させることができる。
また、Pt担持マイクロチューブの形態は、紡糸により形成される前駆体の形態に由来するため、紡糸の態様によって所望のチューブ形状を実現することができ、またマイクロチューブの集合形態を所望の形態に制御することも可能とされる。これにより、より形状の自由度の高いPt担持マイクロチューブを簡便に製造することが可能となる。
【0018】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの製造方法の好ましい一態様においては、上記第一焼成工程における昇温速度を5℃/min以上20℃/min以下とすることを特徴としている。
第一焼成工程における昇温速度を上記範囲に設定することで、繊維状の前駆体から中空管状のPt担持マイクロチューブを好適に得ることができる。昇温速度が5℃/min未満の場合は、2段階の焼成を行ってもセラミック粒子によりチューブ形状を形成させることが困難な場合があるため好ましくない。昇温速度は、好ましくは7℃/min以上、例えば、8℃/min以上、より好ましくは10℃/min以上とすることが例示される。また、昇温速度の上限は特に制限はないが、上記の通りの芯鞘構造へのスムーズな変成と、例えば汎用されている焼成炉での一般的な昇温速度の上限の目安として、20℃/min以下とすることが例示される。
【0019】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの製造方法の好ましい一態様においては、上記第一焼成工程の終了後に100℃以下にまで温度を下げた後、上記第二の焼成温度まで昇温速度5℃/min以上20℃/min以下で昇温することを特徴としている。
第二焼成工程における昇温速度は、マイクロチューブの表面に担持されるPtナノ粒子の粒径を制御する上で重要となる。第二焼成工程の昇温速度を高めるにつれて、Ptナノ粒子の粒径が小さくなる傾向がある。そして昇温速度を上記範囲に設定することで、Ptナノ粒子の平均粒径を約1nm〜15nmの範囲のものとすることができる。より詳細には、昇温速度が5℃/min以上15℃/min以下程度の場合に、Ptナノ粒子の粒径を約2nm〜10nm程度のものとすることができる。また、昇温速度が10℃/min以上15℃/min以下程度の場合に、Ptナノ粒子の粒径を約2nm〜5nm程度のものとすることができる。昇温速度が5℃/min未満の場合は、Ptナノ粒子の粒径が15nmを超過することがあり得る。
【0020】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの製造方法の好ましい一態様においては、上記紡糸原料液における上記セラミック源と上記白金源との割合は、上記第二焼成工程後に得られるセラミックと白金との質量比(セラミック質量:白金質量)が、60:40〜99:1の範囲となるよう調製されていることを特徴としている。
セラミックからなるマイクロチューブの表面に担持されるPtナノ粒子の割合は、紡糸原料液の段階で所望の質量比となるように調整することができる。また、セラミック源と白金源は上記の質量比の範囲内で紡糸原料液中に均一に分散されるため、Ptナノ粒子はマイクロチューブの表面に凝集することなく均一に分散された状態で担持される。
【0021】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの製造方法の好ましい一態様においては、上記セラミック源が、スズのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩およびシュウ酸塩からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴としている。かかる構成によると、セラミック粒子として酸化スズ(IV)(SnO
2)粒子が形成され、Pt粒子が担持されたSnO
2マイクロチューブを得ることができる。酸化スズ(IV)は、透明性を有し、セラミック材料としては電気伝導度の高い材料である。かかるPt担持マイクロチューブはこの酸化スズ粒子によりマイクロチューブを構成することが可能なことから、触媒体として有用なPt担持マイクロチューブが提供される。
【0022】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの製造方法の好ましい一態様においては、上記前駆体は、上記紡糸原料液をエレクトロスピニング法によりノズルから噴出させることで形成することを特徴としている。
従来より、エレクトロスピニング法を利用して、直径(繊維径)がマイクロレベルの繊維状のセラミック材料を得る手法が知られている(例えば、特許文献3〜7参照)。典型的には、無機材料と樹脂とを含む紡糸材料を長尺繊維状に紡糸して前駆体とし、これを酸化焼成することで繊維状のセラミックスとするものである。エレクトロスピニング法によると、繊維径がマイクロレベル(例えば、およそ100nm〜1000nm程度の範囲)である程度制御された長尺繊維状のセラミック材料を、比較的容易に作り出すことができる。しかしながら、かかる長尺繊維状のセラミック材料をチューブ状(すなわち、マイクロチューブ)に形成することについては、いまだ実現されていなかった。また、同時に、チューブ壁を多孔質構造とすることや、かかるマイクロチューブの表面に異種材料を担持させることについても、実現されていない。
これに対し、ここに開示される製造方法では、エレクトロスピニング法に上記の通りの特徴的な焼成プロセスを組み合わせることで、これまでに知られていない、Pt担持マイクロチューブの製造を、簡便に実現可能としたものである。
【0023】
なお、エレクトロスピニング法を利用して芯鞘構造の繊維を紡糸する技術も知られている。かかる技術は、例えば、芯材と鞘材とを別の紡糸原料液として用意し、特殊な構成の芯鞘構造用あるいは中空構造用のスピナレット(紡糸口金)を用いて紡糸するものである(例えば、特許文献8参照)。
これに対し、ここに開示される製造方法では、かかる特殊な構成のスピナレットは必要ではなく、噴出口が注射針のようなごく単純な管状の構成のノズルを用いて紡糸できる。また、紡糸原料液はセラミック源と白金(Pt)源とを含む1液のみを用意すればよく、極めてシンプルな手法である。
【0024】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブの製造方法の好ましい一態様においては、上記ノズルの内径が0.2mm以上1.2mm以下の範囲であることを特徴としている。
かかる構成により、Pt担持マイクロチューブの中空形状を好適に形成できるとともに、その外径等の寸法の制御が可能となる。例えば、上記範囲でノズルの内径を制御することで、チューブ径(外径)が平均として200nm以上700nm以下程度の範囲で制御されたPt担持マイクロチューブを製造することができる。
【0025】
以上のここに開示されるPt担持マイクロチューブは、ナノメートルオーダーの粒子が結合することで多孔性のマイクロチューブを構成している。そして、その表面には触媒作用を示すPtナノ粒子を担持している。したがって、かかるPt担持マイクロチューブは、例えば、各種の化学反応を促進させるための触媒体として好適に用いることができる。また、担体であるセラミック製の多孔性マイクロチューブは、チューブ壁にナノメートルオーダーの微細な細孔を多数有することから、かかる触媒能に反応選択性を付与し得る。例えば、このPt担持マイクロチューブは、チューブの内径や、チューブ壁の細孔径を制御するなどして、被反応物質である気体と電解質と、触媒との三相界面を良好に整えることで、例えば、ORR反応よりも、HOR反応を優先的に促進させる触媒等として機能し得る。したがって、これらのPt担持マイクロチューブは、例えば、固体高分子形燃料電池に用いる触媒体、とりわけアノード触媒として好ましく用いることができる。このことから、本発明は、上記のPt担持マイクロチューブを備える固体高分子形燃料電池用触媒体や、その他の各種の物品をも好適に提供することができる。また、本発明は、上記のPt担持マイクロチューブの製造方法により製造されたPt担持マイクロチューブを備える固体高分子形燃料電池用触媒体や、その他の各種の物品をも好適に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識に基づいて実施することができる。
【0028】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブは、セラミック製のマイクロチューブの表面に、白金(Pt)粒子が担持されている。
かかるマイクロチューブは、複数のセラミック粒子が互いに連続的に結合することで、中空管状の長尺のチューブを構成している。複数のセラミック粒子は、隣り合うセラミック粒子同士が互いに強固に結合(典型的には固相結合、例えば焼結、液相焼結等を含む)している。セラミック粒子は、例えば、粒状のものが、その外形をほぼ維持したまま点ないしは比較的狭い面積を以て互いに結合していてもよいし、複数のセラミック粒子が比較的広い面積を以て緻密に結合していても良い。
そして、このマイクロチューブは、全体としてみた場合にはチューブ壁に細孔が形成されており、かかるマイクロチューブは多孔性であり得る。この細孔は、いくつかのセラミック粒子間に間隙が生じ、マイクロチューブの中空部分と外部とが連通されることで、形成されている。例えば、複数の球状のセラミック粒子が最密充填で結合した場合に形成される空隙よりも十分に大きな間隙が生じて細孔を形成し得る。
このように、ここに開示されるマイクロチューブは、複数のセラミック粒子が結合した形態であるために比表面積が大きい。さらに、マイクロチューブのチューブ壁には細孔が存在していることから、比表面積はさらに増大されている。また、マイクロチューブはセラミック製であることから高い強度および耐久性を有し、例えば、触媒担体として望ましい特性を備える。
【0029】
マイクロチューブを構成するセラミックとしては、各種の金属の酸化物である酸化物系セラミックスや、その複合体を考慮することができる。このような酸化物系セラミックスとしては、例えば、具体的には、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、イットリア(Y
2O
3)、フェライト(Fe
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO
2)、酸化カルシウム(CaO
2)、酸化マグネシウム(MgO
2)等が例示され、複合体としては、一例として、酸化インジウムスズ(ITO)、サイアロン(Si
3N
4・Al
2O
3)、ムライト(Al
6Si
2O
13)や、ペロブスカイト型酸化物、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等が例示される。これらのうち、例えば、SnO
2やITOを用いることで、マイクロチューブに半導体レベルの導電性(電子伝導性)を付与することができる。
【0030】
マイクロチューブの形態としては、特に限定されないものの、代表的には、平均のチューブ直径(すなわち、平均外径)が200nm以上700nm以下程度の範囲のものであり得る。平均外径は、典型的には、300nm以上600nm以下、例えば、400nm以上500nm以下程度であり得る。
マイクロチューブの中空部分の平均径(すなわち、平均内径)については、40nm以上600nm以下であり得る。平均内径は、典型的には、100nm以上500nm以下、例えば、200nm以上300nm以下程度であり得る。
【0031】
また、マイクロチューブを構成するセラミック粒子の粒径については、特に制限はないものの、代表的には、平均粒径は約200nm以下であり、より典型的には50nm以上100nm以下、例えば、50nm以上75nm以下の範囲である。
マイクロチューブの長さについても制限はなく、典型的には1μm以上、例えば、数μm以上の長さのものができる。
そして、チューブ壁に形成される細孔の大きさは特段制限されないが、例えば、平均細孔径が5nm〜100nm程度の大きさのメソポアであり得る。より代表的には、平均細孔径は10nm〜75nm程度であり、さらに限定的には、15nm〜30nm程度であり得る。
なお、本明細書における「平均外径」「平均内径」「平均粒径」等に代表される寸法は、電子顕微鏡等による観察により計測される20個以上の粒子ついての寸法の算術平均値として定義される。
【0032】
以上のマイクロチューブは、断面形状は特に制限されず、例えば、略円形、略楕円形、略方形などの様々な形態であってよい。典型的には、マイクロチューブの断面形状は略円形であり得る。また、このマイクロチューブは、断面形状が必ずしも同一である必要はなく、ある程度(例えば、一例として、寸法として±30%程度)の変動があっても良い。例えば、カーボンナノチューブにみられるように必ずしも径が一定である必要はなく、一つのマイクロチューブにおいてより太いところや細いところがあってよい。チューブの内径や、チューブ壁の厚みについても同様であって、必ずしも一定の大きさおよび厚みである必要はない。また、マイクロチューブは、比較的直線的であっても良いし、湾曲していても良い。さらには、単数または複数のマイクロチューブがその一部で連結するなどして二次元あるいは三次元的な構造を形成していても良い。
【0033】
Pt粒子としては、主成分としてPtを含むものとすることができる。ここで、「主成分としてPtを含む」とは、Pt粒子の質量を100質量%としたとき、Ptが占める割合が50質量%以上であることを意味し、代表的には、70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは98質量%以上(例えば、99質量%以上)がPtである。
Pt粒子の平均粒径は、典型的には、100nm以下のナノ粒子であり得る。Pt粒子の平均粒子径が小さいと単位質量あたりの表面積を拡大することができるために好ましい反面、粒子の微細化を過度に進めると触媒活性の低下がみられ、かかるPt担持マイクロチューブを触媒体として利用する場合には性能維持の観点からは好ましくない。また小さすぎる触媒微粒子は耐久性に問題が生じることが予想される。ここに開示されるPt粒子の平均粒子径は、1nm以上30nm以下の範囲にあり、代表的には1nm以上15nm以下、例えば2nm以上10nm以下、より好ましくは、2nm以上5nm以下の範囲である。かかる平均粒子径を有するPt粒子は、質量活性が高くなることに加えて、触媒として使用された場合の耐久性をも備えることができる。
【0034】
かかるPt粒子が、上記のマイクロチューブの内壁および外壁に担持される。具体的には、マイクロチューブを構成するセラミック粒子の表面に担持される。ここで、セラミック粒子とPt粒子とは、互いに強固に結合されている。典型的には、両者は固相結合、例えば焼結により強固に結合している。
マイクロチューブに担持されるPt粒子の割合は、所望の範囲で調製することができる。かかるマイクロチューブは、セラミック粒子がその粒状の形態をほぼ維持した状態で結合しているため比表面積が大きいものであり得る。そのため、比較的大量のPt粒子を担持し得る。しかしながら、多すぎるPt粒子を担持するとPt粒子同士が接触する事態が生じ得る。すると、Ptの単位質量あたりの活性表面積が低減し、効率的に触媒能を発現させることができないおそれがある。そこで、例えば、Pt担持マイクロチューブの全体を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下の割合でPt粒子を担持するのが好ましい例として示される。換言すると、マイクロチューブを構成するセラミックとPt粒子との質量比(セラミック質量:Pt質量)として、60:40〜99:1程度であるのが好適な範囲として例示される。かかる割合とすることで、上記の通りのナノレベルの大きさのPt粒子は、マイクロチューブの表面に高分散された状態で好適に担持され得る。
【0035】
このようにして構成されるPt担持マイクロチューブは、触媒作用を示すPtがナノ粒子として担持されているため、所定の触媒能を得るために必要な白金の使用量が削減されており、コスト面において実用性に優れている。かかるPt担持マイクロチューブの触媒性能としては、例えば、具体的には、このPt担持マイクロチューブに担持される白金1gあたりの活性表面積として、40m
2/gPt以上、例えば、40m
2/gPt以上、好ましくは、60m
2/gPt以上を実現し得る。
【0036】
また、このPt担持マイクロチューブは、例えば、長尺のものであっても、チューブ壁に形成される細孔によってマイクロチューブの内部空間と外部とが連通されている。したがって、マイクロチューブの外部と内部とは、細孔を通じて物質の出入りが可能な構成とされている。つまり、単位体積あたりにより多くのPt粒子を担持することができる。また、かかる細孔を通過し得る物質であれば、マイクロチューブの外部に存在する物質であっても、マイクロチューブの内壁に担持されたPt粒子に容易に接触が可能とされている。したがって、マイクロチューブの内部には、細孔の大きさにより制限される特別な反応場が形成され得る。これによると、例えば、細孔内に特有の選択的触媒活性を具備する等といった、優れた性能を発現させることが可能となる。
【0037】
ここに開示されるPt担持マイクロチューブは、例えば、以下に示す製造方法により好適に製造することができる。以下に、ここに開示されるPt担持マイクロチューブの製造方法について、好ましい一形態を示しながら、詳細に説明する。すなわち、ここで開示される製造方法は、セラミック粒子が中空管状に結合してなるセラミック製のマイクロチューブの表面に白金(Pt)粒子が担持されているPt担持マイクロチューブを製造する方法であって、以下の工程を含むようにしている。
【0038】
(1)セラミック源と白金(Pt)源と樹脂成分とを含む化合物とを含む紡糸原料液を調製する工程。
(2)紡糸原料液を紡糸して繊維状の前駆体を用意する工程。
(3)前駆体を、不活性気流中で、450℃以上900℃以下の温度範囲に設定される第一の焼成温度で焼成する第一焼成工程。
(4)第一焼成工程により焼成された焼成物を、酸化雰囲気中で、400℃以上かつ第一の焼成温度を超えない温度範囲に設定される第二の焼成温度で焼成する第二焼成工程。
【0039】
すなわち、かかる製造方法は、セラミック源と白金(Pt)源とを同時にかつ均一に含んだ紡糸原料液を調整し、これを成形および焼成することで、セラミック製の基材の表面に白金が担持されたPt担持マイクロチューブを得るものである。また、上記の通りの特徴的な二段階の焼成工程により、焼成体として前駆体とは異なる形状のPt担持マイクロチューブを、創り出すというものである。すなわち、繊維状の前駆体から、チューブ状の焼成体を得るようにしている。
【0040】
(1)紡糸原料液の調整工程
Pt担持マイクロチューブの原料となるセラミック源としては、酸化焼成によってセラミックスを生成できるものであれば各種の材料であってよい。例えば、セラミックを構成する金属元素の各種の塩を好ましく用いることができる。かかる塩としては、一例として、塩化物、水酸化物、ホウ化物、臭化物、ヨウ化物、硫化物や、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、しゅう酸塩、過塩素酸塩などを用いることができる。より具体的には、例えば、セラミックスが酸化スズ(SnO
2)の場合を例にすると、セラミック源としては、例えば、塩化スズ(II)二水和物(SnCl
2・2H
2O)、塩化スズ五水和物(SnCl
2・5H
2O)、硝酸スズ20水和物(Sn(NO
3)
2・20H
2O)、2−エチルヘキサン酸スズ(II)(Co[OOCCH(C
2H
5)C
4H
9]
2)、二過塩素酸スズ(II)(Sn(ClO
4)
2)、酢酸スズ(II)(Sn(CH
3COO)
2)、酒石酸スズ(II)(Sn(C
4H
4O
6))のいずれか1種または2種以上を混合して用いることが例示される。セラミックスが複合酸化物である場合には、かかる複合セラミックスを構成するそれぞれの金属元素について上記のような塩を用意し、各元素の塩をセラミックス組成に応じて所定の割合で配合して用いればよい。
【0041】
Pt源としては、白金(Pt)の各種の塩または錯体を好ましく用いることができる。白金の塩としては、例えば、白金の塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物や、水酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、さらには、カリウム複合酸化物、アンモニウム複合酸化物、ナトリウム複合酸化物などの複合酸化物などを用いることができる。また、白金の錯体としては、白金のアンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体、ヒドロキシ錯体などを用いることができる。具体的には、一例として、例えば、塩化白金六水和物(H
2(PtCl
6)・6H
2O)、白金(IV)塩化物、白金(II)臭化物、白金(IV)ヨウ化物、白金(IV)硫化物、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム六水和物、白金(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナト錯体、白金(II)アセチルアセトナト錯体等が例示される。
【0042】
以上のセラミック源とPt源との割合は、セラミック製のマイクロチューブとこれに担持させるPt粒子との関係から所望の割合に調製することができる。かかる割合については特に制限はないが、例えば、セラミックと白金との質量比が、セラミック質量:白金質量として60:40〜99:1程度の割合となるように調製するのが好ましい。Pt担持マイクロチューブの全体(すなわち、セラミックと白金との合計)に占める白金(Pt)の割合が1質量%未満であると、触媒能の高い触媒体が得られないために好ましくない。例えば、Ptは5質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であるのが好ましい。なお、このPtはナノ粒子として担持されるため、40質量%を超えて多すぎるPtはマイクロチューブの表面でのPt粒子同士の接合等を招く恐れがあるために好ましくない。かかる観点からは、Ptは、25質量%以下であるのが好ましく、さらには20質量%以下であるのがより好ましい。
【0043】
そして紡糸原料液には、上記のPt担持マイクロチューブの原料の他に、前駆体の成形性を高め、成形後の前駆体の形状を維持する目的で、樹脂成分が含まれる。かかる樹脂成分としては特に制限はないが、前駆体の成形時において適切な粘性を備え、成形後には適切な硬度等の形状維持性を備え得る樹脂であることが好ましい。例えば、前駆体の成形手法にも因るが、熱可塑性樹脂や、紫外線硬化性樹脂等を好ましく用いることができる。かかる樹脂成分としては、具体的には、一例として、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセテート(PVAc)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルアミド(PAM)等を好ましく用いることができる。かかる樹脂成分は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0044】
かかる樹脂成分は、上記のセラミック源との質量比で、樹脂成分:セラミック源が1:3〜1:0.1程度の割合で紡糸原料液中に配合することができる。より具体的には、樹脂成分は、1:2〜1:1、例えば、1:0.5〜1:0.25程度の割合で配合することができる。かかる樹脂成分は、前駆体を繊維状に成型する際の成形性を高める役割を有する。そして、本質的には、この樹脂成分は後工程の焼成により焼失される。しかしながら、詳細は定かではないものの、本発明において樹脂成分はPt担持マイクロチューブを形作る上で重要な役割を担うと考えられる。すなわち、後工程の焼成工程において、繊維状の前駆体からマイクロチューブを編成する際の鋳型としての役割を有するものと考えられる。
紡糸原料液には、上述の材料の他に、必要に応じて分散剤、増粘剤等に代表される各種の添加剤を加えるようにしても良い。
【0045】
また、上記の紡糸原料液は、上述した原料を溶媒に溶かした溶液であってもよいし、各原料を分散媒に分散させた分散液であってもよい。またこの紡糸原料液は、セラミック源と白金源を均一な分散状態に保つとともに、後述する繊維状の前駆体への成形を容易にするために、粘度が調整されていたり、ゲル状またはゾル状の状態に調製されていてもよい。もちろん、成形の工程に応じて原料液の状態が変化されてもよい。かかる紡糸原料液を構成する溶媒(以下、分散媒をも含む。)は、水系溶媒でもよいし、有機系溶媒でもよい。水系溶媒で紡糸原料液を構成する場合、溶媒には水(純水、イオン交換水、精製水等)や水を含んだ混合液(例えば、水とエタノールの混合溶液)を用いることができる。また、有機系溶媒(有機系分散媒)の場合には、メタノールやエタノールなどのアルコール類や;アセトン、メチルケトンのようなケトン類や;酢酸エチルのようなエステル類や、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒を、単独で、あるいは、2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
紡糸原料液における固形分濃度(すなわち、セラミック源、白金源および樹脂成分の割合)は、繊維状に成形する成形手法によっても異なるものの、例えば、10質量%以上30質量%以下程度を目安に調製することができる。より具体的には、10質量%以上20質量%以下、例えば、10質量%以上15質量%以下とすることが例示される。
紡糸原料液を調製する際には、各原料同士が液中に均一に分散するように十分に撹拌するとよい。例えば、室温(典型的には25℃)程度において、回転式撹拌装置を用いるなどして、例えば、100rpm〜500rpm程度の速度で、より好ましくは200rpm〜300rpm程度で数十分間〜数時間程度、例えば、30分間〜1時間程度の撹拌を行うことが例示される。
【0047】
(2)前駆体の用意工程
次いで、上記で用意した紡糸原料液を繊維状に成形することで、Pt担持マイクロチューブの前駆体を用意する。かかる成形手法としては特に制限されず、各種の紡糸方法を利用することができる。マイクロレベルの繊維径の繊維状に紡糸できる手法として、例えば、一例として、セルフアッセンブリー法、フェイズ・セパレーション法、エレクトロスピニング法等を例示することができる。中でもエレクトロスピニング法は、ナノレベルからサブミクロンレベルの直径の繊維を比較的簡単な装置を使って比較的簡単な操作で得ることができるため、ここに開示される前駆体の成形に用いるのに好ましい。
【0048】
図3に、エレクトロスピニング装置の概略を例示した。エレクトロスピニング装置20は、一般的には、紡糸原料液2を収容する容器4、この容器4から紡糸原料液2を吐出するノズル6、紡糸原料液2をノズル6に送り出すポンプ12、紡糸原料液2を帯電させる高圧電源8および接地された集電板14とから構成される。
かかる装置20において、紡糸原料液2は、容器4からノズル6まで一定の速度で押し出され、ノズル6において電圧が印加されてプラスに帯電される。このプラスに帯電された紡糸原料液2の電気引力が表面張力を越えた時に、紡糸原料液2がジェット状に集電板14に向けて噴射される。噴出された紡糸原料液2中の溶媒は飛行中に徐々に揮発するため、集電板14に到達する際には、直径がナノレベルからマイクロレベルにまで減少した繊維状となる。これにより、直径がナノレベルからマイクロレベルの繊維状の前駆体10を形成することができる。
【0049】
なお、エレクトロスピニングは、湿度が高いと溶媒の揮発が妨げられて繊維状の前駆体を得るのが困難となるため、湿度が管理された環境や、湿度管理が可能なチャンバー(図示せず)内等で実施するのも好ましい態様である。この場合、例えば、具体的には、環境温度30℃程度(例えば、30℃±5℃)、相対湿度30%程度(例えば、30%±10%)の条件をおおよその目安とすることが例示される。
また、紡糸原料液2に印加する電圧は、紡糸原料液2の調製状態やノズル6−集電板14間の距離等の条件により最適な値が異なるために一概には言えないが、例えば、紡糸原料液2の押出速度(流量)を10〜40μL/minとし、ノズル6と集電板14との間の距離を20〜30cmとする場合には、印加電圧を10〜30kV程度の範囲で調整することが例示される。なお、ここに例示した条件は一実施形態に過ぎず、ここに開示される発明を限定するものではない。
【0050】
ここで開示される製造方法では、上記で得られた前駆体に対し、2段階の焼成工程を施すことで、繊維状の前駆体から、Pt担持マイクロチューブを得るようにしている。かかる2段階の焼成工程について、以下に説明する。
(3)第一焼成工程
第一焼成工程においては、まず、上記で得られた前駆体を、不活性気流中で、450℃以上900℃以下の温度範囲に設定される第一の焼成温度で焼成する。
不活性気流としては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)等の希ガスや窒素(N
2)ガス、さらには、酸素(O
2)濃度が低減(例えば、8質量%以下)された気体、およびこれらを混合した気体等を焼成炉等に適切な流量で導入すればよい。かかる不活性ガスの流量は、反応系にもよるものの、例えば、5L/min〜40L/min程度、好ましくは10L/min〜30L/min程度、例えば20L/min〜30L/min程度とすることが例示される。
【0051】
第一焼成工程における焼成温度(第一の焼成温度)は、上記のとおり450℃以上900℃以下であり、好ましくは500℃以上900℃以下、より好ましくは600℃以上800℃以下程度である。第一の焼成温度が450℃未満の場合や、900℃を超える場合には、最終的に中空のマイクロチューブが得られないために好ましくない。
また、かかる焼成温度への昇温速度は、5℃/min以上20℃/min以下とするのが好ましい。昇温速度が5℃/min未満の場合も最終的に中空のマイクロチューブが得られないために好ましくない。昇温速度は、好ましくは5℃/min以上15℃/min以下、例えば、10℃/min以上15℃/min以下である。昇温速度は20℃/min以下程度で十分であり、20℃/minを超える急激な昇温は設備およびコストの面で好ましくない。
前駆体は、かかる第一の焼成条件で0.5時間〜4時間程度(例えば1時間〜3時間)保持した後、次の第二焼成工程に供される。
【0052】
(4)第二焼成工程
第二焼成工程においては、上記の第一焼成工程により焼成された焼成物を、酸化雰囲気中で、400℃以上で上記第一の焼成温度を超えない温度範囲に設定される第二の焼成温度で焼成する。
焼成雰囲気は、大気雰囲気等の酸素含有雰囲気とすることができる。かかる酸化雰囲気での焼成により、セラミック源が焼成されて、セラミック粒子が中空管状に結合してなるセラミック製のマイクロチューブが形成される。また、Pt源が焼成されて、マイクロチューブの表面にPt粒子が形成される。
【0053】
第二焼成工程における焼成温度(第二の焼成温度)は、上記のとおり400℃以上で上記第一の焼成温度を超えない温度範囲とする。ここで、第二の焼成温度への調整は、第一焼成工程後に炉内の温度を例えば100℃以下にまで冷却してから第二の焼成温度にまで昇温してもよいし、焼成雰囲気を不活性気流から酸化雰囲気に切り替えることで第一の焼成温度から第二の焼成温度にまで温度を下げるようにしても良い。このような第二の焼成温度は、例えば、一例として、400℃以上800℃以下とすることができ、好ましくは400℃以上700℃以下程度、さらには500℃以上600℃以下程度とするのがより好ましい。第二の焼成温度が500℃未満の場合には、セラミック源が十分に酸化されずセラミック粒子が得られない可能性が生じるために好ましくない。第一の焼成温度が800℃を超えると、多孔質形状が得られないために好ましくない。
【0054】
なお、第二焼成工程では、炉内の温度を100℃以下にまで冷却してから第二の焼成温度まで昇温するのが好ましい。この場合、昇温速度は5℃/min以上20℃/min以下の範囲で調整するのが好ましい。かかる昇温速度を調整することで、マイクロチューブに担持されるPt粒子の粒径を制御することが可能となる。昇温速度を速めることで、ナノチューブ表面でのPt粒子の核生成を促し、核成長を抑えることができ、微細なPt粒子を形成することができる。具体的には、例えば、昇温速度を5℃/min以上とすることで、平均粒径が20nm以下程度のPt粒子を形成することができる。また、昇温速度を、10℃/min以上とすることで2〜3nm程度のPt粒子を形成することができる。第二の焼成条件で1時間程度保持した後、例えば炉内で冷却することで、ここに開示されるPt担持マイクロチューブを得ることができる。
【0055】
以上の二段階の焼成において、第一焼成工程における焼成を大気雰囲気あるいは大気気流下で行うと、マイクロチューブを得ることはできない。また、単に不活性雰囲気とするだけではマイクロチューブが得られないことが確認されている。ここに開示される製造方法において、第一焼成工程を不活性気流中で実施するのは欠かせない要件である。
以上のことから、第一焼成工程において、繊維状の(中実の)前駆体がチューブ状に変性される準備がなされているものと考えられる。例えば、本発明者らは、この第一焼成工程において、繊維状の前駆体が、樹脂成分を芯部とし、セラミック源およびPt源を鞘部とした芯鞘構造に変成されると考えている。そして第二焼成工程において、かかる芯鞘構造の芯部が消失され、鞘部が酸化焼成されて、セラミック製のマイクロチューブが得られるものと考えている。Pt粒子については、いずれの段階でPt成分がマイクロチューブ(セラミック粒子)の表面に移動するのかは明確ではないものの、第二焼成工程においてPt粒子が形成されるものと考えられる。
【0056】
このようにして得られるPt担持マイクロチューブは、セラミック粒子が焼結してマイクロチューブを形成しているため、セラミック粒子同士は非常に強固に結合している。また、Pt粒子はセラミック粒子の表面で焼成されており、Pt粒子はセラミック粒子の表面に焼結により強固に結合している。したがって、かかるPt粒子は強固な結びつきによって基体であるマイクロチューブに担持されることになる。
また、前駆体においてセラミック源とPt源とは均質に分散されているため、Pt粒子は基体であるマイクロチューブの表面において偏析することなく高分散されている。
したがって、例えば、ここに開示されるPt担持マイクロチューブは、メソポーラス基体に予め用意したPt粒子を担持させて得られるPt触媒担持体等と比べて、Pt粒子がより均一に分散した状態で、かつ、より強固に基体に担持されたものであり得る。
【0057】
このようにして得られるPt担持マイクロチューブは、触媒活性に優れている。そのため、例えば、高分子電解質型燃料電池(PEMFC)における触媒体として好適に用いることができる。また、基体であるマイクロチューブの多孔性を利用して、触媒作用に選択性が備えられることから、例えば、PEMFCのアノード触媒として好適に用いることができる。
【0058】
一般的なPEMFC(燃料電池)について、
図1および
図2を用いて簡単に説明する。
図1は燃料電池100の一実施形態を示す分解斜視図であり、
図2はこの燃料電池100の基本構造である膜−電極接合体(MEA)110を模式的に示した断面図である。
図1に示す燃料電池100では、2個の単位セル130が直列接続されて1対のホルダ140,140に挟まれた構成(スタック)を概念的に示している。単位セル130は、膜−電極接合体110と、膜−電極接合体110の厚さ方向の両側に配されたバイポーラプレート120,120とによって構成されている。バイポーラプレート120,120は、反応ガスの供給流路が彫り込まれた導電性材料(典型的には、良導電性金属またはカーボン等)によって構成されており、膜−電極接合体110にそれぞれ接合することによって、集電体として機能すると共に、膜−電極接合体110の触媒層に対して酸素及び燃料を供給することができる。
【0059】
膜−電極接合体110は、シート状の固体高分子膜(電解質膜)200と、この固体高分子膜200の一方の面(
図2における左側の面)に塗布された燃料極(負極)210と、固体高分子膜200の他方の面(
図2における右側の面)に塗布された酸化極(正極)220とを有している。燃料極210および酸化極220は、触媒層としての機能も有し、触媒及びバインダが含まれてそれぞれ構成されている。また、燃料極210の外側の面には第一燃料流通層212および第二燃料流通層214が順に積層されており、酸化極220の外側の面には第一空気流通層222および第二空気流通層224が順に積層されている。ここに開示されるPt担持マイクロチューブは、電気化学的な表面積の広い触媒体であり得ることから、かかる触媒層(燃料極210および酸化極220)を構成する材料として好適に用いることができる。例えば、燃料極210に含まれる触媒体として特に好適に用いることができる。かかるPt担持マイクロチューブを触媒体に用いることによって、良好な触媒活性を維持しつつ、燃料電池100の製造コストを低減させることができる。
【0060】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明した。続いて、本発明に関する実施例を説明する。なお、以下で説明する実施例は本発明を限定することを意図したものではない。
[Pt担持マイクロチューブの作製]
[紡糸原料液の調製]
白金源として、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(H
2PtCl
6・6H
2O)を用いた。セラミック源として、四塩化スズ(SnCl
4)を用いた。樹脂成分として、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N-dimethylformamide)を用いた。溶媒としては、重量平均分子量が150,000のポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)を用いた。
【0061】
(P1):塩化白金酸六水和物を用い、Ptを10質量%含む塩化白金塩水溶液を調製することで、白金原料溶液とした。
(P2):この白金原料溶液1質量部に対し、DMFを9質量部の割合で混合し、80℃で2時間攪拌した。
【0062】
(S1):DMF9質量部に対し、PANを1質量部の割合で混合し、80℃で1時間攪拌することで溶解させた。
(S2):DMF2質量部に対し、四塩化スズを1質量部の割合で混合し、80℃で30分間攪拌した。
(S3):上記の(S1)で用意した溶液10質量部に対し、上記の(S2)で用意した混合物を3質量部の割合で混合し、1時間攪拌した。
【0063】
(紡糸原料液):上記の(P2)で用意した溶液15質量部に対し、上記の(S3)で用意した溶液を85質量部の割合で混合し、1時間攪拌することで、エレクトロスピニング用の紡糸原料液を調整した。
【0064】
[前駆体の作製]
図3に示した構成のエレクトロスピニング装置20を用いることにより、上記で調製した紡糸原料液2をターゲット基板(集電板14)上に紡糸し、前駆体10を作製した。紡糸用のノズル6としては、内径が0.4μmのシリンジを用いた。ターゲット基板14としては、アルミホイルを用いた。この装置20を用いた場合の紡糸条件は、以下の通りとした。かかる条件で紡糸された前駆体は、直径が300nm〜800nmで、長さが1μm以上の繊維状であった。
印加電圧(V): 14kV
噴出速度(Q): 10〜40μL/min
ノズル−ターゲット間距離(d): 23cm
相対湿度: 30%
【0065】
[焼成]
上記で得られた前駆体に対し、焼成雰囲気を制御可能な電熱炉を用い、以下の表1に示した焼成条件での第一焼成工程と第二焼成工程とからなる2段階の焼成を施すことで、サンプル1〜4を得た。
【0067】
(サンプル1)すなわち、サンプル1の第一焼成工程の焼成条件は、流速20L/minの不活性気流中、昇温速度2℃/minで300℃まで昇温し、300℃で1時間保持するものとした。この実施形態において、第一焼成工程後のサンプル1は、加熱保持時間終了後に炉から出さずに所定の時間放置する炉冷状態とした。第二焼成工程の焼成条件は、大気雰囲気中、昇温速度6℃/minで600℃まで昇温し、600℃で1時間保持するものとした。
【0068】
(サンプル2)サンプル2の第一焼成工程の焼成条件は、サンプル1の第一焼成工程の焼成条件における昇温速度を10℃/minに変更し、他は同じとした。第二焼成工程の焼成条件は、サンプル1の第二焼成工程の焼成条件と同じとした。
【0069】
(サンプル3)サンプル3の第一焼成工程の焼成条件は、サンプル2の第一焼成工程の焼成条件における焼成温度を700℃に変更し、他は同じとした。第二焼成工程の焼成条件は、サンプル1の第二焼成工程の焼成条件と同じとした。
【0070】
(サンプル4)サンプル4の第一焼成工程の焼成条件は、サンプル3の第一焼成工程の焼成条件と同じとした。第二焼成工程の焼成条件は、サンプル1の第二焼成工程の焼成条件における昇温速度を15℃/minに変更し、他は同じとした。
【0071】
[焼成物の評価]
上述の製造プロセスを経て得られた焼成物(サンプル1〜4)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その観察結果を
図4〜
図7Cに示した。
図4はサンプル1のSEM像である。
図5Aはサンプル2のSEM像で、
図5Bはその要部拡大図である。
図6Aはサンプル3のSEM像であって、
図6Bは同一試料をより高倍率で透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した際のTEM像である。なお、サンプル4の電子顕微鏡での観察の結果は、サンプル3とほぼ同じであった。
また、サンプル1〜4の焼成物の表面のX線回折(XRD)分析を行った。
【0072】
(サンプル1)
サンプル1のSEM観察の結果、
図4に示したように、前駆体が焼成されて焼き固まった形態の、繊維状の焼成体が得たられたことが確認できた。この繊維の形状は、直径が平均で約700nmであった。焼成体をよく観察すると、直径が100nm〜200nm程度の比較的大きな粒子が繊維状に互いに密に結合して基体となったその表面に、直径が25nm〜35nm(平均粒径約30nm)の粒子が着しているのが確認できた。XRD分析の結果、基体を構成している大きな粒子がSnO
2であり、表面に結合している微小粒子がPtであることが確認された。
【0073】
(サンプル2)
サンプル2のSEM観察の結果、
図5Aに示したように、中空のチューブが破裂したかのような形状の焼成体が得たられたことが確認できた。焼成体をよく観察すると、この繊維状物は、直径が50nm〜150nm程度のやや大きな粒子が結合して、中空のチューブ状で、なおかつ、チューブ壁に比較的大きめの細孔を有する多孔性の基体を形成していることがわかった。また、
図5Bに示したように、この基体の表面には、直径が15nm〜20nm(平均粒径約17nm)程度の比較的微小な粒子が結合して担持されていることがわかった。
このチューブ全体のおおよその形状は、直径がおおよそ800nm程度で、長さが2μm程度であった。XRD分析の結果、基体を構成している大きな粒子がSnO
2であり、表面に結合している微小粒子がPtであることが確認された。
【0074】
(サンプル3)
サンプル3のSEM観察の結果、
図6Aに示したように、前駆体が焼成されて、多孔性の繊維状の焼成体が得たられたことが確認できた。焼成体をさらにTEMにより観察すると、
図6Bに示したように、この繊維状物は、直径が50nm〜100nm程度の粒子が結合して、中空のチューブ状で、なおかつ、チューブ壁に細孔を有する多孔性の基体を形成していることがわかった。また、この基体を構成する粒子の表面には、微小な粒子が結合して担持されていることがわかった。
このチューブのおおよその形状は、外径が500nm程度、内径が200nm程度で、長さが2μm程度であった。チューブ壁に形成された細孔の径は、およそ20nm〜30nmであった。また、この基体の表面に担持されている粒子は、直径が6nm〜8nm(平均粒径約7nm)程度であった。XRD分析の結果、基体を構成している部分はSnO
2であり、表面に結合している粒子がPtであることが確認された。
【0075】
(サンプル4)
サンプル4のSEM観察の結果、前駆体が焼成されて、多孔性の繊維状の焼成体が得たられたことが確認できた。焼成体をさらに観察すると、この繊維状物は直径が50nm〜100nm程度の粒子が結合して、中空のチューブ状で、なおかつ、チューブ壁に細孔を有する多孔性の基体を形成していることがわかった。なお、この基体の表面には、サンプル3に比べて微小な粒子が結合して担持されていることがわかった。
このチューブのおおよその形状は、直径がおおよそ500nm程度で、長さが2μm程度と、サンプル3とほぼ同様の形態であった。チューブ壁に形成された細孔の径は、およそ20nm〜30nmであった。なお、サンプル4の基体の表面に担持されている粒子は、直径が3nm〜4nm(平均粒径約3nm)程度とサンプル3のPt粒子よりも微小であった。XRD分析の結果、基体を構成している部分はSnO
2であり、表面に結合している粒子がPtであることが確認された。
【0076】
以上のことから、前駆体に対し、不活性気流中で所定の焼成温度範囲(第一の焼成温度)で焼成する第一焼成工程を施した後、酸化雰囲気中で、所定の温度範囲(第二の焼成温度)で焼成する第二焼成工程を施すことで、多孔性のセラミックからなるマイクロチューブを基体とし、その表面にPtナノ粒子が担持された、Pt担持マイクロチューブを製造できることがわかった。
サンプル1およびサンプル2の観察結果から、第一焼成工程における焼成温度が低すぎると、中空形状が好適に形成できない場合があることがわかる。また、第一焼成工程における不活性雰囲気に十分な流れがないと、セラミック基体が緻密に焼結し、多孔性の基体や中空形状の基体を構成できない場合があることがわかった。
サンプル3およびサンプル4の観察結果から、第二焼成工程における昇温速度を変化させることで、セラミック基体(セラミック製のマイクロチューブ)に担持されるPt粒子の粒径を制御できることがわかった。
【0077】
[電極の製造]
サンプル4で得られたPt担持マイクロチューブの触媒活性評価を行うために、サイクリックボルタンメトリー(CV)を以下の手順で測定した。
(1)サイクリックボルタンメトリー測定
サンプル4で得られたPt担持マイクロチューブを触媒体として用いて作用極を構成し、参照極には白金を、対極には可逆水素電極を用い、電解液には0.1M過塩素酸(HClO
4)溶液を使用して、三極式セルを作製した。なお、作用極は、測定対象である触媒体を純水に分散させた溶液をディスク電極上に3.76×10
−5g/cm
2となるように滴下し、乾燥させた後、パーフルオロカーボンから構成されるプロトン伝導性膜により固定することで作製した。また、この三極式セルには、測定前の30分間に電解液に窒素(N
2)ガスを吹き込み、セル内を窒素(N
2)で飽和させた。その後、25℃で、50mV/s、可逆水素電極に対する電位幅0V〜1.2Vの条件で電位を掃引し、応答電流を測定した。
【0078】
図8に、1000サイクル電位変動させた時の、10サイクル、100サイクル、500サイクルおよび900サイクル目のサイクリックボルタモグラムを示した。
図8に示したように、CVの低電圧側の領域には白金に特徴的な吸脱着ピークが観察されており、Pt担持マイクロチューブにおけるPtは電気化学的に活性であるといえる。また、このピークの面積から算出される、Pt担持マイクロチューブの電気化学的活性表面積は60m
2/gPtと非常に高い値であることが確認できた。
また、図には示していないが、10サイクルから1000サイクルの電位変動の間で、200サイクルまでは電位変動を繰り返すことでピーク強度が増加し、その後ピーク強度はほぼ一定に保たれることが確認できた。すなわち、Pt担持マイクロチューブは、触媒特性の脱離や劣化がほとんど見られず、サイクル特性および耐久性が高いことが示された。
【0079】
以上、具体的な実施例を挙げて本発明を説明したが、これらは例示にすぎず、本発明を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
例えば、上記の実施形態においては、紡糸原料液中のセラミック源と白金源とを均一に混合してマイクロチューブの表面にPt粒子が極めて均一に分散された(高分散された)Pt担持マイクロチューブを製造しているが、例えば、Pt担持マイクロチューブにおけるPt粒子の担持量を部分的に変化させる等の目的で、紡糸原料液中のセラミック源と白金源との割合(例えば、濃度)を不均一にする等しても良い。
また、上記の実施形態において、一つのノズルから紡糸原料液を紡糸し、繊維状の前駆体を形成しているが、例えば、複数のノズルから紡糸原料液を紡糸して、繊維が絡み合ったシート状の前駆体を形成する等しても良い。また、前駆体は、さらに任意の形状に成形した後焼成して、所望の形状を有するPt担持マイクロチューブを得るようにしても良い。