特許第5919147号(P5919147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919147
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】吸音材およびシール材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20160428BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20160428BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20160428BHJP
   C08K 5/33 20060101ALI20160428BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20160428BHJP
   C08L 71/03 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C08J9/04 103
   C08J9/04CES
   C08K5/05
   C08K5/14
   C08K5/33
   C08L23/16
   C08L71/03
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-195397(P2012-195397)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-51561(P2014-51561A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 崇行
(72)【発明者】
【氏名】平井 文太
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−179825(JP,A)
【文献】 特開2000−159953(JP,A)
【文献】 特開2010−144006(JP,A)
【文献】 特開2008−208256(JP,A)
【文献】 特開2003−147112(JP,A)
【文献】 特表2001−503092(JP,A)
【文献】 特開昭55−123630(JP,A)
【文献】 特開2012−017452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08K 5/05
C08K 5/14
C08K 5/33
C08L 23/16
C08L 71/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムおよびキノイド化合物を含有するゴム組成物を発泡させることにより得られ、
前記キノイド化合物が、p−キノンジオキシムの誘導体であり、
蛍光X線測定により算出される硫黄の含有割合が質量基準で1000ppm以下であり、
50%圧縮荷重値が、0.1N/cm以上、10N/cm以下であり、
下記により算出される50%圧縮永久歪みが、50%未満である
ことを特徴とする、吸音材。
50%圧縮永久歪み:前記吸音材を、50%圧縮して、80℃で22時間保存し、その後、23℃で2時間保存した後、前記吸音材の圧縮を解放し、解放後23℃で24時間経過時の前記吸音材の歪みを測定する。
【請求項2】
エチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有するゴム組成物を発泡させることにより得られ、
前記エチレン・プロピレン・ジエンゴムが、長鎖分岐を有し、
蛍光X線測定により算出される硫黄の含有割合が質量基準で1000ppm以下であり、
50%圧縮荷重値が、0.1N/cm以上、10N/cm以下であり、
下記により算出される50%圧縮永久歪みが、50%未満である
ことを特徴とする、吸音材。
50%圧縮永久歪み:前記吸音材を、50%圧縮して、80℃で22時間保存し、その後、23℃で2時間保存した後、前記吸音材の圧縮を解放し、解放後23℃で24時間経過時の前記吸音材の歪みを測定する。
【請求項3】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果に基づいて算出される硫黄S8の含有割合が、質量基準で100ppm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の吸音材。
【請求項4】
見掛け密度が、0.20g/cm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項5】
平均セル径が、200μm以上であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項6】
前記ゴム組成物が、さらに、キノイド化合物を含有し、
前記キノイド化合物が、p−キノンジオキシムの誘導体であることを特徴とする、請求項に記載の吸音材。
【請求項7】
前記ゴム組成物が、さらに、架橋助剤を含有し、
前記架橋助剤が、ポリオールを含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項8】
前記ポリオールが、ポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項に記載の吸音材。
【請求項9】
前記ゴム組成物が、さらに、有機過酸化物を含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸音材。
【請求項10】
前記エチレン・プロピレン・ジエンゴムが、長鎖分岐を有することを特徴とする、請求項1に記載の吸音材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸音材と、
前記吸音材の表面に設けられる粘着層と
を備えることを特徴とする、シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材およびシール材、詳しくは、吸音材およびそれを備えるシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業製品の吸音材として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、EPDMと省略することがある。)を発泡してなるEPDM発泡体が知られている。
【0003】
EPDM発泡体は、一般的には、EPDMを、発泡剤によって発泡させるとともに、硫黄によって架橋することにより、製造されている。しかし、EPDMを硫黄により架橋すると、吸音対象によっては、EPDM発泡体に残存する硫黄により、その吸音対象が腐食する場合がある。
【0004】
そこで、腐食性の低減を図るため、例えば、EPDM、キノイド系架橋剤および有機過酸化物系架橋剤と、さらに、チアゾール類、チオウレア類などの架橋助剤(加硫遅延剤)とを含有するゴム組成物を発泡させて得られるEPDM発泡体が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−208256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のEPDM発泡体によれば、その硫黄原子の含有割合を抑制し、腐食性を低減することができる。
【0007】
一方、例えば、EPDM発泡体を吸音材として、吸音対象により形成される隙間をシールする場合には、吸音対象への密着性、段差追従性などを十分に確保するため、柔軟性の向上が望まれている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載のEPDM発泡体では、架橋助剤に硫黄原子を含むことにより、厳しい使用条件によっては耐腐食性が十分ではなかった。また、特許文献1に記載のEPDM発泡体は、上記した柔軟性が不十分となる場合がある。
【0009】
さらには、EPDM発泡体には、より高い吸音性が望まれている。吸音特性は、空気の粘性損失と吸音材の構成成分の弾性損失とに大きく影響を受けると考えられる。従来の硫黄による架橋では、架橋強度が弱く、構成成分の弾性損失が低いこともあり、吸音性を満足するレベルではなかった。
【0010】
本発明の目的は、腐食性の低減を図ることができるとともに、柔軟性に優れ、さらに、高い吸音性を有する吸音材およびそれを備えるシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の吸音材は、エチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有するゴム組成物を発泡させることにより得られ、蛍光X線測定により算出される硫黄の含有割合が質量基準で1000ppm以下であり、50%圧縮荷重値が、0.1N/cm以上、10N/cm以下であり、下記により算出される50%圧縮永久歪みが、50%未満であることを特徴としている。
【0012】
50%圧縮永久歪み:前記吸音材を、50%圧縮して、80℃で22時間保存し、その後、23℃で2時間保存した後、前記吸音材の圧縮を解放し、解放後23℃で24時間経過時の前記吸音材の歪みを測定する。
【0013】
また、本発明の吸音材では、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果に基づいて算出される硫黄の含有割合が、質量基準で100ppm以下であることが好適である。
【0014】
また、本発明の吸音材では、見掛け密度が、0.20g/cm以下であることが好適である。
【0015】
また、本発明の平均セル径が、200μm以上であることが好適である。
【0016】
また、本発明の吸音材では、本発明の前記ゴム組成物が、さらに、キノイド化合物を含有し、前記キノイド化合物が、p−キノンジオキシムの誘導体であることが好適である。
【0017】
また、本発明の吸音材では、前記ゴム組成物が、さらに、架橋助剤を含有し、前記架橋助剤が、ポリオールを含有することが好適である。
【0018】
また、本発明の吸音材では、前記ポリオールが、ポリエチレングリコールであることが好適である。
【0019】
また、本発明の吸音材では、前記ゴム組成物が、さらに、有機過酸化物を含有することが好適である。
【0020】
また、本発明の吸音材では、前記エチレン・プロピレン・ジエンゴムが、長鎖分岐を有することが好適である。
【0021】
また、本発明のシール材は、上記した吸音材と、前記吸音材の表面に設けられる粘着層とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の吸音材は、エチレン・プロピレン・ジエンゴムを含有するゴム組成物を発泡させることにより得られ、蛍光X線測定により算出される硫黄原子の含有割合が質量基準で特定値以下であるので、腐食性が低減されており、また、50%圧縮荷重値が、特定範囲にあるので、柔軟性に優れる。
【0023】
さらに、圧縮永久歪みが、特定値以下であるため、吸音性が向上されている。
【0024】
そのため、このような吸音材を用いれば、吸音対象の腐食を抑制するとともに、密着性および段差追従性よく、吸音対象の隙間をシールすることができる。
【0025】
また、本発明のシール材によれば、上記した吸音材を備えるため、吸音対象の腐食を抑制するとともに、吸音対象に確実に密着させることができ、吸音対象の隙間を確実に充填して吸音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の吸音材の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、吸音性の評価方法を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の吸音材は、EPDMを含有するゴム組成物を発泡させることにより得られる。
【0028】
なお、吸音は、音源から音が伝搬される伝搬方向の途中に吸音材が配置されたときに、音を吸音材により吸収して、それによって、吸音材から伝搬方向上流側に反射(逆戻り)することを少なくとも有効に防止する作用(役割)である。吸音材および吸音性は、上記吸音することのできる部材および性質である。
【0029】
EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエン類の共重合によって得られるゴムであり、エチレンおよびプロピレンに加えて、さらにジエン類を共重合させることにより、不飽和結合を導入して、後述する架橋剤による架橋を可能としている。
【0030】
ジエン類としては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらジエン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0031】
EPDMにおけるジエン類の含有量(ジエン含有量)は、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下でもある。
【0032】
ジエン類の含有量が上記範囲内であれば、吸音材の表面収縮を防止することができる。また、ジエン類の含有量が上記上限以下であれば、吸音材に割れが生じることを防止することができる。
【0033】
また、EPDMとして、好ましくは、長鎖分岐を有するEPDMが挙げられる。
【0034】
EPDMに長い分岐鎖を導入する方法としては、特に制限されず、公知の方法が採用される。
【0035】
具体的には、EPDMは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒あるいはメタロセン触媒などの触媒によって製造され、好ましくは、長い分岐鎖を得る観点から、メタロセン触媒によって製造される。
【0036】
EPDMが長鎖分岐を有していれば、側鎖の絡み合いに起因して、伸長粘度が増大するため、ゴム組成物を良好に発泡させることができ、柔軟性を持たせることができる。
【0037】
また、ゴム組成物は、好ましくは、架橋剤、発泡剤を含有する。
【0038】
架橋剤としては、例えば、キノイド化合物、有機過酸化物などが挙げられる。
【0039】
キノイド化合物は、キノイド構造を有する有機化合物(キノイド系架橋剤)であって、例えば、p−キノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、および、それらの誘導体などが挙げられる。p−キノンジオキシムの誘導体として、具体的には、例えば、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムなどが挙げられる。
【0040】
これらキノイド化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0041】
キノイド化合物として、好ましくは、p−キノンジオキシムの誘導体、より好ましくは、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシムが挙げられる。
【0042】
キノイド化合物としてp−キノンジオキシムの誘導体が用いられる場合には、ゴム組成物がp−キノンジオキシムの誘導体によって架橋されるので、硫黄原子の含有割合を低減でき、腐食性の低減を図るとともに、優れた発泡性を確保することができる。
【0043】
キノイド化合物の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらにより好ましくは、5質量部以下でもある。とりわけ、p−キノンジオキシムの誘導体を用いる場合には、そのp−キノンジオキシムの誘導体の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下でもある。
【0044】
有機過酸化物は、パーオキサイド構造を有する有機化合物(有機過酸化物系架橋剤)である。
【0045】
具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジメチルジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、α,α´−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
【0046】
これら有機過酸化物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
有機過酸化物の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下、さらに好ましくは、5質量部以下、とりわけ好ましくは、2質量部以下でもある。
【0048】
架橋剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、架橋剤として、キノイド化合物と有機過酸化物とを併用する。
【0049】
キノイド化合物と有機過酸化物とを併用すれば、吸音材の表面での架橋を十分に確保することができ、表面にべたつきが生じることを低減することができる。
【0050】
キノイド化合物と有機過酸化物とを併用する場合において、それらの配合割合は、キノイド化合物100質量部に対して、有機過酸化物が、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、500質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下、さらに好ましくは、50質量部以下でもある。
【0051】
発泡剤としては、例えば、有機系発泡剤および無機系発泡剤が挙げられる。
【0052】
有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼンなどのアゾ系発泡剤、例えば、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)、N,N´−ジメチル−N,N´−ジニトロソテレフタルアミド、トリニトロソトリメチルトリアミンなどのN−ニトロソ系発泡剤、例えば、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3´−ジスルホニルヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、p,p−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル、ベンゼン−1,3−ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジド系発泡剤、例えば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系発泡剤、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン系発泡剤、例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系発泡剤、その他公知の有機系発泡剤が挙げられる。なお、有機系発泡剤として、加熱膨張性の物質がマイクロカプセル内に封入された熱膨張性微粒子などを挙げることもでき、そのような熱膨張性微粒子として、例えば、マイクロスフェア(商品名、松本油脂社製)などの市販品を挙げることができる。
【0053】
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸水素塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩、例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素塩、例えば、アジド類、その他公知の無機系発泡剤が挙げられる。好ましくは、アゾ系発泡剤が挙げられる。これら発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0054】
発泡剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下でもある。
【0055】
また、ゴム組成物は、より好ましくは、架橋助剤、発泡助剤を含有する。
【0056】
架橋助剤としては、例えば、分子中に硫黄原子を含有しない架橋助剤が挙げられ、具体的には、例えば、エタノールなどの1価アルコール、例えば、エチレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリンなどの3価アルコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオール(ポリオキシアルキレングリコール)などが挙げられる。なお、ポリオールの数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、300以上、より好ましくは、1000以上であり、また、例えば、100000以下、好ましくは、10000以下、より好ましくは、5000以下でもある。
【0057】
これら架橋助剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
架橋助剤として、好ましくは、ポリオール、より好ましくは、ポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。
【0059】
とりわけ、キノイド化合物としてp−キノンジオキシムの誘導体が用いられる場合などには、好ましくは、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0060】
ポリオールとしてポリエチレングリコールを用いれば、ゴム組成物を良好に架橋させることができ、優れた発泡性を確保することができる。
【0061】
架橋助剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.02質量部以上、さらに好ましくは、0.06質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下でもある。また、架橋助剤の配合割合は、架橋剤100質量部に対して、例えば、100質量部以下、好ましくは、40質量部以下であり、また、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上でもある。
【0062】
発泡助剤としては、例えば、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛など)などが挙げられる。好ましくは、尿素系発泡助剤、金属酸化物が挙げられる。
【0063】
これら発泡助剤は、単独使用または2種以上併用することもできる。好ましくは、尿素系発泡助剤および金属酸化物の併用が挙げられる。
【0064】
発泡助剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下でもある。また、尿素系発泡助剤および金属酸化物が併用される場合には、尿素系発泡助剤の配合割合は、金属酸化物100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、20質量部以上、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下でもある。
【0065】
また、ゴム組成物は、必要により、EPDM以外のポリマー、加工助剤、顔料、難燃剤、充填材、軟化剤、老化防止剤などを適宜含有することもできる。
【0066】
EPDM以外のポリマーとして、例えば、ゴム系ポリマーや非ゴム系ポリマーが挙げられる。ゴム系ポリマーとしては、例えば、非共役二重結合を有する環状または非環状のポリエンを成分とするゴム系共重合体(例えば、ブテン−1などのα−オレフィン−ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなど)、エチレン−プロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、ポリアミドゴム、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン−エチレン−ブタジエンゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンゴム、スチレン−イソプレン−プロピレン−スチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどが挙げられる。
【0067】
非ゴム系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルポリマー(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル、塩素化ポリエチレン、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0068】
EPDM以外のポリマーとして、好ましくは、非ゴム系ポリマー、さらに好ましくは、ポリエチレンが挙げられる。これらEPDM以外のポリマーは、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0069】
EPDM以外のポリマーの配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下であり、また、例えば、1質量部以上でもある。
【0070】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸やそのエステル類、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これら加工助剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。加工助剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下でもある。
【0071】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどが挙げられる。顔料の平均粒子径は、例えば、1μm以上、200μm以下である。顔料の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0072】
難燃剤としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。難燃剤の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、100μm以下である。これら難燃剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。難燃剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、15質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、150質量部以下、より好ましくは、50質量部以下でもある。
【0073】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アルミニウム粉などの無機系充填材、例えば、コルクなどの有機系充填材、その他公知の充填材が挙げられる。これら充填材は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。充填材の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下でもある。
【0074】
軟化剤としては、例えば、石油系オイル類(例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、乾性油類や動植物油類(例えば、アマニ油など)、アロマ系オイルなど)、アスファルト類、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP))、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)などが挙げられる。好ましくは、石油系オイル類、さらに好ましくは、パラフィン系オイルが挙げられる。これら軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。軟化剤の配合割合は、EPDM100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下でもある。
【0075】
老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾイダゾールなどのベンゾイダゾール化合物などが挙げられる。老化防止剤の配合割合は、例えば、EPDM100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下でもある。
【0076】
さらに、ゴム組成物は、その目的および用途によって、得られる吸音材の優れた効果に影響を与えない範囲において、例えば、可塑剤、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤、防カビ剤などの公知の添加剤を適宜の割合で含有することができる。
【0077】
一方、ゴム組成物は、好ましくは、硫黄原子Sを含有する加硫遅延剤(例えば、チアゾール類、チオウレア類など)を含有しない。
【0078】
ゴム組成物が加硫遅延剤を含有しなければ、吸音材の硫黄原子Sの含有割合を低減でき、腐食性の低減を図ることができる。
【0079】
次に、吸音材の製造方法について説明する。
【0080】
吸音材を製造するには、まず、上記した各成分を配合して、ニーダー、ミキサーまたはミキシングロールなどを用いて混練することにより、ゴム組成物を混和物として混練する(混練工程)。
【0081】
なお、混練工程では、適宜加熱しながら混練することもできる。また、混練工程では、例えば、架橋剤、架橋助剤、発泡剤および発泡助剤以外の成分を、まず混練して、一次混和物を調製してから、一次混和物に、架橋剤、架橋助剤、発泡剤および発泡助剤を添加して混練して、ゴム組成物(二次混和物)を得ることもできる。
【0082】
そして、得られたゴム組成物(混和物)を、押出成形機を用いてシート状などに押出成形し(成形工程)、押出成形されたゴム組成物を、加熱して発泡させる(発泡工程)。 ゴム組成物は、配合される架橋剤の架橋開始温度や、配合される発泡剤の発泡温度などによって、適宜選択され、例えば、熱風循環式オーブンなどを用いて、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、160℃以下で、例えば、1分間以上、好ましくは、5分間以上、また、例えば、60間分以下、好ましくは、40分間以下、予熱する。予熱後、例えば、450℃以下、好ましくは、350℃以下、より好ましくは、250℃以下、また、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上で、例えば、5分間以上、好ましくは、15分間以上、また、例えば、80分間以下、好ましくは、50分間以下、加熱される。
【0083】
このような吸音材の製造方法によれば、吸音対象の腐食を抑制するとともに、密着性および段差追従性よく吸音対象の隙間をシールできる吸音材を、簡易かつ確実に製造することができる。
【0084】
また、得られたゴム組成物を、押出成形機を用いて、加熱しながらシート状に押出成形(成形工程)して(つまり、ゴム組成物シートを作製して)、シート状のゴム組成物(ゴム組成物シート)を連続的に架橋発泡(発泡工程)させることもできる。
【0085】
この方法によれば、吸音材を生産効率よく製造することができる。
【0086】
これにより、ゴム組成物が発泡しながら架橋されて、EPDM発泡体からなる吸音材を得ることができる。
【0087】
このような吸音材の製造方法によれば、所望とする形状の吸音材を、生産効率よく、簡易かつ確実に製造することができる。
【0088】
得られた吸音材の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは、1mm以上であり、また、例えば、50mm以下、好ましくは、45mm以下でもある。
【0089】
吸音材は、例えば、連続気泡構造(連続気泡率100%)または半連続半独立気泡構造(連続気泡率が、例えば、0%を超過し、好ましくは、連続気泡率10%以上であり、また、例えば、100%未満、好ましくは、98%以下)である。好ましくは、半連続半独立気泡構造である。
【0090】
吸音材が、半連続半独立気泡構造であれば、柔軟性の向上を図ることができ、ひいては、吸音対象の隙間における吸音材の充填性の向上を図ることができる。
【0091】
また、吸音材の平均セル径は、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上、より好ましくは、200μm以上、さらに好ましくは、400μm以上、とりわけ好ましくは、500μm以上、最も好ましくは、600μm以上であり、また、例えば、1200μm以下、好ましくは、1000μm以下、より好ましくは、800μm以下でもある。平均セル径の算出方法は、後の実施例にて詳述する。
【0092】
吸音材の平均セル径が上記下限以上であれば、音波(波長が、例えば、50〜2000nm)がセル内に進入し易く、そのため、吸音性を向上させることができる。
【0093】
つまり、吸音材の平均セル径が微細すぎると音の波が入れず、空気の粘性損失が低くなり、吸音特性が低下するので、セル径(平均セル径)は一定以上大きい方が吸音特性は良好となる。
【0094】
一方、吸音材の平均セル径が上記上限以下であれば、吸音対象の隙間に対するシール性を向上させることができる。
【0095】
このようにして得られる吸音材の体積発泡倍率(発泡前後の密度比)は、例えば、2倍以上、好ましくは、5倍以上であり、また、例えば、30倍以下でもある。
【0096】
吸音材の見掛け密度(JIS K 6767(1999)に準ずる。)は、例えば、0.50g/cm以下、好ましくは、0.20g/cm以下、より好ましくは、0.10g/cm以下であり、また、例えば、0.01g/cm以上でもある。吸音材の見掛け密度が上記した範囲内であれば、粘性損失の大きい空気が多く含まれることにより、吸音性を向上させることができるとともに、吸音材を吸音対象の隙間に良好にシールすることができる。
【0097】
つまり、吸音特性は、空気の粘性損失と吸音材の構成成分の弾性損失とに大きく影響を受けると考えられる。空気を多く含んでいる方が空気の粘性損失が高くなるため、見掛け密度は小さい方が吸音性は良好となる。
【0098】
また、吸音材の50%圧縮荷重値(JIS K 6767(1999)に準ずる。)は、0.1N/cm以上、好ましくは、0.15N/cm以上であり、また、10N/cm以下、好ましくは、5.0N/cm以下、より好ましくは、2.5N/cm以下、さらに好ましくは、1.0N/cm以下、とりわけ好ましくは、0.3N/cm以下でもある。
【0099】
吸音材の50%圧縮荷重値が上記した下限以上であれば、吸音材の柔軟性を向上させることができ、そのため、吸音対象への密着性、および、段差追従性が良好となり、吸音性を向上させることができる。
【0100】
また、吸音材の下記により算出される50%圧縮永久歪みは、50%未満、好ましくは、40%以下、より好ましくは、30%以下、さらに好ましくは、25%以下、とりわけ好ましくは、20%以下であり、最も好ましくは、15%以下であり、また、例えば、0%以上である。
【0101】
圧縮永久歪み:吸音材を、50%圧縮して、80℃で22時間保存し、その後、23℃で2時間保存した後、吸音材の圧縮を解放し、解放後23℃で24時間経過時の吸音材の歪みを測定する。
【0102】
50%圧縮永久歪みが上記した範囲内であれば、十分な弾性率を有する架橋強度が得られることにより構成成分の弾性損失も大きくなるので、吸音性を向上させることができる。
【0103】
つまり、構成成分の弾性損失は、架橋強度が高いほど高くなる。架橋強度が高いということは、50%圧縮永久歪に優れるので、50%圧縮永久歪が小さいほど吸音性は良好となる。
【0104】
また、吸音材の抗張力(JIS K 6767(1999)に準じた引張り試験における最大荷重)は、例えば、1.0N/cm以上、好ましくは、2.0N/cm以上であり、また、例えば、50N/cm以下、好ましくは、30.0N/cm以下、より好ましくは、10N/cm以下、さらに好ましくは、8N/cm以下、とりわけ好ましくは、6N/cm以下である。吸音材の抗張力が上記範囲内であれば、吸音材の強度を良好とすることができる。
【0105】
また、吸音材の伸び率(JIS K 6767(1999)に準ずる。)は、例えば、10%以上、好ましくは、150%以上であり、また、例えば、1500%以下、好ましくは、1000%以下でもある。吸音材の伸び率が上記範囲内であれば、吸音材の強度を良好とすることができる。
【0106】
また、吸音材の硫黄原子Sの含有割合は、質量基準で、1000ppm以下、好ましくは、800ppm以下、より好ましくは、500ppm以下である。
【0107】
なお、吸音材の硫黄原子Sの含有割合は、蛍光X線測定により算出される。蛍光X線測定における詳細な条件は、後の実施例において詳述する。
【0108】
吸音材の硫黄原子Sの含有割合が上記上限以下であれば、腐食性を低減することができる。
【0109】
また、吸音材において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果に基づいて算出される硫黄Sの含有割合は、例えば、100ppm以下、好ましくは、50ppm以下、より好ましくは、25ppm以下である。
【0110】
硫黄Sの算出方法は、後の実施例で詳述する。
【0111】
吸音材の硫黄Sの含有割合が上記上限以下であれば、腐食性を低減することができる。
【0112】
そして、この吸音材は、吸音対象となる吸音対象の隙間を充填して用いられる。
【0113】
また、吸音材は、吸音の役割と、制振、遮音、防塵、断熱、緩衝、水密などの吸音以外の役割とを兼用することができ、つまり、例えば、吸音性を有する防振材、遮音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材などとして用いることもできる。
【0114】
そして、この吸音材では、蛍光X線測定により算出される硫黄原子Sの含有割合が特定値以下であるため、腐食性が低減されており、また、50%圧縮荷重値が特定範囲にあるため、柔軟性にも優れる。
【0115】
さらに、圧縮永久歪みが、特定値以下であるため、吸音性が向上されている。
【0116】
具体的には、後の実施例にて評価する「音響管による吸音率の測定 第1部:定在波比法(JIS A 1405−1:1996)」に準拠して測定される垂直入射吸音率のピーク値(%)が、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下でもある。垂直入射吸音率のピーク値の測定方法は、後の実施例にて詳述する。
【0117】
そのため、このような吸音材を用いれば、吸音対象の腐食を抑制するとともに、密着性および段差追従性よく、吸音対象の隙間をシールすることができ、シール材として好適に用いることができる。
【0118】
吸音材をシール材に用いるには、例えば、吸音材の表面に、吸音材を貼付するための粘着層が設けられたシール材を準備する。つまり、吸音材および粘着層を備えるシール材を準備する。
【0119】
図1は、本発明の遮音材の一実施形態を示す概略構成図である。
【0120】
つまり、図1において、このシール材1は、吸音材2と、吸音材2の表面に設けられる粘着層3とを備えている。
【0121】
粘着層3は、例えば、公知の粘着剤から形成される。
【0122】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤としては、その他、ホットメルト型粘着剤なども挙げられる。
【0123】
これら粘着剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0124】
粘着剤として、好ましくは、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられる。
【0125】
アクリル系粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル系アルキルエステルを主成分とする粘着剤であって、公知の方法により得ることができる。
【0126】
ゴム系粘着剤は、例えば、天然ゴムおよび/または合成ゴム、詳しくは、例えば、ポリイソブチレンゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどのゴムから、公知の方法により得ることができる。
【0127】
また、粘着剤の形態は、特に制限されず、例えば、エマルジョン系粘着剤、溶剤系粘着剤、オリゴマー系粘着剤、固形粘着剤など、種々の形態を採用することができる。
【0128】
粘着層3の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、10000μm以下、好ましくは、5000μm以下である。
【0129】
そして、このようなシール材1によれば、吸音対象の腐食を抑制するとともに、密着性および段差追従性よく吸音対象の隙間をシールできる吸音材2を備えるため、吸音対象の腐食を抑制するとともに、吸音材2を吸音対象に確実に密着させることができ、吸音対象の隙間を確実に充填して吸音することができる。
【0130】
シール材1が設けられる吸音対象としては、例えば、スピーカーなどが挙げられる。
【実施例】
【0131】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
【0132】
実施例1〜8および比較例1〜4
(1) 吸音材の製造
表1に示す配合処方に記載の配合量において、ポリマー、加工助剤、顔料、難燃剤、充填材、軟化剤および老化防止剤を配合し、3L加圧ニーダーにて混練し、一次混和物を調製した。
【0133】
別途、架橋剤、架橋助剤、発泡剤および発泡助剤(比較例1、2および4の場合には、さらに、加硫遅延剤)を配合し、それらを一次混和物に配合して、10インチミキシングロールにて混練し、ゴム組成物(二次混和物)を調製した(混練工程)。
【0134】
次いで、ゴム組成物を、一軸押出成形機(45mmφ)を用いて、厚み約8mmのシート状に押し出し、ゴム組成物シートを作製した(成形工程)。
【0135】
続いて、ゴム組成物シートを、熱風循環式オーブンにて、140℃で20分間予熱した。その後、熱風循環式オーブンを10分かけて170℃まで昇温し、ゴム組成物シートを、170℃で10分間加熱して発泡させ(発泡工程)、EPDM発泡体からなる吸音材を製造した。
【0136】
なお、比較例2は、発泡が不良であったため、吸音材を得ることができなかった。
【0137】
【表1】
【0138】
表1中の数値は、各成分における配合部数を示す。
【0139】
なお、表1に示す略号などの詳細を下記する。
EPDM(A):EPT8030M、長鎖分岐含有、ジエン(5−エチリデン−2−ノルボルネン)含量9.5質量%、触媒:メタロセン触媒、三井化学社製
EPDM(B):EPT1045、ジエン(ジシクロペンタジエン)含量5.0質量%、触媒:チーグラー・ナッタ触媒、三井化学社製
EPDM(C):EPT4045、ジエン(5−エチリデン−2−ノルボルネン)含量8.1質量%、触媒:チーグラー・ナッタ触媒、三井化学社製
EPDM+PE:エプタロイPX−047、ジエン(5−エチリデン−2−ノルボルネン)含量4.5質量%、ポリエチレンブレンドタイプ、ポリエチレン含量20PHR、触媒:チーグラー・ナッタ触媒、三井化学社製
LDPE:低密度ポリエチレン
ステアリン酸:粉末ステアリン酸さくら、日油社製
カーボンブラック:旭#50、平均粒子径80μm、旭カーボン社製
水酸化アルミニウム(A):ハイジライトH−32、平均粒子径5〜10μm、昭和電工社製
水酸化アルミニウム(B):ハイジライトH−42、平均粒子径1〜2μm、昭和電工社製
水酸化マグネシウム:キスマ5A、平均粒子径1μm、協和化学工業社製
炭酸カルシウム:N重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製
パラフィン系オイル:ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産社製
2−メルカプトベンゾイミダゾール:ノクラックMB、大内新興化学社製
p−キノンジオキシム:バルノックGM、大内新興化学工業社製
p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム:バルノックDGM、大内新興化学工業社製
α,α´−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン:パーブチルP−40MB、日油社製
ジクミルパーオキサイド:パークミルD、日油社製
硫黄S:アルファグランS−50EN、東知社製
ポリエチレングリコール:PEG4000S、数平均分子量3400
ADCA:AC#LQ、アゾジカルボンアミド、永和化成工業社製
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種、三井金属鉱業社製
尿素系:セルペーストK5、永和化成工業社製
2−メルカプトベンゾチアゾール:ノクセラーM、大内新興化学社製
N,N´−ジブチルチオウレア:ノクセラーBUR、大内新興化学社製
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛:ノクセラーPZ、大内新興化学社製
ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛:ノクセラーEZ、大内新興化学社製
(2)物性測定
実施例1〜8、比較例1、3および4の吸音材の各物性を、下記に示す方法で測定した。それらの結果を表2に示す。
【0140】
<見掛け密度>
吸音材の見掛け密度をJIS K 6767(1999)に準じて測定した。具体的には、遮音材のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、質量を測定して、単位体積あたりの質量(見掛け密度)を算出した。
【0141】
<50%圧縮荷重値>
吸音材の50%圧縮荷重値をJIS K 6767(1999)に準じて測定した。具体的には、遮音材のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、圧縮試験機を用いて、圧縮速度10mm/分で50%圧縮してから10秒後の50%圧縮荷重値を測定した。
【0142】
<50%圧縮永久歪み>
吸音材のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、50%圧縮永久歪みをJIS K 6767(1999)に準じて測定した。
【0143】
具体的には、吸音材を2枚のアルミニウム板の間に、アルミニウム製のスペーサを介して50%圧縮して固定し、80℃にて22時間保存した後、試験片を2枚のアルミニウム板から取り出して、圧縮を、23℃で2時間解放した。解放後23℃で24時間放置させた。そして、下記式により、50%圧縮永久歪を求めた。
【0144】
圧縮永久歪(%)=[(初期厚さ−放置後の厚さ)/初期厚さ]×100
<抗張力および伸び率>
吸音材の抗張力および伸び率をJIS K 6767(1999)に準じて測定した。具体的には、吸音材のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、ダンベル1号を用いて、試験片を打ち抜き、測定用サンプルとした。引張り試験機にて、引張り速度500mm/minの速さで測定用サンプルを引張り、測定用サンプルがダンベル形状平行部で切断したときの荷重(抗張力)および伸び率(破断伸び)を測定した。
【0145】
<銀腐食性>
吸音材0.5gを100mL密閉瓶に入れ、密閉瓶の蓋の内側に、研磨および洗浄した銀板を貼り付けた。これを、85℃の恒温槽に7日間投入し、銀板の腐食の有無を確認した。腐食が確認されなかったものを「なし」、腐食が確認されたものを「あり」と評価した。
【0146】
<硫黄原子Sの含有割合(蛍光X線測定)>
吸音材を適当な大きさに切断し、4枚重ねにして蛍光X線測定(XRF)(測定径:30mmφ)を実施した。XRFの装置および条件を下記する。
【0147】
XRF装置:Rigaku製 ZXS100e
X線源:縦型Rh管
分析面積:30mmφ
分析元素範囲:B〜U
また、定量は、全検出原子の割合にて実施した。
【0148】
<硫黄Sの含有割合(GPC測定)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果に基づいて、硫黄Sの含有割合を算出した。手順、条件および装置などを下記する。
(手順1)
吸音材を細かく裁断して、最大長さの平均値が5mmの試料を作製した。次いで、 吸音材300mgを秤量して、次いで、ホールピペットを用いてTHF(テトラヒドロフラン)10mlを加えて一晩静置した。
【0149】
THF溶液を0.45μmメンブレンフィルターで濾過し、濾液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定した。
【0150】
(手順2)
別途、硫黄SをTHFに溶解して、濃度1000μg/mlに調整して、THF溶液を一晩静置した。その後、THF溶液を0.45μmメンブレンフィルターで濾過した。
【0151】
濾液を所定濃度に希釈して標準溶液を作製し、この標準溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定して、得られたピーク面積値から検量線を作成した。
【0152】
(手順3)
手順2により作成した検量線に基づく検量線法によって、手順1における試料中の硫黄Sの質量を求めて、これを試料の質量(300mg)で割ることによって、試料における硫黄Sの含有割合を算出した。
<測定装置および測定条件>
GPC装置:TOSOH HLC−8120GPC
カラム:TSKgel Super HZ2000/HZ2000/HZ1000/HZ1000
カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
溶離液:THF
流量:0.6ml/min
検出器:UV(280nm)
カラム温度:40℃
注入量:20μl
検出限界:10ppm
<平均セル径>
デジタルマイクロスコープ(VH−8000、キーエンス社製)により、吸音材における発泡体気泡部の拡大画像を取り込み、画像解析ソフト(Win ROOF、三谷商事社製)を用いて画像解析することにより、吸音材の平均セル径(μm)を求めた。
【0153】
<吸音性(垂直入射吸音率のピーク値)>
図2は、吸音性の評価方法を説明する概略断面図である。
【0154】
吸音材の垂直入射吸音率のピーク値(%)を、「音響管による吸音率の測定 第1部:定在波比法(JIS A 1405−1:1996)」に準拠して、図2に示す4206−T型音響管(Bruel&Kjaer製)10および測定用ソフト(PULSE Material Testing Type7758、Bruel&Kjaer製)を用いて測定した。
【0155】
つまり、T型音響管10は、音響管11と、音響管11の一(左)端部に設けられる音源部(スピーカ)12と、音響管11の他(右)側に設けられるマイク13とを備える。
【0156】
音響管11は、左右方向に延びる直管をなし、左側に配置される大径管15と、大径管15の右側に接続される小径管16とを一体的に備えている。小径管16は、直管状をなし、大径管15の軸線に共通する軸線を有し、内径が大径管15のそれより小さく形成されている。また、小径管16の右端部は、閉塞されている。
【0157】
マイク13は、小径管16の左右方向中央に配置されており、図示しない測定用ソフトに接続されている。
【0158】
そして、直径29mm×厚み10mmの円板形状にカットした吸音材2を、マイク13の右側近傍において、小径管16内を閉塞するように、かつ、吸音材2の厚み方向が左右方向に沿うように配置した。
【0159】
そして、音源部12から音波を、周波数500〜6000Hz範囲で走査さながら出して、マイク13および測定用ソフトによって、垂直入射吸音率(%)を測定した。
【0160】
そして、最大(ピーク)を示す周波数における垂直入射吸音率(%)を、「垂直入射吸音率のピーク値」(%)として得た。
【0161】
【表2】
【符号の説明】
【0162】
1 シール材
2 吸音材
3 粘着層
図1
図2