(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車両制御手段は、前記状態判定手段により前記ドライバが異常であると判定された場合に、前記情報取得手段により前記第二先行車の情報のみが取得されたときは、前記第二先行車が走行する前記隣接車線に前記自車両よりも後方を走行する隣接後続車の有無を判定し、前記隣接後続車がいないときに前記第二先行車に対して自動的に前記追従制御を実施する
ことを特徴とする、請求項2記載の運転支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1のシステムでは、ドライバが昏睡状態であると判定されると、自車両を自動的に路肩に退避させているが、退避先である路肩が常に安全な場所であるとは限らない。例えば、路肩に他車両が停止していたり歩行者が存在していたりした場合は、安全とは言い難い。また、路肩が存在しない道路の場合は退避先がすぐに見つからないこともある。また、ドライバが運転困難な状態になったと判定された時に自動で減速を開始した場合は、後続車両が追突してしまうおそれが生じる。
【0006】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、ドライバが運転困難な状態になった場合に、二次的な被害を軽減することができるようにした、運転支援装置を提供することを目的とする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する運転支援装置は、自車両を運転するドライバの状態を判定する状態判定手段と、前記自車両の前方を走行する先行車の情報を含む周辺情報を取得する情報取得手段と、前記自車両が前記先行車に追従して走行するように車速制御及び操舵角制御を含む追従制御を実施する車両制御手段と、を備える。前記車両制御手段は、前記状態判定手段により前記ドライバが異常であると判定された場合に、前記情報取得手段により取得された前記周辺情報に基づいて前記先行車に対する前記追従制御を自動的に開始し、
当該追従制御の実施中に前記情報取得手段により
当該先行車の停止情報が取得されたら前記自車両を停止させるとともに
当該追従制御を終了
し、当該先行車が再び走り出したとしても前記自車両を停止させたままとし、前記追従制御を実施するための前記先行車が存在しない場合は、前記周辺情報に基づいて追突されない程度に速度を落として自動的に走行させる待機制御を実施することを特徴としている。
【0008】
前記状態判定手段は、前記ドライバの状態(健康状態)に異常があるか否かを判定するものである。なお、ここでいう「異常」とは、例えばドライバが心拍停止,死亡,深い眠り(昏睡状態)に陥った場合等、車両を運転することが困難な状態あるいは全く運転できない状態を意味する。
前記情報取得手段は、前記先行車の情報(位置情報や速度情報等)や、前記自車両の後方を走行する後続車の情報(位置情報や速度情報等)や、白線情報や信号情報等の道路情報等を取得する。
【0009】
前記車両制御手段は、前記自車両の車速を制御する車速制御及び操舵角を制御する操舵角制御の他に、例えば前記先行車と一定の距離を保つように車間距離を制御する車間距離制御等を含んでいてもよい。さらに、前記車両制御手段は、前記先行車が一旦停止したら前記自車両を停止させるとともに、たとえ前記先行車が再び走り出したとしても前記追従制御を終了して追従しない(つまり、前記自車両は停止し続ける)。
【0010】
(2)前記先行車には、前記自車両と同一車線を走行する第一先行車と前記車線に隣接する隣接車線を走行する第二先行車とが含まれ、前記車両制御手段は、前記状態判定手段により前記ドライバが異常であると判定された場合に、前記情報取得手段により前記第一先行車及び前記第二先行車の情報がともに取得されたときは前記第一先行車に対して自動的に前記追従制御を実施することが好ましい。
【0011】
つまり、片側二車線以上の道路を走行中に前記ドライバが異常であると判定されたとき、前記自車両と同一車線を走行する第一先行車と、この車線と隣接する隣接車線を走行する第二先行車とが存在するという情報が取得された場合は、前記第一先行車を優先し、前記第一先行車に対して自動的に前記追従制御を実施することが好ましい。さらに、前記第一先行車が複数存在する場合は、直近の前記第一先行車を優先することがより好ましい。
【0012】
(3)さらに、前記車両制御手段は、前記状態判定手段により前記ドライバが異常であると判定された場合に、前記情報取得手段により前記第二先行車の情報のみが取得されたときは、前記第二先行車が走行する前記隣接車線に前記自車両よりも後方を走行する隣接後続車の有無を判定し、前記隣接後続車がいないときに前記第二先行車に対して自動的に前記追従制御を実施することが好ましい。
【0013】
(4)また、前記状態判定手段により前記ドライバが異常であると判定された時に、少なくとも前記自車両の車外へ前記異常を知らせるための報知制御(報知支援制御)を実施する報知制御手段を備えることが好ましい。
【0014】
(5)このとき、前記報知制御手段は、少なくとも警笛装置,前照灯及び方向指示器の何れか一つに対して、通常の動作とは異なる動作指令を出力し、前記報知制御を実施することが好ましい。ここでいう「通常の動作とは異なる動作」とは、例えば、普段ドライバが操作する警笛装置の場合、ドライバが鳴らすことができないようなリズムや音で警笛を鳴らすことや、前照灯を用いてパッシングする場合、ドライバが操作することができない速さでハイビームとロービームとを交互に点灯させることである。また、方向指示器をハザードランプとして用いる場合は、通常の点滅速度とは異なる速度で全ての方向指示器を点滅させることである。
【0015】
なお、ここでいう「待機制御」
には、前記先行車が存在すると判定されるまでの間、前記周辺情報に基づいて自動走行をし続ける制御や、前記周辺情報から安全な停車位置を探索し、安全な場所へ自動的に停車させに行く制御
が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
開示の運転支援装置によれば、ドライバが異常であると判定されたら、自車両の前方を走行する先行車に対して自動的に追従制御を実施するため、突然自車両が停止したり暴走したりするような事態を防止することができる。また、自車両は先行車に追従して走行するため安全に走行を継続することができ、二次的な被害を軽減することができる。さらに、自車両の追従制御中に先行車が停止したら、その停止に合わせて自車両が停止するとともに追従制御も終了するため、一般的に車両が停止することができる安全な場所に自車両を停止させることができる。これにより、二次的な被害をさらに回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0019】
[1.装置構成]
本実施形態の運転支援装置は、
図2に示す自車両10に搭載される。本運転支援装置は、自車両10を運転するドライバの状態が運転困難になった場合に自車両10を自動で制御し、ドライバに代わって運転を支援するとともに、周囲の他車両や歩行者等に異常を知らせる支援制御を実施する。
【0020】
支援制御は、自車両10に搭載される車両ECU(電子制御装置)1によって制御される。ここではまず、車両ECU1の入力側及び出力側にそれぞれ接続される装置を順に説明する。
図1に示すように、自車両10には、車両ECU1の入力側に接続されるカメラ11,レーダ12,通信装置13及びドライバ状態検出センサ14が設けられる。さらに自車両10には、車両ECU1の出力側に接続されるエンジン21,自動ブレーキ装置22,自動操舵装置23,警笛装置24,前照灯25及び方向指示器26が設けられる。
【0021】
カメラ(情報取得手段)11は、例えば自車両10の前方の画像を撮像する前方カメラや、自車両10の左右後方の画像を撮像する左後方カメラ及び右後方カメラのように、自車両10の周辺情報を取得するものである。カメラ11によって撮像された画像(静止画像)は、随時車両ECU1に画像データとして送信され、車両ECU1において各画像データに対して画像処理される。カメラ11で取得される周辺情報は、例えば自車両10の前後を走行する他車両の位置情報や白線情報,信号情報等の道路情報である。
【0022】
レーダ(情報取得手段)12は、例えばレーザレーダやミリ波レーダ等であって、自車両10の周辺情報を取得するものである。レーダ12は、自車両10の前方及び後方にそれぞれレーザ波等を送出し、その反射波を受信することで自車両10の周辺情報を取得する。レーダ12で取得される周辺情報は、例えば他車両の有無情報や他車両までの距離,角度(すなわち、相対位置)や速度(相対速度)情報、電柱や建物等の位置情報等である。レーダ11により検出された各情報は、随時車両ECU1に送信される。
【0023】
通信装置(情報取得手段)13は、道路上に設けられた路側機から自車両10に設けられたアンテナを介して周辺情報を受信する路車間通信として機能する処理装置である。路側機は、例えば渋滞情報,車線別の交通情報,一時停止等の規制情報,死角位置の交通状況の情報等を送信するビーコン装置である。また、通信装置13は、自車両10の周辺の他車両とアンテナを介して直接、或いは中継機(図示略)を経由して通信する車車間通信として機能する処理装置でもある。ここで取得される周辺情報としては、他車両の位置情報,速度情報及び操作状態(例えば、ウィンカーを作動させているか等)に関する情報である。通信装置13において受信された各情報は、随時車両ECU1に送信される。
【0024】
ナビゲーション装置14は、GPS衛星からアンテナを介して自車両10の現在位置を検出したり、GPS,速度センサ及びジャイロスコープ等を用いて、自車両10の走行速度の検出や目的地への経路案内等を行うものである。ナビゲーション装置14には、詳細な道路情報を含んだ地図データが内蔵されている。この地図データには、例えば道路の形状,レーン数,車線幅の情報等が含まれている。ナビゲーション装置14で取得された現在位置の情報や道路情報等は、随時車両ECU1に送信される。
【0025】
ドライバ状態検出センサ15は、自車両10を運転しているドライバの状態を検出するものである。ここで検出されるドライバの状態とは、例えばドライバの運転姿勢や心拍状態,呼吸状態等がある。ドライバの運転姿勢は、例えば車内に設置されたドライバを撮像するカメラにより、運転中のドライバの姿勢や目線(目の動き)を撮像することで把握される。また、ドライバの心拍状態は、例えばステアリングホイールに内蔵された電極により、ステアリングホイールを握っているドライバの心拍数を検出することで把握される。また、ドライバの呼吸状態は、ドライバが着座する座席シートに内蔵された荷重センサの検出値の変化を観察することで把握される。なお、ドライバの状態を検出する手法は特に限られず、後述する状態判定部2においてドライバが運転困難な状態であるか否かを判定できるものであればよい。
【0026】
エンジン21は自車両10の駆動源であり、エンジン21で発生する駆動力は図示しない動力伝達経路を介して駆動輪に伝達される。エンジン21は、後述する車両制御部4によって燃料の噴射量や噴射タイミング,スロットル開度等が制御され、これにより自車両10の駆動力が制御される。なお、ここでは自車両10の駆動源としてエンジン21を例示しているが、自車両10はエンジン21のみを駆動源とするものに限られず、エンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド電気自動車や、モータのみを駆動源とする電気自動車であってもよい。
【0027】
自動ブレーキ装置22は、ブレーキ装置とブレーキアクチュエータとから構成され、ドライバのブレーキ操作に係わらず自動的に各車輪へ制動力を付与するものである。ブレーキ装置は、ドライバによるブレーキペダルの踏み込み操作に応じ、エア圧を利用して前輪及び後輪に制動力(ブレーキ力)を発生させるフルエア式のドラムブレーキ等の一般的なブレーキ装置である。ブレーキアクチュエータは、ドライバによるブレーキ操作とは別に、後述する車両制御部4からの指令に基づいて、自動ブレーキとして各車輪に任意の大きさの制動力を発生させるものである。
【0028】
自動操舵装置23は、ステアリングとステアリングアクチュエータとから構成され、ドライバのステアリング操作に係わらず自動的に操舵角を制御するものである。ステアリングは、ドライバによる操舵操作に応じて車輪の向きを変える一般的な操舵装置である。ステアリングアクチュエータは、ドライバによる操舵操作とは別に、後述する車両制御部4からの指令に基づいて、自動操舵として車輪の向きを変更するものである。
【0029】
警笛装置24は、例えばステアリングホイールに内蔵された警笛スイッチが操作されることで音(クラクション)を発し、車外へ報知する報知装置である。通常、警笛装置24は、ドライバにより必要に応じて警笛スイッチが操作され、警笛スイッチが操作されている間のみ通電されて警笛を鳴らし続けるものであるが、ここでは後述する報知制御部5により、ドライバのスイッチ操作に係わらず自動的に警笛スイッチが操作される。
【0030】
前照灯25は、自車両10の前面の左右にそれぞれ設けられ、自車両10の前方を照らす照明装置である。この前照灯25には、ハイビームとロービームの二種類があり、ロービームの点灯中にハイビームを点滅させる(すなわちロービームとハイビームとを交互に点灯させる)、いわゆるパッシングを行うことで車外へ報知する報知装置としても機能する。
【0031】
前照灯25は、例えばステアリングに設けられたヘッドランプスイッチが操作されることで点灯されたりハイビームとロービームとが切り替えられたりする。パッシングは、例えばこのヘッドランプスイッチを手前に引いている間だけ実施されるものであり、通常はドライバの操作によって行われる。ここでは、前照灯25は後述する報知制御部5からの指令に基づいて、通常とは異なるハイビームの点滅速度で自動的にパッシングが行われる。
【0032】
方向指示器26は、少なくとも自車両10の前後の左右両端にそれぞれ設けられ、自車両10の進行方向を他車両等に知らせる報知装置である。方向指示器26は、例えばステアリングに設けられたウィンカースイッチが操作されることで左右何れか一方の方向指示器26が点滅し、進行方向を車外に示す。また、方向指示器26は、ウィンカースイッチとは別体で設けられたハザードスイッチが操作されることで全ての方向指示器26が点滅し、ハザードランプとして機能する。ここでは、方向指示器26は後述する報知制御部5からの指令に基づいて、通常とは異なる点滅速度で自動的にハザードランプとして作動される。
【0033】
車両ECU1は、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えたコンピュータである。
【0034】
[2.制御構成]
本実施形態の車両ECU1では、自車両10を運転するドライバが運転困難な状態に陥った場合に、自車両10を安全に停車させる運転支援制御と、自車両10の異常を周囲へ知らせる報知支援制御(報知制御)とが実施される。車両ECU1は、上記の各制御を実現するために、状態判定部2としての機能要素と、制御判定部3としての機能要素と、車両制御部4としての機能要素と、報知制御部5としての機能要素とを有している。
【0035】
状態判定部2は、ドライバ状態検出センサ25から伝達される情報に基づき、ドライバの状態(健康状態)に異常があるか否か(すなわち、ドライバが運転困難な状態であるか否か)を判定するものである。なお、ここでいう「ドライバに異常がある」とは、例えばドライバの心拍数が停止してしまった場合や、ドライバが死亡してしまった場合や、ドライバが深い眠りについてしまった(すなわち昏睡状態に陥ってしまった)場合等、自車両10を運転することが困難な状態、あるいは自車両10を全く運転することができない状態を意味する。
【0036】
状態判定部2において、ドライバが異常であると判定された場合は、その判定結果が制御判定部3及び報知制御部5に伝達される。一方、状態判定部2において、ドライバは異常ではない(正常である)と判定された場合は、その判定結果が車両制御部4に伝達される。なお、状態判定部2での判定は、一度ドライバが異常であるという判定結果が出たとしても、継続して行われる。
【0037】
制御判定部3は、状態判定部2においてドライバが異常であると判定されると、カメラ11,レーダ12,通信装置13及びナビゲーション装置14から取得された周辺情報に基づいて、運転支援制御を実施するための要件を判定するものである。なお、状態判定部2においてドライバの状態が正常であると判定されているときは、状態判定部2での判定結果が制御判定部3に伝達されないため、制御判定部3による判定は実施されない。
【0038】
制御判定部3は、まず自車両10の前方を走行する先行車がいるか否かを判定する。先行車がいると判定した場合は、
図2(a)〜(c)に示すように、この先行車が自車両10と同じ車線(以下、自車線41という)を走行する先行車(以下、第一先行車31という)であるか、あるいは自車線41に隣接する車線(以下、隣接車線42という)を走行する先行車(以下、第二先行車32という)であるかを判定する。なお、第一先行車31及び第二先行車32は、自車両10の前方を走行する先行車のうち、直近のものを対象とする。
【0039】
また、直近の先行車が複数いると判定された場合は、それぞれの先行車について、第一先行車31であるか第二先行車32であるかを判定する。なお、第二先行車32は、自車両10が片側二車線以上の道路40を走行している場合に存在する可能性があるため、まず自車両10の走行する道路40が片側二車線以上か否かの判定を追加して、先行車が第一先行車31であるか第二先行車32であるかの判定を省略してもよい。
【0040】
自車両10の前方には第一先行車31のみが存在すると判定したときは、この第一先行車31が制御対象であると判定する。また、
図2(a)及び(b)に示すように、第一先行車31及び第二先行車32が共に存在すると判定したときは、自車両10との車間距離に係わらず第一先行車31が制御対象であると判定する。つまり、片側二車線以上の道路を走行中に第一先行車31と第二先行車32とが存在するという情報が取得された場合は、第一先行車31が優先される。
【0041】
また、
図2(c)に示すように、自車両10の前方には第二先行車32のみが存在すると判定したときは、さらに第二先行車32が走行する隣接車線42に自車両10よりも後方を走行する他車両(以下、隣接後続車33という)が存在するか否かを判定する。隣接後続車33がいないと判定した場合は、第二先行車32が制御対象であると判定し、隣接後続車33が存在すると判定したときは、制御対象がいないと判定する。
一方、自車両10の前方を走行する先行車がいないと判定した場合も、制御対象がいないと判定する。これら判定結果は、車両制御部4に伝達される。
【0042】
車両制御部4は、制御判定部3により判定された制御対象に対して自車両10が追従するように、自動的に追従制御を実施するものである。また、制御判定部3により制御対象がいないと判定された場合に、自動的に待機制御を実施するものである。さらに、車両制御部4は、状態判定部2によりドライバの状態が正常であるという判定結果が伝達された場合に、何れかの支援制御を実施中であればその全ての支援制御を停止させる、あるいは何れの支援制御も実施していないのであればそのまま何もしない(何れの支援制御も実施しない)ものである。
【0043】
まず、追従制御について説明する。車両制御部4は、自車両10の車速を制御する車速制御及び操舵角を制御する操舵角制御を行うことで、制御対象とされた先行車31,32(以下、追従先行車30という)に対して追従制御を実施する。車両制御部4は、追従先行車30の車速に合わせて、エンジン21の駆動力及び自動ブレーキ装置22の制動力を制御することで自車両10の車速を制御し、追従先行車30に追従する。また、追従先行車30の右左折に合わせて、自動操舵装置23のステアリングアクチュエータを制御することで車輪の向きを制御し、追従先行車30に追従する。これにより、自車両10は安全に走行を継続することができる。
【0044】
さらに車両制御部4は、追従先行車30に追従しているときに追従先行車30が一旦停止したら、自車両10を停止させるとともに、追従制御を終了する。つまり、追従制御中に自車両10が一度停止したら、たとえ追従先行車30が再び走りだしたとしても車両制御部4は追従制御を実施せず、自車両10は追従先行車30に追従しない(言い換えると自車両10は停止し続ける)。これにより、自車両10は安全な場所に停止することができる。
【0045】
なお、ここでいう「安全な場所」とは、例えば一般道であれば一時停止の標識がある場所,信号待ちのために停止する場所,駐車場等を意味し、高速道路であればサービスエリア,パーキングエリア,料金所等を意味する。つまり、「安全な場所」とは、一般的に、後続車が追突し難く、車両が安全に停止することのできる場所を意味し、必ずしもそのまま停止し続けることができる場所(例えば駐停車可能な路側帯や駐車場)のみを意味するわけではない。
【0046】
また、車両制御部4は、追従先行車30の停止に合わせて自車両10が停止する場合に、追従先行車30の停止情報(例えば停止位置や停止タイミング)と周辺情報(道路情報)とに基づいて、適切なタイミングで適切な場所に自車両10を停止させることがより好ましい。例えば、追従先行車30が信号待ちで停止する場合に、自車両10が追従先行車30と同時に停止したのでは追従先行車30との車間距離が長すぎてしまうことがある。このような事態を回避すべく、車両制御部4は、追従先行車30の停止タイミングよりもやや遅いタイミングで自車両10を停止させ、且つ、追従先行車30との車間距離を走行時よりも短くなるよう制御したり、追従先行車30と同じタイミングで減速を開始し、減速中に追従先行車30とは異なる減速度となるように制御したりしてもよい。
【0047】
次に待機制御について説明する。待機制御は、ドライバが運転困難な状態になった時に、すぐに追従できる先行車がいない場合に行われる制御である。ここでは車両制御部4は、待機制御として、制御判定部3により制御対象が存在すると判定されるまでの間、カメラ11及びレーダ12により取得された周辺情報に基づいて、自車両10を追突されない程度に速度を落として自動的に走行させる自動走行制御を実施する。
【0048】
例えば高速道路のように片側二車線以上の道路を走行中に、第二先行車32は存在するものの隣接後続車33がいるために制御対象なしと判定された場合は、自車両10の速度を追突されない程度に低速にし、隣接後続車33が自車両10を追い越すのを待つ(待機する)。そして、この隣接後続車33が自車両10を追い越せば、この隣接後続車33が新たな第二先行車32になり得る。また、例えば一般道を走行中に、自車両10の前方に他車両が進入してくるように低速走行を継続して実施し、自車両10の前方に進入してきた場合は、この他車両が追従先行車30と判定される。
【0049】
車両制御部4は、このような待機制御の実施中に自車両10が一度停止したときは、待機制御を終了し、自車両10を停止させたままとする。例えば、自車両10が周辺情報に基づいて自動で走行している場合に、前方に赤信号があれば自車両10を自動的に停止させ、その後信号が青に変わっても自車両10を走行させず停止状態のままとする。
【0050】
報知制御部5は、状態判定部2においてドライバが異常であると判定されたときに、警笛装置24,前照灯25及び方向指示器26を制御して、自車両10の周囲にいる他車両や歩行者等に自車両10の異常を報知するものである。ここでは、報知制御部5は、警笛装置24に対して通常とは異なるリズムや音の警笛を鳴らすように指令を発する。また、前照灯25に対して通常とは異なるハイビームの点滅速度のパッシングを行うように指令を発し、方向指示器26に対して通常とは異なる点滅速度で全方向指示器26を点滅させてハザードランプとして機能するように指令を発する。
【0051】
なお、報知制御部5は、警笛装置24,前照灯25及び方向指示器26の全てを制御して車外へ報知するのではなく、これらのうち少なくとも一つを制御する構成であってもよい。また、ナビゲーション装置14の音声機能やブザー等を用いて、車室内へ報知する構成を追加してもよい。これは、ドライバが昏睡状態であるような場合に有効である。
【0052】
[3.フローチャート]
次に、
図3のフローチャートを用いて、車両ECU1で実施される制御手順を説明する。このフローチャートは所定の制御周期で動作する。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。
【0053】
本支援制御装置は、ドライバによるイグニッションスイッチ(図示略)のオン操作が行われると、以下の制御フローをスタートする。
図3に示すように、まずステップS10において、ドライバ状態検出センサ15によりドライバの状態が検出される。次いでステップS20において、ドライバが異常であるか否かが判定される。ここで、ドライバが異常であると判定された場合は、ドライバが運転を継続して行うことが困難であるため、支援制御が実施される。
【0054】
ステップS30では、報知制御部5により警笛装置24,前照灯25及び方向指示器26が制御され、自車両10の異常を周囲へ知らせる報知制御が実施される。この報知制御は、ドライバが異常ではない(正常である)と判定されるか、あるいは自車両10が停止した後イグニッションスイッチがオフ操作されるまで継続される。ステップS40では、カメラ11,レーダ12,通信装置13及びナビゲーション装置14により自車両10の周辺情報が取得される。
【0055】
次いでステップS50では、フラグFがF=1であるか否かが判定される。フラグFは、現在の自車両10の制御状態をチェックするための変数であり、F=0が何れの制御も実施していないことに対応し、F=1が追従制御実施中に対応し、F=2が待機制御実施中に対応する。なお、初期値はF=0に設定されている。最初にステップS50に進んだときはフラグFはF=0であるため、ステップS60へ進み、自車両10の前方を走行する先行車が存在するか否かが判定される。
【0056】
ここで、先行車が存在すると判定されたときは、ステップS70において先行車が自車線41を走行する第一先行車31であるか否かが判定される。先行車が第一先行車31であれば、この第一先行車31が追従先行車30とされ、ステップS80において追従制御が実施される。そして、ステップS90においてフラグFがF=1に設定され、この制御周期を終了しリターンする。
【0057】
次の制御周期でドライバが異常のままであれば、ステップS50からステップS100へ進み、追従先行車30が停止したか否かが判定される。追従先行車30が走行中であればステップS80へ進んで追従制御が継続される。また、追従先行車30が停止したときはステップS110に進み、自車両10も停止されて追従制御が終了され、この制御フローを終了する。つまり、ステップS110へ進んだ場合は、自車両10が安全な場所まで走行して安全な場所に停止することができたため、その場に停止し続ける(停止保持される)。なお、このときステップS30で開始した報知制御は継続中であるため、停止し続ける自車両10が異常な状態であると周囲に報知し続ける状態となる。
【0058】
一方、ステップS60において先行車が存在しないと判定された場合は、ステップS115へ進み、自車両10が停止したか否かが判定される。自車両10が走行中であればステップS120へ進み、待機制御が実施される。そして、ステップS130においてフラグFがF=2に設定されて、この制御周期を終了しリターンする。
【0059】
また、ステップS70において先行車が第一先行車31でないと判定されたらステップS72へ進み、先行車が隣接車線42を走行する第二先行車32であるか否かが判定される。先行車が第二先行車32であれば、続くステップS74において隣接後続車33が存在しないか否かが判定される。隣接後続車33が存在しなければ、第二先行車32が追従先行車30とされ、ステップS80において追従制御が実施され、ステップS90においてフラグFがF=1に設定され、この制御周期を終了しリターンする。
【0060】
一方、ステップS72において先行車が隣接先行車でない場合(つまり、自車線41に隣接しない車線を走行する車両であった場合)、及び、ステップS74において隣接後続車33が存在する場合は、ステップS115へ進み、自車両10が停止したか否かが判定される。自車両10が走行中であればステップS120へ進んで待機制御が実施される。そして、ステップS130においてフラグFがF=2に設定されて、この制御周期を終了しリターンする。
【0061】
ステップS120において待機制御が実施された場合は、続く制御周期においてステップS50から再びステップS60へ進み、先行車の有無が判定される。ここで、追従先行車30が存在すればステップS80に進んで、待機制御から追従制御へ切り替えられるが、追従先行車30がいない場合はステップS115において、自車両10が停止したか否かが判定されて、自車両10が走行中である限り待機制御が継続され、周辺情報に基づく自動走行が実施される。一方、この待機制御を実施中に、例えば信号待ちなどで自車両10が停止した場合は、ステップS115からステップS135へ進み、待機制御が終了されてこの制御フローを終了する。つまり、自車両10はその場に停止し続け、再び発進はしない。
【0062】
ステップS20において、ドライバが異常ではない(正常である)と判定された場合は、ステップうS140へ進み、フラグFがF=0であるか否かが判定される。フラグFがF=0であれば、この制御周期を終了してリターンする。フラグFがF=0でなければ(すなわち、追従制御又は待機制御を実施中であれば)、ステップS150へ進み、全ての制御(すなわち、報知制御及び追従制御又は待機制御)を停止して、フラグFをF=0にリセットして、この制御周期を終了しリターンする。つまり、一度ドライバが異常であると判定されても、その判定が覆った場合は支援制御が停止される。
【0063】
[4.作用・効果]
次に、
図2(a)〜(c)を用いて、本実施形態に係る支援制御を説明する。
図2(a)〜(c)は、自車両10が片側二車線の高速道路を走行している場合を例示したものである。このような道路40を走行中に自車両10を運転するドライバが運転困難な状態になったと判定されると、警笛やパッシングやハザードランプにより、周囲への報知が開始される。また、カメラ11やレーダ12等で自車両10の前方が探索され、先行車の有無が判定される。なお、図中に一点鎖線で示す範囲S
Fは前方探索エリアであり、この前方探索エリアS
F内に入れば「先行車あり」と判定される。
【0064】
図2(a)及び(b)に示すように、前方探索エリアS
F内で自車線41を走行する第一先行車31と隣接車線42を走行する第二先行車32とが検出されると、自車両10との車間距離に係わらず(第二先行車32の方が自車両10に近くても)、第一先行車31が追従先行車30とされる。そして、第一先行車31に対して追従制御が実施される。このように第一先行車31が存在する場合は、第一先行車31に対して追従制御を実施することで、不要な車線変更を抑制し、自車両10の安全な走行が継続される。
【0065】
一方、
図2(c)に示すように、前方探索エリアS
F内で第二先行車32のみが検出されると、カメラ11やレーダ12等で自車両10の後方が探索され、隣接後続車33の有無が判定される。なお、図中一点鎖線で示す範囲S
RR及びS
RLはそれぞれ右後方探索エリア及び左後方探索エリアであり、ここでは右後方探索エリアS
RR内に入れば「隣接後続車あり」と判定される。
【0066】
図2(c)に示す場面では隣接後続車33が存在するため、この状態で第二先行車32に追従しようとして車線変更を行うと、自車両10が隣接後続車33に接触してしまうおそれがある。そのため、この状態では第二先行車32への追従制御は行われず、隣接後続車33が右後方探索エリアS
RR内で検出されなくなるまで待機制御が実施される。仮に、隣接後続車33が自車両10を追い越して前方探索エリアS
F内に入ると、今度は隣接後続車33であった車両が新たに第二先行車であると判定される。そして、このとき第一先行車31が検出されず、且つ、新たな隣接後続車も検出されなければ、新たな第二先行車が追従先行車30とされて追従制御が開始される。
【0067】
そして、自車両10が追従制御を実施中に、追従先行車30がサービスエリアや料金所等で停止すると、自車両10も停止し、そのまま停止し続ける。なお、このとき自車両10は警笛やパッシングやハザードランプにより報知し続けており、周囲の人たちはこれを見て何らかの異常が起こっていることを把握する。
【0068】
したがって、本実施形態に係る運転支援装置によれば、ドライバが異常であると判定されたら、自車両10の前方を走行する先行車(追従先行車)30に対して自動的に追従制御を実施するため、突然自車両10が停止したり暴走したりするような事態を防止することができる。また、自車両10は先行車30に追従して走行するため、先行車30が安全に走行し続ける限り安全に走行を継続することができ、二次的な被害を回避あるいは軽減することができる。
【0069】
さらに、自車両10の追従制御中に先行車30が停止したら、その停止に合わせて自車両10が停止するとともに追従制御も終了するため、一般的に車両が停止することができる安全な場所に自車両10を停止させることができる。これにより、二次的な被害をさらに回避することができる。
【0070】
また、第一先行車31と第二先行車32とが存在する場合は、第一先行車31が制御対象であると判定されて、第一先行車31に対して自動的に追従制御が実施されるため、不要な車線変更が抑制され、安全性をより高めることができる。
【0071】
また、第二先行車32の情報のみが取得されたときは、第二先行車32が走行する隣接車線42に自車両10よりも後方を走行する隣接後続車33の有無が判定され、隣接後続車33がいないときに第二先行車32に対して自動的に追従制御が実施される。そのため、車線変更を行って第二先行車32に追従する場合であっても、後方の安全を確認した上で車線変更することができるため、自車両10の安全性をより高めることができるとともに、隣接後続車33の安全性も確保することができる。
【0072】
また、状態判定部2によりドライバが異常であると判定された時に、自車両10の車外へ異常を知らせるための報知制御が実施されるため、自車両10の周囲の人たちに何らかの異常が起こっているということを知らせることができる。また、追従制御される追従先行車30に対しても、追従している後続車(つまり、自車両10)が異常であることを知らせることができる。
【0073】
この報知制御では、警笛装置24,前照灯25及び方向指示器26が用いられ、通常の動作とは異なる動作で警笛を鳴らし、パッシング及びハザードランプを点灯させるため、周囲の人たちに何らかの異常が起こっていることを確実に知らせることができる。また、前述のように通信装置13を車車間通信に使用し、異常事態の情報を車車間通信で他車両に送信してもよい。
【0074】
また、状態判定部2によりドライバが異常であると判定された場合に、追従制御を実施するための追従先行車30が存在しない場合は、カメラ11やレーダ12等から得られる周辺情報に基づいて待機制御が実施される。そのため、追従先行車30が存在しない場合であっても、自車両10の安全性を最低限確保することができる。
【0075】
さらに、ここでは待機制御を実施中に追従先行車30が存在すると新たに判定された場合は、待機制御から追従制御に切り替えられるため、自車両10の安全な走行を継続することができるとともに、安全な場所に停止させることができる。
【0076】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態では、片側二車線の道路40を走行している場合を例示したが、自車両10の走行する道路は片側二車線に限られず、片側一車線や一方通行の道路であってもよく、片側三車線以上の道路であってもよい。
【0077】
また、第一先行車31及び第二先行車32の両方が存在すると判定された場合に、自車両10に近い方の先行車を追従先行車30とする構成であってもよい。この場合は、追従先行車30と自車両10との距離が近いため、追従先行車30が前方探索エリアS
Fからいなくなる(探索できなくなる)おそれがなくなり、確実に追従制御を開始することができる。
【0078】
また、自車両10の周辺情報を取得するカメラ11,レーダ12,通信装置13及びナビゲーション装置14の全てが搭載されていなくてもよく、何れか一つ又は複数であってもよい。また、これら以外の装置から周辺情報を取得してもよい。
また、報知の仕方は上記したものに限られず、警笛装置24,前照灯25及び方向指示器26以外の機器を用いて報知してもよい。また、これら警笛装置24,前照灯25及び方向指示器26を用いる場合であっても、必ずしも通常と異なる動作で報知を行わなくてもよい。
【0079】
また、報知開始のタイミングも上記したものに限られず、例えば、ドライバの異常を判定したらまずはパッシングかハザードランプの点灯によって報知し、自車両10が停止してから警笛を鳴らすような構成にしてもよい。このように、報知に段階を設けることで、ドライバが異常であるか否かの判定が覆った場合に周囲に与える影響を最小限にとどめることができる。
【0080】
また、待機制御は上記したものに限られず、例えば周辺情報に基づいて自車両10を自動的に走行させながら安全な停車位置を探索し、安全な場所へ自動的に停車させに行く制御であってもよい。つまり、待機制御は従来から行われている制御を採用してもよい。
また、上記実施形態で説明した制御判定部3での判定を車両制御部4で併せて実施し、制御判定部3を省略してもよい。