(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサの2つのセンス電極を2つの入力ライン経由でサンプルホールド容量の両端に並列に接続して信号を取り込む差動入力と、前記センサの1つのセンス電極を1つの入力ライン経由でサンプルホールド容量の一方の電極に接続して信号を取り込むシングル入力とを切替可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電容量検出装置。
前記サンプルホールド部は、サンプルホールド容量がM行N列のマトリクス構成を有し、サンプリングされた信号を同一列のM個のサンプルホールド容量に蓄積し、N回のサンプリングが終了するまでサンプリング毎に列を変えながら列単位での蓄積を繰り返し、行単位でN個のサンプルホールド容量に蓄積された合計電荷量に応じた電位差を後段回路へ出力することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の静電容量検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、静電容量検出技術を利用した入力デバイスは、接触、近接、ジェスチャー検出等の用途の多様化に対応して複合化されていくことが予想される。複合化された入力デバイスを1つのIC又は回路で実現する為には、静電容量検出回路は様々なセンサ構造に対応できるセンサ駆動方式、入力構造を持つことが望まれる。
【0005】
しかしながら、1つの単電極をセンス電極として、センス電極と周囲との間の静電容量結合を検出する自己容量検出型の静電容量検出回路と、複数のドライブ電極とセンス電極とからなるセンサにおいて主にドライブ電極とセンス電極との間の静電容量結合を検出する相互容量検出型の静電容量検出回路とでは回路構成が異なる。また、新規の入力デバイスの開発には、新たなセンサ(電極構造、配置)と駆動方法に対応可能な回路構成が必要になる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、自己容量検出型及び相互容量検出型を含む複数のセンサモデルに対して共通の回路構成で対応可能な汎用性に優れた静電容量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電容量検出装置は、センサを構成する複数の電極が各接続される複数の端子を有する端子部と、前記センサの電極のうち駆動側のドライブ電極に印加する駆動信号を出力する駆動回路と、前記端子部の各端子の接続先回路を切り替えるマルチプレクサと、前記駆動回路と共に前記マルチプレクサによる接続先回路の1つとなるC−V変換回路と、を備え、前記C−V変換回路は、前記センサの容量に応じた電荷をサンプルホールド容量に蓄積し、当該サンプルホールド容量に生じた電位差を後段回路へ出力するサンプルホールド部と、前記センサの電極のうち検出電位が現れるセンス電極が接続された前記端子と前記サンプルホールド容量の両端子との間を接続可能な2つの入力ラインと、前記入力ラインにリセット電圧を印加するリセットスイッチと、一端が対応する前記入力ラインに接続され、他端に駆動信号が印加される可変容量と、前記可変容量に印加する駆動信号を出力する可変容量駆動回路と、を有し、前記マルチプレクサは、前記ドライブ電極と前記駆動回路との接続と切断とを切替可能とすることで、前記ドライブ電極と前記センス電極の静電容量結合を検出する相互容量検出と、前記センス電極とその周囲の静電容量結合を検出する自己容量検出とを切替可能と
し、前記サンプルホールド部は、相互容量検出の場合、各サンプリングの前に前記リセットスイッチによって、固定電位で前記センス電極のリセットを実施すると共に、前記センス電極の信号を前記ドライブ電極駆動信号の立上り及び立下りの両エッジでサンプリングし、サンプリングされた信号を偶数回と奇数回とで極性を反転して後段回路へ転送するチョッピング回路を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明の静電容量検出装置によれば、共通の回路構成(端子部、サンプルホールド部、入力ライン、リセットスイッチ、可変容量、駆動回路、マルチプレクサ)から相互容量検出に対応した回路構成と自己容量検出に対応した回路構成とを差動入力とシングルエンド入力の検出回路構成と、差動出力とシングルエンド出力の駆動回路構成との組み合わせで構築できるので、自己容量検出型及び相互容量検出型を含む複数のセンサモデルに対して共通の回路構成で対応できる。
【0010】
本発明は、
センサを構成する複数の電極が各接続される複数の端子を有する端子部と、前記センサの電極のうち駆動側のドライブ電極に印加する駆動信号を出力する駆動回路と、前記端子部の各端子の接続先回路を切り替えるマルチプレクサと、前記駆動回路と共に前記マルチプレクサによる接続先回路の1つとなるC−V変換回路と、を備え、前記C−V変換回路は、前記センサの容量に応じた電荷をサンプルホールド容量に蓄積し、当該サンプルホールド容量に生じた電位差を後段回路へ出力するサンプルホールド部と、前記センサの電極のうち検出電位が現れるセンス電極が接続された前記端子と前記サンプルホールド容量の両端子との間を接続可能な2つの入力ラインと、前記入力ラインにリセット電圧を印加するリセットスイッチと、一端が対応する前記入力ラインに接続され、他端に駆動信号が印加される可変容量と、前記可変容量に印加する駆動信号を出力する可変容量駆動回路と、を有し、前記マルチプレクサは、前記ドライブ電極と前記駆動回路との接続と切断とを切替可能とすることで、前記ドライブ電極と前記センス電極の静電容量結合を検出する相互容量検出と、前記センス電極とその周囲の静電容量結合を検出する自己容量検出とを切替可能とし、前記サンプルホールド部は、自己容量検出の場合、各サンプリングの前に前記リセットスイッチによって、固定電位で前記センス電極のリセットを実施すると共に、前記センス電極の信号を前記可変容量の一端に印加される駆動信号の立上り及び立下りの両エッジでサンプリングし、サンプリングされた信号を偶数回と奇数回とで極性を反転して後段回路へ転送するチョッピング回路を形成することを特徴とする。
【0011】
これにより、前記サンプルホールド部が相互容量検出の場合と自己容量検出の場合でチョッピング回路を形成するので、センス電極から入力してくる低周波のシングルエンドモードノイズがキャンセルできて信号成分のみを後段回路に出力することができ、ノイズ耐性を改善できる。また、サンプルホールド部はサンプルホールド容量の両端子間に生じる電位差を後段回路へ出力する。この電位差は、一般的な増幅回路およびフィルタ回路への入力が可能であり、ΔΣ型AD変換器等、ノイズ抑制に有効な回路との接続を可能とし、高感度化を容易に図ることができる。
【0012】
上記静電容量検出装置において、前記センサの2つのセンス電極を2つの入力ライン経由でサンプルホールド容量の両端に接続して信号を取り込む差動入力と、前記センサの1つのセンス電極を1つの入力ライン経由でサンプルホールド容量の一方の電極に接続して信号を取り込むシングル入力とを切替可能に構成されている。
【0013】
これにより、共通の回路構成(端子部、サンプルホールド部、入力ライン、リセットスイッチ、可変容量、駆動回路、マルチプレクサ)によって、相互容量検出に対応した回路構成と自己容量検出に対応した回路構成とを差動入力とシングルエンド入力の検出回路構成と、差動出力とシングルエンド出力の駆動回路構成との組み合わせで構築できるので、自己容量検出型及び相互容量検出型を含む複数のセンサモデルに対して共通の回路構成で対応できる。
【0014】
上記静電容量検出装置において、前記サンプルホールド部は、サンプルホールド容量がM行N列のマトリクス構成を有し、サンプリングされた信号を同一列のM個のサンプルホールド容量に蓄積し、N回のサンプリングが終了するまでサンプリング毎に列を変えながら列単位での蓄積を繰り返し、行単位でN個のサンプルホールド容量に蓄積された合計電荷量に応じた電位差を後段回路へ出力する。
【0015】
これにより、前記サンプルホールド部が、(N−1)回前から直前のサンプリングまでの各センサ出力を合計して後段回路に出力する移動平均フィルタを形成するので、ノイズ耐性を改善できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自己容量検出型及び相互容量検出型を含む複数のセンサモデルに対して共通の回路構成で対応可能で汎用性に優れた静電容量検出装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に静電容量検出回路の概略的な全体構成が示されている。静電容量検出回路10は、センサ1を構成する電極を接続可能な端子部11と、相互容量検出のための駆動信号を出力する駆動回路12と、端子部11に接続された電極のうち駆動回路12に接続する電極(ドライブ電極として機能)と検出回路側に接続する電極(センス電極として機能)とを選択するマルチプレクサ13と、電荷量を電圧情報に変換するC-V変換回路14と、電圧値を増幅すると共にアナログフィルタリングするアナログ処理回路15と、AD変換及びディジタルフィルタリングするディジタル処理回路16とを備えている。
【0019】
駆動回路12は、相互容量検出時にドライブ電極に印加する駆動信号を生成する。差動ドライブ時には極性の異なる駆動信号を出力し、シングルドライブ時には一方の極性の駆動信号を出力する。
【0020】
マルチプレクサ13は、ドライブ電極として機能させる電極が駆動回路12の出力端子に接続されるように端子部11の端子を選択し、センス電極として機能させる電極が検出回路側の入力ラインに接続されるように端子を選択する。
【0021】
センサ1は、複数の電極からなる電極群で1つのセンサ機能を実現するが、さらに固定電位電極、ハイインピーダンスの浮遊電極を含んだ電極群で1つのセンサ機能を満たすこともできる。また、少なくとも1つのセンス電極があればセンサ機能を満たすことができる。N個のセンサを同時に接続する場合、各電極は共有して使用され、センサ毎に機能(ドライブ電極、センス電極)が変更されても良い。すなわち、あるタイミングでは一対のセンス電極のうち一方のセンス電極として使用された電極が、別のタイミングでは他方のセンス電極又はドライブ電極として使用されるようにしても良い。このように、電極群の中から任意の電極を接続先として選択し時間的に電極機能を切り替えるようにマルチプレクサ13が電極と駆動回路12、C-V変換回路14との接続を切替制御する。例えば、相互容量検出/差動ドライブの場合は、一対のドライブ電極として機能させる2つの電極が駆動回路12の出力端子に接続されるように端子を選択し、センス電極として機能させる2つの電極が検出回路側の入力ラインに接続されるように端子を選択する。なお、
図1ではマルチプレクサ13に対して複数の検出系統(C-V変換回路14、アナログ処理回路15、ディジタル処理回路16)が並列接続された構成が例示されているが、少なくとも1つの検出系統があれば良い。また、アナログ処理回路15及びディジタル処理回路16は、必ずしも静電容量検出回路10とともに1つのICパッケージに含まれなくても良い。センサ1は、後述する相互容量型センサと自己容量型センサとがある。例えば、
図2から
図5に例示している相互容量型のセンサ1は、差動ドライブ/差動入力型(
図2)、差動ドライブ/シングル入力型(
図3)、シングルドライブ/差動入力型(
図4)、シングルドライブ/シングル入力型(
図5)である。また、
図6、7に例示している自己容量型のセンサ1は、差動入力型(
図6)、シングル入力型(
図7)である。静電容量検出回路10は、上記のように容量タイプ、駆動方式、入力構成の異なる各種センサ1に対して共通の回路構成で容量検出を実現している。
【0022】
(モデル1)
図2に、容量タイプが相互容量であり差動ドライブ/差動入力型のセンサを対象センサ1とした場合の静電容量検出回路10の回路構成が示されている。先ず、相互容量/差動ドライブ/差動入力型のセンサ1について説明する。
図2に示すように、モデル1におけるセンサ1は、電極E1、E2がセンス電極を構成し、電極E3、E4がドライブ電極を構成するように端子部11の対応端子に接続されている。被検出体は記号Subで示されている。一方のセンス電極E1は、マルチプレクサ13によって、静電容量検出回路10の差動入力の一方に対応した端子P1に接続され、他方のセンス電極E2は静電容量検出回路10の差動入力の他方に対応した端子P2に接続される。また、一方のドライブ電極E3はドライブ回路12から第1の極性の駆動パルスが印加される端子P3が接続され、他方のドライブ電極E4はドライブ回路12から第1の極性とは逆極性の駆動パルスが印加される端子P4が接続される。センス電極E1、E2と被検出体Subとの間に容量Cs1、Cs2が形成され、センス電極E1、E2と例えばGNDとの間に容量C01、C02が形成されている。センス電極E1、E2間には容量C12が形成される。一方のセンス電極E1と一方のドライブ電極E3との間には容量C31が形成され、他方のセンス電極E2と一方のドライブ電極E3との間には容量C32が形成される。そして、一方のセンス電極E1と他方のドライブ電極E4との間には容量C41が形成され、他方のセンス電極E2と他方のドライブ電極E4との間には容量C42が形成される。
【0023】
次に静電容量検出回路10の回路構成について説明する。
図2に示すように、静電容量検出回路10は、差動入力となる端子P1、P2に対して差動入力ラインL1、L2を介して接続されたサンプルホールド部21と、差動入力ラインL1、L2に接続されたセンサリセット用の第1のリセットスイッチSW1及び第2のリセットスイッチSW2と、センス電極へ駆動信号を印加する自己容量駆動部22とを備える。サンプルホールド部21、第1、第2のリセットスイッチSW1、SW2、自己容量駆動部22によって
図1に示すC-V変換回路14が構成される。なお、第2のリセットスイッチSW2が無くても同様の機能を実現できる。
【0024】
サンプルホールド部21は、サンプルホールド容量Cshと、サンプルホールド容量Cshとセンサ1との接続をオン/オフするスイッチSW3と、サンプルホールド容量Cshと後段回路(アナログ処理回路15)との接続をオン/オフするスイッチSW4とを備える。
図8にサンプルホールド部21をM行N列のサンプルホールド回路で構成した回路構成が示されている。サンプルホールド容量Cshは、M行N列のマトリクス構成を有している。具体的には、サンプルホールド容量Cshは、2行2列のマトリクスを構成する容量Csh11、Csh12、Csh21、Csh22で構成されている。スイッチSW3は、容量Csh11、Csh12、Csh21、Csh22に対する入力端子P5,6(差動入力ラインL1、L2)の接続をオン/オフするスイッチSW3−1,SW3−2で構成される。スイッチSW4は、容量Csh11、Csh12、Csh21、Csh22に対する出力端子P7,8(後段回路)との接続をオン/オフするスイッチSW4−1,SW4−2で構成される。また、第1のリセットスイッチSW1は、差動入力ラインL1及びL2を個別に基準電圧Vref(または電源電圧Vd)に接続可能に構成され、第2のリセットスイッチSW2は、差動入力ラインL1及びL2を個別に固定電位(例えばGND)に接続可能に構成されている。自己容量駆動部22は、一方の差動入力ラインL1に装荷される可変容量Cx1と他方の差動入力ラインL2に装荷される可変容量Cx2とを備える。可変容量Cx1、Cx2は駆動信号sig1によって駆動されて対応する差動入力ラインL1、L2に任意の電荷量を注入する。
【0025】
(モデル2)
図3に、容量タイプが相互容量であり差動ドライブ/シングル入力型のセンサを対象センサ1とした場合の静電容量検出回路10の回路構成が示されている。
図2に示すモデル1と同一部分には同一符号を付している。
図3に示すように、モデル2におけるセンサ1は、モデル1からセンス電極E2を除いた構成を有しており、一方のセンス電極E1と一方のドライブ電極E3との間に形成される容量C31、一方のセンス電極E1と他方のドライブ電極E4との間に形成される容量C41、センス電極E1と被検出体Subとの間に形成される容量Cs1、センス電極E1とGNDとの間に形成される容量C01が検出対象となる。マルチプレクサ13は、センス電極E1が接続された端子P1を入力ラインL1に接続するように、ドライブ電極E3、E4が接続された端子P3、P4を駆動回路12に接続するように選択する。モデル2におけるセンサ1は、ドライブ電極E3、E4を異なる極性の駆動パルスで駆動する差動ドライブであるが、相互容量検出は一方のセンス電極E1からのみ行われるシングル入力となる。センス電極E1は入力ラインL1を介してサンプルホールド部21に接続される。
【0026】
(モデル3)
図4に、容量タイプが相互容量でありシングルドライブ/差動入力型のセンサを対象センサ1とした場合の静電容量検出回路10の回路構成が示されている。
図2に示すモデル1と同一部分には同一符号を付している。
図4に示すように、モデル3におけるセンサ1は、モデル1から他方のドライブ電極E4を除いた構成を有している。一方のドライブ電極E3が接続された端子P3に対して駆動パルスが印加される。マルチプレクサ13は、センス電極E1が接続された端子P1とセンス電極E2が接続された端子P2の双方と、ドライブ電極E3が接続された端子P3を選択する。
【0027】
(モデル4)
図5に、容量タイプが相互容量でありシングルドライブ/シングル入力型のセンサを対象センサ1とした場合の静電容量検出回路10の回路構成が示されている。
図2に示すモデル1と同一部分には同一符号を付している。
図5に示すように、モデル4におけるセンサ1は、モデル1から他方のセンス電極E2と、他方のドライブ電極E4とが取り除かれた構成を有している。一方のドライブ電極E3が接続された端子P3に対して駆動パルスが印加される。マルチプレクサ13は、センス電極E1が接続された端子P1と、ドライブ電極E3が接続された端子P3を選択する。相互容量検出は一方のセンス電極E1からのみ行われるシングル入力となる。センス電極E1は入力ラインL1を介してサンプルホールド部21に接続される。モデル4のセンサ1は、主にタッチパッドやタッチパネルに使用される。
【0028】
(モデル5)
図6に、容量タイプが自己容量であり差動入力型のセンサを対象センサ1とした場合の静電容量検出回路10の回路構成が示されている。
図2に示すモデル1と同一部分には同一符号を付している。
図6に示すように、モデル5におけるセンサ1は、ドライブ電極E3、E4が取り除かれていて、センス電極E1、E2で構成されている。マルチプレクサ13は、センス電極E1が接続された端子P1とセンス電極E2が接続された端子P2を差動入力ラインL1、L2に接続するように選択する。
【0029】
(モデル6)
図7に、容量タイプが自己容量でありシングル入力型のセンサを対象センサ1とした場合の静電容量検出回路10の回路構成が示されている。
図2に示すモデル1と同一部分には同一符号を付している。
図7に示すように、モデル6におけるセンサ1は、他方のセンス電極E2、ドライブ電極E3、E4が取り除かれている。マルチプレクサ13は、センス電極E1が接続された端子P1を選択する。センス電極E1は入力ラインL1を介してサンプルホールド部21に接続される。モデル6のセンサ1は、主にタッチスイッチに使用される。
【0030】
本実施の形態に係る静電容量検出回路10は、モデル1からモデル6の態様に対応して動作内容をそれぞれ切り替えることで、全モデルに対して共通の回路構成で相互容量及び自己容量検出が可能となる。
【0031】
次に、上記モデル1-6に対応した具体的な動作について説明する。
先ず、相互容量検出型のモデル1−4の動作について説明する。
図9は相互容量検出型のモデル1−4に対応したタイミングチャートである。以下、モデル1の動作を例に説明するが、各モデル2−4のセンサ構成では、削除された電極が形成する静電容量を無視することでモデル1と同様の動作になる。
【0032】
センサリセット開始位置(T1)において、第1のリセットスイッチSW1をオン(閉じる)すると共に、サンプルホールド部21におけるスイッチSW3−1をオンする。これにより、センサ1の容量(C12等)とサンプルホールド部21のサンプルホールド容量Csh(Csh11、Csh21)が基準電圧Vrefで初期化される。センサリセット終了位置(T2)において、第1のリセットスイッチSW1をオフ(開く)して、センサ1及びサンプルホールド容量Cshの初期化を終了する。
【0033】
フェーズ1の開始位置(T3)において、駆動回路12からセンサ1のドライブ電極E3、E4に極性の異なる駆動信号を印加してドライブ電極E3、E4を駆動する。
図9に示す例では、駆動信号の立ち上がりによってドライブ電極E3、E4が駆動される。ドライブ電極E3、E4に極性の異なる駆動信号を印加することにより、ドライブ電極E3、E4とセンス電極E1、E2との間に形成される静電容量に対応した電位差がセンス電極E1、E2側に発生する。このとき、センス電極E1、E2から見たセンサ1の合成容量に差が発生していれば、サンプルホールド容量Csh11、Csh21の両端に電位差が発生し電荷が充電される。その後、センサ切断位置(T4)でサンプルホールド部21におけるスイッチSW3−1をオフする。これにより、センサ1とサンプルホールド容量Csh11、Csh21を切断する。さらに、後段回路に接続開始位置(T5)でスイッチSW4−1をオンすることで、サンプルホールド容量Csh11、Csh21に充電された電荷(電位差)を後段回路に転送する。フェーズ1の終了位置(T6)において、スイッチSW4−1をオフすることで、サンプルホールド容量Csh11、Csh21と後段回路を切断する。ここまでがフェーズ1となる。
【0034】
次に、センサリセット開始位置開始位置(T7)において、フェーズ1のリセット開始位置(T1)と同様に、第1のリセットスイッチSW1をオンすると共に、サンプルホールド部21におけるスイッチSW3−2をオンする。これにより、センサ1の容量とサンプルホールド部21のサンプルホールド容量Csh(Csh12、Csh22)が基準電圧Vrefで初期化される。センサリセット終了位置(T8)において、第1のリセットスイッチSW1をオフして、センサ1及びサンプルホールド容量Cshの初期化を終了する。
【0035】
フェーズ2の開始位置(T9)において、駆動回路12からフェーズ1とは逆極性となる駆動信号を印加してドライブ電極E3、E4を駆動する。よって、フェーズ2では、フェーズ1とは逆極性の電位差(電荷)が発生する。
図9に示す例では、駆動信号の立ち下がりによってドライブ電極E3、E4が駆動される。ドライブ電極E3、E4に極性の異なる駆動信号を印加することにより、ドライブ電極E3、E4とセンス電極E1、E2との間に形成される静電容量に対応した電位差がセンス電極E1、E2側に発生する。このとき、センス電極E1、E2から見たセンサ1の合成容量に差が発生していれば、サンプルホールド容量Csh12、Csh22の両端に電位差が発生し電荷が充電される。その後、センサ切断位置(T10)でサンプルホールド部21におけるスイッチSW3−2をオフする。センサ1とサンプルホールド容量Csh12、Csh22を切断した後、後段回路に接続開始値(T11)でスイッチSW4−2をオンすることで、サンプルホールド容量Csh12、Csh22に充電された電荷(電位差)を後段回路に転送する。フェーズ2の終了位置(T12)において、スイッチSW4−2をオフすることで、サンプルホールド容量Csh12、Csh22と後段回路を切断する。ここまでがフェーズ2となる。フェーズ1に戻って同様の処理を繰り返す。以上の結果、ドライブ電極とセンス電極との間に形成される相互容量が検出されることになる。
【0036】
サンプルホールド部21は、サンプリングされた信号を偶数回と奇数回とで極性を反転して効率よく後段回路へ転送するチョッピング回路を形成する。また、フェーズ1によるセンサ出力はサンプルホールド容量Csh11、Csh21に保持され、フェーズ2によるセンサ出力はサンプルホールド容量Csh12、Csh22に保持されるが、フェーズ1で後段回路に出力されるのはサンプルホールド容量Csh11とサンプルホールド容量Csh12の電位差であり、フェーズ2で後段回路に出力されるのはサンプルホールド容量Csh21とサンプルホールド容量Csh22の電位差となる。つまり、1つ前のフェーズのセンサ出力と現在のフェーズのセンサ出力を同時に後段回路に転送することになる。
図8に示す2行2列のマトリクス構成の場合、1つ前から現在までのフェーズのセンサ出力を後段回路に一度に出力する移動平均効果が期待できる。例えば、4行4列構成の場合であれば、3つ前から現在までのフェーズのセンサ出力を後段回路に出力する移動平均効果が期待できる。
【0037】
次に、自己容量検出型のモデル5、6の動作について説明する。
自己容量検出型のモデル5、6の場合、ドライブ電極が存在しないので、相互容量の代わりに内部可変容量Cx1、Cx2に駆動信号Sig1を印加して入力ラインL1、L2に電荷量を注入する。また、センス電極のリセット電圧に極性を持たせ、第1のリセットスイッチSW1によるリセットは電源電圧Vd(第1の固定電圧)、第2のリセットスイッチSW2によるリセットはGND(第2の固定電圧)とするが、相互容量検出時と同様にSW2は使用せず、SW1によるリセットを基準電圧Vrefのみで実施することでも可能となる。
【0038】
図10は自己容量検出型のモデル5、6に対応したタイミングチャートである。以下、モデル5の動作を例に説明するが、モデル5のセンサ構成では、削除された電極が形成する静電容量を無視することでモデル5と同様の動作になる。
【0039】
センサリセット開始位置(T1)において、第1のリセットスイッチSW1をオンすると共にサンプルホールド部21におけるスイッチSW3−1をオンする。このとき、内部可変容量Cx1、Cx2の一方の電極には差動入力ラインL1、L2から電源電圧Vdが印加されていて、内部可変容量Cx1、Cx2の他方の電極にはハイレベルの駆動信号sig1によって例えば電源電圧Vdと同一電圧に維持される。これにより、センサ1の容量C12とサンプルホールド部21のサンプルホールド容量Csh(Csh11、Csh21)が電源電圧Vdで初期化され、両端に電源電圧Vdが印加される内部可変容量Cx1、Cx2には電荷は蓄積されない。センサリセット終了位置(T2)において、第1のリセットスイッチSW1をオフして、センサ1及びサンプルホールド容量Cshの初期化を終了する。
【0040】
フェーズ1の開始位置(T3)において、内部可変容量Cx1、Cx2の他方の電極に印加している駆動信号Sig1をローレベルに遷移させて電源電圧VdからGNDに変化させる。内部可変容量Cx1、Cx2の他方の電極をGNDにすることで電位差が生じ、電源電圧Vdで充電されていたセンサ1の合成容量の電荷が内部可変容量Cx1、Cx2へ転送される。例えば、被検出体Subがいずれか一方の電極E1またはE2に接していれば内部可変容量Cx1、Cx2に電圧差が生じてサンプルホールド容量Csh11、Csh21に電位差に応じた電荷が蓄積される。その後、センサ切断位置(T4)でサンプルホールド部21におけるスイッチSW3−1をオフし、さらに、後段回路の接続開始位置(T5)でスイッチSW4−1をオンすることで、サンプルホールド容量Csh11、Csh21に充電された電荷(電位差)を後段回路に転送する。フェーズ1の終了位置(T6)において、スイッチSW4−1をオフすることで、サンプルホールド容量Csh11、Csh21と後段回路を切断する。ここまでがフェーズ1となる。
【0041】
次に、センサリセット開始位置(T7)において、第2のリセットスイッチSW2をオンすると共に、サンプルホールド部21におけるスイッチSW3−2をオンする。これにより、センサ1の容量C12とサンプルホールド部21のサンプルホールド容量Csh(Csh12、Csh22)がGNDで初期化される。センサリセット終了位置(T8)において、第2のリセットスイッチSW2をオフして、センサ1及びサンプルホールド容量Cshの初期化を終了する。
【0042】
フェーズ2の開始位置(T9)において、フェーズ1とは逆極性となる駆動信号Sig1を印加して、内部可変容量Cx1、Cx2の他方の電極をGNDから電源電圧Vdに変化させる。これにより、内部可変容量Cx1、Cx2が充電されて内部可変容量Cx1、Cx2の蓄積電荷に応じた電位差で差動入力ラインL1、L2が駆動される。このとき、センス電極E1、E2から見たセンサ1の合成容量に差が発生していれば、サンプルホールド容量Csh12、Csh22の両端に電位差が発生し電荷が充電される。その後、センサ切断位置(T10)でサンプルホールド部21におけるスイッチSW3−2をオフする。センサ1とサンプルホールド容量Csh12、Csh22を切断した後、後段回路の接続開始位置(T11)でスイッチSW4−2をオンすることで、サンプルホールド容量Csh12、Csh22に充電された電荷(電位差)を後段回路に転送する。フェーズ2の終了位置(T12)において、スイッチSW4−2をオフすることで、サンプルホールド容量Csh12、Csh22と後段回路を切断する。ここまでがフェーズ2となる。フェーズ1に戻って同様の処理を繰り返す。以上の結果、センス電極とGND(又は他のセンス電極)との間に形成される自己容量が検出されることになる。
【0043】
以上のような、本実施の形態に係るモデル1−6の静電容量検出回路10によれば、次のような作用効果を奏することができる。
【0044】
ノイズ耐性の点では、センサ1の出力段からサンプルホールド部21の入力段までの間で差動入力構成を採るモデル1、3、5によれば、センサ1から入力されるコモンモードノイズのキャンセルが可能となる。その結果、センサ1の拾う外来ノイズや、温度変化等による外部環境起因のオフセット成分ドリフトに対しても、コモンモード化してノイズを抑制することができる。また、相互容量検出型の構成を採るモデル1−4によれば、ドライブ電極(E3、E4)を矩形波の駆動信号で駆動し、駆動信号の立上り及び立下りの両極性(エッジ)でサンプリングを実施する。これにより、同量、異符号の信号成分を奇数回、偶数回で得るチョッピング回路を実現している。あるノイズ電圧によってセンサ1に入力されたシングルエンドモードのノイズは奇数回、偶数回で同符号、同量とすると、チョッピング回路で信号を毎回反転させ後段回路に出力することでノイズがキャンセルできる。また、自己容量検出型の構成を採るモデル5、6では、回路内の可変容量Cxをパルス駆動することで、モデル1−4(
図2から
図5)で示す構成と同様にチョッピング回路にて信号成分のみを後段回路に出力する。これにより、シングルエンドモードノイズを抑制することができる。
【0045】
高感度化の点として、静電容量検出回路特有のC-V変換回路14の後段を一般的な増幅回路やフィルタ回路にできるメリットがある。モデル1−7においてサンプルホールド容量Cshにはサンプル毎にセンサ1の容量に応じた電荷(電位差)が蓄えられ、センサ1から切り離されると、電荷をホールドし、その電荷による電位差は後段の増幅回路へと入力される。この段階で、この電位差は、一般的な増幅回路およびフィルタ回路への入力が可能となり、ΔΣ型AD変換器等、ノイズ抑制に有効な回路との接続も可能となる。また、センサ1の出力からノイズ成分やオフセット成分をキャンセルし、回路の持つダイナミックレンジを有効に信号成分の増幅に割り当てられることが望ましい。この点で、差動入力構成を採るモデル1,3,5によれば、センサ1から差動入力構成となっており、対称形のセンサ1においてオフセットの成分はキャンセルされ理想ゼロとなる。このため、被検出体Subの近接、接触による容量の変化成分のみを後段回路に入力できるため、回路のダイナミックレンジを有効に増幅に使用することができる。また、シングル入力構成となるモデル2、4、6では、センサ1がシングルエンド構成のため、センサ1が持つ容量がオフセット成分となり、微小な容量変化の増幅には、同時に大きなオフセット成分の無駄な増幅が必要となる。これを回避する為、内部可変容量Cx1、Cx2をアンバランスに設定しパルス駆動することで、センサ1のオフセット成分をキャンセル可能とし、差動型センサと同様にダイナミックレンジを有効に増幅に使用することが出来る。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されているセンサ電極の大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。