(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
A1.スパークプラグの構成:
図1は、本発明の第1実施形態としての製造方法により製造されたスパークプラグの部分断面図である。スパークプラグ300は、軸線OLに沿った細長形状を有している。
図1において、軸線OLの右側は、外観正面図を示している。
図1において、軸線OLの左側は、スパークプラグ300の中心軸を通る断面でスパークプラグ300を切断した断面図を示している。なお、以下では、軸線OLに沿った
図1の下方側(後述する接地電極11が配置されている側)を先端側と呼び、軸線OLに沿った
図1の上方側(後述する端子金具40が配置されている側)を後端側と呼ぶ。
【0015】
スパークプラグ300は、絶縁碍子30と、中心電極20と、主体金具50と、接地電極11と、端子金具40とを備えている。中心電極20は絶縁碍子30によって保持され、絶縁碍子30は主体金具50によって保持される。接地電極11は主体金具50の先端側に取り付けられている。
【0016】
絶縁碍子30は、軸線OLと平行な軸孔12を備えた筒状の外観形状を有している。絶縁碍子30は、アルミナ等のセラミックス材料を焼成して形成された絶縁体である。絶縁碍子30は、中央胴部19と、後端側胴部18と、先端側胴部17と、脚長部13とを備えている。中央胴部19は、絶縁碍子30において、軸線OLに沿った中央部分に配置されており、他の部分よりも外径が大きい。後端側胴部18は、中央胴部19よりも後端側に配置されている。後端側胴部18は、端子金具40と主体金具50との間を絶縁する。先端側胴部17は、中央胴部19よりも先端側に配置されている。脚長部13は、先端側胴部17よりも先端側に配置されている。脚長部13の外径は、先端側胴部17の外径よりも小さい。
【0017】
中心電極20は、棒状の金属製部材であり、絶縁碍子30の軸孔12に収容され、先端側の一部が軸孔12から露出している。中心電極20の構造としては、例えば、母材の内部に、母材よりも熱伝導性に優れる芯材が埋設された構造を採用することができる。母材としては、例えば、ニッケルを主成分とするニッケル合金からなる材料を採用することができる。芯材としては、例えば、銅または銅を主成分とする合金からなる材料を採用することができる。
【0018】
主体金具50は、絶縁碍子30において、後端側胴部18の先端側の一部から脚長部13に亘る部分を包囲する略円筒形の金具である。主体金具50は、例えば、低炭素鋼などの金属からなる。主体金具50は、ネジ部52と、工具係合部51と、シール部54とを備えている。ネジ部52は、主体金具50の先端側に配置され、略円筒形の外観形状を有している。ネジ部52の表面には、ネジ山が形成されている。このネジ山は、スパークプラグ300をエンジンヘッド500に取り付ける際に、エンジンヘッド500のネジ孔201に螺合する。工具係合部51は、例えば、六角形の断面形状を有し、スパークプラグ300をエンジンヘッド500に取り付ける際に工具と勘合する。シール部54とエンジンヘッド500との間には、板体を折り曲げて形成した環状のガスケット5が嵌挿される。主体金具50は、主体金具50の後端部53がかしめられることにより、絶縁碍子30に組み付けられる。
【0019】
接地電極11は、屈曲した棒状の金属製部材である。接地電極11の構造は、例えば、中心電極20と同様な構造とすることができる。すなわち、例えば、ニッケル合金からなる母材に、銅または銅を主成分とする合金からなる芯材が埋設された構造を採用することができる。接地電極11は、一方の端部が主体金具50の先端面57に溶接されており、他方の端部が中心電極20の先端部と対向するように屈曲されている。接地電極11において、中心電極20の先端部と対向する部分には、電極チップ60が設けられている。中心電極20の先端部と電極チップ60との間には、火花放電のための間隔(火花ギャップ)が形成されている。電極チップ60は、プラチナ等の貴金属からなり、耐火花消耗性や耐酸化消耗性を向上させる。
【0020】
端子金具40は、先端側が絶縁碍子30の軸孔12に収容され、後端部が軸孔12から露出している。端子金具40には、図示しない高圧ケーブルが接続され、高電圧が印加される。
【0021】
A2.スパークプラグの製造方法:
図2は、本発明の第1実施形態としてのスパークプラグの製造方法の手順を示すフローチャートである。まず、接地電極用の材料(電極材料)を用意する(ステップS105)。かかる電極材料としては、ニッケル合金からなる母材に、銅または銅を主成分とする合金からなる芯材が埋設された構造を有する直線棒状の部材を採用することができる。次に、ステップS105で用意された電極材料を切断する(ステップS110)。本実施形態では、切断装置を用いて電極材料を切断する。
【0022】
図3は、ステップS110の詳細手順を示すフローチャートである。
図4は、ステップS110で用いられる切断装置の概略構成を示す説明図である。
図3に示すように、電極材料の切断処理(ステップS110)では、まず、電極材料を切断装置の所定位置に配置する(ステップS205)。
【0023】
図4に示すように、切断装置100は、可動刃110と、固定刃120と、固定台121と、第1エアシリンダ111と、第2エアシリンダ112と、横押さえ部130と、第3エアシリンダ140と、下押さえ部150と、第4エアシリンダ151と、上押さえ部160と、第5エアシリンダ161とを備えている。切断装置100は、可動刃110と固定刃120とにより電極材料10を剪断する。
【0024】
可動刃110は、板状の外観形状を有している。可動刃110において、水平方向の一端部(+X方向の端部)には、切れ刃が形成されている。可動刃110は、第1エアシリンダ111及び第2エアシリンダ112により、鉛直方向(Z軸方向)及び水平方向(X軸方向)に移動することができる。可動刃110は、例えば、超硬合金により構成することができる。なお、超硬合金に代えてセラミックス材料により形成してもよい。また、切れ刃部分をダイヤモンドにより形成することもできる。初期状態における可動刃110の位置は、
図4に示すように、固定刃120に対して鉛直上方(+Z方向)の位置であって、水平方向において後述する固定刃120の孔122と重ならない位置である。
【0025】
固定刃120は、板状の外観形状を有しており、厚さ方向(Z軸方向)に貫通する孔122を備えている。固定刃120は、固定台121の上面に固定されている。固定刃120は、可動刃110と同じ材料により形成することができる。なお、固定刃120を、可動刃110とは異なる材料により形成してもよい。孔122の上端寄り部分の内径は、電極材料10の内径よりも若干大きい。固定台121は、固定刃120を固定して支持する。固定台121は厚さ方向(Z軸方向)に貫通する孔123を備えている。孔123は、固定刃120の孔122と鉛直方向に接続されている。ステップS205では、2つの孔122,123が連なって形成された孔に、電極材料10が収容される。
【0026】
固定刃120と固定台121との境界部分には、X軸方向に沿った孔131が形成されている。孔131の一端は、孔122及び孔123と繋がっており、孔131の他端は、固定刃120及び固定台121の−X軸方向の端面に達している。
【0027】
第1エアシリンダ111は、可動刃110と接続されており、可動刃110を鉛直方向に移動(上昇及び加工)させる。第2エアシリンダ112は、第1エアシリンダ111を水平方向に移動させる。前述のように、可動刃110は第1エアシリンダ111に接続されているため、第2エアシリンダ112は、第1エアシリンダ111と共に可動刃110を水平方向に移動させ得る。なお、以下では、第1エアシリンダ111及び可動刃110が固定刃120に対して水平方向に沿って近づく動きを「前進」と呼び、第1エアシリンダ111及び可動刃110が固定刃120から水平方向に沿って遠ざかる動きを「後退」と呼ぶ。
【0028】
横押さえ部130は、棒状の部材であり、孔131に収容されている。横押さえ部130は、孔122及び孔123において、電極材料10を+X方向に加圧し得る。第3エアシリンダ140は、横押さえ部130の長手方向の一方の端部(−X方向の端部)と接続されており、横押さえ部130をX軸方向に移動させる。電極材料10は、横押さえ部130により+X軸方向に加圧されることにより、孔122及び孔123の内壁面に押し当てられて、X軸方向の位置ずれが規制される。
【0029】
下押さえ部150は、棒状の部材であり、孔123の鉛直下方において、長手方向がZ軸方向と平行となるように配置されている。下押さえ部150は、電極材料10における鉛直下方側の端面を加圧し得る。第4エアシリンダ151は、下押さえ部150に接続されており、下押さえ部150をZ軸方向に沿って移動(上昇及び下降)させる。
【0030】
上押さえ部160は、棒状の部材であり、孔122の鉛直上方において、長手方向がZ軸方向と平行となるように配置されている。上押さえ部160は、電極材料10における鉛直上方側の端面を加圧し得る。第5エアシリンダ161は、上押さえ部160に接続されており、上押さえ部160をZ軸方向に移動(上昇及び下降)させる。
【0031】
なお、上述した可動刃110は、請求項における第2の刃及び接触刃に相当する。また、固定刃120は、請求項における第1の刃に相当する。
【0032】
図3に示すように、電極材料10が切断装置100の所定位置に配置されると、電極材料10を水平方向及び鉛直方向に加圧して支持する(ステップS210)。具体的には、第3エアシリンダ140を駆動させて横押さえ部130を+X方向に移動させ、電極材料10を、孔122及び孔123の内壁面に押し付ける。また、第4エアシリンダ151を駆動させて下押さえ部150を電極材料10に当接させ、下押さえ部150により電極材料10を+Z方向に加圧する。また、第5エアシリンダ161を駆動させて上押さえ部160を電極材料10に当接させ、上押さえ部160により電極材料10を−Z方向に加圧する。このとき、下押さえ部150または上押さえ部160の移動量を調整することにより、電極材料10の切断位置を調整することができる。これにより、切断後における電極材料10の長手方向の長さを調節することができる。なお、本実施形態では、切断装置100に配置された電極材料10のうち、切断後に孔122及び孔123に残存する部分が、接地電極11として用いられる。
【0033】
図3に示すように、電極材料10を支持した後(ステップS210の後)、第1エアシリンダ111を駆動させて可動刃110を鉛直下方に加圧すると共に、第2エアシリンダ112を駆動させて第1エアシリンダ111及び可動刃110を前進させ、電極材料10を切断する(ステップS215)。
【0034】
図5は、ステップS215実行中における可動刃110及び固定刃120の詳細構成を示す説明図である。初期状態において、固定刃120は可動刃110の鉛直下方に位置するため、可動刃110は、ステップS215において鉛直下方に加圧されると、固定刃120に押し付けられる。換言すると、可動刃110は、固定刃120に押し付けられるように加圧される。したがって、可動刃110は、ステップS215において、固定刃120に押し付けられた状態のまま、+X方向に移動する。このため、電極材料10を剪断する際に、可動刃110と固定刃120との間に隙間が生じないので、電極材料10の切断面の縁におけるバリの発生を抑制できる。加えて、可動刃110と固定刃120との間に隙間が無い状態のまま剪断が実行されるので、可動刃110と固定刃120との間の隙間の大きさが変動することにより切断面が粗くなることを抑制できる。
【0035】
なお、上述したステップS215において、可動刃110に対する加圧方向は、2つの刃(可動刃110及び固定刃120)により切断する方向d1(切断方向d1:+X方向)に対し垂直な方向と言える。また、かかる加圧方向は、2つの刃(可動刃110及び固定刃120)が互いに当接した後における可動刃110の移動方向(+X方向)と垂直な方向と言える。また、かかる加圧方向は、切断により生じる切断面と垂直な方向と捉えることができる。
【0036】
図3に示すように、電極材料10の切断が完了した後(ステップS215の後)、切断により生じた電極材料10の上方側の切断片を取り除く(ステップS220)。次に、第1エアシリンダ111を駆動させて可動刃110を鉛直上方に移動させながら、第2エアシリンダ112を駆動させて可動刃110(及び第1エアシリンダ111)を後退させる(ステップS225)。
【0037】
図6は、ステップS225の実行前及び実行中における切断装置100の構成を示す説明図である。
図6(a)は、ステップS225の実行前(ステップS220の実行後)における切断装置100の構成を示し、
図6(b)は、ステップS225の実行中における切断装置100の構成を示す。
【0038】
図6(a)に示すように、ステップS225の実行前(ステップS220の実行後)において、可動刃110の下面は、電極材料10の下方側の切断片14の上端面と接している。切断片14は、後に接地電極11として用いられる。
【0039】
ステップS225の実行中において、可動刃110は、鉛直上方に移動しつつ、後退する。したがって、
図6(b)に示すように、可動刃110は、ステップS225の実行中において、斜め上方に移動することとなる。
【0040】
図7は、ステップS225の実行中における切断片14の切断面の周囲を拡大して示す説明図である。
図7に示すように、ステップS225の実行中において、可動刃110は、斜め上方に移動するため、切断片14の切断面S1と接することなく後退する。このため、ステップS225の実行中において、可動刃110によって切断面S1が擦られることを抑制できるので、可動刃110と切断面S1との間の摩擦力により、切断片14の先端部が−X方向に撓んで変形することを抑制できる。以上の切断工程(ステップS110)により、接地電極11(切断片14)が得られる。
【0041】
図2に示すように、電極材料の切断処理(ステップS110)が完了すると、主体金具50と、絶縁碍子30と、中心電極20とを用意する(ステップS115)。主体金具50に接地電極11(切断片14)を接続する(ステップS120)。主体金具50と接地電極11との接続は、例えば、抵抗溶接により実現できる。接地電極11の先端(主体金具50に接続された側とは反対側の端部)を、所定の工具を用いて曲げ加工する(ステップS125)。なお、前述のステップS120またはステップS125において、電極チップ60を接地電極11に接合させることができる。
【0042】
主体金具50に中心電極20と絶縁碍子30とを挿入する(ステップS130)。ステップS130の具体的な手法としては、中心電極20を絶縁碍子30に組み付けたものを主体金具50に挿入する方法と、絶縁碍子30を主体金具50に挿入した後に、中心電極20を挿入する方法とのいずれを採用できる。端子金具40を絶縁碍子30に取り付ける(ステップS135)。主体金具50を、所定の工具を用いて加締め加工することにより、絶縁碍子30に固定する(ステップS140)。主体金具50のネジ部52にガスケット5を装着する(ステップS145)。
【0043】
以上説明した第1実施形態のスパークプラグの製造方法によると、ステップS215において可動刃110を鉛直下方(固定刃120に向かう方向)に加圧するので、電極材料10を切断する際に、可動刃110が固定刃120に押し付けられた状態を維持できる。このため、電極材料10を切断する際に、可動刃110と固定刃120との間に隙間が生じないので、電極材料10の切断面の縁におけるバリの発生を抑制できる。加えて、可動刃110と固定刃120との間に隙間が無い状態のまま剪断を実行することができるので、切断面S1を平滑にすることができる。このように、切断バリの発生を抑制し、また、切断面S1の平滑化を実現できるので、切断面S1を溶接面として主体金具50に電極材料10を溶接した場合、かかる溶接部分の強度を向上させることができる。
【0044】
また、可動刃110を初期状態の位置に戻す際に(ステップS225において)、可動刃110を鉛直上方に移動させながら後退させるので、可動刃110を切断片14の切断面S1と接触させずに後退させることができる。このため、可動刃110と切断面S1との間の摩擦力により、切断片14の先端部が−X方向に撓んで変形することを抑制できる。
【0045】
また、横押さえ部130によって電極材料10を水平方向に支持することにより電極材料10の水平方向の位置ずれを規制するので、切断片14において、切断面S1と外周側面との間の角度を一定(例えば90度)に保つことができると共に切断面S1を平滑化できる。また、下押さえ部150及び上押さえ部160により、電極材料10を垂直方向に支持することにより電極材料10の鉛直方向の位置ずれを規制するので、切断片14の長手方向の長さのばらつきを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態では、可動刃110と固定刃120とが接触することによって可動刃110又は固定刃120において接触面が磨耗し得る。しかしながら、ステップS215において可動刃110を鉛直下方に加圧するので、接触面が磨耗した状態においても、可動刃110と固定刃120との間における隙間の発生を抑制できる。また、電極材料10を切断する際の可動刃110と固定刃120との間のクリアランスの調整を省略できるので、スパークプラグ300の製造効率を向上させることができる。
【0047】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における電極材料の切断処理の手順を示すフローチャートである。第2実施形態のスパークプラグの製造方法は、電極材料の切断処理において、ステップS225に代えて、ステップS230及びステップS235を実行する点において、第1実施形態のスパークプラグの製造方法と異なり、他の手順は第1実施形態と同じである。
【0048】
切断により生じた電極材料10の上方側の切断片を取り除いた後(ステップS220の後)、第1エアシリンダ111を駆動させて可動刃110を鉛直上方に移動させる(ステップS230)。その後、第2エアシリンダ112を駆動させて可動刃110を後退させる(ステップS235)。
【0049】
以上説明した第2実施形態のスパークプラグの製造方法は、第1実施形態のスパークプラグの製造方法と同様な効果を有する。第2実施形態のスパークプラグの製造方法では、可動刃110を収納する際に、先ず可動刃110を鉛直上方に移動させておき、その後、可動刃110を後退させる。このため、可動刃110を、切断片14の切断面S1と接することなく後退させることができる。したがって、可動刃110によって切断面S1が擦られることを抑制できるので、可動刃110と切断面S1との間の摩擦力により、切断片14の先端部が−X方向に撓んで変形することを抑制できる。
【0050】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における切断装置の概略構成を示す説明図である。第3実施形態の切断装置は、固定台121に代えて固定台121aを備えている点、固定台回転軸310を備えている点、固定刃120を4つ備えている点、および図示しない回転台駆動部を備えている点において、第1実施形態の切断装置100と異なり、他の構成は切断装置100と同じである。なお、
図9では、固定台121a及び固定刃120を主として表しており、図示の便宜上、他の構成要素(可動刃110と、各エアシリンダ111,112,140,151,161と、各押さえ部130,150,160)は省略している。
【0051】
固定台121aは、上面(固定刃120が固定される面)が円形の円盤状の部材であり、中心CXが、固定台回転軸310の中心軸と一致するように配置されている。固定台121aは、固定台回転軸310と接続されており、図示しない固定台駆動部により、固定台回転軸310を介して回転駆動される。
【0052】
固定台121aの上面には、円周に沿って4つの固定刃120が固定されている。
図9に示すように、4つの固定刃120は、それぞれ、円周に沿って隣接する他の固定刃120に対して、中心CXから見て90度だけずれて配置されている。固定台121aは、90度回転して停止するように、図示しない固定台駆動部により制御される。したがって、固定台121aが停止した状態において、固定刃120が配置される位置は固定されている。
図9では、このような位置として、位置Aと、位置Bと、位置Cとを示している。位置Bは、位置Aに対して、中心CXから見て90度ずれた位置に相当する。同様に、位置Cは、位置Bに対して、中心CXから見て90度ずれた位置に相当する。
【0053】
位置Aには、電極材料10を固定刃120に収容するための図示しない工具が配置されている。位置Bには、可動刃110と、各エアシリンダ111,112,140,151,161と、各押さえ部130,150,160が配置されている。位置Cには、接地電極11(切断片14)を、固定刃120から取り除くための図示しない工具が配置されている。
【0054】
本実施形態では、位置Aにおいて、前述のステップS205が実行される。また、位置Bにおいて、ステップS210,S215,S220,S225が実行される。また、位置Cにおいて、切断処理により完成した接地電極11(切断片14)を固定刃120から取り除く処理が行われる。
【0055】
このような構成により、本実施形態では、複数の電極材料10を対象とした切断処理を同時に実行することができる。例えば、位置Cにおいて、電極材料10(以下「電極材料C」と呼ぶ)を切断して得られた接地電極11(切断片14)の取外しが行われるのと並行して、位置Bにおいて、電極材料Aとは異なる電極材料10(以下、「電極材料B」と呼ぶ)を対象として、ステップS210〜S225が実行され、また、位置Aにおいて、電極材料B,Cとは異なる電極材料10(以下、「電極材料A」と呼ぶ)を固定刃120に取り付けることができる。各位置A,B,Cにおいて、実行すべき工程がすべて完了したら、固定台121aが時計回りと反対に90度だけ回転される。これにより、例えば、固定刃120に取り付けられた電極材料Aは位置Bに移動し、位置Bにおいて、電極材料Aを対象としてステップS210〜S225が実行されることとなる。
【0056】
以上説明した切断装置を用いた第3実施形態のスパークプラグの製造方法は、第1実施形態のスパークプラグの製造方法と同様な効果を有する。加えて、第3実施形態の切断装置では、3つの位置A〜Cにおいて、それぞれ異なる処理が実行されるので、複数の電極材料10を対象として切断処理を同時に行うことができる。したがって、固定台121aを回転させる工程(時間)が増加するものの、全体としては、電極材料10の製造効率を向上させることができる。このため、スパークプラグの製造効率を向上させることができる。なお、本実施形態において、固定台121aは、請求項における円盤に相当する。
【0057】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態における切断装置の概略構成を示す説明図である。第4実施形態の切断装置は、互いに異なる3種類の固定刃120a,120b,120cを備えている点、固定刃の数が12個である点において、
図9に示す第3実施形態の切断装置と異なり、他の構成は第3実施形態の切断装置と同じである。
【0058】
第1の固定刃120aと、第2の固定刃120bと、第3の固定刃120cとは、互いに孔122の内径の大きさが異なる。具体的には、第1の固定刃120aの孔122aの内径が最も小さく、第2の固定刃120bの孔122bの内径は2番目に大きく、第3の固定刃120cの孔122cの内径は最も大きい。このように、内径の大きさが異なる複数種類の固定刃120a,120b,120cを配置しているのは、切断装置100を、接地電極11の大きさが異なる複数種類のスパークプラグの製造に対応させるためである。
【0059】
図10に示すように、固定台121aには、4つの固定刃群Gが円周に沿って並んで配置されている。各固定刃群Gは、第1の固定刃120aと、第2の固定刃120bと、第3の固定刃120cとがこの順序で、円周に沿って並んだ構成を有している。したがって、固定台121aには、各種類の固定刃120a,120b,120cが、それぞれ4つずつ配置されている。円周方向に沿って隣接する固定刃は、中心CXから見て30度だけずれて配置されている。また、円周方向に沿って隣接する同じ種類の固定刃は、中心CXから見て90度だけずれて配置されている。
【0060】
以上説明した切断装置を用いた第4実施形態のスパークプラグの製造方法は、第3実施形態のスパークプラグと同様な効果を有する。加えて、第4実施形態の切断装置は、互いに孔の内径の大きさが異なる複数種類の固定刃を備えているので、接地電極11の大きさ(内径の大きさ)が異なる複数種類のスパークプラグの製造に対応することができる。例えば、
図10では、位置A,B,Cには、第1の固定刃120aが配置されているが、時計回りと反対に30度だけずれて停止するように、固定台121aを回転させることにより、位置A,B,Cに、第3の固定刃120cを配置させることができる。したがって、この場合、比較的大きな接地電極11を有するスパークプラグの製造に対応することができる。なお、本実施形態において、固定刃群Gは、請求項における刃群に相当する。
【0061】
E.変形例:
E1.変形例1:
各実施形態において、可動刃110と、固定刃120,120a,120b,120cとのうち、少なくとも一方において、他方の刃と対向する面に、摩擦抵抗を軽減するためのコーティングを施してもよい。かかるコーティングとしては、例えば、チタン、ダイヤモンド、セラミックス等のコーティングを採用することができる。このような構成により、ステップS215において、可動刃110と固定刃120との間の摩擦抵抗を軽減できるので、可動刃110または固定刃120の磨耗を抑制できる。このため、切断片14の形状安定化(平滑化)を図ることができる。
【0062】
E2.変形例2:
各実施形態において、横押さえ部130と、下押さえ部150と、上押さえ部160とのうち、少なくとも1つを省略すると共に、省略した押さえ部に対応するエアシリンダを省略してもよい。このような構成であっても、電極材料10を可動刃110及び固定刃120により切断することができる。
【0063】
E3.変形例3:
各実施形態のステップS215において、可動刃110に代えて、または、可動刃110に加えて固定刃120を移動させる構成を採用してもよい。可動刃110に変えて固定刃120を移動させる構成では、固定刃120を移動させる機構(例えば、エアシリンダ)を用意し、かかる機構を用いて、固定刃120を−X方向に移動させることができる。また、かかる機構を用いて、固定刃120を、+Z軸方向(すなわち、可動刃110に向かう方向)に加圧することにより、電極材料10の切断時における可動刃110と固定刃120との間に隙間が生じることを抑制できる。すなわち、一般には、固定刃120または可動刃110に対して、切断面と垂直な方向であって他方の刃に向かう方向に加圧する工程を、本発明のスパークプラグの製造方法に採用することができる。
【0064】
E4.変形例4:
第1,3,4実施形態のステップS225、および第2実施形態のステップS230,S235において、可動刃110に代えて、または、可動刃110に加えて切断片14を移動させる構成を採用してもよい。可動刃110に代えて切断片14を移動させる構成では、例えば、固定刃120と固定台121とを水平方向に移動させる機構(例えば、エアシリンダ)を用意し、かかる機構を用いて、固定刃120と固定台121と切断片14とを、+X方向に移動させると共に、第4エアシリンダ151を駆動して下押さえ部150を下方に移動させることにより、切断片14を−Z方向に移動させることができる。また、可動刃110と切断片14とをいずれも移動させる構成では、例えば、第4エアシリンダ151を駆動して下押さえ部150を下方に移動させることにより切断片14を−Z方向に移動させると共に、第2エアシリンダ112を駆動して可動刃110を後退させることもできる。これらの構成においても、可動刃110と切断片14の切断面S1とを接触させずに、可動刃110と切断面S1とを互いに離すことができる。このため、可動刃110と切断面S1との間の摩擦力により、切断片14の先端部が撓んで変形することを抑制できる。すなわち、一般には、可動刃110または切断片14を移動させて、可動刃110と切断片14とを相対的に遠ざける工程を、本発明のスパークプラグの製造方法に採用することができる。
【0065】
E5.変形例5:
各実施形態では、切断装置を用いた切断加工の対象は、接地電極11の材料であったが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、中心電極20の材料や、電極チップ60の材料を切断加工の対象とすることもできる。すなわち、一般には、中心電極と、接地電極と、電極チップとのうち、少なくともいずれか1つの材料を、本発明における切断加工の対象とすることができる。
【0066】
E6.変形例6:
各実施形態の切断装置では、電極材料10を切断する際に(ステップS215の実行の際に)、可動刃110を水平方向に移動させていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図4に示す切断装置100及び電極材料10を、時計回りと反対に90度回転させ、ステップS215において、可動刃110を垂直下方に移動させる構成を採用してもよい。このような構成においても、各実施形態の効果を奏することができる。
【0067】
E7.変形例7:
各実施形態では、ステップS215において、常に可動刃110を鉛直下方に加圧しながら前進させていたが、本発明はこれに限定されるものではない。ステップS215が開始されてから、可動刃110が電極材料10と接触するまでの間は加圧せず、可動刃110が電極材料10と接触した後に可動刃110を鉛直下方に加圧する構成を採用してもよい。この構成では、可動刃110が電極材料10に接触するまでの間に、可動刃110を固定刃120と接触させる程度まで下方に移動させておき、可動刃110が電極材料10と接触するまで可動刃110の鉛直下方への加圧を停止させておくこともできる。
【0068】
E8.変形例8:
各実施形態では、第1エアシリンダ111は、可動刃110を鉛直方向に移動させていたが、鉛直方向に代えて、斜め下方(+X方向成分及び−Z方向成分を有する方向)又は斜め上方(−X方向成分及び+Z方向成分を有する方向)に移動させてもよい。この構成では、ステップS215において、可動刃110を斜め下方に加圧することになる。この場合も、可動刃110は固定刃120に向かう方向に加圧されることになる。
【0069】
E9.変形例9:
第3実施形態では、固定刃120の数は4つであったが、2以上の任意の数とすることができる。同様に、第4実施形態では、固定刃群Gの数は4つであったが、2以上の任意の数とすることができる。また、第4実施形態では、各固定刃群Gに含まれる刃の種類は3つであったが、2以上の任意の数とすることができる。
【0070】
E10.変形例10:
各実施形態では、スパークプラグ300は、電極チップ60を備えていたが、電極チップ60を省略することもできる。また、各実施形態では、孔122,122a,122b,122cは、いずれも固定刃120,120a,120b,120cを厚み方向に貫通する貫通孔として構成されていたが、これに代えて、一端が塞がれた有底孔として構成してもよい。
【0071】
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。