(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ライン状に配列された複数の発熱素子を有するサーマルヘッドにより感熱媒体を加熱して前記発熱素子による画素の印字期間内において、前記発熱素子のオンおよびオフを繰り返して前記画素の階調を所定階調ずつ上げる印字装置において、
前記発熱素子の1回のオンおよびオフにより前記画素の階調を前記所定階調上げることが可能な、前記発熱素子をオンするオン時間である第1の時間および前記発熱素子をオフするオフ時間である第2の時間に従って、前記発熱素子のオンおよびオフを繰り返す第1モードと、前記発熱素子の1回のオンおよびオフにより前記画素の階調を前記所定階調上げることが可能な、前記第1の時間より長い前記オン時間である第3の時間および前記第2の時間より長い前記オフ時間である第4の時間に従って前記発熱素子のオンおよびオフを繰り返すとともに、前記印字期間内において前記感熱媒体に伝える熱エネルギーが、同一階調を前記第1モードで印字する場合と同じになるように、前記第1モードで同一の階調の前記画素を印字した場合における前記発熱素子の温度より低温で前記感熱媒体を加熱する第2モードと、のうち予め設定されたモードに従って、前記発熱素子のオンおよびオフを制御する制御部、
を備えた印字装置。
ライン状に配列された複数の発熱素子を有するサーマルヘッドにより感熱媒体を加熱して前記発熱素子による画素の印字期間内において、前記発熱素子のオンおよびオフを繰り返して前記画素の階調を所定階調ずつ上げる印字装置を制御するコンピュータを、
前記発熱素子の1回のオンおよびオフにより前記画素の階調を前記所定階調上げることが可能な、前記発熱素子をオンするオン時間である第1の時間および前記発熱素子をオフするオフ時間である第2の時間に従って、前記発熱素子のオンおよびオフを繰り返す第1モードと、前記発熱素子の1回のオンおよびオフにより前記画素の階調を前記所定階調上げることが可能な、前記第1の時間より長い前記オン時間である第3の時間および前記第2の時間より長い前記オフ時間である第4の時間に従って前記発熱素子のオンおよびオフを繰り返すとともに、前記印字期間内において前記感熱媒体に伝える熱エネルギーが、同一階調を前記第1モードで印字する場合と同じになるように、前記第1モードで同一の階調の前記画素を印字した場合における前記発熱素子の温度より低温で前記感熱媒体を加熱する第2モードと、のうち予め設定されたモードに従って、前記発熱素子のオンおよびオフを制御する制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、添付の図面を参照して、本実施形態にかかる印字装置およびプログラムについて説明する。
【0007】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態にかかる印字装置の概略構成について説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる印字装置の概略構成を示す側面図である。本実施形態にかかる印字装置1は、自装置のハウジング4の外部に設けられ連続紙2を保持する用紙保持部3から、連続紙2を、ハウジング4内部に引き込む。本実施形態では、用紙保持部3は、連続紙2を、回動自在な一対の用紙保持ローラ9に回動自在に保持している。そして、印字装置1は、引き込んだ連続紙2に対して、ハウジング4内に収納された印字機構5によって所定事項を印字する。ここで、連続紙2は、ロール状に巻き回され、加熱により発色する感熱紙(感熱媒体の一例)である。
【0008】
ハウジング4の内部には、連続紙2が給紙される給紙口6から、所定事項が印字された連続紙2が排出される排紙口7に向かって、連続紙2が搬送される通紙経路8が形成されている。印字装置1は、用紙保持ローラ9に回動自在に保持される連続紙2を、給紙口6から通紙経路8に引き込む。そして、印字装置1は、引き込んだ連続紙2に対して、通紙経路8の搬送過程において所定事項を印字して排紙口7から排紙する。
【0009】
通紙経路8には、搬送過程にある連続紙2に対して印字を行う印字機構5が設けられている。印字機構5は、ステッピングモータ10(
図2参照)によって回転駆動されるプラテンローラ11と、当該プラテンローラ11に通紙経路8を介して当接するサーマルヘッド12と、を備えている。サーマルヘッド12は、プラテンローラ11と平行に配置され、支軸13に回動自在に支持されたヘッド保持板14により保持されている。ヘッド保持板14は、図示しないスプリングによって、サーマルヘッド12がプラテンローラ11を押し付けている方向に付勢されている。
【0010】
本実施形態では、印字装置1は、通紙経路8において印字機構5の下流に配置されたラベル剥離板15を用いて台紙からラベルを剥離して排紙する剥離発行、連続紙2をそのままの形態で排紙する連続発行およびカッタユニット16を利用して1ラベル毎(または所定の単位)に連続紙2をカットして排紙するカット発行のいずれかの発行形態を選択可能である。
【0011】
次に、
図1および
図2を用いて、第1の実施形態にかかる印字装置1のハードウェア構成について説明する。
図2は、第1の実施形態にかかる印字装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
印字装置1は、CPU17(Central Processing Unit)等を有し、プラテンローラ11を回転駆動するためのステッピングモータ10やサーマルヘッド12等を制御するマイクロコンピュータ18を有している。マイクロコンピュータ18は、各種演算処理を実行して、印字装置1の各部を集中的に制御するCPU17を有している。また、マイクロコンピュータ18は、制御プログラムや各種データを読み出し可能に記憶するROM19(Read Only Memory)と、当該ROM19に記憶された制御プログラムを実行する際のワークエリアとして用いられ各種データを書き換え可能に記憶するRAM20(Random Access Memory)と、を備えている。CPU17とROM19とRAM20とは、システムバス21を介して接続されている。
【0013】
また、印字装置1は、印字機構5における印字動作のためにマイクロコンピュータ18に制御される各部として、ステッピングモータ10を制御するためのモータドライバ22と、サーマルヘッド12の制御を行うヘッド制御部としてのヘッドコントローラ40と、を備えている。モータドライバ22およびヘッドコントローラ40は、システムバス21を介してCPU17に接続されている。
【0014】
印字装置1は、ライン状に配列された複数の発熱素子24(
図3参照)を有するサーマルヘッド12によって連続紙2を加熱して主走査方向の印字を行い、連続紙2の搬送によるサーマルヘッド12に対する連続紙2の移動によって副走査方向の印字を行う。副走査方向の印字を行うために、印字装置1は、連続紙2の搬送タイミング等を検出する必要があるため、連続紙2を検出可能な透過型センサ25および反射型センサ26を通紙経路8に配置している。透過型センサ25および反射型センサ26は、I/Oポート28を介してシステムバス21に接続されている。ここで、透過型センサ25は、連続紙2として用いられたラベル用紙におけるラベル間の台紙部分の検出に用いられる。反射型センサ26は、連続紙2として用いられたタグ用紙に予め印字された位置検出用のマークの検出に用いられる。
【0015】
また、印字装置1のCPU17は、外部機器から転送された印字データを、インターフェース29を介して取り込み、インターフェース29を介して取り込んだ印字データに基づく画像を画像メモリ30に書き込む。そして、CPU17は、連続紙2に対する印字を行う際、画像メモリ30から、1ラインの画像の信号(以下、画像信号という)を読み出し、ヘッドコントローラ40に出力する。よって、インターフェース29および画像メモリ30は、システムバス21を介してCPU17に接続されている。
【0016】
さらに、印字装置1が備えるサーマルヘッド12のヘッド基板(図示しない)には、サーマルヘッド12が有する発熱素子24(
図3参照)の温度を検出するサーミスタと、当該サーミスタにより検出された発熱素子24の温度の検出結果をデジタル値に変換してCPU17に出力するADコンバータ(いずれも図示しない)と、が取り付けられている。
【0017】
ここで、
図3を用いて、第1の実施形態にかかる印字装置1が備えるサーマルヘッド12について説明する。
図3は、第1の実施形態にかかる印字装置が備えるサーマルヘッドの構成を示す図である。
【0018】
サーマルヘッド12は、図示しない電源回路により印加される電圧(例えば、24V)を、複数の発熱素子24(本実施形態では、432個の発熱素子24(24−1〜24−n)に選択的に印加することが可能である。本実施形態では、サーマルヘッド12は、図示しない電源回路により印加される電圧を、複数の発熱素子24に選択的に印加するためのスイッチ回路33として、複数の発熱素子24それぞれに対応して設けられた複数のトランジスタ31(31−1〜31−n)を備えている。そして、サーマルヘッド12は、各トランジスタ31のオンおよびオフを制御するためのANDゲート32(32−1〜32−n)を備えている。
【0019】
また、サーマルヘッド12は、ヘッドコントローラ40から入力されるクロック信号CLKを基準信号として動作するDタイプのフリップフロップ回路(FF回路)を備えるシフトレジスタ34−1,34−2,34−3を有している。シフトレジスタ34−1,34−2,34−3は、それぞれ144bitのレジスタである。各シフトレジスタ34は、432個の発熱素子24を3つに分けたうちのいずれかに対応する。
【0020】
シフトレジスタ34−1,34−2,34−3には、ヘッドコントローラ40において1ライン分の画像信号に基づいて生成され画素の階調に関する階調データが、サーマルヘッド12の1ライン分ずつシリアル伝送されてくる。そして、シフトレジスタ34−1,34−2,34−3に入力された階調データは、ラッチ回路35にパラレル転送される。各ラッチ回路35は、ヘッドコントローラ40からのデータラッチ信号LATCHの入力によって、シフトレジスタ34−1,34−2,34−3から入力された階調データをANDゲート32の一方の入力端子に入力する。
【0021】
ANDゲート32の他方の入力端子には、ヘッドコントローラ40により生成されたストローブ信号STBが入力される。これにより、ANDゲート32から出力信号が出力されて、トランジスタ31のベースに入力される。これにより、ANDゲート32に対応する各発熱素子24に電圧が印加されて、発熱素子24がオンする。
【0022】
次に、
図4を用いて、第1の実施形態にかかる印字装置1が備えるヘッドコントローラ40の構成について説明する。
図4は、第1の実施形態にかかる印字装置が備えるヘッドコントローラの構成を示すブロック図である。
【0023】
ヘッドコントローラ40は、発熱素子24による画素の印字期間Tの分割数を記憶する分割数レジスタ41と、当該分割数レジスタ41に記憶された分割数で印字期間Tを分割した分割周期毎に分割周期信号を出力する印字期間タイマ42と、を備えている。分割数レジスタ41に記憶される分割数は、画素を印字する際の印字モード(後述する)に応じて変更される。
【0024】
ヘッドコントローラ40は、印字期間タイマ42から出力された分割周期信号を受けて(言い換えると、分割周期毎に)、CPU17から入力される1ライン分の画像信号に基づいて、発熱素子24により印字する画素の階調を所定階調(本実施形態では、1階調)上げるか否かを表す階調データを生成する階調データ生成回路43を備えている。
【0025】
また、ヘッドコントローラ40は、階調データ生成回路43により生成された階調データを記憶するラインメモリ44と、ラインメモリ44への階調データの記憶を制御するラインメモリコントローラ45と、ラインメモリ44に記憶された階調データ,クロック信号CLK,データラッチ信号LATCHおよびストローブ信号STBを出力するタイミングコントローラ46と、を備えている。
【0026】
タイミングコントローラ46は、階調時間レジスタ46aを備えている。階調時間レジスタ46aは、分割周期内において、発熱素子24をオンするオン時間および発熱素子24をオフするオフ時間を記憶する。タイミングコントローラ46は、画素を印字する際の印字モード(後述する)に応じて、階調時間レジスタ46aに記憶されるオン時間およびオフ時間を変更する。
【0027】
タイミングコントローラ46は、印字期間T内において、分割周期毎に、階調時間レジスタ46aに記憶された第1の時間および第2の時間に従って分割周期内においてストローブ信号STBを出力するとともに、ラインメモリ44に記憶された階調データをサーマルヘッド12に出力する。これにより、タイミングコントローラ46は、印字期間T内において発熱素子24のオンおよびオフを繰り返して、発熱素子24により印字する画素の階調を所定階調(本実施形態では、1階調)ずつ上げる。本実施形態では、印字装置1は、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより、発熱素子24により印字する画素の階調を1階調ずつ上げているが、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより上げることが可能な階調の上限以下であれば、任意に設定された所定階調ずつ上げることができる。
【0028】
次に、本実施形態にかかる印字装置1において画素を印字する際の印字モードについて説明する。本実施形態にかかる印字装置1は、画素を印字する際の印字モードとして、通常モード(第1モード)と、当該通常モードよりも高画質の画素を印字可能な高画質モード(第2モード)と、を有している。
【0029】
ここで、通常モードは、分割周期内において発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調(本実施形態では、1階調)上げることが可能な、オン時間である第1の時間およびオフ時間である第2の時間に従って、発熱素子24のオンおよびオフを繰り返すモードである。ここで、第1の時間および第2の時間は、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調上げるために要するオン時間およびオフ時間それぞれの下限より長い時間である。
【0030】
通常モードによれば、少なくとも、画素の階調を所定階調上げるために要するオン時間の下限以上の時間、発熱素子24をオンして、画素の階調を所定階調上げることができるので、発熱素子24による加熱時間が短いことによる画素の印字不良を防止することができる。
【0031】
第1の時間は、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調上げるために要するオン時間の下限より長いオン時間であれば、印字装置1のユーザが図示しない操作部を介して任意に設定可能である。また、第2の時間も、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調上げるために要するオフ時間の下限より長いオフ時間であれば、印字装置1のユーザが図示しない操作部を介して任意に設定可能である。
【0032】
高画質モードは、分割周期内において第1の時間より長いオン時間および第2の時間より長いオフ時間に従って発熱素子24のオンおよびオフを繰り返すとともに、印字期間T内におけるオン時間と当該印字期間T内における発熱素子24の温度(表面温度)とに基づく発熱素子24に印加する印加エネルギーが第1モードと同じになるように、第1モードで同一の階調の画素を印字した場合における発熱素子24の温度の最大よりも発熱素子24の温度を下げるモードである。
【0033】
高画質モードによれば、発熱素子24の1回のオンにより連続紙2を加熱する時間を通常モードより長くして、発熱素子24から連続紙2へと熱エネルギーを伝える際の損失を減らすことができるので、通常モードによって同一の階調の画素を印字した場合と比較して画質を向上させることができる。
【0034】
高画質モードにおけるオン時間およびオフ時間は、印字期間Tに印字する画素の階調まで上げることができれば、第1の時間より長いオン時間および第2の時間より長いオフ時間を、印字装置1のユーザが図示しない操作部を介して任意に設定可能である。また、本実施形態では、印字装置1のユーザは、連続紙2に対する印字に先立って、図示しない操作部を介して通常モードまたは高画質モードを予め設定可能である。
【0035】
次に、
図5を用いて、第1の実施形態にかかる印字装置1における印字処理について説明する。
図5は、第1の実施形態にかかる印字装置における印字処理の流れを示すフローチャートである。
【0036】
タイミングコントローラ46は、ラインメモリ44に記憶された階調データ,クロック信号CLK,データラッチ信号LATCHおよびストローブ信号STBの出力に先立って、印字モードが通常モードであるか否かを判断する(ステップS501)。印字モードが通常モードであると判断した場合(ステップS501:Yes)、タイミングコントローラ46は、予め設定された第1の時間および第2の時間を階調時間レジスタ46aに記憶させる(ステップS502)。
【0037】
また、CPU17は、予め設定された第1の時間および第2の時間を合計した時間が分割周期となるように、分割数レジスタ41に記憶された分割数を更新する(ステップS503)。
【0038】
さらに、CPU17は、印字する画素の階調(例えば、8階調目)を印字可能な発熱素子24の温度(表面温度)を算出する(ステップS504)。そして、CPU17は、サーマルヘッド12のヘッド基板(図示しない)に取り付けられたサーミスタにより検出された発熱素子24の温度が当該算出した温度になるように、発熱素子24に印加する電圧を制御する。
【0039】
ここで、発熱素子24の温度を算出する方法の一例について説明する。印字装置1により印字する画素の階調(発色濃度D)と、発熱素子24に印加する印加エネルギーEと、連続紙2(感熱紙)の熱伝達率Aとは、式(1)に示す関係を有している。
D=E×A・・・(1)
【0040】
そして、印加エネルギーEは、印字期間Tと当該印字期間T内における発熱素子24の温度Th(t)とに基づいて、式(2)に従って算出される。
【数1】
【0041】
ここで、印字期間Tと当該印字期間T内における発熱素子24の温度Th(t)とに基づいて印加エネルギーEが算出され、かつ熱伝達率Aが同じ連続紙2に印字することを前提とした場合、印字する画素の階調(発色濃度D)は、印加エネルギーE(発熱素子24の温度Th(t))によって決定される。
【0042】
したがって、CPU17は、印加エネルギーEと連続紙2の熱伝達率Aとを乗算した値が、印字する画素の階調(発色濃度D)になるように、発熱素子24の温度Th(t)を算出する。
【0043】
次に、タイミングコントローラ46は、印字期間T内において、分割周期毎に、階調時間レジスタ46aに記憶された第1の時間および第2の時間に従って分割周期内においてストローブ信号STBを出力するとともに、ラインメモリ44に記憶された階調データをサーマルヘッド12に出力する(ステップS505)。これにより、印字期間T内において、第1の時間および第2の時間に従って、発熱素子24がオンおよびオフを繰り返して、CPU17から入力される1ライン分の画像信号に対応する画像の階調の画素を連続紙2に印字することができる。
【0044】
その後、タイミングコントローラ46は、画像メモリ30に書き込まれた画像の全てのラインの画像信号に基づく階調データを出力するまで、階調データおよびストローブ信号STBの出力を繰り返す(ステップS506:No)。
【0045】
一方、印字モードが通常モードではないと判断した場合(ステップS501:No)、すなわち印字モードが高画質モードであると判断した場合、タイミングコントローラ46は、第1の時間より長いオン時間および第2の時間より長いオフ時間を階調時間レジスタ46aに記憶させる(ステップS507)。
【0046】
また、CPU17は、第1の時間より長いオン時間および第2の時間より長いオフ時間を合計した時間が分割周期となるように、分割数レジスタ41に記憶された分割数を更新する(ステップS503)。
【0047】
さらに、CPU17は、発熱素子24に印加する印加エネルギーが、通常モードにおいて同一の階調(例えば、8階調目)の画素を印字する場合の印加エネルギーと同じになるように、印字する画素の階調を印字可能な発熱素子24の温度(すなわち、通常モードで同一の階調の画素を印字した場合における発熱素子24の温度の最大よりも低い温度)を算出する(ステップS504)。そして、CPU17は、サーマルヘッド12のヘッド基板(図示しない)に取り付けられたサーミスタにより検出された発熱素子24の温度が、算出した温度になるように、発熱素子24に印加される電圧を制御する。
【0048】
次に、タイミングコントローラ46は、印字期間T内において、分割周期毎に、階調時間レジスタ46aに記憶された第1の時間より長いオン時間および第2の時間より長いオフ時間に従って分割周期内においてストローブ信号STBを出力するとともに、ラインメモリ44に記憶された階調データをサーマルヘッド12に出力する(ステップS505)。これにより、印字期間T内において、第1の時間より長いオン時間および第2の時間より長いオフ時間に従って、発熱素子24がオンおよびオフを繰り返して、CPU17から入力される1ライン分の画像信号に対応する画像の階調の画素を連続紙2に印字することができる。
【0049】
以上により、CPU17およびタイミングコントローラ46は、通常モードおよび高画質モードのいずれかに従って、発熱素子24のオンおよびオフを制御する制御部として機能する。
【0050】
図6は、通常モードで印字する場合における、発熱素子の表面温度の変化と、発熱素子のオン時間およびオフ時間とを説明するための図である。
図7は、高画質モードで印字する場合における、発熱素子の表面温度の変化と、発熱素子のオン時間およびオフ時間とを説明するための図である。
図8は、通常モードにおける発熱素子のオン時間およびオフ時間と、高画質モードにおける発熱素子のオン時間およびオフ時間とを説明するための図である。
図6〜8に示す発熱素子24のオンおよびオフの制御は、発熱素子24のオンおよびオフを8回繰り返して、8階調目の画素を印字する場合の制御例である。
図6および
図7において、印字期間Tにおいて、発熱素子24をオンするオン時間をt
onNとし、発熱素子24をオフするオフ時間をt
offNとする。
【0051】
高画質モードにおけるオフ時間t
offNを通常モードにおけるオフ時間t
offNよりも長くすると、分割周期内における発熱素子24の冷却時間が長くなり発熱素子24の温度が、通常モードにおける発熱素子24の温度よりも下がる。そのため、通常モードと同様にして、発熱素子24のオンおよびオフを8回繰り返して8階調目の画素を印字するためには、高画質モードにおけるオン時間t
onNも、通常モードにおけるオン時間t
onNよりも長くする必要がある。
【0052】
そのため、タイミングコントローラ46は、
図6〜8に示すように、高画質モードにおけるオン時間t
onNおよびオフ時間t
offNを、通常モードにおけるオン時間t
onNおよびオフ時間t
offNよりも長くしている。これにより、通常モードと比較して、発熱素子24から連続紙2へと熱エネルギーを伝える時間を長くして、当該熱エネルギーの損失を減らすことができるので、通常モードによって同一の階調の画素を印字した場合と比較して画質を向上させることができる。
【0053】
その際、
図6および
図7に示すように、CPU17は、高画質モードにおける発熱素子24の温度を、通常モードにおける発熱素子24の温度の最大よりも低くしている。これにより、発熱素子24に印加する印加エネルギーを、同一の階調(8階調目)を通常モードで印字する場合の印加エネルギーと同じにすることができるので、高画質モードにおけるオン時間t
onNおよびオフ時間t
offNが通常モードにおけるオン時間t
onNおよびオフ時間t
offNより長くなっても、通常モードと同一の階調の画素を印字することができる。
【0054】
このように、第1の実施形態にかかる印字装置1によれば、発熱素子24の1回のオンにより連続紙2を加熱する時間を通常モードより長くして、発熱素子24から連続紙2へと熱エネルギーを伝える際の損失を減らすことができるので、通常モードによって同一の階調の画素を印字した場合と比較して画質を向上させることができる。
【0055】
(変形例)
本変形例は、画素を印字する感熱紙の熱応答性が所定の熱応答性より良い場合、高画質モードに従って、発熱素子のオンおよびオフを制御する例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
【0056】
まず、
図9を用いて、印字装置1により印字する連続紙2(感熱紙)の熱応答性について説明する。
図9は、変形例にかかる印字装置により印字する連続紙の熱応答性を示す図である。印字装置1により印字する連続紙2は、その種類によって、所望の発色濃度(階調)の発色を示す加熱時間(発熱素子24により加熱する時間)が異なる。
【0057】
例えば、熱応答性が悪い感熱紙Bは、所望の発色濃度(例えば、「1」)の画素を印字するためには、約330msの加熱時間が必要である。これに対して、熱応答性が良好な感熱紙Aは、所望の発色濃度(例えば、「1」)の画素を印字するためには約230msの加熱時間が必要である。
【0058】
そのため、熱応答性の良い連続紙2は短時間の加熱で発色することとなり、中間階調色の画素を印字したり、印字装置1において印字可能な画素の階調数を増やしたりするためには、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を上げる際の発熱素子24による加熱時間(オン時間)を短くしなければならず、それに追従可能な応答性の良い発熱素子24が要求される。
【0059】
そこで、本変形例では、CPU17が、印字装置1により印字する連続紙2の熱応答性が所定の熱応答性より良い場合、高画質モードを選択する。そして、タイミングコントローラ46が、高画質モードに従って、発熱素子24のオンおよびオフを制御する。これにより、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調上げる際の発熱素子24のオン時間およびオフ時間を長くすることができるので、応答性が低い発熱素子24を備えた印字装置1においても、熱応答性が良い連続紙2に中間階調色を印字したり、印字装置1において印字可能な画素の階調数を増やしたりすることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
本実施形態は、発熱素子の使用環境温度を取得し、取得した使用環境温度に応じて、予め設定された階調の画素の印字に要する印加エネルギーを変更する例である。以下の説明では、第1の実施形態と異なる箇所について説明する。
【0061】
本実施形態では、CPU17は、発熱素子24の使用環境温度を取得する。例えば、CPU17は、連続紙2の通紙経路8に設置された図示しないサーミスタにより検出された連続紙2の温度を使用環境温度として取得する。
【0062】
そして、CPU17は、取得した使用環境温度に応じて、予め設定された階調(本実施形態では、ヘッドコントローラ40に出力する1ラインの画像信号に対応する画像の階調)の画素の印字に要する印加エネルギーを変更する。
【0063】
具体的には、CPU17は、取得した使用環境温度が所定温度より高い場合、発熱素子24に印加する電圧を制御して発熱素子24の温度を下げることにより、印加エネルギーを下げる。これにより、発熱素子24の使用環境温度が高い場合に、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調上げるために必要な連続紙2に対する加熱温度より高くなって、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調が所定階調より高い階調に上がることを防止する。
【0064】
一方、CPU17は、取得した使用環境温度が所定温度より低い場合、発熱素子24に印加する電圧を制御して発熱素子24の温度を上げることにより、印加エネルギーを上げる。これにより、発熱素子24の使用環境温度が低い場合に、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調上げるために必要な連続紙2に対する加熱温度より低くなって、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調が所定階調上がらなくなることを防止する。
【0065】
このように、第2の実施形態にかかる印字装置1によれば、発熱素子24の使用環境温度を取得し、取得した使用環境温度に応じて、予め設定された階調の画素の印字に要する印加エネルギーを変更することにより、発熱素子24の使用環境温度によらず、発熱素子24の1回のオンおよびオフにより画素の階調を所定階調上げるために必要な連続紙2に対する加熱温度とすることができるので、使用環境温度の変化による印字不良を防止できる。
【0066】
以上説明したとおり、第1,2の実施形態によれば、高画質モードで印字する場合に、通常モードと比較して、発熱素子24から連続紙2へと熱エネルギーを伝える時間を長くして、当該熱エネルギーの損失を減らすことができるので、通常モードによって同一の階調の画素を印字した場合と比較して画質を向上させることができる。
【0067】
本実施形態の印字装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0068】
さらに、本実施形態の印字装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の印字装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0069】
本実施形態の印字装置で実行されるプログラムは、上述した各部(制御部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU17が上記ROM19からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、制御部が主記憶装置上に生成されるようにしても良い。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。