【実施例】
【0023】
(実施例1)
上記内燃機関用のスパークプラグの実施例につき、
図1〜
図8を用いて説明する。
本例のスパークプラグ1は、
図1〜
図3に示すごとく、筒状のハウジング2と、ハウジング2の内側に保持された筒状の絶縁碍子3と、先端部が突出するように絶縁碍子3の内側に保持された中心電極4とを有する。
【0024】
また、スパークプラグ1は、ハウジング2の先端部21から先端側へ立ち上る立設部51と、立設部51から内側へ屈曲すると共に中心電極4との間に火花放電ギャップGを形成する対向部52とからなる接地電極5を有する。
また、スパークプラグ1は、接地電極5とは異なる位置においてハウジング2の先端部21から先端側へ突出すると共に、プラグ周方向において立設部51側を向いた導風面221を有する先端突起部22を備えている。
【0025】
接地電極5の対向部52は、
図2、
図4に示すごとく、中心電極4に対向する対向面521と、対向面521と反対側の背面522と、対向面521と背面522とをつなぐ一対の側端面523、524とを有する。そして、一対の側端面523、524のうち少なくとも先端突起部22側の側端面523は、対向面521となす角度が鈍角となるように形成されている。なお、本例においては、先端突起部22と反対側の側端面524は、対向面521及び背面522と直交している。
また、接地電極5の対向部52は、対向部52の長手方向に直交する断面の形状において、対向面521の幅が背面522の幅よりも小さい。
【0026】
また、本例においては、対向部52の側端面523は、プラグ軸方向の全体にわたって対向面521とのなす角度が鈍角となるように形成されている。また、側端面523は、対向部52の長手方向の全長にわたって対向面とのなす角度が鈍角となるように形成されている。この鈍角は、例えば100°以上とすることができる。
【0027】
また、接地電極5の立設部51は、
図3、
図5に示すごとく、中心電極4側を向く内向面511と、内向面511と反対側の外向面512と、内向面511と外向面512とをつなぐ一対の周方向面513、514とを有する。そして、一対の周方向面513、514のうち先端突起部22側の周方向面513は、内向面511となす角度が鈍角となるように形成されている。なお、本例においては、先端突起部22と反対側の周方向面514は、内向面511及び外向面512と直交している。
また、接地電極5の立設部51は、立設部51の長手方向に直交する断面の形状において、内向面511の幅が外向面512の幅よりも小さい。
【0028】
また、立設部51の周方向面513は、プラグ径方向の全体にわたって内向面511とのなす角度が鈍角となるように形成されている。また、周方向面513は、内向部511の長手方向の全長にわたって内向面511とのなす角度が鈍角となるように形成されている。この鈍角は、例えば100°以上とすることができる。
【0029】
また、
図1、
図2、
図6に示すごとく、先端突起部22は、プラグ軸方向に平行に突出している。また、先端突起部22は、その先端を、接地電極5の先端と同等もしくはそれよりも基端側、かつ絶縁碍子3の先端と同等もしくはそれよりも先端側に位置させている。接地電極5は、立設部51をプラグ軸方向に平行に、対向部52をプラグ径方向に平行にした状態で、配設されている。
【0030】
また、
図3に示すごとく、プラグ軸方向から見たとき、先端突起部22は、接地電極5の立設部51の中心から周方向に90°以内の位置に配置されている。また、
図1、
図3に示すごとく、先端突起部22は、プラグ軸方向に直交する面による断面の形状が長方形状である、四角柱形状を有する。そして、長方形の長辺を構成する面の一方が、上記導風面221である。
なお、本例のスパークプラグ1は、自動車等の車両用の内燃機関に用いられる。
【0031】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記スパークプラグ1は先端突起部22を有する。これにより、スパークプラグ1が内燃機関に対してどのような姿勢で取付けられても、火花放電ギャップGへ向かう燃焼室内の気流が妨げられることを防ぐことができる。
【0032】
つまり、例えば、
図6、
図7に示すごとく、接地電極5の立設部51が火花放電ギャップGの上流側に配置された場合において、上流側から接地電極5の立設部51の脇を通過した気流F1を先端突起部22によって、火花放電ギャップGへ導くことができる。すなわち、先端突起部22が気流F1のガイドとなり、気流F1を火花放電ギャップGに向かって導くことができる。
【0033】
ただし、燃焼室内における気流には、
図8に示すごとく、スパークプラグ1の先端側から基端側へ向かうベクトルを持つ気流F2もある。この気流F2は、接地電極5の対向部52によって、火花放電ギャップGへの導入が妨げられる。そして、この気流F2は、対向部52の両脇を通過することとなる。この気流F2が火花放電ギャップGへ近付く方向に流れないと、上述のように、立設部51の脇を通過すると共に先端突起部22にガイドされて火花放電ギャップGへ向かおうとする気流F1は、対向部52の脇を通過する気流F2に阻害され、火花放電ギャップGに導かれ難くなるおそれがある(後述する比較例2参照)。
【0034】
そこで、スパークプラグ1においては、接地電極5の対向部52における先端突起部22側の側端面523を、対向面521となす角度が鈍角となるように形成してある。これにより、対向部52における先端突起部22側の脇を通過する気流F2の方向を、火花放電ギャップGへ近付く方向とすることができる。そのため、上述した先端突起部22に導かれて火花放電ギャップGへ向かう気流F1が、対向部52の脇を通過する気流F2に阻害されることを抑制することができる。それゆえ、火花放電ギャップG付近の気流の停滞を防ぐことができる。その結果、スパークプラグ1の安定した着火性を確保できる。
【0035】
また、接地電極5の立設部51において、先端突起部22側の周方向面513は、内向面511となす角度が鈍角となるように形成されている。これにより、
図7に示すごとく、接地電極5の立設部51が火花放電ギャップGの上流側に配置された状態において、上流側から接地電極5の立設部51の脇を通過した気流F2を、より効率的に火花放電ギャップGへ導くことができる。すなわち、立設部51における先端突起部22側の周方向面513が、内向面511となす角度が鈍角となるように形成されていることによって、先端突起部22のガイド機能によって導かれる気流F1が、立設部51の周方向面513に沿いやすくなる。それゆえ、立設部51と先端突起部22との間を通過する気流F1が、より効率的に、火花放電ギャップGに導かれやすくなる。
【0036】
また、先端突起部22は、その先端を、接地電極5の先端と同等もしくはそれよりも基端側、かつ絶縁碍子3の先端と同等もしくはそれよりも先端側に位置させている。これにより、先端突起部22のガイド機能を確保しつつ、スパークプラグ1のプラグ軸方向における小型化を実現できる。その結果、スパークプラグ1の着火性を確保しつつ、先端突起部22が燃焼室内においてピストンと干渉することを防ぐことができる。
【0037】
また、先端突起部22は、プラグ軸方向に平行に突出している。これにより、先端突起部22に起因する気流のよどみが、火花放電ギャップG付近に形成されることを防ぐことができる。また、先端突起部22の形状を簡素化できるため、簡易な構成のスパークプラグ1を実現できる。
【0038】
以上のごとく、本例によれば、内燃機関に対する取付姿勢に関わらず安定した着火性を確保することができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
【0039】
(比較例1)
本例は、
図9〜
図12に示すごとく、接地電極95が、立設部951と対向部952とから構成される通常のスパークプラグ9の例である。
図9に示すごとく、接地電極95は、ハウジング92の先端面921から先端側に立設する立設部951と、立設部951の先端から屈曲して、中心電極94の先端部941に対してプラグ軸方向に対向する対向面953を備えた対向部952とを有している。
つまり、スパークプラグ9は、実施例1のような、ハウジング先端部から先端側へ突出した先端突起部22が配置された構成(
図1参照)を有しない。
その他は、実施例1と同様である。
【0040】
本例の場合には、スパークプラグ9を内燃機関に取り付けて使用する際に、
図10(A)〜(C)に示すごとく、スパークプラグ9の取付け向きによって、火花放電ギャップGにおける放電火花Sの放電長さNが大きく変化してしまう。これは、燃焼室における気流Fの方向との関係による。
つまり、
図10(A)に示すごとく、接地電極95の立設部951が火花放電ギャップGの上流側に配置されるようにスパークプラグ9が内燃機関に取り付けられた場合には、放電長さNが極めて小さくなる。
【0041】
一方、
図10(B)に示すごとく、火花放電ギャップGに対する接地電極95の立設部951の位置が気流Fの方向に直交する位置に配置されるようにスパークプラグ9が内燃機関に取り付けられた場合には、放電長さNが極めて大きくなる。
【0042】
また、
図10(C)に示すごとく、接地電極95の立設部951が火花放電ギャップGの下流側に配置されるようにスパークプラグ9が内燃機関に取り付けられた場合には、放電長さNは、ある程度大きくなるが、上記
図10(B)に示す場合に比べて小さくなる。
なお、ここで、放電長さNとは、スパークプラグの軸方向に対して直交する方向の放電の長さをいうものとする。
上記放電長さNの変動の仕方は、気流Fの流速を15m/sとして、火花放電ギャップGに生じた放電火花Sの放電長さNを測定することにより得られた知見であり、具体的には、
図11に示すごとく、それぞれのスパークプラグ9の取付姿勢に応じて放電長さNに大きな差が生じていた。
【0043】
図11におけるA、B、Cは、それぞれ
図10(A)、(B)、(C)に示す取付姿勢における放電長さNのデータを表す。
また、放電長さNとスパークプラグ9の着火性能との関係についても、
図12に示すごとく、放電長さNが長いほど、着火性能が向上することが確認されている。ここで、着火性能は、A/F限界、すなわち、混合気に着火することができる空燃比の限界値によって評価したものであり、A/F限界が高いほど(着火可能な混合気が希薄であるほど)着火性能が高いこととなる。
図11、
図12から分かるように、比較例1のスパークプラグ9は、内燃機関への取付姿勢によって、着火性能が大きく変動してしまう。
【0044】
スパークプラグ9における立設部951が火花放電ギャップGの上流側に配置されたときに、放電長さNが極端に短くなり、着火性が低下する要因としては、
図10(A)に示すごとく、立設部951によって気流Fが遮られ、火花放電ギャップG付近の気流が停滞してしまうことが考えられる。これにより、放電火花Sが伸びにくく、充分な放電長さNが得られなくなってしまい、その結果、スパークプラグ9は、安定した着火性能を得ることが困難となると考えられる。
【0045】
(比較例2)
本例は、
図13に示すごとく、接地電極5の対向部52の断面形状を、長方形状とした例である。
すなわち、側端面523、524と対向面521とのなす角度が直角となるように、接地電極5の対向部52を形成してある。また、接地電極5の立設部51の断面形状も、長方形状としている。すなわち、周方向面513、514と内向面511とのなす角度が直角となるように、接地電極5の立設部51を形成してある。
その他は、実施例1と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0046】
本例のスパークプラグ902においては、接地電極5の立設部51が火花放電ギャップGの上流側に配置された場合において、先端突起部22のガイド機能によって、気流を火花放電ギャップGに向かって導くことができる。
しかし、先端突起部22のガイド機能によって火花放電ギャップGに向かって導かれる気流F1が、スパークプラグ1の先端側から基端側へ向かうベクトルを持つ気流F2によって妨げられるおそれがある。すなわち、上述のごとく、燃焼室内における気流には、スパークプラグ1の先端側から基端側へ向かうベクトルを持つ気流F2もある。この気流F2は、接地電極5の対向部52によって、火花放電ギャップGへの導入が妨げられる。そして、この気流F2は、対向部52の両脇を通過することとなる。
【0047】
本例のスパークプラグ902においては、接地電極5の対向部52の側端面523が対向面521と直角に形成されている。すなわち、側端面523はプラグ軸方向に平行に形成されている。それゆえ、対向部52の脇を通過する気流F2は、側端面523に沿ってプラグ軸方向に流れる。そうすると、上述のように、立設部51の脇を通過すると共に先端突起部22にガイドされて火花放電ギャップGへ向かおうとする気流F1は、対向部52の脇を通過する気流F2に阻害され、火花放電ギャップGに導かれ難くなるおそれがある。
【0048】
(実施例2)
本例は、
図14〜
図17に示すごとく、接地電極5の対向部52の対向面521に貴金属チップからなる対向突起525を配設した例である。
対向突起525は、中心電極4の先端部41に対向配置され、先端部41と対向突起525との間に火花放電ギャップGが形成されている。対向突起525を構成する貴金属チップは、具体的には、Pt−Rh合金からなる。また、中心電極4の先端部41も貴金属チップからなり、具体的にはイリジウム合金(Ir−Rh合金)からなる。対向突起525は、略円柱形状を有しており、その直径は0.9mmであり、対向面521からの突出高さは0.8mmである。また、中心電極4の先端部41も、略円柱形状を有し、その直径は0.7mmである。また、火花放電ギャップGの大きさは、1.05mmである。
【0049】
また、中心電極4の先端部41は、絶縁碍子3の先端から軸方向に1.5mm突出している。また、ハウジング2及び接地電極5の本体部は、ニッケル合金からなる。ハウジング2の直径は10.2mm、ハウジング2の先端部21における肉厚は1.45mmである。
【0050】
接地電極5の対向部52は、
図15に示すごとく、先端突起部22側の側端面523を、対向面521に対して鈍角となるように傾斜してなる。また、対向部52における先端突起部22と反対側の側端面524は曲面を構成している。この曲面の曲率半径は0.8mmである。また、側端面523と対向面521との間には、曲面状の面取り部が形成され、該面取り部の曲率半径は、0.2mmである。
【0051】
また、側端面523と背面522との間にも、曲面状の面取り部が形成され、該面取り部の曲率半径は、0.4mmである。そして、側端面523と背面522とのなす角度は、63.4°である。つまり、側端面523と対向面521とのなす角度は、116.6°である。接地電極5の対向部52は、プラグ軸方向の厚みが1.3mm、プラグ軸方向と対向部52の長手方向との双方に直交する方向の幅が2.4mmである。
なお、接地電極5の立設部51の断面形状も、対向部52の断面形状と同形状である。すなわち、接地電極5は、上記のような断面形状を有する棒状体を屈曲させることにより、立設部51と対向部52とからなる接地電極5を形成している。
【0052】
また、
図16、
図17に示すごとく、先端突起部22は、略四角柱形状を有する。先端突起部22は、プラグ軸方向に直交する平面による断面形状が略長方形状である。この略長方形状は、導風面221に平行な方向の寸法が1.8mmであり、導風面221に直交する方向の寸法が1.2mmである。また、ハウジング2の先端部21からの先端突起部22の突出高さは7mmであり、ハウジング2の先端部21からの接地電極5の突出高さと同等である。
【0053】
そして、プラグ軸方向から見た状態において、先端突起部22は、その中心を通ると共に導風面221に平行な直線が、プラグ中心(火花放電ギャップG)を通過するような姿勢で配設されている。また、先端突起部22の中心を通ると共に導風面221に平行な直線と、接地電極5の立設部51の中心を通ると共に対向部52に平行な直線とは、互いに45°の角度をなしている。
【0054】
その他は、実施例1と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。なお、本例の作用効果については、後述する実験例1、実験例2の結果によって、具体的に裏付けされている。
【0055】
(比較例3)
本例は、
図18〜
図20に示すごとく、実施例2のスパークプラグ1に対して、先端突起部22を取り除いた状態のスパークプラグ903の例である。その他は、実施例2と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例2において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例2と同様の構成要素等を表す。
【0056】
(比較例4)
本例は、
図21〜
図23に示すごとく、実施例2のスパークプラグ1に対して、対向部52の断面形状を略長方形状とした状態のスパークプラグ904の例である。
すなわち、比較例2と同様に、対向部52の断面形状を略長方形状としており、側端面523、524のいずれも、対向面521に対して鈍角となるように傾斜しているわけではない。ただし、厳密には、
図22に示すごとく、対向部52の側端部523、524は曲面状としてある。そして、この曲面の曲率半径は、0.8mmとしている。また、対向部52は、プラグ軸方向の厚みが1.3mm、プラグ軸方向及び対向部52の長手方向の双方に直交する方向の幅は2.6mmである。
その他は、実施例2と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例2において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例2と同様の構成要素等を表す。
【0057】
(比較例5)
本例は、
図24に示すごとく、比較例3と同様に先端突起部22を設けず、かつ、比較例4と同様に、対向部52の断面形状を略長方形状とした状態のスパークプラグ905の例である。
対向部52の形状は、比較例4と同様である。すなわち、比較例4との相違は、先端突起部22を設けていない点のみである。その他は、比較例4と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、比較例4において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、比較例4と同様の構成要素等を表す。
【0058】
(実験例1)
本例は、
図25、
図26に示すごとく、実施例2(
図14〜
図17)、比較例3(
図18〜
図20)、比較例4(
図21〜
図23)のスパークプラグについて、それらの着火性を間接的に評価した例である。
各スパークプラグを、
図25に示すごとく、流速20m/sの気流の上流側に接地電極5の立設部51が配置されるように、チャンバーに設置した。ここで、気流Fは、プラグ軸方向に対して斜めにした。つまり、気流Fの方向は、プラグ軸方向の先端側であって接地電極5の立設部51側から、プラグ軸方向の基端側であって立設部51と反対側へ向かう方向とし、気流Fとプラグ軸方向とのなす角度は、65°とした。すなわち、この気流Fは、プラグ軸方向において先端側から基端側へ向かうベクトルを有する。なお、この気流の方向を再現しやすくすべく、チャンバーにおけるスパークプラグを突出させた壁面7を、プラグ軸方向に対して65°傾斜させて、気流Fと平行となるようにした。
【0059】
このような条件の下、各スパークプラグを設置して、火花放電ギャップGにおける気流の流速を測定した。
火花放電ギャップGにおける気流の流速が小さいと放電長さが短くなるが、放電長さが短くなると着火性が低下することは確認されているため(
図12参照)、火花放電ギャップGにおける気流の流速を測定することにより、間接的に着火性を評価することができる。
【0060】
測定結果を
図26に示す。気流の流速は、火花放電ギャップGにおける中心電極4の中心軸上の12箇所において測定し、そのうちの最も流速が大きい部分の流速にて評価した。
図26から分かるように、比較例3、比較例4のスパークプラグにおいては、火花放電ギャップGにおける流速が、供給される気流の主流の流速(20m/s)に対して半分以下となってしまう。これに対し、実施例2のスパークプラグにおいては、火花放電ギャップGにおける気流の流速が、供給される気流の主流の流速(20m/s)と同等以上となっている。
【0061】
本例の結果から分かるように、実施例2のスパークプラグは、プラグ軸方向のベクトルを有する気流が燃焼室内に生じている場合において、接地電極5の立設部51が気流の上流側に配置されたときにも、火花放電ギャップGにおける気流を充分に確保することができる。したがって、上記のような状況においても、実施例2のスパークプラグは、安定した着火性を確保することができる。
【0062】
(実験例2)
本例は、
図27に示すごとく、実施例2のスパークプラグ1(
図14〜
図17)と、比較例5のスパークプラグ905(
図24)とを用いて、それぞれのA/F限界が、気流Fに対する接地電極5における立設部51の配置位置によってどのように変化するかを調べた例である。
【0063】
具体的には、各スパークプラグを、1800cc、4気筒のエンジンのうち燃焼圧センサーの取り付けられた特定1気筒の燃焼室内に取り付ける。このとき、スパークプラグを軸方向先端側から見たときに、気流Fの上流方向が、火花放電ギャップGに対する接地電極5の立設部51の配置位置となす角度(取付角度β)を、−180°〜180°まで、45°おきに変化させ、それぞれの状態で、A/F限界を測定した。つまり、取付角度βが0°のときは、接地電極5の立設部51が火花放電ギャップGの上流側に配置され、取付角度βが180°(−180°)のときは、接地電極5の立設部51が、火花放電ギャップGの下流側に配置されていることになる。
【0064】
実施例2のスパークプラグ1と比較例5のスパークプラグ905とのそれぞれについて、上記のように気流Fに対する向きを変化させつつ、気流Fの流速を20m/sとして、それぞれA/F限界を測定した。
【0065】
すなわち、スパークプラグを所定の向きに配置したそれぞれの状態で、エンジン回転数2000rpmにてエンジンを運転する。そして、図示平均有効圧Pmiが0.28MPaの条件の下、A/F(空燃比)の値を徐々に変化させながら燃焼圧センサーの出力より燃焼変動率を測定し、A/F限界を調べる。
なお、燃焼変動率とは、図示平均有効圧Pmiの(標準偏差/平均)×100%で示されるものである。また、A/F限界とは、着火可能な空燃比の限界である。本例では、エンジンの円滑な運転が可能な燃焼変動率の値よりも大きくなったA/Fの値をA/F限界とする。
【0066】
A/F限界の測定結果を、
図27に示す。同図において、符号C1を付した破線で示す折れ線が実施例2のスパークプラグについての測定結果であり、符号C2を付した破線で示す折れ線が比較例5のスパークプラグについての測定結果である。同図のグラフにおいて、横軸が取付角度βであり、縦軸がA/F限界である。そして、A/F限界の値が高いほど着火性に優れていることになる。
【0067】
図27に示すごとく、比較例5のスパークプラグにおけるA/F限界を示す折れ線グラフC2は、取付角度βによってA/F限界が大きく変動している。これは、比較例5のスパークプラグのA/F限界つまり着火性が、スパークプラグに対する気流Fの方向、換言すれば、スパークプラグの内燃機関への取付姿勢によって大きく変動することを意味する。また特に、取付角度βが0°となる位置においては、A/F限界が極めて低くなっていることが分かる。つまり、接地電極5の立設部51が火花放電ギャップGに対して気流Fの上流側に配置されたときに、A/F限界が極端に低下し、着火性能が大きく低下するおそれがあることが分かる。
【0068】
これに対して、実施例2のスパークプラグ1におけるA/F限界を示す折れ線グラフC1は、取付角度βが0°においても、A/F限界が改善されていることを表している。これは、スパークプラグ1は、取付姿勢に関わらず、充分な着火性を確保することができていることを意味する。それゆえ、実施例2のスパークプラグ1は、取付姿勢に関わらず、着火性を確保することができていることが分かる。
【0069】
(実施例3)
本例は、
図28、
図29に示すごとく、接地電極5の対向部52における一対の側端面523、524の双方を、対向面521に対して鈍角となるように傾斜させた例である。
また、接地電極5の立設部51における一対の周方向面513、514の双方を、内向面511に対して鈍角となるように傾斜させている。そして、先端突起部22を、接地電極5におけるプラグ周方向の両側に配置してある。すなわち、先端突起部22は、接地電極5の立設部51をプラグ周方向から挟むように、2本配設されている。
【0070】
その他は、実施例1と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
(実施例4)
本例は、
図30に示すごとく、先端突起部22に、ひねり部222を設けた例である。
すなわち、先端突起部22は、ハウジング2の先端部21と接合される基端部と、導風面221を構成する部分との間のプラグ軸方向位置に、ひねり部222を有する。先端突起部22は、断面長方形状の四角柱形状の素材を、その中心軸の周りに、ひねり部222において約90°ひねった形状を有する。
【0072】
そして、ひねり部222よりも先端側に導風面221が形成されている。ひねり部222は、火花放電ギャップGよりも基端側に形成されていることが好ましい。これにより、導風面221を、火花放電ギャップGの全体にわたるプラグ軸方向位置に形成することができる。更に、ひねり部222は、絶縁碍子3の先端よりも基端側に形成されていることがより好ましい。
【0073】
その他は、実施例1と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
(実施例5)
本例は、
図31に示すごとく、プラグ軸方向に直交する平面による先端突起部22の断面形状を三角形状とした例である。すなわち、先端突起部22は、三角柱形状を有する。
本例においては特に、上記断面形状が正三角形状である。そして、三角形状の一辺に対応する先端突起部22の一つの面に、導風面221が形成されている。
【0075】
その他は、実施例1と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
本例の場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0076】
(実施例6)
本例は、
図32、
図33に示すごとく、接地電極5の対向部52が、立設部51と反対側の端部に、対向部52の延設方向及びプラグ軸方向の双方に直交する方向の幅が他の部位よりも小さい小幅部526を有しているスパークプラグ1の例である。
小幅部526の形状は、例えば、
図32に示すように、対向部52の端部の幅を徐々に小さくするテーパ形状としたり、
図33に示すように、幅の小さい矩形状として、立設部51と反対側へ突出させたりしてもよい。
【0077】
なお、図示は省略するが、本例の場合にも、対向部52における先端突起部22側の側端面523は、対向面521に対して鈍角となるように形成されている。そして、小幅部526における側端面523も、内向面521に対して鈍角となるように傾斜していることが好ましい。
その他は、実施例1と同様である。なお、本例及び本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0078】
本例の場合には、火花放電ギャップGの近傍における対向部52の幅を小さくすることができる。これにより、火花放電ギャップGへ向かう気流を対向部52が阻害することを抑制することができ、着火性を向上させることができる。また、小幅部526を設けることにより、火花放電ギャップGにおいて生じた火炎核が成長しやすく、かかる観点からも、着火性を向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0079】
なお、接地電極の断面形状は、上述した実施例に限定されるものではなく、例えば対向部における先端突起部側の側端面が曲面を構成する形状など、種々の形状を採用することができる。
また、先端突起部の形状も、特に限定されるものではなく、上述したような、断面長方形状、断面三角形状の他にも、例えば、断面六角形状、断面台形状、断面扇形状等、種々の形状を採用することができる。