特許第5919216号(P5919216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5919216樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及び外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919216
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及び外用剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/12 20060101AFI20160428BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20160428BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160428BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20160428BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   C08F220/12
   C09D133/04
   C09D7/12
   A61K47/32
   A61K8/81
   A61Q1/00
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-74190(P2013-74190)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-227561(P2013-227561A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-77209(P2012-77209)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 博信
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−046638(JP,A)
【文献】 特開平06−192341(JP,A)
【文献】 特開2003−138183(JP,A)
【文献】 特開平06−166725(JP,A)
【文献】 特開2006−008757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体混合物の重合体を含んでなる樹脂粒子であって、
前記単量体混合物は、炭素数22〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する単官
能(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、エチレン性の不飽和基を2つ以上有する架橋性単量体とを含み、
当該樹脂粒子が、0.5〜6.0MPaの範囲内の10%圧縮変形時の圧縮強度を有し、且つ、50%以上の復元率を有し、
下記一般式
CH2=CR−COO[(C24O)m−(C36O)n]−H …(1)
(上記式中、RはH又はCH3を表し、mは0〜50であり、nは0〜50であり、但し、m及びnは同時に0にならない)
で表される親水性単官能単量体、及び/又は下記一般式
CH2=CR1−COOCH2CH2O[CO(CR225O]p−H …(2)
(上記式中、R1及びR2はそれぞれ独立してH又はCH3を表し、pは1〜50である)
で表される親水性単官能単量体を、前記単量体混合物100重量部に対して1〜50重量部含むことを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂粒子であって、
前記単量体混合物における前記架橋性単量体の含有量が、前記単量体混合物100重量部に対して、5〜40重量部であることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子であって、
親水性単量体を含み、
当該樹脂粒子が、水に対する接触角が93°未満であることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子であって、
前記単量体混合物は、親水性単官能単量体をさらに含み、
当該樹脂粒子が、水に対する接触角が93°未満であることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の樹脂粒子であって、
当該樹脂粒子の真密度が、0.9〜1.1g/cm3の範囲内であることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の樹脂粒子であって、
前記重合体の表面に、1〜20nmの一次粒子径を有する無機粉体が、前記重合体と前記無機粉体の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部付着していることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の樹脂粒子を含むことを特徴とする塗料。
【請求項8】
単量体混合物の重合体を含んでなる樹脂粒子を含む外用剤であって、
前記単量体混合物は、炭素数22〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、エチレン性の不飽和基を2つ以上有する架橋性単量体とを含み、
当該樹脂粒子が、0.5〜6.0MPaの範囲内の10%圧縮変形時の圧縮強度を有し、且つ、50%以上の復元率を有することを特徴とする外用剤。
【請求項9】
請求項に記載の外用剤であって、
当該外用剤が、化粧料又は外用医薬品であることを特徴とする外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、50%以上の復元率を有する樹脂粒子、この樹脂粒子を含む塗料、及びこの樹脂粒子を含む外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や建屋内装部品には、艶消し塗装仕上げが施されることがある。このような艶消し塗装仕上げには、例えば、シリカ、タルク等の無機粒子、又は、アクリル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子等の樹脂粒子が配合された塗料(艶消し剤)が使用される。このような粒子が配合された塗料より得られる塗膜は、表面に存在する粒子により、入射光を適度に拡散反射させ、光沢を低下させることができる。
【0003】
ところで、上記した粒子の硬さは、その粒子が配合された塗料より得られる塗膜の触感及び傷つき易さに影響を与える。例えば、シリカ、タルク等の無機粒子は硬い粒子であり、このような硬い粒子が配合された塗料より得られる塗膜は、硬質な触感を有し、外部から衝撃が加わったときに傷が付き易い。他方、上記した樹脂粒子は、無機粒子と比べて軟らかい粒子であり、このような軟らかい粒子が配合された塗料より得られる塗膜は、軟らかい触感(ソフトフィール性)と高い弾力性を有しており、外部から衝撃が加わったときに傷が付き難い。
【0004】
そこで、近年では、塗膜に軟らかい触感と十分な耐傷付き性を付与することができる樹脂粒子の開発が進められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、無機粉体が表面に付着してなり、圧縮強度が0.05〜0.6kgf/mm2(0.49〜5.9MPa)である架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸エステルと、カルボキシル基を有する単量体とを含む単量体成分を共重合してなり、圧縮強度が0.7〜15kgf/mm2(6.9〜147MPa)である架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、架橋性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む混合物の重合物からなり、圧縮強度が0.05〜0.6kgf/mm2(0.49〜5.9MPa)で、復元率が15〜30%である樹脂粒子が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、圧縮回復性に優れた微粒子として、3官能以上の多官能アクリル酸エステルを80〜100重量部含むモノマーと重合開始剤との反応物からなる微粒子が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献5には、圧縮変形回復率が30%以上の弾力性微粒子として、両末端に(メタ)アクリル基を有する液状ブタジエンオリゴマーと多官能アクリル酸エステルとの重合体からなる弾力性微粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−186017号公報
【特許文献2】特開2006−008980号公報
【特許文献3】特開2008−239785号公報
【特許文献4】特開平10−139830号公報
【特許文献5】特開平8−225625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示の架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、圧縮変形後の復元率(以下、単に復元率という)が低い粒子であるため、塗料に配合された場合において、前記塗料から得られる塗膜に十分な耐傷付き性を付与することができず、また、外用剤等の製品に配合された場合において、外用剤等の製品に軟らかい触感を付与することができなかった。
【0012】
また、特許文献2に開示の架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、0.7〜15kgf/mm2(6.9〜147MPa)の圧縮強度を有する硬い粒子であるため、塗料に配合された場合において、前記塗料から得られる塗膜に軟らかい触感と耐傷付き性とを十分に付与することができず、また、外用剤等の製品に配合された場合において、外用剤等の製品に軟らかい触感を付与することができなかった。
【0013】
また、特許文献3に開示の樹脂粒子は、0.05〜0.6kgf/mm2(0.49〜5.9MPa)の圧縮強度を有する軟らかい粒子であり、また、高い復元率(具体的には、15〜30%の復元率)を有する粒子であるが、当該樹脂粒子よりも復元率が高いバインダー樹脂と共に塗料に含有された場合において、前記塗料より得られる塗膜に十分な耐傷付き性を付与することができないことがあった。また、特許文献3に開示の樹脂粒子は、復元率が必ずしも十分でないため、外用剤等の製品に配合された場合において、外用剤等の製品に軟らかい触感を付与できないことがあった。このため、特許文献3に開示の樹脂粒子よりも高い復元率を有する樹脂粒子が求められていた。
【0014】
また、特許文献4及び5に開示の微粒子は、高い復元率を有するが、硬い粒子であるため、塗料に配合された場合において、前記塗料から得られる塗膜に軟らかい触感を付与することができず、また、外用剤等の製品に配合された場合において、外用剤等の製品に軟らかい触感を付与することができなかった。
【0015】
そこで、本発明は、上記したような状況に鑑み、復元率が50%以上で、塗膜に軟らかい触感と十分な耐傷付き性を付与することができ、外用剤等の製品に軟らかい触感を付与することができる樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及び外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の樹脂粒子は、単量体混合物の重合体を含んでなる樹脂粒子であって、前記単量体混合物は、炭素数22〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、エチレン性の不飽和基を2つ以上有する架橋性単量体とを含み、当該樹脂粒子が、0.5〜6.0MPaの範囲内の10%圧縮変形時の圧縮強度を有し、且つ、50%以上の復元率を有することを特徴とする。なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル」とは、「メタクリル」又は「アクリル」を意味する。また、「単官能」とは、単量体におけるエチレン性の不飽和基の数が1つであることを意味し、「多官能」とは、単量体におけるエチレン性の不飽和基の数が2つ以上であることを意味する。
【0017】
この本発明の樹脂粒子は、0.5〜6.0MPaの範囲内の10%圧縮変形時の圧縮強度を有し、且つ、50%以上の復元率を有することから、塗料に配合された場合において、前記塗料から得られる塗膜に対して、軟らかい触感を付与することができ、且つ、十分な耐傷付き性を付与することができ、外用剤等の製品に配合された場合において前記外用剤等の製品に対して軟らかい触感を付与することができる。
【0018】
また、本発明の塗料は、本発明の樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0019】
この本発明の塗料は、0.5〜6.0MPaの範囲内の10%圧縮変形時の圧縮強度を有し、且つ、50%以上の復元率を有する本発明の樹脂粒子を含むことから、軟らかい触感と十分な耐傷付き性を有する塗膜を形成することができる。
【0020】
また、本発明の外用剤は、本発明の樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の外用剤は、0.5〜6.0MPaの範囲内の10%圧縮変形時の圧縮強度を有し、且つ、50%以上の復元率を有する本発明の樹脂粒子を含むことから、軟らかい触感を有している。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、復元率が50%以上で、塗膜に軟らかい触感と十分な耐傷付き性を付与することができ、外用剤等の製品に軟らかい触感を付与することができる樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及び外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔本発明の樹脂粒子〕
本発明の樹脂粒子は、炭素数22〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、エチレン性の不飽和基を2つ以上有する架橋性単量体とを含む単量体混合物の重合体を含んでなる。
【0024】
この本発明の樹脂粒子は、0.5〜6.0MPaの範囲内、より好ましくは、1.0〜4.0MPaの範囲内の10%圧縮変形時の圧縮強度を有している。10%圧縮変形時の圧縮強度が0.5Mpa未満の樹脂粒子は、機械的強度に劣り、例えば、その樹脂粒子を含む塗料又は塗料用艶消し剤等を調合する際の混練シェアや、その樹脂粒子を含む外用剤を調合する際の混合時のシェアにより、破壊されてしまうおそれがある。一方、10%圧縮変形時の圧縮強度が6.0MPaよりも大きい樹脂粒子は、外用剤等の製品や塗膜に軟らかい触感を付与することができないおそれがある。なお、本明細書において、10%圧縮変形時の圧縮強度(以下、単に「圧縮強度」という)とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる圧縮強度を意味する。
【0025】
また、本発明の樹脂粒子は、50%以上の復元率、より好ましくは、55%以上の復元率を有している。復元率が50%未満の樹脂粒子は、当該樹脂粒子を混合した塗料からなる塗膜に十分な耐傷付き性を付与できない。また、当該樹脂粒子を復元率が高いバインダー樹脂と混合して塗料を調合した場合において、その塗料から得られる塗膜の耐傷付き性を低下させるおそれがある。また、復元率が50%未満の樹脂粒子は、当該樹脂粒子を配合した外用剤等の製品に軟らかい触感を付与できない。なお、本明細書において、復元率とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる復元率を意味する。
【0026】
また、本発明の樹脂粒子の水に対する接触角は、93°〜120°の範囲内であることが好ましく、95°〜115°の範囲内であることがより好ましい。樹脂粒子の接触角が93°〜120°の範囲内であると、当該樹脂粒子を非水性媒体を含む塗料中に配合した場合において、塗料中での樹脂粒子の再分散性を向上させることができる。
【0027】
また、本発明の樹脂粒子の水に対する接触角は、93°未満であることも好ましい。樹脂粒子の接触角が93°未満であると、当該樹脂粒子を水性媒体を含む外用剤や塗料中に配合した場合において、外用剤や塗料中での樹脂粒子の分散性や再分散性を向上させることができ、また、前記外用剤の使用時の伸びを向上させることができる。したがって、水に対する接触角が93°未満の当該樹脂粒子を、水性媒体を含む外用剤中に配合すると、樹脂粒子の分散性及び再分散性に優れ、かつ、触感の軟らかさ及び使用時の伸びに優れた外用剤を実現できる。また、水に対する接触角が93°未満の当該樹脂粒子を、水性媒体を含む塗料中に配合すると、樹脂粒子の分散性及び再分散性に優れ、かつ、塗膜の耐傷付き性及び触感の軟らかさに優れた塗料を実現できる。なお、水に対する接触角が93°未満の当該樹脂粒子を、水性媒体を含む外用剤中に配合すると、滑らかな使用感を外用剤に付与できることも期待できる。なお、本明細書において、水に対する接触角とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる水に対する接触角を意味する。
【0028】
本発明の樹脂粒子において、上記した圧縮強度及び復元率は、炭素数22〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、エチレン性の不飽和基を2つ以上有する架橋性単量体とを含む単量体混合物を重合させて得られる重合体により備えられる。
【0029】
前記単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、炭素数22〜30、より好ましくは、炭素数22〜28の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有している。炭素数が22以上のアルキル基を有さない単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体を使用すると、得られる樹脂粒子の軟質性が低下する上に、樹脂粒子自体の滑り性が低下することから、当該樹脂粒子を塗料に配合した場合において、当該塗料から形成される塗膜に十分な耐傷付き性を付与することができない。また、炭素数が22以上のアルキル基を有さない単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体を使用すると、得られる樹脂粒子の軟質性が低下し、当該樹脂粒子を外用剤等の製品に配合した場合において、当該外用剤等の製品に軟らかい触感を付与することができない。また、炭素数が22以上のアルキル基を有さない単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体を使用すると、樹脂粒子の真密度が高くなりすぎるために、当該樹脂粒子を溶剤(非水性媒体又は水性媒体)と混合して塗料や外用剤等の製品を得た場合において、溶剤中での沈降性及び再分散性が低下する。一方、炭素数が30を超えるアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体を使用すると、得られる樹脂粒子をバインダー樹脂に混練して塗料を調合する場合において、混練シェアによる当該樹脂粒子の崩壊を十分に抑制することができず、また、その樹脂粒子を他の成分と混合して外用剤を調合する場合において、混合時のシェアによる当該樹脂粒子の崩壊を十分に抑制することができない。
【0030】
前記単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、エチレン性の不飽和基を1つ有し、炭素数22〜30の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキル等を挙げることができる。これら単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0031】
また、前記単量体混合物中における単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量は、前記単量体混合物100重量部に対して、50〜95重量部であることが好ましく、50〜90重量部であることがより好ましい。単量体混合物中における単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量が、前記単量体混合物100重量部に対して、50〜95重量部の範囲内にない場合には、樹脂粒子に、上記した圧縮強度及び復元率が備えられず、樹脂粒子の塗膜に対する耐傷付き性付与効果や、外用剤等の製品に対して軟らかい触感を付与する樹脂粒子の効果を得ることができないおそれがある。
【0032】
また、前記架橋性単量体としては、エチレン性の不飽和基を2つ以上有する公知の架橋性単量体を使用することができ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、メタクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系架橋性単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族ジビニル系単量体が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらの架橋性単量体の中でも、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のメタアクリル酸エステル系架橋性単量体及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレートは皮膚刺激性が低いため、化粧料等の外用剤に含有される樹脂粒子の製造に用いる架橋性単量体として特に適している。
【0033】
前記単量体混合物中における架橋性単量体の含有量は、前記単量体混合物100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、10〜40重量部であることがより好ましい。単量体混合物中における架橋性単量体の含有量が、前記単量体混合物100重量部に対して、5〜40重量部の範囲内にない場合には、上記した圧縮強度及び復元率が備えられず、樹脂粒子の塗膜に対する耐傷付き性付与効果や、外用剤等の製品に対して軟らかい触感を付与する樹脂粒子の効果を得ることができないおそれがある。
【0034】
なお、前記単量体混合物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記した単量体以外の他の単量体が含まれていてもよい。
【0035】
前記単量体混合物は、親水性単量体を含むことが好ましく、特に親水性単官能単量体をさらに含むことが好ましい。これにより、樹脂粒子の親水性を向上させ、樹脂粒子の水に対する接触角を小さくすることができる。したがって、水に対する接触角が93°未満である樹脂粒子を容易に実現できる。また、当該樹脂粒子を水性媒体を含む外用剤や塗料中に配合した場合において、外用剤や塗料中での樹脂粒子の分散性や再分散性を向上させることができ、また、前記外用剤の使用時の伸びを向上させることができる。
【0036】
前記親水性単官能単量体は、1つのエチレン性の不飽和基を有する単官能単量体であって、カルボキシル基(又はその塩)、スルホン酸基(又はその塩)、リン酸基(又はその塩)、水酸基(ヒドロキシ基)、エーテル基、アミノ基、アミド基等の親水性基を有する単官能単量体である。前記親水性単官能単量体は、エーテル基と水酸基とを有する単官能単量体、及び/又は、エステル基と水酸基とを有する単官能単量体であることが好ましい。前記エステル基と水酸基とを有する単官能単量体としては、2つ以上のエステル基と水酸基とを有する単官能単量体が好ましい。これにより、樹脂粒子の親水性をさらに向上させることができる。前記エーテル基としては、エチレングリコールに由来する基(オキシエチレン基)、プロピレングリコールに由来する基(オキシプロピレン基)が挙げられる。前記エステル基としては、ラクトンに由来する基が挙げられる。
【0037】
前記親水性単官能単量体は、下記一般式
CH2=CR−COO[(C24O)m−(C36O)n]−H …(1)
(上記式中、RはH又はCH3を表し、mは0〜50であり、nは0〜50であり、但し、m及びnは同時に0にならない)
で表される親水性単官能単量体、及び/又は下記一般式
CH2=CR1−COOCH2CH2O[CO(CR225O]p−H …(2)
(上記式中、R1及びR2はそれぞれ独立してH又はCH3を表し、pは1〜50である)
で表される親水性単官能単量体であることが好ましい。これにより、樹脂粒子の親水性を向上させ、樹脂粒子の水に対する接触角をさらに小さくすることができる。したがって、水に対する接触角が93°未満である樹脂粒子をさらに容易に実現できる。また、当該樹脂粒子を水性媒体を含む外用剤や塗料中に配合した場合において、外用剤や塗料中での樹脂粒子の分散性や再分散性を向上させることができ、また、前記外用剤の使用時の伸びを向上させることができる。
【0038】
なお、一般式(1)における[(C24O)m−(C36O)n]の部分は、この部分の任意の位置に(C24O)の構造単位がm個存在し、かつ、この部分の任意の位置に(C36O)の構造単位がn個存在することを意味するものであり、これら構造単位の結合順序は限定されるものではない。すなわち、(C24O)及び(C36O)の構造単位は、ブロック状に結合してもよく、ランダム状に結合していてもよく、交互に結合していてもよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0039】
一般式(1)で表される化合物において、m及びnの少なくとも一方が50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、好ましくない。m及びnはそれぞれ1〜30であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物は、エーテル基と水酸基とを有する単官能単量体であること、すなわちm+n>1であることが好ましい。これにより、樹脂粒子の親水性をさらに向上させることができる。
【0040】
一般式(2)で表される化合物において、pが50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、好ましくない。pは1〜30であることが好ましい。
【0041】
前記一般式(1)又は一般式(2)で表される親水性単官能単量体として、市販品を利用できる。前記一般式(1)で表される親水性単官能単量体の市販品として、例えば、日油株式会社製の「ブレンマー(登録商標)」シリーズが挙げられ、前記一般式(2)で表される親水性単官能単量体の市販品として、例えば、株式会社ダイセル製の「プラクセル(登録商標)F」シリーズが挙げられる。
【0042】
前記「ブレンマー(登録商標)」シリーズの中で、「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが約3.5、nが約2.5のもの)、「ブレンマー(登録商標)70PEP−350B」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが約5、nが約2のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−1000」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが0、nが約4〜6のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−500」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが0、nが約9のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−800」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが0、nが約13のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−90」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが約2、nが0のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−200」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが約4.5、nが0のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−350」(前記一般式(1)において、RがCH3、mが約8、nが0のもの)等が本発明に好適である。
【0043】
前記「プラクセル(登録商標)F」シリーズの中で、「プラクセル(登録商標)FM1」及び「プラクセル(登録商標)FM1D」(前記一般式(2)において、R1がCH3、R2がH、pが1のもの)、「プラクセル(登録商標)FM2D」(前記一般式(2)において、R1がCH3、R2がH、pが2のもの)、「プラクセル(登録商標)FM3」(前記一般式(2)において、R1がCH3、R2がH、pが3のもの)、「プラクセル(登録商標)FM4」(前記一般式(2)において、R1がCH3、R2がH、pが4のもの)、「プラクセル(登録商標)FM5」(前記一般式(2)において、R1がCH3、R2がH、pが5のもの)等が本発明に好適である。
【0044】
前記親水性単官能単量体としては、他にも、他の水酸基を有する単官能単量体、カルボキシル基(又はその塩)を有する単官能単量体、スルホン酸基(又はその塩)を有する単官能単量体、リン酸基(又はその塩)を有する単官能単量体、エーテル基を有する単官能単量体、アミノを有する単官能単量体、アミドを有する単官能単量体等が挙げられる。
【0045】
前記他の水酸基を有する単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、マレイン酸2−ヒドロキシエチルメチル、マレイン酸ジ(2−ヒドロキシプロピル)、α−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グルコシルエチル等が挙げられる。
【0046】
前記カルボキシル基(又はその塩)を有する単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル、及びこれらの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等)、カルボキシベタイン含有単量体等が挙げられる。前記カルボキシベタイン含有単量体としては、例えば、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等が挙げられる。
【0047】
前記スルホン酸基(又はその塩)を有する単官能単量体としては、例えば、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホベタイン含有単量体等が挙げられる。前記スルホベタイン含有単量体としては、例えば、1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン等が挙げられる。
【0048】
前記リン酸基(又はその塩)を有する単官能単量体としては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
前記エーテル基を有する単官能単量体としては、例えば、末端にアルキル基又はアリール基を有するポリオキシアルキレン鎖(オキシアルキレン鎖の繰り返し回数が2回等のような少ない回数の場合も含む)を含む(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル類、(メタ)アクリルモルホリン等が挙げられる。前記の末端にアルキル基又はアリール基を有するポリオキシアルキレン鎖を含む(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記ビニルエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0050】
前記アミノ基を有する単官能単量体としては、例えば、第4級アミノ基を有する単官能単量体、アルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アミノメチル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ基を有する不飽和アミド、ビニルピリジン類、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ビニルイミダゾール等が挙げられる。前記第4級アミノ基を有する単官能単量体としては、例えば、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。前記アルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチルアクリレート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル等が挙げられる。前記アルキルアミノ基を有する不飽和アミドとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。前記ビニルピリジン類としては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0051】
前記アミド基を有する単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、α−エチルアクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピペリドン等が挙げられる。これら親水性単官能単量体は、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
前記単量体混合物中における親水性単官能単量体の含有量は、前記単量体混合物100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましい。前記単量体混合物中における親水性単官能単量体の含有量が1重量部未満の場合、樹脂粒子への親水性の付与が不十分となり、水性媒体中での樹脂粒子の分散性が低下し、水性媒体を含む外用剤に配合された場合において外用剤の伸びが低下するため、好ましくない。前記単量体混合物中における親水性単官能単量体の含有量が50重量部より多い場合、上記した圧縮強度及び復元率が備えられないおそれがあるため、好ましくない。
【0053】
上記親水性単官能単量体は、前記単量体混合物の他の成分(単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び架橋性単量体)及び/又は水性媒体に分散させて重合系に供給できる。このうち、親水性単官能単量体を水性媒体に分散させることが、単量体混合物の油滴の表面に親水性単官能単量体を存在させやすいので、好ましい。前記水性媒体としては、特に限定されず、水、又は水と水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。前記水性媒体は、単量体混合物100重量部に対して、100〜1000重量部の範囲で使用することが好ましく、200〜500重量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0054】
なお、本発明の樹脂粒子は、樹脂粒子同士の合着を抑制するために、上述した単量体混合物の重合体の表面に無機粉体を付着させたものであってもよい。
【0055】
このような無機粉体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化鉄、酸化亜鉛等があげられる。
【0056】
また、前記無機粉体の一次粒子径は、1〜20nmであることが好ましく、5〜15nmであることがより好ましい。前記無機粉体の一次粒子径が1〜20nmの範囲外である場合には、前記重合体の表面を前記無機粉体で十分に保護することができず、樹脂粒子同士の合着を十分に抑制することができないおそれがある。
【0057】
また、上述した単量体混合物の重合体への前記無機粉体の付着量は、前記単量体混合物の重合体と前記無機粉体の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。前記無機粉体の付着量が、前記単量体混合物の重合体と前記無機粉体の合計量100重量部に対して、0.1重量部未満の場合には、樹脂粒子同士の合着を十分に抑制することができないおそれがある。また、前記無機粉体の付着量が、前記単量体混合物の重合体と無機粉体の合計量100重量部に対して、10重量部を超える場合には、無機粉体の触感により外用剤等の製品や塗膜の触感が阻害されるおそれ、及び、無機粉体により塗膜の透明性が損なわれて、塗膜が白くなるおそれがある。
【0058】
また、本発明の樹脂粒子は、上述した単量体混合物の重合体そのものであってもよい。すなわち、本発明の樹脂粒子は、表面に無機粉体が付着されていないものであってもよい。このような表面に無機粉体が付着されていない樹脂粒子であっても、上述したような無機粉体と共に混合して使用することで、樹脂粒子同士の合着を抑制する効果を得ることが可能である。このような樹脂粒子と無機粉体とを混合して使用する場合における無機粉体の使用量には、上記した無機粉体の付着量を適用することができる。
【0059】
また、本発明の樹脂粒子の真密度は、0.9〜1.1g/cm3の範囲内であることが好ましい。樹脂粒子の真密度が、上記範囲内であると、当該樹脂粒子を溶剤と混合した場合において、溶剤中での沈降性及び再分散性を向上させることができる。なお、本明細書において、真密度とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる真密度を意味する。
【0060】
また、本発明の樹脂粒子の体積平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましく、7〜35μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が5〜50μmの範囲内にある樹脂粒子は、塗料に配合されることにより、その塗料から得られる塗膜の艶消し性及び仕上がり外観を向上させることができる。なお、本明細書において、体積平均粒子径とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる体積平均粒子径を意味する。
【0061】
なお、本発明の樹脂粒子中における各単量体に由来する構造単位の定量及び定性等は、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)等のような公知の分析方法を用いることにより、確認することができる。また、上記単量体混合物中における各単量体の重量比と、本発明の樹脂粒子中における各単量体に由来する構造単位の重量比とは略同一である。
【0062】
上記した本発明の樹脂粒子は、塗料用の添加剤(例えば、艶消し剤、塗膜軟質化剤等);光学フィルム用の光拡散剤、化粧料のような外用剤の原料;静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤;電子ペーパー等の画像表示用素子等に好適に使用できる。
【0063】
〔本発明の樹脂粒子の製造方法〕
本発明の樹脂粒子は、上述した単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、架橋性単量体とを含む単量体混合物を重合させることにより得ることができる。
【0064】
重合方法としては、乳化重合、分散重合、懸濁重合、シード重合など、樹脂粒子を得るための公知の方法を用いることができるが、より安価に得られる水性媒体中での懸濁重合が好ましい。
【0065】
水性媒体としては、水、及び、水と水溶性有機溶媒(例えば、低級アルコール)との混合物が挙げられる。
【0066】
また、上記懸濁重合は、必要に応じて、重合開始剤の存在下で行われてもよい。
【0067】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等の油溶性アゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。なお、重合開始剤の使用量は、上記単量体混合物100重量部に対して、0.05〜20重量部程度である。
【0068】
また、上記懸濁重合は、必要に応じて、分散剤及び/又は界面活性剤の存在下で行われてもよい。
【0069】
分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、及びピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機塩;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0070】
また、界面活性剤としては、例えばオレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0071】
上記した分散剤及び界面活性剤は、それぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも、分散安定性の点から、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性リン酸塩の分散剤と、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤とを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0072】
なお、分散剤の使用量は、上記単量体混合物100重量部に対して、0.1〜20重量部程度であり、界面活性剤の使用量は、水性媒体100重量部に対して0.001〜10重量部程度である。
【0073】
また、上記懸濁重合は、上記単量体混合物を含む油相を調製し、調製した油相を水性媒体を含む水相中に分散させながら、この油相が分散された水相を加熱することにより開始できる。なお、重合開始剤を使用する場合には、上記単量体混合物に重合開始剤を混合して油相を調製する。また、分散剤及び/又は界面活性剤を使用する場合には、水性媒体に分散剤及び/又は界面活性剤を混合して水相を調製する。なお、樹脂粒子の体積平均粒子径は、油相と水相との混合割合や分散剤、界面活性剤の使用量及び攪拌条件、分散条件を調整することにより適宜制御できる。
【0074】
水相中に油相を分散させる方法としては、例えば、水相中に油相を直接添加して、プロペラ翼等の攪拌力によりその油相を液滴として水相中に分散させる方法;水相中に油相を直接添加して、ローターとステーターから構成される高せん断力を利用する分散機であるホモミクサーを用いてその油相を水相中に分散させる方法;水相中に油相を直接添加して、超音波分散機等を用いて水相中にその油相を分散させる方法等種々の方法が挙げられる。この内、水相中に油相を直接添加して、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー(登録商標)等の高圧型分散機を用いて、混合物の液滴同士の衝突あるいは機壁に対する混合物の衝突を利用して、その油相を液滴として水相中に分散させる方法;MPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通して油相を水相中に圧入させる方法等によって分散させれば、粒子径をより均一に揃えることができるので好ましい。
【0075】
また、重合温度は、40〜90℃程度が好ましい。そしてこの重合温度を保持する時間としては、0.1〜10時間程度が好ましい。なお、重合反応は、窒素雰囲気のような、重合反応系中の反応物(油相)に対して不活性な不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、単量体混合物の沸点が重合温度付近又は重合温度以下である場合には、単量体混合物が揮発しないように、オートクレーブ等の耐圧重合設備を使用して、密閉下あるいは加圧下で懸濁重合を行うことが好ましい。
【0076】
そして、重合反応終了後、所望により分散剤を酸等で分解除去し、ろ過、水洗浄、脱水、乾燥、粉砕、分級等を行うことによって、目的の樹脂粒子を得ることができる。
【0077】
なお、重合体の表面に無機粉体が付着した樹脂粒子は、上述の単量体混合物を重合させる重合工程、上述の重合反応終了後のろ過工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程のいずれかにおいて、無機粉体を添加することにより製造することができるが、前記乾燥工程又は前記粉砕工程で無機粉体を添加することが好ましい。ここで、無機粉体の使用量(添加量)は、上述した無機粉体の付着量に対応し、単量体混合物と無機粉体の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部であり、より好ましくは、1〜5重量部である。
【0078】
〔塗料〕
本発明の樹脂粒子は、塗膜軟質化剤又は艶消し剤として塗料に含有させることが可能である。
【0079】
そこで、本発明の塗料は、本発明の樹脂粒子を含んでいる。本発明の塗料は、必要に応じて、バインダー樹脂および溶剤の少なくとも一方を含んでいる。前記バインダー樹脂としては、有機溶剤もしくは水に可溶な樹脂、または水中に分散できるエマルション型の水性樹脂を使用できる。そのようなバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリイソシアネート樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、塗装される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0080】
バインダー樹脂及び樹脂粒子の添加量は、形成される塗膜の膜厚、樹脂粒子の体積平均粒子径、塗装方法によって異なる。バインダー樹脂の添加量は、バインダー樹脂(エマルション型の水性樹脂を使用する場合には固形分)と樹脂粒子との合計100重量部に対して、50〜95重量部であることが好ましく、60〜95重量部であることがより好ましく、60〜90重量部であることがさらに好ましい。
【0081】
樹脂粒子の添加量は、バインダー樹脂(エマルション型の水性樹脂を使用する場合には固形分)と樹脂粒子との合計に対して、5〜50重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがより好ましく、10〜40重量部であることがさらに好ましい。樹脂粒子の添加量が、バインダー樹脂と樹脂粒子との合計に対して5重量部未満である場合、艶消し効果が十分に得られないことがある。また、樹脂粒子の添加量が、バインダー樹脂と樹脂粒子との合計に対して50重量部を越える場合には、塗料の粘度が大きくなりすぎるために樹脂粒子の分散不良が起こることがある。そのため、得られる塗膜にマイクロクラックが発生する、得られる塗膜表面にザラツキが生じる等のような、塗膜の外観不良が起こることがある。
【0082】
前記塗料を構成する溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、前記塗料が油性塗料である場合、前記溶剤として、トルエン、キシレン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等の非水性媒体が挙げられる。前記塗料が水性塗料である場合、前記溶剤として、水、アルコール類(イソプロパノール、n−ブチルセロソルブ、tert−ブチルセロソルブ)等の水性媒体が使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。塗料中における溶剤の含有量は、塗料全量100重量部に対し、通常、20〜60重量部の範囲内である。
【0083】
塗料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0084】
塗料を使用した塗膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。塗膜の形成方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の方法が挙げられる。塗料は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤の添加により希釈されてもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
本発明の塗料は、水に対する接触角が94°〜120°の範囲内である本発明の樹脂粒子と、前記非水性媒体とを含む場合、樹脂粒子の分散性及び再分散性に優れ、かつ、塗膜の耐傷付き性及び触感の軟らかさに優れている。また、本発明の塗料は、水に対する接触角が93°未満である本発明の樹脂粒子と、前記水性媒体とを含む場合にも、樹脂粒子の分散性及び再分散性に優れ、かつ、塗膜の耐傷付き性及び触感の軟らかさに優れている。
【0086】
〔外用剤〕
本発明の樹脂粒子は、外用剤の原料としても使用できる。
【0087】
外用剤における樹脂粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、0.1〜50重量%が好ましく、0.3〜30重量%がより好ましい。外用剤全量に対する樹脂粒子の含有量が0.1重量%を下回ると、樹脂粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、樹脂粒子の含有量が50重量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0088】
外用剤としては、例えば化粧料、外用医薬品等が挙げられる。
【0089】
化粧料としては、上記樹脂粒子の含有により効果を奏するものであれば特に限定されず、例えば、プレシェーブローション、ボディローション、化粧水、クリーム、乳液、ボディシャンプー、制汗剤等の液系の化粧料;石鹸、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品;パック類;ひげ剃り用クリーム;おしろい類;パウダーファンデーション、リキッドファンデーション等のファンデーション;口紅;リップクリーム;頬紅;眉目化粧品;マニキュア化粧品;洗髪用化粧品;染毛料;整髪料;芳香性化粧品;歯磨き;浴用剤;日焼け止め製品;サンタン製品;ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用の化粧料が挙げられる。
【0090】
外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に制限されず、例えば、医薬用クリーム、軟膏、医薬用乳剤、医薬用ローション等が挙げられる。
【0091】
また、これらの外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている添加物を目的に応じて配合できる。そのような添加剤としては、例えば、水や低級アルコール(炭素数5以下のアルコール、例えばエタノール)等の水性媒体、油脂及びロウ類、炭化水素(ワセリン、流動パラフィン等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等の炭素数12以上の脂肪酸)、高級アルコール(セチルアルコール等の炭素数6以上のアルコール)、ステロール、脂肪酸エステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸エステル、2−エチルヘキサン酸セチル等)、金属石鹸、保湿剤、抗炎症剤(グリチルリチン酸)、界面活性剤、高分子化合物、色材原料(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、酸化チタン、粘土鉱物類(タルク、マイカ等)、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シリコーン系粒子、ポリスチレン粒子等のその他の樹脂粒子、特殊配合添加物等が挙げられる。
【0092】
本発明の外用剤は、水に対する接触角が93°未満である本発明の樹脂粒子と、前記水性媒体とを含む場合、樹脂粒子の分散性及び再分散性に優れ、かつ、触感の軟らかさ及び使用時の伸びに優れている。
【0093】
ここで、例えば、ファンデーションの処方について詳述すると、ファンデーションは、例えば、下記のような組成比により作製することができる。
【0094】
<ファンデーションの処方例>
樹脂粒子 15.0重量部
赤色酸化鉄 3.0重量部
黄色酸化鉄 2.5重量部
黒色酸化鉄 0.5重量部
酸化チタン 10.0重量部
マイカ 20.0重量部
タルク 39.0重量部
流動パラフィン 5.0重量部
ミリスチン酸オクチルドデシル 2.5重量部
ワセリン 2.5重量部
防腐剤 適量
香料 適量
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
先ず、実施例及び比較例の樹脂粒子の体積平均粒子径、真密度、圧縮強度、復元率、及び、水に対する接触角の測定方法について説明する。
【0097】
〔体積平均粒子径の測定方法〕
樹脂粒子の体積平均粒子径は、孔径50〜280μmの細孔に電解質溶液を満たし、当該電解質溶液を樹脂粒子が通過する際の電界質溶液の導電率変化から体積を求めることによって、計算した。具体的には、樹脂粒子の体積平均粒子径は、コールター方式精密粒度分布測定装置マルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製)を用いてコールター方式にて測定した体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)である。なお、測定に際しては、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、次に示す測定する樹脂粒子の粒子径に適合したアパチャーチューブを用いてマルチサイザーIIIのキャリブレーションを行い、測定を行った。つまり、体積平均粒子径が10μm未満の樹脂粒子に対しては細孔径50μmのアパチュアーチューブを用い、体積平均粒子径が10〜30μmの樹脂粒子に対しては細孔径100μmのアパチュアーチューブを用い、体積平均粒子径が30μmを超える樹脂粒子に対しては細孔径280μmのアパチュアーチューブを用いて測定を行った。
【0098】
具体的には、市販のガラス製の試験管に樹脂粒子0.1gと0.1%ノニオン系界面活性剤水溶液10mlとを投入し、ヤマト科学株式会社製のタッチミキサー「TOUCHMIXER MT−31」で2秒間混合した後、試験管内の樹脂粒子を市販の超音波洗浄機である株式会社ヴェルヴォクリーア製の「ULTRASONIC CLEANER VS−150」を用いて10秒間予備分散させ、分散液とした。次いで、マルチサイザーIII本体に備え付けの測定用電解液「ISOTON(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)を満たしたビーカー中に、前記分散液を緩く攪拌しながらスポイトで滴下して、マルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。次に、マルチサイザーIII本体に、アパチャーサイズ(径)、Current(アパーチャー電流)、Gain(ゲイン)、Polarity(内側電極の極性)をCoulterElectronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って入力し、manual(手動モード)で測定を行った。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、樹脂粒子10万個の測定を行った時点で、測定を終了した。
【0099】
〔真密度の測定方法〕
樹脂粒子の真密度は、気体置換法を使用した乾式密度計(株式会社島津製作所−マイクロメリティックス社製の乾式自動密度計「アキュピック1330」)を用いて測定した。具体的には、樹脂粒子4gを10mlセルに採って、上記乾式密度計による真密度の測定を5回繰り返し、その平均値を求めた。
【0100】
〔圧縮強度の測定方法〕
樹脂粒子の圧縮強度は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機「MCTM−200」を用いて、下記測定条件にて測定した。具体的には、樹脂粒子1個に対し、下記負荷速度で荷重をかけたときの樹脂粒子の変形量と荷重とを測定した。そして、樹脂粒子が変形してその粒子径が10%減少したときの荷重(N)と、変形前の樹脂粒子の粒子径(CCDカメラにより測長された粒子径)とを、次式に代入して圧縮強度を算出した。
【0101】
<圧縮強度の算出式>
圧縮強度(Mpa)=2.8×荷重(N)/{π×(粒子径(mm))2
<圧縮強度の測定条件>
試験温度:常温(25℃)
上部加圧圧子:直径50μmの平面圧子(材質:ダイヤモンド)
下部加圧板:SKS平板
測定モード:圧縮試験
試験荷重:9.81mN
負荷速度:0.71mN/秒
変位フルスケール:10μm
〔復元率の測定方法〕
樹脂粒子の復元率は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機「MCT−510」を用いて、下記測定条件にて測定した。具体的には、樹脂粒子1個に対し、下記負荷速度で0.05mN〜0.98mNの荷重をかけたときの変位量(μm)と、前記荷重をかけた後、荷重を0.04mNまで減少させたときの復元量(μm)を測定した。そして、測定した変位量と、復元量とに基づいて、下記式により、復元率を算出した。
【0102】
<復元率の算出式>
復元率(%)=[復元量(μm)/変位量(μm)]×100
<復元率の測定条件>
試験温度:常温(25℃)
上部加圧圧子:直径50μmの平面圧子(材質:ダイヤモンド)
下部加圧板:SKS平板
測定モード:負荷−除荷試験
反転荷重:0.98mN
原点用荷重値:0.05mN
負荷速度:0.0223mN/秒
変位フルスケール:10μm
〔水に対する接触角の測定方法〕
樹脂粒子の水に対する接触角は、三協パイオテク株式会社製のWTMY−232A型ウェットテスタを測定装置として用い、下記測定条件にて測定した。具体的には専用セルにサンプルを詰め、上記測定装置にセットした後、溶媒(水)を流して、圧力変化を読み取り、変曲点における圧力より接触角を測定した。
【0103】
<水に対する接触角の測定条件>
流量:1.75ml/min
比表面積(cm2/g):
10000×6/(体積平均粒子径(μm)×密度(g/cm3))
測定に使用した樹脂粒子量:4.5g
以下に、実施例及び比較例の樹脂粒子の塗料中における再分散性の評価方法について説明する。
【0104】
〔塗料中における樹脂粒子の再分散性の評価方法〕
作製した塗料を20℃で30日間放置した後、手で振り混ぜ、沈降した樹脂粒子全てが均一に分散するまでに振り混ぜた回数を、樹脂粒子の再分散性評価の指標とした。具体的には、以下の評価基準で、樹脂粒子の再分散性を評価した。
【0105】
<評価基準>
○:振り混ぜ回数が15回以下である。
【0106】
△:振り混ぜ回数が16回以上20回以下である。
【0107】
×:振り混ぜ回数が21回以上である。
【0108】
以下に、実施例及び比較例の塗料の触感、及び耐傷付き性の評価方法について説明する。
【0109】
〔塗膜の触感性の評価方法〕
官能試験により触感性評価を行った。
【0110】
具体的には、塗料を、基材フィルムとしてのポリエステルフィルムの一方の面に、クリアランス100μmのブレードをセットした塗工装置を用いて塗布した後、70℃で10時間乾燥することによって、ポリエステルフィルムの前記面に塗膜を形成した。そして、得られた塗膜の軟らかさを、10人のパネラーが以下の採点基準で採点し、全パネラーが採点した点数の平均値(平均点)から、以下の評価基準で、触感性を評価した。
【0111】
<採点基準>
3点:塗膜を指で擦った際に軟らかさを感じる。
【0112】
2点:塗膜を指で擦った際にやや硬さを感じる。
【0113】
1点:塗膜を指で擦った際に硬さを感じる。
【0114】
<評価基準>
○:パネラーの平均点が2.5点以上
△:パネラーの平均点が1.5点以上2.5点未満
×:パネラーの平均点が1.5点未満
〔塗膜の耐傷付き性の評価方法〕
塗料を、基材フィルムとしてのポリエステルフィルムの一方の面に、クリアランス100μmのブレードをセットした塗工装置を用いて塗布した後、70℃で10時間乾燥することによって、ポリエステルフィルムの前記面に塗膜を形成した。
【0115】
そして、上記塗膜を、当該塗膜の形成後1週間後に爪でひっかき、この時の塗膜の状態を以下の評価基準により、評価した。
【0116】
<評価基準>
○:爪でひっかいた跡(スジ)が残っていない。
【0117】
△:爪でひっかいた跡(スジ)がわずかに白く残っている。
【0118】
×:爪でひっかいた跡(スジ)が白く残っている。
【0119】
以下に、実施例1〜4及び比較例1〜3のパウダーファンデーションの官能試験方法、並びに、実施例5〜11、比較例4、及び比較例5のボディローション中における樹脂粒子の再分散性の評価方法及びそれらボディローションの官能試験方法及びについて説明する。
【0120】
〔パウダーファンデーションの官能試験方法〕
得られたパウダーファンデーションについて、5人のパネラーが使用テストを行い、塗布時の軟らかさ、伸びの良さ、及び化粧持ちの良さを、以下の採点基準で採点し、全パネラーが採点した点数の平均値(平均点)から、以下の評価基準で、パウダーファンデーションの塗布時の軟らかさ、伸びの良さ、及び化粧持ちの良さを評価した。
【0121】
<採点基準>
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや悪い
1点:悪い
<評価基準>
◎:パネラーの平均点が4.5点以上
○:パネラーの平均点が3.5点以上4.5点未満
△:パネラーの平均点が2.5点以上3.5点未満
×:パネラーの平均点が1.5点以上2.5点未満
××:パネラーの平均点が1.5点未満
〔ボディローション中における樹脂粒子の再分散性の評価方法〕
作製したボディローションを40℃で30日間放置した後、手で振り混ぜ、沈降又は浮遊した樹脂粒子全てが均一に分散するまでに振り混ぜた回数を、樹脂粒子の再分散性評価の指標とした。具体的には、7回未満の振り混ぜによって沈降又は浮遊した樹脂粒子全てが均一に分散した場合には再分散性の評価を○とし、7回の振り混ぜによって沈降又は浮遊した樹脂粒子全てが均一に分散しなかった場合には再分散性の評価を×とした。
【0122】
〔ボディローションの官能試験方法〕
得られたボディローションについて、10人のパネラーが使用テストを行い、均一性、伸び、及び軟らかさを、以下の採点基準で採点し、全パネラーが採点した点数の平均値(平均点)から、以下の評価基準で、ボディローションの均一性、伸び、及び軟らかさ(触感の軟らかさ)を評価した。
【0123】
<採点基準>
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや悪い
1点:悪い
<評価基準>
◎:パネラーの平均点が4.5点以上
○:パネラーの平均点が3.5点以上4.5点未満
△:パネラーの平均点が2.5点以上3.5点未満
×:パネラーの平均点が1.5点以上2.5点未満
××:パネラーの平均点が1.5点未満
[実施例1]
(樹脂粒子の製造)
ビーカーに、水性媒体としての脱イオン水900重量部にアニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.15重量部を溶解させた水溶液を投入し、この水溶液中に、分散剤としての第三リン酸カルシウム40重量部を分散させて、水相を調製した。
【0124】
水相の調製に用いたビーカーとは別のビーカーに、単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)80重量部と、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)20重量部とからなる単量体混合物を投入し、この単量体混合物に、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル1.5重量部を溶解させて、油相を調製した。
【0125】
調製した油相を先に調製した水相に加え、ホモミクサー(プライミクス株式会社製の、卓上型「TKホモミクサー」)を用い、回転数7000rpmで攪拌して、油相を水相中に分散させ、分散液を得た。この分散液を、攪拌機、加熱装置、及び温度計を備えた重合反応器に投入し、65℃で8時間攪拌することにより、懸濁重合を行った。重合後、重合反応器内の懸濁液(反応液)を室温(20℃)まで冷却した後、塩酸を加えて、第三リン酸カルシウムを溶解させた。次いで、懸濁液をろ過し、ろ過の残渣をイオン交換水により洗浄、脱水した後、乾燥させ、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、12.2μmであった。
【0126】
(塗料の製造)
上記樹脂粒子の製造で得られた樹脂粒子80重量部と、バインダー樹脂としてのアクリルポリオール(固形分50重量%、水酸基価100、DIC株式会社製、商品名「アクリディック(登録商標)A−801」、トルエン/酢酸ブチル=80/20(重量比)の溶剤(非水性媒体)を50重量%含有)200重量部と、バインダー樹脂としてのポリイソシアネート(固形分60%、三井化学株式会社製、商品名「タケネート(登録商標)D110N」)55重量部と、溶剤(非水性媒体)としてのトルエン100重量部と、溶剤(非水性媒体)としてのメチルエチルケトン200重量部とを混合し、塗料を作製した。
【0127】
(パウダーファンデーションの製造)
上記樹脂粒子の製造で得られた樹脂粒子を用いて、樹脂粒子の配合量を10.0重量部とし、タルクの配合量を44.0重量部とした以外は、前述した「ファンデーションの処方例」と同様にして、外用剤としてのパウダーファンデーションを作製した。
【0128】
[実施例2]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を85重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を15重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びパウダーファンデーションを製造した。この実施例2で得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、10.3μmであった。
【0129】
[実施例3]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を93重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を7重量部とする以外は、実施例1と同様にして、水相及び油相を調製して、懸濁重合を行った。重合後、実施例1と同様に、重合反応器内の懸濁液(反応液)を室温(20℃)まで冷却した後、塩酸を加えて、第三リン酸カルシウムを溶解させた。次いで、懸濁液をろ過し、ろ過の残渣をイオン交換水により洗浄、脱水した後、シリカ(日本アエロジル株式会社製の「R974」、一次粒子径12nm)5重量部を加えて、混合することにより、表面にシリカが付着した樹脂粒子を製造した。この実施例3で得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、11.3μmであった。
【0130】
さらに、この実施例3で得られた樹脂粒子を用い、実施例1と同様にして、塗料及びパウダーファンデーションを製造した。
【0131】
なお、この実施例3の樹脂粒子の真密度、及び、水に対する接触角の測定には、表面にシリカが付着していない樹脂粒子、即ち、上記実施例3の樹脂粒子の製造において、前記ろ過の残渣をイオン交換水により洗浄、脱水した後、シリカ(日本アエロジル株式会社製の「R974」、一次粒子径12nm)を加えずに製造した樹脂粒子を用いた。
【0132】
[実施例4]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を60重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を40重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びパウダーファンデーションを製造した。この実施例4で得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、12.3μmであった。
【0133】
[比較例1]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体として、2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)80重量部に代えて、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業株式社製、商品名「ISTA」、炭素数18の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)85重量部を使用し、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を15重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びパウダーファンデーションを製造した。この比較例1で得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、10.9μmであった。
【0134】
[比較例2]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体として、2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)80重量部に代えて、ラウリルアクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)LA」、炭素数12の直鎖状のアルキル基を有するもの)90重量部を使用し、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を10重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びパウダーファンデーションを製造した。この比較例2で得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、13.2μmであった。
【0135】
[比較例3]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体として、2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)80重量部に代えて、メチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステルM」、炭素数1のアルキル基を有するもの)96重量部を使用し、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を4重量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びパウダーファンデーションを製造した。この比較例3で得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、9.7μmであった。
【0136】
上記実施例1〜4、並びに比較例1〜3の各々について、樹脂粒子の製造で使用した単量体混合物の組成、樹脂粒子の体積平均粒子径、真密度、圧縮強度、復元率、及び水に対する接触角の測定結果、塗料中での樹脂粒子の再分散性の評価結果、並びに、樹脂粒子を含む塗料の塗膜の触感性及び耐傷付き性の評価結果、樹脂粒子を含むパウダーファンデーションの塗布時の軟らかさ、伸びの良さ、及び化粧もちの良さの評価結果を、下記表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
表1に示す結果より、実施例1〜4の樹脂粒子は、比較例1〜3の樹脂粒子と比べて、圧縮強度が低く、且つ、復元率が高い樹脂粒子であることが認められた。具体的には、実施例1〜4の樹脂粒子は、0.5〜6.0MPa(具体的には、1.80〜5.67MPa)の範囲内の圧縮強度を有し、且つ、50%以上(具体的には、60〜75%)の復元率を有する軟らかい樹脂粒子であることが認められた。
【0139】
また、実施例1〜4の樹脂粒子の真密度は、0.9〜1.1g/cm3(具体的には、0.96〜1.05g/cm3)の範囲内にあることが認められた。
【0140】
また、実施例1〜4の樹脂粒子の水に対する接触角は、93°〜120°(具体的には、100〜110°)の範囲内にあり、実施例1〜4の樹脂粒子は、水に対する接触角が93°未満である比較例1〜3の樹脂粒子と比べて、非水性媒体中での再分散性に優れた樹脂粒子であることが認められた。
【0141】
また、実施例1〜4の樹脂粒子を含む塗料から得られる塗膜は、比較例1〜3の樹脂粒子を含む塗料から得られる塗膜と比べて、触感が軟らかく、傷が付きにくいものであることが認められた。
【0142】
また、実施例1〜4の樹脂粒子を含む外用剤は、比較例1〜3の樹脂粒子を含む外用剤と比べて、塗布時の軟らかさ(触感の軟らかさ)に優れていることが認められた。
【0143】
以上のことから、本発明の樹脂粒子は、復元率の高い軟らかい粒子であって、塗料に配合された場合において、当該塗料から得られる塗膜に軟らかい触感を付与することができ、且つ、前記塗膜の耐傷付き性を向上させることができるものであり、また、外用剤に配合された場合において、当該外用剤に軟らかい触感を付与することができることが認められた。
【0144】
[実施例5]
(樹脂粒子の製造)
親水性単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」、前記一般式(1)において、RがCH3、mが約3.5、nが約2.5のもの)5重量部を単量体混合物に追加し、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を15重量部とし、重合開始剤として過酸化ベンゾイル1.5重量部に代えて1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)(大塚化学株式会社製、商品名「OTAZO−15」)0.5重量部を使用し、油相を水相中に分散させる際の攪拌の回転数を7000rpmから5500rpmとした以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、13.2μmであった。
【0145】
(塗料の製造)
上記樹脂粒子の製造で得られた15gを、バインダー樹脂及び水性媒体としてのポリエステル樹脂分散液(東洋紡株式会社製、商品名「バイロナール(登録商標)MD−1200」、固形分濃度(樹脂濃度)34重量%、分散媒として水55重量%及びn−ブチルセロソルブ11重量%を含む水分散型ポリエステル樹脂)100gに混合し撹拌して、塗料を作製した。
【0146】
(ボディローションの製造)
上記樹脂粒子の製造で得られた樹脂粒子7重量部と、水性媒体としての精製水46.4重量部及びエタノール46重量部と、抗炎症剤としてのグリチルリチン酸0.1重量部と、香料0.5重量部とをミキサーにて充分混合して、外用剤としてのボディローションを得た。
【0147】
[実施例6]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を84重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を6重量部とし、親水性単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」)の使用量を10重量部とした以外は、実施例5と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びボディローションを製造した。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、13.8μmであった。
【0148】
[実施例7]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を60重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を15重量部とし、親水性単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」)の使用量を25重量部とした以外は、実施例5と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びボディローションを製造した。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、12.8μmであった。
【0149】
[実施例8]
親水性単量体として、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」)5重量部に代えて、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)PP−1000」、前記一般式(1)において、RがCH3、mが0、nが約4〜6のもの)40重量部を使用し、単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を50重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を10重量部とした以外は、実施例5と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びボディローションを製造した。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、15.1μmであった。
【0150】
[実施例9]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を50重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を40重量部とし、親水性単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」)の使用量を10重量部とした以外は、実施例5と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びボディローションを製造した。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、11.8μmであった。
【0151】
[実施例10]
親水性単量体として、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」)5重量部に代えて、ヒドロキシエチルメタクリレートへのε−カプロラクトン1モル付加体(株式会社ダイセル製、商品名「プラクセル(登録商標)FM1」、前記一般式(2)において、R1がCH3、R2がH、pが1のもの)15重量部を使用し、単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体としての2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)の使用量を65重量部とし、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を20重量部とした以外は、実施例5と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びボディローションを製造した。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、12.0μmであった。
【0152】
[実施例11]
(樹脂粒子の製造)
重合開始剤として過酸化ベンゾイル1.5重量部に代えて1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)(大塚化学株式会社製、商品名「OTAZO−15」)0.5重量部を使用し、油相を水相中に分散させる際の攪拌の回転数を7000rpmから5500rpmとした以外は、実施例2と同様にして、樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、11.8μmであった。
【0153】
[比較例4]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体として、2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)80重量部に代えて、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業株式社製、商品名「ISTA」、炭素数18の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)74重量部を使用し、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を16重量部とし、親水性単量体としてのポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」)の使用量を10重量部とした以外は、実施例5と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びパウダーファンデーションを製造した。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、13.6μmであった。
【0154】
[比較例5]
単官能(メタ)アクリル酸エステル系単量体として、2−デシルテトラデカニルアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「DTD−A」、炭素数24の分岐鎖状のアルキル基を有するもの)50重量部に代えて、メチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリエステルM」、炭素数1のアルキル基を有するもの)80重量部を使用し、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルEG」)の使用量を5重量部とし、親水性単量体としてのポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製、商品名「ブレンマー(登録商標)PP−1000」)の使用量を15重量部とした以外は、実施例8と同様にして、樹脂粒子、並びに、この樹脂粒子を含む塗料及びパウダーファンデーションを製造した。得られた樹脂粒子の体積平均粒子径は、10.2μmであった。
【0155】
上記実施例5〜11、比較例4、及び比較例5の各々について、樹脂粒子の製造で使用した単量体混合物の組成、樹脂粒子の体積平均粒子径、真密度、圧縮強度、復元率、及び水に対する接触角の測定結果、ボディローション中での樹脂粒子の再分散性の評価結果、並びに、樹脂粒子を含むボディローションの均一性、伸び、及び軟らかさの評価結果、樹脂粒子を含む塗料の塗膜の触感性及び耐傷付き性の評価結果を、下記表2に示す。
【0156】
【表2】
【0157】
表2に示す結果より、実施例5〜11の樹脂粒子は、比較例4及び5の樹脂粒子と比べて、圧縮強度が低く、且つ、復元率が高い樹脂粒子であることが認められた。具体的には、実施例5〜11の樹脂粒子は、0.5〜6.0MPaの範囲内の圧縮強度を有し、且つ、50%以上の復元率を有する軟らかい樹脂粒子であることが認められた。
【0158】
また、実施例5〜11の樹脂粒子の真密度は、0.9〜1.1g/cm3の範囲内にあることが認められた。
【0159】
また、実施例5〜11の樹脂粒子を含む外用剤は、比較例4及び5の樹脂粒子を含む外用剤と比べて、軟らかさ(触感の軟らかさ)に優れていることが認められた。
【0160】
また、実施例5〜9及び11の樹脂粒子を含む塗料から得られる塗膜は、比較例1及び2の樹脂粒子を含む塗料から得られる塗膜と比べて、触感が軟らかく、傷が付きにくいものであることが認められた。
【0161】
以上のことから、本発明の樹脂粒子は、復元率の高い軟らかい粒子であって、塗料に配合された場合において、当該塗料から得られる塗膜に軟らかい触感を付与することができ、且つ、前記塗膜の耐傷付き性を向上させることができるものであり、また、外用剤に配合された場合において、当該外用剤に軟らかい触感を付与することができることが認められた。
【0162】
さらに、親水性単量体を含む単量体混合物の重合体からなる実施例5〜10の樹脂粒子の水に対する接触角は、93°未満であり、実施例5〜10の樹脂粒子は、親水性単量体を含まない単量体混合物の重合体からなり水に対する接触角が93°以上である実施例11の樹脂粒子と比べて、水性媒体中での再分散性に優れた樹脂粒子であることが認められた。
【0163】
また、親水性単量体を含む単量体混合物の重合体からなり水に対する接触角が93°未満である実施例5〜10の樹脂粒子と水性媒体とを含む外用剤は、親水性単量体を含まない単量体混合物の重合体からなり水に対する接触角が93°以上である実施例11の樹脂粒子と水性媒体と含む外用剤と比べて、均一性及び伸びに優れていることが認められた。
【0164】
以上のことから、本発明の樹脂粒子において、前記単量体混合物が親水性単量体をさらに含み、樹脂粒子の水に対する接触角が93°未満である場合には、水性媒体を含む外用剤に配合された場合において、当該外用剤に対して優れた再分散性、均一性、及び伸びを付与することができることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の樹脂粒子は、例えば、塗料用の添加剤(例えば、艶消し剤、塗膜軟質化剤等)、光学フィルム用の光拡散剤、化粧料のような外用剤の原料、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤、電子ペーパー等の画像表示用素子等に利用可能である。