(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、環境試験の一つとして、安定性試験と称される試験がある。安定性試験は、医薬品を対象として実施されることが多い試験である。
医薬品を対象とする安定性試験は、摂氏25度、相対湿度60パーセントという様な一定の環境に医薬品を長時間さらし、その変化を確認する試験である。
【0006】
医薬品を対象とする安定性試験は、常温に近い環境で行う試験であり、試験環境を作ること自体は難しいことではない。
しかしながらこの試験は、試験対象が医薬品であるため、極めて厳格に実施されるべき試験であり、試験中に環境の変化が起こることは許されない。
また医薬品メーカは、厚生労働省から、安定性試験の結果報告書の提出を求められる場合があり、安定性試験には高い信頼性が要求される。
【0007】
一方、試験対象たる医薬品は、体積の小さいものであるから、供試体たる医薬品を設置する空間は小さいもので足る。
また製薬メーカでは、各種の医薬品を製造販売することが多いから、試験対象となる医薬品の品目が多い。また医薬品の製造は、長期間に渡って継続される場合が多いから、製造ロットも多く、仮にロットごとに安定性試験を行うとすれば試験頻度は相当に高いものとなる。
即ち製薬メーカで行う安定性試験は、多品種少量の供試体を試験対象とする試験であると言える。
そのため医薬品を対象とする安定性試験は、人が入ることができる様な大型の環境試験装置の中に棚を置き、この棚に供試体たる医薬品を設置して長時間留め置くことにより実施されている。
【0008】
また前記した様に、医薬品の安定性試験は、厳格に実施されるべき試験であり、且つ高い信頼性が要求されるから、環境試験装置内の温度や湿度は、常時モニターされ、記録として残される。
そして環境に変化が起きた場合には、その原因を追求すると共に、対処した方策を記録し、責任者が署名捺印し、記録として残す。
また環境の変化が大きい場合や、環境が崩れた時間が長時間にわたる場合には、安定性試験自体をやり直すこととなる。
【0009】
ここで上記した様な大型の環境試験装置の中に棚を置き、この棚に供試体たる医薬品を設置する方法を採用する場合において、環境が変化する要因の一つは、作業者が出入りする際における入口扉の開閉である。またもう一つは、環境試験装置内に入った作業者の体温や発汗・呼吸による温度・湿度の変化である。さらにもう一つは、作業者が動くことによって発生する空気の流れである。
即ち大型の環境試験装置の中に棚を置いてその棚に供試体を置く方策を採用する限り、作業者が出入りする際に外気が侵入することは避けられない。また環境試験装置の中で作業者が作業をする限り、作業者の体温等によって内部の環境が影響を受けることは避けられない。また作業者が動くことによって空気の動き(以下、風という)が発生することは避けられない。
そのため、作業者が棚から供試体たる医薬品を出し入れする際には、必ずといってよい程、環境試験装置の環境が設定範囲を外れ、その度に、記録を残さなけばならない。例えば、「平成25年5月10日、作業者藤田隆が薬品取り出しの為に扉を開閉、作業時間2分、温度変化摂氏2度、5分後に設定環境に復帰、責任者大南匡史」という様に記録を残す必要があり、煩雑である。
【0010】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、入口扉の開閉や、作業者の体温等による影響を受けにくく、試験環境を乱すことが少ない環境試験装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、 送風機と、温度・湿度調整装置とを備え、一定の温度及び一定の湿度の環境を人工的に作ることができる環境試験装置において、内部に通風空間領域と、供試体設置領域と、
前記通風空間領域の空間とは別の空間を形成する作業領域とがあり、
さらに所望の温度や湿度の空気を生成する空調用通路を有し、前記通風空間領域は、
前記空調用通路で一定の温度及び一定の湿度に調整された空気を存在させる空間であり、前記供試体設置領域は、壁で仕切られた複数の供試体設置空間が棚状に配置されたものであり、各供試体設置空間には供試体を出し入れする小扉が設けられており、前記小扉は通気性を有し、前記作業領域は、作業者が作業を行うことが可能な大きさを有する空間であり、当該作業領域に作業者が出入りするための大扉があり、前記供試体設置領域は、前記通風空間領域と前記作業領域との間に配置されており、各供試体設置空間は、通風空間領域側から作業領域側に向かって通風状態とされるものであり、各供試体設置空間を通過して前記小扉から排出された空気が
前記作業領域を経由して前記空調用通路に流入されその温度及び湿度
が前記温度・湿度調整装置で調整されて通風空間領域に導入され
、さらに各供試体設置空間に流れ込むことによって循環するよう構成され
ていることを特徴とする環境試験装置である。
【0012】
ここで「通風状態」というためには、少なくとも内部の空気が動いていれば足る。
本発明の環境試験装置では、各供試体設置空間に供試体を出し入れする小扉が設けられている。そのため、作業者が作業領域で作業を行っても、作業者が動くことによって発生する風が小扉で遮断され、供試体設置空間の環境を乱さない。
また本発明の環境試験装置では、供試体設置領域が通風空間領域と作業領域との間に配置されており、各供試体設置空間は、通風空間領域側から作業領域側に向かって常時通風状態となっている。そのため大扉が開かれたり、作業者の体温や発汗、呼吸によって作業領域の環境が乱れたり、内部で風が発生したとしても、各供試体設置空間に与える影響は小さい。そして作業領域内の空気は、温度・湿度調整装置で調整された後に、通風空間領域に導入され、各供試体設置空間に流れるから、各供試体設置空間には、常に、設定範囲の温度・湿度に調整された空気が通過し、医薬品等の供試体を一定の環境にさらし続けることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、各供試体設置空間の通風空間領域側には壁が設けられ、当該壁には複数の孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置である。
【0014】
本発明の環境試験装置では、各供試体設置空間の通風空間領域側には壁が設けられている。そのため通風空間領域は、やや閉塞された空間となり、内部の圧力が均一化する。そのため各供試体設置空間に対して均等に空気を供給することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記小扉には複数の孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0016】
本発明の環境試験装置では、各供試体設置空間を開閉する小扉に、複数の孔が設けられている。そのため各供試体設置空間内から滞りなく作業領域内に空気を流すことができる。また小扉の孔から放出される空気の流速は、各供試体設置空間内の流速よりも早いものとなる。そのため作業領域内で風が発生しても、供試体設置空間側に風が侵入することは少ない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の環境試験装置は、内部に複数の供試体設置空間あり、これが棚状に配置されている。そのため多品種少量の供試体を同時に試験することができる。
また本発明の環境試験装置は、作業者の出入りや、作業者の体温、発汗、呼吸による影響を受けにくく、長期間に渡って一定の環境を維持することができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下さらに、本発明の実施形態に係る環境試験装置1について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、ウォークインタイプの恒温恒湿室と称される装置であり、人が中に入ることができる程度の大きさを有する恒温恒湿装置である。そして本実施形態では、
図1,2に示す様に、装置本体2と、その装置本体2に対して開閉自在であって人が出入りすることが可能な大扉6が備えられている。
なお装置本体2及び大扉6は、いずれも断熱性を備えた構造となっている。
【0020】
また装置本体2の中は、大きく3領域に区切られている。即ち、装置本体2の中であって、その最も奥の領域は、通風空間領域10であり、最も正面側の領域は、作業領域11となっている。そして奥の通風空間領域10と、正面側の作業領域11との間が供試体設置領域12となっており、供試体設置空間15が棚状に配置されている。即ち供試体設置領域12には、供試体設置空間15が複数設けられた棚部材3が設けられている。
また供試体設置領域12であって前記した棚部材3の上に、空調用通路31があり、空調用通路31に送風機16及び、温度・湿度調整装置17が配置されている。
【0021】
通風空間領域10は、緩衝空間であり、送風の速度を均一化する空間である。通風空間領域10は、具体的には、例えば、幅10センチメートルから30センチメートル程度の空間である。通風空間領域10は、何も無い空間である。
【0022】
また作業領域11は、人が歩くことができ、且つ人が向きを変えることができる程度の幅を有する空間である。具体的には、作業領域11は、例えば、幅約60センチメートルから120センチメートル程度の細長い空間である。
【0023】
本実施形態で採用する供試体設置領域12には、棚部材3が設置されている。棚部材3には、直方体の供試体設置空間15が、例えば、横方向に8列、高さ方向に3段に渡って設けられている。即ち棚部材3は、直方体の供試体設置空間15が立体的に設けられたものであり、棚部材3の供試体設置空間15は、全体として一つの壁を形成するが如くに配置されている。各供試体設置空間15はいずれも同じ大きさであり、かつ同一の構造をしている。
即ち供試体設置空間15は、
図3の様に天面壁20、左右側面壁21,22及び底面壁25で覆われている。なお、各壁は、隣接する供試体設置空間15との間で共有されており、例えば一つの供試体設置空間15の天面壁20は、その上段の供試体設置空間15の底面壁25を構成している。
前記した天面壁20、左右側面壁21,22及び底面壁25は、いずれも通気性を持たない素材で作られている。
【0024】
供試体設置空間15の正面側には、小扉26が設けられている。小扉26は、その一部又は全部が、パンチングメタルや、エクスパントメタル等の開口が均等またはランダムに設けられた板体によって形成されている。また小扉26は、枠に金網を張った様な構造のものであってもよい。ただし、小扉26に設けられた開口の総面積は、小扉26の60パーセント以下であることが望ましい。より望ましくは、30パーセント以下である。本実施形態では、この条件に適合するものとして、パンチングメタルで作られた小扉26を採用している。
小扉26は、前記した様に複数の開口が設けられており、通気性がある。
小扉26は図示しないヒンジを介して供試体設置空間15の開口端に取り付けられており、ウイング状に開閉することができる。また小扉26には、把手28が設けられている。さらに図示しない錠があり、小扉26を施錠することができる。
【0025】
供試体設置空間15の裏面側には、裏面壁30がある。裏面壁30についても一部又は全部がパンチングメタルや、エクスパンドメタル、金網等で作られており、複数の開口があって通気性がある。なお裏面壁30は、供試体設置空間15に対して個別に設ける必要はなく、棚部材3の背面を覆う、一枚のパンチングメタル等であってもよい。
本実施形態においては、供試体設置空間15の裏面側の総開口面積は、小扉26の総開口面積と同じである。
【0026】
また本実施形態では、供試体設置空間15を構成する棚部材3と装置本体2の天井面5との間には隙間があり、この隙間に空調用通路31が設けられている。
即ち空調用通路31は、
図1、
図2の様に、棚部材3と装置本体2の天井面5との間にあり、水平方向の中央部に、作業領域11側に向かって開く導入開口32が設けられている。
また空調用通路31の末端側は、通風空間領域10に連通している。
【0027】
空調用通路31に送風機16及び、温度・湿度調整装置17が配置されている。本実施形態では、温度・湿度調整装置17は、加湿器35と、冷却除湿器36及び加熱器37によって構成されている。
即ち空調用通路31は、所望の温度や湿度の空気を生成する部分であり、導入開口32から順番に、加湿器35、冷却除湿器36、加熱器37、送風機16が配されている。
【0028】
加湿器35は、一種のボイラーであり、蒸気を放出するものである。空調用通路31には蒸気を放出する部位だけがあり、ボイラーの本体部分40は、装置本体2の外にある。
冷却除湿器36は、公知の冷却装置43の一部であり、より具体的には蒸発器であって冷凍サイクルの一部を担うべく機能するものである。即ち冷却装置43は、冷却除湿器(蒸発器)36の他、圧縮機、凝縮器、膨張手段(いずれも図示せず)を有し、これらが環状に接続されている。そして内部に相変化する冷媒が流通し、一連の冷凍サイクルを構成する。前記した冷媒は、冷却除湿器(蒸発器)36の一次側を流れ、冷却除湿器36内で気化して周囲の熱を奪い、冷却除湿器36の表面温度を低下させる。
【0029】
加熱器37は、従来公知の電気ヒータであり、空調用通路31を通過する空気を加熱するものである。
送風機16は、従来公知の多翼型の遠心送風機である。
【0030】
環境試験装置1は、送風機16によって装置本体2内の空気を循環して、供試体設置空間15内に所望の環境を作る。即ち装置本体2内の空気は、送風機16によって導入開口32から空調用通路31側に吸入され、空調用通路31を水平方向に通過する。
ここで空調用通路31には、前記した様に、加湿器35と、冷却除湿器36及び加熱器37によって構成された温度・湿度調整装置17が内蔵されている。具体的には、空調用通路31には、空気の流れ方向に沿って順番に加湿器35、冷却除湿器36、加熱器37が配置されているため、空調用通路31に導入された空気は、加湿器35で必要に応じて加湿され、冷却除湿器36で冷却及び除湿されて湿度が調整され、さらに加熱器37で加熱されて温度調節され、送風機16に吸い込まれて、通風空間領域10に向かって吐出される。
なお、温度及び湿度は、空調用通路31の出口側に設けられた図示しない温度センサーと湿度センサーで監視され、検知温度及び検知湿度が、所定の範囲内になる様に、温度・湿度調整装置17が制御される。
【0031】
そして温度及び湿度が調整された空気は、通風空間領域10に流れ、ここで整流されて各供試体設置空間15内に流れ込む。即ち通風空間領域10は、なにも無い空間であるが、棚部材3の背面側に位置して棚部材3の背面の全域を覆っている。さらに、棚部材3の背面側には裏面壁30があり、ある程度閉塞されている。そのため送風機16から吐出された空気は、通風空間領域10の中で風速を失い、均圧化する。
そして通風空間領域10内の温度等が調節され、且つ均圧化した空気は、裏面壁30の開口から各供試体設置空間15に均等に入り、各供試体設置空間15を通過して作業領域11側に排出され、再度導入開口32に吸い込まれる。
通風空間領域10に流入した空気は、その全量が供試体設置空間15を経由して作業領域11に排出され、通風空間領域10から直接作業領域11に流入する空気はない。
【0032】
本実施形態では、各供試体設置空間15は、常にゆるやかな通風環境となっている。より具体的には、各供試体設置空間15は、風速0.1m/s以上、5m/s未満、より望ましくは、風速0.2から0.5m/s程度の微風環境である。即ち紙片が舞わない程度、より望ましくは、煙がわずかにたなびく程度の空気の動き(風)があり、空気が常時各供試体設置空間15を通過している。
【0033】
また各供試体設置空間15を通過した空気は、小扉26のパンチングメタル等の開口から作業領域11に放出されるが、小扉26の総開口面積は、当然に小扉26の面積よりも小さいから、小扉26から排出される風の風速は、各供試体設置空間15内の風速よりも早い。具体的には0.5m/s程度の風速で小扉26に設けられた開口から空気が放出される。
【0034】
本実施形態の環境試験装置1は、医薬品の安定性試験を実施するものであり、作業者が大扉6を開いて作業領域11の中に入り、手で医薬品をいくつかの供試体設置空間15に入れる。そして、送風機16及び、温度・湿度調整装置17を起動し、各供試体設置空間15を所望の環境にする。
一般に、医薬品の安定性試験は、摂氏25度、相対湿度60パーセントの環境、摂氏30度、相対湿度65パーセントの環境、摂氏40度、相対湿度75パーセントの環境のいずれかで行われるから、このいずれかの環境となる様に温度・湿度調整装置17を制御することとなる。
【0035】
そして試験が開始された後に、空いている供試体設置空間15に他の医薬品を挿入する場合や、試験が終了した医薬品を供試体設置空間15から取り出す場合には、作業者が大扉6を開いて装置本体2の中に入る。
このとき、大扉6から外気が侵入することは避けられないが、大扉6は作業領域11と外部との間に設けられているものであるから、侵入した外気は、作業領域11に入ることとなる。
外気が侵入することによって、装置本体2の空気の流れは、多少変化するものの、空調用通路31の導入開口32は、作業領域11側に開いている。
また供試体設置空間15には小扉26が設けられており、供試体設置空間15と作業領域11との間は、仕切られている。さらに供試体設置空間15内は、通風環境となっており、小扉26に設けられた開口から常時空気が強風状態又は弱風状態で吹き出している。
即ち供試体設置空間15内は、微風の通風状態であるが、小扉26の孔の総面積は供試体設置空間15の断面積よりも小さい。そのため小扉26に設けられた開口から吹き出す風の風速は、供試体設置空間15内の風速よりも早く、開口からは強風状態又は弱風状態で空気が吹き出している。
そのため大扉6を開くことによって作業領域11に外気が侵入したとしても、外気が小扉26の開口から供試体設置空間15内に入ることはない。
そのため侵入した外気は、導入開口32から空調用通路31に入り、温度及び湿度が調整されて循環する。
【0036】
また作業者は、作業領域11内を歩き、所望の供試体設置空間15を開いて供試体を出し入れする。
この一連の動作を行っている際、作業者の体温や呼吸等によって、作業領域11内の環境が乱れる。また作業者が動くことによって、空気の流れが生じる。しかしながら、前記した様に、小扉26の開口からは強風状態又は弱風状態で空気が吹き出しているから、作業者の体温を帯びた空気や、汗等を含んだ空気が他の供試体設置空間15に入ることは無い。そのため、他の供試体設置空間15内の環境が維持される。
【0037】
以上、本実施形態の環境試験装置1の主要な構成と、その作用について説明したが、本実施形態の環境試験装置1は、環境試験装置が備えるべきその他の機能を備えている。また特に安定性試験を行う環境試験装置1が備えている望ましい機能があり、これらの機能を持っていることが望ましい。
即ち、環境試験装置1は、試験環境をモニターする機能を持っている。また試験環境は、供試体設置空間15ごとにモニターされている。
作業領域11内には照明があり、図示しないスイッチでオンオフすることができる。各供試体設置空間15内にも照明があることが望ましい。また小扉26を閉じることにより、自動的に照明が消灯することが望ましい。
本実施形態では、通風空間領域10は空洞であって何も無い空間であるが、風向板や邪魔板等が設けられていてもよい。
本実施形態の環境試験装置1では、空調用通路31の導入開口32は、水平方向に向かって開口しているが、空調用通路31の導入開口32を、作業領域11の上に設け、下向きに開口させてもよい。
また本発明は、空調用通路31の導入開口32を、作業領域11の下部側や床面に設けることを否定するものではない。要するに導入開口32は、供試体設置空間15から排出された空気を吸入することができる位置にあればよい。
【0038】
以上の実施形態では、各供試体設置空間15はいずれも同じ大きさであり、かつ同一の構造のものであると説明した。しかしながら本発明は、この構成に限定されるものでなく、形状や大きさの異なる供試体設置空間が混在していてもよい。また内部に小さな仕切りがあるという様に、構造の異なるものがあってもよい。
また上記した実施形態では、天面壁20、左右側面壁21,22及び底面壁25を有し、これらが通気性を持たない素材で作られている。しかしながら、これらの各壁は、通気性を持っていてもよい。ただし供試体設置空間15の集合たる棚部材3は、全体として通気性が無いものであることが望ましい。より具体的には、最も上段の供試体設置空間15の天面壁20、最も下段の供試体設置空間15の底面壁25、最も側面に位置する供試体設置空間15の左側面壁21または右側面壁22は、通気性を持たない素材で作ることが望ましい。
上記した実施形態では、供試体設置空間15の裏面側の総開口面積と、小扉26の総開口面積が同じであるが、両者が異なっていてもよい。仮に小扉26の総開口面積を裏面側の総開口面積よりも小さくした場合は、供試体設置空間15を、作業領域11よりもさらに陽圧に保つことができ、作業領域11における環境の乱れや空気の流れの乱れの影響をより効果的に防ぐことができる。