(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
物品配置空間(試験室)内で環境試験を行う場合においても、物品配置空間(加工室)内で加工や調整を行う場合においても、試験や処理が終了した物品を取り出す場合には、扉部材218を開放して行うこととなる。
ここで、従来技術では、上記したように、扉部材218は試験室201の断面積に匹敵する面積を有する。そのため、扉部材218を開くと、試験室201内の環境が大きく乱れる。
より具体的には、試験室201内の空気が外部の空気と置換され、折角調整した温度や湿度が目標環境から大きく外れてしまう。
したがって、試験対象物品230を入れ換えて環境試験を続行する場合や、新たなワークを物品配置空間(加工室)に入れて加工等行う場合には、扉部材218等を閉じた後、試験室201等内の温度等が安定するまでの間、環境試験や加工等を休止する必要がある。
そのため、従来技術の環境形成装置は、試験対象物品230(物品)の出し入れがあるごとに休止時間が発生し、時間的効率が悪いという不満があった。
【0011】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、休止時間の短縮が可能な環境形成装置を開発することを課題とするものである。また本発明は、環境形成装置に対する物品出し入れ方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、物品を配置する物品配置空間と、当該物品配置空間を所望の環境に維持する空気調和装置とを備えた環境形成装置において、前記物品配置空間は、壁で囲われた空間であり、少なくとも一つの壁に物品出入り用開口が設けられており、前記物品出入り用開口を閉塞可能な空間閉塞部材を有し、前記空間閉塞部材は、物品出入り用開口を閉塞する閉塞状態と、物品出入り用開口を開放する開放状態をとることが可能であり、物品を収容可能な物品収容容器を有し、前記物品収容容器の少なくとも一部は、その断面の外形形状が前記物品出入り用開口の少なくとも一部と合致し、物品収容容器が物品配置空間にあるときに、物品収容容器の一部によって前記物品出入り用開口が封止されるものであり、前記物品出入り用開口から物品収容容器が挿入されることによって、前記空間閉塞部材が閉塞状態から開放状態に変更され、物品が前記物品配置空間に配されるものであり、さらに、前記物品配置空間から物品収容容器が引き抜かれることによって、前記空間閉塞部材が開放状態から閉塞状態に変更されるものであ
り、前記一つの壁は、前記空間閉塞部材と係合可能な係合部を有し、前記空間閉塞部材の外側面は、当該係合部の内側面と係合して閉塞状態をとるものであり、前記空間閉塞部材は、係合部の内側面に沿って相対的に回転されることによって、係合部との係合状態が解除されることを特徴とする環境形成装置である。
すなわち、本発明は、物品を配置する物品配置空間と、当該物品配置空間を所望の環境に維持する空気調和装置とを備えた環境形成装置において、前記物品配置空間は、壁で囲われた空間であり、少なくとも一つの壁に物品出入り用開口が設けられており、前記物品出入り用開口を閉塞可能な空間閉塞部材を有し、前記空間閉塞部材は、物品出入り用開口を閉塞する閉塞状態と、物品出入り用開口を開放する開放状態をとることが可能であり、物品を収容可能な物品収容容器を有し、前記物品収容容器の少なくとも一部は、その断面の外形形状が前記物品出入り用開口の少なくとも一部と合致し、物品収容容器が物品配置空間にあるときに、物品収容容器の一部によって前記物品出入り用開口が封止されるものであり、前記物品出入り用開口から物品収容容器が挿入されることによって、前記空間閉塞部材が閉塞状態から開放状態に変更され、物品が前記物品配置空間に配されるものであり、さらに、前記物品配置空間から物品収容容器が引き抜かれることによって、前記空間閉塞部材が開放状態から閉塞状態に変更されるものである。
【0013】
本発明の構成によれば、空間閉塞部材は、物品出入り用開口を閉塞する閉塞状態と、物品出入り用開口を開放する開放状態をとることが可能である。すなわち、空間閉塞部材は、物品配置空間と装置外部とを連通する物品出入り用開口を閉塞又は開放することが可能となっている。
また、本発明の構成によれば、物品出入り用開口から物品収容容器が挿入されることによって、前記空間閉塞部材が閉塞状態から開放状態に変更され、物品が前記物品配置空間に配され、物品収容容器が物品配置空間にあるときに、物品収容容器の一部によって前記物品出入り用開口が封止されるものである。すなわち、物品出入り用開口から物品収容容器が挿入されることによって、前記空間閉塞部材が閉塞状態から開放状態に変更され、物品が前記物品配置空間に配される。
つまり、物品出入り用開口から物品収容容器が挿入されて、空間閉塞部材が開放状態となり、物品収容容器が物品配置空間に配置されるが、物品収容容器の一部によって前記物品出入り用開口が封止されるので、物品配置空間の環境はほとんど変化せず、外部と隔離された空間を形成することが可能である。
さらに、本発明の構成によれば、物品配置空間から物品収容容器が引き抜かれることによって、空間閉塞部材が開放状態から閉塞状態に変更されるものである。すなわち、所定の物品の環境試験が終了し、物品配置空間から物品を取り出す際には、物品配置空間から物品収容容器が引き抜かれ、それに伴って、空間閉塞部材が閉塞状態になる。そのため、空間閉塞部材によって、物品配置空間の環境はほとんど変化せず、維持される。
このように、本発明の構成によれば、空間閉塞部材の開放状態、閉塞状態にかかわらず、物品配置空間の環境がほとんど変化せず維持されるので、雰囲気が大きく乱れず、連続して環境試験を行うことができる。
【0014】
請求項
1に記載の発明は、前記一つの壁は、前記空間閉塞部材と係合可能な係合部を有し、前記空間閉塞部材の外側面は、当該係合部の内側面と係合して閉塞状態をとるものであり、前記空間閉塞部材は、係合部の内側面に沿って相対的に回転されることによって、係合部との係合状態が解除されることを特徴とす
る環境形成装置である。
【0015】
本発明の構成によれば、空間閉塞部材は、空間閉塞部材の外側面が係合部の内側面と係合した閉塞状態をとり、係合部の内側面に沿って相対的に回転されることによって係合部との係合状態が解除される。
すなわち、閉塞状態においては、空間閉塞部材の外側面が係合部の内側面と係合しているので、係合部から空間閉塞部材が外れにくい。そのため、外的要因によって、物品配置空間の雰囲気が乱れにくい。
【0016】
請求項
2に記載の発明は、前記物品収容容器は、通気性を有し、前記物品収容容器は、前記空間閉塞部材と一体となって物品配置空間内を移動して、物品が前記物品配置空間に配されることを特徴とする請求項
1に記載の環境形成装置である。
【0017】
本発明の構成によれば、前記物品収容容器は、前記空間閉塞部材と一体となって物品配置空間内を移動して、物品が前記物品配置空間に配される。すなわち、物品を物品収容容器に入れた状態で物品収容容器を移動させるので、物品の形状に係わらず、一定の押圧装置等によって物品を押し込む等することができる。
また、物品収容容器は通気性を有しているので、物品収容容器の内部は、直ちに物品配置空間内の環境に馴染み、物品収容容器内の物品は、物品配置空間内の環境に晒される。
【0018】
請求項
3に記載の発明は、前記一つの壁に対向する壁の前記物品出入り用開口に対向する位置に前記物品収容容器又は前記空間閉塞部材を固定可能な固定部を有し、前記物品収容容器は通気性を有し、物品を物品収容容器に入れた状態で物品出入り用開口から固定部に向かって物品収容容器を移動させることによって物品を物品配置空間に配置可能であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の環境形成装置である。
【0019】
本発明の構成によれば、物品を物品収容容器に入れた状態で物品出入り用開口から固定部に向かって物品収容容器を移動させることによって物品を物品配置空間に配置可能である。
すなわち、物品収容容器が物品配置空間を横切って固定されるため、物品を物品配置空間の中央側に配置しやすい。
【0020】
請求項
4に記載の発明は、前記物品出入り用開口と前記固定部を連続的又は断続的に結ぶガイド部を有し、当該ガイド部は、前記物品配置空間内において、前記物品収容容器の一部を支持可能であることを特徴とする請求項
3に記載の環境形成装置である。
【0021】
本発明の構成によれば、ガイド部は、物品配置空間内において、物品収容容器の一部を支持可能であるため、物品収容容器に撓み等が生じにくく、物品収容容器を容易に固定部まで移動させることができる。また、物品収容容器から物品配置空間内に物品が落下等することも防止できる。
【0022】
請求項
5に記載の発明は、物品収容容器が物品配置空間にあるときに、前記物品収容容器の一部が物品配置空間の外部に露出しており、別途用意の他部材を当該露出部位に係合して物品収容容器を引っ張ることにより、物品を取り出すことが可能であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の環境形成装置である。
【0023】
本発明の構成によれば、物品収容容器が物品配置空間にあるときに、物品配置空間からの物品収容容器の露出部位に、別途用意の他部材を係合して物品収容容器を引っ張ることにより、物品を取り出すことが可能であるため、物品の出し入れが容易である。
【0024】
ところで、環境形成装置は、試験対象の物品が電子基板等の電子機器である場合、所望の環境下で、当該物品の特性等を測定することがある。このような場合、物品配置空間の外部で、物品と測定装置等の外部機器の配線を接続できる構造であることが好ましい。
【0025】
そこで、請求項
6に記載の発明は、物品収容容器が物品配置空間にあるときに、前記物品収容容器の一部が物品配置空間の外部に露出しており、当該露出部に、物品と電気的に接続される端子又は電極が設けられていることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかに記載の環境形成装置である。
【0026】
本発明の構成によれば、物品収容容器が物品配置空間にあるときに、物品収容容器が物品配置空間から露出した露出部に物品と電気的に接続される端子又は電極が設けられている。すなわち、端子又は電極に測定装置等の外部機器の配線を接続することによって、環境試験中に物品の物性等を容易に測定することができる。
【0027】
請求項
7に記載の発明は、物品を配置する物品配置空間を所望の環境に維持する機能を備えた環境形成装置に対して物品を出し入れする物品出し入れ方法において、前記物品配置空間は、壁で囲われた空間であり、少なくとも一つの壁に物品出入り用開口が設けられており、前記物品出入り用開口を閉塞可能な空間閉塞部材を有し、前記空間閉塞部材は、物品出入り用開口を閉塞する閉塞状態と、物品出入り用開口を開放する開放状態をとることが可能であり、物品を収容可能な物品収容容器を有し、前記物品収容容器の少なくとも一部は、その断面の外形形状が前記物品出入り用開口の少なくとも一部と合致しており、前記物品出入り用開口から物品収容容器を挿入することによって、前記空間閉塞部材を閉塞状態から開放状態に変更し、物品を前記物品配置空間に配して、物品収容容器の一部によって物品出入り用開口を封止し、さらに、前記物品配置空間から物品収容容器を引き抜くことによって、前記空間閉塞部材を開放状態から閉塞状態に変更するものであ
り、前記一つの壁は、前記空間閉塞部材と係合可能な係合部を有し、前記空間閉塞部材の外側面は、当該係合部の内側面と係合して閉塞状態をとるものであり、前記空間閉塞部材を係合部の内側面に沿って相対的に回転させることによって、係合部との係合状態を解除することを特徴とする物品出し入れ方法である。
すなわち、本発明は、物品を配置する物品配置空間を所望の環境に維持する機能を備えた環境形成装置に対して物品を出し入れする物品出し入れ方法において、前記物品配置空間は、壁で囲われた空間であり、少なくとも一つの壁に物品出入り用開口が設けられており、前記物品出入り用開口を閉塞可能な空間閉塞部材を有し、前記空間閉塞部材は、物品出入り用開口を閉塞する閉塞状態と、物品出入り用開口を開放する開放状態をとることが可能であり、物品を収容可能な物品収容容器を有し、前記物品収容容器の少なくとも一部は、その断面の外形形状が前記物品出入り用開口の少なくとも一部と合致しており、前記物品出入り用開口から物品収容容器を挿入することによって、前記空間閉塞部材を閉塞状態から開放状態に変更し、物品を前記物品配置空間に配して、物品収容容器の一部によって物品出入り用開口を封止し、さらに、前記物品配置空間から物品収容容器を引き抜くことによって、前記空間閉塞部材を開放状態から閉塞状態に変更するものである。
【0028】
本発明の方法によれば、空間閉塞部材の開放状態、閉塞状態にかかわらず、常に物品配置空間の環境が維持されるので、雰囲気が乱れず、連続して環境試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の環境形成装置及び環境形成装置に対する物品出し入れ方法によると、物品を出し入れする際に、物品配置空間の内外の空気が置換しにくく、物品配置空間の環境を乱しにくい。そのため、試験や処理を行う際の休止時間が短縮され、時間効率が高いという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、上下の位置関係は、通常の設置位置(
図1)を基準に説明する。
【0032】
本発明の第1実施形態の環境形成装置1は、環境試験装置として使用されるものである。
環境形成装置1は、
図1のように、大きく分けて試験部30と、容器保持装置31(別途用意の他部材)とによって構成されている。
試験部30と容器保持装置31は、横方向x(物品収容容器50の出し入れ方向)に並んで設置されている。
環境形成装置1は、環境試験の際には、
図6(b),
図7のように試験対象物品40を物品収容容器50に入れた状態で、
図1に示される試験部30の内部に配置される。
【0033】
以下、環境形成装置1の各部位について、順次説明する。
【0034】
試験部30は、
図2のように、試験室3(物品配置空間)と、空気流路10を有している。試験室3は、試験対象物品40が導入される部位であり、試験空間である。
空気流路10は、
図2のように試験室3と連通する流路であり、当該空気流路10に空気の流れ方向の上流側から下流側に向けて、加湿装置5と、冷却機6の蒸発器11と、加熱装置7、及び送風機8が設けられている。
そして、試験室3内であって空気流路10の出口側(空気の流れ方向下流側)には、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。
環境形成装置1では、前記した空気流路10内の部材(加湿装置5等)と、試験室3内の温度センサー12及び湿度センサー13によって、試験室3(物品配置空間)内の雰囲気を調整する空気調和装置15が構成されている。すなわち、環境形成装置1は、空気調和装置15によって、試験室3内に所望の温度・湿度環境を作ることが可能となっている。
【0035】
試験室3の構造についてさらに詳説すると、試験室3は、
図1から読み取れるように、直方体の空間であり、
図2,
図3に示されるように、その5面が断熱壁2によって囲まれている。すなわち、試験室3は、空気流路10を構成する仕切り壁14を除く5面が断熱壁2によって囲まれている。
各断熱壁2は、
図3に示されるように、金属板で成形された外郭部材16の中に断熱材17が充填された二重構造となっている。
試験室3の正面側の壁は、扉部材18によって構成されており、開閉することができる。扉部材18は、試験室3の断面積に匹敵する面積を持っている。
【0036】
また、試験室3は、
図3のように扉部材18に隣接する壁に出入り貫通孔25(物品出入り用開口)及び固定部32が設けられている。
具体的には、試験室3は、
図3に示されるように、平面視したときに試験室3の右側の壁を形成する右側壁22に出入り貫通孔25が設けられており、右側壁22に対向する左側壁21に、固定部32が設けられている。
【0037】
出入り貫通孔25は、
図3のように断熱壁2を貫通し、試験室3の内外を連通するものである。出入り貫通孔25は、
図8のように、開口形状が異なる2つの孔が連なって形成されたものであり、試験室3の外側から内側に向けて順に小径部26と大径部27からなる。出入り貫通孔25は、小径部26と大径部27が段状に連続して形成されている。
【0038】
小径部26は、開口形状が円形の穴であり、その内径は、
図5に示される物品収容容器50の収容部53の外径とほぼ同程度となっており、物品収容容器50のシール部56の外径よりも小さい。小径部26は、
図8に示されるように、軸方向の中間部に小径部26の内周に沿ってシール部材58が取り付けられている。
シール部材58は、弾性を有した環状形状の部材であり、具体的には、オーリングである。
また、小径部26は、収容部53を挿通可能となっている。
【0039】
大径部27は、開口形状が円形の穴であり、その内径は、
図5に示される物品収容容器50の収容部53の外径よりも大きくなっている。すなわち、大径部27は、物品収容容器50の収容部53を挿通可能となっている。また、大径部27の内径は、空間閉塞部材33の外径と同程度となっている。
大径部27は、
図8に示されるように、径方向に対向する位置に1対の凸部23,24を有している。
凸部23,24は、大径部27の内側面から径方向に突出した円柱状の突起である。凸部23,24は、互いに近接する方向に突出している。凸部23,24は、
図9及び
図10に示される空間閉塞部材33のガイド溝41a,41bとそれぞれ係合可能となっている。
凸部23,24の外径は、空間閉塞部材33のガイド溝41a,41bの幅よりもやや小さい。
【0040】
左側壁21に設けられた固定部32は、
図3のように、空間閉塞部材33を所定の姿勢に固定可能な部位である。
具体的には、固定部32は、左側壁21の部材厚方向に延びた有底穴であり、その内部に空間閉塞部材33の一部又は全部を挿着可能となっている。
固定部32の内径は、出入り貫通孔25の大径部27の内径と同程度となっている。すなわち、固定部32の内径は、空間閉塞部材33の外径とも同程度となっている。
【0041】
空間閉塞部材33は、
図8に示される出入り貫通孔25を閉塞可能な部材である。
空間閉塞部材33は、
図9のように、円柱状又は円板状の部材であり、その一方の面の中央に係合穴35を有している。
具体的には、係合穴35は、一方の面から厚み方向に延びた有底穴であり、物品収容容器50の係合部55と係合可能となっている。係合穴35は、その内側側面にネジ切りされて雌ねじ部39を形成している。
雌ねじ部39は、後述する物品収容容器50の係合部55の雄ねじ部62と螺合可能となっている。
【0042】
また、空間閉塞部材33の外周面には、
図9のように、大径部27の凸部23,24(
図8参照)と係合可能な複数のガイド溝41,41(以下、区別して41a,41bとも示す)を有している。
ガイド溝41は、略L字状の溝であり、空間閉塞部材33の端面から軸方向に延びた直線部42と、直線部42の一方の端部から周方向wに延びた規制部43から形成されている。ガイド溝41の溝幅は、一様に同一となっている。規制部43は、直線部42に対して直交関係となっている。
【0043】
また、各ガイド溝41a,41bは、
図10のように所定の間隔を空けて周方向wに並んでいる。各直線部42は周方向wにおいて所定の間隔を空けて互いに平行となっている。各規制部43は、周方向wに同一直線上に並んでいる。
【0044】
ここで、左側壁21の固定部32と、右側壁22の出入り貫通孔25の位置関係について説明すると、出入り貫通孔25と固定部32は、
図3のように、試験室3内を挟んで互いに対向する関係にある。
出入り貫通孔25は、固定部32の横方向xの投影面上に位置している。すなわち、出入り貫通孔25の高さと固定部32の高さは等しく、出入り貫通孔25の奥行き方向の位置と、固定部32の奥行き方向の位置も等しい。そのため、出入り貫通孔25の中心線と固定部32の中心線とは一致する。
【0045】
試験室3に挿入する物品収容容器50は、
図6のように、試験対象物品40を内部に収容可能な部材であり、金属又は樹脂によって作られたものである。物品収容容器50は、
図4に示すように外形形状が円筒形となっている。
物品収容容器50は、
図5に示すように、本体筒部51と、外装部材52によって構成されている。本体筒部51は、軸方向において、中央に収容部53があり、その両側に係合部55とシール部56がある。
【0046】
本体筒部51の中央に位置する収容部53は、内部が空洞となっており、当該空洞によって物品収納部57が構成されている。
収容部53の側面には、長方形の通気開口60,61が設けられている。
通気開口60,61は、物品収納部57の内外を連通するものである。すなわち、物品収容容器50内の空気は、
図7のように通気開口60,61によって外部と行き来し、物品収容容器50内の環境が試験室3の環境と一致する。
また、本実施形態の物品収容容器50では、
図6のように、通気開口60,61を利用して試験対象物品40の出し入れを行うことができる。
【0047】
収容部53の長さは、
図3に示される試験部30の試験室3の内幅WI(左側壁21の内側面と右側壁22の内側面間の距離)とほぼ同程度となっている。また、物品収容容器50の全長は、試験部30の内幅WIと右側壁22の幅WR(右側壁22の内側面と右側壁22の外側面間の距離)の和よりも長い。すなわち、物品収容容器50を試験室3内に挿入した際に、
図3に示されるように、シール部56において試験室3から露出する露出部34(露出部位)が存在する。
【0048】
シール部56は、
図5のように、円錐台の側面のような傾斜面54を有しており、その傾斜面54の最小外径が収容部53の外径よりもやや大きく、試験部30の試験室3に設けられた出入り貫通孔25の小径部26の開口径と略等しい。
傾斜面54は、先端側(収容部53側)から基端側に向けて裾が広がっている。すなわち、シール部56は、外径が先端側から基端側に向けて漸次的に大きくなっている。表現を変えると、傾斜面54は、テーパー状となっており、その表面が平滑に仕上げられている。
【0049】
シール部56は、
図3のように、露出部34よりも基端側(収容部53側と反対側)に、取出溝59が形成されている。
取出溝59は、
図5から読み取れるように、シール部56の周方向全体に亘って設けられており、
図1に示される容器保持装置31の爪67と係合可能となっている。すなわち、物品収容容器50は、爪67と係合することによって、取り出し可能となっている。
【0050】
シール部56に対して反対側に位置する係合部55は、空間閉塞部材33と係合する部位であり、収容部53の端面から突出した突起である。
係合部55は、外側面にねじ切りされた雄ねじ部62を有している。
係合部55の軸線は、本体筒部51の中心軸と一致し、係合穴35の雌ねじ部39の軸線とも一致している。また雄ねじ部62の呼び径、ピッチ等は、雌ねじ部39と一致している。
【0051】
外装部材52は、
図5のように、円筒形に丸められた網である。すなわち、外装部材52は、金属や樹脂を素材とする網であり、立体的に塑性変形されて断面形状が
図5,
図6から読み取れるように「C」状となる様に成形されたものである。つまり、外装部材52の断面形状は、
図5,
図6から読み取れるように、180度を越える扇形である。
逆に言えば、60度から100度程度の欠落部63を有する円弧形状をしている。欠落部63の幅は、通気開口60,61と等しいかやや大きい。すなわち、物品収容容器50は、欠落部63と通気開口60又は通気開口61を合致させることによって、試験対象物品40を収容部53内に設置可能となっている。
【0052】
外装部材52は、
図4,
図5から読み取れるように、本体筒部51の収容部53の外側に巻き付けられている。より詳細には、弾性変形させて欠落部63を押し広げ、収容部53の外側に取り付けられている。
外装部材52は、弾性を有しているので、その内面で本体筒部51の収容部53の外側を締めつけている。そのため、外装部材52は、取り付けられた姿勢を維持することができる。
ただし、手指で外装部材52を掴み、これを回すと、外装部材52は本体筒部51に対して相対的に回転する。
【0053】
容器保持装置31は、
図1のように、回転チャック65と、直線運動装置66とを組み合わせたものである。
【0054】
回転チャック65は、部材を掴むための爪67と、爪67を
図1の矢印のように回転させるモーター68とを備えている。本実施形態では、爪67は、具体的には三つ爪であり、図示しない駆動装置によって爪67が開閉される。
モーター68は、爪67自体を回転させるものであり、例えば、ギヤードモータが採用される。
【0055】
直線運動装置66は、シリンダー69等の直線駆動装置と、シリンダー69のロッド70の先端に取り付けられた移動板71によって構成されている。そして、移動板71に、前記した回転チャック65が取り付けられている。
したがって、シリンダー69のロッド70を伸縮させると、移動板71が直線移動し、回転チャック65が直線移動する。
なお、本実施形態では、回転チャック65は、移動板71に対してシリンダー69と同方向に取り付けられている。そのため、シリンダー69のロッド70を伸ばすと、回転チャック65は試験部30から離れる方向に移動し、ロッド70を縮めると、回転チャック65は試験部30に近づく方向に移動する。
容器保持装置31の入口側のシリンダー69のストローク長は、物品収容容器50の収容部53の長さとほぼ同じかやや長い。
容器保持装置31のシリンダー69は、デュアルシリンダーを採用しており、2段階のスローク動作が可能である。
【0056】
その他の部材として、容器保持装置31の近傍にストック部材72が設けられている。ストック部材72は、物品収容容器50を仮置きするための棚である。
【0057】
次に、本実施形態の環境形成装置1の作用を、使用手順に沿って説明する。
【0058】
まず、使用手順に先立って、物品収容容器50を試験部30に挿入する前の環境形成装置1の状態について説明する。
【0059】
環境形成装置1は、
図11(a)のように空間閉塞部材33が出入り貫通孔25を塞ぎ、試験室3を封止する閉塞状態をとっている。
具体的には、空間閉塞部材33のガイド溝41の規制部43(
図9参照)と、出入り貫通孔25の大径部27の凸部23,24が係合されており、空間閉塞部材33が出入り貫通孔25の大径部27を閉塞している。すなわち、空間閉塞部材33は、規制部43によって、挿入方向(横方向)の移動を規制されており、試験室3は、空間閉塞部材33によって密閉されている。
なお、扉部材18は、閉状態となっており、試験室3内は気密状態となっている。
【0060】
物品収容容器50等について、環境形成装置1に挿入する前に、
図6に示すように、物品収容容器50内に試験対象物品40の出し入れを行う。
すなわち、試験対象物品40を物品収容容器50内に入れる場合には、
図6(a)のように、外装部材52を本体筒部51に対して相対回転し、欠落部63の位置を本体筒部51の通気開口60と一致させる。
その結果、物品収納部57が開放状態となるので、物品収容容器50内に試験対象物品40を導入又は取出すことができる。
試験対象物品40を物品収納部57内に入れた後は、再度外装部材52を回転し、欠落部63の位置を本体筒部51の通気開口60からずらし、
図6(b)のように通気開口60を閉じる。
【0061】
このようにして下準備を行った後に、物品収容容器50を試験部30に導入する。
具体的には、まず、
図11(a),
図11(b)から読み取れるように、物品収容容器50を出入り貫通孔25から挿入し、物品収容容器50を周方向(
図11(b)の矢印方向)に回転させて物品収容容器50と空間閉塞部材33を係合させる。
このとき、空間閉塞部材33の係合穴35と物品収容容器50の係合部55が係合し一体化する。すなわち、係合穴35の雌ねじ部39が係合部55の雄ねじ部62と螺合する。
【0062】
そして、上記した回転動作と同時に、若しくは、別の動作によって、物品収容容器50と空間閉塞部材33が一体化した状態で物品収容容器50を周方向に5度から15度程度回転させる。
このとき、物品収容容器50と空間閉塞部材33が一体となって回転する。そのため、空間閉塞部材33は、出入り貫通孔25の大径部27内で回転する。
空間閉塞部材33が出入り貫通孔25に対して相対的に回転すると、大径部27の凸部23,24は、空間閉塞部材33のガイド溝41の規制部43に沿って移動し、ガイド溝41の直線部42に至る。
そのため、ガイド溝41の規制部43による空間閉塞部材33の挿入方向の移動の規制が解除され、空間閉塞部材33は、直線部42に沿って挿入方向に移動可能となる。
【0063】
その後、
図11(c),
図11(d)から読み取れるように、物品収容容器50をさらに押し込み、空間閉塞部材33を固定部32まで至らせる。
【0064】
このとき、空間閉塞部材33は、
図12のように、物品収容容器50と一体となって、直線部42に沿って押し込み方向に移動した後、そのまま直進し、固定部32に嵌り、物品収容容器50に収容された試験対象物品40が試験室3内に配される。
【0065】
ここで、物品収容容器50は、上記したように、収容部53の長さが
図3に示される試験部30の内幅WIと略等しい。
そのため、先頭側の係合部55を固定部32にまで至らせることにより、物品収容容器50は、先頭の係合部55は、空間閉塞部材33を介して固定部32で支持され、後端側のシール部56が出入り貫通孔25で支持される。その結果、物品収容容器50は、両端支持状態となり、安定する。
【0066】
また、上記したようにシール部56の傾斜面54はテーパー状となっており、傾斜面54が、出入り貫通孔25の小径部26のシール部材58と接している。そのため、試験室3内の気密性が確保される。
すなわち、シール部56の傾斜面54は、平滑に仕上げられており、且つテーパー状であるから、物品収容容器50の表面が、出入り貫通孔25の小径部26のシール部材58に密着し、空気の通過を許さない。
このように、物品収容容器50の物品収納部57は、
図7のように試験部30の試験室3内の環境に晒されることとなる。
【0067】
この状態で、空気調和装置15を起動し、試験室3を所望の温度や湿度の環境に調整する。
ここで、物品収容容器50には、通気開口60,61が設けられているから、
図7に示すように、空気調和装置15の送風機8によって発生された温調風が、物品収容容器50の内部を通過する。そのため、物品収容容器50の物品収納部57内の環境が、試験室3の環境と同一となる。
すなわち、物品収容容器50内の試験対象物品40が、試験室3の環境に晒される。そして所定の時間の経過を待って、当該試験対象物品40に対する環境試験を終える。
【0068】
環境試験が終わると、前述の導入動作と逆の動作によって、物品収容容器50を試験室3から取り出す。
具体的には、まず、物品収容容器50を軸方向に移動させて、空間閉塞部材33を固定部32から出入り貫通孔25に移動させる。
このとき、空間閉塞部材33は、物品収容容器50と一体的に移動して、出入り貫通孔25内で、大径部27の凸部23,24がガイド溝41の直線部42に嵌り、直線部42に沿って移動する。
【0069】
その後、空間閉塞部材33が、右側壁22に当接すると、物品収容容器50を周方向に回転させる。
このとき、空間閉塞部材33は、物品収容容器50と一体的に移動して、大径部27の凸部23,24がガイド溝41の規制部43に至り、規制部43に沿って移動する。
【0070】
さらに物品収容容器50を周方向に回転させると、大径部27の凸部23,24が空間閉塞部材33の規制部43の端部の内壁と当接し、空間閉塞部材33に対して物品収容容器50が相対的に回転する。
このとき、空間閉塞部材33の係合穴35と物品収容容器50の係合部55の係合関係が解除される。
【0071】
その後、物品収容容器50を軸方向に引き抜いて物品収容容器50を試験室3から取り出す。
【0072】
このようにして、環境形成装置1は、試験室3内への物品収容容器50の出し入れが可能である。
【0073】
なお、本実施形態の環境形成装置1は、上記した入れ替え動作が容器保持装置31を使用して自動的に行われる。
すなわち、容器保持装置31を試験室3に入れる場合には、容器保持装置31の回転チャック65の爪67で物品収容容器50の取出溝59を掴み、直線運動装置66を駆動して、物品収容容器50を出入り貫通孔25内に移動させる。
その後、物品収容容器50の先端側たる係合部55を、出入り貫通孔25内に固定された空間閉塞部材33の係合穴35に当接させ、モーター68を回転して回転チャック65を回転させる。それに伴い、回転チャック65で掴まれた物品収容容器50が回転する。
その結果、物品収容容器50と、出入り貫通孔25内に固定された空間閉塞部材33が一体的、かつ、直線的に結合される。
【0074】
また、上記した動作によって、物品収容容器50と一体化された空間閉塞部材33を出入り貫通孔25に対してさらに回転させると、空間閉塞部材33が出入り貫通孔25内に対して相対的に回転する。
【0075】
その後、直線運動装置66を駆動して、容器保持装置31をさらに前進(試験部30側に移動)させる。
このとき、物品収容容器50と一体化された空間閉塞部材33は、容器保持装置31に連動して、右側壁22側から左側壁21側に移動し、固定部32に当接する。すなわち、物品収容容器50の内の試験対象物品40が試験室3内に晒されることとなる。
【0076】
その後、環境試験が終了すると、直線運動装置66を駆動して回転チャック65を試験部30から離れる方向に移動させ、試験部30の中にあった物品収容容器50を試験部30から引き出す。具体的には、出入り貫通孔25の大径部27に空間閉塞部材33が嵌る位置まで引き出す。
【0077】
続いて、この位置で容器保持装置31の回転チャック65を回転させ、空間閉塞部材33を大径部27と係合させるとともに、さらに空間閉塞部材33と物品収容容器50との係合状態を解除する。
係合状態を解除した後は、物品収容容器50をストック部材72の位置まで直線移動してシリンダー69を停止する。
【0078】
なお、長期間環境試験を行わない場合には、出入り貫通孔25の小径部26にゴム栓等の栓部材を取り付ける。
【0079】
このように、本実施形態の環境形成装置1であれば、試験対象物品40の入れ替えるときに、常に試験室3内の空間が閉塞されており、外部に開放されないので、試験室3内の環境がほとんど乱れない。そのため、試験対象物品40を入れ替えた後に、直ちに次の環境試験を行うことができる。
【0080】
続いて、第2実施形態における環境形成装置80について説明する。なお、第1実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0081】
第2実施形態の環境形成装置80は、試験室3において、
図13のように固定部32と、第1実施形態の出入り貫通孔25に対応する出入り貫通孔82を繋ぐガイド部材81を備えている。
出入り貫通孔82は、小径部26と大径部83から形成されている。
大径部83は、第1実施形態と異なり、凸部23,24を備えていない。すなわち、大径部83は、開口形状が円形の穴であり、その内径はガイド部材81の外径とほぼ同程度となっている。すなわち、大径部83の内側にガイド部材81を装着可能となっている。
【0082】
ガイド部材81は、空間閉塞部材33と物品収容容器50が試験室3内を通過するのを支持する部材である。
ガイド部材81は、
図14のように、トンネル状の中空体である。表現を変えると、ガイド部材81は、長尺状の筒状体である。
ガイド部材81は、内部空間の通気性を確保するために側面に複数の開口84,85を設けられている。
開口84,85の開口形状は、長方形状であり、その長辺が長手方向に向いている。また、開口84,85は、径方向に対向する位置に設けられている。
【0083】
ガイド部材81の一方の端部近傍(右側壁22側)には、径方向に突出した凸部86,87が設けられている。
凸部86,87は、円柱状の突起であり、空間閉塞部材33のガイド溝41と係合可能となっている。
凸部86,87の外形は、空間閉塞部材33のガイド溝41の幅よりもやや小さい。凸部86,87は互いに近接する方向に突出している。
左側壁21の固定部32と、右側壁22の出入り貫通孔82は、
図13のように、ガイド部材81によって橋渡しされている。すなわち、大径部83にガイド部材81の一方の端部が接続されており、固定部32に他方の端部が接続されている。
そして、ガイド部材81の大径部83内の位置に凸部86,87が位置している。
【0084】
ガイド部材81の内径は、空間閉塞部材33の縦断面積よりもやや大きくなっている。すなわち、ガイド部材81内を空間閉塞部材33は、
図15のように、縦姿勢のまま通過可能となっている。
【0085】
空間閉塞部材33が試験室3の内外に試験空間を封止する閉塞状態をとっている際の位置関係について説明すると、出入り貫通孔82の大径部83にガイド部材81が嵌挿されている。
そして、ガイド部材81の内部に空間閉塞部材33が配されており、ガイド部材81の凸部86,87が空間閉塞部材33のガイド溝41の規制部43と係合している。すなわち、空間閉塞部材33は挿入方向の移動を規制されている。
【0086】
上記した第1実施形態と同様の手順で、物品収容容器50を出入り貫通孔82から挿入し、回転すると空間閉塞部材33と係合し、物品収容容器50と空間閉塞部材33が一体化する。そして、さらに物品収容容器50を周方向に5度から15度程度回転させると、ガイド部材81に対して空間閉塞部材33が相対的に回転し、ガイド部材81の凸部86,87が空間閉塞部材33のガイド溝41の直線部42に至る。
その後、物品収容容器50を差し込むと、ガイド部材81と空間閉塞部材33の係合が解除され、ガイド部材81に沿って、物品収容容器50と空間閉塞部材33が一体的に移動する。このとき、物品収容容器50と空間閉塞部材33は、
図15のように、ガイド部材81によって支持されているため、物品収容容器50が撓まず、空間閉塞部材33は、固定部32に至る。
【0087】
取り出す際も上記した第1実施形態と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0088】
本第2実施形態の環境形成装置80であれば、試験室3が大きく、左側壁21と右側壁22間の距離が長くても、物品収容容器50がガイド部材81によって支持されているので、撓まずに固定部32まで空間閉塞部材33を至らせることが可能である。
【0089】
続いて、第3実施形態における環境形成装置について説明する。なお、第1実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0090】
第3実施形態の環境形成装置は、電子基板を試験対象物品101とする場合に推奨される構成である。
【0091】
試験対象物品101として、電子基板を採用しているため、漏電やショートを防止する観点から物品収容容器102を絶縁体で形成している。本実施形態では、物品収容容器102は、絶縁樹脂を成形して形成されている。すなわち、物品収容容器102は、本体筒部51と、外装部材52とが共に樹脂で作られている。
【0092】
物品収容容器102は、
図16及び
図17から読み取れるように、シール部56に軸方向に延びたケーブル孔103が設けられている。
ケーブル孔103は、物品収納部57側からシール部56を貫通した貫通孔であり、その内部に、試験対象物品101と、測定機器等の外部機器とを電気的に接続するケーブル部材105が挿通可能となっている。
【0093】
本第3実施形態で例示する試験対象物品101は、電子素子を備えた基板であり、通電状態における環境試験を行うことが可能となっている。
そのため、試験対象物品101たる基板は、通電及び信号通信のための導通線106が取り付けられる。
本実施形態では、導通線106は三本の電線であり、両端にコネクター108,109(端子)が取り付けられている。
【0094】
そして、
図16のように一方のコネクター108が、物品収容容器102の物品収納部57内に配されている。そして当該コネクター108が試験対象物品101に接続されている。
【0095】
本実施形態の物品収容容器102を使用すると、試験部30の外に他方のコネクター109が露出し、当該コネクター109によって給電や信号の授受を行うことができる。
すなわち、環境試験中でも試験対象物品101の特性を評価することができる。
【0096】
続いて、第4実施形態の環境形成装置について説明する。なお、第1〜3実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0097】
第4実施形態についても、第3実施形態と同様、電子基板を試験対象とする場合に推奨される構成である。
本実施形態で採用する物品収容容器121では、
図18のように給電や信号授受に使用される電極部122が物品収容容器121の端面に設けられている。
具体的に説明すると、本実施形態で採用する電極部122は、弓道の的の様な形状をしている。すなわち、本実施形態では、シール部56の端面に、正面視が円状又は円環状の電極123a,123b,123cが、同心状に3個設けられている。そして各電極123a,123b,123cには、電線が接続され、物品収納部57内に引き込まれてコネクター124に接続されている。
【0098】
また、物品収容容器121の端面には、コンタクトピン等の接点125が接続される。本実施形態によると、物品収容容器121の回転方向の姿勢がどのような姿勢であってもコンタクトピン等の接点125は電極部122の各電極123a,123b,123cと接触する。そのため、位置合わせや回転姿勢の制御が不要であり、装置の構造を単純化することができる。
【0099】
続いて、第5実施形態の環境形成装置150について説明する。なお、第1〜4実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0100】
第5実施形態の空間閉塞部材151は、
図19のように、第1実施形態の空間閉塞部材33と異なる形状をしており、閉塞状態から開放状態に変更するにあたって、物品収容容器50と一体的に移動しない。
すなわち、第3実施形態の空間閉塞部材151は、ヒンジ部152と、蓋部153によって形成されている。
ヒンジ部152は、公知のヒンジであり、蓋部153を軸支する部材である。
蓋部153は、出入り貫通孔155(物品出入り用開口)を閉塞可能な部材である。
物品収容容器50を挿入する際には、
図19(a),
図19(b)から読み取れるように、物品収容容器50の先端部位が蓋部153に当接して、蓋部153はヒンジ部152を中心として周方向に移動する。
物品収容容器50を引き抜く際には、物品収容容器50が試験室3から離反し、蓋部153によって、出入り貫通孔155が閉塞される。
【0101】
以上説明した実施形態は、いずれも本発明を環境試験装置に応用した例を示しているが、本発明の適用範囲は、環境試験装置に限定されるものではない。例えば、一定の環境下にワーク(図示せず)を置いて、所定の加工や調整を行う装置にも本発明を適用できる。これを第6実施形態として説明する。
すなわち、第6実施形態の環境形成装置170は、特殊加工装置として使用されるものである。
環境形成装置170は、
図20のように内部に加工室171(物品配置空間)を有している。本実施形態の環境形成装置170は、先の実施形態の試験部30と同様の構成を有するものであり、加工室171は先の実施形態の試験室3に相当する。
すなわち、加工室171は、図示しない空気調和装置15によって、所望の温度・湿度環境に維持される。
また加工室171に出入り貫通孔25が設けられている。
【0102】
本第6実施形態に特有の構成として、加工室171の外部または内部に、レーザー発振装置173,174,175や光学系176が設けられている。そしてレーザー光線を利用して所望の加工を行うことができる。
すなわち、本実施形態では、環境形成装置170の一部にレーザー通過部を設けるか、あるいはファイバーレーザーを使用し、加工室171内にレーザーを引き込む。そして位置決め部材や姿勢保持部材を設け、加工室171における物品収容容器50の回転方向の姿勢を一定に固定する。
例えば、収容部53の開口部分(通気開口60,61)が上側となり、レーザー光線が照射される方向となる様に回転方向の位置決めを行う。そして加工室171内を所望の環境に整え、この状況下でワークにレーザー光線を照射して所定の加工や調整を行う。
【0103】
本第6実施形態によると、ワークの入替えを、扉部材18を開くことなく行うことができるので、段取り時間が短く、作業の休止時間が短いものとなる。
上記した実施形態では、一つの筐体内に仕切りを設けて試験室3(又は加工室171)と、空気流路10を設け、当該空気流路10に空気調和装置15の主要部材を配置したが、空気調和装置15等と試験室3(又は加工室171)とが別途独立したものであってもよい。
すなわち、試験室3とは別途の筐体内に空気調和装置15の主要部材を内蔵し、ダクト等によって空気調和装置15で作られた所定温度等の空気を試験室3内に送り込む構造であってもよい。
【0104】
上記した実施形態では、試験部30に1つの出入り貫通孔25を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の出入り貫通孔25を設けてもよい。例えば、
図21に示す試験部160では、4つの出入り貫通孔25が設けられている。
【0105】
上記した実施形態では、物品収容容器50や、ガイド部材81の外形形状は、いずれも円形であるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、円形に限定されるものではなく、楕円形、3角形や四角形等の多角形、凸形や星型等の異形であってもよい。要するに、物品収容容器50は、筒状であればよい。また、出入り貫通孔25の開口形状は円状でなくてもよい。
【0106】
上記した第2実施形態では、トンネル状のガイド部材81が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、物品収容容器50及び空間閉塞部材33の動きを一方向に規制できればよい。例えば、ガイド部材81の形状は、レール状であってもよい。
また、ガイド部材81の開口形状及び大きさも問わない。例えば、
図22に示されたガイド部材190のような円弧状の開口191が設けられていてもよい。この開口191は、ガイド部材190の全周の70パーセント〜90パーセントの面積を占める開口である。言い換えると、このガイド部材190は、2つの円筒部192,193を円弧状の板部材195で繋いだ形状である。
【0107】
上記した実施形態では、シール部材58として、オーリングを使用していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、封止性を確保できれば、シール部材58の形状は問わない。例えば、
図23のように、円筒状の内側面から複数のヒレ片180が立設されたものでもよい。
【0108】
上記した実施形態では、出入り貫通孔25内にシール部材58が配されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、物品収容容器50の表面にオーリング等のシール部材が設けられていてもよい。なお、物品収容容器50の表面にシール部材を設ける場合には、当該シール部材は、物品収容容器50の表面に形成された溝内に配されている構成とすることが好ましい。この構成によって、シール部材は、物品収容容器50の移動に伴う外力を受けても、物品収容容器50に対して相対的に移動しない。
【0109】
上記した実施形態では、物品収容容器50と空間閉塞部材33が螺合によって係合していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、物品収容容器50を試験室3内に挿入する際に物品収容容器50と空間閉塞部材33を一体化して移動できればよい。例えば、物品収容容器50と空間閉塞部材33の一方に凸部を設け、他方に凹部を設けて嵌合することによって一体化させてもよい。
【0110】
上記した実施形態では、ガイド部材81が右側壁22側から左側壁21側に連続的に結ばれたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、物品収容容器50の姿勢を支持できればよい。例えば、ガイド部材81が右側壁22側から左側壁21側に断続的に結ばれたものであってもよい。
【0111】
上記した第1実施形態等では、出入り貫通孔25に設けられた凸部23,24は円柱状であったが、本発明はこれに限定されるものではない。同様に、上記した第2実施形態等では、ガイド部材81に設けられた凸部86,87は円柱状であったが、本発明はこれに限定されるものではない。
これらの凸部は、例えば、四角柱状などの多角柱状や、角錐台状や円錐台状であってもよい。
【0112】
上記した実施形態では、シール部56には、テーパー状であってその表面が平滑な傾斜面54が設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。傾斜面54はテーパー面を形成していなくてもよいし、平滑でなくてもよい。
【0113】
上記した実施形態では、右側壁22に出入り貫通孔25を設けていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、出入り貫通孔25は、左側壁21などの右側壁22以外の壁に設けられていてもよい。また、複数の壁に出入り貫通孔25が設けられていてもよい。
【0114】
上記した実施形態では、物品収容容器を支持するために、右側壁22と対向する壁である左側壁21に固定部32を設けていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定部32を設けなくてもよい。この場合、物品収容容器は、出入り貫通孔25によって片持ち状に支持されることによって、姿勢を維持することとなる。
【0115】
上記した実施形態では、本発明の発明特定事項の「別途用意の他部材」の例として、容器保持装置31を例示して説明したが、本発明はこれに限定されない。