【実施例】
【0022】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各例で得られたガスバリア積層フィルムの性能評価は、下記のように行った。
<水蒸気透過率>
JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、次の手法で評価した。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各ガスバリア積層フィルムを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で重量増加がほぼ一定になる目安として6.9日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出した。
水蒸気透過率[g/m
2/day]=(m/s)/t
m; 試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s; 透湿面積(m
2)
t; 試験期間最後2回の秤量間隔の時間(day)/5.97(day)
【0023】
<FTS法により形成した無機薄膜層の膜厚の調整>
無機薄膜の膜厚については、予めそれぞれの成膜条件で成膜した単層薄膜の膜厚を段差計により測定し、その成膜時間と膜厚から、それぞれの成膜条件での成膜速度を算出する。以後、それぞれの成膜条件での成膜速度から、成膜時間を調整して成膜することにより、無機薄膜層の膜厚を調整した。
【0024】
<PVD法により形成した無機薄膜層の膜厚の測定>
無機薄膜の膜厚の測定は蛍光X線を用いて行った。この方法は、原子にX線を照射すると、その原子特有の蛍光X線を放射する現象を利用した方法で、放射される蛍光X線強度を測定することにより原子の数(量)を知ることが出来る。具体的には、フィルム上に既知の2種の厚みの薄膜を形成し、それぞれについて放射される特定の蛍光X線強度を測定し、この情報より検量線を作成する。測定試料について同様に蛍光X線強度を測定し、検量線からその膜厚を測定した。
【0025】
以下、上記下地層等の「層」について、「SiOxNy膜」等の「膜」と表記している場合がある。
実施例1
基材フィルムとして、厚さ12μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C」)を用い、そのコロナ処理面に、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製「コロネートL」)と飽和ポリエステル(東洋紡績製「バイロン300」、数平均分子量23000)とを1:1質量比で配合した混合物を塗布乾燥して厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。
次いで、FTS法により、成膜圧力0.3Pa、電力2000W、周波数100kHz、パルス幅4μsecの条件で、アンカーコート層上に厚さ50nmのSiOxNy膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
得られたSiOxNy膜の組成をXPS法で評価したところ、x=0.20、y=0.99であった。
【0026】
実施例2
実施例1において、SiOxNy膜上に、真空蒸着装置を使用して2×10
-3Paの真空下でSiOを蒸発させ、厚さ50nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD膜)を形成した以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
実施例2において、SiOxNy膜の厚さを10nmとした以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0027】
実施例4
実施例1において、SiOxNy膜の代わりに、FTS法により表1に記載の条件で厚さ50nmのAlOz膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
得られたAlOz膜の組成をXPS法で評価したところ、z=1.25であった。
実施例5
実施例2において、SiOxNy膜の代わりに、FTS法により表1に記載の条件で厚さ100nmのAlOz膜を形成し、その上に厚さ30nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD膜)を形成した以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
実施例6
実施例5において、AlOz膜の厚さを50nmとし、SiOxの真空蒸着膜(PVD膜)の厚さを50nmとした以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
得られたAlOz膜の組成をXPS法で評価したところ、z=1.25であった。
実施例7
実施例6において、AlOz膜の厚さを25nmとした以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0029】
実施例8
実施例5において、AlOz膜の厚さを10nmとした以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例9
実施例5において、AlOz膜からPVD膜の成膜まで、大気開放しない真空連続で行った以外は表1に記載の条件で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
得られたAlOz膜の組成をXPS法で評価したところ、z=1.23であった。
【0030】
実施例10
実施例9において、AlOz膜の厚さを50nmとし、その上に触媒化学蒸着(Cat−CVD)法により、成膜圧力100Pa、触媒体供給電力1.8kW、HMDS流量10sccm、H
2流量1000sccmの条件で厚さ20nmのSiOx
1膜を形成し、その上に厚さ30nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD膜)を形成した以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例11
実施例1において、SiOxNy膜の厚さを10nmとし、SiOxNy膜上に、さらにFTS法により、表1に記載のガス流量で、成膜圧力0.3Pa、電力2000W、周波数100kHz、パルス幅2μsecの条件でAlOz膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例12
実施例2において、アンカーコート層を形成すること無く、基材フィルム上に直接FTS法以降の薄膜形成をした以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
実施例1で用いたポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C」)について、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
実施例1において、アンカーコート層上に、SiOxNy膜を形成する代わりに、真空蒸着装置を使用して2×10
-3Paの真空下でSiOを蒸発させ、厚さ50nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD膜)を形成した以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
参考例1
基材フィルムとして、厚さ12μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン製、「Q51C」)を用い、そのコロナ処理面に、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製「コロネートL」)と飽和ポリエステル(東洋紡績製「バイロン300」、数平均分子量23000)とを1:1質量比で配合した混合物を塗布乾燥して厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。
次いで、アンカーコート層上に、真空蒸着装置を使用して2×10
-3Paの真空下でSiOを蒸発させ、厚さ30nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD膜)を形成した。
さらに、PVD膜上に、FTS法により表1に記載の条件で厚さ100nmのAlOz膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
比較例3
実施例4において、FTS法の代わりに、通常の平行平板DCマグネトロンスパッタ法で、表1に記載のガス流量で、成膜圧力0.3Pa、電力300W、電圧385V、電圧0.8A、印加バイアス無しの条件で厚さ50nmのAlOz膜(通常スパッタ膜)を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
実施例13
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学(株)製「ノバペックス」を溶融押出してシートを形成し延伸した二軸延伸PETフィルム)に、実施例1に記載のアンカーコート層を厚さ0.05μm積層したフィルム上に、FTS法により、成膜圧力0.3Pa、電力2000W、周波数100kHz、パルス幅4μsecの条件で、厚さ50nmのSiOxNy膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
実施例14
実施例13において、SiOxNy膜上に、真空蒸着装置を使用して2×10
-3Paの真空下でSiOを蒸発させ、厚さ50nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD膜)を形成した以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
実施例15
実施例14において、SiOxNy膜の厚さを10nmとした以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
実施例16
実施例13において、SiOxNy膜の代わりに、FTS法により表1に記載の条件で厚さ50nmのAlOz膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
実施例17
実施例14において、SiOxNy膜の代わりに、FTS法により表1に記載の条件で厚さ50nmのAlOz膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
実施例18
実施例17において、AlOz膜の厚さを25nmとした以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
実施例19
実施例13において、SiOxNy膜の厚さを10nmとし、SiOxNy膜上に、さらにFTS法により、表1に記載のガス流量で、成膜圧力0.3Pa、電力2000W、周波数100kHz、パルス幅2μsecの条件で厚さ50nmのAlOz膜を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
比較例4
実施例13で用いた、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアンカーコート層を積層したフィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例5
実施例13において、アンカーコート層上に、SiOxNy膜を形成する代わりに、真空蒸着装置を使用して2×10
-3Paの真空下でSiOを蒸発させ、厚さ50nmのSiOxの真空蒸着膜(PVD膜)を形成した以外は同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、前記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
このように、本発明の構成を有する実施例1〜19のガスバリア積層フィルムは、優れたガスバリア性を有するものであることが明らかとなった。また、特に、無機薄膜層における下地層を酸化アルミニウムとしたり、無機薄膜層を複数層有することにより、本発明のガスバリア積層フィルムはいっそう優れたガスバリア性を示すことが明らかとなった。
一方、無機薄膜層のない比較例1,4や、本発明の構成によらず下地層を真空蒸着法により形成された無機薄膜層とした比較例2,5や、FTS以外の通常スパッタ法で無機薄膜層を形成した比較例3のガスバリア積層フィルムにおいては、ガスバリア性が不十分であった。これは、下地層がPVD法や通常スパッタ法により形成されたことによる緻密性の低さや基材フィルムへの熱輻射やプラズマによるダメージに起因すると思われる。