(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919268
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】食品調製マシンにおける高圧での食品調製のためのカプセル
(51)【国際特許分類】
A47J 31/36 20060101AFI20160428BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
A47J31/36 120
A47J31/06 320
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-520143(P2013-520143)
(86)(22)【出願日】2011年7月20日
(65)【公表番号】特表2013-532500(P2013-532500A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】EP2011062455
(87)【国際公開番号】WO2012010634
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】10170478.1
(32)【優先日】2010年7月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ドーガン, ニハン
(72)【発明者】
【氏名】ドレアック, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツェル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】プライシュ, ハンス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ラーデラー, マーク
【審査官】
西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−528497(JP,A)
【文献】
特開平04−236921(JP,A)
【文献】
特表平06−511182(JP,A)
【文献】
特開平05−130944(JP,A)
【文献】
特表2010−500100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/24
31/06
31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品調製マシンの受容部に挿入された場合に加圧下で流体が注入されることにより食品を供給するカプセル(1)であって、
当該カプセルが、カプセル側壁(4)、可撓性の底壁(5)、および、随意的には上壁(6)によって画定されるチャンバ(3)を備え、前記チャンバ(3)が、前記注入流体によって溶解されるべきおよび/または抽出されるべき少なくとも1つの原材料を収容し、
当該カプセルが、前記底壁(5)を貫通して設けられる少なくとも1つの送出開口(9)を備える飲料送出構造体を備え、前記飲料送出構造体が、前記注入流体と前記原材料との混合のために特定の所定の溶解圧力および/または抽出圧力を前記チャンバ内で保持するように構成されている圧力保持要素(10,11,13,15,16)で、前記チャンバ(3)の外側で前記可撓性の底壁(5)の近傍に配置される圧力保持要素(10,11,13,15,16)をさらに備え、前記圧力保持要素が、前記少なくとも1つの送出開口(9)に対応して配置される少なくとも1つの突出部(11,15)を備える、カプセル(1)において、
前記突出部は、少なくとも、前記カプセルチャンバ内の前記注入流体が前記可撓性の底壁(5)を押圧して前記可撓性の底壁(5)を前記圧力保持要素(10,11,13,15,16)の方へ移動させるときには、対応する前記開口内に配置されてその断面を制限するようになっていることを特徴とする、カプセル(1)。
【請求項2】
前記圧力保持要素(10,11,13,15,16)が、前記カプセル底壁(5)の一体的な延在部である、請求項1に記載のカプセル(1)。
【請求項3】
前記圧力保持要素の前記少なくとも1つの突出部(11,15)は、該突出部が対応する前記開口(9)の形状とは異なる径方向断面形状を有する、請求項1または2に記載のカプセル(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの突出部(11)が、その径方向断面が一般に頂点から底面へと増大するような一般的な長手方向輪郭を有する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項5】
前記突出部(11,15)が、半球、切頂半球、楕円放物体、棘状錐体、四面体などの多面体、切頂四面体、円錐、円錐台、角錐、切頂角錐、またはこれらの組み合わせから選択される全体的な形状を有する、請求項4に記載のカプセル(1)。
【請求項6】
前記圧力保持要素(10)が、前記少なくとも1つの突出部(11,15)の近傍に配置される少なくとも1つのクッション(18)を備え、前記クッション(18)が、前記底壁が前記カプセル内の流体圧の影響下で移動される場合に前記カプセル底壁(5)を前記突出部の基部から距離を隔てて維持するために、前記突出部よりも小さいあるいは前記突出部に等しい高さを有し、それにより、前記開口の直径は、該開口が対応する前記突出部の径方向断面よりも大きい、請求項4または5に記載のカプセル(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの開口(9)が、前記カプセルが使用のために前記マシン内に配置されるときには前記カプセル底壁(5)に既に穿孔されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの開口(9)が、
前記注入流体が前記底壁の内面と接触するときの前記注入流体の温度の作用時の、および/または前記底壁材料と前記注入流体との間の化学反応時の前記カプセル底壁材料の局所的な溶解、
予め穿孔されるが、閉じられた状態にあり、前記底壁の局所的な変形の後に開放される前記底壁の所定の領域、または、前記底壁の脆弱化した領域である前記底壁の所定の領域に対する前記カプセルチャンバ内の流体圧力の作用、および/または、
前記カプセルの外側で前記カプセル底壁上に配置される機械的手段の効果、
によって前記カプセル底壁(5)を貫通して形成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に注入される流体によって高い抽出圧力および/または溶解圧力を必要とする食品を調製するための、例えば、コーヒータイプの飲料を調製するためのカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の以下では、飲料調製、特にコーヒーに関して本発明を説明する。しかしながら、これは、本明細書の範囲および特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。本発明は、一般に、食品調製マシン内でのカプセルまたはポッド内への流体の注入によって調製され得るとともに、カプセル内に収容される原材料を抽出するあるいは溶解するためにカプセル内で高い流体圧を伴う任意の食品または栄養製品の調製を対象とする。かかる食品または栄養製品としては、例えば、水溶きコーヒーおよび/または粉末状の焙煎して挽いたコーヒー豆、ミルク調製品、乳児用ミルクなどの乳製品、スープ、アイスクリーム、チョコレートベースの製品、茶またはハーブの浸出物、半流動状または流動状のデザートがある。
【0003】
高圧での抽出または混合によってコーヒーなどの飲料を調製するための物質を収容するカプセルは、特にエスプレッソコーヒー調製または水溶きコーヒー調製の分野において良く知られており、衛生上の観点から、およびそれが保証する製品鮮度において興味深い。消費者が手軽に使えること、および調製の容易さも、そのようなシステムの特定の利点である。
【0004】
カプセルは、特定の圧力閾値を超える液体を、リリーフ状態の要素と接触するカプセルの面の破断により解放するために、水の注入と開口のためのチャンバとしての機能を果たす閉じられたカプセルとするとよい。あるいは、流体入口および/または生成物出口の開口を備える幾つかのカプセルであって、ユーザが前記カプセルを食品調製マシン内へ導入するときには流体入口および/または生成物出口の開口が既に存在している幾つかのカプセルが使用される。
【0005】
水は、通常、針またはスパイクを使用してカプセルを穿孔することにより注入される。このタイプの抽出システムの一例が欧州特許出願公開第0512470号明細書あるいは欧州特許出願公開第0870457号明細書に記載されている。別の想定し得る選択肢において、カプセルは、カプセル内で圧力が閾値に達したときにカプセルフィルムまたはカプセル膜を破断させることにより液体抽出物を解放するためのそれ自体の解放型手段を有する。
【0006】
カプセルは、フィルタタイプの透過性チャンバであってもよく、あるいは、フィルタ要素を備える半透過性チャンバであってもよい。
【0007】
全ての場合において、カプセルチャンバの内圧は、溶解生成物中に泡を形成するための、および、粉末状の焙煎して挽いたコーヒーのためのクリームまたはクレマーの形成のための主要な推進源である。また、カプセルチャンバの内圧は、挽いたコーヒーの抽出においてクレマーを形成するための主要な推進源でもある。クレマーは、それが制御された香りの解放を行なうため、消費者にとって非常に重要であり、また、それ自体の口元の感触にとって重要である。
【0008】
より幅広い種類の飲料を提供するために同じマシンを使用して混合されるべき物質(可溶性物質または分散性物質)と加圧下で抽出されるべき物質とを使用することが知られている。例えば、1つの同じマシンを使用して、カプセルが挽いたコーヒーを収容するときに「エスプレッソ」コーヒーを調製することができ、また、カプチーノを調製することもできる。
【0009】
注入条件、混合条件、または、湿潤条件は、生成される飲料の品質に対してかなりの影響を及ぼす。挽くことによって生じてカプセル内へ押し下げられる物質が関与しているのか、あるいは、水溶きコーヒーなどの液体中に溶解されあるいは分散されるべき物質、またはカプチーノなどのミルクベースの物質等が関与しているのかどうかに応じて、水がカプセルを
通過する態様は、抽出条件または混合条件に対して影響を及ぼし、したがって、飲料の最終的な品質に対して影響を及ぼす。
【0010】
したがって、コーヒーなどの生成物は、好ましくは特定のきめを伴う泡を生成するために急速に且つ完全に溶解されあるいは分散されなければならない。挽いたコーヒーなどの抽出されるべき生成物の場合には、最適な湿潤条件が異なる。生成物は完全に湿潤されなければならず、それにより、コーヒーの層を通じた水のための好ましい経路を形成することなく、水/コーヒー接触面が最適化される。コーヒーの層を通じた優先経路の形成は、非常に突然の圧力増大をもたらす場合があり、したがって、抽出時間が不十分であるがためにコーヒーの一部が未だ適切に湿潤されていないという事実にもかかわらず、非常に急速な抽出物解放をもたらす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
カプセルが開放されるときのカプセル出口を通じた生成物の流れが制御され、それにより、生成物の適切な送出を依然として可能にしつつ、抽出および/または溶解ステップの全体にわたってカプセル内の圧力が一貫したレベルに維持される、というカプセルが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的は、カプセルであって、前記カプセルが食品調製マシンの受容部内に挿入されるときに加圧下で流体をカプセル内に注入することにより食品を供給するためのカプセルであり、前記カプセルが、カプセル側壁、可撓性の底壁、および随意的には上壁によって画定されるチャンバを備え、前記チャンバが、前記注入流体によって溶解されるべき、および/または抽出されるべき少なくとも1つの原材料を収容し、前記カプセルが、底壁を貫通して設けられる少なくとも1つの送出開口を備える飲料送出構造体を備えるカプセルにおいて、前記飲料送出構造体が、前記注入流体と前記原材料との混合のために特定の所定の溶解圧力および/または抽出圧力をチャンバ内で保持するように適合されている圧力保持要素をさらに備え、前記圧力保持要素がチャンバの外側で底壁の近傍に配置され、前記圧力保持要素が、前記少なくとも1つの送出開口に対応して配置される少なくとも1つの突出部を備え、したがって、前記突出部が、少なくともカプセルチャンバ内の注入流体が底膜を押圧して前記膜を前記圧力保持要素の方へ移動させるときに、対応する開口内に配置されてその断面を制限するようになっていることを特徴とするカプセルを用いて本発明により達成される。
【0013】
「対応して」とは、突出部の対称軸線が送出開口の中心とほぼ位置合わせされることを意味する。
【0014】
カプセルの出口開口を制限するが完全に閉じないことにより、生成物の流れが保証されるが、同時に、カプセル内の圧力は、カプセル内に収容される材料の適切な湿潤、溶解、発泡、および/または、抽出を可能にするように十分高く維持される。
【0015】
前記圧力保持要素は、カプセル底壁の一体的な延在部であることが有益である。延在部とは、カプセルの別個の機能要素であるが、延在部が、カプセル壁、特にカプセル底壁と一体に成形され、したがってカプセル底壁に対して構造的に結合され得ることを意味する。
【0016】
本発明の1つの特定の実施形態において、圧力保持要素の少なくとも1つの突出部は、それが対応する開口の形状とは異なる径方向断面形状を有する。これに代えて、あるいは、これに加えて、圧力保持要素の少なくとも1つの突出部は、その径方向断面が一般に頂点から底面へと増大するように一般的な長手方向輪郭を有する。
【0017】
突出部の径方向断面が一般に頂点から底面へと増大する後者の場合、前記突出部は、好適には、以下から選択される、すなわち、半球、切頂半球、楕円放物体、棘状錐体、四面体などの多面体、切頂四面体、円錐、円錐台、角錐、切頂角錐、または、これらの組み合わせから選択される全体的形状を有することができる。無論、径方向断面が突出部の頂点から底面へと増大する原理が適用されさえすれば、他の同様の形状を適用できる。
【0018】
そのような形状を用いると、カプセルチャンバ内で抽出され、および/または溶解される−例えばコーヒーにおける−生成物をカプセル底壁の送出穴を通じてカプセルから流出させることができるようになるとともに、送出穴が対応する突出部によって完全に塞がれないようになる。
【0019】
抽出中および/または溶解中、注入流体がカプセルチャンバ内に注入されて、前記チューブ内の圧力が増大し、それにより、カプセルの底壁が圧力保持手段の方へ押圧され、その結果、底壁の送出開口が突出部によって部分的に塞がれる。底膜と圧力保持手段−特に突出部の基部−との間の距離は、カプセル内が最も高い圧力に達するときに底膜の変形が送出穴を塞ぐポイントを越えないように適合される。
【0020】
突出部の基部の径方向断面は、それらが対応する送出開口の直径よりも大きくないことが好ましく、また、前記突出部の基部とカプセルの底膜との間の距離は、前記底膜の最大変形時に、0.1mmよりも大きく、より好ましくは0.2mmよりも大きい。生成物が流れるための開放面積は、生成物の粘性を使用して、また、生成物のタイプのために必要とされる圧力にしたがって調整することができる。例えば、圧力は、特定のミルクベースの生成物に関して消費者により好まれるタイプの泡を与えるように調整することができる。例えば、好ましくは1.0mm未満の距離を伴うさらに小さい開放面積を用いると、ミルク泡中の小さな気泡から成る滑らかなクリーム状のきめのある泡/乳濁液を得ることができる。
【0021】
いずれにしても、突出部の基部の径方向断面が、それらが対応する送出開口の直径よりも大きい場合、カプセル底膜の最大変形ポイントは、カプセル内の圧力がその最高点に達するときに膜の各送出開口が対応する突出部によって塞がれないように適合されなければならない。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、圧力保持要素は、少なくとも1つの突出部の近傍に配置される少なくとも1つのクッションを備え、前記クッションは、前記底壁がカプセル内の流体圧の影響下で移動される場合にカプセル底壁を突出部の基部から距離を隔てて維持するために、前記突出部よりも小さいあるいは前記突出部に等しい高さを有し、それにより、前記開口の直径は、それが対応する突出部の径方向断面よりも大きい。
【0023】
本発明の第1の別の実施形態において、前記少なくとも1つの開口は、前記カプセルが使用のために前記マシン内に配置されるときにはカプセル底壁に既に穿孔されている。
【0024】
本発明の第2の別の実施形態において、前記少なくとも1つの開口は、
前記注入流体が前記底壁の内面と接触するときの前記注入流体の温度の作用時の、および/または底壁材料と注入流体との間の化学反応時のカプセル底壁材料の局所的な溶解、
予め穿孔されるが、閉じられた状態にあり、底壁の局所的な変形の後に開放される底壁の所定の領域、あるいは、底壁の脆弱化した領域である底壁の所定の領域に対するカプセルチャンバ内の流体圧力の作用、および/または、
前記カプセルの外側で前記カプセル底壁上に配置される機械的手段の効果、
によってカプセル底壁の厚さを貫通して形成される。
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照して以下に記載される現在好ましい実施形態の説明において述べられるとともに、この説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る、カプセルホルダ内に配置されたカプセルの概略部分断面図である。
【
図2】
図1に示されるカプセルの別の実施形態の概略断面図である。
【
図3】本発明に係る圧力保持手段の概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の第1の実施形態を示しており、この実施形態では、カプセル1が用意されるが、このカプセル1は、前記カプセルが食品調製マシンの受容部(図示せず)内に挿入されるときに加圧下で針2を通じて流体をカプセル内に注入することにより食品を供給するのに適する。カプセル1は、カプセル側壁4、可撓性の底壁5、および、上壁6によって画定されるチャンバ3を備える。
【0028】
チャンバ3は、加圧下で前記注入流体によって抽出されるべき粉末状の焙煎して挽いたコーヒー7の塊状体を収容する。コーヒー7の塊状体は、カプセルの底壁5と、カプセルの上壁6に対して平行であるがこの上壁6よりも下側に特定の距離を隔てて配置されるフィルタ壁8との間でチャンバ3内に封入される。このフィルタ壁8は少なくとも2つの利点を有する。すなわち、フィルタ壁は、注入針2から放出される噴出水を遮断して水の速度を低下させ、また、フィルタ壁は、粉末状のコーヒー7を特定の圧縮形態下に維持して、それにより、コーヒー塊状体がまとめられるようにするとともに、カプセルチャンバ内に注入される水がカプセルチャンバ容積空間にわたって粉末をまき散らさないようにする。このようにまき散らすことは非常に望ましくない。
【0029】
図1に示されるように、カプセル1は、底壁5を貫通して設けられる複数の送出開口9を有する飲料送出構造体をさらに備える。
【0030】
カプセルは、底壁5の一部として配置されるがチャンバ3の外側にある圧力保持要素10をさらに備える。
【0031】
前記圧力保持要素10は、前記送出開口9に対応して配置される複数の突出部11を備え、その場合、各突出部11は、少なくともカプセルチャンバ3内の注入流体が底膜5を押圧して前記膜を前記圧力保持手段10の方へ移動させるときに、対応する開口9内に配置されてその断面を制限するようになっている。
【0032】
図1に示されるように、圧力保持手段は、カプセルの底壁5の下側に配置されるカプセル壁の延在部である。
【0033】
図1に示されるように、カプセルはカプセルホルダ12内に配置される。そのようなホルダは、当該技術分野において良く知られているため、本出願では、詳しく説明されない。
【0034】
圧力保持手段要素10はホッパーの形状の送出開口13をさらに備え、この送出開口を通じて、カプセルチャンバ内で調製されて送出開口9を通じて送出される生成物が流れることができる。
【0035】
図2を参照すると、カプセルが概略断面図で示されている。図示のカプセルは、側壁4と上縁14とを有するカップ形状の本体を備える。図面では、カプセルの上側が開放されたままであるが、例えば
図1に関連して前述したように、膜または同様の壁を用いてカプセルの上側を閉じることができる。
【0036】
この特定の実施形態において、圧力保持要素10は、圧力保持手段10の下壁16から延びるロッドの形状を成す複数の突出部15を備える。前記壁16は、カプセルの側壁4から延びて該側壁と一体成形される部分である。しかしながら、前記圧力保持要素10をカプセルに組み付けられる別個の要素にすることができる。
【0037】
図2に示されるように、カプセルの底壁5は、
図1に関連して既に説明した実施形態と同様に、複数の送出開口9が穿孔される可撓性の膜である。この膜は、穿孔されたフィルム、メッシュ、紙、フィルタ、または、同様の空気および液体を透過させる材料であってもよい。
【0038】
図1に関連して前述したように、突出部15は、それらが底壁5の開口に嵌合するように形成されて寸法付けられ、それにより、各突出部15は、少なくともカプセルチャンバ3内の注入流体が底膜5を押圧して前記膜を前記圧力保持手段10の方へ移動させるときに、対応する開口9内に配置されてその断面を制限する。
【0039】
圧力保持手段10の壁16は、カプセル内で調製された生成物が例えばカップ内へ流出するための送出開口17を備える。
【0040】
図2に示されるように、本発明に係るカプセルでは、全ての送出開口9が対応する突出部によって必ずしも部分的に閉じられるとは限らない。底膜5からの生成物の流出を少なくとも部分的に制限する本発明の原理が順守されさえすれば、それらの突出部の一部が完全に開放されたままであってもよい。しかしながら、流量規制が底膜5の全ての送出開口9に適用されることが非常に好ましい。
【0041】
図3は、カプセル1の可撓性の底膜5と圧力保持要素10との間の構造的関係を示す拡大部分概略図である。
【0042】
図3から分かるように、底膜5は複数の送出開口9を備える。それに対応して、圧力保持要素10は、開口9の方へ向く複数の円錐形状の突出部11を備える。
【0043】
図3に示される実施形態において、突出部11の一般的な長手方向の輪郭は、それらの径方向断面が一般に頂点から底面へと増大するようになっている。
【0044】
流体がカプセル内に注入されると、カプセルチャンバ内で圧力が増大し、その結果、可撓性の底膜5が圧力保持要素10の壁16へ向けて外側に押し出される。この時点での変形された膜の位置が
図3に点線で表わされる。
【0045】
静止状態での可撓性の底膜5の位置決めは、この膜を製造するために使用される材料の可撓性に応じて、および、製品調製中のカプセル内の最大圧力レベルに応じて、変形された膜5’の位置が
図3に点線が示されるようになるべく、すなわち、突出部11が開口9を完全に塞ぐことなく開口9により画定される空間を部分的に満たすべくなされなければならない。この位置では、出力される生成物の流量が制限され、したがって、カプセルチャンバ内の圧力を、抽出および/または溶解を質的に良好にし得る十分なレベルに維持することができる。また、カプセル内に収容されて抽出されおよび/または溶解されるようになっている1つまたは複数の原材料の湿潤は、出力される生成物の流速が低下されるということに起因して良好である。
【0046】
圧力保持手段の壁16に対する膜5’の位置決めは、突出部11のサイズおよび形状によっても決定される。
【0047】
本発明の特に有利な作用形態において、圧力保持手段10は、突出部11と同じ方向に突出する少なくとも1つの、しかし好ましくは複数の支持クッション18をさらに備える。
図3に示されるように、支持クッションは、前記膜5’が圧力保持要素10の突出部11によって完全に塞がれる位置を越えていかないようにするために、カプセルのその変形状態の底壁5’を支持する。その限界の位置では、膜5’がクッション18上に載置する。前記クッションは突出部間に配置されるのが好ましく、また、クッションの高さは突出部の高さを超えない。
図3に示されるように、クッションは、円筒形状を有することができるが、キノコ状、円錐台、角錐台、立方体等、あるいは、これらの組み合わせなどの他の類似の形状を適用することもできる。クッションは、それらが底膜5,5’の送出開口9と位置合わせされないように配置される。
【0048】
図3に示される実施形態に代わる手段として、底膜の送出開口からの生成物の流出を別の方法で制限することができる。1つのケース−図示せず−では、圧力保持要素が前述したようなクッションを備えない。この場合、突出部の長手方向の輪郭は
図2に示される輪郭と同様である。すなわち、突出部の断面が頂点から底辺まで変化しない。この場合、カプセルの送出開口を通じた生成物流量の規制/制限は、送出開口とそれらの対応する突出部との間の径方向断面形状の違いによって得られる。例えば、送出開口が円形状を有する場合には、対応する突出部を、径方向の面内で十字形状または三角形状を有するように形成することができる。径方向の形状が正確に合わないので、生成物が流通し得る垂直チャネルが形成されるが、前記流れは、カプセルチャンバ内でかなりの内圧を維持するように制限される。
【0049】
理想的には、本発明に係る流量制限は、カプセルチャンバ内の内圧が生成物送出の全体にわたって可能な限り一定に維持されるように行なわれなければならない。
【0050】
言うまでもなく、本明細書中に記載される現在好ましい実施形態に対する様々な変更および改変は当業者に明らかである。そのような変更および改変は、本発明の思想および範囲から逸脱することなく且つ本発明の付随する利点を損なうことなく行なうことができる。したがって、そのような変更および改変が添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。