(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919270
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ジミラセタムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20160428BHJP
A61P 25/04 20060101ALN20160428BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20160428BHJP
A61P 25/28 20060101ALN20160428BHJP
A61K 31/4188 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
C07D487/04 138
!A61P25/04
!A61P29/00
!A61P25/28
!A61K31/4188
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-521097(P2013-521097)
(86)(22)【出願日】2011年7月25日
(65)【公表番号】特表2013-533278(P2013-533278A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011062767
(87)【国際公開番号】WO2012013640
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月9日
(31)【優先権主張番号】10170741.2
(32)【優先日】2010年7月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509309581
【氏名又は名称】ニューロチューン・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100122736
【弁理士】
【氏名又は名称】小國 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149412
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】ファリーナ,カルロ
(72)【発明者】
【氏名】ロレット,ヤーコポ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッバート,ステファノ
【審査官】
東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−246281(JP,A)
【文献】
特表2006−523198(JP,A)
【文献】
国際公開第93/009120(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00335483(EP,A1)
【文献】
MARIO PINZA,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,1993年12月24日,Vol.36, No.26,pp.4214-4220
【文献】
FARINA,C. et al,BIOORGANIC AND MEDICINAL CHEMISTRY,2008年,Vol.16,pp.3224-3232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)のジミラセタムの製造方法であって、式(I)(式中、Rは、
C1−C5アルキルである)の4−オキソブタン酸エステルを式(II)のグリシンアミド又はその酸付加塩と
一定のpH
のワンポット反応で縮合すること
、該反応が水溶液中で行われること、及び該一定のpHがpH5.5〜7.5の範囲内に保持されること、を特徴とする
、方法。
【化6】
【請求項2】
式(1)のジミラセタムの製造方法であって、式(I)(式中、Rは、C1−C5アルキルである)の4−オキソブタン酸エステルを式(II)のグリシンアミド又はその酸付加塩と一定の見かけpHのワンポット反応で縮合すること、及び該反応が無水C1−C5アルコール溶液中で行われること、を特徴とする方法であって、当該方法において、式(1)のジミラセタムが、中間体4−オキソ−イミダゾリジン−2−イル−プロピオン酸エステル(III)を更にアンモニアで処理することにより得られる、方法。
【化7】
【請求項3】
4−オキソ−ブタン酸エステル(I)が、4−オキソブタン酸エチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
4−オキソ−ブタン酸エステル(I)が、4−オキソブタン酸エチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
グリシンアミド(II)酸付加塩が、グリシンアミド塩酸塩である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項6】
グリシンアミド(II)酸付加塩が、グリシンアミド塩酸塩である、請求項2又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記反応の温度が、およそ100℃で0.5〜10時間保持される、請求項1、3及び5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応の温度が、およそ100℃で1〜3時間保持される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1モル当量のグリシンアミド(II)に対して1〜3モル当量の4−オキソブタン酸エステル(I)が使用される、請求項1、3、5、7及び8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
C1−C5アルコールが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール及びイソ−ペンタノールよりなる群から選択される、請求項2、4及び6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
C1−C5アルコールが、n−プロパノールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(I)の4−オキソブタン酸エステルと式(II)のグリシンアミド又はその酸付加塩との反応温度が90〜120℃で2〜10時間保持されることを特徴とする、請求項2、4、6、10及び11のいずれか1項に記載の方法であって、中間体4−オキソ−イミダゾリジン−2−イル−プロピオン酸エステル(III)が、30〜90℃で10〜24時間アンモニアで更に処理されることにより式(1)のジミラセタムが得られる、方法。
【請求項13】
中間体4−オキソ−イミダゾリジン−2−イル−プロピオン酸エステル(III)のアンモニアでの前記処理が、60〜70℃で16〜20時間行われる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ジミラセタムの新規な製造方法であって、この化合物を高純度及び良好な収率で与える方法に関する。
【0002】
発明の背景
WO 93/09120は、ジミラセタム(2,5−ジオキソヘキサヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]イミダゾール)(1)及び関連する化合物の製造方法を記載する。5−エトキシ−2−ピロリドンを、触媒量のp−トルエンスルホン酸でカルバミン酸ベンジルと反応させることにより、5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ピロリドンが得られる。この化合物を次に、アセトニトリル中の水素化ナトリウムによりピロリジン窒素で脱プロトン化し、そしてブロモ酢酸エチルと反応させることにより、5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−オキソ−1−ピロリジン−酢酸エチル(2)が得られる。次いで種々の環化剤の存在下で、エチルエステル及び/又はベンジルオキシカルボニル保護基の開裂を経て環化が実行できる。
【0003】
【化1】
【0004】
ジミラセタムの合成法及び薬理学的活性は、M. Pinza et al., J. Med. Chem. 36:4214-20 (1993)に説明されている。ジミラセタム(1)は、認知増強活性に重要であると既に認識されている、2−ピロリジノン及び4−イミダゾリジノン核の両方を含有する。更に、この構造は、アセトアミド側鎖が折り畳みコンフォメーションで制限されている、ピラセタム(2−オキソ−1−ピロリジニル−酢酸アミド)及びオキシラセタム(4−ヒドロキシ−2−オキソ−1−ピロリジニル−酢酸アミド)の基本骨格を維持する。これのスコポラミン誘導性健忘を回復させる能力は、一試行ステップスルー型受動的回避パラダイムにおいて評価された。観察される主な特色は、腹腔内投与後の強力な抗健忘活性である。ジミラセタムは経口投与されるとき活性を完全に保持しており、対照薬のオキシラセタムよりも10〜30倍強力である。
【0005】
慢性痛の処置におけるジミラセタムの使用は、WO 2008/125674に開示されている。認知増強活性に関して報告される用量より高用量で、ジミラセタムは、幾つかのモデルの慢性痛を伴う痛覚過敏又は異痛を、例えば、抗ウイルス剤及び化学療法剤の処置に伴う医原性神経障害において、並びに変形性関節症に起因する疼痛状態において完全に回復させることができた。
【0006】
神経障害痛の処置、予防及び/又は進行の遅延の方法は、新規な独創性のある投与方式に基づいてUS 2010/0125096に開示されている。
【0007】
EP 0 335 483(実施例9)及びM. Pinza et al., J. Med. Chem. 36:4214-20 (1993)では、ジミラセタムが、4−オキソブタン酸イソブチル(3)とグリシンアミド塩酸塩(4)との縮合反応(グリシンアミド塩酸塩の水への溶解後、かつ4−オキソブタン酸イソブチルの添加前に、pHをpH9.5に調整する)によって入手できることが報告されている。
【0008】
【化2】
【0009】
この合成法から得られる粗ジミラセタムは、カラムクロマトグラフィーにより精製して、グリシンアミドからの19.1%の全収率で単離される。
【0010】
発明の要約
本発明は、4−オキソブタン酸エステル(I)(ここで、Rは、低級アルキルである)をグリシンアミド(II)又はその酸付加塩とpHを制御したワンポット反応で縮合することを特徴とする、ジミラセタム(1)の合成法に関する。本反応は、水溶液中又は無水低級アルコール溶液中で実行してもよい。
【0011】
【化3】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、4−オキソ−ブタン酸エステル(I)をグリシンアミド(II)又はその酸付加塩とpHを制御したワンポット反応で縮合することを特徴とする、ジミラセタムの合成のための新規の効率的プロセスに関する。
【0013】
本発明の第1の特定の実施態様では、4−オキソ−ブタン酸エステル(I)を、グリシンアミド(II)又はその酸付加塩と、反応中pHを一定に保持しながら水溶液中で加熱する。別の特定の実施態様では、4−オキソブタン酸エステルを、グリシンアミド又はその酸付加塩と無水低級アルコール中で縮合させ、そして中間体4−オキソ−イミダゾリジン−2−イル−
プロピオン酸エステル(III)を更に塩基で処理することにより、式(1)のジミラセタムが得られる。
【0014】
【化4】
【0015】
本明細書で理解される低級アルコールは、1〜5個の炭素原子を持つアルコールであり、特にメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール又はイソ−ペンタノールであり、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール又はsec−ブタノールであり、特にn−プロパノールである。
【0016】
4−オキソブタン酸のエステルは、好ましくは1〜5個の炭素原子を持つ低級アルキルエステルであり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル又はイソ−ブチルエステルであり、特にメチル又はエチルエステルであり、好ましくはエチルエステルである。
【0017】
グリシンアミドは、好ましくは酸付加塩として、例えば、塩酸塩又は硫酸塩として、特に塩酸塩として提供される。しかしグリシンアミドはまた、遊離塩基として使用されてもよい。
【0018】
特定の例として、4−オキソ−ブタン酸エステルは、エチルエステル、式(5)の4−オキソ−ブタン酸エチルであり、そしてグリシンアミドは、式(4)のグリシンアミド塩酸塩として提供される。水溶液中での縮合反応の特定の実施態様において、pHは、pH5.5〜7.5の範囲内に、特におよそ6.6に保持される。別の特定の実施態様において、水溶液中での縮合反応は、90〜100℃で0.5〜10時間、好ましくは1〜3時間、特におよそ1.5時間実行される。
【0019】
驚くべきことに見い出され、そして先行技術と非常に異なるワンポット水性縮合反応のための重要な要素の1つは、反応に沿って一定かつ選択されたpHを維持することである。純粋な技術的観点から、一定の選択されたpHは、高pHで水により容易に加水分解しうるエステル部分を有する、4−オキソブタン酸エステルの急速な分解を回避するために必要である。pHの選択された値は、アルデヒド部分との反応のためのグリシンアミド塩基の形成に必要な塩基性pHと、4−オキソブタン酸エステルのエステル部分の加水分解を減少させるための酸性pHとの間の妥協であるため、水中でのワンポット反応の収率のための基本である。
【0020】
pHを制御することは、反応溶液のpHを絶えず測定して、かつアルカリ溶液のディスペンサーに連結している自動システムを用いて、最もよく実行される。このアルカリ溶液は、水酸化物水溶液、例えば、水酸化カリウム若しくはナトリウム溶液、又は炭酸塩溶液、例えば、炭酸カリウム若しくはナトリウム、好ましくは20%(w/v)のNa
2CO
3水溶液のような、炭酸ナトリウム溶液であってよい。pH5.5〜7.5の範囲内のpHが適していることが見い出されたが、本反応の最良の結果はpHが6.6に設定されたときに見られる。
【0021】
先行技術では、反応に沿ってのpH制御は報告されておらず、反応の開始時のみアルデヒドの添加前にpHがpH9.5に調整された。先行技術の手順により反応を実行し、pH9.5から出発すると、4−オキソブタン酸エチル(5)が加水分解して、pHは非常に急速に低下してpH5未満のpHに達する。このpHでは、グリシンアミドがプロトン化されて、潜在的な残りのアルデヒド官能基ともはや反応できないため、反応はほとんど停止する。
【0022】
本発明では、4−オキソブタン酸エステルは、グリシンアミドの量と比較してモル過剰で、例えば、1〜3モル当量で使用される。アルデヒド官能基は、水性反応環境で分解される。
【0023】
ワンポット反応が溶媒として低級アルコール中で行われ、そして先行技術とは非常に異なる、代替の実施態様のための重要な要素は、無水条件である。選択された反応条件内で、4−オキソブタン酸エステル(I)は分解されず、よって反応時間全体にわたってグリシンアミド(II)と反応することができる。4−オキソブタン酸のモル過剰は、水溶液中での反応にとって不可欠であるが、このような過剰は、無水低級アルコール中での反応には要求されない。適切な塩基の穏やかな添加により得られる一定の見かけpHが、グリシンアミドの遊離塩基及びそのプロトン化型の平衡を調節するために必要であるため、pH制御は妥当である。
【0024】
無水条件では、塩基を添加することによりpHを一定に保持する自動システムによって得られる結果は、水溶液中でのものと同様に重要である。しかし、水溶液とは対照的に、pH測定が、水溶液中でのみ信頼できるため、好ましいpHの範囲の数値を規定することは意味がない。例えば、n−プロパノール溶液では5.5の見かけのpHが最適であることが分かった。当業者であれば、対応する無水低級アルコール溶媒で利用すべき適切な見かけのpH値を容易に見い出すであろう。水溶液中と同型のアルカリ性及び酸性を測定する装置を用いて、次には反応の進行による酸の形成を埋め合わせるために絶えず塩基を添加するためにこれを利用できる。一例として、反応溶媒として使用される特定の低級アルコール中のアミン塩基の又はアルコキシドの溶液が利用される、例えば、ナトリウム若しくはカリウムアルコキシド(メトキシド、エトキシド又はtert−ブトキシドなど)、水素化ナトリウム、ブチルリチウム、ナトリウム、又は炭酸ナトリウム若しくはカリウム、特にカリウムtert−ブトキシド。
【0025】
無水低級アルコール中での4−オキソブタン酸エステル(I)とグリシンアミド(II)又はその酸付加塩との反応において、中間体3−(4−オキソイミダゾリジン−2−イル)プロパン酸エステル(III)は、自発的に環化して所望のジミラセタムにはならない。環化に至るために適切な塩基を添加しなければならない。
【0026】
適切な塩基は、アンモニア、強有機アミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、又は4−N,N−ジメチルアミノピリジン)、アルコキシド(例えば、ナトリウム若しくはカリウムtert−ブトキシドのようなtert−ブトキシド、又はメトキシド若しくはエトキシド)、無機塩基(例えば、固体炭酸カリウム若しくはナトリウム、又は炭酸アンモニウム)である。好ましい塩基は、アンモニアである。
【0027】
特定の好ましい実施態様において、低級アルコールはn−プロパノールである。n−プロパノール反応混合物中で測定される、式(6)の3−(4−オキソイミダゾリジン−2−イル)プロパン酸エチル対グリシンアミド塩酸塩(4)のモル収率は、約80%又はそれ以上であり、アンモニアとの反応の間のジミラセタムへの3−(4−オキソイミダゾリジン−2−イル)プロパン酸エチル(6)の転化はほぼ定量的である。
【0028】
【化5】
【0029】
特定の実施態様において、反応温度は90〜120℃の間、好ましくはおよそ100℃であり、そして反応時間は2〜10時間の間、好ましくはおよそ4時間である。例えば、化合物(6)の形で式(III)の中間体の形成後、塩基、例えば、アンモニアを添加し、そしてアンモニアの添加後の反応温度は、30〜90℃で10〜24時間、特に60〜70℃で16〜20時間(例えば18時間)保持する。
【0030】
本反応が、メタノール、エタノール又はイソプロパノールのような低沸点アルコール中で実施されるとき、本反応は好ましくは、およそ100℃の所望の最適な反応温度に達するように加圧下の閉鎖系で実施される。
【0031】
本反応は、「ワンポット」と呼ばれるが、連続反応器技術を用いて実行することもできる。
【0032】
反応後、所望のジミラセタムは、水性反応混合物又は無水低級アルコール反応混合物から、抽出、沈降、濾過及び再結晶のような標準法により単離する。高純度生成物は、イソプロパノールからの再結晶により得られる。
【0033】
実施例
実施例1
水溶液中での調製
水200ml中のグリシンアミド塩酸塩(純度98%)2.56g(22.7mmol)の溶液を95℃に加熱して、水中のNa
2CO
3 20%(w/v)でpHを6.6に調整した。次に4−オキソブタン酸エチル(純度97%)(7.60g、56.6mmol)を4時間にわたって滴下により加え、その間、温度を95℃で、水中のNa
2CO
3 20%(w/v)の自動添加(pHスタット)によりpHを6.6に維持した。この溶液を95℃で1.5時間撹拌し、次に真空下で少容量に濃縮した。得られた懸濁液は、イソプロパノール50mlで処理して、大気圧で溶媒を留去した。この操作をもう1度繰り返した。残渣をイソプロパノール50mlで希釈して、生じる懸濁液を60℃に加熱し、次に濾過した。濾液を約15mlまで濃縮し、室温に冷却して、撹拌を約2時間続けた。白色の沈殿物を吸引濾過により集め、イソプロパノール4mlで洗浄して60℃で12時間真空乾燥することにより、粗ジミラセタム1.8g(12.8mmol、55.5%)を得た。イソプロパノール(10容量)からの再結晶により、純粋なジミラセタム(面積%HPLCから測定したとき>99.5%)1.6g(50%)を得た。
融点:154℃
1H−NMR(CD
3OD中):1.90-2.05 (1H, m), 2.33-2.44 (1H, m), 2.48-2.60 (1H, m), 2.64-2.78 (1H, m), 3.55 及び 4.02 (2H, AB q, J=15.9 Hz), 4.76 (s, H
20), 5.34 (1H, t, J=6.12 Hz).
13C−NMR(CD
3OD):30.8 (CH
2), 32.4 (CH
2), 47.7 (CH
2), 74.0 (CH), 175.2 (C=0), 180.1 (C=0).
FT−IR:3280 cm
-1 (NH), 1678-1698 cm
-1 (C=0), 1222-1284 cm
-1.
MS:m/z 141 (MH
+).
HPLC条件:カラム:Zorbax SB-AQ、250mm×4.6mm×5mm;検出:UV 200nm;移動相A:HPLCグレード水;移動相B:アセトニトリル/水(50:50)。
【0034】
実施例2
n−プロパノール中での調製
n−プロパノール7.2リットル中のグリシンアミド塩酸塩(純度98%)90.0g(0.798mol)の懸濁液を加熱還流して、溶媒250mlを留去した。n−プロパノール中のナトリウムtert−ブトキシドの15%(w/v)溶液(260ml、0.35mol)を加えて、5.5の見かけpHを測定した。n−プロパノール中のナトリウムtert−ブトキシドの15%(w/v)溶液の自動添加により、この5.5の見かけpHを維持しながら、4−オキソブタン酸エチル(純度97%)(262.3g、1.955mol)を4時間にわたって滴下により加えるが、その間、反応混合物を還流温度に保持し、約400ml/時で溶媒を連続蒸留し、そして約400ml/時で反応混合物にn−プロパノールを連続添加した。n−プロパノール中のナトリウムtert−ブトキシド15%(w/v)溶液を総量363ml(0.476mol)加える。この混合物を還流温度で更に1.5時間撹拌し、次に65℃に冷却した。n−プロパノール中のアンモニアの7.5%(w/w)溶液(800g)をこの混合物に6時間にわたりゆっくり加え、65℃での加熱を更に18時間続けた。反応混合物を室温に冷却して、沈殿物を濾別した。この清澄な溶液を少容量(約0.5リットル)まで真空下で濃縮して、0℃で2時間撹拌した。吸引濾過により白色の沈殿物を集め、n−プロパノール50mlで洗浄して60℃で12時間真空乾燥することにより、融点154℃の純粋なジミラセタム(65g、58.1%)を得た。HPLC純度:99.7%。