(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919286
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】NOx貯蔵成分
(51)【国際特許分類】
B01J 23/58 20060101AFI20160428BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20160428BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
B01J23/58 AZAB
B01J37/02 301L
F01N3/10 A
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-534402(P2013-534402)
(86)(22)【出願日】2011年10月20日
(65)【公表番号】特表2013-544639(P2013-544639A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】IB2011002517
(87)【国際公開番号】WO2012052835
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】61/413,550
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1017870.5
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】クーパー, ジョナサン アシュレー
(72)【発明者】
【氏名】ハワード, マイケル アンソニー
【審査官】
田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−314762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材モノリス上に配された二以上の層を含むNOx吸蔵触媒であって、第一層がケイ酸セシウム(Cs2SiO3)と少なくとも一種の白金族金属を含むNOx貯蔵成分を含み、第二層が少なくとも一種のアルカリ土類金属を含む、NOx吸蔵触媒。
【請求項2】
第一層が第二層の上に配されている、請求項1に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項3】
白金、パラジウム又は白金とパラジウムの双方が第二層に配されている、請求項1又は2に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項4】
第一層が、耐火金属酸化物担体に支持されたケイ酸セシウムと少なくとも一種の白金族金属を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項5】
耐火金属酸化物担体が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、マグネシア及びその二以上の混合物、混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項4に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項6】
耐火金属酸化物担体が一又は複数のシリカ及び希土類でドープされている、請求項4又は5に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項7】
白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム及びその二以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項8】
白金族金属がロジウムである、請求項1から7のいずれか一項に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項9】
耐火酸化物担体がまた希土類酸化物を支持する、請求項4から8のいずれか一項に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項10】
希土類酸化物がセリアである、請求項9に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項11】
NOx貯蔵成分が更にマンガンを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のNOx吸蔵触媒。
【請求項12】
NOx貯蔵成分が、少なくとも一種の白金族金属の水性塩、水性セシウム塩及びシリカ源を組合せ、反応させる工程を含む方法により作製される、請求項1から11のいずれか一項に記載のNOx吸蔵触媒を製造するための方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載のNOx吸蔵触媒を含む、リーンバーン内燃機関用の排気システム。
【請求項14】
請求項13に記載の排気システムを具備する自動車。
【請求項15】
リーンバーン内燃機関からのNOx含有排ガスを処理する方法において、基材モノリス上に配された二以上の層を含むNOx吸蔵触媒であって、第一層がケイ酸セシウム(Cs2SiO3)と少なくとも一種の白金族金属を含むNOx貯蔵成分を含み、第二層が少なくとも一種のアルカリ土類金属を含む、NOx吸蔵触媒を、NOxを含有するリーン排ガスと接触させて、それにNOxを吸着させる工程と;NOx貯蔵触媒をストイキ又はリッチ排ガスと接触させて吸着NOxを周期的に脱着させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動機とリーンバーン内燃機関の双方を含むハイブリッド動力源によって駆動される車両を含むリーンバーン内燃機関により駆動される車両からの排ガスの処理に使用される新規なNOx貯蔵成分とそれを含むNOx吸蔵触媒(NAC)に関する。本発明に係るNOx吸蔵触媒は、圧縮点火のような自動車用内燃機関(例えばジーゼルエンジン)とリーンバーンガソリンエンジンのようなポジティブ点火エンジンからの排ガスの処理に特に利用性を有している。
【背景技術】
【0002】
NOx吸蔵触媒(NAC)は例えば米国特許第5473887号から知られており、排ガス中の酸素濃度が(受動的とは反対に)能動的に減少させられるときにリーン排ガス(ラムダ>1)からの窒素酸化物(NO
x)を吸着するように設計されている。このような酸素濃度の能動的な減少はNACのNOx吸着能の「再生」又はNACに吸着されたNOxの「パージ」として知られている。脱着NOxはNAC自体の又はNACの下流に位置させられたロジウムのような触媒成分によって促進されて、例えばガソリン燃料のような適切な還元剤でN
2に還元されうる。実際には、酸素濃度は、NACの算出された残存NOx吸着能に間欠的に応答して、例えば通常のエンジン運転操作よりリッチな(しかしなおストイキよりリーン、つまりラムダ=1の組成)組成、ストイキ又はストイキよりリッチな組成(ラムダ<1)のように、所望のレドックス組成に能動的に調節されうる。酸素濃度は、多くの手段、例えばスロットル調節、例えば排気行程中におけるエンジンシリンダ中への追加の炭化水素燃料の噴射、又はエンジンマニフォールドの下流の排ガス中への炭化水素燃料の直接の噴射によって、調節することができる。
【0003】
従来技術において開示されている典型的なNAC調製物は、触媒酸化成分、例えば白金、有意な量、つまりプロモータに必要とされるよりの大幅に多いNOx貯蔵成分、典型的にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばバリウム、及び還元触媒、例えばロジウムを含む。この調製物の場合のNOx貯蔵に対して一般的に考えられる一機構は、
NO+1/2O
2→NO
2 (1);及び
BaO+NO
2+1/2O
2→Ba(NO
3)
2 (2)
であり、ここで、反応(1)では、一酸化窒素が白金上の活性酸化部位の酸素と反応してNO
2を生じる。反応(2)は、無機硝酸塩の形態の貯蔵材料によるNO
2の吸着を含む。
【0004】
低酸素濃度及び/又は高温では、硝酸塩種は熱力学的に不安定になって分解し、以下の反応(3)に従ってNO及び/又はNO
2を生成する。適切な還元剤の存在下、これらの窒素酸化物は続いて一酸化炭素、水素及び炭化水素によってN
2に還元され、これは還元触媒上で起こりうる(反応(4)を参照)。
Ba(NO
3)
2→BaO+2NO+3/2O
2 又は
Ba(NO
3)
2→BaO+2NO
2+1/2O
2 (3);及び
NO+CO→1/2N
2+CO
2 (4);
(他の反応は、Ba(NO
3)
2+8H
2→BaO+2NH
3+5H
2Oと、続くNH
3+NO
x→N
2+yH
2O、又は2NH
3+2O
2+CO→N
2+3H
2O+CO
2等を含む)。
【0005】
上記(1)−(4)の反応において、反応性バリウム種は酸化物として与えられる。しかしながら、空気の存在下ではバリウムの殆どは炭酸塩か又はことによると水酸化物の形態であることが理解される。従って、当業者は、排気システムにおける酸化物以外のバリウム種及び触媒コート列向けに、又はSr、Mg又はCaのような他のアルカリ土類金属、又はK又はCsのようなアルカリ金属での使用向けに上記反応スキームを適合させることができる。
【0006】
アルカリ金属系NOx貯蔵成分は比較的高レベルのNOx貯蔵性を有しているので、その使用が望ましい。しかしながら、その使用には多くの欠点がある。これらは、触媒がコートされるセラミックモノリス基材中への触媒からのアルカリ金属の移動、使用している触媒の経年劣化中のアルカリ金属の蒸発、例えばエンジンの冷間始動中の排気システムに存在する液体水によるアルカリ金属の浸出、触媒ウオッシュコートの層間でのアルカリ金属の移動及びPtによる炭化水素転換効率の減少(この最後の欠点については国際公開第02/22241号を参照)を含む。
【0007】
従来技術は多くのNOx貯蔵成分を開示している。例えば、米国特許第6497848号は、リチウム、ナトリウム又はカリウムの塩基性含酸素化合物との高温反応に不活性である排ガス中のNOxの転換に効果的な触媒トラップを開示している。その触媒トラップは、シリカ成分を実質的に含んでおらず、その上に白金族金属触媒成分のような触媒成分が分散された耐火金属酸化物担体と、塩基性含酸素化合物の一又は複数からなるNOx吸着剤を含む触媒トラップ材料を含みうる。
【0008】
米国特許第6727202号は、触媒トラップ材料と上に触媒トラップ材料が配された耐火担体部材を含む触媒トラップを開示している。触媒トラップ材料は、(i)耐火金属酸化物担体と;(ii)ストイキ又はリッチ条件下でNOxの還元を促進するのに効果的な触媒成分と;(iii)リーン条件下でNOxを吸着し脱着しストイキ又はリッチ条件下でNOxを窒素に還元するのに効果的なNOx吸着剤を含んでいる。NOx吸着剤は、一又は複数のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び一又は複数のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の混合物からなる群から選択される金属酸化物を含んでいる。マンガン成分は、(1)酸化マンガン、(2)マンガンと遷移金属及び/又は希土類金属の混合酸化物、(3)アルカリ金属と酸化マンガンの化合物、(4)アルカリ土類金属と酸化マンガンの化合物及び(5)前記酸化物と化合物の混合物からなる群から選択される。アルカリ金属酸化物とシリカ又は任意のシリカ質化合物の成分(a)は明示的に除外されている。
【0009】
国際公開第97/02886号は、NOx低減触媒とNOx吸着材料が、共通の耐火担体部材上に互いに近接し、しかし分離して分散されてなるNOx低減組成物を開示している。NOx吸着材料は塩基性含酸素金属化合物を含み、場合によっては更にセリアを含む。NOx低減触媒は、白金金属触媒成分を含んでいる触媒金属成分を含む。触媒金属成分は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属水酸化物及び混合金属酸化物の一又は複数でありうるNOx吸着材料から分離されている。少なくとも触媒金属成分とNOx吸着剤材料は粒子上にあるか、別個の粒子を含んでいなければならない;粒子は混合されうるか又は担体部材上の別個の層に配されうる。
【0010】
米国特許第5451558号はガスタービンにおけるNOx、CO及びSO
2の排出レベルを低減させる方法を開示している。好ましくはアルミナ/白金/炭酸塩から作製された触媒吸蔵体が、汚染酸化物を酸化しそれを吸収するために使用される。
【0011】
米国特許出願公開第2006/0035782号は、金属又は金属含有化合物と無機酸の共役塩基酸化物に結合したアルカリ金属又はアルカリ土類金属を有する成分を含有する粗粒化抵抗性自動車排気触媒組成物を開示している。塩基酸化物が共役する無機酸は、自動車排気触媒組成物が表面積を減少させる相転移に抵抗するようなKaを有している。本発明はまた本発明の排気触媒組成物を組み込んだNOxトラップを提供する。
【0012】
国際公開第02/22241は、(a)少なくとも一種の第一担体材料に支持された少なくとも一種のアルカリ金属を含む少なくとも一種の第一NOx貯蔵成分と、(b)少なくとも一種の第二担体材料に支持された白金酸化触媒とアルカリ金属ではない少なくとも一種の第二NOx貯蔵成分を含み、白金酸化触媒と少なくとも一種のアルカリ金属が物理的に分離され、よって白金酸化触媒の炭化水素 変換活性を実質的に維持されるNOxトラップ組成物を開示している。
【0013】
歴史的には、自動車用ジーゼルエンジンは、燃料効率、NOx排出量の制御;出力;及びパティキュレートマター制御の4つの特徴の幾つかの組み合わせを満たすように設計されてきた。初期の排気基準は、排出が許容される一酸化炭素と炭化水素の量を制限したもので、基準を満たすジーゼル酸化触媒の装備を強いた。ユーロ5の発効では、排気基準は、NOx排出量を制御するようにエンジンを調整しパティキュレートマターを捕捉するために排気システムにフィルターを提供することによって大体は容易に達成された(いわゆるNOx/パティキュレートマタートレードオフ)。ユーロ6と米国での提案に対しては、更なる触媒ベースのNOx除去方策が加えて必要となるか否かにかかわらず、フィルターなしでは(今はパティキュレート数排出を削減する要求を含む)パティキュレート排気基準を満たすのは困難なように見える。従って、例えば欧州排気基準を満たすのに使用するフィルターなしにフロースルー基材モノリス上にNOx吸蔵触媒を含む排気システムを考え出すことは可能であるところ、一般には、我々は、フロースルー基材上にNOx吸蔵触媒を含むシステムが、あるフィルターと何か組み合わせて使用されるか、あるいはNOx吸蔵触媒がフィルター基材モノリス、例えばウォールフローフィルターにコートされると予想する。
【0014】
軽量ジーゼル車両用の典型的な排気システム構成は、フロースルー基材モノリス上のNOx吸蔵触媒とその下流(つまり正常流方向)に配された触媒化スートフィルター(CSF)を含む。そのようなシステムに使用されるNOx吸蔵触媒開発に伴う典型的な課題は、低温、比較的大なる流量及び比較的多い炭化水素の排気ガス条件でのNOx貯蔵及びNOx再生を含む。現代のジーゼル車両は、NOx排出量を更に良好に制御するために排ガス再循環(EGR)として知られているエンジニアリング解を一般に使用しており、そこでは、内部作製プログラム利用エンジン速度/負荷マップの少なくとも幾つかの間に排ガスの一部がエンジン吸気口に再循環される。EGRのために排ガスが取り込まれる排気システムのポイントは上記課題に寄与する。一つの典型的な構成はCSFの下流からEGR排ガスを取り込むものであり、いわゆる低圧(又は「ロングループ」)EGRである。
【発明の概要】
【0015】
我々は、非常に意外なことに、ケイ酸セシウムを形成することによってセシウムを安定化させることができ、その結果、上述の欠点が低減されるか回避されるのに、上述の反応(2)及び(3)に従う循環的NOx吸着及び脱着に対しては活性なままであることを見出した。セシウムの安定化は、触媒経年劣化中により多くのセシウムがウオッシュコート中に保持されることにつながり、よってNOxトラップは更に良好な性能を有する。
【0016】
本発明によれば、ケイ酸セシウム(Cs
2SiO
3)と少なくとも一種の白金族金属を含むNOx貯蔵成分が提供される。
ケイ酸セシウムの有益な利点は、それが水に不溶性であるので、エンジンの冷間始動に続いてセシウムが除去され揮発させられる可能性が少ないことである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
発明がより十分に理解されるようにするために、次の実施例が、単に例示のために、かつ以下の添付図面と共に、提供される。
【
図1】本発明に係るケイ酸セシウムを含む二層(つまり完全に調製された)NOx吸蔵触媒(NAC)を備えた自動車からの累積排気管NOx排出量を、セシウムを含まないか又は可溶性セシウムのみを含む比較NACと比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
我々は本発明の利点が市販の「バルク」ケイ酸セシウム(Alfa Aesarから得た)を使用して得ることができることを実験を通して見出したが、水性白金族金属塩の存在下でコロイド状シリカと水性硝酸セシウムの反応によって調製される少なくとも一種の白金族金属を含むケイ酸セシウムが有意に良好な性能を与えることを見出した。これは、使用されるコロイド状シリカの粒径(粒子径〜22nm)がウオッシュコート中に非常に小さい粒子のケイ酸セシウムを生じたためであると考える。使用されたバルクCs
2SiO
3は比較的大きな粒径を有しており、このため、得られたNOx貯蔵及び放出性能が限られていたと考えられる。
【0019】
ケイ酸セシウムが耐火金属酸化物に支持されているNOx貯蔵成分では、耐火金属酸化物担体は、アルミナ、シリカ、マグネシア、非晶質シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、バルクセリア、モレキュラーシーブ又はその任意の二以上の混合物、複合酸化物又は混合酸化物からなる群から選択されうる。特定の耐火金属酸化物は均質アルミン酸マグネシウムである。我々はNOx吸蔵触媒に使用される多くの均質アルミン酸マグネシウムを調査し、均質アルミン酸マグネシウムがMgO・nAl
2O
3として表される場合、n≧1.5が好ましいことを見出した。特に好ましい均質アルミン酸マグネシウムはnが4であるものである。
【0020】
水熱安定性を改善するために、耐火金属酸化物担体にシリカ及び希土類の一又は複数、例えばランタン、ネオジム、イットリウム等をドープしてもよい。ここで使用される場合、セリア(又は任意の他の成分)のような還元性酸化物に言及する「バルク」なる用語は、セリアがその固形粒子として存在していることを意味する。これらの粒子は通常非常に微小で、少なくとも90パーセントの粒子が約0.5から15ミクロンの径のオーダーのものである。「バルク」なる用語は、例えば溶液、例えば硝酸セリウム又は成分のある他の液体ディスパージョンから担体材料中に含浸させ、ついで乾燥させ、か焼して含浸硝酸セリウムを耐火担体の表面でセリア粒子ディスパージョンに転換させることによって、耐火担体材料上にセリアが「分散」されている状況から区別することを意図したものである。よって、得られるセリアは耐火担体の表面層上と、程度の差はあれ、表面層内に「分散」されている。バルクセリアはセリアの微細な固形粒子を含むので、分散されたセリアはバルク形態では存在していない。
【0021】
実施態様では、NOx貯蔵成分中に存在するその又は各白金族金属は、白金、パラジウム、ロジウム及びその任意の二以上の混合物からなる群から選択される。しかしながら、十分に調製された層状化NOx吸蔵触媒(実施例を参照)に使用される好ましい実施態様では、NOx貯蔵成分中に存在する白金族金属はロジウムである。
【0022】
好ましい実施態様では、耐火酸化物担体はまた希土類酸化物、例えばセリア又はプラセオジミア(praseodymia)、好ましくはセリアをまた支持する。
【0023】
従来技術は、マンガンが例えばバリウムのようなNOx貯蔵成分の能力を促進しうることを示している(米国特許第6727202号を参照)。我々は、ケイ酸セシウムを含む本発明に係るNOx貯蔵成分の活性を漫画案が促進しうることを見出した。
【0024】
更なる態様では、本発明は本発明に係るNOx貯蔵成分が基材モノリス上に配されてなるNOx吸蔵触媒を提供する。
【0025】
一実施態様によれば、本発明に係るNOx吸蔵触媒は少なくとも一種のアルカリ土類金属を含む。
【0026】
好ましい構成では、NOx吸蔵触媒は二以上の層を含み、ケイ酸セシウムNOx貯蔵成分が第一層に配され、少なくとも一種のアルカリ土類金属が第二層に配される。特に好ましい実施態様では、第一層は、第二層の上に直接配するか又は一層(又はより多くの層)を第一層と第二層の間に介在させることによって、第二層の上に配される。
【0027】
好ましい実施態様では、第二層が白金、パラジウム又は白金とパラジウムの双方を含む。
【0028】
更なる態様によれば、本発明に係るNOx吸蔵触媒を含む、リーンバーン内燃機関用の排気システムが提供される。
【0029】
更なる態様では、本発明に係る排気システムを具備する自動車が提供される。
【0030】
更なる態様によれば、リーンバーン内燃機関からのNOx含有排ガスを処理する方法において、ケイ酸セシウム(Cs
2SiO
3)と少なくとも一種の白金族金属を含むNOx貯蔵成分を、NO
xを含むリーン排ガスと接触させて、それにNO
xを吸着させる工程と;NOx貯蔵成分をストイキ又はリッチ排ガスと接触させて吸着NO
xを周期的に脱着させる工程を含む方法が提供される。
【0031】
更なる態様によれば、本発明に係るNOx貯蔵成分を作製する方法であって、少なくとも一種の白金族金属の水性塩、水性セシウム塩及びシリカ源を組合せ、反応させる工程を含む方法が提供される。
【0032】
好ましくは、シリカ源はコロイド状シリカ、つまり例えば22nmのオーダーの粒径で、Ludox(W.R.Grace & Co.)として市販されているゾルである。あるいは、シリカ源は、ゼオライト、非晶質シリカ−アルミナ、粒状シリカ又は水溶性シリカ化合物でありうる。我々は、粒状シリカ(S30)を水性セシウム塩(硝酸セシウム(CsNO
3))と組合せ、ついで得られたスラリーを噴霧乾燥し、ついで得られた生成物をか焼することによってNOx貯蔵成分のコンポーネントを調製した。ついで、得られたケイ酸セシウムを水性白金族金属と組み合わせ、ついで組成物を乾燥させ、か焼して、本発明に係るNOx貯蔵成分を得た。
【0033】
その場での調製の代替法は、セシウム塩を例えば含浸によって、例えばアルミナのような適切な担体上に載せ、ついでこの成分を、同一層に少なくとも一種の白金族金属を支持するシリカ源成分と組み合わせ、あるいは適切な担体上へ水性セシウム塩と水性シリコン塩を共沈させ、これを水性白金族金属と組み合わせ、あるいは少なくとも一種の白金族金属を支持するシリカ成分源を含む層の下に層としてNOx吸蔵触媒調製物中に支持されたセシウム成分を配することにより、充填するものである。使用の際、セシウムは元の担体材料から離れて移動しうるが、上の層のシリカ源に接触したときにケイ酸セシウムを形成しうる。
【実施例】
【0034】
比較例1−BaのみのNACの調製
大表面積のγアルミナを水でスラリー化した後、適量のPt及びPd溶液を点火することによって第一層ウオッシュコートを調製した。仕上がりのウオッシュコートのPt及びPd含有量はそれぞれ0.41及び0.17%であった。ついで、Baを酢酸塩としてウオッシュコートに添加した。仕上がりの触媒中のBa充填量は600g/ft
3であった。
該ウオッシュコートを、米国特許第7147892号に記載された方法を使用して4千分の1インチのセル壁厚を持つ400のセル密度の4.16×4.5インチ寸法のセラミック製ハニカム基材モノリスにコートした。ついで、コート膜を空気中で100℃で乾燥させ、ついで空気中で550℃でか焼した。
【0035】
第二層ウオッシュコートを、希土類金属ランタン及びネオジムをドープした大表面積のジルコニアと大表面積のγアルミナを水にスラリー化することによって調製した。ついで、硝酸ロジウムをウオッシュコートに加えた。仕上がりウオッシュコートのRh含有量は0.062%であった。ついで、硝酸セシウムを加えて400 g/ft
3のCe充填量を得た。ついで、このウオッシュコートを、上述した方法を使用して先に乾燥させか焼した層上にコートし、得られた部品を乾燥させ、第一層についてと同じ条件を使用してか焼した。
【0036】
比較例2−Baと可溶性Csを含むNACの調製
比較例1に記載したようにして第一層を調製し同じ基材モノリス上にコートした。
硝酸ロジウムの添加後でCeの添加前にウオッシュコートに硝酸セシウムを添加して、仕上がり触媒中に200g/ft
3のCs充填量を付与したこと以外は、比較例1と同様にして第二層ウオッシュコートを調製した。
【0037】
実施例3−BaとバルクCs
2SiO
3を含むNACの調製
比較例1に記載したようにして第一層を調製し同じ基材モノリス上にコートした。
硝酸ロジウムの添加後でCeの添加前にウオッシュコートにケイ酸セシウム(Alfa Aesar)を添加して、仕上がり触媒中に200g/ft
3のCs充填量を付与したこと以外は、比較例1と同様にして第二層ウオッシュコートを調製した。
【0038】
実施例4−Baとコロイド状Cs
2SiO
3を含むNACの調製
比較例1に記載したようにして第一層を調製し同じ基材モノリス上にコートした。
第二層は、希土類金属ランタン及びネオジムをドープした大表面積のジルコニアと大表面積のγアルミナを水にスラリー化することによって調製した。ついで硝酸ロジウムをウオッシュコートに添加した。コロイド状シリカ(Ludox AS40(W.R. Grace & Co.))と硝酸セシウムをついでウオッシュコートに添加した。十分なCsを添加して仕上がり触媒中に200g/ft
3のCs充填量を付与した。十分なLudoxを添加して仕上がり触媒中に 2:1のCs:Si原子比率を付与した。ついで硝酸セシウムを添加して400g/ft
3のCe充填量を付与した。ついで上述の方法を使用してこのウオッシュコートを先に乾燥させか焼した層の上にコートし、得られた部品を乾燥させ、第一層についてと同じ条件を使用してか焼した。
【0039】
実施例5−触媒試験
比較例1及び2及び本発明の実施例3及び4の新しい触媒コート基材モノリス(「ブリック(煉瓦)」)を、周期的リーンスパイクでラムダ1で運転されるように制御されたベンチ設置4.5リットルV8ガソリンエンジンの排気システムでエージングさせた。NACはクローズカップルド3方向触媒の下流の自動車の床下位置に対応する位置に位置させた。エンジンは、830℃のインブリック温度を生じさせるのに十分な負荷を使用して運転した。ブリック当たりの完全なエージングサイクルは32時間であった。
【0040】
各実施例のブリックは、メーカーによって元々装備された既存の床下NACの代わりに市販の車両3.5リットル直噴リーンバーンガソリンエンジンの排気システムに挿入した。また、メーカー装備のクローズカップルド3方向触媒を、先の段落に記載したものと同じエージングサイクルを使用してエージングさせた出願人の3方向触媒に置き換えた。車両を欧州MVEG−Bサイクル(
図1の計画された車両速度プロファイルを参照)にわたって運転し、排気管NO
x排出量を記録し、
図1に示した。
【0041】
比較例1のNAC(BaのみのNACと標識)の性能は、その製造時に可溶性セシウムがまた含められた比較例2のNAC(水性Cs塩と標識)より劣ることが図から分かる。しかしながら、比較例2と実施例3(バルクCs
2SiO
3と標識)についてのトレースの比較から、実施例3が遙かに優れた結果を有していることが分かる。これは、おそらくは、可溶性セシウムが触媒エージング中にセラミック基材モノリス中に移動し、蒸発し、又は上層から下層に移動したためである。コロイド状Cs
2SiO
3 をその場で調製する技術が使用される場合に更なる実質的な利点が分かる(実施例3及び4の結果を比較のこと)。
【0042】
誤解を避けるために、従来技術文献の全内容を出典明示によりここに援用する。