(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919298
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ジルコニアの高い含量を有する耐火製品
(51)【国際特許分類】
C04B 35/657 20060101AFI20160428BHJP
C03B 5/43 20060101ALI20160428BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20160428BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
C04B35/62 C
C03B5/43
F27D1/00 N
F27B17/00 F
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-543955(P2013-543955)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-505005(P2014-505005A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】IB2011055715
(87)【国際公開番号】WO2012080981
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】1060659
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン−ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ゴービル,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】マッサード,ルドヴィク
【審査官】
増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−048573(JP,A)
【文献】
特開2009−155150(JP,A)
【文献】
特開平03−146475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/653 − 35/657
C03B 5/00 − 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の逐次の工程:
a)工程d)で得られるブロックが85%超のZrO2を含むように適する供給原料を形成するように原料を混合すること、
b)溶融された物質が得られるまで該供給原料を溶融すること、
c)任意的に、該溶融された物質を鋳造すること、
d)上記溶融された物質を冷却して、該ジルコニアの少なくとも80重量%が環境温度で単斜晶系であるところのジルコニアを含むブロックの形状に固化すること、
e)任意的に、熱処理、
を含む方法において、該方法が、工程d)で得られたブロックの外側表面の少なくとも一部に0.2MPaより大きい圧縮圧力がかけられるところの圧縮操作を含み、該圧縮操作が、該ブロックにおいて正方晶系のジルコニアが単斜晶系のジルコニアに変わる温度(すなわち相転移温度)より高い温度で始まり、そして、該相転移温度より低い温度で終わるところの上記方法。
【請求項2】
圧縮操作が1000℃より高くかつ1500℃より低い温度で始まる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
圧縮操作が1020℃より高い温度で始まる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
圧縮操作が1050℃より高い温度で始まる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
圧縮操作が1100℃より高い温度で始まる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
圧縮圧力が圧縮操作全体にわたって0.5MPa超である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
圧縮圧力が圧縮操作全体にわたって1.0MPa超である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
圧縮圧力が圧縮操作全体にわたって1.5MPa超である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
圧縮圧力が圧縮操作全体にわたって15.0MPa未満である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
圧縮操作が800〜900℃の温度で終わる、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
圧縮操作が環境温度まで続く、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
圧縮操作が工程d)の間に行われる、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
該ブロックのジルコニアの少なくとも99重量%が環境温度で単斜晶系である、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程f)をさらに含み、ここで、工程d)またはe)の終わりに得られたブロックが、炉の壁内に位置され、該ブロックの他のブロックと向かい合う表面が少なくとも圧縮操作に付され、または該表面のみが圧縮操作に付される、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程d)における冷却が、10℃/時の速度で行われる、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
酸化物に基づく重量%として85%超のZrO2を含み、該ジルコニアの少なくとも80重量%が環境温度で単斜晶系であるところのジルコニアを含む溶融された耐火製品であって、それと同じ組成のかつ同じ寸法の溶融された耐火製品であるが請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法の圧縮操作に従う圧縮操作を受けていない耐火製品よりも小さい変形率を有する、上記溶融された耐火製品。
【請求項17】
請求項16記載の耐火製品を有するガラス溶融炉。
【請求項18】
溶融されたガラスとまたは該炉における雰囲気と接触することが意図される領域において上記耐火製品を有する、請求項17に記載のガラス溶融炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いジルコニア含量を有する新規な溶融された耐火製品、本発明に従う耐火製品を有するガラス溶融炉、およびそのような製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火製品の中で、ガラス溶融炉の構築のためによく知られている溶融された製品と、焼結された製品とは区別される。
【0003】
例えば米国特許第4,507,394号明細書に記載の、焼結された製品と違って、溶融された製品は通常、結晶化された粒子を結合する粒子間ガラス相を有する。したがって、焼結された製品によって生じる問題および溶融された製品によって生じる問題、ならびにそれらを解決するために採用される技術的解決法は、一般に異なる。したがって、焼結された製品を製造するために開発された組成物は、先験的にそのままの状態では、溶融された製品を製造するために使用できず、その逆の場合も同様である。
【0004】
溶融された製品は、しばしば電鋳製品と呼ばれ、電気アーク炉内で適切な原料の混合物を溶融することにより、またはこれらの製品に適した任意の他の技術により得られる。溶融された材料は次いで、慣用的に型中で鋳造され、次いで、得られた製品は、亀裂を生じることなく環境温度に至らされるために、制御された冷却サイクルを受ける。この操作を当業者は「アニーリング」と呼ぶ。
【0005】
溶融された製品の中で、非常に高いジルコニア含量(VHZC)を有する、すなわち85重量%超のジルコニアを含有する電鋳製品は、製造されるガラスを着色することなく、かつ欠陥を発生することなく、非常に高い耐食性を有するという品質のために、よく知られている。
【0006】
従来、高ジルコニア含量を有する溶融された製品はまた、製品中に存在するジルコニアおよびシリカからのジルコンの形成を防止するために、酸化ナトリウム(Na
2O)を含んでいる。これは、ジルコンの形成は、20%のオーダーの体積減少を伴い、したがって亀裂の原因となる機械的応力を生成するので、有害であるためである。
【0007】
Societe Europeenne des Produits Refractairesにより製造販売され、また欧州特許第403387号明細書により網羅されている製品ER−1195は、現在、ガラス溶融炉において広く使用されている。その化学的組成は、約94%のジルコニア、4〜5%のシリカ、約1%のアルミナ、0.3%の酸化ナトリウムおよび0.05重量%未満のP
2O
5を含む。それは、ガラス炉に使用される高ジルコニア含量を有する製品の代表的なものである。
【0008】
仏国特許第2701022号明細書は、0.05〜1.0重量%のP
2O
5と0.05〜1.0重量%の酸化ホウ素B
2O
3を含む、高ジルコニア含量を有する溶融鋳造製品を記載している。
【0009】
仏国特許第2723583号明細書は、3〜8重量%のSiO
2、0.1〜2.0重量%のAl
2O
3、0.05〜3.0重量%の酸化ホウ素B
2O
3、0.05〜3重量%のBaO+SrO+MgO、0.05〜0.6重量%のNa
2O+K
2Oおよび0.3重量%未満のFe
2O
3+TiO
2を含む、高ジルコニア含量を有する溶融鋳造製品を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,507,394号明細書
【特許文献2】欧州特許第403387号明細書
【特許文献3】仏国特許第2701022号明細書
【特許文献4】仏国特許第2723583号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
溶融ガラスとの、またはガラス溶融炉の雰囲気との接触は、特に腐食による、製品のいたみをもたらす。ガラス溶融炉、特にLCDフラットスクリーンのためのガラスを溶融する炉の壁内でより長い耐用年数を有する、高ジルコニア含量を有する耐火製品のための要求がある。
【0012】
本発明は、この要求を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、耐火製品を製造する方法に関し、上記方法は、下記の逐次の工程:
a)工程d)で得られるブロックが85%超のZrO
2を含むように適する供給原料を形成するように原料を混合すること、
b)溶融された物質が得られるまで該供給原料を溶融すること、
c)任意的に、該溶融された物質を鋳造すること、
d)溶融された物質を冷却して
、該ジルコニアの少なくとも80重量%が環境温度で単斜晶系であるところのジルコニアを含むブロックの形状に固化すること、
e)任意的に、熱処理、特にアニーリング熱処理、
を含む。
【0014】
この方法は、圧縮操作を含むことに注目すべきである。上記圧縮操作では、工程d)で得られたブロックの外側表面の少なくとも一部に0.2MPaより大きい圧縮圧力がかけられる。上記圧縮操作は、上記ブロックにおいて、正方晶系のジルコニアが単斜晶系のジルコニアに変わる温度、すなわち「相転移温度」、よりも高い温度で始まり、そして、上記相転移温度よりも低い温度で終わる。
【0015】
明確のために、表現「本発明に従う製品」または「本発明に従うブロック」は以降において、本発明に従う方法によって製造されたまたは製造され得る製品を意味する。
【0016】
驚いたことに、本発明者らは、本発明に従う製品を用いて形成された炉壁が、従来の製品を用いて形成された壁よりも長い耐用年数を有することを見出した。
【0017】
この理論に縛られることなく、本発明者らは、本発明に従う製品が、そのジルコニアが単斜晶の相から正方晶の相へ変化するとき、特にアニーリング(ガラス溶融炉の最初の温度上昇)の間に、あまり収縮しないことを認めた。したがって、この収縮から生じる、ブロック間の継ぎ目が開くことがそれによって減少する。したがって、溶融されたガラスは、ブロック間に侵入することに、より大きい困難を有し、それは、より少ない腐食を、したがってより長い耐用年数を明白にするであろう。
【0018】
本発明はまた、本発明に従う方法によって得られたまたは得られ得る耐火製品に関する。特に、本発明は、酸化物に基づく重量%として85%超のZrO
2を含む溶融された耐火製品に関し、この耐火製品は、これと同じ組成物で同じ寸法の溶融された耐火製品であるが本発明に従う方法の圧縮操作を受けていない耐火製品よりも変形率が小さい、好ましくは10%より多く、30%より多く、または50%より多く変形率が小さい。
【0019】
好ましくは、上記変形率が、溶融されたガラスとまたはガラス溶融炉の雰囲気と接触することが意図される上記製品の外側表面と、上記外側表面から30mmより長く、平行に延びる領域から抜き出されたサンプルについて膨張計を用いて測定される。
【0020】
本発明はまた、本発明に従う耐火製品を、特に、高温にもたらされる領域に、特に、溶融されたガラスと接触するまたは溶融炉(上部構造)の雰囲気と接触することが意図される領域に有するガラス溶融炉に関する。
【0021】
特に、本発明は、継ぎ目によってまとめられたブロックから成る壁を有するガラス溶融炉に関し、上記壁は、アニーリング後に、シールされた継ぎ目を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
酸化物の重量%は、対応する化学要素の各々のための全含量を意味し、工業の標準的な慣習に従って、最も安定な酸化物の形状で表わされる。
【0023】
HfO
2は、ZrO
2から化学的に分離され得ない。しかし、本発明によれば、HfO
2は供給原料に意図的には添加されない。したがって、HfO
2は、ほんの微量の酸化ハフニウムを示す。この酸化物は、一般に5%未満の含量で、一般に2%未満の含量でジルコニア源に常に天然に存在する。明確のために、したがって、「ZrO
2」または「ZrO
2含量」によって、ジルコニアおよび微量の酸化ハフニウムの含量を、区別することなく、示すことができる。
【0024】
製品は、原料の溶融および、冷却による固化を行う方法によって得られるとき、慣用的に「溶融された」と言われる。
【0025】
「溶融された物質」は、液体の塊であり、それは、その形状を保持するために、容器に入っていなければならない。それは、少しの固体粒子を含み得るが、上記塊に構造を与え得るのに不十分な量で含み得る。
【0026】
用語「不純物」は、原料とともに意図的ではなく不可避的に導入される不可避の成分、またはこれらの成分との反応から生じる不可避の成分を意味すると理解される。不純物は、必要な成分でなく、単に許容される。例えば、酸化物、ニトリド、オシキニチリド、カーバイド、オキシカーバイド、カルボニトリド、ならびに鉄、チタン、バナジウムおよびクロムの金属種の群に属する化合物が不純物である。
【0027】
もちろん、圧縮圧力は、約0.1MPaの雰囲気圧を超えて加えられる圧力である。したがって、0.2MPaの圧縮圧力は、約0.3MPaの実際の圧力に相当する。
【0028】
特に断らない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載された製品における酸化物の量は全て、酸化物に基づく重量%である。
【0029】
ジルコニアは、3つの結晶形態で存在する。ドーパントの不存在下で、ジルコニアは、1150℃までは単斜晶形であり、1150〜2370℃では安定な正方晶形であり、2370℃から上では立方晶形である。
【0030】
壁が、VHZC(「非常に高いジルコニア含量」)で作られたブロックを有するところの炉のアニーリングの間に、単斜晶の相から正方晶の相への転移は、約4.5%の体積の可逆的減少を伴う。この減少は、ジルコニア安定剤の添加により制限され得る。
【0031】
あるいは、または安定剤の添加に加えて、本発明に従う圧縮操作が、考慮されるVHZC製品に関係なく、収縮を制限することを可能にする。
【0032】
本発明に従う溶融された製品では、非常に高いジルコニア含量、すなわちZrO
2>85重量%が、製造されたガラスを着色することなく、またはこのガラスの品質を損なう欠陥を生じることなく、高い腐食耐性という要件を満たすことを可能にする。
【0033】
ZrO
2の含量は、97.0重量%未満、さらには96.5重量%未満であり得、および/または好ましくは88.0重量%超、好ましくは90.0重量%超、好ましくは92.0重量%超、好ましくは94.0重量%超であり得る。
【0034】
好ましくは、少なくとも80重量%の、好ましくは少なくとも90重量%の、さらには少なくとも99重量%の、または実質的に100重量%のジルコニアが、環境温度で単斜晶系である。
【0035】
シリカSiO
2の存在は有利であり、粒子間のガラス相の形成は、ジルコニアの可逆的な同質異形の転移の間のジルコニアの体積の変化を効果的に調整することを可能にする。しかし、シリカ含量が多過ぎると、石(耐火製品の凝集力の低下から生じる上記製品の断片)を放出することによりガラス中に欠陥を生じ得るであろう。そして、それは、上記用途における好ましくない挙動であると考えられる。
【0036】
シリカSiO
2の含量は、好ましくは0.5重量%超、2.5重量%超、さらには3.0重量%超、好ましくは4.0重量%超である。それは、15.0重量%未満、さらには10.0重量%未満、9.0重量%未満、さらには8.0重量%未満、さらには7.0重量%未満、さらには6.0重量%未満であり得る。
【0037】
他の種、例えばAl
2O
3、B
2O
3、Na
2O、K
2O、Y
2O
3、BaO、SrO、MgO、CaO、CeO
2、Ta
2O
5およびNb
2O
5は好ましくは、10重量%未満、好ましくは9重量%未満、より好ましくは8重量%未満、さらには5重量%未満を占める。
【0038】
鉄、チタンおよびリンの酸化物は有害であることが知られており、それらの含量は、原料とともに不純物として導入される微量に制限されなければならない。好ましくは、Fe
2O
3+TiO
2の含量が0.55重量%未満、0.4重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満であり、P
2O
5の含量が0.05重量%未満である。
【0039】
本発明に従う製品は、下記工程a)〜e)にしたがって製造され得る。
【0040】
ガラス溶融炉における用途が意図される、ジルコニアに基づく溶融された製品を製造する任意の慣用の方法が、工程d)から得られるブロックの少なくとも1部分、好ましくは少なくとも、1の面の全部が0.2MPa超の圧縮圧力に付される圧縮操作を含むように適合され得る。上記圧縮操作は、ジルコニアの(正方晶の相と単斜晶の相との間の)相転移温度より上の温度で始まり、上記相転移温度より下の温度で終わる。
【0041】
工程a)では、供給原料が、公知のやり方で、所望の製品の組成の機能として適合される。
【0042】
工程b)では、溶融が、好ましくは、低下を生じない比較的長い電気アークと製品の再酸化を促進する攪拌との組み合わされた作用によって行われる。溶融は慣用的に、2300℃より上の温度、好ましくは2440〜2500℃の温度で行われる。
【0043】
金属外観の小さい節の形成を最少にし、かつ最終製品における亀裂の形成またはひび入りを回避するために、溶融を酸化条件下で行うのが好ましい。
【0044】
好ましくは、仏国特許第1208577号明細書ならびにその追加第75893号明細書および同第82310号明細書に記載された長アーク溶融法が使用される。
【0045】
この方法は、電荷と、この電荷からいくらか距離を置いた少なくとも1の電極との間でアークが生じるところの電気アーク炉を使用すること、および、溶融された浴の上の酸化雰囲気を維持しながら、アークの長さを、その低下作用が最小になるように調整することから成る。上記酸化雰囲気の維持は上記浴を攪拌することにより行われ、上記攪拌は、アーク自体の作用によってまたは酸化ガス(例えば、空気または酸素)を上記浴中に泡立たせることによってまたは酸素放出物質、例えば過酸化物を上記浴に添加することによって行われる。
【0046】
工程c)では、溶融された物質が慣用的に型に注入される。
【0047】
工程d)では、冷却が好ましくは、1時間につき約10℃の速度で行われる。本発明によれば、こうして得られたブロックが圧縮操作を受ける。
【0048】
圧縮操作は、上記ブロックにおけるジルコニアの単斜晶の相への相転移温度より上の温度で始まり、この相転移温度より下の温度で終わらなければならない。
【0049】
好ましくは、圧縮操作が、溶融された物質の完全な固化の後に行われる。
【0050】
圧縮操作は、(アニーリング工程の間の)固化されたブロックの最初の冷却の間に、好ましくはその完全な固化の直後に行われ得る。
【0051】
圧縮操作は、続く工程の間に、例えば特定の加熱処理(工程e))の間に行われ得る。
【0052】
好ましくは、圧縮操作は、1000℃より上の、1020℃より上の、1050℃より上の、さらには1100℃より上の温度、および/または好ましくは1500℃より下の、1400℃より下の、1300℃より下の、1200℃より下の温度で始まる。
【0053】
圧縮操作の期間(その期間中に加えられる圧縮圧力は0.2MPaの最小圧力より大きい)は制限的でない。
【0054】
1実施態様によれば、圧縮操作が、ブロックが環境温度に冷却するまで続く。
【0055】
別の実施態様によれば、圧縮操作が、ブロックの温度が800〜900℃、さらには500〜800℃であるときに停止される。
【0056】
圧縮操作の間に、ブロックの温度が変わり得る。それは特に、連続的に低下し得、または1以上の休止を伴って段階的に低下し得る。
【0057】
圧縮操作全体を通して、圧縮圧力は好ましくは、0.3MPa超、好ましくは0.4MPa超、好ましくは0.5MPa超、好ましくは1.0MPa超、好ましくは1.25MPa超、好ましくは1.5MPa超、好ましくは1.75MPa超、好ましくは2.0MPa超、さらには2.5MPa超である。圧縮圧力は、15.0MPa未満、10.0MPa未満、5.0MPa未満、さらには3.0MPa未満であり得る。
【0058】
圧縮圧力は、圧縮操作の間に変わり得る。好ましくは、それが一定である。それは、圧縮操作の開始から即時に加えられ得る。それはまた、漸次的に、例えばだんだん多く、加えられ得る。また、逐次の停止を介して加えられ得る。
【0059】
圧縮操作は、種々の圧縮圧力で1以上の停止を含み得る。
【0060】
同様に、圧縮操作の終わりでは、圧縮圧力が、即時にまたは漸次的に、例えばだんだん少なくして、低下され得、好ましくはゼロになるまで低下され得る。
【0061】
圧縮圧力は好ましくは、慣用的に継ぎ目によって、他のブロックに向かい合うことが意図されるブロックの表面上に少なくとも加えられ、あるいは、これらの表面上に排他的に加えられる。これらの表面は、慣用的に「継ぎ目面(joint faces)」と言う。
【0062】
好ましくは、圧縮圧力が、単一方向に、好ましくは継ぎ目面に垂直の方向に加えられる。
【0063】
圧縮圧力はまた、得られる製品が少なくとも1の所与の寸法を有するように適合され得る。好ましくは、圧力が継ぎ目面に加えられ、他の表面は加えられないままである。
【0064】
好ましくは、圧縮圧力が均一に加えられる。
【0065】
好ましくは、圧縮圧力が、継ぎ目面全体にわたって加えられる。
【0066】
1実施態様では、本発明が、本発明に従う製造法の上記工程に加えて、工程f)を含む方法に関する。工程f)では、工程d)またはe)の終わりに得られたブロックが、炉の壁内に位置され、他のブロックに向かい合うブロックの表面が少なくとも、あるいはさらにはこれらの表面のみが、圧縮操作に付されている。
【0067】
圧縮圧力は、任意の手段によって、例えば水圧によって加えられ得る。また、ブロックの1方向または2方向での膨張を防ぐように、例えば楔を使用して、締めることによりブロックを固定することの結果であり得る。好ましくは、ブロックの形状がそれを可能にするならば、ブロックはその2つの向かい合う継ぎ目面によってしっかり保持される。
【0068】
圧力はまた、型の可動壁を使用して、例えば仏国特許第1542705号明細書に記載された型を使用して、加えられ得る。
【0069】
この可動壁上に加えられる圧力は、当該壁と接触する製品の表面上(および、もちろん、上記製品の向かい合う表面上)に圧縮圧力をかけることを可能にする。
【0070】
型の形状に応じて、製品の他の表面はまた、可動壁の移動中に、任意的に0.2MPa超の圧力で、圧縮され得る。しかし、好ましくは、製品の継ぎ目面の各々に0.2MPa超の圧縮圧力を得るために、幾つかの壁が可動であり得、そして、圧縮力に付され得る。当業者は、この目的のために仏国特許第1542705号明細書の型をどのように適合させるかを知っている。
【実施例】
【0071】
下記の非制限的実施例が、本発明を説明するために与えられる。
【0072】
実施例AおよびBは、Saint-Gobainによって販売された製品ER1195およびSCIMOS CZの組成を有するブロックに対応する。
【0073】
これらの実施例では、下記の原料が使用された。
重量による平均で主に98.5%のZrO
2,0.2%のSiO
2および0.02%のNa
2Oを含有するジルコニア、
33%のシリカを含有するジルコン砂、
Pechiney社から販売され、平均で99.4%のアルミナAl
2O
3を含有するAC44型のアルミナ、
炭酸ナトリウムおよび/または酸化ホウ素。
【0074】
上記実施例は、慣用のアーク炉溶融法に従って調製され、次いで、220mmx450mmx150mmのブロックを得るために鋳造された。
【0075】
得られた製品の化学分析が表1に示される。それは、平均の化学分析であり、重量%で示される。
【0076】
【表1】
【0077】
鋳造および固化の後、ブロックが熱処理に付された。熱処理は、ブロックを漸次的に1500℃にもたらすこと、次いでこの温度を1時間保持した後、1150℃で保持される30分を通って、漸次的に環境温度に戻すことからなる。これらのブロックのいくつかは、この処理の間に、1149℃から始まって加えられ、かつ800℃まで、すなわち7時間の間、維持された圧縮圧力に付された。圧縮操作の間に、圧力は、ブロックの継ぎ目面を締めることにより加えられた。
【0078】
変形率が、ブロックの温度上昇の間中、測定される。それは、(ジルコニアの転移の前の)最大膨張の位置における長さと、単斜晶系ジルコニアの正方晶系ジルコニアへの転移の直後の最小膨張の位置における長さとの間の違いを最初の位置における長さで割ったものに対応する。
【0079】
表2は、任意的に加えられた圧力の値および得られた結果を示す。
【0080】
負の応力が、圧縮圧力に対応する。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示された圧縮圧力の値は、圧縮操作の間の圧力の最大値に対応する。
【0083】
これらの実施例は、圧縮操作の実施が、性能におけるかなりの程度の改善をもたらすことを認めることを可能にする。
【0084】
さらに、他の試験は、非常に高いジルコニア含量を有する物質の他の公知の特性、特に、ガラスによる腐食に対する耐性、が本発明に従う圧縮操作の実施により低下されないことを実証することを可能にした。
【0085】
もちろん、本発明は、説明のための非制限的実施例として与えられた、記載されそして表わされた上記実施態様に限定されない。