(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アスファルテン、堆積物、硫黄含有不純物、窒素含有不純物および金属不純物を含有する重質炭化水素フラクションの水素化処理方法であって、炭化水素の供給原料および水素が、水素化処理条件下に、水素化処理触媒上を通され、少なくとも1個の触媒床をそれぞれ含有する少なくとも2個の固定床水素化処理保護帯域において、該保護帯域は、周期的に用いられるように直列に配列させられ、以下:
− 供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間の一部の間にわたり、供給原料は、全ての保護帯域中を通過する工程a)、
− 供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、供給原料の一部が、供給原料と接触させられる第1の保護帯域中を通過し続け、供給原料の別の部分が、下流の次の保護帯域に導入される工程a’)、
− 失活および/または閉塞した保護帯域がバイパスされ、それが含有する触媒が、再生されおよび/または新鮮な触媒により置換され、その間、他の保護帯域(単数または複数)が用いられる、工程b)、
− 供給原料が全ての保護帯域中を通過し、先行工程の間に触媒が再生された保護帯域が、全ての他の保護帯域の下流であるように再接続され、前記工程が、供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間の一部の間にわたって継続される、工程c)、
− 供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、供給原料の一部が、供給原料と接触させられる第1の保護帯域中を通過し続け、供給原料の別の部分が、下流の次の保護帯域に導入される工程c’)
に規定される工程b)、c)およびc’)の連続する繰り返しからなる、方法。
工程a’)およびc’)の始めに下流の次の保護帯域に導入される供給原料の前記他の部分は、全供給原料の20〜40%(体積%で表される)である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
各保護帯域の入口において、供給原料は、単一段または連続する2段からなるろ過分配器板中を通過し、前記板は、触媒床(単数または複数)の上流に置かれる、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の触媒床をそれぞれ含有する切替可能な固定床保護帯域のシステムを用いる重質炭化水素フラクションの水素化処理方法であって、供給原料と接触させられる第1の保護帯域に供給される供給原料の流れが、部分的に下流の次の保護帯域に、好ましくは漸進的に移される少なくとも1回の工程を含む方法に関する。
【0002】
炭化水素供給原料の水素化処理は、石油留分中の硫黄の量を低減させることおよび重質フラクションを、燃料および/または化学製品として品質向上させられ得る、より軽質のフラクションに転化させることがますます必要になるに従って精製業務においてますます重要になってきた。市販燃料に対して各国によって課せられた標準規格を考慮して、ますますより高い含有率の重質フラクション、ヘテロ原子および金属、および、ますますより低い含有率の水素を有する輸入原油を出来る限り品質向上させることが実際に必要である。
【0003】
接触水素化処理は、水素の存在下に炭化水素供給原料を触媒と接触させることによって、水素対炭素の比(H/C)を向上させながら、かつ多かれ少なかれ部分的にそれをより軽質の留分に転換しながら、アスファルテン、金属、硫黄および他の不純物の含有率を相当低減させることを可能にする。それ故に、水素化処理(hydrotreating:HDT)は、特に、H
2Sの生成を伴って供給原料から硫黄を除去するための反応を意味する水素化脱硫(hydrodesulphurization:HDS)の反応、NH
3の生成を伴って供給原料から窒素を除去するための反応を意味する水素化脱窒(hydrodenitrogenation:HDN)の反応、および沈殿を伴って供給原料から金属を除去する反応を意味する水素化脱金属の反応を意味する他、水素化、水素化脱酸素、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱アルキルおよび水素化脱アスファルテンも意味する。
【0004】
常圧残渣(atmospheric residue:AR)または真空残渣(vacuum residue:VR)等の重質供給原料を処理するために2タイプの水素化処理方法がある:固定床方法および沸騰床方法。Zongら(Recent Patents on Chemical Engineering, 2009, 2, 22-36)は、重質石油供給原料の処理において知られる種々の方法を要約する。
【0005】
固定床方法の技術により、その技術的成熟度、より低いコストおよび安定かつ信頼性のある性能のために最も広い工業的適用が見出された。これらの方法において、供給原料は、直列に配列させられた複数の固定床反応器中を流通し、第1の反応器(単数または複数)は、特に、供給原料の水素化脱金属(hydrodemetallization)(いわゆるHDM工程)並びに一部の水素化脱硫を行うために用いられ、最後の反応器(単数または複数)は、供給原料の深度精製(deep refining)(水素化処理工程(HDT))、特に、水素化脱硫(いわゆるHDS工程)を行うために用いられる。流出物は、最後のHDT反応器から抜き出される。
【0006】
固定床方法により、精製において高度な性能がもたらされる(5重量%以下の硫黄および300ppm以下の金属、特にニッケルおよびバナジウムを含有する供給原料からの、0.5重量%未満の硫黄を有しかつ20ppm未満の金属を含有する370℃
+留分の生成)。こうして得られた種々の流出物は、良好な品質の重質燃料油、ガスオイルおよびガソリン、または接触分解等の他の装置のための供給原料の生成のための基礎原料としての機能を果たすことができる。
【0007】
この金属の含有率を超えると、生じた金属のかなりの沈着のために第1の触媒床が迅速に失活させられ得ることが知られている。この失活を埋め合わせるために、反応器の温度は上昇させられる。しかしながら、この温度上昇は、コークスの沈着を促進し、粒子内閉塞(触媒細孔の目詰まり)および粒子外閉塞(触媒床の目詰まり)のプロセスを加速する。供給原料中の金属のこれらの含有率を超えると、それ故に、沸騰床方法が、一般的に好ましい。実際に、これらの供給原料の固定床接触水素化処理によって引き起こされる一つの問題が生じる。有機金属錯体を含有する石油フラクションの水素化処理反応の間に、これらの錯体の大部分が、水素、硫化水素、および水素化処理触媒の存在下に破壊されるからである。この時、これらの錯体の金属成分は、固体硫化物の形態で沈殿し、これは、触媒に付着することになる。このことは、特に、バナジウム、ニッケル、鉄、ナトリウム、チタン、ケイ素および銅の錯体に当てはまり、これらは、天然には、石油の起源に応じて変動するレベルで原油中に存在し、蒸留の操作の間に、高沸点フラクション、特に残渣中に濃縮させられる傾向がある。これらの不純物に加えて、コークスも沈着し、一緒に、それらは、非常に迅速に触媒系を失活させ、かつ、閉塞する傾向がある。これらの現象は、固体を置換するための水素化処理装置の停止および触媒の過剰消費につながり、こうしたことは、当業者が最小限にすることを望むものである。
【0008】
これらの供給原料の固定床接触水素化処理によって引き起こされる別の問題は、閉塞である。供給原料と接触させられる触媒床、特に、触媒床の上部、より特定的には、第1の触媒床の上部は、供給原料中に含有されるアスファルテンおよび堆積物のために、極めて迅速に閉塞させる可能性があることが知られており、このことは、ヘッドロス(head loss)の増加によって最初に明示され、遅かれ早かれ、触媒を置換するために装置の停止を必要とする。
【0009】
したがって、失活および/または閉塞した、第1の触媒床を置換するために装置を停止させることが必要となった。このタイプの供給原料のための水素化処理方法は、したがって、装置の停止なして、できる限り長い操作サイクルを許容するように設計されなければならない。
【背景技術】
【0010】
(技術水準)
種々の方法で、特に、主要な反応器の上流に設置された保護床を用いることにより、固定床配置のこれらの欠点を解消するための試行があった。保護床の主要な役割は、脱金属の一部を行うことおよび閉塞につながり得る供給原料に含有される粒子をろ過することによって、下流の主要な水素化処理反応器の触媒を保護することである。保護床は、一般的に、重質供給原料の水素化処理方法、一般的には、第1のHDMセクションと、次の、第2のHDTセクションとを含む方法におけるHDMセクションにおいて統合される。保護床は、一般的に、第1の水素化脱金属およびろ過を行うために用いられるが、水素および触媒の存在のために、他の水素化処理反応(HDS、HDN等)が、必然的に、これらの反応器において行われることになる。
【0011】
それ故に、HDM工程の頭部における1個以上の移動床反応器の設置が考慮された(特許文献1および2)。これらの移動床の操作は、並流(例えば、SHELLのHYCON法)または向流(例えば、Chevron Lummus GlobalのOCR法および本出願人のHYVAHL-M(登録商標)方法)であり得る。
【0012】
HDM反応器の前部に固定床保護反応器を加えることも考えられた(特許文献3および4)。ほとんどの場合、この保護反応器は、特に、分離弁を用いることによってバイパスされ得る。これは、閉塞に対する主要な反応器の一時的な保護を提供する。
【0013】
さらに、特に、本出願人によって、固定床の高性能を、高含有率の金属を有する供給原料を処理するための高い操作因子と組み合わせるシステムであって、アスファルテン、硫黄含有不純物および金属性不純物を含有する重質炭化水素フラクションのための少なくとも2工程において水素化処理する方法からなり、第1のいわゆるHDM工程の間に、炭化水素の供給原料および水素が、HDMの条件下に、HDM触媒上を通され、次いで、次の第2の工程の間に、第1の工程からの流出物が、HDTの条件下に、HDT触媒上を通される、システムも記載された(特許文献5および6)。HDM工程は、1個以上の固定床HDM帯域を含み、この固体床HDM帯域は、「切替可能な反応器」とも称される、少なくとも2個の保護HDM帯域によって先行され、この保護HDM帯域も、固定床設計のものであり、周期的に用いられるように直列に配列させられ、以下:
a)保護帯域が、それらのいずれか1個の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって一緒に全て用いられる、工程、
b)失活および/または閉塞した保護帯域がバイパスされ、それが含有する触媒が、再生され、および/または新鮮な触媒と置換され、その間に、他の保護床(単数または複数)が用いられる、工程、
c)保護帯域が全て一緒に用いられ、先行工程の間に触媒が再生された保護帯域が再接続され、前記工程は、保護帯域のいずれか1個の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって続けられる、工程
に規定される工程b)およびc)の連続的な繰り返しからなる。
【0014】
この方法は、名称HYVAHL-F(登録商標)により知られ、90%超の全体的な脱硫および95%程度の全体的な脱金属を提供することができる。切替可能な反応器の使用は、連続的なサイクル操作を許容する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本発明は、特許FR2681871において記載されたような保護帯域(切替可能な反応器)を用いて行われる水素化処理方法の改善を提供する。FR2681871による保護帯域の操作が
図1において記載され、これは、2個の保護帯域(または切替可能な反応器)R1aおよびR1bを含む。この方法は、一連のサイクルを含み、このサイクルは、それぞれ、連続する4工程:
− 供給原料が反応器R1a次いでR1b中を連続的に通過する第1工程(以降「工程a」と呼ばれる)、
− 供給原料が反応器R1b中のみを通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる第2工程(以降「工程b」と呼ばれる)、
− 供給原料が反応器R1b次いで反応器R1a中を連続的に通過する第3工程(以降「工程c」と呼ばれる)、
− 供給原料が反応器R1a中のみを通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる第4工程(以降「工程d」と呼ばれる)
を含む。
【0020】
本方法の工程a)の間に、供給原料は、ライン(3)および開放弁V1を有するライン(21)を介して、ライン(21’)および固定触媒床Aを含む保護反応器R1aに導入される。この期間の間に、弁V3、V4およびV5は閉じられる。反応器R1aからの流出物は、パイプ(23)、開放弁V2を有するパイプ(26)およびパイプ(22’)を介して固定触媒床Bを含む保護反応器R1bに送られる。反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)、およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0021】
本方法の工程b)の間に、弁V1、V2、V4およびV5は閉じられ、供給原料は、ライン(3)および開放弁V3を有するライン(22)を介して、ライン(22’)および反応器R1bに導入される。この期間の間に、反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0022】
工程c)の間に、弁V1、V2およびV6は閉じられ、弁V3、V4およびV5は開である。供給原料は、ライン(3)およびライン(22)および(22’)を介して反応器R1bに導入される。反応器R1bからの流出物は、パイプ(24)、開放弁V4を有するパイプ(27)およびパイプ(21’)を介して保護反応器R1aに送られる。反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0023】
工程d)の間に、弁V2、V3、V4およびV6は閉じられ、弁V1およびV5は開である。供給原料は、ライン(3)およびライン(21)および(21’)を介して反応器R1aに導入される。この期間の間に、反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)およびパイプ(13)を介して主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0024】
次いで、サイクルは、再度始まる。FR2681871による切替可能な反応器の機能化を可能にする装置の弁についての操作が、表1に提示される。
【0026】
本発明は、当該技術の水準において記載された保護帯域の操作を、供給原料が全ての保護帯域中を連続的に通過する工程の後に追加工程をこの方法に統合することによって改善し、この追加工程では、供給原料と接触させられた第1の保護帯域に供給された供給原料の流れは、下流の次の保護帯域に部分的に、好ましくは徐々に移される。
【0027】
より特定的には、本発明は、アスファルテン、堆積物、硫黄含有不純物、窒素含有不純物および金属不純物を含有する重質炭化水素フラクションを水素化処理する方法であって、炭化水素の供給原料および水素が、水素化処理の条件下に水素化処理触媒上を通され、少なくとも1個の触媒床をそれぞれ含む少なくとも2個の固定床水素化処理保護帯域において、この保護帯域は、周期的に用いられるように直列に配列させられ、
− 供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活時および/または閉塞時の一部の間に供給原料が全ての保護帯域中を通過する工程a)、
− 供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたり、供給原料の一部が、供給原料と接触させられる第1の保護帯域中を通過し続け、供給原料の別の部分が、下流の次の保護帯域に導入される工程a’)、
− 失活および/または閉塞した保護帯域がバイパスされ、それが含有する触媒が、再生されおよび/または新鮮な触媒と置換され、その間、他の保護帯域(単数または複数)が用いられる工程b)、
− 供給原料が全ての保護帯域中を通過し、先行工程の間に触媒が再生された保護帯域が、全ての他の保護帯域の下流であるように再接続され、前記工程は、供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活時および/または閉塞時の一部の間にわたって継続される、工程c)
− 供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって、供給原料の一部は、供給原料と接触させられる第1の保護帯域中を通過し続け、供給原料の別の部分は、下流の次の保護帯域に導入される、工程c’)
に規定される工程b)、c)およびc’)の連続的な繰り返しからなる、方法に関する。
【0028】
保護帯域、特に、供給原料と接触させられる第1の保護帯域は、徐々に、金属、コークス、堆積物および種々の他の不純物でいっぱいになる。それらが含有する単数または複数の触媒が金属および種々の不純物で実質的に飽和している場合、その帯域は、触媒(単数または複数)の置換または再生を行うために接続を切られなければならない。好ましくは、触媒は置換される。この時点が、失活時および/または閉塞時と呼ばれる。失活時および/または閉塞時は、供給原料、操作条件および用いられる触媒(単数または複数)に関して変動するが、一般的に、触媒性能における降下(流出物中の金属および/または他の不純物の濃度における増加)、一定の水素化処理を維持するために要求される温度における増加によって、あるいは、閉塞の特定の場合には、ヘッドロス(head loss)における大幅な増加によって明らかにされる。閉塞度を表すヘッドロスΔpは、帯域のそれぞれについて、サイクル全体を通して連続的に測定され、部分的にブロックされた、帯域中の通過に由来する圧力における増加によって定義され得る。温度も、2個の帯域のそれぞれについてサイクル全体にわたって連続的に測定される。
【0029】
失活時および/または閉塞時を規定するために、当業者は、最初に、処理されるべき供給原料、操作条件および選択された触媒に応じて、ヘッドロスΔpおよび/または温度の最大許容値を規定し、そこから出発して、保護帯域の切断に進むことが必要である。失活時および/または閉塞時は、ヘッドロスおよび/または温度の限界値に達した時の時間としてこのように規定される。原則として、ヘッドロスおよび/または温度の限界値は、反応器の最初の試運転の間に確認される。重質フラクションを水素化処理する方法の場合、ヘッドロスの限界値は、一般的に0.3〜1MPa(3〜10バール)、好ましくは0.5〜0.8MPa(5〜8バール)である。温度の限界値は、一般的に400〜430℃であり、温度は、ここおよび以降において、触媒床の平均測定温度に相当する。失活に達したこと(発熱反応のより低いレベル)を示す、温度についての別の限界値は、触媒床上の温度差(ΔT)が、平均温度値にかかわらず5℃未満になったことである。
【0030】
本発明によると、供給原料と接触させられる第1の保護帯域に供給される供給原料の流れは、失活時および/または閉塞時の前に、一部、下流の次の保護帯域に移される。
【0031】
本発明による方法は、2個の切替可能な保護帯域のシステムを用いる
図1を活用して記載される。この方法は、それぞれが連続的な6工程:
− 帯域R1aの失活時および/または閉塞時の一部の間に供給原料が保護帯域R1aおよびR1b中を連続的に通過する工程a)、
− 帯域R1aの失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって、供給原料の一部は、帯域R1a中を通過し続け、供給原料の別の部分は、帯域R1bに導入される工程a’)(移動工程)、
− 供給原料が反応器R1b中のみを通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる工程b)、
− R1bの失活時および/または閉塞時の一部の間に、供給原料は、帯域R1bおよびR1a中を連続的に通過する工程c)、
− 帯域R1bの失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたり、供給原料の一部は、帯域R1b中を通過し続け、供給原料の別の部分は、帯域R1aに導入される工程c’)(移動工程)、
− 供給原料が反応器Ra1中のみを通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる工程d)
を有する一連のサイクルを含む。
【0032】
本方法の工程a)の間、供給原料は、ライン(3)および開放弁V1を有する、ライン(21)および(21’)を介して、固定触媒床Aを含有する保護反応器R1aに導入される。この期間の間に、弁V3、V4およびV5は閉じられる。反応器R1aからの流出物は、パイプ(23)、開放弁V2を有するパイプ(26)、およびパイプ(22’)を介して、固定触媒床Bを含有する保護反応器R1bに送られる。反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)、およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0033】
徐々に、保護帯域、特に、供給原料と接触させられる第1の保護帯域(R1a)は、閉塞および/または失活することとなる。ヘッドロスにおける増加および/または触媒効率のロス(温度を上昇させることを必要とする)が、次いで、観察される。その時、工程a’)が行われ、その間、供給原料の一部は、帯域R1a中を通過し続け、供給原料の別の部分は、帯域R1bに導入される。それ故に、供給原料の一部は、ライン(3)および開放弁V1(主要弁とも称される)を有する、ライン(21)および(21’)を介して、保護反応器R1aに導入され、供給原料の別の部分は、ライン(3)および開放弁V3(移動弁とも称される)を有する、ライン(22)および(22’)を介して、保護反応器R1bに導入される。この期間の間、弁V4およびV5は閉じられる。反応器R1aからの流出物は、パイプ(23)、開放弁V2を有するパイプ(26)およびパイプ(22’)を介して、保護反応器R1bに送られ、それ故に、直接的に導入された供給原料の他の部分を再接合させる。反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)、およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。工程a’)は、帯域R1aについてヘッドロスおよび/または温度の限界値に達するまで継続する。
【0034】
次いで、工程b)が行われ、その間に、供給原料は、反応器R1b中のみを通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる。それ故に、
図1によると、弁V1、V2、V4およびV5は閉じられ、供給原料は、開放弁V3を有する、ライン(3)およびライン(22)および(22’)を介して、反応器R1bに導入される。この期間の間に、反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)およびパイプ(13)を介して主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0035】
反応器R1bの下流で反応器R1aを再接続した後に(反応器R1aの触媒は、再生されているかまたは置換されている)、本方法の工程c)が行われ、その間に、供給原料は、反応器R1b、次いで反応器R1a中を連続的に通過する。この工程c)の間に、弁V1、V2およびV6は閉じられ、弁V3、V4およびV5は開である。供給原料は、ライン(3)およびライン(22)および(22’)を介して、反応器R1bに導入される。反応器R1bからの流出物は、パイプ(24)、開放弁V4を有するパイプ(27)およびパイプ(21’)を介して保護反応器R1aに送られる。反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)、およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0036】
徐々に、保護帯域、特に、供給原料と接触させられる第1の保護帯域(R1b)は、閉塞および/または失活することとなる。工程a’)におけるのと同様の方法で、工程c’)と称される、下流の次の保護帯域への供給原料の部分的な移動が次いで行われる。それ故に、
図1によると、帯域R1aの弁V1も開かれる。それ故に、供給原料の一部は、ライン(3)および開放弁V3(主要弁とも称される)を有する、ライン(22)および(22’)を介して、保護反応器R1bに導入され、供給原料の別の部分は、ライン(3)および開放弁V1(移動弁とも称される)を有する、ライン(21)および(21’)を介して、保護帯域R1aに導入される。この期間の間に、弁V2およびV6は閉じられる。反応器R1bからの流出物は、パイプ(24)、開放弁V4を有するパイプ(27)、およびパイプ(21’)を介して、保護反応器R1aに送られ、それ故に、直接的に導入された供給原料の他の部分を再接合させる。反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)、およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。工程c’)は、帯域R1bについてヘッドロスおよび/または温度の限界値に達するまで継続する。
【0037】
次いで工程d)が行われ、その間に、供給原料は、反応器R1a中のみを通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる。それ故に、
図1によると、弁V2、V3、V4およびV6は閉じられ、弁V1およびV5は開である。供給原料は、ライン(3)およびライン(21)および(21’)を介して、反応器R1aに導入される。この期間の間に、反応器R1aからの流出物は、開放弁(V5)を有する、パイプ(23)および(23’)およびパイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0038】
サイクルは再度始まる。本発明による切替可能な反応器の機能化を許容する装置の弁についての操作は、表2に示される。
【0040】
好ましくは、工程a’)およびc’)の間に下流の次の保護帯域に導入される供給原料の部分は、全供給原料の50%を超えない。下流の次の帯域に給送する弁の開放の最大値(移動値)は、その時、50%である。実際に、供給原料の50%超が、下流の次の帯域に導入される(したがって、50%未満が、供給原料と接触させられる第1の帯域に導入される)場合、2個の帯域が同時に閉塞および/または失活し、同時に、ヘッドロスおよび/または温度の最大値に達する危険性がある。これは、切替可能なサイクルの機能不全化につながり得る。実際に、2個の反応器の適切な連続的操作を確実にするために、他方の反応器がヘッドロスおよび/または温度の限界値に達してその触媒の置換が必要となる前に一方の反応器の十分な触媒の再生および/または置換の工程(工程b)およびd))のための時間がなければならない。
【0041】
複数の操作パラメータが各保護帯域の操作時間の最適化を可能にするが、これは、特に、工程a’)およびc’)の間に2個の隣接する保護帯域への供給原料の同時導入の方法を最適化させることによる。これらのパラメータは、
− 移動工程の開始時、
− 移動工程の開始時における下流の次の保護帯域上に導入される供給原料の量(移動弁の初期の開放)、
− 移動工程の間の下流の次の帯域上に導入される供給原料の量における漸進的な増加(移動弁の漸進的な開放)
に関連する。
【0042】
移動の時点は、供給原料と接触させられる第1の帯域に給送を続けながら、下流の次の帯域上への供給原料の一部の導入が開始される時の時点に相当する。この時は、供給原料と接触させられる第1の保護帯域の失活時および/または閉塞時の好ましくは30〜95%、より好ましくは60〜90%である。実際に、サイクルタイムは、移動の時点、すなわち、第1の位置における帯域が閉塞物質によりすでに十分に満たされている時の時間が遅らされるに従って、より増加する。操作時間の最適化を可能にする別のパラメータは、移動工程a’)およびc’)の開始時に下流の次の帯域に導入される供給原料の量である。移動弁(工程a’)におけるV3および工程c’)におけるV1)は、下流の次の帯域上に導入される供給原料の量を制御することを可能にする。供給原料と接触させられる第1の帯域に依然として導入される供給原料の量は、(工程a’)の主要弁V1および工程c’)のV3を制御することによって)一層より低減させられる。工程a’)およびc’)の開始時に下流の次の帯域に導入される供給原料の部分は、全供給原料の0〜50%、好ましくは、20〜40%である(体積%で表される)。工程の開始時の供給の導入の最小値0%は、その後に導入される供給原料の量における増加を要求する。好ましくは、下流の次の帯域上への供給原料の50%超の導入は、上記の2個の帯域の同時閉塞の危険性の理由のために回避されることになる。
【0043】
操作時間の最適化を可能にする別の重要なパラメータは、工程a’)およびc’)の間の下流の次の帯域上に導入される供給原料の量における増加である。好ましくは、下流の次の保護帯域に導入される供給原料の前記部分は、工程a’)およびc’)の間に徐々に増加し、このことは、移動弁を徐々に開放すると同時に同じ量で主要弁を徐々に閉じることによって明示される。漸進的増加は、連続的に行われるかまたは段階的に行われる。下流の次の帯域に導入される供給原料の量における増加は、供給原料と接触させられる第1の帯域の失活時および/または閉塞時の%当たりの百分率の増加によって定義され得る。好ましくは、それは、失活時および/または閉塞時の%当たり0.02〜4%、好ましくは0.02〜1%である。好ましくは、下流の次の帯域上への供給原料の50%超の導入につながる増加は、上記の2個の帯域の同時閉塞の危険性の理由のために回避されることになる。
【0044】
好ましい実施形態において、触媒調節(catalyst conditioning)セクションが用いられ、これにより、操作しながら、すなわち、装置の操作を停止させることなく、これらの保護帯域を切り替えることが可能となる:第1に、中程度の圧力(10〜50バール、しかし好ましくは15〜25バール)で操作するシステムにより、接続が切られた保護反応器上で以下の操作:洗浄、ストリッピング、冷却を行うことが可能になり、その後に、使用済みの触媒が排出される;次いで、新鮮な触媒の装填後に加熱および硫化を行う;次いで、適切な設計のゲート弁による加圧/減圧のための別のシステムが、装置を停止させることなく、すなわち、操作因子に影響を及ぼすことなく、これらの保護帯域の効率的な切替を可能にする。洗浄、ストリッピング、使用済み触媒の排出、新鮮な触媒の装填、加熱、および硫化のすべての操作は、接続を切られた反応器または保護帯域上で行われるからである。あるいは、調節セクションにおいて、操作しながらの切替のための手順を単純化するために前活性触媒(pre-activity catalyst)が用いられ得る。
【0045】
各保護帯域は、少なくとも1個の触媒床(例えば、1、2、3、4または5個の触媒床)を含む。好ましくは、各保護帯域は、1個の触媒床を含む。各触媒床は、1種以上の触媒を含有する少なくとも1個の触媒層を含有し、場合によっては、少なくとも1個の不活性層で補足される。触媒床(単数または複数)において用いられる触媒は、同一であっても異なってもよい。
【0046】
切替可能な反応器を用いる水素化処理方法は、それ故に、サイクルの継続期間を大きく増加させ得る。工程a’)およびc’)の間に、供給原料の一部は、第1の帯域のバイパスのために、切替可能な反応器において短くされた滞留時間を有する。最後の反応器の出口において一定の水素化処理度を維持するために、帯域における温度は、それ故に、徐々に上昇させられる。これはまた、触媒の失活に対抗するためにサイクルの間に全体的に増加させられる。しかしながら、この温度上昇は、コークスの堆積を促進し、閉塞のプロセスを加速する。それ故に、過剰な温度上昇を制限するために、工程a’)およびc’)の間に次の保護帯域に導入される割合は、限定されなければならない。下流の次の帯域に導入される供給原料の量は、それ故に、サイクルタイムの利得と限定される温度上昇との間の最適化に基づく。
【0047】
好ましい変形例によると、各保護帯域の入口において、供給原料は、単一段または連続する2段からなるろ過分配器板中を通過し、前記板は、触媒床(単数または複数)の上流に置かれる。特許US2009177023において記載される、このろ過板は、ろ過媒体を含む特別な分配器板によって、供給原料に含有される閉塞粒子を捕捉することを可能にする。それ故に、ろ過板は、切替可能な保護帯域を用いる水素化処理方法において時間の利得を増加させることを可能にする。このろ過板は、反応器に給送する気相(水素および供給原料の気体部分)と液相(供給原料の液体部分)の分配を提供しながら同時に、供給原料に含有される不純物に対するろ過機能を提供する。さらに、ろ過板は、触媒床の表面全体にわたる混合物のより一様な分配を確実にし、板自体の閉塞の期間の間の乏しい分配の問題を制限する。
【0048】
より正確には、ろ過板は、ろ過および分配のための装置であり、前記装置は、触媒床の上流に置かれた板を含み、前記板は、ほぼ水平でありかつ反応器の壁と一体化しているベースからなり、このベースに、ほぼ垂直な煙突体が固定され、この煙突体は、気体の吸気のために頂部において開であり、下流に置かれた触媒床に給送することを目的として気−液混合物を除去するために底部において開であり、前記煙突体は、液体の吸入のために連続的な側面スリットによってまたは側面オリフィスによってそれらの高さの所定の割合にわたって孔空けされ、前記板は、煙突体を取り囲むろ過床を支持し、前記ろ過床は、触媒床の粒子のサイズ以下のサイズの粒子の少なくとも1層からなる。ろ過床は、一般的には不活性な粒子からなるが、触媒床の触媒と同一であるか、または触媒床の触媒と同一の系統に属する触媒の少なくとも1層を含んでもよい。この最後に言及された変形例は、反応器中の触媒床の体積を低減させることを可能にする。
【0049】
ろ過分配器板はまた、2段を含み、かつ、2個の連続する板からなり得る:第1の板は、内部粒子からなりかつ触媒床の触媒と同一であるかまたは触媒床の触媒と同一の系統に属する触媒の少なくとも1層からなる保護床を支持する。この板は、特許US2009177023において記載されている。床は、格子上に配列させられ、液相は、保護床中を流れ、気体は、煙突体を通じて、保護床および第1の板中を通過する。閉塞の終わりに、液体および気体は、煙突体中を同時に流れ、その間、第2の板は、その分配機能を提供し続けることを可能にする。第2の板は、気体および液体の分配の機能を提供する:それは、液体の通過のための側部の穴を有する煙突体からなり得るか、または、バブルキャップまたはベイパー・リフト(vapour-lift)からなり得る。
【0050】
別の変形例によると、本発明による水素化処理方法は、切替および部分的な流れの移動の同一の原理により機能する2個超(例えば、3、4または5個)の切替可能な反応器を含み得る。
【0051】
図2において示される場合、ここでは、保護帯域は3個の反応器を有し、本方法は、その好ましい実施形態において、それぞれが連続する9工程:
− 供給原料が反応器R1a、次いで反応器R1b、最後に反応器R1c中を連続的に通過する工程a)、
− 供給原料の一部が反応器R1a、次いで反応器R1b中を通過し続け、供給原料の別の部分が、反応器R1b中に直接的に導入され、次いで、全体的な供給原料が、反応器R1c中を通過する、工程a’)(移動工程)、
− 供給原料が反応器R1b、次いで、反応器R1c中を通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる工程b)、
− 供給原料が反応器R1b、次いで、反応器R1c、最後に反応器R1a中を連続的に通過する工程c)、
− 供給原料の一部が反応器R1b、次いで反応器R1c中を通過し続け、供給原料の別の部分が、反応器R1c中に直接的に導入され、次いで、供給原料全体が反応器R1a中を通過する、工程c’)(移動工程)、
− 供給原料が反応器R1c、次いで、反応器R1a中を通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる工程d)、
− 供給原料が反応器R1c、次いで反応器R1a、最後に反応器R1b中を連続的に通過する工程e)、
− 供給原料の一部が反応器R1c、次いで、反応器R1a中を通過し続け、供給原料の別の部分が反応器R1aに直接的に導入され、次いで、供給原料全体が、反応器R1b中を通過する工程e’)(移動工程)、
− 供給原料が反応器R1a、次いで、反応器R1b中を通過し、反応器R1cは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる工程f)
を有する一連のサイクルを含むことになる。
【0052】
この
図2において図示的に示される場合、本方法は、
図1と結び付けて記載された方法と等価な方法で操作する(ラインについての参照符号は、視認性の理由のために省略された)。
【0053】
工程a)の間、弁V1、V2、V7およびV8は開であり、弁V3、V5、V6、V9およびV10は閉じられる。
【0054】
工程a’)の間、弁V1、V2、V3、V7およびV8は開であり、弁V5、V6、V9およびV10は閉じられる。
【0055】
工程b)の間、弁V3、V7およびV8は開であり、弁V1、V2、V5、V6、V9およびV10は閉じられる。
【0056】
工程c)の間、弁V3、V7、V9およびV5は開であり、弁V1、V2、V6、V8およびV10は閉じられる。
【0057】
工程c’)の間、弁V3、V10、V7、V9およびV5は開であり、弁V1、V2、V6およびV8は閉じられる。
【0058】
工程d)の間、弁V10、V9およびV5は開であり、弁V1、V2、V3、V6、V7およびV8は閉じられる。
【0059】
工程e)の間、弁V10、V9、V2およびV6は開であり、弁V1、V3、V5、V7およびV8は閉じられる。
【0060】
工程e’)の間、弁V10、V1、V9、V2およびV6は開であり、弁V3、V5、V7およびV8は閉じられる。
【0061】
工程f)の間、弁V1、V2およびV6は開であり、弁V3、V5、V7、V8、V9およびV10は閉じられる。
【0062】
2個の切替可能な反応器のシステムための上記に記載された方法の異なる変形は、2個超の切替可能な反応器を有するシステムにも適用される。これらの異なる変形は特に:調節システム、反応器当たり2個超の触媒床を有する可能性、移動の時点、下流の次の帯域に最初に導入される供給原料の量および経時的なその漸進的増加、温度を上げることによりHDM度を維持することおよび各反応器の入口におけるろ過板の統合である。
【0063】
本発明による方法が行われる際の温度は、有利には320〜430℃であってよく、好ましくは350〜410℃の温度であり、水素分圧は、有利には、3〜30MPaであってよく、好ましくは10〜20MPaであり、空間速度(HSV)は、有利には、毎時の触媒体積当たり0.05〜5の供給原料体積であってよく、水素ガス対液体炭化水素原料の比は、有利には、200〜5000標準立方メートル/立方メートルであってよく、好ましくは500〜1500標準立方メートル/立方メートルである。操作中の各切替可能な反応器のHSVの値は、好ましくは、約0.5〜4h
−1であり、ほとんどの場合、約1〜2h
−1である。切替可能な反応器全体のHSVの値および各反応器のHSVの値は、反応温度を制御しながら(発熱効果を制限しながら)、最大HDMを達成するように選択される。
【0064】
用いられる水素化処理触媒は、好ましくは、既知の触媒であり、一般的には、水素化脱水素機能を有する少なくとも1種の金属または金属化合物を担体上に含む粒状触媒である。これらの触媒は、有利には、少なくとも1種の第VIII族金属、一般的には、ニッケルおよび/またはコバルトを含む群から選択される金属、および/または、少なくとも1種の第VIB族金属、好ましくはモリブデンおよび/またはタングステンを含む触媒である。用いられる担体は、一般的には、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土およびこれらの材料の少なくとも2種の混合物を含む群から選択される。
【0065】
供給原料の注入の前に、本発明による方法において用いられる触媒は、好ましくは、金属種を硫化物に少なくとも部分的に転換するための硫化処理に付され、その後に処理されるべき供給原料と接触させられる。硫化による活性化のこの処理は、当業者に周知であり、文献においてすでに記載されたあらゆる方法によって、現場内(in situ)、すなわち反応器内、あるいは、現場外(ex situ)のいずれかで行われ得る。
【0066】
本発明による方法において処理される供給原料は、有利には、常圧残渣、直接蒸留からの真空残渣、原油、抜頭原油、脱アスファルト油、転化方法からの残渣(例えば、コーキングに由来するもの、固定床、沸騰床または移動床の水素化転化に由来するもの)、あらゆる起源の重質油、特に、オイルサンドまたはオイルシェールから得られるものから選択され、単独でまたは混合して用いられる。これらの供給原料は、有利には、そのままあるいは炭化水素フラクションまたは炭化水素フラクションの混合物により希釈されて用いられ得、この炭化水素フラクションまたは炭化水素フラクションの混合物は、流動接触分解(fluid catalytic cracking:FCC)法から得られる生成物、オイルの軽質留分(Light Cycle Oil:LCO)、オイルの重質留分(Heavy Cycle Oil:HCO)、デカンテッドオイル(decanted oil:DO)、FCCからの残渣から選択され得るか、若しくは、蒸留、ガスオイルフラクション、特に、真空蒸留によって得られるもの(Vacuum Gas Oil:VGO)から得られ得る。重質供給原料はまた、有利には、石炭液化方法から得られる留分、芳香族抽出物、または任意の他の炭化水素留分、あるいはまた、非石油供給原料、例えば、石炭、バイオマスまたは産業廃棄物(例えば、再利用ポリマー)の熱転化(触媒を有するかまたは有さず、および水素を有するまたは有しない)からの気体状および/または液状の誘導体(固体を含有せず、あったとしてもわずかである)を含み得る。
【0067】
前記重質供給原料は、一般的に、1重量%超の、500℃超の沸点を有する分子を有し、金属Ni+Vの含有率は、1重量ppm超、好ましくは20重量ppm超であり、ヘプタン中に沈殿したアスファルテンの含有率は、0.05重量%超、好ましくは1重量%超である。
【0068】
本発明による水素化処理方法は、選択されたHSVおよびHDM触媒の効率に起因して、切替可能な反応器の出口において供給原料の50%以上のHDM(より正確には50〜95%のHDM)をもたらすことを可能にする。
【0069】
切替可能な保護帯域のシステムを用いる本発明による水素化処理方法であって、少なくとも1回の漸進的な切替工程を含む、方法は、有利には、重質炭化水素供給原料の水素化処理のための固定床または沸騰床方法に先行する。
【0070】
好ましくは、それは、本出願人のHyvahl-F(登録商標)方法であって、少なくとも1回の水素化脱金属工程と、少なくとも1回の水素化脱硫工程とを含む、方法に先行する。本発明による方法は、好ましくは、HDMセクションの上流で統合され、切替可能な反応器は、保護床として用いられる。
図1に示される場合、供給原料(1)は、パイプ(1)を介して切替可能な保護反応器(単数または複数)に入り、パイプ(13)を介して前記反応器(単数または複数)を出る。保護反応器(単数または複数)を出る供給原料は、パイプ(13)を介して、水素化処理セクション(14)、より正確には、1個以上の反応器を含むHDMセクション(15)に入る。HDMセクション(15)からの流出物は、パイプ(16)を介して抜き出され、次いで、1個以上の反応器を含むHDTセクション(17)に送られる。最終流出物は、パイプ(18)を介して抜き出される。
【0071】
(実施例1:本発明に合致しない)
供給原料は、中東起源(Arabian Medium)の常圧残渣(AR)およ
び中東起源(Arabian Light)の真空残渣(VR)の混合物(70/30重量%)からなる。この混合物は、周囲温度での高粘度(0.91cP)、密度994kg/m
3、コンラドソン炭素(Conradson carbon)(14重量%)およびアスファルテン(6重量%)の高含有率およびニッケル(22重量ppm)、バナジウム(99重量ppm)および硫黄(4.3重量%)の高レベルによって特徴付けられる。
【0072】
水素化処理方法は、FR2681871に記載された方法に従って行われ、2個の切替可能な反応器の使用を含む。2個の反応器は、CoMoNi/アルミナの水素化脱金属HDM触媒を装填される。サイクルは、a)からd)の工程を統合するとして規定される。失活時および/または閉塞時に達するのは、ヘッドロスが0.7MPa(7バール)に達し、および/または床の平均温度が405℃に達した時および/または触媒床についての温度差が5℃未満になった時である。
【0073】
本方法が行われる際の圧力は19MPaであり、サイクルの開始時の温度は360℃であり、サイクルの終わりの温度は400℃であり、反応器当たりHSV=2h
−1であり、60%前後の脱金属度が維持される。
【0074】
表3および
図3は、FR2681871による方法のための操作時間(日)を示す。それ故に、
図3によると、当該技術水準による反応器R1a(ベースケース R1a)の曲線は、サイクルの開始時において、第1の反応器R1aにおけるヘッドロスがその最大許容値(Δp=0.7MPaまたは7バール)まで増加することを示し、この値から出発して触媒の置換が要求される。当該技術水準の場合(FR2681871)、反応器R1aの操作時間は、したがって、210日である。反応器R1aの触媒の置換の間、反応器R1bにおけるヘッドロスは、約3バールに達する。供給原料が反応器R1b、次いで新鮮な触媒を含有する反応器R1a中を通過する次の期間の間、反応器R1bのヘッドロスは、最大許容値にまで増加し、これは、操作の320日後に達する。第2のサイクルは、これらの切替可能な反応器について、反応器R1bの触媒を置換することによって想定され得る。
【0075】
第1の帯域の失活時および/または閉塞時(または、操作時間)は、したがって、210日である。全体的に、第1のサイクルについて320日のサイクルタイムおよび2サイクルについて627日のサイクルタイムが観察される。
【0076】
(実施例2:本発明に合致する)
水素化処理方法が、実施例1におけるのと同一の供給原料により、同一の触媒および同一の操作条件下に繰り返されるが、本発明に従って、第1の帯域の失活時および/または閉塞時の80%の時(すなわち、168日(80%×210日))に移動が行われることを例外とする。工程a’)またはc’)の開始時において第2の保護帯域に導入される供給原料の割合(%)は0%であり、失活時および/閉塞時の%当たり0.7%の増加を伴う。HDM度は、60%に維持される。
【0077】
表3および
図3は、本発明による方法(実施例2)および当該技術の水準による方法(実施例1)についての操作時間(日)における利得を示す。
【0079】
図3は、当該技術の水準(FR2681871)および本発明による帯域R1aおよびR1bにおいて測定された、ヘッドロスの経時変動を示す。
【0080】
本発明によると、R1aの失活時および/または閉塞時の80%の時(すなわち、168日)に、工程が加えられ、その工程の間に、供給原料の一部が、反応器R1aおよび反応器R1bに同時に導入される(ケース PPRS1 R1a)。ヘッドロスが、緩慢に増加することが理解され得(当該技術の水準および本発明による曲線R1aの分岐)、これは、ヘッドロスの最大値(Δp=0.7MPaまたは7バール)がより遅くに達することを可能にし、したがって、反応器R1aの操作時間を285日まで長くする(Δt
c1−R1a=75日))。
【0081】
反応器R1aのヘッドロスは、次いで、唐突に降下する。システムが、工程b)に移動し、その間に反応器R1aの触媒が再生されおよび/または置換されるからである。供給原料は、次いで、反応器R1b中のみを通過し、次いで、R1bおよび置換の後のR1a中を通過する。触媒の置換は、一般的に20日を要する。曲線R1bは、第2の反応器R1bのヘッドロスが時間に応じることを示す(ベースケース R1bおよび本発明によるPPRS1 R1b)。時間の利得の同じ現象は、工程c’)の終了時に観察される:Δt
c1−R1b=98日)。それ故に、反応器R1bの動作時間は418日である。これは、操作時間の約30%の時間の利得を表す。
【0082】
図3は、切替可能な反応器の第2のサイクルも示す。2連続のサイクル後の時間の利得は、工程a’)後においてΔt
C2−R1a=150日、および工程c’)後にΔt
C2−R1b=187日である。第1のサイクルにおいて得られた時間が第2のサイクルの利得に加えられるので、より多くのサイクルがあると、より時間の利得がより大きいことが理解され得る。
【0083】
したがって、本発明による水素化脱金属方法によって、当該技術の水準の方法によるHDM度に等価な75%のHDM度を維持しながら約30%までサイクルタイムを増加させることが可能になることが理解され得る。