(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各制御部は更に、前記加速度演算部により演算された加速度から加加速度を演算する加加速度演算部と、前記加加速度演算部により演算された加加速度から速度指令値を補正する速度補正量を演算して、前記速度指令値に加算する速度補正量演算部とを備えており、
前記速度補正量演算部は、前記速度補正量を、前記加加速度に補正ゲインを乗算して求めることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を用いて本発明の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。以下に説明する実施例では、少なくとも2つのモータでそれぞれ駆動される軸を備え、1つの軸が駆動された時に、他の軸が1つの軸が駆動されたことによって軸間干渉を受ける環境の中で、位置決め対象物の位置決めをモータで制御するモータ制御装置を説明する。なお、位置決め対象物の位置決めを行うモータの数は限定されるものではないが、ここでは説明を簡単にするために、位置決め対象物がモータで駆動される第1と第2の軸で位置決めされる場合について説明する。
【0013】
図3は、本発明のモータ制御装置10の基本的な構成を示すものであり、モータ制御装置10によって位置決めされる位置決め対象は工作機械30であるとする。そして、工作機械30は、水平方向移動部31と垂直方向移動部32を備えているものとする。水平方向移動部31は第1の軸1に螺合しており、第1の軸1が第1のサーボモータ3に駆動されて回転すると、水平方向に移動する。また、垂直方向移動部32は第2の軸2に螺合しており、第2の軸2が第2のサーボモータ4に駆動されて回転すると、水平方向移動部31の長手方向に沿って垂直方向に移動する。第1と第2のサーボモータ3,4には、それぞれロータリーエンコーダ5,6が取り付けられている。更に、本実施例では、水平方向移動部31に、加速度検出器39が取り付けられている。
【0014】
一方、モータ制御装置10の内部には、第1と第2のサーボモータ3,4毎に位置指令値を生成する第1の制御部41と第2の制御部42及び第1と第2の制御部41,42の間でデータを送受信する通信手段16が設けられている。ここで、第1の制御部41と第2の制御部42の内部構成の一例を、
図12(a)、(b)を併用して説明する。第1の制御部41には、
図12(a)に示すように、第1のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11、加速度演算部14、位置補正量演算部15及び位置指令作成部19が設けられている。加速度演算部14は、軸1の加速度を演算する。また、位置補正量演算部15は、軸2の加速度が入力された時に、軸1の位置を補正する位置補正量を演算する。位置指令作成部19は、軸1への位置指令値を生成する。
【0015】
同様に、第2の制御部42には、
図12(b)に示すように、第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12、位置補正量演算部15、加速度演算部14及び位置指令作成部19が設けられている。加速度演算部14は、軸2の加速度を演算する。また、位置補正量演算部15は、軸1の加速度が入力された時に、軸2の位置を補正する位置補正量を演算する。位置指令作成部19は、軸2への位置指令値を生成する。
【0016】
なお、本実施例では、速度指令作成部11、12と、第1と第2のサーボモータ3,4の間には、それぞれアンプ7,8が設けられている。アンプ7,8は、モータ制御装置10の内部に設けられていても良い。第1と第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11、12は、位置指令作成部19からの位置指令値に、第1と第2の軸1,2からの位置フィードバック情報を加味して第1と第2の軸1,2をフィードバック制御する。位置フィードバック情報は、第1と第2のサーボモータ3,4にあるロータリーエンコーダ5,6から送られてくる。
【0017】
加速度演算部14は、第1の軸1が駆動された時の、水平方向移動部31の水平方向の加速度を演算する。通信手段16は、加速度演算部14で演算された水平方向移動部31の水平方向の加速度を位置補正量演算部15に伝える。位置補正量演算部15は入力された加速度に基づき、第2の軸2の位置補正量を演算し、演算した第2の軸2の位置補正量を、位置指令作成部19から第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12に送られる第2の軸2の位置指令値に加算する。
【0018】
図3に示したモータ制御装置10は、本発明の第1の形態を示しており、第1の軸1の加速度が入力された
図12(b)に示す位置補正量演算部15において、第1の軸1の加速度に補正ゲインを乗じて位置補正量を演算し、これを第2の軸の位置指令値に加えて補正している点に特徴がある。また、
図3に示したモータ制御装置10では、通信手段16は
図12(a)、(b)に示す加速度演算部14からの信号を位置補正量演算部15に伝えているが、通信手段16の位置は、必ずしも加速度演算部14と位置補正量演算部15の間でなくても良く、幾つかの実施例が可能である。そこで、加速度演算部14、位置補正量演算部15及び通信手段16の配置を異ならせた実施例、及び加速度演算部14による加速度の演算方法を異ならせた幾つかの実施例を、
図4から
図9を用いて説明する。
【0019】
(第1の実施例:通信手段が送受信するデータが指令加速度の場合)
図4は、通信手段16が送信するデータが、指令加速度の場合の実施例の構成を示すものであり、
図3に示したモータ制御装置10の内部の構成を示している。第1の実施例では、モータ制御装置10の内部にある、第1の制御部41で軸1の処理が行われ、第2の制御部42で軸2の処理が行われる。なお、
図12に示したように、第1の制御部41と第2の制御部42には、それぞれ加速度演算部14、位置補正量演算部15及び位置指令作成部19があるが、以後の説明では、動作していない部材の図示は省略してある。
【0020】
軸1の処理は、第1の制御部41にある第1のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11と加速度演算部14によって行われる。第1のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11は、
図3に示した位置指令作成部19からの位置指令値に基づいて第1の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプ7の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とがある。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第1のサーボモータ3が速度指令値と一致する速度になるように制御される。位置フィードバック信号は、ロータリーエンコーダ5から送られてくる。また、加速度演算部14は、位置指令作成部19からの第1の軸1の位置指令値に基づいて、第1の軸の加速度を演算し、これを指令加速度として通信手段16に出力する。そして、通信手段16は、加速度演算部14から入力された指令加速度を第2の制御部42にある位置補正量演算部15に送信する。
【0021】
第2の制御部42では、通信手段16から入力された指令加速度に基づいて軸2の処理が行われる。軸2の処理は、第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12と位置補正量演算部15によって行われる。位置補正量演算部15は、第2の軸2の位置補正量を演算する。
図3に示したように、第1の軸1が駆動されて、水平方向移動部31が第1の軸1に沿って水平方向に移動すると、第2の軸2と一緒に
垂直方向移動部32全体が、水平方向移動部31の水平方向への移動における加速度の影響を受ける。第2の制御部42にある位置補正量演算部15は、加速度演算部14から通信手段16を通じて入力された指令加速度により、第2の軸2の位置補正量を演算する。第2の軸2の位置補正量は、位置補正量演算部15が指令加速度に補正ゲインを乗算することによって演算する。補正ゲインは、係数であり、定数である。補正ゲインは典型的に10〜100μm/(m/s
2)である。補正ゲインを定数とすることにより、位置補正量(=補正ゲイン×加速度)は加速度に比例する。
【0022】
第2の制御部42における軸2の処理では、位置補正量演算部15によって演算された位置補正量が、位置指令作成部19からの位置指令値に加算されて
位置指令値が補正される。補正された位置指令値は、第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12に入力される。速度指令作成部12は、位置補正量で補正された位置指令値に基づいて第2の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部12からアンプ8の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とを有する。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第2のサーボモータ4が速度指令値と一致する速度になるように制御される。
【0023】
図5は、
図4に示したモータ制御装置10の第1の実施例における制御手順を示すフローチャートである。本実施例では、まず、第1の制御部の加速度演算部が第1の軸(図には軸1と記載)の加速度を演算し(ステップ501)、通信手段が加速度演算部で演算された第1の軸の加速度を、
第2の制御部の位置補正量演算部へ送信する(ステップ502)。通信手段のこの処理により、第2の制御部の位置補正量演算部が通信手段から第1の軸の加速度を受信する(ステップ503)。第1の軸の加速度を受信した位置補正量演算部は、加速度に補正ゲインを乗算して第2の軸の位置補正量を演算する(ステップ504)。
【0024】
第2の制御部の位置補正量演算部で演算された第2の軸の補正量は、位置指令作成部から送られてくる第2の軸の位置指令値に加算され、第2の軸の位置指令値が補正される(ステップ505)。
【0025】
以上説明した第1の実施例では、第1の制御部41の加速度演算部14が、位置指令作成部19からの第1の軸1の位置指令値に基づいて第1の軸の加速度を演算し、これを指令加速度として通信手段16に出力していた。一方、第1の軸の加速度は、位置指令作成部19からの第1の軸1の位置指令値に基づいて演算する以外にも取得する方法がある。その方法を
図6及び
図7を用いて説明する。
【0026】
図6は、第1の実施例のモータ制御装置10の変形例の構成を示すものであり、第1の制御部41の加速度演算部14が、第1の軸1の位置フィードバック情報に基づいて、第1の軸1の加速度を演算している。この場合、加速度演算部14における演算の結果得られるのは、第1の軸1の実加速度である。第1の軸1の実加速度が加速度演算部14から通信手段16に送られた後の、第2の制御部42における処理は第1の実施例と同じであるので、以後の説明を省略する。
【0027】
図7は、第1の実施例のモータ制御装置10の変形例の構成を示すものであり、第1の制御部41の加速度演算部14が、第1の軸1に取り付けられた加速度検出器39からの信号に基づいて、第1の軸1の加速度を演算している。ここでは、加速度検出器39によって得られた第1の軸1の加速度を機械加速度と言う。この場合、加速度演算部14において演算の結果得られるのは、第1の軸1の機械加速度である。第1の軸1の機械加速度が加速度演算部14から通信手段16に送られた後の、
第2の制御部42における処理は第1の実施例と同じであるので、以後の説明を省略する。
【0028】
(第2の実施例:通信手段が送受信するデータが位置指令値の場合)
図8は、第1の制御部41から通信手段16が送信するデータが、位置指令作成部から送られてくる第1の軸の位置指令値の場合の実施例の構成を示すものである。第2の実施例では、通信手段16の入力側にある第1の制御部41で軸1の処理が行われ、通信手段16の出力側にある第2の制御部42で軸2の処理が行われる。
【0029】
軸1の処理では、第1の軸の制御が第1のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11によって行われる。第1のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11は、
図3に示した位置指令作成部19からの位置指令値に基づいて第1の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプ7の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とがある。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第1のサーボモータ3が速度指令値と一致する速度になるように制御される。また、位置指令作成部19からの位置指令値は、分岐されて通信手段16に入力される。通信手段16は入力された第1の軸の位置指令値を、軸2の処理を行う第2の制御部42にある加速度演算部14に伝える。
【0030】
軸2の処理は、第2の制御部42にある加速度演算部14、位置補正量演算部15及び速度指令作成部12によって行われる。加速度演算部14は、通信手段16から送られてきた第1の軸1の位置指令値に基づいて、第1の軸の加速度を演算し、これを指令加速度として位置補正量演算部15に入力する。位置補正量演算部15は、加速度演算部14から入力された指令加速度により、第2の軸2の位置補正量を演算する。第2の軸2の位置補正量は、位置補正量演算部15が指令加速度に補正ゲインを乗算することによって演算する。
【0031】
軸2の処理では、位置補正量演算部15によって演算された位置補正量が、位置指令作成部19からの位置指令値に加算されて位置指令値が補正される。位置補正量によって補正された位置指令値は、第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12に入力される。速度指令作成部12は、位置補正量によって補正された位置指令値に基づいて第2の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプ8の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とを有する。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第2のサーボモータ4が速度指令値と一致する速度になるように制御される。
【0032】
(第3の実施例:通信手段が送受信するデータが位置補正量の場合)
図9は、通信手段16が送信するデータが、位置補正量演算部15から送られてくる位置補正量の場合の実施例の構成を示すものであり、
図3に示したモータ制御装置10の内部の構成を示している。第3の実施例でも、モータ制御装置10の内部で、通信手段16の入力側で軸1の処理が行われ、通信手段16の出力側で軸2の処理が行われる。
【0033】
軸1の処理は、第1の制御部41にある第1のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11、加速度演算部14及び位置補正量演算部15によって行われる。第1のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11は、
図12(a)に示した位置指令作成部19からの位置指令値に基づいて第1の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプ7の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とを有する。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第1のサーボモータ3が速度指令値と一致する速度になるように制御される。
【0034】
また、加速度演算部14は、位置指令作成部19からの第1の軸1の位置指令値に基づいて、第1の軸の加速度を演算し、これを指令加速度として位置補正量演算部15に送る。位置補正量演算部15は、加速度演算部14から入力された指令加速度により、第2の軸2の位置補正量を演算する。第2の軸2の位置補正量は、位置補正量演算部15が指令加速度に補正ゲインを乗算することによって演算する。位置補正量演算部15は演算した第2の軸2の位置補正量を通信手段16に送る。
【0035】
すると、通信手段16は、第1の制御部41の位置補正量演算部15から入力された位置補正量を第2の制御部42に送る。第2の制御部42における軸2の処理では、入力された位置補正量を位置指令作成部19からの位置指令値に加算して位置指令値を補正する。位置補正量によって補正された位置指令値は、第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12に入力される。速度指令作成部12は、位置補正量が加算されて補正された位置指令値に基づいて第2の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプ8の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とがある。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第2のサーボモータ4が速度指令値と一致する速度になるように制御される。
【0036】
以上説明した第1から第3の実施例のように、加速度演算部14と位置補正量演算部15は、第1の軸1の処理を行う第1の制御部41にも第2の軸2の処理を行う第2の制御部42の何れの側にもある。よって、処理に応じて、第1の制御部41と第2の制御部42にある加速度演算部14と位置補正量演算部15の何れかが使用されれば良い。このため、通信手段16が伝える情報も、位置指令値、指令加速度、位置補正量のいずれであっても良い。
【0037】
図10に示したモータ制御装置10は、本発明の第2の形態を示しており、フィードフォワード制御が採用された形態である。本形態でも、軸1の処理が第1の制御部41で行われ、第2の処理が第2の制御部42で行われる。モータ制御系におけるフィードフォワード制御では、位置指令値を指令する際に、その微分を速度指令値に加算することにより、位置フィードバック値が位置指令値へ収束するまでの時間を短縮できる。第2の形態では、第1の軸の加速度に比例した補正ゲインで第2の軸の位置指令値を補正すると共に、第1の軸の加速度の微分である加加速度で第2の軸の速度指令値を補正することで、第1の軸の加速度に比例する第2の軸の位置補正量が位置フィードバック値へ反映されるまでの時間を短縮している。加加速度は、第1の軸の加速度の変化量を示すものである。
【0038】
このため、第2の形態では、第1の制御部41は、位置指令値と位置フィードバック値から速度指令値を作成する速度指令作成部11と速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部11Bを有している。公知の技術のため図示は省略したが、トルク指令作成部11Bからアンプ7の間には、通常、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部があり、電圧指令作成部により、第1のサーボモータ3がトルク指令値と一致する電流がモータに流れるようにアンプ7が制御される。
【0039】
第2の形態では、第1の形態の第1の実施例と同様に、第1の軸の位置指令値が加速度演算部14に送られ、第1の軸の加速度が演算されて指令加速度として出力される。第2の形態では、加速度演算部14で演算された第1の軸の加速度が、通信手段16に送られる。通信手段16は、第1の軸の加速度を指令加速度として第2の制御部42の位置補正量演算部15に送ると共に、加加速度演算部17に送る。第2の形態では、モータ制御装置10において軸2の処理を行う第2の制御部は、速度指令作成部12Aと速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部12Bとを有する。
【0040】
位置補正量演算部15では、第2の軸の位置補正量が演算され、この位置補正量が第2の軸の位置指令値に加算されて速度指令作成部12Aに入力される。速度指令作成部12Aは、
図12(b)に示した位置指令作成部19からの位置指令値が位置補正量演算部15からの位置補正量で補正された位置指令値と、第2のサーボモータ4からの位置フィードバック信号に基づいて第2の軸の速度指令値を演算し、演算した速度指令値をトルク指令作成部12Bに送る。
【0041】
一方、加速度演算部14で演算された第1の軸の加速度が入力される加加速度演算部17では、第1の軸の加速度の変化量である第1の軸の加加速度が演算される。第1の軸の加加速度は加加速度演算部17から速度補正量演算部18に入力され、第2の軸の速度補正量が演算される。速度補正量演算部18は、位置補正量演算部15と同様に、第2の軸の速度補正量を、加加速度演算部17からの指令加加速度に補正ゲインを乗算することによって演算する。
【0042】
第2の軸の速度補正量は、速度指令作成部12Aから出力された第2の軸の速度指令値に加算されて、トルク指令作成部12Bに入力される。トルク指令作成部12Bは、速度補正量で補正された速度指令値と、第2のサーボモータ4からの速度フィードバック信号に基づいて第2の軸のトルク指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、トルク指令作成部からアンプ8の間には、通常、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部があり、電圧指令作成部により、第2のサーボモータ4
にトルク指令値と一致する電流が流れるようにアンプ8が制御される。
【0043】
図11は、
図10に示したモータ制御装置10の制御手順を示すフローチャートである。本実施例では、まず、第1の制御部の加速度演算部が第1の軸(図には軸1と記載)の加速度を演算し(ステップ111)、通信手段が加速度演算部で演算された第1の軸の加速度を、第2の制御部の位置補正量演算部へ送信する(ステップ112)。通信手段のこの処理により、位置補正量演算部が通信手段から第1の軸の加速度を受信する(ステップ113)。第1の軸の加速度を受信した位置補正量演算部は、加速度に第1の補正ゲイン(図には補正ゲイン1と記載)を乗算して第2の軸の位置補正量を演算する(ステップ114)。
【0044】
位置補正量演算部で演算された第2の軸の補正量は、位置指令作成部から送られてくる第2の軸の位置指令値に加算され、第2の軸の位置指令値が補正される(ステップ115)。速度指令作成部は、補正された第2の軸の位置指令値と位置フィードバック値とから速度指令値を作成する。(ステップ116)。
【0045】
一方、加加速度演算部では、通信手段から送られた第1の軸の加速度に基づいて、第1の軸の加加速度を演算し(ステップ117)、演算した第1の軸の加加速度を速度補正量演算部に入力する。第1の軸の加加速度が入力された速度補正量演算部では、第1の軸の加加速度に第2の補正ゲイン(図には補正ゲイン2と記載)を乗算して第2の軸の速度補正量を演算する(ステップ118)。速度補正量演算部が演算した第2の軸の速度補正量は、速度指令作成部から出力される速度指令値に加算され、第2の軸の速度指令値が補正される(ステップ119)。
【0046】
このようにして、補正された第2の軸の速度指令値は、第2の軸のトルク指令作成部に入力される。そして、第2の軸のトルク指令作成部は、補正された第2の軸の速度指令値と第2のサーボモータ4からの速度フィードバック信号に基づいて第2の軸のトルク指令値を演算する。トルク指令値とモータの電流フィードバック値とが一致するように電圧指令作成部によりアンプへの指令が行われる。
【0047】
図10に示した第2の形態では、通信手段16は第1の形態の第1の実施例と同様に、第1の制御部41の加速度演算部14で演算された指令加速度を、第2の制御部42の位置補正量演算部15と加加速度演算部17に伝えている。しかし、加速度演算部14は、第1の制御部41にあるものを使用せず、第2の制御部42の加速度演算部14を使用しても良い。この場合は、第1の形態の第2の実施例のように、通信手段16の後段に加速度演算部14が位置することになる。
【0048】
図13は本発明の第3の形態のモータ制御装置50の基本構成を示す構成図であり、
図3に示した第1の形態のモータ制御装置10に対して、制御する軸が増えている。即ち、第3の形態のモータ制御装置50によって制御される工作機械60には、位置決めされる位置決め対象として3つの軸が備えられているとする。なお、説明を分かり易くするために、3つの軸を備えた工作機械60において、
図3に示した第1の形態のモータ制御装置10によって制御される2つの軸を備えた工作機械30と同じ構成部材には同じ符号を付して説明する。
【0049】
第3の形態のモータ制御装置50によって位置決めされる3つの軸を備えた工作機械60には、水平方向移動部31と垂直方向移動部32及び移動台40が備えられている。水平方向移動部31は移動台40の上で第1の軸1に螺合しており、第1の軸1が第1のサーボモータ3に駆動されて回転すると、移動台40の上を水平方向、例えばX方向に移動する。また、垂直方向移動部32は第2の軸2に螺合しており、第2の軸2が第2のサーボモータ4に駆動されて回転すると、水平方向移動部31の長手方向に沿って垂直方向に移動する。
【0050】
移動台40は第3の軸33が螺合しており、第3の軸33が第3のサーボモータ53に駆動されて回転すると、移動台40がX方向に対して直交するY方向に移動する。通常、第1の軸と第3の軸とは垂直である。第1、第2及び第3のサーボモータ3,4、53には、それぞれロータリーエンコーダ5,6、57が取り付けられている。
【0051】
モータ制御装置50の内部には、第1と第2及び第3のサーボモータ3,4、53の各個毎に位置指令値を生成する第1の制御部41、第2の制御部42及び第3の制御部43と、第1と第2の制御部41,42の間及び第2と第3の制御部42,43の間でデータを送受信する通信手段16が設けられている。通信手段16は第1と第2の制御部41,42の間及び第2と第3の制御部42,43の間の両方でデータを送信できる。また、通信手段16は、破線で示す経路のように、第1と第3の制御部41,43の間でデータを送信することもできる。
【0052】
図13に示したモータ制御装置50における第1の制御部41と第2の制御部42の構造及び動作は、
図12(a)、(b)で説明した構造と同じである。また、第3の制御部43の構造は
図14に示す通りであり、第3のサーボモータ駆動用の速度指令作成部13、位置補正量演算部15、加速度演算部14及び位置指令作成部19が設けられている。加速度演算部14は、軸3の加速度を演算する。また、位置補正量演算部15は、軸1又は軸2の加速度が入力された時に、軸3の位置を補正する位置補正量を演算する。位置指令作成部19は、軸3への位置指令値を生成する。
【0053】
本実施例では、速度指令作成部11、12、13と、第1、第2及び第3のサーボモータ3,4、53の間には、それぞれアンプ7,8、9が設けられている。アンプ7,8、9は、モータ制御装置50の内部に設けられていても良い。第1、第2及び第3のサーボモータ駆動用の速度指令作成部11、12、13の各個は、位置指令作成部19からの位置指令値に位置補正量演算部で演算した位置補正量を加算した位置指令値と、位置フィードバック値とから速度指令値を作成する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプの間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とを有する。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、サーボモータが速度指令値と一致する速度になるように制御される。なお、位置フィードバック値は、第1、第2及び第3のサーボモータ3,4,53にあるロータリーエンコーダ5,6、57から送られてくる。
【0054】
図13に示したモータ制御装置50における第1の制御部41と第2の制御部42との間の通信手段16によるデータの送受信は、例えば、
図12(a)、(b)に示す構成で、
図4で説明したように行うことができるので、ここではその説明を省略する。一方、第2の制御部42と第3の制御部43とのデータの送信は、例えば、
図4に示した構成と同様の、
図15に示す構成によって行うことができる。
【0055】
図15に示す構成では、第3の軸33の加速度が入力された位置補正量演算部15において、第3の軸33の加速度に補正ゲインを乗じて位置補正量を演算し、これを第2の軸2の位置指令値に加えて補正する。また、
図13に示したモータ制御装置50では、通信手段16は
図15に示す加速度演算部14からの信号を位置補正量演算部15に伝えているが、通信手段16の位置は、必ずしも加速度演算部14と位置補正量演算部15の間でなくても良い。加速度演算部14、位置補正量演算部15及び通信手段16の配置を異ならせた実施例、及び加速度演算部14による加速度の演算方法異ならせた幾つかの実施例については既に説明したので、ここではその説明を省略し、
図15の構成の動作についてのみ説明する。
【0056】
図15は、通信手段16が送信するデータが、指令加速度の場合の実施例の構成を示すものであり、
図13に示したモータ制御装置50の第2の制御部42と第3の制御部43の間の処理について示している。本実施例では、モータ制御装置50の内部にある、第2の制御部42で軸2の処理が行われ、第3の制御部43で軸33の処理が行われる。なお、
図14に示したように、第2の制御部42と第3の制御部43には、それぞれ位置指令作成部19、加速度演算部14及び位置補正量演算部15があるが、動作していない部材の図示は省略してある。
【0057】
軸3の処理は、第3の制御部43にある第3のサーボモータ駆動用の速度指令作成部13と加速度演算部14によって行われる。第3のサーボモータ駆動用の速度指令作成部13は、
図14に示した位置指令作成部19からの位置指令値と
位置フィードバック信号に基づいて第3の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプ9の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とがある。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第3のサーボモータ53が速度指令値と一致する速度になるように制御される。位置フィードバック信号は、ロータリーエンコーダ57から送られてくる。また、加速度演算部14は、位置指令作成部19からの第3の軸33の位置指令値に基づいて、第3の軸の加速度を演算し、これを指令加速度として通信手段16に出力する。そして、通信手段16は、加速度演算部14から入力された指令加速度を第2の制御部42にある位置補正量演算部15に送信する。
【0058】
第2の制御部42では、通信手段16から入力された指令加速度に基づいて軸2の処理が行われる。軸2の処理は、第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12と位置補正量演算部15によって行われる。位置補正量演算部15は、第2の軸2の位置補正量を演算する。
図13に示したように、第3の軸33が駆動されて、
移動台40が第3の軸33に沿って
水平方向に移動すると、
垂直方向移動部32が、
移動台40の水平方向への移動における加速度の影響を受ける。第2の制御部42にある位置補正量演算部15は、加速度演算部14から通信手段16を通じて入力された指令加速度により、第2の軸2の位置補正量を演算する。第2の軸2の位置補正量は、位置補正量演算部15が指令加速度に補正ゲインを乗算することによって演算する。補正ゲインは、係数であり、定数である。補正ゲインを定数とすることにより、位置補正量(=補正ゲイン×加速度)は加速度に比例する。
【0059】
第2の制御部42における軸2の処理では、位置補正量演算部15によって演算された位置補正量が、位置指令作成部19からの位置指令値に加算されて
位置指令値が補正される。補正された位置指令値は、第2のサーボモータ駆動用の速度指令作成部12に入力される。速度指令作成部12は、位置補正量で補正された位置指令値に基づいて第2の軸の速度指令値を演算する。公知の技術のため図示は省略したが、速度指令作成部からアンプ8の間には、通常、速度指令値と速度フィードバック値とからトルク指令値を作成するトルク指令作成部と、トルク指令値と電流フィードバック値とからアンプへ出力する電圧指令を作成する電圧指令作成部とがある。トルク指令作成部と電圧指令作成部とにより、第2のサーボモータ4が速度指令値と一致する速度になるように制御される。
【0060】
以上説明した第3の形態のモータ制御装置50では、通信手段16を用いた実線で示す通信経路における、第1の制御部41と第2の制御部42の間の軸間干渉の補正処理と、第2の制御部42と第3の制御部43の間の軸間干渉の補正処理について説明した。一方、通信手段16は、
図13に破線で示す経路のように、第1と第3の制御部41,43の間でデータを送信することもできるので、説明は省略するが、第3の形態のモータ制御装置50では、第1の制御部41と第3の制御部43の間の軸間干渉の補正処理も可能である。