【実施例】
【0057】
実施例1
(A)方法
(1)細胞株
HER2陽性ヒト乳癌細胞株SKBR3とHCC1569はATCCより購入した。SKBR3はPan-cadherin陰性であり、E、N- cadherin陰性であることを確認した。一方HCC1569はPan-cadherin陽性であり、E、N- cadherinともに陽性であることを確認した。SKBR3に対しては、DMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)(Sigma Aldrich,MO,USA)にウシ胎仔血清(FBS,Invitrogen corporation,USA)、penicirinとstreptomycinを加えて培養した。HCC1569に対しては、RPMI-1640 medium(Sigma Aldrich, MO,USA)にブタ胎仔血清、penicirinとstreptomycinを加えて培養に用いた。
【0058】
(2)siRNA
CDH1とCDH2siRNAはSilencer Select Pre-designed siRNA(Ambion Inc.USA)を購入し使用した。コントロールとしてSilencer Select Negative control#1 siRNA(Ambion)を用いた。siRNAの最終濃度は5nMとした。合成siRNAの細胞導入には、DamaFECT Transfection Reagents2(Darmacon Inc.USA)を用いた。
【0059】
乳癌細胞株HCC1569について、6ウェルプレートを使用し、1ウェルあたり5×10
5個の細胞を播き、37℃、5%CO
2インキュベータで一晩培養した。シングルノックダウンする分子については、2μMの各siRNA2μlを、198μlのOPTI-MEM(Invitrogen Inc.USA)に加えたものと、reagent4μlと196μlのOPTI-MEMを加えたものを混合し、室温で20分間インキュベートすることによって、コンプレックスを形成させた。ダブルノックダウンする分子については、2μMの各siRNA2μlを、196μlのOPTI-MEMに加えたものと、reagent8μlと192μlのOPTI-MEMを加えシングルノックダウンするものと同様に処理した。前日に培養していた6ウェルプレートの中の培養液を吸引し、OPTI-MEM 1600μlを加えた。その後コンプレックスを200μlずつ各ウェルに加え、37℃、5%CO
2インキュベータで培養した。48時間後に細胞からmRNAを抽出し、Quantitative real time RT-PCRによりRNAiの効果を解析した。
【0060】
RNA抽出はTRizol Reagent(Invitrogen)を用いた。6ウェルプレートをPBSで洗い、Trizolを1ml加え、セルスクレーパーで掻き取り1.5mlチューブへ移した。次に1mlのTrizolに0.2mlのクロロホルムを加え、15000rpmで5分遠心した。3層に分離した中の一番上層を新しいチューブへ移しイソプロパノール/0.5ml/mlを加え15000rpmで5分遠心した。上清を除き、ペレットを75%エタノールで洗い、室温で乾燥させた。Rnase-free water 10μlを加え、室温で30分静置しペレットを溶かした。その後、RNAの発現をquantitative real time RT-PCR法にて測定した。
【0061】
逆転写反応には、PrimeScript RT reagent Kit(TaKaRa)を用いた。1μg total RNAにPrimeScript Buffer(for Real Time)2μl、PrimeScript RT Enzyme MixI 0.5μl、Random 6 mers 0.5μl、Rnase Free dH20 6μlを加え、37℃、15分で逆転写反応を行い、cDNAを得た。
【0062】
検量線を作成するために用いる既知の濃度やコピー数を持つサンプルを作製するためにCDH1、CDH2、GAPDHのプライマーを用い、定常状態で培養したHCC1569をテンプレートにして、PCR産物を得た。検量線を作成するために、5種類の異なる希釈率のスタンダード・サンプルを用意した。GAPDHを内因性リファレンス遺伝子とした。
【0063】
Quantitative real time RT-PCRは、Smart Cycler II System(TaKaRa,Japan)を使用した。1反応チューブあたり、SYBR Green I 12.5μl,10μM primer(forwardおよびreverse)1μl、逆転写反応で得た各cDNA2μl,蒸留水8.5μlを混ぜたものを加えた。
【0064】
PCR産物の定量は、蛍光色素であるSYBR Greenの蛍光量によってなされる。SYBR Greenの蛍光量によってPCR産物の増幅曲線が描かれるが、その増幅曲線が閾値と交差するサイクル数をThreshhold cycle(Cγ)として、検量線を用いることで、ターゲットRNA量が推測できる。ターゲット遺伝子のCγ値は、内因性リファレンス遺伝子(GAPDH)との比較により標準化した。
【0065】
(3)トラスツズマブと抗体
トラスツズマブは中外製薬より購入した。コントロール抗体としてmouse IgGκ isotype(BioLegend, USA)を購入し、使用した。NK cell上のKLRG1レセプターの認識にはRabbit anti-human KLRG1 antibody(Santa Cruz Biotechnology, USA)を使用した。
【0066】
(4) 末梢血単核球の処理
健常人より末梢血を採取し、フィコール・ハイパックを使用した比重遠心法(バキュテイナ採血管(BD,USA)を用い、3300rpm、30分間遠心を行う)にて単核球層を回収した。回収した末梢血単核球をRabbit anti-human KLRG1 antibodyとGoat Anti-rabbit IgG MicroBeads(MiltenyiBiotec GmbH, Gladbach, Germany)にて標識し、MACS MSカラムにてKLRG1発現細胞を除去した。
【0067】
(5)末梢血単核球による細胞傷害性の検討
HER2陽性乳癌細胞株SKBR3(Pan-cadherin negative)、およびHCC1569(Pan-cadherin positive: E-cadherin positive, N-cadherin positive)の2種類の細胞を用い以下の検討を行った。
【0068】
(5−1) 各細胞について、35mm dishに1×10
5ずつ腫瘍細胞(T)を播き、24時間後にトラスツズマブおよび健常人から採取した末梢血単核球(E)を加え、その24時間後に生腫瘍細胞数を計測した。なお、トラスツズマブは0、0.021、0.105mg/mlと加える濃度を変え検討した。また末梢血単核球は、T:Eを1:0、1:1、1:20とし検討を行った。
(5−2) HER2陽性乳癌細胞株HCC1569(Pan-cadherin positive: E-cadherin positive, N-cadherin positive)について、E-cadherin(CDH1)または/かつN-cadherin(CDH2)をノックダウンし、(5−1)と同様の検討を行った。
(5−3) KLRG1発現の有無により末梢血単核球をソーティングし、KLRG1陽性細胞を除去した末梢血単核球を用い、(5−1)と同様の検討を行った。
【0069】
(6)ADCCアッセイ
末梢血単核球によるADCCアッセイは、
51Cr放出試験によって検討した。エフェクター細胞(E)は健常人より採取した末梢血単核球、標的細胞(T)はSKBR3、HCC1569、siRNA CDH1あるいはsiRNA CDH2を導入しE-cadherinあるいはN-cadherinをノックダウンしたHCC1569細胞株である。1×10
6個の標的細胞を50μlのNa
251CrO
4(Perkin Elmer, Japan)と37℃、5%CO
2インキュベータ中で1.5時間共培養し、標的細胞を
51Crクロム酸で標識した。標識した標的細胞5×10
3個を培養液50μlに懸濁し96ウェルU底プレートに播き、単核球をT:Eが1:0、1:1、1:20、1:50になるように各ウェルに加えた。さらにトラスツズマブ21μg/ml、あるいはコントロールとしてマウスIgG1抗体21μg/ml、培養液のみをそれぞれ100μlずつ各ウェルに加え、37℃、5%CO
2インキュベータ中で4時間共培養した。培養後1500rpmで5分間遠心し、50μlの上清を採取し放射活性をγカウンターにて測定した。次の式にて%特異的
51Cr放出値を算出し、ADCC活性とした。
【0070】
ADCC活性=100×(エフェクター細胞を加えたときの
51Cr遊離−エフェクター細胞を加えない時の
51Cr自然遊離)/(エフェクター細胞は加えずTriton Xを加えた時に生じる最大
51Cr遊離−エフェクター細胞を加えない時の
51Cr自然遊離)。
【0071】
(B)結果
(1)トラスツズマブと末梢血単核球による乳癌細胞SKBR3に対する細胞傷害性(
図1)
トラスツズマブ抵抗例を有効例とするため、NK細胞によるADCC活性の確認と抑制解除の方法について検討を行った。その結果、SKBR3(Pan-cadherin negative)ではトラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞の生存率に変化は認めなかった。しかし、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率の低下を認めた。腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合および1倍量の末梢血単核球を共培養した場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率は低下を示した。トラスツズマブ濃度を0.105mg/mlにした場合でも、腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合および1倍量の末梢血単核球を共培養した場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率は低下を示した。腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、統計学的有意差は認めないが、腫瘍細胞生存率は低下する傾向を認めた。この結果より、カドヘリンの発現を伴わないSKBR3ではトラスツズマブの濃度に関わらず、末梢血単核球の数依存的に腫瘍細胞生存率は低下することが示された(
図1)。
【0072】
(2)トラスツズマブと末梢血単核球による乳癌細胞HCC1569に対する細胞傷害性(
図2)
HCC1569(Pan-cadherin positive: E-cadherin positive, N-cadherin positive)では、トラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105 mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。さらに、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合と同様に、腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合も腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。この傾向はトラスツズマブ濃度を0.105mg/mlとした場合も同様であり、腫瘍細胞量の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。この結果よりカドヘリン発現を伴うHCC1569では、トラスツズマブの濃度および末梢血単核球の数に関わりなく腫瘍細胞生存率の変化を認めないことが明らかになった(
図2)。
【0073】
(3)トラスツズマブと末梢血単核球による乳癌細胞HCC1569の細胞傷害性におけるE-カドヘリン、N-カドヘリン両者抑制の効果(
図3)
E-cadherin(CDH1)およびN-cadherin(CDH2)をダブルノックダウンしたHCC1569においては、トラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても生腫瘍細胞生存率について統計学的有意差は認めなかった。しかし、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlおよび0.105mg/mlとした場合、腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率の低下を認めた。腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、統計学的有意差はないが、腫瘍細胞生存率は低下する傾向を認めた(
図3)。
【0074】
これらの腫瘍細胞の検討により、Pan-cadherin negativeの腫瘍細胞ではトラスツズマブの濃度に依らず、末梢血単核球の数依存的に腫瘍細胞生存率は低下することが明らかになった。また、Pan-cadherin positiveの腫瘍細胞においては、トラスツズマブの濃度に依らず、末梢血単核球の数依存的に生腫瘍細胞数が減少する傾向を認めなかった。
【0075】
(4)トラスツズマブとKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球による乳癌細胞HCC1569の細胞傷害性(
図4)
KLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を用いて同様の実験を行った。
何も処理を行わないカドヘリンの発現があるHCC1569ではトラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞の生存率に変化は認めなかった。しかし、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率の低下を認めた。腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率は低下を示した。トラスツズマブ濃度を0.105mg/mlにした場合、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率の低下を認め、腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合および1倍量の末梢血単核球を共培養した場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率は低下を示した(
図4)。
【0076】
(5)トラスツズマブとKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球による乳癌細胞SKBR3の細胞傷害性(
図5)
カドヘリン発現を伴わないSKBR3ではトラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化は認めなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞の生存率に変化は認めなかった。しかし、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、生腫瘍細胞数は減少し、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率は低下を示した。腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、統計学的有意差は認めないが、腫瘍細胞の生存率は低下する傾向を認めた。トラスツズマブ濃度を0.105mg/mlにした場合でも、腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、有意に腫瘍細胞生存率の低下を認め、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、統計学的有意差は認めないが、腫瘍細胞の生存率は低下する傾向を示した(
図5)。
【0077】
(6)乳癌細胞SKBR3に対するADCC活性における、末梢血単核球でのKLRG1発現の有無の効果(
図6)、及び乳癌細胞HCC1569に対するADCC活性における、末梢血単核球でのKLRG1発現の有無の効果(
図7)
さらに確認のために行った4h-
51Cr放出試験においても、SKBR3はKLRG1発現細胞の有無に関わらず、末梢血単核球の数に依存して細胞傷害活性を認めた(
図6)。未処理のHCC1569は未処理の末梢血単核球を用いて検討した場合、末梢血単核球数に関わらずADCC活性は認めなかった。しかし、未処理のHCC1569では、KLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を用いた検討でトラスツズマブによるADCC活性を認め、これは末梢血単核球の数に依存するものであった(
図7)。
【0078】
(C)総括
HER2陽性ヒト乳癌細胞株のうちE-cadherinあるいはN-cadherin陽性細胞株はトラスツズマブに対し耐性を示す。しかし、E、N-cadherinの発現を減弱させることにより、これらの細胞株のトラスツズマブに対する耐性は減弱した。トラスツズマブの作用機序のうち、カドヘリンが関与する点を検討すると、トラスツズマブの主たる作用機序の1つであるADCC活性に関与していることが確認でき、トラスツズマブに対する耐性に関して免疫学的機構が強く関与していることが推測された。さらに、NK細胞中のE、N-cadherinをリガンドとする抑制性レセプターであるKLRG1を発現するNK細胞を除去することにより、トラスツズマブに対する耐性は消失することが示された。
【0079】
実施例2
<活性化不織布の作成>
ガラス製のフラスコにN−ヒドロキシメチル2−ヨードアセトアミド0.6g、濃硫酸5.7ml及びニトロベンゼン7.2mlを加えて常温にて撹拌溶解し、更にパラホルムアルデヒド0.036gを加え撹拌した。これにポリプロピレンからなる不織布(平均繊維直径3.8μm、目付80g/m
2、厚み約0.55mm)0.3gを入れ常温にて24時間遮光反応した。24時間反応後不織布を取り出し、エタノール及び純水にて洗浄し、これを真空乾燥して活性化不織布を得た。
【0080】
この活性化不織布を直径0.68cmの円に切断したもの4枚を、カルシウム、マグネシウムを含まないリン酸緩衝液(以下、「PBS(−)」と略す)にアフィニティーカラムで精製したラビット抗ヒトKLRG1ポリクローナル抗体(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY,INC.以下、「抗KLRG1抗体」と略す)を0.4ml(抗KLRG1抗体16μg/0.4ml)に常温で1時間浸した後さらに冷蔵(2〜8℃)で約24hr浸漬し、抗KLRG1抗体を固定した。この抗KLRG1抗体を固定した活性化不織布を入口と出口を有する容積約1mlの容器に積層し、容器の入口側からPBS(−)3mlで洗浄した。次に0.2%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート/PBS(−)溶液(以下、「Tween20溶液」と略す)0.4mlを加え常温で2.5時間浸漬した後、PBS(−)3mlで洗浄し、KLRG1陽性細胞吸着材を得た。
【0081】
上記KLRG1陽性細胞吸着材(平均繊維直径3.8μm、目付80g/m
2、厚み約0.5mm)4枚と、充填液として10mMアスコルビン酸PBS(−)溶液(アスコルビン酸の分子量176)を入口と出口を有する容積約1mlの容器に充填し、KLRG1陽性細胞吸着器を作製した。
【0082】
<KLRG1陽性細胞の吸着性能評価>
ACD−A(acid citrate dextrose solution−A)加ヒト新鮮血液2.0ml(血液:ACD−A=8:1)をシリンジポンプにてKLRG1陽性細胞吸着器の入口より流速1.0ml/minで送液し、カラム出口より処理後の血液を回収した。カラムへ流す前のACD−A加ヒト新鮮血液とカラム出口から回収した血液をそれぞれPBS(−)で1:1に希釈したものをFicoll−Paque PLUS(GE Healthcare社製)の上に重層し、400×gで30分間遠心して単核球浮遊液を採取した。この単核球浮遊液中のNK細胞におけるKLRG1陽性細胞を、直接または間接的に蛍光標識した抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD56抗体、抗ヒトKLRG1抗体を用いて、FACSCalibur
TM(Becton Dickinson社製)で測定した。その結果、CD3
-CD56
+であるNK細胞中のKLRG1陽性細胞(以下「KLRG1
+NK細胞」と略す)の吸着率は93.2%であった。またこのときのCD3
-CD56
+であるNK細胞中のKLRG1陰性細胞(以下「KLRG1
-NK細胞」と略す)の吸着率は19.1%、リンパ球の吸着率は16.9%、血小板の吸着率は15.8%であり、KLRG1
+NK細胞を特異的に吸着できた(表1)。
【0083】
実施例3
KLRG1陽性細胞吸着材を平均繊維直径が16.9μm、目付80g/m
2、厚み約0.8mmの不織布を用いて作製し、該不織布12枚を充填してKLRG1陽性細胞吸着器を作製した。次に、ACD−A加ヒト新鮮血液2.0ml(血液:ACD−A=8:1)をシリンジポンプにてKLRG1陽性細胞吸着器の入口より流速0.2ml/minで送液した以外は、実施例2と同様にKLRG1陽性細胞の吸着性能評価を行った。その結果、KLRG1
+NK細胞の吸着率は83.9%であった。またこのときのKLRG1
-NK細胞の吸着率は10.5%、リンパ球の吸着率は5.7%、血小板の吸着率は7.7%であり、KLRG1
+NK細胞を特異的に吸着できた(表1)。
【0084】
実施例4
ヒトKLRG1に対して交差反応する抗マウスKLRG1モノクローナル抗体を用いてKLRG1陽性細胞吸着材を作製した以外は、実施例2と同様にKLRG1陽性細胞吸着器を作製した。次に、ACD−A加ヒト新鮮血液2.0ml(血液:ACD−A=8:1)をシリンジポンプにてKLRG1陽性細胞吸着器の入口より流速0.2ml/minで送液した以外は、実施例2と同様にKLRG1陽性細胞の吸着性能評価を行った。その結果、KLRG1
+NK細胞の吸着率は90.3%であった。またこのときのKLRG1
-NK細胞の吸着率は0.0%、リンパ球の吸着率は27.8%、血小板の吸着率は0.0%であり、KLRG1
+NK細胞を特異的に吸着できた(表1)。
【0085】
実施例5
ラビット抗ヒトKLRG1ポリクローナル抗体の代わりにヒトE−カドヘリン(Cat.No:648−EC、R&D Systems,Inc.)を固定した活性化不織布を用いた以外は、実施例2と同様にKLRG1陽性細胞吸着器を作製した。次に、ACD−A加ヒト新鮮血液2.0ml(血液:ACD−A=8:1)をシリンジポンプにてKLRG1陽性細胞吸着器の入口より流速0.2ml/minで送液し、実施例2と同様にKLRG1陽性細胞の吸着性能評価を行った。その結果、KLRG1
+NK細胞の吸着率は32.7%であった。またこのときのKLRG1
-NK細胞の吸着率は8.8%、リンパ球の吸着率は22.2%、血小板の吸着率は26.4%であり、KLRG1
+NK細胞を特異的に吸着できた(表1)。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例6
(A)方法
(1)細胞株
HER2陽性ヒト胃癌細胞株MKN-7はRIKEN CELL BANKから提供を受けた。HER2陽性ヒト胃癌細胞株NCI-N87はATCCより購入した。MKN-7はPan-cadherin陰性であり、E- cadherin陰性であることを確認した。一方NCI-N87はPan-cadherin陽性であり、E- cadherin陽性であることを確認した。MKN-7およびNCI-N87に対しては、RPMI-1640 medium(Sigma Aldrich, MO,USA)にウシ胎仔血清、penicirinとstreptomycinを加えて培養した。その他は、実施例1と同様の方法で行った。
【0088】
(B)結果
(1)トラスツズマブと、末梢血単核球またはKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球による胃癌細胞MKN-7に対する細胞傷害性(
図8)
MKN-7(Pan-cadherin negative)ではトラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しないといずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化はなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞の生存率に変化はなかった。しかし、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、統計学的有意差はないが、腫瘍細胞生存率は低下する傾向を認めた。腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合および1倍量の末梢血単核球を共培養した場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。トラスツズマブ濃度を0.105mg/mlにした場合、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養すると、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合及び1倍量の末梢血単核球を共培養した場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。この結果より、カドヘリンの発現を伴わないMKN-7ではトラスツズマブの濃度に関わらず、末梢血単核球の数依存的に腫瘍細胞生存率は低下することが示された(
図8A)。
【0089】
KLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を用いて同様の実験を行った。
トラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化はなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞の生存率に変化はなかった。しかし、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の20倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合、生腫瘍細胞数は減少し、末梢血単核球を共培養しなかった場合、及び腫瘍細胞の1倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。腫瘍細胞の1倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、統計学的有意差はないが、腫瘍細胞の生存率が低下する傾向を認めた。トラスツズマブ濃度を0.105mg/mlにした場合、腫瘍細胞の1倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養すると、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。腫瘍細胞の20倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合及び1倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。この結果より、カドヘリンの発現を伴わないMKN-7ではトラスツズマブの濃度に関わらず、KLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球の数依存的に腫瘍細胞生存率は低下することが示された(
図8B)。
【0090】
(2)トラスツズマブと、末梢血単核球またはKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球による胃癌細胞NCI-N87に対する細胞傷害性(
図9)
NCI-N87(Pan-cadherin positive: E-cadherin positive)では、トラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105 mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化はなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞生存率に変化はなかった。さらに、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の1倍量の末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合と同様に、腫瘍細胞生存率に変化はなかった。腫瘍細胞の20倍量の末梢血単核球を共培養した場合も腫瘍細胞生存率に変化はなかった。この傾向はトラスツズマブ濃度を0.105mg/mlとした場合も同様であり、腫瘍細胞量の1倍あるいは20倍量の末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞生存率に変化はなかった。この結果よりカドヘリン発現を伴うNCI-N87では、トラスツズマブの濃度および末梢血単核球の数に関わりなく腫瘍細胞生存率は変化をしないことが明らかになった(
図9A)。
【0091】
KLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を用いて同様の実験を行った。
トラスツズマブの濃度を0、0.021mg/ml、0.105mg/mlと変えた場合、末梢血単核球を共培養しない場合はいずれの濃度でも腫瘍細胞生存率に変化はなかった。また、トラスツズマブ濃度を0とした場合、腫瘍細胞の1倍あるいは20倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養しても腫瘍細胞の生存率に変化はなかった。しかし、トラスツズマブ濃度を0.021mg/mlとし、腫瘍細胞の1倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、統計学的有意差はないが、腫瘍細胞の生存率が低下する傾向を認めた。腫瘍細胞の20倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。トラスツズマブ濃度を0.105mg/mlにした場合、腫瘍細胞の1倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養すると、末梢血単核球を共培養しなかった場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した。腫瘍細胞の20倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合、さらに腫瘍細胞生存率は低下し、末梢血単核球を共培養しなかった場合および1倍量のKLRG1発現細胞を除去した末梢血単核球を共培養した場合に対し、腫瘍細胞生存率は有意に低下した(
図9B)。
【0092】
(C)総括
HER2陽性ヒト乳癌細胞株と同様に、HER2陽性ヒト胃癌細胞株においてもE-cadherin陽性細胞株がトラスツズマブに対し耐性を示し、E-cadherin陰性細胞株がトラスツズマブに対し感受性を示すことが確認された。トラスツヅマブの感受性発現には末梢血単核球の存在が必須であったことから、ADCC活性の関与が推定された。E-cadherinをリガンドとする抑制性レセプターであるKLRG1を発現するNK細胞を末梢血単核球から除去することにより、E-cadherin陽性細胞株のトラスツズマブに対する耐性は消失することが示された。
【0093】
実施例7
(A)方法
(1)マウス
6週齢の雌のNOD/SCID(non-obese diabetic/ severe combined immune deficient)マウスは、日本クレア株式会社から購入した。全ての動物は、認定されたプロトコールに基づく施設のガイドラインにしたがって維持され、取り扱われた。
【0094】
(2)トラスツズマブと末梢血単核球の投与
0.2mlのPBSに5.0 x 10
6個のHER2陽性Pan-cadherin陽性ヒト乳癌細胞株HCC1569を懸濁し、NOD/SCID マウスの皮下に接種した。この担癌マウスを次の5群に分けた。1)無処置群(コントロール群)、2)KLRG1陽性細胞を減じたヒト末梢血単核球投与群、3)トラスツズマブ投与群、4)ヒト末梢血単核球とトラスツズマブの両者を投与した群、5)KLRG1陽性細胞を減じたヒト末梢血単核球とトラスツズマブの両者を投与した群。トラスツズマブは、マウスの体重1g当たり0.005mg腹腔内投与され、ヒト末梢血単核球は、マウス1匹当たり5.0 x 10
6個腹腔内投与された。トラスツズマブとヒト末梢血単核球の投与は、HCC1569の接種後4週間から開始され、週1回、4週間継続された。
【0095】
(3)腫瘍体積の測定
腫瘍体積は、週に1度、caliperを用いて、腫瘍の長さと幅と厚さを測定し、次式にしたがって算出された。
腫瘍体積(mm
3)=(長さ)x(幅)x(厚さ)
【0096】
(B)結果
HCC1569の接種後28日(4週間)と56日(8週間)の腫瘍体積のデータを
図10に示した。HCC1569の接種後28日と接種後56日のデータを比較すると、無処置群、KLRG1陽性細胞を減じたヒト末梢血単核球投与群、トラスツズマブ投与群およびヒト末梢血単核球とトラスツズマブの両者を投与した群では、いずれも腫瘍体積は増加した。KLRG1陽性細胞を減じたヒト末梢血単核球とトラスツズマブの両者を投与した群では、腫瘍体積の増加は認めなかった。
【0097】
実施例8
(A)方法
(1)マウスKLRG1陽性細胞吸着器
実施例2の活性化不織布を直径0.48cmの円に切断したもの6枚と抗マウスKLRG1モノクローナル抗体(eBioscience)を用い、実施例2の方法によりマウスKLRG1陽性細胞吸着材を作製した。更に該マウスKLRG1陽性細胞吸着材を実施例2の方法により入口と出口を有する容積約0.05mlの容器に充填し、マウスKLRG1陽性細胞吸着器を作製した。
【0098】
(2)マウスKLRG1陽性細胞の吸着性能評価
ACD−A(acid citrate dextrose solution-A; テルモ(株))加マウス新鮮血液3.0ml(血液:ACD−A=8:1)をシリンジポンプにて該マウスKLRG1陽性細胞吸着器の入口より流速0.064ml/minで送液し、該マウスKLRG1陽性細胞吸着器の出口より処理後の血液を回収した。該マウスKLRG1陽性細胞吸着器により処理する前の血液および処理後の血液を、蛍光標識された抗マウスCD3抗体、抗マウスCD49b抗体、抗マウスKLRG1抗体により染色し、CD3陰性・CD49b陽性の細胞をNK細胞としてフローサイトメーター(Cytomics FC 500、Beckman Coulter)により解析した。
【0099】
(B)結果
CD3陰性・CD49b陽性・KLRG1陽性であるマウスKLRG1陽性NK細胞の吸着率は98.4%であった。またCD3陰性・CD49b陽性・KLRG1陰性であるマウスKLRG1陰性NK細胞の吸着率は45.4%、マウスリンパ球の吸着率は26.3%、マウス血小板の吸着率は−2.5%であり、マウス血からマウスKLRG1陽性細胞を特異的に吸着することができた(表2)。
【0100】
【表2】
【0101】
実施例9
(A)方法
(1)マウス体外循環用機器の設計
マウス体外循環用の回路は、内径0.5mm・外径4mmのシリコンチューブと外径0.6mm・内径0.3mmのウレタンチューブ2本、およびミニフィッティング(VPY106、アイシス)を組み合わせて作製した。該回路の内容量は0.09mlとした。体外循環の動力としてはペリスタポンプ(SJ−1211H型、アトー)を使用し、流速は0.064ml/minとした。体外循環中、該回路中のミニフィッティングよりACD−Aをマイクロシリンジポンプにて0.008ml/minで持続投与することとした。実施例8の該マウスKLRG1陽性細胞吸着器を該回路に接続後、ACD−Aと生理食塩水を11:14に混合した溶液を送液し、15分間のプライミングするものとした。
【0102】
(2)マウス
ヌードマウス(BALB/c−nu/nu、6週齢、雌、日本SLC)の皮下に0.2mlのPBSに懸濁した5.0×10
6個のHER2陽性Pan−cadherin陽性ヒト乳癌細胞株HCC1569を接種した。4週間後、この担癌マウスを次の3群に分け、各処理を実施した。a)無処置群(コントロール群)、b)トラスツズマブ投与群、c)全血液量の2倍量を体外循環により処理し、トラスツズマブを投与する群、各群n=6とした。体外循環およびトラスツズマブ投与は週当たり1回、3週間実施し、トラスツズマブはマウスの体重1g当たり0.005mg腹腔内投与した。全てのマウスは、認定されたプロトコールに基づく施設のガイドラインに従って維持され、取り扱われた。
【0103】
(3)マウス体外循環実施方法
該担癌マウスにイソフルランにより麻酔をかけ、皮膚を切開して両頸静脈を露出した。この両頸静脈にサーフローF&F(テルモ)を留置して脱血および返血口とし、該回路と接続した。実験動物の血液学(関正利ら、ライフサイエンス社、1981年)を参考に、各マウスの全血液量を算出し、全血液量の2倍を体外循環にて処理した。体外循環後は、生理食塩水を2分30秒送液して該マウスKLRG1陽性細胞吸着器および該回路内の血液をマウスへ返血した。また、傷口は止血の後、縫合した。
【0104】
(4)腫瘍体積の測定
腫瘍体積の測定は実施例7(3)と同様に実施した。
【0105】
(B)結果
各群処理前および処理1〜3週間後の腫瘍体積と、処理前に対する処理後の腫瘍体積の増加率のn=6(3週経過後のcのみn=5)の平均値を表3に示した。
【0106】
【表3】
【0107】
無処理群(表3a)では、処理前の腫瘍体積に対し、1週経過後で185%、2週経過後で307%、3週経過後で615%に増加した。トラスツズマブ投与群(表3b)でも同様に腫瘍体積は増加傾向を示し、1週経過後で145%、2週経過後で306%、3週経過後で655%に増加した。
【0108】
一方、全血液量の2倍量を体外循環により処理し、トラスツズマブを投与した群(表3c)では、1週経過後で83%、2週経過後で141%、3週経過後で177%であった。全血液量の2倍量を体外循環により処理し、トラスツズマブを投与した群(表3c)は、1週経過後に腫瘍体積の減少傾向を示し、また3週経過後において、無処理群(表3a)およびトラスツズマブ投与群(表3b)に対して有意に腫瘍増加を抑制した(それぞれp=0.018、p=0.038)。
【0109】
以上の実験結果から明らかなように、体外循環処理と抗体医薬の併用により、KLRG1に対するリガンドが陽性である上皮性癌の生体に対して明らかに有意な抗癌作用が認められた。