特許第5919360号(P5919360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5919360自動鋳造装置における半凝固スラリ投入機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5919360
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】自動鋳造装置における半凝固スラリ投入機構
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/00 20060101AFI20160428BHJP
   B22D 41/04 20060101ALI20160428BHJP
   B22D 17/30 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   B22D17/00 350
   B22D41/04
   !B22D17/30 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-233193(P2014-233193)
(22)【出願日】2014年11月18日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】300081419
【氏名又は名称】有限会社ティミス
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】池田 孝史
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−229633(JP,A)
【文献】 特開平10−296418(JP,A)
【文献】 特開平10−323743(JP,A)
【文献】 特開2010−064109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出スリーブ内をプランジャがスライド移動することで供給される半凝固スラリを、互いに突合わされる固定金型、可動金型それぞれの内部形状に応じた形態に型締め成形するダイカストマシンと、該ダイカストマシンの固定金型側に配置されている射出スリーブ内に、半凝固スラリを投入させる移動機構部とを備えた自動鋳造装置における半凝固スラリ投入機構であって、前記移動機構部によって射出スリーブ内に投入される半凝固スラリは、当該射出スリーブの投入口に対して斜向状となって連通配置された円筒状の投入シュータを通して当該射出スリーブ内に供給されるようにしてあって、投入シュータは、射出スリーブ上方に配した不動の支点の廻りに起伏方向に揺動自在と成したL字状のフラップを備えた跳ね上げ退避機構部における当該フラップのL字一端側外面に傾斜状に支持されていると共に、射出スリーブの投入口から上方側へ退避可能となるようにしてあり,また、投入シュータの先端開口部は円筒軸方向に対して約30°で傾いた角度に切断されていて、射出スリーブ周面の投入口の開口法線方向に対して60°の斜向角度となって連通されるようにしてあることを特徴とする自動鋳造装置の半凝固スラリ投入機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルミニウム合金等による鋳造製品を製造するダイカストマシンを使った自動鋳造成形において、例えば電磁撹拌装置によって低粘性半凝固組織状と成した半凝固スラリをダイカストマシンの射出スリーブ内にスムーズに投入できるようにした自動鋳造装置における半凝固スラリ投入機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動鋳造装置におけるダイカストマシンは、固定ダイプレートに設けた固定金型と、可動ダイプレートに設けた可動金型とを備えることで成り、これらの固定金型と可動金型とを突合わせ、その間に供給される溶湯または溶湯を低粘性の半凝固組織状となした半凝固スラリ等によって両金型内の形状に応じた形態に成形して所定の鋳造品となす。また、固定金型側には射出スリーブが設けられ、該射出スリーブ内で、先端に射出チップを備えたプランジャが前後にスライドすることで、突合わされた両金型内に上記した溶湯または半凝固スラリ等が射出されるものとなっている。
【0003】
上記した射出スリーブの例えば射出方向の末端側上部には、上記した溶湯または半凝固スラリ等を投入するための投入口が開口形成されている。上記した半凝固スラリの場合は、例えばロボットアームのチャック部によって、当該半凝固スラリを直接把持したり、あるいは半凝固スラリを収容したカップを把持したりして上記投入口位置まで移動させ、当該投入口を経て射出スリーブ内に半凝固スラリを投入供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特になし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、射出スリーブ自体の強度が脆弱とならないようにするために、射出スリーブに開口形成してある投入口の開口径は必要以上には大きくせず、円柱状である半凝固スラリの直径に略対応させてはいても、当該半凝固スラリの長さサイズに対応していなかった。そのため、上記投入口を経て半凝固スラリが投入されるに際し、当該半凝固スラリが開口を経て射出スリーブに沿って投入される場合はともかく、射出スリーブに沿わずに投入されることで投入口において横転されずに起立した状態となって係止されてしまうことがあった。そうすると、突き合わされた固定金型、可動金型相互間への供給が不可能となり、ダイカストマシンによる鋳造自動化が困難なものとなる。
【0006】
特に、射出スリーブの内空間サイズに対応すべく半凝固スラリの長さが半凝固スラリの直径の約3倍に設定されている場合、このような半凝固スラリを射出スリーブ内に確実に投入するには半凝固スラリの長さサイズに応じて投入口の開口径を大きくする必要がある。特に、射出スリーブの内空間サイズに対応すべく半凝固スラリの長さは半凝固スラリの直径の約3倍に設定されることになる。このように長い半凝固スラリに対応して投入口の開口径を大きく形成してしまうと、射出スリーブ自体の強度が脆弱なものになってしまうという問題点を有していた。
【0007】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、射出スリーブの強度を損なわない程度の大きさの投入口を通じて、半凝固スラリをダイカストマシンの射出スリーブ内に投入シュータを通じて確実に投入させることができ、また半凝固スラリに代えて溶湯を供給する場合にはこの投入シュータを退避させて邪魔にならないようにした自動鋳造装置における半凝固スラリ投入機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、射出スリーブ12内をプランジャ17がスライド移動することで供給される半凝固スラリFを、互いに突合わされる固定金型15、可動金型14それぞれの内部形状に応じた形態に型締め成形するダイカストマシン11と、該ダイカストマシン11の固定金型15側に配置されている射出スリーブ12内に、半凝固スラリFを投入させる移動機構部8とを備えた自動鋳造装置における半凝固スラリ投入機構であって、前記移動機構部8によって射出スリーブ12内に投入される半凝固スラリFは、当該射出スリーブ12の投入口12Aに対して斜向状となって連通配置された円筒状の投入シュータ31を通して当該射出スリーブ12内に供給されるようにしてあって、投入シュータ31は、射出スリーブ12上方に配した不動の支点33の廻りに起伏方向に揺動自在と成したL字状のフラップ34を備えた跳ね上げ退避機構部32における当該フラップ34のL字一端側外面に傾斜状に支持されていると共に、射出スリーブ12の投入口12Aから上方側へ退避可能となるようにしてあり,また、投入シュータ31の先端開口部は円筒軸方向に対して約30°で傾いた角度に切断されていて、射出スリーブ12周面の投入口12Aの開口法線方向に対して60°の斜向角度となって連通されるようにしてあることを特徴とする。
【0009】
以上のように構成された本発明に係る自動鋳造装置における半凝固スラリ投入機構にあって、投入シュータ31は、射出スリーブ12の投入口12Aに対して斜め方向から滑るようにして半凝固スラリFを投入口12Aを経てガイド投入させ、射出スリーブ12内に半凝固スラリFを供給させる。
また、跳ね上げ退避機構部32は、投入シュータ31を使用しない場合、例えば半凝固スラリFを使用せずにラドル4から溶湯Sを投入口12Aに直接落下させて投入する場合等には、投入シュータ31を投入口12Aに対する斜向配置状態から上方側に跳ね上げ退避させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長い半凝固スラリFに対応して投入口12Aの開口径を大きく形成しなくても、半凝固スラリFをダイカストマシン11の射出スリーブ12内に確実に投入させることができ、しかも、投入口12Aを必要以上に大きくしなくて良いから、射出スリーブ12の強度を損なわないものとすることができる。
【0011】
すなわち、これは本発明に係る自動鋳造装置の半凝固スラリ投入機構が、移動機構部8によって射出スリーブ12内に投入される半凝固スラリFを、射出スリーブ12の投入口12Aに対して斜向状となって連通配置された投入シュータ31を通して当該射出スリーブ12内に供給させるので、射出スリーブ12の強度を損なわない程度の大きさの投入口12Aで、半凝固スラリFを射出スリーブ12内にスムーズ且つ確実に供給することができる。特に、固形の半凝固スラリFを投入する場合、上記斜向状となった投入シュータ31は、射出スリーブ12における投入口12Aが比較的に大きな半凝固スラリFに比し小さくても斜めから投入することで、それがスムーズになる。
【0012】
また、投入シュータ31は、射出スリーブ12の投入口12Aから上方側へ退避可能となるよう跳ね上げ退避機構部32を備えたので、投入シュータ31を使用しない場合、例えば半凝固スラリFを使用せずにラドル4から溶湯Sを投入口12Aに直接落下させて投入する場合等には、投入シュータ31を斜向配置状態から上方側に跳ね上げ退避させておくことで、投入シュータ31によって邪魔されずに溶湯を供給することができる。
【0013】
尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付したもので、図面中の符号によって示された構造・形状に本発明が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を実施するための一形態における自動鋳造装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】同じく投入シュータの跳ね上げ退避機構部示す斜視図である。
図3】同じく半凝固スラリが投入されるときの投入シュータの斜視図である。
図4】同じく半凝固スラリが投入されるときの要部断面図である。
図5】同じく自動鋳造装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明すると、図において示される符号1は、ダイカスト製品を鋳造成形する自動鋳造装置を構成する溶融保持炉であり、図1に示すように、ヒータHが巻装された樽型坩堝状の容器によって形成され、例えばアルミニウム合金等を溶融して所定温度の溶湯Sとなすよう保持可能とする温度調整部2を備えている。温度調整部2は、溶融保持炉1内の例えばアルミニウム合金等を溶融した溶湯Sを例えば640±5℃の略均一の温度に保持する。また、溶融保持炉1の近傍には、溶湯Sをラドル4によって汲み上げるための自動給湯装置3が設置されている。
【0016】
自動給湯装置3は、先端にラドル4が揺動可能に装着されたアーム状のラドル駆動部3Aを備えた給湯ロボットによって構成されており、給湯ロボットの基台が溶融保持炉1の近傍に設置されている。自動給湯装置3の近傍には、半凝固スラリFの形成用のカップ5が収容される円形竪穴状の収容部7aと、収容部7a近傍のラドル内溶湯温度調整機構6とを備えた電磁撹拌装置7が設置されている。
【0017】
電磁撹拌装置7は、これの上面に円形竪穴状の収容部7aが設けられており、当該収容部7aの内部には例えば半割楕円殻形状の耐熱性のカップ5が収容され、当該カップ5内の溶湯Sを電磁力によって低粘性半凝固組織状の半凝固スラリFに成形するものである。電磁撹拌装置7の隣には、当該電磁撹拌装置7からカップ5を取出して、電磁撹拌装置7の近傍に設置したダイカストマシン11の射出スリーブ12内に半凝固スラリFを供給させるための移動機構部8が設置されている。移動機構部8の隣には、空のカップ5に清掃スプレー等を塗布し、次動作のためにカップ5を準備するカップ準備装置41、鋳造完成品を搬送するための製品コンベア51等が設置されている。
【0018】
カップ5の給湯位置において、自動給湯装置3に設けられたラドル4を使って溶融保持炉1から汲み上げられた溶湯Sが当該カップ5に給湯されるようになっている。電磁撹拌装置7は例えば回転方向移動磁界、軸方向移動磁界を永久磁石の回転等によって溶湯Sを非接触で且つその全体に亘って均一でしかも強力に撹拌するものであり、磁界発生コイルの通電時間、磁界の周波数、投入する電力等によって液相と固相との比率を自由に変更でき、例えば溶湯Sをナノサイズ球状結晶による断片化された低粘性の半凝固組織にすることが可能となる。
【0019】
ダイカストマシン11は、例えばアルミニウム合金等の溶融可能な合金を上記電磁撹拌装置7によって電磁撹拌して半凝固スラリFとなって成形された後の、当該半凝固スラリFによって所定の鋳造製品に成形するものである。すなわち、ダイカストマシン11は、図1に示すように、固定ダイプレート16に設けた固定金型15と、可動ダイプレート13に設けた可動金型14とを備えている。固定金型15には、固定ダイプレート16の後端面側から当該固定金型15の前端面に至るまで射出スリーブ12が貫設され、当該射出スリーブ12内部で、先端に射出チップを有するプランジャ17がスライド移動可能となるようにしてある。
【0020】
また、可動金型14は、不図示の駆動手段によって可動ダイプレート13と共に固定金型15の突合面に当接される位置まで移動できるようにしてある。可動金型14の突合面側には、型締め成形のための突起状の押込用金型が突設されており、両金型14,15が互いに突合わされた際には、この突起状の押込用金型14Aが固定金型15の突合面における射出スリーブ12先端口側に嵌合されるようにしてある。これら固定金型15と可動金型14とが合わさった後に、射出スリーブ12内で、先端に射出チップを備えたプランジャ17が前後にスライドすることで、半凝固スラリFを両金型14,15内に射出し、冷却されることで当該両金型14,15の内形状に応じた形態の鋳造完成品が形成されるようにしてある。
【0021】
上記した移動機構部8は、可動金型14と突合う固定金型15の突合面側における射出スリーブ12先端口側に備えた投入・取出用ロボット21を使用している。すなわち、この投入・取出用ロボット21は、ロボットアーム22の先端にエアシリンダで開閉駆動される一対の挟持片から構成されたチャック部23が取付けられている。鋳造時には、半凝固スラリFが収容された前記カップ5をチャック部23によって把持し、上記した射出スリーブ12に開口形成してある投入口12Aを経てカップ5内の半凝固スラリFを当該射出スリーブ12内に投入するのであり、投入後の金型14,15相互による成形中では一旦退避する。そして成形後で固定金型15から可動金型14が引き離されると、半凝固スラリFにより成形された所定の鋳造完成品の取出し位置にロボットアーム22の先端を進入させ、押込用金型内側からチャック部23によって把持し、製品コンベア51に移載するものとなっている。
【0022】
移動機構部8の具体的な例としては、複数軸関節構造のロボットアーム22を供えた投入・取出用ロボット21を使用している。すなわち、この投入・取出用ロボット21は、ロボットアーム22の先端に例えばエアシリンダ等で開閉駆動される一対の挟持片から構成されたチャック部23が設けられ、当該チャック部23によって前記カップ5を把持しつつ投入口12A側まで移動可能となるようにしてある。尚、投入・取出用ロボットは、複数軸関節構造のもので、設置面に据付けるベース上に、複数のアームを順次に連結すると共に、その連結部分の軸関節によってアーム夫々が折曲・回転等の各作動を行うことで、手首部を所定の範囲内で三次元的な動きをさせるように制御できるものである。
【0023】
図2乃至図4に示すように、射出スリーブ12の投入口12A側にはその開口に直上から斜向状に当接するよう円筒状の投入シュータ31が設けられており、チャック部23によって把持されているカップ5内の半凝固スラリF、あるいはチャック部23で直接に把持された半凝固スラリFはこの斜向状の投入シュータ31を通し、投入口12Aを経て射出スリーブ12内に供給されるものとしてある。このとき、投入シュータ31の先端開口部は円筒軸方向に対して約30°だけ傾いた角度に切断されており、こうすることで射出スリーブ12周面の投入口12Aの開口法線方向に対して60°の斜向角度となって連通されるように設定されている。
【0024】
また、この投入シュータ31自体は、跳ね上げ退避機構部32によって射出スリーブ12の投入口12Aから上方側に跳ね上げて退避できるようになっている。すなわち、跳ね上げ退避機構部32としては、射出スリーブ12上方に配した不動の、例えば固定ダイプレート16裏面に固定されたベース部35に対して支点33の廻りに起伏方向に揺動自在と成したL字状のフラップ34を備え、該フラップ34のL字一端側外面に投入シュータ31が傾斜状に支持されている。
【0025】
投入シュータ31を使用する場合には、図3に示すように、上方側への退避位置から支点33を中心とするフラップ34の揺動によって投入シュータ31の斜めに切断されている先端を射出スリーブ12の投入口12Aに当接させられるものとしてある。また、投入シュータ31を使用しない場合には、支点33を中心とした逆方向にフラップ34を揺動させることによって、投入シュータ31は斜向配置状態から上方側に跳ね上げ退避させられるようにしてある(図2参照)。
【0026】
なお、半凝固スラリFは、カップ5内に収容されている場合に限らず、ロボットアーム22のチャック部23によって直接に把持された状態で、投入シュータ31によって投入口12Aを経て射出スリーブ12内に供給することもできる。
【0027】
次に、以上のように構成された実施の形態についての処理手順の一例について図4に示すフローチャートに基づき詳細に説明する。溶融保持炉1には例えばアルミニウム合金等が溶融されて所定温度、例えば640℃の溶湯Sとなって保持されている。また、電磁撹拌装置7の収容部7a内部には例えば半割楕円殻形状の耐熱性のカップ5が収容保持されている。
【0028】
先ず、ステップS1で、自動給湯装置3のラドル駆動部3Aを作動させてラドル4による溶融保持炉1の溶湯Sの汲み上げを行う。このとき、ラドル内溶湯温度調整機構6からの指令で計量、例えば40g程度で、場合によってはそれ以上の任意の大量にして計量された溶湯Sがラドル4によって汲み上げられる。
【0029】
ステップS2でラドル駆動部3Aを作動させてラドル4を電磁撹拌装置7の収容部7a近傍に移動させ、そこでラドル4内の溶湯Sの温度がラドル温度測定部6Aによって測定され、この温度計測情報はラドル内溶湯温度調整機構6に送られる。
【0030】
ステップS3で電磁撹拌装置7により溶湯Sを半凝固スラリFに成形する。この電磁撹拌の動作は前述したように、溶湯Sに回転運動を発生させるためにカップ5を収容する容器外周面に沿って設けられた回転磁界発生コイルと、溶湯Sに軸方向運動を発生させるためのカップ5を収容する容器外周面軸方向に沿って設けられた軸方向移動磁界発生コイルとを併用して実行される。
【0031】
ステップS4で移動機構部8のロボットアーム22で電磁撹拌装置7の収容部7aからカップ5を取出す。この場合、ロボットアーム22の先端のチャック部23でカップ5は把持され、射出スリーブ12の投入口12A側に斜向状となって連通配置されている投入シュータ31の位置までカップ5が移送される。投入後には必要に応じて跳ね上げ退避機構部32により投入シュータ31が跳ね上げ退避される。すなわち、跳ね上げ退避機構部32は、支点33を中心として逆方向にフラップ34を揺動させることによって投入シュータ31は斜向配置状態から上方側に跳ね上げ退避させられる。
【0032】
ステップS5でロボットアーム22の先端のチャック部23によって把持されているカップ5を投入シュータ31の開口先端部に向けて傾動させ、カップ5内の半凝固スラリFを投入シュータ31を通して、射出スリーブ12の投入口12Aを経て当該射出スリーブ12内部に投入する。なお、このステップS5においては、カップ5を使わずに、半凝固スラリFをロボットアーム22のチャック部23によって直接に把持して投入シュータ31に投入することもできる。
【0033】
ステップS6で移動機構部8のロボットアーム22で空となったカップ5をカップ準備装置41の位置まで移送させ、そこで清掃スプレーが塗布され、次回の使用まで保管される。
【0034】
ステップS7でダイカストマシン11による鋳造成形が実行される。すなわち、固定金型15と可動金型14とが合わさった後、先端に射出チップを備えたプランジャ17がスライド移動することで半凝固スラリFを両金型14,15内に射出し、互いに突合わされている固定金型15、可動金型14それぞれの内部形状に応じた形態に半凝固スラリFが型締め成形されて冷却される。これにより、両金型14,15の内形状に応じた形態に半凝固スラリFによって所定の鋳造成形品が形成される。
【0035】
ステップS8で移動機構部8のロボットアーム22で鋳造成形品を取出して製品コンベア51位置まで移送し、鋳造成形品は製品コンベア51によって所定の保管収納場所まで搬送される。その後、本フローは終了する。
【符号の説明】
【0036】
S…溶湯 F…半凝固スラリ
H…ヒータ
1…溶融保持炉 2…温度調整部
3…自動給湯装置 3A…ラドル駆動部
4…ラドル 5…カップ
6…ラドル内溶湯温度調整機構 6A…ラドル温度測定部
7…電磁撹拌装置 7a…収容部
8…移動機構部
11…ダイカストマシン 12…射出スリーブ
12A…投入口 13…可動ダイプレート
14…可動金型 15…固定金型
16…固定ダイプレート 17…プランジャ
21…投入・取出用ロボット 22…ロボットアーム
23…チャック部
31…投入シュータ 32…跳ね上げ退避機構部
33…支点 34…フラップ
35…ベース部
41…カップ準備装置 51…製品コンベア
【要約】
【課題】射出スリーブの強度を損なわない程度の大きさの投入口を通じて、半凝固スラリを射出スリーブ内に確実に投入できるようにする。
【解決手段】射出スリーブ12内でのプランジャ17のスライド移動で、互いに突合わす固定金型、可動金型それぞれの内部形状に応じた形態に半凝固スラリFを型締め成形するダイカストマシンと、該ダイカストマシンの固定金型側に配置した射出スリーブ12内に、例えばカップ5内の半凝固スラリFを投入する移動機構部とを備え、移動機構部によって射出スリーブ12内に投入する半凝固スラリFを、当該射出スリーブ12の投入口12Aに対して斜向状となって連通配置した投入シュータ31を通して当該射出スリーブ12内に供給できるようにする。投入シュータ31は、射出スリーブ12の投入口12Aから上方側へ退避可能となるよう跳ね上げ退避機構部32を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5