(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919377
(24)【登録日】2016年4月15日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】低白金担持量電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/92 20060101AFI20160428BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20160428BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20160428BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20160428BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20160428BHJP
【FI】
H01M4/92
H01M4/86 B
H01M8/02 E
B01J23/42 M
!H01M8/10
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-518507(P2014-518507)
(86)(22)【出願日】2011年7月8日
(65)【公表番号】特表2014-524110(P2014-524110A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】US2011001195
(87)【国際公開番号】WO2013009275
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2014年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,ロバート ダーリング
(72)【発明者】
【氏名】カンドイ,シャンパ
(72)【発明者】
【氏名】オニール,ジョナサン ダニエル
【審査官】
小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/015303(WO,A1)
【文献】
特開2005−302324(JP,A)
【文献】
特開2006−085984(JP,A)
【文献】
特開2009−252653(JP,A)
【文献】
特開2007−258051(JP,A)
【文献】
特開2009−277404(JP,A)
【文献】
特開平10−003929(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/082981(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0291461(US,A1)
【文献】
特開2011−141994(JP,A)
【文献】
特開2011−159586(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0175579(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0011320(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0200916(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0143254(US,A1)
【文献】
特開2005−135817(JP,A)
【文献】
特開2010−251086(JP,A)
【文献】
特開2011−014406(JP,A)
【文献】
特開2007−220384(JP,A)
【文献】
米国特許第05272017(US,A)
【文献】
特開2009−146594(JP,A)
【文献】
特表2007−524973(JP,A)
【文献】
特開2008−071631(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0003571(US,A1)
【文献】
特開2010−027510(JP,A)
【文献】
特開2006−236631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/92
H01M 4/86
H01M 8/02
B01J 23/42
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的電池用の電極であって、
白金触媒と、
前記白金触媒を担持する炭素担体粒子と、
前記白金触媒を連結するイオノマーと、
を備え、
前記電極が、0.2mg/cm2未満の白金担持量および0.6〜0.7のイオノマー対炭素比率を有し、
プロトン交換膜の上に形成された前記電極が、2ミクロン〜5ミクロンの厚さを有する、電気化学的電池用の電極。
【請求項2】
前記電極が、前記炭素担体粒子内の炭素と前記白金触媒内の白金の合計量に対して、20%〜70%の白金金属重量パーセントを有することを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記電極が、前記炭素担体粒子内の炭素と前記白金触媒内の白金の合計量に対して、40%〜60%の白金金属重量パーセントを有することを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記電極が、前記炭素担体粒子内の炭素と前記白金触媒内の白金の合計量に対して、50%の白金金属重量パーセントを有することを特徴とする請求項3に記載の電極。
【請求項5】
前記イオノマーが、700〜1100の当量を有することを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記イオノマーが、800〜900の当量を有することを特徴とする請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記イオノマーが、820〜840の当量を有することを特徴とする請求項6に記載の電極。
【請求項8】
0.05mg/cm2〜0.15mg/cm2の白金担持量を有することを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項9】
0.1mg/cm2の白金担持量を有することを特徴とする請求項8に記載の電極。
【請求項10】
膜電極接合体であって、
プロトン交換膜と、
カソード層と、
アノード層と、
を備え、
前記カソード層が、
白金触媒と、
前記白金触媒を担持する炭素担体粒子と、
前記白金触媒を連結するイオノマーと、
を備えるとともに、
0.2mg/cm2未満の白金担持量と、0.6〜0.7のイオノマー対炭素比率と、を有し、
プロトン交換膜の上に形成された前記カソード層が、2ミクロン〜5ミクロンの厚さを有しており、
前記アノード層が、
白金触媒と、
前記白金触媒を担持する炭素担体粒子と、
前記白金触媒を連結するイオノマーと、
を備えることを特徴とする、膜電極接合体。
【請求項11】
前記アノード層が、0.2mg/cm2未満の白金担持量と、0.5〜0.9のイオノマー対炭素比率と、を有することを特徴とする請求項10に記載の膜電極接合体。
【請求項12】
前記カソード層および前記アノード層の両方またはいずれか一方が、前記炭素担体粒子内の炭素と前記白金触媒内の白金の合計量に対して、40%〜60%の白金金属重量パーセントを有することを特徴とする請求項10に記載の膜電極接合体。
【請求項13】
前記カソード層および前記アノード層の両方またはいずれか一方が、前記炭素担体粒子内の炭素と前記白金触媒内の白金の合計量に対して、50%の白金金属重量パーセントを有することを特徴とする請求項12に記載の膜電極接合体。
【請求項14】
前記イオノマーが、800〜900の当量を有することを特徴とする請求項10に記載の膜電極接合体。
【請求項15】
前記イオノマーが、820〜840の当量を有することを特徴とする請求項14に記載の膜電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的電池用の電極、および膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)は、アノード、カソード、および、アノードとカソードとの間のプロトン交換膜(PEM)を含む。一例では、水素ガスがアノードに供給され、空気または純粋な酸素がカソードに供給される。しかし、他の型の燃料および酸化剤が使用可能であることも広く認められている。アノードでは、アノード触媒が水素分子をプロトン(H
+)と電子(e
-)に分解する。プロトンは、PEMを通過してカソードに達し、一方、電子は、外部回路を通ってカソードまで移動し、電気を生成する。カソードでは、カソード触媒が酸素分子をアノードからのプロトンおよび電子と反応させて水を形成し、この水は、系から取り除かれる。アノード触媒およびカソード触媒は、炭素上に担持された白金から形成されるのが通例である。白金触媒は、プロトン、電子および反応体(すなわち、水素または酸素)に接触可能な場合にのみ活性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
白金および他の適切な貴金属触媒は高価である。コストを下げるために、低白金担持量(low platinum load)の電極の使用が望ましい。製造コスト低減に向けて、カソード中の白金担持量を減らすための多くの研究が行われている。しかし、白金の低担持量は、動力学的活性化損失のみから予測されるよりも多くの高出力性能の損失を生ずる。高性能低白金担持量電極は、単純に電極の白金担持量を減らすことのみでは実現できない。燃料電池の効率の改善を目的として、触媒層の動力学の改善のための研究が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
電気化学的電池用の電極は、白金触媒、炭素担体粒子およびイオノマーを含む。炭素担体粒子は、白金触媒を担持し、イオノマーは、白金触媒間を連結する。電極は、約0.2mg/cm
2未満の白金担持量であり、イオノマー対炭素比率は、約0.5〜約0.9である。
【0005】
膜電極接合体は、プロトン交換膜、カソード層およびアノード層を含む。カソード層は、白金触媒、白金触媒担持用炭素担体粒子および白金触媒を連結するイオノマーを含む。カソード層は、約0.2mg/cm
2未満の白金担持量であり、イオノマー対炭素比率は、約0.5〜約0.9である。アノード層は、白金触媒、白金触媒担持用炭素担体粒子および白金触媒を連結するイオノマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1の燃料電池反復単位のイオノマーカソード触媒層の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
燃料電池は、1つまたは複数の燃料電池反復単位を使って、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。本明細書記載の燃料電池反復単位は、低白金担持量の電極を含む。電極は、約0.2mg/cm
2未満の白金担持量である。電極は、白金触媒、炭素担体粒子およびイオノマーを含む。イオノマー対炭素比率は、低白金担持量の効率的電極が得られるように調整される。
【0008】
図1は、一例としての燃料電池反復単位10の斜視図を示す。これは、膜電極接合体(MEA)12(アノード触媒層(CL)14、膜16およびカソード触媒層(CL)18を有する)、アノードガス拡散層(GDL)20、カソードガス拡散層(GDL)22、アノード流路24およびカソード流路26を含む。燃料電池反復単位10は、アノード流路24およびカソード流路26に隣接する冷却流路を備えてもよい。冷却流路は、
図1には示されていない。
【0009】
アノードGDL20は、アノード流路24に面し、カソードGDL22はカソード流路26に面する。アノードCL14は、アノードGDL20と膜16の間に配置され、カソードCL18は、カソードGDL22と膜16の間に配置される。一例では、燃料電池反復単位10は、水素燃料(例えば、水素ガス)および酸素酸化剤(例えば、酸素ガスまたは空気)を使うポリマー電解質膜(PEM)燃料電池であってもよい。燃料電池反復単位10に代替燃料および/または酸化剤を使用できることは広く認められている。
【0010】
運転中、アノードGDL20は、アノード流路24を経由して水素ガス(H
2)を受ける。白金などの触媒を含むアノードCL14は、水素分子をプロトン(H
+)と電子(e
-)に分解する。プロトンと電子は、カソードCL18に移動する。プロトンは、膜16を通過してカソードCL18に達し、一方、電子は、外部回路28を通って電力を作り出す。空気または純粋な酸素(O
2)がカソード流路26を通ってカソードGDL22に供給される。カソードCL18では、酸素分子がアノードCL14からのプロトンおよび電子と反応して、水(H
2O)を形成し、これは、その後、過剰の熱と一緒に、燃料電池10から出て行く。
【0011】
膜16は、アノードCL14とカソードCL18の間に位置する半透性膜である。膜16は、プロトンおよび水の移動を許容するが、電子を伝導しない。アノードCL14からのプロトンおよび水は、膜16を通ってカソードCL18まで移動できる。膜16は、イオノマーから形成できる。イオノマーは、イオン特性を有するポリマーである。一例では、膜16は、パーフルオロスルホン酸(PFSA)含有イオノマー、例えば、E.I.DuPont,USAのNafion(登録商標)から形成される。PFSAポリマーは、短いフルオロカーボン側鎖に結合したスルホン酸基を有するフルオロカーボン骨格から構成される。
【0012】
別の例では、膜16は、炭化水素イオノマーから形成される。一般的に、炭化水素イオノマーの主鎖は、高度にフッ素化した骨格を持つPFSAイオノマーとは異なり、大量のフッ素を含まない。炭化水素イオノマーは、水素および炭素を含む主鎖を有するイオノマーであり、酸素、窒素、硫黄、および/またはリン、などの少モル比率のヘテロ原子も含むこともできる。これらの炭化水素イオノマーには、主に、芳香族および脂肪族イオノマーが含まれる。適切な芳香族イオノマーの例には、限定されないが、スルホン化ポリイミド、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホフェノキシベンジル基置換ポリ(β−フェニレン)、およびポリベンゾイミダゾールイオノマーが含まれる。適切な脂肪族イオノマーの非制限的例は、架橋ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびそれらの共重合体、などのビニルポリマーをベースにしたものがある。
【0013】
膜16の組成は、燃料電池反復単位10の操作温度に影響を与える。例えば、典型的な例では、炭化水素イオノマーは、PFSAイオノマーより高いガラス転移温度を有し、このことが、炭化水素イオノマー膜16が、PFSAイオノマー膜16より高い温度で操作するのを可能とする。
【0014】
カソードCL18は、膜16のカソード側に隣接する。カソードCL18は、以下でさらに説明されるように、イオノマーおよび触媒を含む。カソードCL18の触媒は、酸化剤(すなわち、酸素)の電気化学的還元を促進する。カソードCL18用触媒の例には、炭素担持白金粒子、炭素担持白金合金および炭素担持白金金属間化合物が含まれる。カソードCL18は、低白金担持量、例えば、カソードCL18の平方センチメートル当たり、約0.2ミリグラム白金未満である。一実施形態では、カソードCL18は、約0.05mg/cm
2〜約0.15mg/cm
2の白金担持量である。別の実施形態では、カソードCL18は、約0.1mg/cm
2の白金担持量である。低白金担持量により、燃料電池のコストが下がる。しかし、一部の低白金担持量電極は、予測より多い酸素輸送損失を生ずることが認められた。
【0015】
アノードCL14は、膜16のアノード側に隣接し、カソードCL18の反対側にある。アノードCL14は、触媒を含む。アノードCL14の触媒は、燃料(すなわち、水素)の電気化学的酸化を促進する。アノードCL14の触媒の例には、炭素担持白金粒子が含まれる。また、アノードCL14は、イオノマーを含んでもよい。アノードCL14は、上述のカソードCL18に類似の構造であってもよいが、アノードCL14とカソードCL18は、異なる組成であってもよい。
【0016】
燃料電池の性能損失によって、その理論的効率での燃料電池の操作ができなくなる。上記で考察のように、低触媒担持量電極は、通常、動力学的活性化損失のみからの予測よりも大きい性能損失がある。これは、動力学以外の少なくとも1つの過電圧源が、触媒担持量の低下と共に増加することを示唆する。例えば、薄い、低触媒担持量電極では、抵抗損失は少ないが、低触媒担持量電極では酸素移動損失がより大きいことが明らかになっている。さらに具体的には、酸素ゲインで測定した酸素輸送損失が、低触媒担持量電極ではより大きいことが明らかになっている。酸素ゲインは、カソードで、酸素と空気を使って測定した性能の差異と定義されており、酸素ゲインの増加は、通常、高い酸素輸送損失の結果である。酸素ゲインは、相対湿度の減少と共に増加することが観察されており、酸素輸送損失は、主に、イオノマーを介した酸素輸送に関連していることを示す。典型的な例では、水素−空気燃料電池で、アノードCL14で起こる水素酸化反応(HOR)は、所与の電流で、カソードCL18の酸化還元反応(ORR)よりも顕著に低い過電圧を有する。
【0017】
図2は、膜16およびカソードCL18の部分拡大模式図である。カソードCL18は、触媒30(触媒粒子32および触媒担体34を有する)およびイオノマー36を含む。カソードCL18は、触媒担体34、イオノマー36および白金触媒粒子32から構成されるマトリックスである。カソードCL18のイオノマー36は、触媒30に接触し、全体に分散された触媒粒子32を含む層を形成する。図に示すように、カソードCL18は、水が系から除去され、ガスがカソードCL18を通って移動するのを可能とする多孔質構造である。この例では、カソードCL18は、1つの離散的な触媒層から構成されている。一例では、カソードCL18は、約2〜約15ミクロンの厚さである。
【0018】
触媒担体34は、触媒粒子32を担持する。一例では、触媒担体34は、活性炭またはカーボンブラック、例えば、Ketjen Black(KB)から構成される。触媒担体34は、通常、約10ナノメートル〜約100ナノメートルの直径である。
【0019】
触媒粒子32は、触媒担体34上に沈着される。触媒粒子32は、酸化還元反応:O
2+4H
++4e
-→2H
2O、による酸化還元反応(ORR)を促進する。例えば、触媒粒子32は、白金およびその合金であってもよい。活性化触媒表面積を最大化するために、触媒30は、単一触媒担体34上の複数の触媒粒子32により形成できる。あるいは、触媒30は、細かく分散した触媒粒子32を担持する複数の触媒担体34から形成してもよい。
【0020】
カソードCL18のイオノマー36は、電解質16を、イオン導電体レベルで、触媒粒子32に接続する。
図2に示すように、イオノマー36は、触媒30の触媒担体34の間の足場構造を形成する。イオノマー36は、ガスのカソードCL18を通る移動、および水のカソードCL18からの除去を可能とする多孔質構造を形成する。また、イオノマー36は、プロトンを、電解質16から触媒粒子32上の活性触媒部位に移送する。
【0021】
白金の高コストのために、低白金担持量の電極が望ましい。しかし、単に電極の触媒層中の白金量を減らすだけでは、非効率的な電極および燃料電池を作ることになる。電極の白金量の低減は、ターフェルの式に従う動力学的過電圧を増やす。さらに、白金担持量が低減されるに従い、酸素輸送損失も増加する。この追加の輸送損失は、白金表面積に反比例すると思われる。
【0022】
出願人は、電極のイオノマー対炭素比率の低下が、白金担持量低減の欠点の内のいくつかを最小限にし、許容可能な性能と効率を有する低白金担持量電極を提供することを発見した。典型的な例では、イオノマー対炭素比率の低下が、イオノマー濃度の減少に起因する電極での抵抗損失の増加に繋がる。しかし、出願人は、予想外にも、低白金担持量電極でのイオノマー対炭素比率の低減が、予測される抵抗損失を生じないことを見出した。
【0023】
イオノマー対炭素比率を低減すると、触媒30の周辺のイオノマーフィルム36の厚さが減る。このイオノマーフィルム厚さの低減は、通常、触媒層内の酸素輸送損失を減らす。同時に、イオノマー対炭素比率の低減は、通常、触媒層中の抵抗損失の増加に繋がる。しかし、一般的に、低白金担持電極は、通常より薄い触媒層を有する。例えば、低白金担持量(例えば、0.1mg/cm
2)の電極では、通常、触媒層は、非常に薄い(約2ミクロン〜約5ミクロン)。0.4mg/cm
2の白金を有する触媒層は、0.1mg/cm
2の白金の触媒層よりも約4倍厚い。抵抗損失は、電極厚さに対応し、従って、より薄い触媒層では、電極に対する抵抗の不利益が減少する。出願人は、低白金担持量の(すなわち、より薄い)電極では、触媒層の厚さに起因する抵抗損失の役割は、より小さく、抵抗損失に対する一次寄与因子は、触媒30周辺のイオノマーフィルム中で発生するのではないかと予測している。さらに、ガス輸送損失は、典型的な例では、低白金担持量電極における制限プロセスである。
【0024】
通常の白金担持量(0.4mg/cm
2)を有する電極では、イオノマー対炭素比率は、通常、1.2超である。低白金担持量電極のイオノマー36の最適量は、燃料電池の操作条件に依存するが、特定のイオノマー対炭素比率範囲が、効率的な低白金電極を与える。本発明の一実施形態では、触媒層のイオノマー対炭素比率は、約0.5〜約0.9である。別の実施形態では、触媒層のイオノマー対炭素比率は、約0.6〜0.8である。さらに別の実施形態では、触媒層のイオノマー対炭素比率は、約0.6〜0.7である。これらの値は、商業的に実現可能なイオノマー対炭素比率を表す。理論的には、より低いイオノマー対炭素比率が、より適することになる可能性があるが、触媒担体34は、イオノマー36で完全に被覆する必要がある。イオノマー36の最小フィルム厚さは、約3ナノメートル(nm)である。この最小厚のために、実現可能なイオノマー対炭素比率が、基本的に約0.5より低い値にならないようになる。
【0025】
低白金担持量電極の代表的イオノマー対炭素比率の発見に加えて、出願人は、イオノマー当量を調べた。イオノマーの当量(EW)は、1モルのイオン基を含む分子量で、ポリマーのイオン含量を示す。低EWイオノマーは、高EWイオノマーに比べて高イオン含量を有し、従って、より高い伝導性である。EWの減少は、イオノマー相抵抗を低下させるが、フラッディングまたはイオノマーの触媒層気孔内への膨張によりガス相輸送抵抗が増加する可能性がある。出願人の実験結果は、1100未満のEWを有するイオノマーは、高EWイオノマーに比べて優れた輸送特性を有することを示した。
【0026】
本発明の一実施形態では、触媒層のイオノマー36は、約700〜約1100のEWを有するPFSAまたは炭化水素ポリマーである。別の実施形態では、イオノマー36は、約800〜約900のEWを有するPFSAまたは炭化水素ポリマーである。さらに別の実施形態では、イオノマー36は、約820〜約840のEWを有するPFSAまたは炭化水素ポリマーである。PFSAイオノマーは、高ガス透過性を有するが、また、白金に対する高親和性も有する。従って、酸素は、PFSAイオノマーを通って触媒粒子32にまで透過できるが、触媒粒子32もまた、溶解し、イオン種としてPFSAイオノマーを通って移動する。PFSAイオノマーとは対照的に、炭化水素イオノマーは、通常、低ガス透過性であり、白金を溶解する能力は低い。さらに、炭化水素イオノマーは、熱的および寸法的に安定なイオノマーであり、多孔性カソードCL18中で効果的な足場として機能する。従って、PFSAと、PFSA選択的コーティング触媒粒子32を有する炭化水素イオノマーと、の混合物は有益であろう。
【0027】
上記イオノマー特性に加えて、出願人は、また、電極の金属重量パーセント(すなわち、電極中の白金のパーセンテージ)を変えたことによる効果を調査した。電極の金属重量パーセントを高める(すなわち、電極中の白金の相対量を高める)ことにより、ガス相輸送損失および抵抗損失を減らすより薄い電極が得られる。電極の厚さによるガス相の輸送損失は、低白金担持量では、相対的に少ない。通常受け入れられている燃料電池触媒層中の酸素輸送モデルとは対照的に、電極の金属重量パーセントを変えることは、イオノマー相中の酸素輸送損失に対し、何ら効果を与えない。
【0028】
本発明の一実施形態では、炭素担持触媒層の金属重量パーセントは、約20%〜約70%である。例えば、カソードCL18は、約80重量パーセント炭素を有する約20重量パーセント白金と、約30重量パーセント炭素を有する約70重量パーセント白金と、の間の炭素担持白金粒子を含む。炭素担持白金触媒に添加されたイオノマーの量を炭素の量に比例して調節し、所望のイオノマー対炭素比率を得た。別の実施形態では、金属重量パーセントは、約40%〜約60%である。さらに別の実施形態では、金属重量パーセントは、約50%である。金属重量パーセントを約70%超に高めることにより、より薄い触媒層が得られるが、製造が困難となり、あるいは触媒層中の不均等な白金担持量を生じさせる可能性がある。金属重量パーセントを約20%未満に減らすことは、より厚い触媒層に繋がり、物質輸送抵抗および抵抗損失を増やす結果となる。
【0029】
出願人により調査されたそれぞれの電極特性(イオノマー対炭素比率、イオノマーEWおよび触媒層金属重量パーセント)の調節は、利点も欠点もあるが、これらの特性が規定された範囲内に制御される場合には、全体としての特性の利益を増幅することによってそれぞれの個別の欠点の影響が緩和される。従って、それぞれの電極特性のバランスをとることにより、欠点が最小化し、効率的な低白金電極を提供できる。例えば、イオノマー対炭素比率の低下は、酸素輸送損失を減らすが、一方、抵抗損失が増大する。抵抗損失の増大は、高い白金対炭素比率を使うことにより緩和され、電極をより薄く作ることができる。
【0030】
まとめると、本発明は、触媒層中の低減されたイオノマー対炭素比率を利用することにより、効率的な低白金担持量電極を提供する。さらに、触媒層のイオノマー当量および金属重量パーセントを変更して、低白金担持量電極の効率をさらに高めることができる。
【0031】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、当業者なら、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、形態および細部における変更をなし得ることを認めるであろう。