(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の医療用チューブおよび医療用チューブ組立体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
<第1実施形態>
図1〜
図11は、それぞれ、本発明の医療用チューブ(医療用チューブ組立体)の第1実施形態における使用方法を順に示す断面図、
図12は、
図1中の矢印A方向から見た図(側面図)、
図13は、
図7中のB−B線断面図、
図14は、
図7中のC−C線断面図、
図15は、
図7中の矢印D方向から見た図((a)は、分離部が分離される以前の状態を示し、(b)は、分離部が分離された状態を示す)。なお、以下では、説明の都合上、
図1〜
図12中(
図17〜
図19についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、針先側を「先端」、その反対側を「基端」と言う。
【0029】
図7〜
図8に示す医療用チューブ組立体1は、医療用チューブ(チューブ)2と、医療用チューブ2に挿入されるインプラント8とを備えている。この医療用チューブ組立体1は、女性の尿失禁の治療に用いられる医療器具である。以下、各部の構成について説明する。
【0030】
まず、インプラント8について説明する。
【0031】
インプラント8は、一般的に「スリング」と呼ばれ、女性の尿失禁の治療のための埋設可能な器具、すなわち、尿道100を支持する器具、例えば尿道100が膣200側に移動しようとしたときに、その尿道100を膣200から離間する方向へ引っ張るようにして支持する器具である(
図11参照)。インプラント8は、可撓性を有し、帯状(長尺状)をなす部材で構成されている(
図7〜
図11参照)。
【0032】
インプラント8の構成材料としては、特に限定されず、例えば、生体適合性を有する各種樹脂材料等を用いることができる。
【0033】
なお、インプラント8は、
図8に示すように予め医療用チューブ2に挿入されて(収納されて)いてもよいし、手技の途中で医療用チューブ2に挿入することもできる。インプラント8が予め医療用チューブ2に挿入されている場合には、迅速な手技を行なうことができる。また、インプラント8を手技の途中で医療用チューブ2に挿入する場合には、症例に応じて、それに適したインプラント8をその都度選択することができる。本実施形態では、インプラント8が予め医療用チューブ2に挿入されている場合について代表的に説明する。
【0034】
次に、医療用チューブ2について説明する前に、女性の尿失禁の治療を施す際に、医療用チューブ組立体1とともに用いられる穿刺装置10について説明する。なお、本実施形態では、穿刺装置10と医療用チューブ組立体1とで、女性の尿失禁の治療用の「医療器具セット」が構成されていると言うことができる。
【0035】
図1〜
図5、
図12に示すように、穿刺装置10は、穿刺部材3と、穿刺部材3を回動可能に支持する支持部材20と、穿刺部材3が挿入される外チューブ30とを備えている。なお、穿刺装置10は、尿道100内に挿入される棒状をなす尿道挿入部材と、膣200内に挿入される棒状をなす膣挿入部材とをさらに備えていてもよい。これら部材は、それぞれ、支持部材20に支持、固定されているのが好ましい。
【0036】
穿刺部材3は、生体組織700を穿刺する穿刺針31と、軸部33と、穿刺針31と軸部33を連結する連結部32とを有している。
【0037】
穿刺針31は、先端に鋭利な針先315を有し、軸部33を中心とする円弧状に湾曲している。また、穿刺針31の軸線と軸部33の軸線とは、ねじれの位置関係にある。これにより、穿刺針31の針先315は、穿刺部材3が軸部33回りに回動したとき、前記円弧に沿って、軸部33の軸線と垂直な面内、すなわち、軸部33の軸線を法線とする面内を移動する。
【0038】
なお、穿刺針31の前記円弧の中心角は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるものであるが、穿刺針31により生体組織700を穿刺した際、当該生体組織700に後述するように円弧状をなす刺通孔(穿刺孔)500が形成されるように設定される。このような中心角としては、例えば、120〜270°であることが好ましく、160〜230°であることがより好ましく、180〜210°であることがさらに好ましい。
【0039】
また、本実施形態では、穿刺針31の針先315は、
図1〜
図3中では反時計回りの方向を向いているが、これに限らず、時計回りの方向を向いていてもよい。
【0040】
また、穿刺針31には、針先315から基端方向に向かって外径が漸増するテーパ部316が形成されている。
【0041】
また、穿刺針31は、中実針であってもよいし、中空針であってもよい。
【0042】
軸部33は、穿刺部材3(穿刺針31)の回転軸となり、支持部材20に回動可能に設置されている。
【0043】
図12に示すように、軸部33は、支持部材20を図中の左右方向に貫通している。そして、支持部材20を介して軸部33の先端側の部分と基端側の部分とには、それぞれ、フランジ331とフランジ332とが形成されている。このフランジ331、332により、支持部材20に対する軸部33の軸方向の移動が規制される。
【0044】
また、軸部33の穿刺針31と反対側の端部には、穿刺部材3を回動操作する操作部として、把持部34が設けられている。この把持部34の形状は、本実施形態では、直方体をなしている。穿刺部材3を回動させる際は、把持部34を手指で把持し、所定方向に回動させる。なお、把持部34の形状は、これに限定されないことは言うまでもない。
【0045】
連結部32は、穿刺針31の基端と軸部33とを連結する部分である。
【0046】
穿刺部材3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような各種金属材料を用いることができる。
【0047】
支持部材20は、穿刺部材3を回動可能に支持する部材である。なお、
図1〜
図3中では、支持部材20が省略されている。
【0048】
支持部材20は、穿刺部材3が回動して生体組織700を穿刺したとき、穿刺針31の針先315が、尿道100と膣200との間を通過するように、穿刺部材3の位置を規制している。これにより、尿道100と膣200との間には、穿刺針31による円弧状をなす刺通孔500が形成される。
【0049】
支持部材20の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のような各種樹脂材料を用いることができる。
【0050】
図1、
図2に示すように、外チューブ30は、予め穿刺部材3の穿刺針31に装着される、すなわち、予め穿刺部材3の穿刺針31が挿入される部材である。なお、外チューブ30は、硬質のものであるのが好ましい。この場合、外チューブ30は、穿刺針31と同程度に円弧状に湾曲している。ここで、「硬質」とは、外チューブ30自体で円弧状に湾曲した状態を維持することができる程度のことを言う。
【0051】
外チューブ30は、先端が開口した先端開口部301と、基端が開口した基端開口部302とを有している。
【0052】
また、外チューブ30の先端部には、その外周部に、穿刺針31のテーパ部316とテーパ角度が同じテーパ部303が形成されている。そして、外チューブ30を穿刺針31に装着して組み立てた組立状態では、穿刺針31のテーパ部316と、外チューブ30のテーパ部303とが、連続した1つのテーパ部を形成する。これにより、組立状態で、外チューブ30は、穿刺針31とともに生体組織700を刺通することができ、よって、当該生体組織700に刺通孔500を形成することができる(
図2参照)。
【0053】
また、外チューブ30の基端部には、その外周部に、外径が拡径したフランジ部304が形成されている。例えば
図2に示す状態でフランジ部304が生体表面600に当接した場合、穿刺針31の先端方向への回動限界が規制され、よって、生体組織700を過不足なく穿刺することができる。
【0054】
外チューブ30の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のような各種樹脂材料や、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような各種金属材料を用いることができる。
【0055】
次に、医療用チューブ2について説明する。
【0056】
図7〜
図9に示すように、医療用チューブ2は、その先端が開口した先端開口部21と、基端が開口した基端開口部22とを有するチューブである。また、この医療用チューブ2は、長尺状をなすチューブ本体23と、チューブ本体23の先端部に設けられたヘッド部24とに区分することもできる。そして、医療用チューブ2には、チューブ本体23とヘッド部24とを貫通する、すなわち、先端開口部21および基端開口部22にそれぞれ開口するルーメン25が形成されている。このルーメン25内には、インプラント8を挿入することができる。
【0057】
図7、
図8に示すように、チューブ本体23は、その長手方向の途中が円弧状に湾曲した湾曲部231を有している。医療用チューブ2では、少なくとも湾曲部231が硬質のものである。ここで、「硬質」とは、湾曲部231自体で円弧状に湾曲した状態を維持することができる程度のことを言う。また、この湾曲部231の湾曲の程度(曲率)は、穿刺装置10の穿刺針31の湾曲の程度と同程度である。
【0058】
このような構成により、医療用チューブ2を穿刺装置10が形成した刺通孔500に挿入する際に、湾曲部231が刺通孔500内で押し潰されて(圧迫されて)しまうのが防止されるとともに、湾曲部231が刺通孔500の湾曲形状に容易にならう(沿う)ことができる。これにより、医療用チューブ2をインプラント8ごと刺通孔500(生体)に挿入する操作を容易かつ確実に行なうことができる。また、この挿入操作後に、後述するように医療用チューブ2を分離することにより、インプラント8を刺通孔500に容易かつ確実に留置することができる(
図9参照)。
【0059】
なお、チューブ本体23は、湾曲部231以外の部分は、硬質であってもよし、軟質であってもよい、すなわち、可撓性を有していてもよい。
【0060】
図14に示すように、チューブ本体23の横断面形状、すなわち、医療用チューブ2のヘッド部24(先端開口部21付近)よりも基端側の部分の横断面形状は、偏平形状、すなわち、楕円形である。これにより、帯状をなすインプラント8を予めルーメン25内に挿入しておく際に、その挿入作業を容易に行なうことができる。また、刺通孔500にインプラント8を確実に挿入可能なスペースを形成することが可能であり、さらにインプラント8の向きを規制することが可能であると言う利点もある。
【0061】
なお、チューブ本体23の横断面形状は、偏平形状の他に、例えば、円形であってもよい。
【0062】
また、
図14に示すように、前記偏平形状の厚さ方向(小径方向)は、湾曲部231の湾曲中心O側を向いている。この構成は、前記偏平形状の幅方向(大径方向)が湾曲中心O側を向いている場合に比べて、医療用チューブ2を刺通孔500に容易に挿入するのに寄与する。
【0063】
図7〜
図9に示すように、チューブ本体23の基端部には、その外径が拡径したフランジ部232が形成されている。なお、このフランジ部232は、省略することもできる。
【0064】
図9、
図15(b)に示すように、チューブ本体23(医療用チューブ2)は、当該チューブ本体23をその長手方向の途中で分離可能に構成され、これにより、先端側の第1チューブ233と基端側の第2チューブ234とに分離される。この分離により、医療用チューブ2を刺通孔500から迅速に抜去することができ、よって、インプラント8だけを刺通孔500に留置することができる。
【0065】
図7、
図8に示すように、この分離部235は、湾曲部231の長手方向の中央部に配置されている。これにより、
図9に示すように、分離部235でチューブ本体23を分離した際に、インプラント8で尿道100を好適に支持することができる。
【0066】
チューブ本体23の先端部および基端部には、それぞれ、湾曲部231の長手方向の中央部を把握するためのマーカ27が付されているのが好ましい(
図7参照)。このマーカ27により、湾曲部231の長手方向の中央部、すなわち、分離部235の位置を確実に把握することができる。なお、マーカ27は、本実施形態ではチューブ本体23の先端部および基端部の双方に設けられているが、これに限定されず、例えば、チューブ本体23の先端部および基端部の内の一方に設けられていてよい。
【0067】
図15(a)に示すように、分離部235は、チューブ本体23が第1チューブ233と第2チューブ234とに分離される以前には、第1チューブ233の基端部236の内側に第2チューブ234の先端部237が嵌合する嵌合構造をなす部分となっている。これにより、チューブ本体23をその両側から引張れば、第1チューブ233の基端部236と第2チューブ234の先端部237との嵌合状態を確実に解除することができる。この解除により、チューブ本体23を分離部235で第1チューブ233と第2チューブ234とに容易に分離することができる。
【0068】
なお、第2チューブ234の先端部237には、その幅が先端方向に向かって漸減した幅漸減部238が形成されている。これにより、チューブ本体23を
図15(a)に示す状態としておく際に、第2チューブ234の先端部237を第1チューブ233の基端部236に容易に挿入することができ、その結果、端部同士は前記嵌合状態となる。
【0069】
また、第1チューブ233の基端部236の内側の幅w
1は、第2チューブ234の先端部237の外側の幅(最大幅)w
2と同じかまたはそれよりも若干小さい。これにより、第2チューブ234の先端部237を第1チューブ233の基端部236により容易に挿入することができる。
【0070】
前述したように、第1チューブ233の基端部236と第2チューブ234の先端部237との嵌合構造は、基端部236が外側に位置し、先端部237の内側に位置する状態となっている。この場合、分離部235には、すなわち、基端部236と先端部237との境界部には、幅が基端方向に向かって段階的に減少した段差部239が形成される(
図15(a)参照)。医療用チューブ2は、その先端側から刺通孔500に挿入されるため、段差部239がこのように形成されている方が好ましい。
【0071】
図7〜
図9、
図13に示すように、ヘッド部24は、その横断面形状が円形の筒体で構成されている。なお、ヘッド部24は、チューブ本体23と一体的に形成されていてもよいし、チューブ本体23と別体で構成され、チューブ本体23に接合されていてもよい。
【0072】
ヘッド部24には、その軸方向の途中に外径が拡径した拡径部241が設けられている。また、ヘッド部24の拡径部241から先端側の部分は、外径が先端方向に向かって漸減したテーパ部242となっており、ヘッド部24の拡径部241から基端側の部分も、外径が基端方向に向かって漸減したテーパ部243となっている。なお、テーパ部242の全長は、テーパ部243の全長よりも長い。
【0073】
ヘッド部24がこのよう形状をなすことにより、医療用チューブ2をヘッド部24から刺通孔500に容易に挿入することができる。
【0074】
また、
図13、
図14に示すように、横断面形状が偏平形状をなすチューブ本体23の外側の幅w
0は、横断面形状が円形をなすヘッド部24の外径φdと同じかまたはそれよりも大きい。これにより、医療用チューブ2を刺通孔500に挿入するのに伴って、チューブ本体23で刺通孔500を拡張する、すなわち、生体組織700を剥離することができる。
【0075】
なお、医療用チューブ2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0076】
次に、医療用チューブ組立体1(医療器具セット)の使用方法の一例について、
図1〜
図11を参照しつつ説明する。
【0077】
[1] まず、
図1に示すように、穿刺針31に外チューブ30を装着して組み立てた組立状態の穿刺装置10を患者の生体表面600に装着する。この装着位置としては、これから埋設するインプラント8で尿道100を支持するのに適した位置とすることができる。
【0078】
[2] 次に、穿刺装置10の把持部34を一方の手で把持して、
図2に示すように、穿刺部材3を図中反時計回りに回転させる。これにより、穿刺針31は、軸部33を回動中心として、外チューブ30とともに、患者の生体表面600の左側の鼠蹊部(またはその近傍の部位)、骨盤300の閉鎖孔400a、尿道100と膣200との間、骨盤300の閉鎖孔400b、生体表面600の右側の鼠蹊部(またはその近傍の部位)を順に通過して、すなわち、穿刺していく。この穿刺により、生体組織700には、生体表面600の左側の鼠蹊部から右側の鼠蹊部までを貫通する刺通孔500が形成される。
【0079】
[3] 次に、穿刺装置10の把持部34を一方の手で把持し、外チューブ30のフランジ部304を他方の手で上側から押し付けて、
図3に示すように、穿刺部材3を前記とは反対に、すなわち、図中時計回りに回転させる。これにより、外チューブ30から穿刺部材3の穿刺針31が抜去される。また、外チューブ30は、生体組織700に留置されたままとなる。
【0080】
[4] 次に、
図4に示すように、生体表面600から穿刺装置10の穿刺部材3を支持部材20ごと取り除く。
【0081】
[5] 次に、
図5に示すように、生体組織700に留置された外チューブ30に、ガイドワイヤ40を挿通させる。これにより、ガイドワイヤ40は、その先端側の部分が外チューブ30の先端開口部301から突出し、基端側の部分が外チューブ30の基端開口部302から突出した状態となる。
【0082】
[6] 次に、ガイドワイヤ40の先端部を一方の手で把持して、そのままにし、外チューブ30のフランジ部304を他方の手で把持して、基端方向に向かって引張る。これにより、
図6に示すように、外チューブ30は、刺通孔500から抜去され、ガイドワイヤ40は、刺通孔500を挿通したまま残る。
【0083】
[7] 次に、医療用チューブ2にインプラント8が挿入された状態の医療用チューブ組立体1を用意する。そして、医療用チューブ2の先端開口部21にガイドワイヤ40の基端部を挿入した状態で、
図7に示すように、医療用チューブ組立体1をガイドワイヤ40に対し先端方向に向かって押し進める。これにより、医療用チューブ組立体1は、刺通孔500を挿通して、その先端側の部分が生体表面600の閉鎖孔400b側から突出し、基端側の部分が生体表面600の閉鎖孔400a側から突出した状態となる。
【0084】
[8] 次に、医療用チューブ組立体1の生体表面600の閉鎖孔400b側から突出した部分を一方の手で把持して、そのままにし、ガイドワイヤ40の基端部を他方の手で把持して、基端方向に向かって引張る。これにより、
図8に示すように、ガイドワイヤ40は、医療用チューブ組立体1(医療用チューブ2)から抜去され、当該医療用チューブ組立体1は、刺通孔500を挿通したまま残る。
【0085】
[9] 次に、医療用チューブ2のヘッド部24を一方の手で把持し、フランジ部232を他方の手で把持して、
図9に示すように、ヘッド部24とフランジ部232とを互いに反対方向に向かって引張る。これにより、医療用チューブ2は、分離部235によって、第1チューブ233と第2チューブ234とに分離する。
【0086】
[10] 次に、第1チューブ233と第2チューブ234とをそれぞれ刺通孔500から引き抜くと、
図10に示すように、インプラント8は、刺通孔500を挿通したまま残る。このインプラント8は、その先端側の部分が生体表面600の閉鎖孔400b側から突出し、基端側の部分が生体表面600の閉鎖孔400a側から突出した状態となっている。そして、インプラント8の前記先端側の部分と前記基端側の部分とをそれぞれ所定の力で引張る。これにより、インプラント8に張力が生じて、尿道100は、膣200から離間する方向に引張られ、当該インプラント8で下側から支持される。
【0087】
[11] 次に、
図11に示すように、インプラント8の不要な部分を切除し、所定の閉創等を行なって手技を終了する。
【0088】
以上のような手技、すなわち、尿失禁治療では、インプラント8を刺通孔500に挿入して、留置する際、当該インプラント8は、予め医療用チューブ2に収納されており、医療用チューブ2ごと刺通孔500に挿入される。この医療用チューブ2は、前述したように少なくとも湾曲部231が硬質であるため、刺通孔500でも生体組織700によって押し潰されて、不本意に変形するのが防止される。これにより、刺通孔500への挿入操作を容易かつ確実に行なうことができる。
【0089】
また、本手技では、インプラント8を医療用チューブ2ごと刺通孔500に挿入した後に、医療用チューブ2を分離して刺通孔500から容易に抜去することができる。これにより、インプラント8が刺通孔500に確実に留置される。
【0090】
また、本手技では、前記操作[8]、すなわち、ガイドワイヤ40の抜去操作を省略することができる。
【0091】
<第2実施形態>
図16は、本発明の医療用チューブ(医療用チューブ組立体)の第2実施形態を示す横断面図である。
【0092】
以下、この図を参照して本発明の医療用チューブおよび医療用チューブ組立体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0093】
本実施形態は、ルーメンの形成数が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0094】
図16に示すように、本実施形態の医療用チューブ2Aには、インプラント8が挿入されるルーメン25の他に、さらに、ガイドワイヤ40が挿入されるルーメン26が形成されている。ルーメン25とルーメン26とは、互いに独立して形成されている。これにより、インプラント8とガイドワイヤ40との干渉が防止され、よって、例えばガイドワイヤ40の挿入・抜去を円滑に行なうことができる。
【0095】
なお、本実施形態では、ルーメンの形成数は、2つであるが、これに限定されず、例えば、3つ以上であってもよい。
【0096】
<第3実施形態>
図17〜
図19は、それぞれ、
参考例としての医療用チューブ(医療用チューブ組立体)の第3実施形態における使用方法を順に示す断面図である。
【0097】
以下、これらの図を参照して
参考例としての医療用チューブおよび医療用チューブ組立体の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0098】
本実施形態は、医療用チューブから分離部が省略されていること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0099】
図17、
図18に示すように、本実施形態の医療用チューブ2Bは、前記第1実施形態の医療用チューブ2が有していたような分離部235が省略されている。
【0100】
また、医療用チューブ2Bの先端開口部21からは、インプラント8の先端部81が予め突出している。
【0101】
以上のような構成の医療用チューブ2Bを備える医療用チューブ組立体1の使用方法の一例について、
図17〜
図19を参照しつつ説明する。なお、本使用方法は、前記第1実施形態での操作[1]〜[6]と、操作[10]、[11]とが共通であり、操作[7]〜[9]が異なる。ここでは、この異なる操作について説明する。
【0102】
[7’] 前記操作[6]の後、医療用チューブ2Bにインプラント8が挿入された状態の医療用チューブ組立体1を用意する。前述したように、インプラント8の先端部81は、医療用チューブ2Bの先端開口部21から突出している。
【0103】
そして、医療用チューブ2Bの先端開口部21にガイドワイヤ40の基端部を挿入した状態で、
図17に示すように、医療用チューブ組立体1をガイドワイヤ40に対し先端方向に向かって押し進める。これにより、医療用チューブ組立体1は、刺通孔500を挿通して、その先端側の部分が生体表面600の閉鎖孔400b側から突出し、基端側の部分が生体表面600の閉鎖孔400a側から突出した状態となる。この状態でも、インプラント8の先端部81が医療用チューブ2Bの先端開口部21から突出している。
【0104】
[8’] 次に、医療用チューブ組立体1の生体表面600の閉鎖孔400b側から突出した部分を一方の手で把持して、そのままにし、ガイドワイヤ40の基端部を他方の手で把持して、基端方向に向かって引張る。これにより、
図18に示すように、ガイドワイヤ40は、医療用チューブ組立体1(医療用チューブ2B)から抜去され、当該医療用チューブ組立体1は、刺通孔500を挿通したまま残る。なお、この状態でも、インプラント8の先端部81が医療用チューブ2Bの先端開口部21から突出している。
【0105】
[9’] 次に、インプラント8の先端部81を一方の手で把持して、そのままにし、医療用チューブ2Bのフランジ部232を他方の手で把持して、医療用チューブ2Bが刺通孔500から引き抜かれるまで基端方向に向かって引張る。これにより、インプラント8は、刺通孔500を挿通したまま残る。
【0106】
以降、前記操作[10]、[11]を順に行なう。
【0107】
なお、医療用チューブ2Bでは、予め先端開口部21からインプラント8の先端部81が突出しているが、これに限定されず、先端開口部21よりも先端部81が奥側に引込んでいてもよい。この場合、例えば、医療用チューブ2Bは、チューブ本体23とヘッド部24とが分離可能に構成されているのが好ましい。これにより、ヘッド部24を分離すれば、チューブ本体23からはインプラント8の先端部81が突出する。前記操作[8’]の後、ヘッド部24を分離することにより、前記操作[9’]を確実に行なうことができる。
【0108】
以上、本発明の医療用チューブおよび医療用チューブ組立体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、医療用チューブおよび医療用チューブ組立体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0109】
また、本発明の医療用チューブおよび医療用チューブ組立体は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0110】
また、医療用チューブの湾曲部は、前記各実施形態では自身が硬質であることにより、円弧状に湾曲した状態を維持するよう構成されているが、これに限定されず、例えば、円弧状に湾曲した湾曲部を有する硬質なスタイレット等を挿入することにより、その湾曲した状態を維持するよう構成されていてもよい。
【0111】
また、医療用チューブの分離部は、ミシン目で構成されていてもよい。