【文献】
村松眞由、味岡秀恭、岡田敏、只野裕一、志澤一之,大角粒界を有するサブグレインからの核生成と再結晶に関する多結晶Phase-Fieldシミュレーション,理論応用力学講演会 講演論文集,日本, 日本学術会議「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」,2007年 7月18日,第56回,230
【文献】
山本隆史、山中晃徳、高木知弘、冨田佳宏,Multi-Phase-Field法による鉄鋼材料の拡散相変態シミュレーション,計算力学講演会講演論文集,日本,日本機械学会,2009年10月10日,第22回,p49-50
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題及び省エネルギーの観点から、工業製品に用いる材料の材質の向上が望まれている。また、材料においては、引張強度、降伏応力、又は伸びなどで代表される材質特性は、顕微鏡レベルの材料組織と密接に関係していることが知られている。このため、熱間加工後条件、又は、その後の冷却条件を操作して、材料に与える温度変化の指標となる温度変化曲線を変化させることにより、製品の材質特性の創り込みがされている。
【0003】
また、材料を冷却後、研磨して、操作型電子顕微鏡を応用したEBSD(electron back scattering diffraction)装置で観察すると、析出相(新相)の各結晶粒の結晶方位が得られる。母相の結晶方位と析出相の結晶方位には一定の関係がある。これを利用して母相の結晶方位と粒界を再構築できることが知られている(非特許文献1参照)。また、冷却中の拡散変態の進行の定式化に用いる核生成速度及び成長速度に関する研究がされている(非特許文献2参照)。
【0004】
温度制御装置としては、圧延材が相変態を起こすことにより発生する変態発熱の量を変態発熱モデルを用いて予測して、その変態発熱の量を補償しながら、巻取温度を所定の温度目標値に一致させるように制御することが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
所望の材質特性を得るための適正な製造条件を確立するためには、試作を繰り返す必要がある。しかし、このような試作を繰り返す作業は、膨大な費用と手間が掛かる。そこで、鉄鋼材料では、熱間圧延プロセスを対象として、製品である材料の材料組織及び材質を予測する組織材質予測技術が開発されている。組織材質予測技術は、所望の材質特性を得るために温度変化曲線などの製造条件を適正化するために利用されている。
【0006】
ところが、既存の組織材質予測モデルは、材料組織内を均一であるものとして取り扱っている。従って、材料組織内での結晶粒の大きさ及び形状についての違い又はばらつきについては考慮されていない。しかし、実際には、製造条件によっては、材料組織内で、結晶粒毎に大きさ及び形状が異なり、かつこれらのばらつきが大きくなる場合がある。これらは、材質が変動する一因となる。
【0007】
一方、材料の熱間状態からの冷却過程における固相変態は、(i)結晶の核生成と、(ii) 生成した結晶の粒成長の2つの現象からなる。後者(結晶粒の成長)に対し、フェーズフィールド(MPF, multi-phase-field)法とよばれる解析手法が知られている。例えば、単結晶成長において、フェーズフィールド法により粒成長によるグレイン形状の変化を計算するシミュレーション方法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、前者(核生成)については、実際の核生成の位置とタイミングは母相組織と温度変化により決まるにも関わらず、従来のフェーズフィールド法では、計算開始時の初期核配置を手動で与えるなどごく簡易的な考慮に留まっている。特許文献2には、単結晶において、転位によるひずみエネルギーにより引き起こされる核生成が考慮されているものの、鉄鋼を初めとする多結晶金属においては、母相組織の粒界付近で核生成が生じやすいことなどが知られているように、特許文献2の方法の多結晶金属の核生成への適用には限界がある。
【0008】
したがって、従来のフェーズフィールド法では、材料組織内での結晶粒の大きさ及び形状の違い及びこれらのばらつきについて、粒成長による定性的な変化の傾向を把握することができたものの、核生成挙動の考慮が十分でないために、定量的な予測精度は不十分である。従って、冷却後の材質の予測など、定量的な評価が必要となる用途への、この解析手法の適用は困難である。
【0009】
このように、材質などの定量的な評価に用いるために、従来のフェーズフィールド法によって、温度変化により相変態をする材料の組織を予測することは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る材料組織予測装置1の構成を示す構成図である。なお、図中における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0017】
まず、材料組織予測装置1が適用される一般的な金属材加工ラインについて説明する。
【0018】
金属材加工ラインでは、金属材の加熱又は冷却の少なくとも一方を行う。
【0019】
加熱装置は、誘導加熱装置又はガス加熱装置などである。冷却装置は、水冷装置、油冷装置又は強制空冷装置などである。これらの装置は、複数あってもよい。また、加熱装置と冷却装置の配置順序は任意である。
【0020】
ここでは、金属材加工ラインの一例として薄板熱間圧延ライン2に材料組織予測装置1を適用した構成について説明する。また、金属材MTを主に冷却する場合について説明するが、金属材MTを加熱する場合も同様である。
【0021】
図2は、実施形態に係る材料組織予測装置1が適用された薄板熱間圧延ライン2の構成を示す構成図である。
図2では、薄板熱間圧延ライン2のランアウトテーブル付近の構成を示している。
【0022】
薄板熱間圧延ライン2は、金属材MTから所望の材質の製品を製造するための設備である。薄板熱間圧延ライン2には、仕上圧延機11、水冷装置12、巻取機13、搬送ローラ14、複数の放射温度計15、及び光学式金属検知器16が設けられている。
【0023】
金属材MTは、加熱された金属材MTが仕上圧延機11により圧延された後、搬送ローラ14により搬送されつつ、水冷装置12より冷却される。水冷装置12は、例えば、ラミナー水冷装置である。水冷装置12より冷却された金属材MTは、巻取機13に巻き取られる。放射温度計15及び光学式金属検知器16により検出された金属材MTの各種データは、温度制御装置5に送信される。
【0024】
温度制御装置5は、金属材MTの温度変化を予め設定された冷却曲線(温度変化曲線)に一致させるように、放射温度計15により計測された温度及び材料組織予測装置1から受信した金属材MTの変態に伴う発熱の予測値に基づいて、水冷装置12を制御する。
【0025】
材料組織予測装置1は、主にコンピュータで構成されている。材料組織予測装置1は、薄板熱間圧延ライン2から受信した金属材MTの各種データに基づいて、金属材MTの組織の予測及び金属材MTの材質評価などをするための演算処理をする。材料組織予測装置1は、演算処理結果を温度制御装置5に送信する。演算処理結果には、変態に伴う発熱の予測値などの金属材MTについての情報が含まれている。
【0026】
材料組織予測装置1は、金属材MTの組織の予測及び材質の評価の計算を、金属材MTが薄板熱間圧延ライン2の所定の位置に到達した場合、又は、材料組織予測装置1の操作画面から計算開始の指示があった場合などに開始する。所定の位置とは、例えば、水冷装置12の上流側に設置された放射温度計15の直下である。所定の位置への金属材MTの到着は、ライン上の要所に設置された光学式金属検知器16による検出信号又は搬送ローラ14の回転計による回転数に基づいて計算される搬送距離実績値などにより検知される。
【0027】
金属材MTの組織の予測をするための計算対象となる計算対象領域は、予め決められている。計算対象領域は、金属材MTの温度条件又は冷却条件(加熱条件)などの材料組織に影響がある処理条件を代表する位置となる。計算対象領域の数は任意であるが、多過ぎると計算量が増大する。ここでは、薄板熱間圧延ライン2における金属材MTの計算対象領域は、
図3に示すように、圧延後の金属材MTの長手方向の先端から5mの位置P1、長手方向の中央の位置P2、及び長手方向の尾端から5mの位置P3の3点とする。また、これらの位置P1〜P3は、板表面から内部方向に板厚の1/4の部分とする。
【0028】
また、各計算対象領域の大きさが小さ過ぎると、結晶粒の形状特性値を正しく決定できない。一方、計算対象領域の大きさがある一定以上あれば、形状特性値の統計量の精度はあまり変わらない。但し、計算対象領域の大きさが大き過ぎると、計算量が増大する。従って、結晶粒の形状特性値を評価する場合には、想定される析出相の結晶粒径の5倍〜5000倍とするのが望ましい。
【0029】
図3を参照して、計算点Pcの配置について説明する。材料組織予測装置1は、各計算対象領域内に多数の計算点Pcをメッシュ状に配置する。これらの計算点Pcの間隔は、大き過ぎると結晶粒の形状特性値を正しく決定できず、小さ過ぎると計算量が増大する。従って、計算対象領域内の計算点Pcの間隔は、想定される析出相の結晶粒径の1/500〜1/5とするのが望ましい。
【0030】
材料組織予測装置1は、各計算点の情報を保持するため、温度計算値、核生成順位、変態に伴い拡散する元素(例えば、オーステナイトからフェライトに変化する場合は炭素)の濃度c、及びスカラー量φについての記憶領域を確保する。
【0031】
温度計算値、核生成順位、及び拡散元素濃度の記憶領域の容量は、(計算対象領域の数)×(計算対象領域の大きさ)/(計算点の間隔)となる。
【0032】
スカラー量φの記憶領域の容量は、(結晶の総数)×(計算対象領域の数)×(計算対象領域の大きさ)/(計算点の間隔)となる。
【0033】
スカラー量φは、各計算点における結晶粒の存在確率を表す。計算点が結晶粒の内部の場合、スカラー量φは1である。計算点が結晶粒の外部の場合、スカラー量φは0である。計算点が粒界の場合、スカラー量φは0よりも大きく1よりも小さい。
【0034】
図1は、本実施形態に係る材料組織予測装置1の構成を示すブロック図である。
図1中の矢印は、主に情報(又はデータ)の流れを示している。
【0035】
材料組織予測装置1は、核生成順位決定部101、初期温度計算部102、温度計算部103、核生成回数計算部104、核生成部105、粒成長計算部106、変態発熱計算部107、時間ステップ更新部108、最終ステップ判定部109、形状特性値計算部110、統計量計算部111、材質計算部112、許容範囲判定部113、判定結果出力部114、下工程対処部115、温度変化曲線設定部116、温度変化曲線修正部117、統計量入力部118、核生成頻度式修正部119、及び温度変更部120を備えている。
【0036】
まず、作業者は、金属材サンプルから母相の材料組織に関する情報(以下、「母相組織情報」という。)を取得する。母相組織情報の取得方法の具体的な例について、以下に説明する。
【0037】
金属材サンプルは、材料組織を予測する金属材MTと合金成分及び上工程のプロセス(温度条件又は加工率)がほぼ同一条件の金属である。作業者は、この金属材サンプルを母相のまま急冷(組織凍結)し、研磨し、エッチングする。このように処理された金属材サンプルを、顕微鏡で観察すると、母相の粒界が際立った画像が得られる。金属材MTが鉄鋼材料の場合には、ピクリン酸溶液で腐食することにより、母相であるオーステナイト組織の粒界を明瞭に観察することができる。一般にエッチング後の画像では、傾角(隣接する結晶間の結晶方位の差)の小さい粒界ほど細く薄く現れる。目視により又は画像解析ソフトウェアを用いて、この画像に現れる粒界の太さ及び濃さを検出することで傾角を知ることができる。
【0038】
また、金属材サンプルを冷却後、研磨して、走査型電子顕微鏡を応用したEBSD(electron back scattering diffraction)装置で観察した画像から、析出相の各結晶粒の結晶方位が得られる。母相の結晶方位と析出相の結晶方位には一定の関係がある。この関係を利用して母相の結晶方位と粒界を再構築できる。従って、EBSD装置で観察した画像から粒界の傾角を把握してもよい。
【0039】
このようにして、作業者は、母相組織情報を取得する。このように画像から母相組織情報を取得する行為は、作業者が人為的に行ってもよいし、材料組織予測装置1がプログラムにより実行してもよい。
【0040】
核生成順位決定部101は、母相組織情報に基づいて金属材MT内の各計算対象領域の各計算点の核生成順位を決定する。核生成順位は、母相からの析出相の核生成の順序を表す。ここでは、核生成順位が小さい程、先に核生成されるものとする。多結晶金属では、複数の粒界が交差する部分又は傾角の大きい粒界の部分で核生成が起こり易い。従って、このような部分の計算点の核生成順位を高くするように、各計算点の核生成順位を決定する。
【0041】
図4及び
図5を参照して、核生成順位決定部101による核生成順位の決定方法について説明する。
図4は、核生成順位決定部101により各計算点をレベル分けした金属材サンプルの模式図である。
図5は、核生成順位決定部101により各計算点の核生成順位を決定した金属材サンプルの模式図である。
図4及び
図5中の破線L1,L2,L3,L4は、母相の粒界の位置を示している。粒界の各部分は、最も近い計算点に属するものとする。
【0042】
核生成順位決定部101は、各粒界L1〜L4についてレベルを決定する。粒界L1〜L4は、金属材サンプルの画像における太さ及び濃さに応じて、レベル1からレベル4の4段階に分ける。粒界L1〜L4は、画像における粒界が太く濃いほど、核生成の優先度の高いレベルが付けられる。太さ又は濃さを判断する基準は、予め決められた絶対的な基準でもよいし、全ての粒界の中での位置付けをするための相対的な基準でもよい。ここでは、粒界L1〜L4は、太く濃い粒界をレベル4、やや太く濃い粒界をレベル3、通常の粒界をレベル2、細く薄い粒界をレベル1のようにレベル分けする。
【0043】
次に、レベル分けした粒界L1〜L4に基づいて、各計算点のレベル分けをする。
図4の升目(計算点)の中央の数値は、その計算点のレベルを示している。各計算点は、次のようにレベル分けする。
【0044】
レベル4の粒界L4が交差する計算点をレベル4、レベル3の粒界L3が交差する計算点をレベル3、レベル2の粒界L2が交差する計算点をレベル2、レベル1の粒界L1が交差する計算点をレベル1とする。粒界L1〜L4が交差しない計算点を、核生成順位が最も低くなるレベル0とする。複数の粒界L1〜L4が交差する計算点(即ち、トリプルジャンクションに相当する計算点)を核生成順位が最も高くなるレベル5とする。
【0045】
核生成順位決定部101は、各計算点のレベル分け後、各計算点の核生成順位を決定する。
図5の升目の中央の数値は、その計算点の各生成順位を示している。各計算点は、次のように核生成順位を決定する。
【0046】
核生成順位決定部101は、レベルの高い計算点から順に核生成順位を振る。従って、レベル5の計算点には、最も小さい番号が振られる。即ち、これらの計算点では、早期に核生成がされる。また、レベル0の計算点には、最も大きい番号が振られる。また、同一のレベルの複数の計算点に対しては、作業者の意図しない偏りのある選択又は画像解析ソフトウェアによる走査順による影響を避けるために、乱数で核生成順位を決める。
【0047】
初期温度計算部102は、金属材MTの各計算対象領域の各計算点の初期温度を計算する。初期温度計算部102は、放射温度計15による測定値を用いて、初期温度を計算する。なお、初期温度の計算は、接触式温度計による測定値又は上工程の実績値などに基づく予測値を用いてもよい。初期温度計算部102は、計算した初期温度を補正してもよい。例えば、初期温度計算部102は、金属材MTの温度測定位置と計算対象領域が離れている場合、又は、放射温度計15による測定後時間が経過した場合には、金属材MTの表面からの熱放射、空気の対流、又は材料内部の熱伝導などを考慮して補正する。なお、計算対象領域の大きさが温度勾配に比べて十分に小さく、同一の計算対象領域内の複数の計算点の温度差が殆ど無視できる場合には、その計算対象領域内の全ての計算点の初期温度を同一値としてもよい。このように初期温度を決定しても、計算精度の低下は限定的であるため、実用上は、この計算精度の低下を考慮して運用すればよい。
【0048】
材料組織予測装置1は、核生成順位決定部101及び初期温度計算部102による計算後、時間ステップ毎に、温度計算部103、核生成回数計算部104、核生成部105、粒成長計算部106、変態発熱計算部107、時間ステップ更新部108、及び最終ステップ判定部109による計算を行う。材料組織予測装置1は、時間ステップ毎に実行されるこれらの一連の計算を、金属材MTの冷却(又は加熱)の開始から終了まで計算する。
【0049】
温度計算部103は、金属材MTの各計算対象領域の各計算点の温度を時間ステップ毎に計算する。金属材MTの冷却(又は加熱)が実際に開始される前は、温度計算部103は、目標とする温度変化曲線を用いて、各計算点の温度を計算する。金属材MTの冷却(又は加熱)が実際に行われている間は、温度計算部103は、計算時点までの実績の温度変化曲線及び計算時点以降の目標とする温度変化曲線を用いて、各計算点の温度を計算する。金属材MTの冷却(又は加熱)が実際に行われた後は、温度計算部103は、実績の温度変化曲線を用いて、各計算点の温度を計算する。例えば、実績の温度変化曲線は、冷却水流量又は誘導加熱装置の電流などの実績値に基づいて、差分法を用いた温度モデルにより計算される。
【0050】
核生成回数計算部104は、母相と析出相の自由エネルギー差及び拡散係数に基づいて、計算対象領域内での核生成回数ΔNαを計算する。まず、核生成回数計算部104は、母相からの析出相の核生成頻度Iを計算する。核生成頻度Iは、例えば、次式で表される。
【数1】
【0051】
ここで、Rはガス定数である。Tは絶対温度である。Dγは変態に伴い拡散する元素の母相における拡散係数であり、元素濃度と温度の関数である。ΔGvは、母相と析出相の自由エネルギー差であり、熱力学データベースによる値を利用した値である。k1は界面エネルギー及び転位密度に依存する係数である。k2は活性化エネルギーに依存する係数である。
【0052】
核生成回数計算部104は、計算した核生成頻度Iを用いて、ある時間ステップにおいて計算対象領域内で核生成させる回数ΔNαを、次式により計算する。回数ΔNαは、整数であるため、計算結果の少数部を残差resとして記憶する。記憶した残差resは、次の時間ステップの計算に加える。
【数2】
【数3】
【0053】
ここで、Δtは時間増分である。関数TRUNCは、小数点以下を切り捨てる関数である。Vγは、計算対象領域内の未変態部の体積(2次元計算の場合は面積)である。未変態部か否かは、各計算点のスカラー量φiが全ての結晶粒(i=1〜n)について0になっているか否かで判断する。
【0054】
核生成部105は、時間ステップ毎に、計算対象領域内に核生成回数計算部104により計算された核生成回数ΔNαに従って、ΔNα個の新たな析出相の核を生成する。まず、核生成部105は、核生成順位の高い方から計算点を探索する。核生成部105は、探索した計算点が析出相に含まれていないことを確認する。計算点が析出相に含まれていないことを確認するには、計算点のスカラー量φiが全ての結晶粒(i=1〜n)について0になっていることを確認すればよい。探索した計算点が、他の析出相の結晶粒に既に含まれていた場合は、核生成順位が次に高い計算点を探索する。これを繰り返して、核生成部105は、析出相に含まれていない計算点を決定する。核生成部105は、決定した計算点に新たな結晶核を生成する。
【0055】
具体的には、次のような演算処理をする。核生成部105は、結晶粒の総数nを1つ増やし、増やした結晶粒についてのスカラー量φnの記憶領域を新たに割り付ける。核生成部105は、結晶核が生成された計算点の新に生成された結晶粒についてのスカラー量φnを1にし、それ以外の計算点の新に生成された結晶粒についてのスカラー量φnを0とする。
【0056】
粒成長計算部106は、フェーズフィールド法を用いて、析出相の粒成長による析出相の界面の移動を計算する。具体的には、粒成長計算部106は、全ての計算点のスカラー量φiを次式により更新する。
【数4】
【数5】
【0057】
ここで、nは結晶粒の総数である。i,j,kは、結晶粒の番号である。結晶粒の番号が1のときは、母相を示している。ηは計算点間隔である。Gi,Gjは、熱力学データベースによる値を利用した結晶粒の自由エネルギーを表している。μは界面の易動度(モビリティ)である。σは界面エネルギーである。μ,σは材料の合金組成による定数である。
【0058】
また、粒成長計算部106は、変態に伴い拡散する元素の濃度cを次の拡散方程式により更新する。
【数6】
【数7】
【0059】
ここで、γは母相、αは析出相をそれぞれ示す。Dαは変態に伴い拡散する元素の析出相における拡散係数である。∇はベクトル微分演算子である。
【0060】
変態発熱計算部107は、ギブス−ヘルムホルツの式により、結晶粒の自由エネルギーから温度Tにおける母相のエンタルピHα及び析出相のエンタルピHγを次式により計算する。
【数8】
【数9】
【0061】
次に、変態発熱計算部107は、粒成長による析出相界面の移動の計算結果に基づいて、単位重量あたりの変態発熱量Qを次式により計算する。
【数10】
【0062】
ここで、wiは計算点iの占める部分の重量である。Mはモル質量である。
【0063】
変態発熱計算部107は、計算した単位重量あたりの変態発熱量Qを温度制御装置5に伝送する。温度制御装置5は、変態発熱計算部107により計算された変態発熱量Qに基づいて、目標とする温度変化曲線に従って金属材MTを冷却するように、薄板熱間圧延ライン2の水冷装置12を制御する。
【0064】
変態発熱計算部107による演算処理終了後、時間ステップ更新部108は、時間ステップを更新する。更新による時間ステップの増分は、上述の拡散方程式による界面の移動量が、計算点の間隔を超えない範囲で行う。
【0065】
最終ステップ判定部109は、終了条件を満たしているか否かの判定を行う。終了条件を満たしていない場合、材料組織予測装置1は、温度計算部103による演算処理に戻って、上述の一連の演算処理を繰り返す。これにより、金属材MTの計算対象領域内の材料組織の変化がシミュレーションされる。
【0066】
最終ステップ判定部109による終了条件を満たした場合、材料組織予測装置1は、以降の演算処理を実行する。なお、以降に説明する演算処理についても、上述した繰り返し行われる一連の演算処理に含めてもよい。
【0067】
形状特性値計算部110は、各結晶粒について、スカラー量φに基づいて、各種形状特性値を計算する。形状特性値は、粒面積、面積率、粒度、等価円直径、等価楕円の長軸長さ、等価楕円の短軸長さ、等価楕円の長短軸比、周囲長、真円度、粒体積、体積率、等価球直径、等価楕円体の長軸長さ、等価楕円体の短軸長さ、等価楕円体の長短軸比、又は表面積などである。形状特性値計算部110は、例えば、番号がiの結晶粒のスカラー量φiを計算対象領域全体に亘って積算し、粒面積Ai(2次元計算の場合)又は粒体積Vi(3次元計算の場合)を計算する。
【数11】
【数12】
【0068】
形状特性値計算部110は、上式により計算した粒面積Ai又は粒体積Viに基づいて、次式により等価円直径diを計算する。
【数13】
【数14】
【0069】
統計量計算部111は、形状特性値計算部110により計算された複数の結晶粒の形状特性値の統計量を計算する。統計量は、形状特性値の度数、最大値、最小値、分散値、平均値、粒面積に基づく加重平均値、粒体積に基づく加重平均値、標準偏差値、ガンマ分布係数、ワイブル分布係数、切断法に基づく平均粒径、比較法に基づく平均粒径、又はASTM(American Society for Testing and Materials)規格に基づく粒度番号などである。
【0070】
2次元計算では、統計量計算部111は、粒面積に基づく重み付き平均粒径を次式により計算する。
【数15】
【0072】
3次元計算では、統計量計算部111は、粒体積に基づく重み付き平均粒径を次式により計算する。
【数16】
【0073】
2次元計算では、統計量計算部111は、粒面積に基づく重み付き粒径標準偏差を次式により計算する。
【数17】
【0074】
3次元計算では、統計量計算部111は、粒体積に基づく重み付き粒径標準偏差を次式により計算する。
【数18】
【0075】
材質計算部112は、統計量計算部111により計算された形状特性値の統計量に基づいて、金属材MTの材質を計算する。計算された材質は、冷却後(又は加熱後)の金属材MTの予測される材質となる。材質は、降伏応力(YS)、引張強度(TS)、伸び(EL)、硬さ、靭性、穴拡げ性、又は磁性などである。
【0076】
例えば、材質計算部112は、Hall−Petch則により、降伏応力YSを次式により計算する。
【数19】
【0077】
ここで、kは実験などで予め決められた定数である。
【0078】
許容範囲判定部113は、材質計算部112により計算された金属材MTの材質が予め決められた許容範囲内か否かを判定する。許容範囲判定部113は、判定結果を判定結果出力部114に出力する。
【0079】
判定結果出力部114は、許容範囲判定部113による判定結果を表示画面又は記憶媒体などに出力する。判定結果出力部114は、金属材MTの材質が許容範囲を外れた場合、例えば、次のような演算処理をする。判定結果出力部114は、許容範囲を外れた計算対象領域の金属材MTにおける位置、又は許容範囲を外れた結晶粒の計算対象領域における位置などを表示画面又は記憶媒体に出力する。判定結果出力部114は、金属材MTの材質が許容範囲を外れたことを作業者に知らせるための警報(画面表示又は警報音)を出力する。判定結果出力部114は、金属材MTの許容範囲を外れた部分について、下工程で対処するために、下工程対処部115に必要な情報を出力する。
【0080】
下工程対処部115は、許容範囲判定部113により許容範囲外と判定された金属材MTについて、下工程で対処するための演算処理をする。ここで、下工程とは、例えば、熱間薄板圧延ラインの場合、切断、溶接、冷間圧延、酸洗、レベラー、又はスキンパスなどである。下工程対処部115は、薄板熱間圧延ライン2に設置された光学式金属検知器16又は搬送ローラ14の回転計などにより、金属材MTの許容範囲外と判定された計算対象領域を追跡する。下工程対処部115は、金属材MTの許容範囲外の部分を処理させるために、処理を担当する下工程に追跡情報などを伝送する。例えば、下工程が切断装置による切断の場合、切断装置は、金属材MTの許容範囲外の部分が到達すると、該当部分の切断をする。これにより、金属材MTから材質が許容範囲外の部分が取り除かれる。
【0081】
次に、許容範囲判定部113により金属材MTの材質が許容範囲を外れたと判定された場合に、金属材MTに与える温度を変更する方法について説明する。
【0082】
温度変更部120は、許容範囲判定部113により金属材MTの材質が許容範囲外と判定された場合、統計量計算部111により計算された析出相の結晶粒の形状特性値を統計処理した結果が許容範囲内になるように、許容範囲外とされた計算対象領域の温度変化曲線又は入出熱量を修正するための計算をする。
【0083】
例えば、統計量計算部111により計算された粒径標準偏差が許容範囲を外れた場合、温度変更部120は、温度制御装置5の制御に用いる温度変化曲線を折れ線で表した場合のある節点pの温度Tpを次式により変更する。
【数20】
【0084】
ここで、σdAIMは、粒径標準偏差の目標値である。例えば、σdAIMは、許容範囲の中央値である。
【0085】
温度変更部120は、温度Tpに微小値±ΔTを加えた場合の粒径標準偏差の2つの計算値σd(Tp+ΔT),σd(Tp−ΔT)を試算する。温度変更部120は、試算結果に基づいて影響係数を次式により計算する。
【数21】
【0086】
温度Tpが操業上の上限値Tpmaxを超える場合、温度変更部120は、温度Tpを上限値Tpmaxにする。温度Tpが操業上の下限値Tpminを下回る場合、温度変更部120は、温度Tpを下限値Tpminにする。温度変更部120は、計算した節点pの温度Tpを温度変化曲線修正部117に出力する。
【0087】
温度変化曲線修正部117は、温度変化曲線設定部116に設定されている温度変化曲線の節点pの温度を、温度変更部120により計算された温度Tpに修正する。これにより、粒径標準偏差が許容範囲内となるように温度変化曲線が修正される。
【0088】
次に、核生成頻度式の係数を修正する方法について説明する。
【0089】
まず、作業者は、冷却(又は加熱)が完了後の金属材MTの形状特性値の統計量の実績値を次のように測定する。
【0090】
作業者は、冷却(又は加熱)が完了後の金属材MTの顕微鏡写真又は電子顕微鏡写真を撮影する。作業者は、撮影した写真を画像解析して、形状特性値の統計量の実績値を得る。例えば、鉄鋼の試験片を研磨後、フェライト組織をナイタール液で腐食すると、フェライト結晶粒の粒界を明瞭に観察することができる。作業者は、このように処理された鉄鋼の試験片を光学顕微鏡又は走査型電子顕微で写真に撮る。撮影した画像を画像処理装置に読み込ませて、輝度調整後、濃淡の適切な閾値で二値化することで粒界が抽出される。その後、作業者は、各結晶粒の画素数をカウントして、面積に換算した後集計する。これにより、平均粒径又は粒径標準偏差などの統計量が得られる。その他に、平均粒径又は粒径標準偏差などの統計量は、EBSD装置により得られる。また、作業者は、金属材MTに縦波超音波を繰り返し反射させる。反射させた検出波形の減衰特性から平均粒径などの統計量が得られる。
【0091】
作業者は、このようにして得られた形状特性値の統計量の実績値を、材料組織予測装置1の統計量入力部118に入力する。材料組織予測装置1への実績値の入力方法は、画像処理装置から伝送してもよいし、記憶媒体を介して入力してもよい。
【0092】
統計量入力部118には、統計量計算部111により計算された統計量の予測値及び測定された統計量の実績値が入力される。統計量入力部118は、統計量の予測値及び統計量の実績値を核生成頻度式修正部119に出力する。
【0093】
核生成頻度式修正部119は、統計量の予測値及び統計量の実績値に基づいて、次のように核生成頻度式の係数を修正する。
【0094】
核生成頻度式修正部119は、統計量の予測値σdと統計量σdACTの実績値の偏差を計算する。核生成頻度式修正部119は、この偏差を小さくするように、核生成回数計算部104で用いる式(1)に示す核生成頻度式の係数k1,k2を修正する。
【0095】
係数k1の修正は、次式により行う。
【数22】
【0096】
核生成頻度式修正部119は、係数k1に微小値±Δk1を加えた場合の粒径標準偏差σdの2つの計算値σd(k1+Δk1),σd(k1−Δk1)を試算する。核生成頻度式修正部119は、試算結果に基づいて影響係数を次式により計算する。
【数23】
【0097】
係数k1が操業上の上限値k1maxを超える場合、核生成頻度式修正部119は、係数k1を上限値k1maxにする。係数k1が操業上の下限値k1minを下回る場合、核生成頻度式修正部119は、係数k1を下限値k1minにする。
【0098】
このように修正された係数k1,k2を材料の合金組成の違いに応じて層別に記憶させてもよい。例えば、鉄鋼材料の場合であれば、炭素含有量、ニオブ含有量、クロム含有量などに応じて、極低炭素鋼、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、ニオブ鋼、クロム鋼のように層別に区分する。このようにすることで、合金組成の違いによる影響を補正することができる。
【0099】
ここで、結晶粒径のバラツキ度合いは、核生成挙動との相関が強い。例えば、初期に核生成した結晶粒は十分に粒成長し、結晶粒径が大きく成り易い。このため、核生成頻度式の係数の算定には、形状特性値として、結晶粒径の標準偏差、ガンマ分布係数、ワイブル分布係数、又はASTM粒度番号などの結晶粒径の分布に関する統計量を用いるのが適している。
【0100】
ここでは、係数k1を修正する例を示したが、係数k2を修正する場合も同様である。また、核生成頻度式として式(1)を用いたが、他の式でも同様の手順で核生成頻度式の係数を修正することができる。
【0101】
本実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0102】
従来のフェーズフィールド法では、冷却過程(又は加熱過程など)のシミュレーションで、妥当なタイミングで妥当な数量の固相変態の起点となる核を生成させることができていないために、定量的な予測精度が不十分であった。
【0103】
これに対して、本実施形態に係る材料組織予測装置1では、金属材MTの核生成及び粒成長を組み合わせて計算することで、母相組織の粒界付近などの適正な位置に、適正な数量の核を適正なタイミングで生成させることができ、温度変化により相変態をする金属材MTの組織を定量的に予測することができる。
【0104】
従って、材料組織予測装置1は、金属材MTの組織の定量的な予測結果に基づいて、金属材MTの熱処理(冷却、加熱、又は等温過程など)による材質を予測することで、精度の高い材質の予測をすることができる。
【0105】
また、材料組織予測装置1は、熱処理後の金属材MTの材質の予測結果を評価することで、評価結果を製品の製造プロセスに反映させることができる。例えば、製品を製造するシステム(例えば、薄板熱間圧延ライン2)において、複数の評価結果を収集することで、以降に処理される金属材MTの材質の品質を向上させることができる。また、製品を製造するシステムにおいて、熱処理された金属材MTの材質の評価結果が許容範囲外であった場合、金属材MTの許容範囲外と判定された部分を下工程で対処することで、その金属材MTが加工された製品の材質を許容範囲内に修正することができる。
【0106】
さらに、材料組織予測装置1は、粒成長の計算結果に基づいて、変態発熱量を計算する。薄板熱間圧延ライン2は、材料組織予測装置1により計算された変態発熱量に基づいて、金属材MTに与える温度を制御することで、固相変態の挙動を反映した温度制御をすることができる。
【0107】
また、材料組織予測装置1は、計算した析出相の結晶粒の形状特性値の統計量の予測値が、熱処理後の析出相の結晶粒の形状特性値の統計量の実績値に一致するように、核生成頻度式の係数を修正する。核生成は確率的な現象であり、理論的に十分に解明されていない。このため、核生成頻度式にはある程度の誤差がある。従って、核生成頻度式の係数を実績値に基づいて修正することで、材料組織予測装置1による核生成挙動の計算精度を高めることができる。これにより、材料組織予測装置1による金属材MTの組織の予測精度を高めることができる。
【0108】
なお、実施形態において、予測の対象とする材料は、説明したものに限らない。例えば、相変態をする多結晶材料として、材料料、鉄鋼材料(溶質に炭素、マンガン、シリコン、ニオブ、ニッケル、アルミニウム、窒素などを含む)、磁性体材料(銅、鉄、白金、パラジウム、コバルト、クロム、ニッケル、ネオジウム、バリウム、ビスマス、サマリウムなどからなる合金や酸化物)、誘電体、又は、ポリスチレン−ポリメタクリル酸メチルといったブロック共重合体のような高分子有機材料などに代表される機能性材料などでもよい。例えば、磁性体材料では、加熱又は冷却などの熱処理(等温過程、アニール及び時効処理なども含む)によって、核形成もしくは相分離を起こし、結果さまざまに微細組織が形成される。また、誘電体及び高分子材料も、同様に、加熱又は冷却による熱処理によってさまざまな組織形態を形成する。従って、実施形態と同様の構成で、これらの材料の熱処理中の相変態又は相分離によって生成される材料組織を定量的に予測してもよい。例えば、材料組織予測装置による予測方法は、有機材料の結晶化プロセスに適用してもよい。
【0109】
実施形態において、予測する相変態の母相及び析出相は、任意の組合せを選択してよい。例えば、鉄鋼材料では、フェライト相、オーステナイト相、パーライト相、マルテンサイト相、ベイナイト相、セメンタイト相の任意の組合せの相変態による材料組織の予測をしてもよい。また、鉄鋼材料に限らず、他の材料においても同様に、任意の組合せの相変態による材料組織の予測をしてもよい。
【0110】
実施形態において、核生成順位の決定方法は、説明したものに限らない。例えば、材料組織予測装置1に、典型的な事例について核生成順位が決定されたサンプル情報を記憶媒体に予め記憶させておいてもよい。材料組織予測装置1は、核生成順位の決定時に、予測対象の金属材MTと合金成分及び上工程のプロセス(温度又は加工率など)が類似している事例のサンプル情報を検索して、サンプル情報に振られた核生成順位に従って、核生成順位を決定してもよい。このように、核生成順位を決定することで、材料組織予測装置1による計算量又は作業者による作業量を軽減することができる。
【0111】
実施形態では、析出相の組織の時間発展を演算することで、材料組織の予測をしたが、析出相と同様に、母相の組織の時間発展を演算してもよい。
【0112】
本実施形態に係る材料組織の予測方法は、製造システム(例えば、薄板熱間圧延ライン)に限らず、どのようなシステム又は装置に組み込まれていてもよい。また、材料組織予測装置1は、実施形態で説明した構成に限らない。他の装置にある任意の組合せの機能が材料組織予測装置1にあってもよいし、材料組織予測装置1の一部の機能が他の装置にあってもよい。
【0113】
材料組織予測装置を構成するコンピュータはどのように構成されていてもよい。例えば、コンピュータは、各種プロセッサなどの演算部、メモリ又はハードディスクなどの記憶部を備える。この他に、コンピュータは、入出力部及び表示部などを備えていてもよい。また、コンピュータは、マイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータなどの種別を問わない。
【0114】
実施形態において、材料組織予測装置(コンピュータ)で演算していた処理の任意の一部の処理を、人が行ってもよい。実施形態に係る材料組織の予測方法に基づく原理及び理論は、自然法則を利用するものである。従って、材料組織の予測方法の一部の処理を人が行ったとしても、実施形態に係る材料組織の予測方法は、全体として自然法則を利用するものである。
【0115】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。