(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
仕掛けをキャストしたり魚を釣り上げるとき、軽量の釣り竿が釣り感度に有利であり、釣り竿の軽量化のためには、軽量の釣り糸ガイドが要求される。
【0007】
図19に示す金属製のフレームを備えた釣り糸ガイドを軽量化するためには、釣り糸ガイドの素材として薄い金属シートを用いること、取付足の厚さや長さを小さくすることなどが考慮できる。しかし、薄い厚さの取付足は魚を釣り上げるときの負荷集中(
図19の符号LCで示した部分参照)に十分に抵抗できず破損したり変形し得る。即ち、釣り糸ガイドの軽量化のために薄い厚さの金属シートを用いることは、釣り糸ガイドが必要とする強度を十分な水準で提供できない。また、短い長さの取付足は巻き糸から抜けてしまい得る。一方、プラスチック製のフレームを備えた釣り糸ガイドは必要な強度を備えるために必然的に厚い支脚と厚い取付足を有するようになるが、これによって巻き糸が厚い取付足に稠密に巻きつき難くなって、釣竿の生産性を悪化させる。また、厚い取付足は釣り竿との段差を増加させて釣り糸の絡みを誘発し得る。
【0008】
釣り糸ガイドの軽量化のためには、釣り糸ガイドの支脚や取付足の厚さを小さくし取付足の長さも短くしながらも要求される強度が満たされなければならない。しかし、従来技術の釣り糸ガイドは軽量化の達成、要求される強度の充足、巻き糸からの抜け防止という3つの要因を全て満たすことはできない。
【0009】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するために創案されたものであって、本発明は要求される強度を有しながらも軽量な釣り糸ガイドとこれを製造する方法を提供する。
【0010】
また、本発明は前述した釣り糸ガイドを備える釣り竿を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は釣り竿に取り付けられて釣り糸を案内する釣り糸ガイドを提供する。例示的な釣り糸ガイドは、釣糸が通過するガイドリングを保持するリング保持部と、上記リング保持部から延びる少なくとも1つの支脚と、上記支脚の末端に位置し釣り竿に取り付けられる取付足と、上記取付足に形成された補強溝とを含む。上記取付足は、釣り竿の一部と接触する下面と、厚さ方向において上記下面の反対側に位置する上面と、上記支脚の末端と連結する一端と、長手方向において上記一端の反対側に位置する他端を有する。上記補強溝は上記取付足の下面において上記一端から上記他端の側に取付足の長手方向に沿って延びる。上記補強溝は、上記取付足の一端に位置する開放端と、上記開放端の反対側に位置し、上記取付足の他端から上記取付足の一端の側に離隔している閉鎖端とを有する。上記支脚の一部と上記取付足は金属材料からなる。
【0012】
他の形態において、上記補強溝と上記取付足の上面との間の上記取付足の厚さ方向における一部は加工硬化部を含む。また、上記補強溝は上記取付足の下面を上記取付足の上面の側に押し込んで形成される。
【0013】
他の形態において、上記補強溝の深さは上記取付足の下面と上面との間の厚さの20%〜80%である。また、上記補強溝の長さは、上記一端と他端との間の長さの10%〜90%である。また、上記補強溝の幅は上記取付足の最大幅の20%〜80%である。
【0014】
他の形態において、上記釣り糸ガイドは、上記支脚の表面に形成され上記補強溝から延びる支脚補強溝をさらに含む。
【0015】
本発明の他の側面は、釣り糸ガイドを製造する方法に関連する。例示的には、少なくとも1つの支脚と取付足とを備える釣り糸ガイドを金属のブランクシートから製造する方法を提供する。例示的な釣り糸ガイドの製造方法によれば、上記取付足の釣り竿の一部と接触する下面に補強溝が形成される。上記補強溝は上記取付足の釣り竿の一部と接触する下面を上記取付足の厚さ方向において上記下面の反対側に位置する上面の側に押し込み加工して上記取付足の一端から上記取付足の長手方向における反対側に位置する他端の側に上記取付足の長手方向に延びるように形成される。また、末端で上記取付足の一端と連結し上記取付足に対して曲げられた上記支脚が形成される。
【0016】
もう1つの例示的な釣り糸ガイドの製造方法によれば、少なくとも1つの支脚と一端で上記支脚の末端に連結し上記支脚に対して曲げられた取付足は金属シートをプレス加工して形成し、上記取付足には補強溝が形成される。上記補強溝は上記取付足の釣竿の一部と接触する下面に上記取付足の一端から上記取付足の長手方向における反対側に位置する他端の側に上記取付足の長手方向に延びるように形成され、上記取付足の下面を上記取付足の厚さ方向において上記下面の反対側に位置する上面の側に押し込み加工して形成される。
【0017】
本発明の他の側面は前述した釣り糸ガイドまたは前述した釣り糸ガイドの製造方法により製造された釣り糸ガイドを備える釣り竿を提供する。
【発明の効果】
【0018】
この釣り糸ガイドは、負荷が集中する取付足の部分に補強溝を有する。補強溝によって負荷が集中する取付足の部分が加工硬化して、取付足は塑性変形に強い。従って、この釣り糸ガイドは強度が向上した取付足を備える。補強溝により取付足の強度が増すので、釣り糸ガイドの取付足はより一層薄い金属シートから製造することができ、軽量ながらも強度が高い釣り糸ガイドを実現する。補強溝によって強度が向上された取付足は薄い厚さに設計することができる。このような薄い取付足には巻き糸が容易に巻きつけられるので、釣竿の生産性を向上させることができ、さらに釣竿の外周面と取付足との間の段差が小さくなるため釣り糸の絡みを誘発しない。
【0019】
また、取付足の補強溝に流入して硬化した接着剤が取付足を釣り竿に固定するアンカーとして作用するようになるので、この釣り糸ガイドは例えば仕掛けのキャスト時に釣竿ガイドに釣糸が絡まった状態で仕掛けによって釣り糸が引っ張られるときに釣り糸によって加えられる負荷によって巻き糸から分離されることが防止される。従って、この釣り糸ガイドの取付足は従来技術の取付足より短く設定することができる。短く設定された取付足は、釣り糸ガイドの軽量化を実現するのみならず、釣竿の曲げを阻害することなく、釣竿の性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明による釣り糸ガイド及びその製造方法の実施の形態とこれを備える釣り竿の実施の形態を説明する。図面において同一の参照番号は同一または対応する要素または部品を指示する。
【0022】
本明細書で用いられた「前方」、「前」などの方向指示語は釣竿の先端に向かう方向を意味し、「後方」、「後」などの方向指示語は釣竿の後端に向かう方向を意味する。また、本明細書で用いられた「上方」、「上」などの方向指示語はガイドリングが嵌められるリング保持部が取付足に対して位置する方向を基準とし、「下方」、「下」などの方向指示語はその反対方向を意味する。
【0023】
図1及び
図2を参照して実施の形態による釣り竿を説明する。
図1において、矢印Tは釣り竿の先端を指し、矢印Bは釣り竿の後端を指す。
【0024】
実施の形態による釣竿100は細長い円筒形状の竿体を有する。釣り竿の竿体は1つの竿、または複数の部分竿からなる。上記竿体が複数の部分竿からなる場合、部分竿は下挿式(put in type)、上挿式(put over type)、振出式(telescopic type)などで連結される。釣り竿100はその後端付近にリール(図示せず)を取り付けるためのリールシート140を有する。また、釣竿100は竿体の一部111に取り付けられて釣り糸を案内する実施の形態による少なくとも1つの釣り糸ガイド200を備える。以下、上記「釣り竿の竿体の一部」は簡単に釣竿の一部111とし、これは竿体が1つの竿からなる場合その長手方向における一部、または竿体が複数の部分竿からなる場合部分竿のうちのいずれか1つを含む。
【0025】
図2を参照すると、実施の形態による釣り糸ガイド200はその取付部を釣り竿の一部111の外周面に接触させて巻き糸120で上記取付部が位置する釣竿の一部111を稠密に巻きつけて釣り竿100に取り付けられる。巻き糸120を巻きつけた後、巻き糸120の解けを防ぎ隙間を埋めるために、巻きつけられた巻き糸120より大きい範囲に巻き糸及び取付部に接着剤を塗布して硬化させる。そうすると、巻かれた巻き糸120及び取付部の全体にわたって接着剤コーティング130が形成され釣り糸ガイド200は釣り竿100に固着される。
【0026】
図3〜
図18を参照して、実施の形態による釣り糸ガイドを説明する。実施の形態による釣り糸ガイドは、釣り糸が通過するガイドリングを保持するリング保持部と、上記リング保持部から延びる少なくとも1つの支脚と、上記支脚の末端に位置し釣り竿の一部に取り付けられる取付足とを備える。また、実施の形態による釣り糸ガイドは、取付足の強度を向上させるための補強溝を取付足に有する。一実施の形態による釣り糸ガイドは1つの取付足を備える。1つの取付足を備える釣り糸ガイドは取付足と連結する1つの支脚または一対の支脚を備えることができる。もう1つの実施の形態による釣り糸ガイドは釣り竿の長手方向に離隔されている2つの取付足を備える。2つの取付足を備える釣り糸ガイドは取付足のうちの1つと連結する1つの支脚または一対の支脚を備えることができる。
【0027】
図3〜
図13は一実施の形態による釣り糸ガイド200を示す。
図3〜
図13に示す釣り糸ガイド200は1つの取付足を有し、このような釣り糸ガイドは当該分野において、「シングルフット(single−foot)釣り糸ガイド」として参照される。
【0028】
図3〜
図13を参照すると、一実施の形態による釣り糸ガイド200は、釣り糸が通過するガイドリング210と、ガイドリング210を保持するリング保持部220とリング保持部220から延びる支脚230と、支脚230の末端に位置し釣り竿の一部111に取り付けられる取付足240を備える。ガイドリング210を除いた釣り糸ガイド200の各部分は金属シートから形成される。
【0029】
この実施の形態において、ガイドリング210は円形であり、その中に釣り糸が通過する円形の開口を有する。ガイドリング210はその表面で釣り糸と接触し、セラミックのような硬質の材料からなる。リング保持部220はガイドリング210をその外周面全体にわたって保持するように円形の開口が形成されたリング状を有する。ガイドリング210はその外周面でリング保持部220の内周面に嵌合される。
【0030】
支脚230はガイドリング220から延び、釣り竿100に対してガイドリング210及びリング保持部220を支持する。この実施の形態において、支脚230はリング保持部220の下端から延び、リング保持部220から釣り竿100の後端側に(
図2に示す矢印Bの方向に)傾いている。また、この実施の形態において、支脚230はガイドリング210の中心を通る垂直線に対して対称な左側半部230Lと右側半部230Rからなる。左側半部230Lと右側半部230Rは円弧状に湾曲していて、それらの上部は逆三角形の開口231を介して離隔しており、それらの下部は一体になっている。また、支脚230の下部はその幅方向において折れており、左側半部230Lと右側半部230Rの下部で横断面を取るとき、支脚230はV字型の横断面形状を有する。
【0031】
釣り糸ガイド200は支脚200の末端に釣り竿の一部111への取付のための取付足240を備える。取付足240は薄く平たい形状を有する。釣り糸ガイド200を側面から見るとき、取付足240は釣り竿の一部111の外周面と接触するようになる下面241と、取付足240の厚さ方向(例えば、
図3に示す矢印TDの方向)において下面241の反対側に位置する上面242とを有する。この実施の形態において、下面241は、取付足240の長手方向(例えば、
図3に示す矢印LDの方向であり、釣り竿の一部111の長手方向に対応する方向)に延び若干の曲率で上方に窪んだ曲面を含む。また、釣り糸ガイド200を平面から見るとき、取付足240は一端243と取付足240の長手方向において一端243の反対側に位置する他端244とを有する。取付足240はその一端243で支脚230の末端と一体になって、支脚230の末端から延びる。この実施の形態において、取付足240と支脚230は互いにに対して鈍角に曲がっており、取付足240は鋸歯形状の側方縁を有する。
【0032】
釣り糸ガイド200は強度補強のための補強溝250を備える。補強溝250は取付足240の下面241に形成されている。補強溝250は下面241内で取付足240の幅方向(例えば、
図3に示す矢印WDの方向)における中央に位置し、取付足240の一端243から他端244に向かって取付足240の長手方向に沿って延びる。従って、補強溝250は取付足240の一端243に位置する開放端251と開放端251の反対側に位置する閉鎖端252を有する。
【0033】
補強溝250は取付足240の下面241を上面242の方に補強溝250の形状に押し込み加工(indenting)して形成される。上記押し込み加工における押込は取付足240を構成する金属材料が加工硬化を引き起こすまで行われる。従って、
図8に示すように、補強溝250の底253と取付足240の上面242との間の取付足240の厚さ方向における部分の少なくとも一部または全体は上記押し込み加工により加工硬化した加工硬化部245を含む。加工硬化部245は取付足240の他の部分より高い降伏応力(yield stress)または耐力(proof stress)を有する。加工硬化部245は取付足240の一端243から補強溝250の閉鎖端252まで補強溝250に沿って形成され得る。このように押し込み加工により形成された補強溝250によって、取付足240がその下面241で釣り竿の一部111の外周面と接触すると、補強溝250と釣り竿の一部111の外周面との間には空間が形成される。また、補強溝250の開放端251が取付足240の一端243に位置するので、補強溝250の開放端251を通じて釣り糸ガイド200を固着するための接着剤が補強溝250内部に流入し得る。補強溝250内部に流入した接着剤が硬化して、釣り糸ガイド200を釣竿の一部111に固着させる、後述する接着剤コーティング130のアンカー部を生成する。
【0034】
一実施の形態において、補強溝250は取付足240の下面241と上面242との間の厚さTFの20%〜80%の深さDGを有する。また、補強溝250の長さLGは取付足240の一端243と他端244との間の長さ(即ち、取付足240の全長)LFの10%〜90%の長さを有する。したがって、補強溝250の閉鎖端252は、取付足240の他端244から一端243の側に離隔しており、取付足240の他端244と補強溝250の閉鎖端252との間の距離は、取付足240の一端243と他端244との間の長さの10%〜90%の長さとなる。また、補強溝250の幅WGは取付足240の最大幅WFの20%〜80%の幅WGを有する。取付足240の下面241は釣竿の一部111の外周面の曲率に対応する曲率で湾曲し得る。補強溝250の横断面形状の一例として、補強溝250は円弧状の横断面形状を有してもよく、この場合、円弧形状の曲率は取付足240の上記曲率よりも小さい。
【0035】
補強溝250の深さDGが取付足240の厚さTFの20%より小さいか、補強溝250の長さLGが取付足240の全長LFの10%より小さいか、補強溝250の幅WGが取付足240の最大幅WFの20%より小さいと、加工硬化部245が押し込み加工によって要求される水準に生成され難く、接着剤コーティング130の上記アンカー部が要求される水準に生成され難い。補強溝250の深さDGが取付足240の厚さTFの80%より大きいか、補強溝250の幅WGが取付足240の最大幅WFの80%より大きいと、取付足250の押し込み加工時に取付足250が脆性破壊(brittle fracture)を起こす可能性がある。補強溝250の長さLGが取付足240の全長LFの90%より大きいと、取付足240に形成される取付足の他端244へ行くほど薄くなる部分が円滑に形成できない。
【0036】
図9は前述した補強溝が支脚230に形成された例を示す。
図9を参照すると、釣り糸ガイド200は支脚230の釣り竿先端に向かう面に支脚補強溝260を備える。支脚補強溝260は取付足240に位置した補強溝250の開放端251から支脚230の長手方向に延びる。支脚補強溝250も前述した補強溝250の形成方法と同一の方法で形成される。従って、支脚補強溝250と釣り竿の後端に面する表面との間の支脚230の厚さ方向における一部は加工硬化した部分を有する。このように支脚補強溝260が支脚230に形成される場合、押し込み加工により生成される加工硬化部が支脚230と取付足240にまたがって形成されるので、釣り糸ガイド200の強度がより一層向上する。
【0037】
図10〜
図13を参照して、補強溝240による釣り糸ガイド200の強度向上を説明する。
図10は取付足が釣り竿の一部の外周面に接触しているのを示す縦断面図である。
図10〜
図13に示す取付足240は
図3〜
図9に示す取付足240より短い全長を有する。また、
図12において、矢印F1は例えば仕掛けのキャスト時に釣竿ガイド200に釣糸が絡まった状態で仕掛けによって釣糸が引っ張られるときに釣り糸によって加えられる力を示し、矢印F2は釣竿を引っ張って魚を釣り上げるときに釣り糸によって釣り糸ガイド200に加えられる力を示す。
【0038】
前述した押し込み加工によって補強溝250が取付足240の下面241に形成されるので、取付足240は補強溝250に沿って生成される加工硬化部245を有する。加工硬化部245は取付足240の一端243から補強溝250の少なくとも一部に沿ってまたは補強溝250の全長に沿って形成されている。また、加工硬化部245は取付足240の幅方向における中心に沿って取付足240の一端243から延びている。即ち、加工硬化部245はリング保持部220または支脚230に矢印F1の方向または矢印F2の方向に力が加えられるときに釣糸ガイド200における負荷が集中する所に形成されている。加工硬化部245が取付足240の他の部分より高い降伏点(yield point)を有するようになるので、取付足240は加工硬化部245が生成された部分で塑性変形を引き起こし難い。従って、取付足240の矢印F1または矢印F2方向の力が加える負荷に対する抵抗が大きくなり、取付足240の強度が補強溝250によって補強される。
【0039】
また、釣り糸ガイド200を釣り竿に固着するために接着剤を取付足240に巻きつけられた巻き糸120に塗布すると、前述したように上記接着剤は補強溝250の開放端251を通じて補強溝250と釣り竿の一部111の外周面との間の空間内に流入する。補強溝250と釣り竿の一部111との間に流入した上記接着剤が硬化すると、取付足240を覆う接着剤コーティング130の内部には補強溝250と釣り竿の一部111との間で補強溝250に沿って延びるアンカー部131が生成される。即ち、補強溝250内に埋められた接着剤が硬化して生成するアンカー部131が釣り糸ガイド200の強度をより一層補強する。例えば、リング保持部220または支脚230に釣り竿の後端から先端に向けて矢印F1の力が作用するとき、補強溝250がアンカー部131に引っ掛かるようになって、取付足240が釣り竿の先端の側に(矢印Tの方向に)巻き糸120から抜けることが防止される。
【0040】
前述したように取付足240の下面に補強溝250が形成され、補強溝250と上面242との間に加工硬化部245を形成することによって、取付足240はより一層薄い厚さを有しながらも所望の大きさの強度を有することができる。即ち、加工硬化部245が取付足240に集中する負荷に抵抗して塑性変形を引き起こさないので、取付足240はより一層薄い厚さとより一層短い長さを有することができる。また、接着剤コーティング130のアンカー部131が取付足240を固定するので、取付足240はより一層短い長さを有することができる。従って、より一層薄い厚さとより一層短い長さの取付足240は釣り糸ガイド200の軽量化を達成するのみならず、巻き糸120の巻きつけ作業にも有利さを提供する。
【0041】
前述した補強溝250を備える釣り糸ガイド200は例えばステンレススチール、チタン、チタン合金などからなる金属シートをプレス加工して製造される。釣り糸ガイド200を製造する一例として、上記金属シートをブランキング(blanking)して、
図14に示すような、釣り糸ガイド200を平面に展開させた形状からなる金属のブランクシート(blank sheet)200’を形成する。このようなブランクシート200’には、前述したリング保持部220として形成されるリング保持部220’、前述した支脚230として形成される支脚部230’、前述した取付足240として形成される取付足部240’が含まれている。ブランクシート200’に含まれる支脚部230’と取付足部240’から
図3〜
図13に示す支脚230と取付足240をベンディング加工(bending)により形成する。次に、取付足240の下面241に補強溝250を形成する。補強溝250は取付足240の支脚230と連結する一端243から他端244の側に取付足240の長手方向に延びるように形成する。
【0042】
ここで、補強溝250を形成するのは、取付足240の下面241を上面242の側に補強溝250の形状に押し込み加工(indenting)することによって行われる。上記押し込み加工は取付足240の下面241を補強溝250と対応する形状の突起物が形成された押し込み工具でプレス機などを用いて加圧することによって行われ得る。また、前述したように、上記押し込み加工は補強溝250の底253と取付足240の上面242との間の取付足240の厚さ方向における部分が加工硬化するまで行われる。このように押込及び加工硬化を行なうことによって、取付足240の一端243から他端244の側へ延びる補強溝250と補強溝250及び上面242との間に形成される加工硬化部245とを備えた取付足240が形成される。
【0043】
釣り糸ガイド200を製造するもう1つの例として、上記押し込み加工はブランクシート200’から支脚230と取付足240をベンディング加工によって形成する前に行われる。すなわち、少なくとも1つの支脚230と釣竿の一部111との取付のための取付足240を備える釣り糸ガイド200を金属のブランクシート200’から製造するにおいて、ブランクシート200’に含まれている取付足部240’の釣竿の一部111と接触する下面241’に補強溝250を形成する。この場合にも、補強溝250は前述したような条件および寸法で形成される。次に、補強溝250が形成されたブランクシート200’から、
図3〜
図13に示す支脚230と取付足240をベンディング加工によって形成する。
【0044】
1つの取付足を有する釣り糸ガイドの他の実施の形態として、取付足240の全体及び支脚230の一部のみが上記金属のブランクシートから一体に製造され、支脚230の残りの一部及びリング保持部220はプラスチック材料で製造されてもよい。このような例の釣り糸ガイドは、支脚の上記残りの一部及びリング保持部をプラスチック材料または繊維強化プラスチック材料を用いて射出成形または積層成形して形成され得る。
図15は支脚の残りの一部およびリング保持部がプラスティック材料で製造され1つの取付足を有する釣り糸ガイドの例を示す。
図15に示す釣り糸ガイド200”では、金属製の取付足240”の一端にV字状の金属製の支脚フレーム232”が一体となっている。取付足240”の下面には前述した補強溝250と類似の補強溝250”が形成されている。支脚フレーム232”が前述した支脚の一部を構成する。釣り糸ガイド200”の支脚230”はその内部に支脚フレーム232”を有し、支脚フレーム232”を除いた部分はプラスティック材料で形成されている。例えば、釣り糸ガイド200”は、支脚230”とリング保持部220”の形状を有する金型内に支脚フレーム232”を配置し、プラスティック材料を金型に注入して成形することにより形成される。
【0045】
図16〜
図18はもう1つの実施の形態による釣り糸ガイド300を示す。
図16〜
図18に示す釣り糸ガイド300は2つの取付足を有し、このような釣り糸ガイドは当該分野において、「ダブルフット(double−foot)釣り糸ガイド」として参照される。
図16〜
図18を参照すると、この実施の形態による釣り糸ガイド300は、釣り糸が通過するガイドリング310と、ガイドリング310を保持するリング保持部320と、リング保持部320から延びる前方支脚330F及び後方支脚330Rと、前方支脚330Fの末端に位置する前方取付足340F及び後方支脚330Rの末端に位置する後方取付足340Rを備える。ガイドリング310を除いた釣り糸ガイド300の各部分は金属シートから形成される。
【0046】
釣り糸が通過するガイドリング310は前述したガイドリング210と類似して形成される。ガイドリング310はその外周面でリング状のリング保持部320の内周面に嵌合する。
【0047】
前方支脚330Fはリング保持部320の下端から釣り竿の先端に向かって(
図16に示す矢印Tの方向に)延びる。後方支脚330Rはリング保持部220の側方縁から釣り竿の後端に向かって(
図16に示す矢印Bの方向に)延びる。この実施の形態において、後方支脚330Rは一対の後方支脚330RL,330RRを含む。釣り糸ガイド300を正面から見るとき(釣り糸ガイド300が釣り竿100に装着された状態で釣り竿100を後端から先端の側に見るとき)、左側の後方支脚330RLはリング保持部320の左側縁から延び、右側の後方支脚330RRはリング保持部320の右側縁から延びる。釣り糸ガイド300を正面から見るとき、各後方支脚330RL,330RRは円弧状に湾曲しており、その下端部で互いに近接する。
【0048】
釣り糸ガイド300は釣り竿の一部111への取付のための前方取付足340Fと後方取付足340Rを備える。前方及び後方取付足340F,340Rは薄く平たい形状を有する。前方及び後方取付足340F,340Rはそれぞれ、釣り竿の一部111の外周面と接触する下面341F,341Rと、厚さ方向において下面341F,341Rの反対側に位置する上面342F,342Rを有する。この実施の形態において、下面341F,341Rは若干の曲率で上方に窪んだ曲面または平面を含む。また、前方及び後方取付足340F,340Rはそれぞれ、一端343F,343Rと長手方向において一端343F,343Rの反対側に位置する他端344F,344Rとを有する。前方取付足340Fはその一端343Fで前方支脚330Fの末端と一体になっており、前方支脚330Fの末端から鈍角に延びる。前方取付足340Fと前方支脚330Fは互いに対して鈍角に曲げられている。後方取付足340Rはその一端343Rで各後方支脚330RL,330RRの末端と一体になっており、後方支脚330RL,330RRの末端から鈍角に延びる。後方取付足340Rと後方支脚330RL,330RRは互いに対して鈍角に曲げられている。後方取付足340Rは左側の後方支脚330RLの末端から延びる左側半部340RLと、右側の後方支脚330RRの末端に延びる右側半部340RRとを有する。後方取付足340Rの各半部340RL,340RRは接しており、それらの他端部で一体になり、釣糸ガイド300を平面から見るとき、後方取付足340Rは略U字状を有する。他の例として、後方取付足340Rは後方支脚330RL,330RRの末端から延びる1つの部品からなってもよい。
【0049】
前方補強溝350Fは前方取付足340Fの下面341Fに形成されて、前方取付足340Fの強度を補強する。前方補強溝350Fは前方取付足340Fの下面341Fにおいて前方取付足340Fの幅方向(
図16に示す矢印WDの方向)における中央に位置する。前方補強溝350Fは前方取付足340Fの前方支脚330Fの末端に接する一端343Fから他端344Fの側に前方取付足340Fの長手方向(
図16に示す矢印LDの方向)に沿って延びる。後方補強溝350Rは後方取付足340Rの下面341Rに形成されて、後方取付足340Rの強度を補強する。後方補強溝350Rは後方取付足340Rの下面341Rにおいて後方取付足340Rの幅方向における中央に(例えば、半部340RLと半部340RRの対向する部分に)位置する。後方補強溝350Rは後方支脚330Rの末端(左側及び右側後方支脚330RL,330RRの末端)に接する後方取付足340Rの一端343Rから他端344Rの側に後方取付足340Rの長手方向に沿って延びる。前方補強溝350F及び後方補強溝350Rは前述した実施の形態の補強溝250と同一の方式で形成され、前述した実施の形態の補強溝250の寸法条件と同一の寸法条件を有する。
【0050】
図16において、矢印F1と矢印F2は、仕掛けのキャスト時に釣り糸ガイドに釣糸が絡まり、仕掛けによって釣糸が引っ張られる場合に、釣糸が釣り糸ガイドの中心に向かって巻き絡まるときに釣り糸ガイドに加えられる力を例示する。また、矢印F2は釣竿を引っ張って魚を釣り上げるときに釣り糸によって釣り糸ガイドに加えられる力を例示する。このような力により前方取付足340Fまたは後方取付足340Rの一端付近には負荷が強く集中する。この実施の形態の釣り糸ガイド300は前方及び後方取付足340F,340Rに前方及び後方補強溝350F,350Rをそれぞれ有する。前方補強溝350Fにより前方取付足340Fの一端付近には加工硬化部が生成され、後方補強溝350Rにより後方取付足340Rの一端付近には加工硬化部が生成される。このような加工硬化部によって、前方取付足340Fと後方取付足340Rは上記負荷に対して塑性変形し難くなって、釣り糸ガイド300の強度を向上させる。また、前述した実施の形態と関連して説明した通り、釣り糸ガイド300を釣り竿の一部111に固着するために接着剤を取付足に巻きつけられた巻き糸に塗布すると、接着剤が前方補強溝350Fと後方補強溝350R内に流入して硬化することによって、接着剤コーティング130の内部には前方補強溝350Fと釣り竿の一部111との間または後方補強溝350Rと釣り竿の一部111との間で補強溝に沿って延びるアンカー部が生成される。このように、前方補強溝350F及び後方補強溝350R内に埋められた接着剤が硬化して生成するアンカー部が釣り糸ガイド300の強度をより一層補強する。
【0051】
前方補強溝350F及び後方補強溝350Rを備える釣り糸ガイド300は前述した実施の形態の釣り糸ガイド200と類似の方式で製造される。釣り糸ガイド300を製造する一例として、釣り糸ガイド300は例えばステンレススチール、チタン、チタン合金等からなる金属シートをプレス加工して形成される。上記金属シートを例えばブランキング(blanking)して釣り糸ガイド300を平面に展開させた形状からなる金属のブランクシートを形成する。次に、上記ブランクシートから
図16及び
図17に示す前方支脚330Fと前方取付足340Fをベンディング加工により形成し、また
図16及び
図18に示す後方支脚330Rと後方取付足340Rをベンディング加工により形成する。次に、前方取付足340Fの下面341Fに前方補強溝350Fを形成し、後方取付足340Rの下面341Rに後方補強溝350Rを形成する。前方補強溝350Fは前方取付足340Fの下面341Fを上面342Fの側に前方補強溝350Fと対応する形状の突起物が形成された押し込み工具でプレス機などを用いて押し込み加工することによって形成される。また、上記押し込み加工は前方補強溝350Fと前方取付足340Fの上面342Fとの間の前方取付足340Fの厚さ方向における部分が加工硬化するまで行われる。後方補強溝350Rも前方補強溝350Fと同一の方式で形成される。
【0052】
釣り糸ガイド300を製造するもう1つの例によれば、上記押し込み加工は上記ブランクシートから前方支脚330F、前方取付足340F、後方支脚330Rおよび後方取付足340Rをベンディング加工によって形成する前に行われる。すなわち、上記ブランクシートに含まれている前方取付足340Fを形成するための部分と後方取付足340Rを形成するための部分にそれぞれ前方補強溝350Fと後方補強溝350Rを形成する。次に、前方および後方補強溝350R,350Fが形成された上記ブランクシートから、前方支脚330Fおよび前方取付足340Fと後方支脚330Rおよび後方取付足340Rを形成する。
【0053】
2つの取付足を有する釣り糸ガイドの他の実施の形態として、前方取付足340Fの全体及び前方支脚330Fの一部のみが金属のブランクシートから一体に製造され、後方取付足340Rの全体及び後方支脚340Rの一部のみが金属のブランクシートから一体に製造されてもよい。前方支脚330Fの残りの一部、後方支脚330Rの残りの一部及びリング保持部320はプラスチック材料で製造されてもよい。このような例の釣り糸ガイドは、前方支脚の上記残りの一部、後方支脚の上記残りの一部及びリング保持部をプラスチック材料または繊維強化プラスチック材料を用いて射出成形または積層成形して形成され得る。
【0054】
以上で説明した本発明は、前述した実施の形態及び添付の図面により限定されるものではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で様々な置換、変形及び変更が可能であるということは本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者において明白である。
この釣り糸ガイドは厚さが薄く長さが短いながら強度の高い取付足を有する釣り糸ガイドを提供する。この釣り糸ガイド(200)は、リング保持部(220)から延びる少なくとも1つの支脚(230)と、支脚(230)の末端に位置し釣り竿に取り付けられる取付足(240)と、取付足(240)に形成された補強溝(250)を有する。取付足(250)は、釣り竿の一部と接触する下面と、厚さ方向において上記下面の反対側に位置する上面(242)と、支脚(230)の末端と連結する一端(243)と、長手方向において一端(243)の反対側に位置する他端(244)を有する。補強溝(250)は取付足(240)の下面において一端(243)から他端(244)に向かって取付足(240)の長手方向に沿って延びる。支脚(230)の一部と取付足(240)は金属材料からなる。