(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<概要>
≪成形材料≫
本発明の一態様である成形材料は、熱可塑性樹脂と、炭素繊維(A)と、炭素繊維(B)とを含む板状の炭素繊維強化成形材料であって、
i)炭素繊維(A)は繊維長が0.01mm以上3mm未満であり、
ii)炭素繊維(B)は繊維長が3mm以上100mm未満であり、
iii)炭素繊維(A)の重量平均繊維長をLw
A、数平均繊維長をLn
Aとそれぞれしたときに、1.0<Lw
A/Ln
A<3であり、
iv)炭素繊維(B)が2次元方向にランダム配向された、
炭素繊維強化成形材料(炭素繊維強化熱可塑性樹脂成形材料)である。
【0016】
本発明の炭素繊維強化成形材料(単に「成形材料」ともいう)は、同一の板状の熱可塑性樹脂中に炭素繊維(A)と炭素繊維(B)とが含まれるものであり、好ましくは、成形材料を面に平行に切った断面に、炭素繊維(A)と炭素繊維(B)とが含まれるものである。例えば、熱可塑性樹脂中に炭素繊維(A)を含んだ層と、これとは別の熱可塑性樹脂中に炭素繊維(B)を含んだ層とが積層されたような成形材料は含まない。
但し、1つの板状の熱可塑性樹脂中に炭素繊維(A)と炭素繊維(B)とが含まれるものを複数枚積層したものは本発明の一態様である成形材料に含まれる。
【0017】
[炭素繊維(A)]
(種類)
炭素繊維(A)としては、一般的にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが知られているが、これらのいずれの炭素繊維であっても好適に用いることができる。
なかでも、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましく、引張弾性率は100GPa以上600GPa以下の範囲内であることが好ましく、200GPa以上500GPa以下の範囲内であることがより好ましく、230GPa以上450GPa以下の範囲内であることがさらに好ましい。また、引張強度は2000MPa以上10000MPa以下の範囲内であることが好ましく、3000MPa以上8000MPa以下の範囲内であることがより好ましい。
【0018】
(成形材料に含まれる炭素繊維(A)の繊維長)
成形材料に含まれる炭素繊維のうち、繊維長が0.01mm以上3mm未満のものを炭素繊維(A)と定義する。なお、繊維長が3mm以上100mm未満のものは炭素繊維(B)に分類される。
【0019】
1.重量平均繊維長Lw
Aの範囲
炭素繊維(A)の重量平均繊維長Lw
Aに特に限定はないが、下限は0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.2mm以上が更に好ましい。炭素繊維(A)の重量平均繊維長Lw
Aが0.05mm以上であると、機械強度が担保される。
一方、炭素繊維(A)の重量平均繊維長Lw
Aの上限は2mm未満が好ましく、1mm未満がより好ましく、0.5mm未満が更に好ましい。なお、炭素繊維(A)の重量平均繊維長Lw
Aは、後述の式(3)、(4)により求められる。
【0020】
2.数平均繊維長Ln
一般に、個々の炭素繊維の繊維長をLiとすると、成形材料中の数平均繊維長Lnと重量平均繊維長Lwは、以下の式(3)、(4)により求められる。なお、数平均繊維長Lnと重量平均繊維長Lwの単位は、mmである。
Ln=ΣLi/I (3)
Lw=(ΣLi
2)/(ΣLi) (4)
ここで、「I」は、測定した炭素繊維の数を示す。
【0021】
3.重量平均繊維長Lw
Aと数平均繊維長Ln
Aの比
一般に、炭素繊維の重量平均繊維長Lwと数平均繊維長Lnの比であるLw/Lnは、炭素繊維の繊維長の分布幅を示す尺度である。例えば、全ての炭素繊維の繊維長が同じであれば、Lw/Lnは1となり、繊維長の分布が広い程Lw/Lnは大きくなる。
炭素繊維(A)について、Lw
A/Ln
Aの範囲は、1.0超3未満であり、より好ましくは1.3以上2.8未満であり、さらに好ましくは1.6以上2.4未満である。
炭素繊維(A)は繊維長分布に幅がある(所謂、ブロードである)ことが好ましい。炭素繊維(A)の繊維長が分布を持って存在することにより、成形材料の層間せん断強度が上がるという効果が期待できる。明確な理由は不明であるが、繊維長分布がブロードであること(つまり、Lw/Lnが、1.0超3未満であること)により、炭素繊維(A)間の隙間のうち、大きい隙間には繊維長の長い炭素繊維(A)が、小さい隙間には繊維長の短い炭素繊維(A)が、それぞれ選択的に適宜入り込みやすいためだと想定している。すなわち、炭素繊維(A)の繊維長分布がブロードになっていると、狭い空間内には、細かい炭素繊維(A)が入りこみ、充填率が上がる為だと想定している。
図8に、炭素繊維(A)が一定長である成形材料11−1と、炭素繊維(A)の繊維長分布がブロードな成形材料11−2とを模式的に示した。成形材料11−2が本発明の成形材料の一例として挙げられる。
【0022】
4.数平均繊維長Ln
Aと成形体の板厚の関係
本発明の成形材料を用いて成形した成形体において、成形体の板厚が最小の部分の板厚を最小板厚T(mm)としたとき、炭素繊維(A)の数平均繊維長Ln
Aは、T/2(mm)未満であることが好ましい。成形材料中の数平均繊維長Ln
Aも、成形体としたときに炭素繊維(A)の数平均繊維長Ln
AがT/2(mm)未満になるように、存在するのが好ましい。
【0023】
5.3次元方向のランダム配向
炭素繊維(A)は3次元方向にランダムに配向されていることが好ましい。3次元方向へのランダム配向とは、互いに直交する特定の3次元方向への炭素繊維の配向が、他の方向への配向に比べて差が少ないことを意味している。つまり、互いに直交する任意の3次元方向に同じような割合で炭素繊維(A)が向いており、成形材料内において、面内方向、板厚方向において、任意のすべての方向におおよそ均一に炭素繊維(A)が分散していることを意味する。
評価は、互いに3次元的に直交する各面において観察される炭素繊維(A)の断面数で行っている。詳細な評価方法は後述する。また、炭素繊維(A)が3次元方向にランダム配向していることにより、機械強度、なかでも曲げ強度に優れる。
【0024】
6.形態
炭素繊維(A)の形態は特に限定されるものではない。
「炭素繊維」は、形態として、単糸状のものも、複数の単糸が集合した束状のものも含むものであるが、一般的に市販されている炭素繊維としては、1000本以上10万本以下(好ましくは数千本以上数万本以下)の単糸が集合した繊維束状となっているものが多い。
このような炭素繊維をそのまま使用すると、繊維束の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉の成形材料を得ることが困難になる場合がある。これを避けるために、例えば、炭素繊維の繊維束を拡幅したり、繊維束を開繊したりして使用することが多い。
したがって、炭素繊維(A)の形態は、単糸状でも繊維束状であってもよく、さらに両者が混在していてもよいが、成形材料の流動性向上の観点からは、単糸状のものを多く含んだものを用いることが好ましい。
【0025】
(1)炭素繊維束(A1)
炭素繊維(A)には、特定本数以上の炭素繊維からなる炭素繊維束(A1)が含まれていることが好ましい。この炭素繊維束(A1)は、炭素繊維(A)に属し、繊維束中の繊維の数が35/D
A以上の炭素繊維束である。
D
Aは炭素繊維(A)の平均繊維径であり、単位はμmである。
【0026】
(2)炭素繊維束(A1)の面積割合
成形材料は、その成形材料を用いて成形された成形体において、板厚方向(例えば、
図5のZ方向である)の断面を観察した際、上述した炭素繊維束(A1)の面積割合が炭素繊維(A)全体に対して0%超50%以下の範囲になるように、炭素繊維束(A1)を有することが好ましい。なお、「板厚方向の断面」とは、板厚方向と直交する面と同一面内にある断面をいう。
図5において、板厚方向(Z方向)の断面とは、XZ平面、及びYZ平面である。
【0027】
炭素繊維束(A1)の面積割合が、炭素繊維(A)全体の面積に対して50%以下であると、単糸状の炭素繊維が多く存在していることになり、機械強度、特に曲げ強度を、維持しやすくなる。
炭素繊維束(A1)の面積割合は、炭素繊維(A)全体に対して0%超、30%以下の範囲内であることが好ましく、0%超15%以下の範囲内であることがより好ましい。
特定本数以上の炭素繊維からなる炭素繊維束(A1)と、それ以外の開繊された炭素繊維又は炭素繊維束を特定の比率で共存させることで、成形材料や成形体中の炭素繊維(A)の存在量、すなわち炭素繊維(A)の繊維体積含有率Vf(単位は、Vol%である。)を高めることが可能となる。
炭素繊維(A)に単糸状のものを多く含み、成形体としたときに、炭素繊維束(A1)の面積割合が炭素繊維(A)全体の面積に対して0%超50%以下にする方法に特に限定はないが、例えば、空気開繊や、水分散による抄紙方法が挙げられる。また、後述の粒材(R)を溶融混練することで、炭素繊維(A)に単糸を多く含ませることができる。
【0028】
7.炭素繊維(A)の入手方法
炭素繊維(A)の製法について特に限定はなく、例えば、以下の例のような方法がある。
成形材料に炭素繊維(A)を用いるに当たり、市販されている炭素繊維含有樹脂ペレットや、炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(成形材料及び成形体を含む。)の製造過程で得られた端材などを用いてもよい。
炭素繊維含有樹脂ペレットの例としては、株式会社ダイセル 長繊維強化樹脂プラストロン(登録商標)等がある。端材を用いる例としては、特開2011−178891号公報及び特開2011−178890号公報等に記載の二次元等方の複合材料並びに特開2012−236897号公報に記載の一方向材複合材料等を市販のプラスチック粉砕機で粉砕してなる粉砕材(以下、単に「粉砕材」と称することがある)等がある。本明細書において、市販されている炭素繊維樹脂ペレットや粉砕材等を総称して、粒材(R)と記載する。
粒材(R)を熱可塑性樹脂等と溶融混練して作成した樹脂ペレットとして炭素繊維(A)を準備する場合、混練時のせん断力により、単糸状の繊維を多く含む炭素繊維(A)を得ることができる。
複合材料を製造又は成形する際に出る端材から粒材(R)を準備すれば、製造コストを低減でき省資源や地球環境保全に貢献することができる。
当然のことではあるが、予め作成した炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料に含まれる炭素繊維の形態が単糸状であった場合、これを粉砕した粉砕材には単糸状の炭素繊維が含まれているため、例えば、後述する樹脂パウダー(P)を製造する際に用いる溶融混練工程を設ける必要はない。
例えば、国際公開番号WO2007/097436、国際公開番号WO2010/013645、国際公開番号WO2013/099741などに記載の成形体や複合材料を粉砕して炭素繊維(A)を準備する場合、成形体や該複合材料には単糸状の炭素繊維が分散されており、これを粉砕した粉砕材には炭素繊維が単糸状で存在するので、上述の溶融混練工程を設けることなく、粉砕材をそのまま次の工程に用いることができる。
なお、単糸状の炭素繊維(A)を含んだ上述の樹脂ペレットや、粉砕材を利用して成形材料を製造する場合、その方法に特に限定はないが、炭素繊維(A)と炭素繊維(B)と熱可塑性樹脂とを板状に形成するためには樹脂ペレットや粉砕材をパウダー状にして(このパウダー状のものを「樹脂パウダー(P)」とする。)後述する炭素繊維(B)の炭素繊維マットに混ぜ込む方法が一例としてある。
炭素繊維(A)を成形材料用の熱可塑性樹脂に混入する方法に特に限定はないが、粒材(R)を溶融混練して得られた樹脂ペレットを更に粉砕した熱可塑性樹脂パウダー(以下、単に「樹脂パウダー(P)」と記載する場合がある)を利用できる。
樹脂パウダー(P)の形状に特に限定はないが、例えば粒子状とすることができる。炭素繊維(A)が樹脂パウダー(P)に存在しているのに加えて、粒子状とすることで、炭素繊維(B)と混合させやすくなり、炭素繊維(A)を成形材料中でより均一に3次元方向へ配向させることができる。また、一度溶融混練することにより、単糸状の炭素繊維(A)を増加させることができる。
【0029】
(2)数平均繊維長Ln
Aが1mm超の場合
炭素繊維(A)の数平均繊維長Ln
Aが1mm超の場合、メルトインデックス測定機の2mmφのオリフェスにて閉塞が発生する為、射出成形機を用いた流動長測定方法が好ましい。炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂のみからなる成形材料(A)の流動性は、樹脂圧力50MPaにて流動長30mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましい。
【0030】
[炭素繊維(B)]
(種類)
炭素繊維(B)としては、一般的にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが知られているが、これらのいずれの炭素繊維であっても好適に用いることができる。
なかでも、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましく、引張弾性率は100GPa以上600GPa以下の範囲内であることが好ましく、200GPa以上500GPa以下の範囲内であることがより好ましく、230GPa以上450GPa以下の範囲内であることがさらに好ましい。また、引張強度は2000MPa以上10000MPa以下の範囲内であることが好ましく、3000MPa以上8000MPa以下の範囲内であることがより好ましい。
【0031】
(成形材料に含まれる炭素繊維(B)の繊維長)
成形材料に含まれる炭素繊維のうち、繊維長が3mm以上100mm未満のものを炭素繊維(B)と定義する。
炭素繊維(B)は、炭素繊維(A)に比べて繊維長が長いため機械的物性(特に長期的な疲労強度)を担保することができるが、繊維長が100mm以上であると流動性を阻害する。
【0032】
1.重量平均繊維長Lw
Bの範囲
炭素繊維(B)の重量平均繊維長Lw
Bに特に限定はないが、下限は5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、15mm以上が更に好ましい。成形時の流動性の観点から、炭素繊維(B)の重量平均繊維長Lw
Bの上限は80mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、30mm以下がより一層好ましい。
すなわち、炭素繊維(B)の繊維長の分布が少なくとも1つのピークを有し、該ピークが10mm以上30mm以下であることが好ましい。なお、炭素繊維(B)の重量平均繊維長Lw
Bは、上述した式(4)により求められる。
【0033】
2.数平均繊維長Ln
Bの範囲
炭素繊維(B)の数平均繊維長Ln
Bに特に限定はないが、好ましくは、成形体の最小板厚をT(mm)としたとき成形体の数平均繊維長Ln
BがT(mm)以上であることが好ましい。なお、炭素繊維(B)の数平均繊維長Ln
Bは、上述した式(3)により求められる。
繊維長は、繊維強化の効果を発現させる目的において、数平均繊維長Lnが長い方が望ましいが、数平均繊維長Ln
BがT(mm)以上であれば、成形する際の流動時に成形品の板厚方向への炭素繊維の配向が発生しにくいため、流動性の低下を抑制でき、好ましい。
ここで、成形材料中の炭素繊維の特性は、成形体中でもほとんど維持される。従って、数平均繊維長Ln
Bは、成形材料の最小板厚をT(mm)としたとき、数平均繊維長Ln
BがT(mm)以上であることが好ましい。数平均繊維長Ln
Bは、好ましくは成形材料の最小板厚T(mm)の2倍以上、より好ましくは5倍以上あることがより好ましい。
数平均繊維長Ln
Bの上限に特に限定はないが、流動性保持の観点から、50mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。
【0034】
3.重量平均繊維長Lw
Bと数平均繊維長Ln
Bの比
炭素繊維(B)の繊維長は上記範囲であれば特に限定はないが、好ましい繊維長を得るために、後述するロータリーカッターを例えば使用できる。この場合、製造安定性の観点から、炭素繊維(B)の繊維長分布を狭めるのが好ましい。
したがって、炭素繊維(B)の重量平均繊維長Lw
Bと数平均繊維長Ln
Bとの比であるLw
B/Ln
Bの範囲は、好ましくは1.0以上1.2未満であり、より好ましくは1.0以上1.1未満である。
Lw
B/Ln
Bは、炭素繊維(A)の項目で説明したように、炭素繊維の繊維長の分布幅を示す尺度である。
【0035】
4.2次元方向のランダム配向
成形材料中、炭素繊維(B)は2次元方向にランダムに配向されている。2次元方向へのランダムとは、面内における特定の方向への炭素繊維の配向が、他の方向への配向に比べて差が少ないことを意味している。
ここでは、2次元方向のランダム配向の評価は、板状の成形材料において、互いに直交する二方向の引張弾性率の比を求めることで、定量的に行われる。
具体的には、成形材料における2次元方向の弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比が3以下であるときに、炭素繊維(B)は2次元方向にランダム配向であるとしている。特に、この比が2以下のときは2次元方向へのランダム配向に優れているとし、1.3以下がより優れている。
炭素繊維(B)を2次元にランダムに配向する方法に特に限定はないが、好ましくは炭素繊維(B)をマット状とすることで、炭素繊維(B)を特定の方向に配向しておらず、無作為な方向に分散して配置することができる。炭素繊維(B)を炭素繊維マットとすると、成形材料は面内等方性に優れた材料とすることができ、成形材料の等方性は、成形体にしたときにも維持される。
【0036】
5.形態
炭素繊維(B)の形態は特に限定されるものではない。単糸状でも繊維束状であってもよく、さらに両者が混在していてもよい。繊維束状のものを用いる場合、各繊維束を構成する単糸の数は、各繊維束においてほぼ均一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
特に、炭素繊維束を含む場合、炭素繊維(B)は炭素繊維マットであることが好ましい。成形材料中に含まれる炭素繊維(B)は、以下の条件を満たすことが好ましい。
1)炭素繊維(B)は下記式(1)で定義される臨界単糸数未満の繊維束及び単糸と、臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(B1)とを含んでなり、
2)炭素繊維束(B1)について、成形材料に含まれる炭素繊維(B)全量に対する割合が、5Vol%以上95Vol%未満であり、
3)炭素繊維束(B1)中の平均繊維数N
Bが下記式(2)を満たす。
臨界単糸数=600/D
B (1)
0.43×10
4/D
B2<N
B<6×10
5/D
B2 (2)
なお、ここでD
Bは炭素繊維(B)の平均繊維径(単位はμmである。)である。
式(2)は下記式(2’)であることが好ましい。
0.6×10
4/D
B2<N
B<6×10
5/D
B2 (2’)
【0037】
6.開繊程度
(1)開繊
炭素繊維(B)が繊維束状である場合、各繊維束を構成する単糸の数は特に限定されるものではないが、通常、1000本以上10万本以下の範囲内とされる。
一般的に、炭素繊維は、数千本以上数万本以下の単糸(フィラメント)が集合した繊維束状となっている。炭素繊維がこの繊維束状のままで使用されると、繊維束の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉の成形材料を得ることが困難になる場合がある。これを避けるために、例えば、炭素繊維の繊維束を拡幅したり、又は繊維束を開繊したりして使用することが多い。
繊維束を開繊して用いる場合、開繊後の繊維束の開繊程度は特に限定されるものではないが、繊維束の開繊程度を制御し、特定本数以上の単糸からなる炭素繊維束と、特定本数未満の炭素繊維束又は単糸を含むことが好ましい。
具体的には、炭素繊維(B)は、上記式(1)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(B1)と、それ以外の開繊された炭素繊維(すなわち単糸又は臨界単糸数未満で構成される繊維束のいずれかである。)とからなることが好ましい。
なお、炭素繊維(B)中の上記炭素繊維束(B1)以外の炭素繊維を、単糸等(B2)と称する。
【0038】
(2)炭素繊維束(B1)の割合
成形材料中の炭素繊維(B)に対する炭素繊維束(B1)の割合が5Vol%超95Vol%未満であることが好ましく、10Vol%超90Vol%未満であることがより好ましく、20Vol%以上90Vol未満であることがさらに好ましく、30Vol%以上90Vol%未満であることが一層好ましく、50Vol%以上90Vol%未満であることがより一層好ましい。
このように特定本数以上の炭素繊維(B)からなる炭素繊維束(B1)と、それ以外の開繊された炭素繊維(B)の単糸等(B2)を特定の比率で共存させることで、成形材料中の炭素繊維(B)の存在量、すなわち炭素繊維(B)の繊維体積含有率Vfを高めることが可能となる。
炭素繊維(B)全量に対する炭素繊維束(B1)の割合が増加すると、成形体を成形した際に、機械物性に優れた成形体が得やすくなるだけでなく、単糸状のものが減少するため、繊維同士の交絡が少なくなり、流動性が向上する。
炭素繊維束(B1)の割合が95Vol%未満であれば、繊維の交絡が局部的に厚くならず、薄肉のものが得られやすくなる。
【0039】
(3)炭素繊維束(B1)の平均繊維数(N
B)
炭素繊維束(B1)中の平均繊維数(N
B)は、炭素繊維束(B1)の機能を損なわない範囲で適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。
使用する炭素繊維によっては、炭素繊維束(B1)の平均繊維数N
Bは通常1<N
B<12000の範囲内でとされるが、上記式(2)を満たすことがより好ましい。なかでも平均繊維数(N
B)は、3×10
5/D
B2未満であることが好ましく、6×10
4/D
B2未満であることがより好ましい。また、下限は0.6×10
4/D
B2以上であることが好ましく、0.7×10
4/D
B2以上であることが更に好ましい。
【0040】
(4)開繊方法
炭素繊維(B)の開繊方法は、特に限定されるものではない。開繊方法としては、例えば、空気開繊や、水分散による抄紙方法が挙げられる。
炭素繊維(B)の開繊程度は、繊維束の開繊条件を調整することにより目的の範囲内とすることができる。例えば、開繊前の炭素繊維に空気を吹き付けて繊維束を開繊(空気開繊である。)する場合は、繊維束に吹き付ける空気の圧力等をコントロールすることにより開繊程度を調整することができる。
この場合、空気の圧力を強くすることにより開繊程度が高く(各繊維束を構成する繊維数が少なく)なり、空気の圧力を弱くすることより開繊程度が低く(各繊維束を構成する繊維数が多く)なる傾向がある。
あるいは、炭素繊維を所定長さに切断するカット工程に供する繊維束の大きさ、例えば束の幅や幅当たりの繊維数を調整することでコントロールすることもできる。具体的には開繊するなどして繊維束の幅を広げてカット工程に供したり、カット工程の前に炭素繊維に縦スリット(繊維が延伸する方向と平行なスリット)を形成するスリット工程を設けたりする方法が挙げられる。なお、後述するように、カットと同時に繊維束をスリットしてもよい。
具体的には炭素繊維(B)の平均繊維径が5μm以上7μm以下の場合、臨界単糸数は86本超120本未満となり、炭素繊維(B)の平均繊維径が5μmの場合、繊維束中の平均繊維数は172本超24000本未満の範囲となるが、なかでも280本超12000本未満であることが好ましく、280本超4000本未満であることがより好ましく、600本超2500本未満であることが更に好ましく、600本超1600本未満であることがより一層好ましい。
炭素繊維の平均繊維径が7μmの場合、繊維束中の平均繊維数は88本超12245本未満の範囲となるが、なかでも122本超12245未満が好ましく、142本超6122本未満であることがよりこのましく、300本超1500本未満であることが更に好ましく、300本超800本未満がより一層好ましい。
【0041】
[炭素繊維(A)と炭素繊維(B)との関係]
(重量割合)
炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合に特に限定はないが、5:95〜95:5であることが好ましい(炭素繊維(A):炭素繊維(B))。
すなわち、炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の合計量に対する炭素繊維(A)の重量割合は、好ましくは5重量%以上95重量%以下であり、より好ましくは5重量%以上50重量%以下であり、更に好ましくは10重量%以上30重量%以下である。炭素繊維(A)の重量割合が、5重量%以上では機械的強度の増加効果が認められ、95重量%以下では炭素繊維(A)を含んだ熱可塑性樹脂自体の流動性が向上するためである。
一方、炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の合計量に対する炭素繊維(B)は、好ましくは95重量%以下5重量%以上であり、より好ましくは95重量%以下50重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以下70重量%以上である。炭素繊維(B)の重量割合が、5重量%以上では繊維強化の効果が大きく、95重量%以下では流動性が向上するためである。
【0042】
[成形材料]
(形状)
成形材料は、板状である。板状とは、縦、横の長さに比べて板厚方向の長さ(つまり、板厚である。)が相対的に短いものであり、板厚方向に平行な方向から見た形状は任意の形状、例えば、正方形、長方形のみならず、三角形、四角形、五角形等の多角形、円形、半円形、円弧形等であってよい。
成形材料の横方向、縦方向のうち最大長さをLmax、最小値Lminを平均の板厚をDとしたときに、Lmax/D≧3、Lmin/D≧2であることが好ましい。また、横方向、縦方向の何れかにおいて、一端から他端に向かって移ったときに、その板厚が、直線的に変化するような板形状だけでなく、途中で増減するような板形状であってもよいし、1以上の曲率で湾曲するような板形状であってもよい。
成形材料の板厚に特に限定はなく、各種の板厚とすることが可能であるが、0.2mm以上5mm以下の範囲にあってもよいし、3mm以下の薄肉であってもよい。
【0043】
(目付)
成形材料に含まれる炭素繊維全量に関する目付量は、特に限定されるものではないが、通常、25g/m
2以上10000g/m
2以下とされる。炭素繊維(A)と炭素繊維(B)とを合わせた炭素繊維の目付けは25g/m
2以上3000g/m
2以下であることが好ましく、より好ましくは25g/m
2以上500g/m
2以下である。
【0044】
(炭素繊維(A)と炭素繊維(B)との繊維長比率)
炭素繊維(A)の重量平均繊維長Lw
Aと炭素繊維(B)の重量平均繊維長Lw
Bの関係は、Lw
A/Lw
Bが、0.005以上0.5未満であることが好ましく、0.01以上0.1未満の範囲であることがより好ましく、0.01以上0.05未満の範囲にあることが更に好ましい。
該範囲であれば、炭素繊維(B)に対して、炭素繊維(A)がマトリクスである熱可塑性樹脂と同様の挙動をもたらす対象とみなすことができ、炭素繊維(B)の隙間に炭素繊維(A)が入り込むことが容易となる。
【0045】
(理論加成則に関して)
成形材料は、機械強度の一つであるである曲げ強度Sが、qSa+(1−q)Sbの0.8倍以上であることが成立する範囲であることが好ましい。
ここで、
Sa:炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂からなる成形材料(A)の曲げ強度
Sb:炭素繊維(B)と熱可塑性樹脂からなる成形材料(B)の曲げ強度
q:炭素繊維(A)と炭素繊維(B)との全量に対する炭素繊維(A)の重量含有割合
である。
好ましい曲げ強度Sの範囲は、qSa+(1−q)Sbの0.9倍以上がより好ましく、1.0倍以上が更に好ましく、1.0倍超(すなわちS>qSa+(1−q)Sb)がより一層好ましい。
一般的に、2種類の炭素繊維を混入させた場合、相対的に長い繊維の炭素繊維(B)のみ機械強度が発現し、相対的に短い繊維の炭素繊維(A)の機械強度の発現率は低くなり、理論加成則上の値を発現できない。
図6は、成形材料に含まれる全体の繊維体積割合は一定の下、長い繊維である炭素繊維(B)の割合が減少し、炭素繊維(A)の割合が増加するにつれ、機械強度がどのように変化するかを示した図である。
理論加成則とは、S=qSa+(1−q)Sbで表され、例えば
図6に示すような破線で示した直線状のグラフを指す。しかしながら、通常、機械強度がこの破線で示したグラフ線上に載ることはなく、機械強度は理論加成則よりも低下する。成形材料の機械強度の一つである曲げ強度において、この理論加成則を上回る領域が存在する。
正確な理由は不明であるが、炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂が、強化マトリクス樹脂として挙動し、繊維束と単糸を有する炭素繊維(B)の隙間に、均一に混ざり込んでいるためと推定する。このため、炭素繊維(B)の含有量を減少させても、理論加成則の0.8倍以上、又は同等以上の曲げ強度を有する範囲が存在する。これは従来考えられていた成形材料の一般的挙動を逸脱する効果を有するものであった。
また、本発明者らの推測によれば、成形材料に含まれている炭素繊維(B)に未含浸部分がある場合、全体の炭素繊維体積割合は一定であるものの、比較的短い炭素繊維(A)を添加し、比較的長い繊維である炭素繊維(B)の割合を減少させる事で、炭素繊維(B)への熱可塑性樹脂の含浸性が向上する事により、理論加成則を0.8倍以上超える物性を発現する事ができると考えている。
なお、
図7では理論加成則を1.0倍以上超える範囲で描かれているが、炭素繊維(A)の割合をより多くした場合、
図7では理論加成則よりもやや下回ってくる範囲が存在すると想定される。
特に、炭素繊維(B)が部分開繊状態にあって、束内部にまで熱可塑性樹脂が含浸しにくいものの、炭素繊維(A)の割合が増加することにより、見かけ上、熱可塑性樹脂の割合が増加するように疑似でき、熱可塑性樹脂への含浸が進むような繊維形態である場合、この効果は顕著に発揮される。
反対に、炭素繊維(B)全量に対する炭素繊維束(B1)の割合が100%である場合、炭素繊維(A)の割合を増加させても炭素繊維束(B1)の内部にまで熱可塑性樹脂の含浸を飛躍的に向上させることは難しく、理論加則の80%未満になると考えられる。
SをqSa+(1−q)Sbの0.8倍以上にするという観点からは、
1)炭素繊維(B)は下記式(1)で定義される臨界単糸数未満の繊維束及び単糸と、臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(B1)とを含んでなり、
2)炭素繊維強化成形材料に含まれる炭素繊維(B)全量に対する炭素繊維束(B1)の割合が、5Vol%以上95Vol%未満であり、
3)炭素繊維束(B1)中の平均繊維数(N
B)が下記式(2)を満たす、ことが好ましい。
臨界単糸数=600/D
B (1)
0.43×10
4/D
B2<N
B<6×10
5/D
B2(2)
(ここでD
Bは炭素繊維(B)の平均繊維径(μm)である)
【0046】
この理論加成側は、成形体についても同様に適用できる。
つまり、成形体は、機械強度の一つであるである曲げ強度Sが、qSa+(1−q)Sbの0.8倍以上であることが成立する範囲であることが好ましい。
ここで、
Sa:炭素繊維(A)と熱可塑性樹脂からなる成形体(A)の曲げ強度
Sb:炭素繊維(B)と熱可塑性樹脂からなる成形体(B)の曲げ強度
q:炭素繊維(A)と炭素繊維(B)との全量に対する炭素繊維(A)の重量含有割合
である。
好ましい曲げ強度Sの範囲は、qSa+(1−q)Sbの0.9倍以上がより好ましく、1.0倍以上が更に好ましく、1.0倍超(すなわちS>qSa+(1−q)Sb)がより一層好ましい。
【0047】
[その他の強化繊維]
本発明の目的を損なわない範囲で、炭素繊維(A)と炭素繊維(B)以外のガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等の強化繊維を成形材料に加えてもよい。具体的には、成形材料に含まれる強化繊維全体に対して、0wt%以上49wt%以下の重量割合であれば、繊維長、開繊度を問わず含んでいてもよい。
【0048】
[熱可塑性樹脂]
成形材料に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂等を挙げることができる。
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を挙げることができる。
上記ポリスチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等を挙げることができる。
上記ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6樹脂(ナイロン6)、ポリアミド11樹脂(ナイロン11)、ポリアミド12樹脂(ナイロン12)、ポリアミド46樹脂(ナイロン46)、ポリアミド66樹脂(ナイロン66)、ポリアミド610樹脂(ナイロン610)等を挙げることができる。
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル等を挙げることができる。
上記(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートを挙げることができる。
上記変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。
上記熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等を挙げることができる。
上記ポリスルホン樹脂としては、例えば、変性ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を挙げることができる。
上記ポリエーテルケトン樹脂としては、例えば、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
成形材料に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。2種類以上の熱可塑性樹脂を併用する態様としては、例えば、相互に軟化点又は融点が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様や、相互に平均分子量が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様等を挙げることができるが、この限りではない。
【0049】
[他の剤]
成形材料中には、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維や有機繊維等の各種繊維状又は非繊維状フィラー、難燃剤、耐UV剤、顔料、離型剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤の添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
≪成形体≫
本発明の一態様である成形体は、炭素繊維強化成形材料を用いて成形した成形体であって、前記炭素繊維強化成形材料は、上記の炭素繊維強化成形材料であり、成形体の板厚が最小の部分の板厚を最小板厚T(mm)としたとき、
(a)炭素繊維(A)の数平均繊維長Ln
AがT/2(mm)未満であり、
(b)炭素繊維(B)の数平均繊維長Ln
BがT(mm)以上である。
なお、ここでの最小板厚Tは、成形材料を成形して生じるバリについては、成形体の一部とみなさず、最小板厚の対象ではない。
【0051】
また、本発明の一態様である成形体は、炭素繊維強化成形材料を用いて成形した成形体であって、前記炭素繊維強化成形材料は、上記の炭素繊維強化成形材料であり、板厚方向の断面を観察した際、以下で定義される炭素繊維束(A1)の面積割合が、炭素繊維(A)全体に対して0%超50%以下である。なお、炭素繊維束(A1)は、炭素繊維(A)由来であって、繊維束の数が35/D
A以上で観察される炭素繊維(ここでD
Aは炭素繊維(A)の平均繊維径(μm))である。
【0052】
[特性]
上記の成形材料を用いて成形した成形体は、成形材料に含まれる炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の繊維長や繊維束などの繊維特性が略そのまま維持される。一般的には、板状の成形材料は、そのまま使用されて板状の成形体に成形される。なお、ここでの板状の成形体には、平板部を有するような形状であり、リブやボズ等が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。
板状の成形材料は、通常、例えば特開2011−57811号公報に記載の樹脂ペレットのように、スクリューを用いた溶融混練工程を設けて成形体を作成するように使用されるわけではない。本発明における板状の成形材料は主にプレス成形用に用いられ、この場合は炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の繊維特性に変化はない。なお、好ましい板状の成形材料はXY方向が50mm×50mm以上である。
【0053】
[成形体の最小板厚]
上記の成形材料を用いて成形した成形体は、用途に合わせて各種の板厚とすることが可能である。成形体の板厚は、成形材料の板厚と略同じであってもよいし、成形材料の板厚よりも薄くてもよい。板厚は、成形時に使用する金型が密閉型の場合は成形材料と同じ板厚になり、開放型の場合は成形材料によりも薄くなる。なお、成形性材料は、密閉型の金型での圧縮成形に適している。
成形体の板厚は、0.2mm以上5mm以下の範囲程度であればよく、3mm以下の薄肉にも好適に得ることができる。
また、上記の成形材料を用いて成形した成形体の最小板厚に特に限定はないが、1mm以上であることが好ましい。これは成形時の流動性を担保する観点であり、最小板厚が1mm以上であれば、成形時の流動性が良好となる。
【0054】
[数平均繊維長Ln
Aと板厚の関係]
成形体の最小板厚をT(mm)としたとき、炭素繊維(A)の数平均繊維長Ln
Aは、T/2(mm)未満であることが好ましい。繊維長は、繊維強化の効果を発現させる目的で長い方が望ましいが、数平均繊維長Ln
AがT/2(mm)未満であれば、成形流動過程において、炭素繊維(A)が流動を妨げる要因となりにくいからである。炭素繊維(A)の好ましい数平均繊維長Ln
AはT/3(mm)未満である。
【0055】
[炭素繊維束(A1)の面積割合]
成形体は、板厚方向(例えば、
図5のZ方向である)の断面を観察した際、上記定義される炭素繊維束(A1)の面積割合が、炭素繊維(A)全体に対して0%超50%以下の範囲であることが好ましい。
炭素繊維束(A1)の面積割合が、炭素繊維(A)全体に対して50%以下であると、単糸状の炭素繊維(A)が多く存在していることになり、機械強度、特に曲げ強度が維持されやすくなる。炭素繊維束(A1)の面積割合は、炭素繊維(A)全体に対して0%超、30%以下の範囲内であることが好ましく、0%超15%以下の範囲内であることがより好ましい。
特定本数以上の炭素繊維からなる炭素繊維束(A1)と、それ以外の開繊された炭素繊維又は炭素繊維束を特定の比率で共存させることで、成形体中の炭素繊維(A)の存在量、すなわち炭素繊維(A)の繊維体積含有率Vf(単位は、Vol%である。)を高めることが可能となる。
【0056】
[数平均繊維長Ln
B]
成形体における炭素繊維(B)の数平均繊維長Ln
Bに特に限定はないが、好ましくは、成形体の最小板厚をT(mm)としたとき、数平均繊維長Ln
BがT(mm)以上であるのが好ましい。繊維長は、繊維強化の効果を発現させる目的で数平均繊維長Ln
Bが長い方が望ましいが、数平均繊維長Ln
BがT(mm)以下となると、成形流動時に成形品の板厚方向への炭素繊維の配向が発生するため、流動性を低下させる要因となる。好ましい数平均繊維長Ln
Bは成形体の最小板厚T(mm)の2倍以上、より好ましくは5倍以上である。
数平均繊維長Ln
Bの上限に特に限定はないが、流動性保持の観点から、50mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。
【0057】
≪成形材料の製造方法≫
成形材料の製造方法は特に限定される訳ではないが、例えば、以下の工程1〜5により好ましく製造される。
図1は、以下の工程2〜工程4を示す概略図である。
工程1.炭素繊維(A)を含む樹脂パウダー(P)を準備する工程
工程2.炭素繊維をカットして炭素繊維(B)を得る工程
工程3.カットされた炭素繊維(B)を開繊する工程
工程4.開繊させた炭素繊維(B)と、工程1で得られた樹脂パウダー(P)とを散布して成形材料用の前駆体(以下、単に、「前駆体」とする。)を得る工程
工程5.前駆体を加熱圧縮して成形材料を得る工程
なお、
図1に示すように、工程2以降に供される炭素繊維を符号「1」で示し、工程2では例えばカット装置3が、工程3では例えば開繊装置5が、工程4では例えば散布装置7がそれぞれ用いられて行われる。
以下、各工程について詳細に述べる。
【0058】
[工程1]
上述した構成の炭素繊維(A)を準備するために、樹脂パウダー(P)を準備するのが好ましい。つまり、単糸状の繊維を多く含み、板厚方向に対して垂直な断面を観察した際、繊維束を構成する繊維数が35/D
A以上で観察される炭素繊維束(A1)の面積割合が、全体に対して0%超50%以下の範囲である成形体になるような炭素繊維(A)を含んだ樹脂パウダー(P)を準備することが好ましい。
最初に、粒材(R)を、熱可塑性樹脂(ニートレジン)と混合させて溶融混練し、押出し機に投入して樹脂ペレットを得る。
ここでの粒材(R)は、上述したように、市販されている炭素繊維樹脂ペレットや粉砕材等を利用することが好ましい。
粒材(R)と熱可塑性樹脂(ニートレジン)の混合割合に特に限定はないが、後述する炭素繊維(B)と混合させて適切な炭素繊維の繊維体積含有率Vfの成形材料を製造する観点において、樹脂ペレットの繊維体積含有率Vfを1%以上70%以下に調整するように、粒材(R)と熱可塑性樹脂(ニートレジン)の混合割合を調節することが好ましい。より好ましい樹脂ペレットの繊維体積含有率Vfは1%以上40%以下の範囲であり、1%以上20%以下の範囲内が更に好ましい。
得られた樹脂ペレットを粉砕機で粉砕すると、パウダー状の樹脂パウダー(P)や塊状の樹脂塊を得ることができる。樹脂パウダー(P)や樹脂塊の大きさに特に限定はないが、機械物性の観点から、好ましい大きさとしては、1mm角以上が好ましく、2mm角以上であれば、より好ましい。樹脂パウダー(P)や樹脂塊の上限としては、後述するフィーダーの大きさにも依存するが、4mm角以下が好ましく、3mm角以下がより好ましい。樹脂パウダー(P)や樹脂塊の形状は、粉砕工程で、通常不定形状となる。なお、樹脂パウダー(P)と樹脂塊との区別は、一般的に明確ではないが、概ね、樹脂パウダー(P)の方が樹脂塊よりも小さい。
【0059】
[工程2]
この工程は、炭素繊維をカットする工程である。炭素繊維1をカットして炭素繊維(B)を得る工程は、炭素繊維(A)や炭素繊維(B)の構成比率に影響を及ぼさない範囲内で、成形材料に含める場合には、カット装置を複数用意し、各々のカット装置で切断した繊維を、開繊装置により各々を混合することができる。
さらに、成形材料に含まれる炭素繊維(B)のLw
B/Ln
Bを、1.0以上1.2未満の範囲内で分布を持たせる場合は、例えば、刃のピッチが連続的に変化しているロータリーカッターを用いることで連続的に繊維長を変化させて炭素繊維を切断することもできるし、刃のピッチが段階的に変化しているロータリーカッターを用いることで断続的に繊維長を変化させて炭素繊維を切断することもできる。
【0060】
[工程3]
工程3は、工程2でカットされた炭素繊維(B)を開繊させる開繊工程である。開繊工程は、例えば、カットされた炭素繊維(B)を管21内に導入し、繊維束を開繊させる工程である。空気を繊維に吹き付けることにより適宜開繊させることができる。開繊の度合い、炭素繊維束(B1)の存在量及び炭素繊維束(B1)中の平均繊維数(N
B)については、空気の圧力等により適宜コントロールすることができる。
【0061】
[工程4]
工程4は、開繊された炭素繊維(B)と樹脂パウダー(P)とから成形材料用の前駆体を形成する前駆体形成工程である。前駆体形成工程は、例えば、カットし開繊させた炭素繊維(B)を空気中に拡散させると同時に、工程1で得られた樹脂パウダー(P)を供給し、炭素繊維(B)を樹脂パウダー(P)とともに、支持体31上に散布し、マット状の成形材料用の前駆体33を形成する。
図1では、炭素繊維(B)を符号「B」で、樹脂パウダー(P)を符号「P」でそれぞれ示している。なお、樹脂パウダー(P)は、例えば
図1のパウダー供給装置35により行われる。
ここでは、支持体31として通気性を有するものを使用し、支持体31上に散布された炭素繊維(B)と樹脂パウダー(P)とを支持体31の下方から吸引して、支持体31上に堆積・定着させる。
この工程では、空気(気体)で開繊した炭素繊維(B)と別経路から供給される樹脂パウダー(P)を同時に支持体31上に向けて散布し、両者がほぼ均一に混ざり合った状態で支持体31上へマット状に堆積させ、その状態で定着させることができる。この際、例えばネットからなるコンベア等で支持体31を構成し、当該支持体31を一方向に連続的に移動させつつ、その上に炭素繊維(B)と樹脂パウダー(P)とを堆積させるようにすれば、連続的に前駆体33を形成することができる。なお、支持体31を前後左右に移動させることにより、均一な炭素繊維(B)と樹脂パウダー(P)との堆積が実現されるようにしてもよい。
ここで、炭素繊維(B)は、2次元方向にランダム配向するように散布される。開繊した繊維を2次元方向にランダム配向させながら散布するためには、下流側に拡大した円錐形等のテーパ管37を用いることが好ましい。このテーパ管37内では、開繊目的で炭素繊維に吹付けた気体が拡散し、管内の流速が減速するので、このとき炭素繊維には回転力が与えられる。このベンチュリ効果を利用することで、開繊した炭素繊維(B)を、樹脂パウダー(P)とともに均等に斑無く支持体31上に散布することができる。この工程において、炭素繊維(A)が3次元方向にランダム配向されるように樹脂パウダー(P)が散布されることが好ましい。
樹脂パウダー(P)の供給量は、炭素繊維(B)100重量部に対し、10重量部以上1000重量部以下であることが好ましく、50重量部以上400重量部以下であることがより好ましく、更に好ましくは80重量部以上150重量部以下である。また、樹脂パウダー(P)とは別途で、熱可塑性樹脂(ニートレジン)を同時に供給してもよい。
【0062】
[工程5]
この工程は、上記工程4で得た前駆体33を加熱及び加圧することにより成形材料を得る工程である。なお、成形材料は、言うまでもなく、熱可塑性樹脂と炭素繊維(A)と炭素繊維(B)とを含む。
成形材料の一例を
図4に模式的に示す。
図4において、成形材料39は、熱可塑性樹脂と炭素繊維(A)と炭素繊維(B)とを含み、熱可塑性樹脂は符号「C」で、炭素繊維(A)は符号「A」で、炭素繊維(B)のうち、炭素繊維束(B1)を符号「B1」で、単糸等(B2)を符号「B2」で、それぞれ表されている。
ここで、加熱及び加圧する方法としては、加熱と加圧を別々に行っても良く、プレス成形及び/又は熱成形などの方法により加熱及び加圧することが好ましい。
上記の前駆体33は、炭素繊維(B)間に樹脂パウダー(P)が均一して散布されるため、熱可塑性樹脂を容易に含浸しやすい特徴を持ち、ホットプレス成形などの方法により成形材料を効率よく得ることができる。
成形材料を得る際の前駆体33への加圧条件としては、10MPa未満であると好ましく、8MPa以下であるとより好ましく、5MPa以下であると更に好ましい。圧力が10MPa未満であると、より安価又は一般的な成形装置(プレス装置)を使用でき、大型の前駆体を得る場合でも、設備投資や維持費を抑制でき好ましい。
前駆体33を成形材料とするために加熱する際の温度としては、前駆体33に含まれる熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上分解温度未満であると好ましく、非晶性の場合はガラス転移温度以上分解温度未満であると好ましい。なお、熱可塑性樹脂の分解温度としては、空気中の熱分解温度であると好ましい。
なお、上記工程により得られた成形材料は、リブやボス等の突出部等を有するような立体成形用として、なかでもプレス成形用として有用である。
【0063】
≪成形材料の成形方法≫
成形材料を成形する場合、種々の成形方法を利用できるが、加熱・加圧して行われるのが好ましい。
成形方法としては、所謂、コールドプレス法やホットプレス法等の圧縮成形法が好ましく利用される。
【0064】
[コールドプレス法]
コールドプレス法は、例えば、第1の所定温度に加熱した成形材料を第2の所定温度に設定された金型内に投入した後、加圧・冷却を行う。
具体的には、成形材料を構成する熱可塑性樹脂が結晶性である場合、第1の所定温度は融点以上であり、第2の設定温度は融点未満である。熱可塑性樹脂が非晶性である場合、第1の所定温度はガラス転移温度以上であり、第2の設定温度はガラス転移温度未満である。
すなわち、コールドプレス法は、少なくとも以下の工程A−1)〜A−2)を含んでいる。
A−1)成形材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上分解温度以下、非晶性の場合はガラス転移温度以上分解温度以下に加温する工程。
A−2)上記A−1)で加温された成形材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点未満、非晶性の場合はガラス転移温度未満に温度調節された金型に配置し、加圧する工程。
これらの工程を行うことで、成形材料の成形を完結させることができる。
なお、金型に投入する際、成形材料は、対象の成形体の板厚に合わせて、単独(1枚で)又は複数枚用いられる。複数枚用いる場合、複数枚を予め積層して加熱してもよいし、加熱した成形材料を積層した後に金型内に投入してもよいし、加熱した成形材料を金型内に順次積層してもよい。なお、積層した場合の最下層の成形材料と最上層の成形材料との温度差は少ない方が良く、この観点からは、金型に投入する前に積層した方が好ましい。
また、上記A−1)における加圧は、例えば、金型やニップローラ等を利用することができる。上記の各工程は、上記の順番で行う必要があるが、各工程間に他の工程を含んでもよい。他の工程とは、例えば、A−2)の前に、A−2)で利用される金型と別の賦形型を利用して、金型のキャビティの形状に予め賦形する賦形工程等がある。
【0065】
[ホットプレス法]
ホットプレス法は、例えば、金型内に成形材料を投入し、金型の温度を第1の所定温度まで上昇させながら加圧し、第2の所定温度まで金型の冷却を行う。
具体的には、成形材料を構成する熱可塑性樹脂が結晶性である場合、第1の所定温度は融点以上であり、第2の所定温度は融点未満である。成形材料を構成する熱可塑性樹脂が非晶性である場合、第1の所定温度はガラス転移温度以上であり、第2の所定温度はガラス転移温度未満である。
ホットプレス法は、少なくとも以下の工程B−1)〜B−4)を含んでいることが好ましい。
B−1)成形材料を金型に配置する工程。
B−2)熱可塑性樹脂が結晶性の場合は熱可塑性樹脂の融点以上熱分解温度以下の温度まで、非晶性の場合は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上熱分解温度以下の温度まで、金型を昇温しつつ、加圧する工程(第1プレス工程)。
B−3)一段以上であり、最終段の圧力が第1プレス工程の圧力の1.2倍以上100倍以下となるように加圧する工程(第2プレス工程)。
B−4)熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点未満、非晶性の場合はガラス転移温度未満に金型温度を調節する工程。
これらの工程を行うことで、成形材料の成形を完結させることができる。
【0066】
[共通事項]
工程A−2)及びB−3)は、成形材料に圧力を加えて所望形状の成形体を得る工程であるが、このときの成形圧力については特に限定はしないが、金型キャビティ投影面積に対して10MPa未満が好ましく、8MPa以下であるとより好ましく、5MPa以下であると更に好ましい。
成形圧力が10MPa以上の場合は、特に大型成形体を成形するためには多額の設備投資や維持費が必要となるため、好ましくない。上述した成形材料は成形時の流動性が高いため、成形圧力を低くしても、安定してリブやボスを設けることができる。
更に、上述の成形材料を用いれば、安定して成形するのが難しい大きなリブを設けたい場合であっても、容易にリブを設けることができる。成形材料の成形には上記の双方の圧縮成形法が適用可能であるが、成形時間をより短縮できる観点では、コールドプレス法がより好ましい。
また、当然のことであるが、圧縮成形時に種々の工程を上記の工程間に入れてもよく、例えば真空にしながら圧縮成形する真空圧縮成形を用いてもよい。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
実施例や比較例における物性値等の算出や評価方法について、以下説明する。
【0068】
[成形材料又は成形体に含まれる炭素繊維の繊維長の測定方法]
後述する実施例においては、樹脂パウダー(P)に含まれる炭素繊維(A)の繊維長を0.01mm以上3mm未満に、炭素繊維(B)の繊維長を3mm以上100mm未満にそれぞれなるよう調整して、工程2においてロータリーカッターで炭素繊維をカットしている。
すなわち、本実施例においては、前駆体、成形材料及び成形体に含まれる炭素繊維(A)の繊維長と繊維長分布は、樹脂パウダー(P)に含まれる炭素繊維(A)の特性が維持される。
一方、成形材料及び成形体に含まれる炭素繊維(B)の繊維長と繊維長分布は、前駆体に含まれる炭素繊維(B)の特性が維持される。したがって、炭素繊維(A)の特性は樹脂パウダー(P)に含まれる炭素繊維を分析し、炭素繊維(B)の特性は前駆体に含まれる3mm以上100mm未満の炭素繊維を分析した。
具体的には、得られた樹脂パウダー(P)又は前駆体を切り出しルツボに入れ、550℃にて1.5時間有酸素雰囲気下で加熱し樹脂成分を燃焼除去した。残った炭素繊維を界面活性剤入りの水に投入し、超音波振動により充分に撹拌させた。撹拌された分散液を計量スプーンによりランダムに採取し評価用サンプルを得て、ニレコ社製画像解析装置Luzex APにて繊維数3000本の長さを計測した。
前駆体を分析する場合には、測定した全ての炭素繊維の長さ(Li)から、繊維長0.01mm以上3mm未満の炭素繊維(A)と、繊維長3mm以上100mm未満の炭素繊維(B)に分けた。
抽出した炭素繊維については、前述の式(3)、(4)により数平均繊維長Ln、重量平均繊維長Lwを炭素繊維(A)、炭素繊維(B)についてそれぞれ求め、繊維長の分布幅Lw/Lnをそれぞれ求めた。
また、実施例、比較例において樹脂パウダー(P)を作成しない場合があるが、この場合は、樹脂パウダー(P)に代えて使用した、粉砕材に含まれる繊維特性を、上記と同様にして分析した。
【0069】
[成形材料における炭素繊維束の分析]
上記分類した炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の繊維束の分析は、以下のように行った。
【0070】
1.炭素繊維(A)に含まれる繊維束の分析
板状の成形材料39を板厚方向(
図5のZ方向)に、任意に10点における10mm×10mmの範囲に現れる炭素繊維断面を観察し、束となっているか、単糸となっているかを確認した。なお、ここいう板厚方向に現れる炭素繊維断面は、板厚方向と直交する面において現れる炭素繊維の断面をいい、例えば、
図5におけるXY平面に平行な面であり、表側の主面(表面)や裏側の主面(裏面)である。
炭素繊維束の分布は下記のような基準で評価している。
◎(Perfect):炭素繊維束(A1)の面積割合が、炭素繊維(A)全体に対して0%以上〜15%未満である
〇(Excellent):炭素繊維束(A1)の面積割合が、炭素繊維(A)全体に対して15%以上50%未満である
△(Good):炭素繊維束(A1)の面積割合が、炭素繊維(A)全体に対して50%以上である
なお、上述したように、炭素繊維束(A1)は炭素繊維(A)に属し、繊維束中の繊維の数が35/D
A以上で観察される炭素繊維束(ここでD
Aは炭素繊維(A)の平均繊維径)である。
【0071】
2.炭素繊維(B)に含まれる繊維束の分析
繊維長3mm以上100mm未満の繊維束をピンセットで全て取り出し、炭素繊維束(B1)の束の数I及び各繊維束の長さL
Biとその質量W
Biを測定し、記録する。ピンセットにて取り出すことができない程度に繊維束が小さいものについては、まとめて最後に質量を測定する(この質量をW
Bkとする。)。
質量の測定には、1/100mgまで測定可能な天秤を用いる。成形材料39に含まれている炭素繊維(B)の平均繊維径D
Bより、上述の式(1)により臨界単糸数を計算し、臨界単糸数以上の炭素繊維束(B1)と、それ以外の単糸等(B2)に分ける。
炭素繊維束(B1)の平均繊維数N
Bの求め方は以下の通りである。
各炭素繊維束中の繊維本数N
Biは使用している炭素繊維(B)の繊度F
Bより、次式(5)により求められる。
N
Bi=W
Bi/(L
Bi×F
B) (5)
炭素繊維束(B1)中の平均繊維数N
Bは、炭素繊維束(B1)の束の数Iより、次式(6)により求められる。
N
B=ΣN
Bi/I (6)
炭素繊維束(B1)について、炭素繊維(B)の繊維全量に対する割合VR
Bは、炭素繊維(B)の密度(ρ
B)を用いて次式(7)により求められる。
VR
B=Σ(W
Bi/ρ
B)×100/((W
Bk+ΣW
Bi)/ρ
B) (7)
【0072】
3.成形材料における炭素繊維(A)の3次元配向の分析
実施例、比較例において、炭素繊維(A)の3次元方向へのランダム配向は、以下の手順で測定した。
(i)炭素繊維断面を観察しやすくするように、成形材料39を20mm(タテ)×20mm(ヨコ)×3mm(厚み)の直方体から、2mm(タテ)×2mm(ヨコ)×2mm(厚み)の立方体を10個切り出し、各立方体の各面について、10カ所ずつ観察し、観察される炭素繊維の断面数を数え、平均をとった。立方体を切り出す際、表面樹脂を除くため、板状の成形材料39の表面(6面)を機械加工にて約200μm削った。
(ii)3mm以上100mm未満の炭素繊維(B)のみで別途作成した成形材料(B)(後述する比較例3に該当)について、(i)と同じ様に上・底面及び側面の合計6面について、単位面積あたりに観察される炭素繊維(B)の断面数を数えた。
(iii)各面で観察された断面数について、(ii)で観察された断面数から(i)で観察された断面数を引いた。
(iv)引いた後の断面数を、以下のように定義し、((X+Y)/2)/Zを算出し、以下の評価を行った。なお、以下の「○方向の側面」とは、○方向と直交する面と平行な状態にある面をいう。
X:
図5に示すX方向の側面(YZ平面に平行な面)で観察された、単位面積(1mm×1mm)あたりの炭素繊維(A)の断面数
Y:
図5に示すY方向の側面(XZ平面に平行な面)で観察された、単位面積(1mm×1mm)あたりの炭素繊維(A)の断面数
Z:板厚方向の面(
図5に示すZ方向の側面であり、XY平面に平行な面)で観察された、単位面積あたりの炭素繊維(A)の断面数
なお、炭素繊維(A)の3次元方向のランダムにおける評価の指標は、以下の通りある。
◎(Excellent):1≦((X+Y)/2)/Z<2
〇(Good):2≦((X+Y)/2)/Z<10
×(Bad):10≦((X+Y)/2)/Z
【0073】
4.成形材料における炭素繊維(B)の2次元配向の分析
成形材料39から試験片を切出し、成形材料の任意の方向(0度方向)及びこれと直交する方向(90度方向)を基準とする引張弾性率を測定し、測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比Eδを測定した。弾性率の比が1に近いほど、等方性に優れる材料である。本実施例では弾性率の比が1.3以下の場合、等方性であると評価する。なお、炭素繊維(B)の2次元方向ランダムにおける評価の指標は、以下の通りである。下記〇の場合が、2次元方向にランダムに配向していることを表し、×の場合が2次元方向にランダムに配向していないことを表す。
○(Good):Eδ≦1.3
×(Bad):1.3<Eδ
【0074】
5.繊維体積含有率Vfの分析
成形材料39より、100mm×100mmの角板を切り出し、その重量w0(g)を測定した。次に、切り出した成形材料を、空気中で500℃×1時間加熱し、樹脂成分を焼き飛ばして残った炭素繊維の重量w1(g)を測定した。測定結果を利用して、下式(8)を用いて、繊維重量分率wfを求めた。いずれの測定もn=3で行い、その平均値を用いた。
繊維重量分率wf=(炭素繊維の重量w1/成形材料の重量w0)×100 (8)
次に、各成分の比重を用い、下式(9)により繊維体積含有率Vfを算出した。なお、一般的に、繊維体積含有率Vfと、繊維重量分率wfは、下記の式(9)が成立する。
1/Vf=1+ρf/ρm (1/wf−1) (9)
ここで、ρfは繊維の密度、ρmは樹脂の密度である。
【0075】
[成形体における評価]
1.物性評価
ウォータージェットを用いて成形体の水平部から試験片を切出し、JIS K7074を参考として、インストロン社製の曲げ試験機5966を用いて測定した。試験片の形状はA形試験片とした。評点間距離と板厚の比(L/D)は40、試験速度は1%/minとした。
このように曲げ応力を測定することで、試験片の板厚の変動による、曲げ応力値への影響を無視できるようにした。なお、曲げ応力の評価結果は、比較例2を100として相対値で記載した。
また、同様に、ウォータージェットを用いて成形体から試験片を切出し、JIS K7164を参考として、インストロン社製の5982R4407万能試験機を用いて、引張応力を測定した。試験片の形状はA形試験片とした。チャック間距離は115mm、試験速度は2mm/minとした。なお、引張試験結果は、2次元配向状態についての評価等に利用される。
【0076】
2.ボス及びリブへの充填性評価
成形材料39の流動性や成形性を評価する目的で、成形体41の外観、特にボス43やリブ45の端部を目視評価した。
評価では板状の成形材料39を加熱したものを150℃に設定した金型の水平部にチャージ率80%となる様に配置して、5MPaの圧力で60秒間コールドプレスし、
図3に示す成形体41を得た。ボス43及びリブ45における熱可塑性樹脂の充填具合から評価した。評価指標は以下の通りである。
◎(Perfect):ボス、リブ双方とも、角部までしっかりと形成されていた。
○(Excellent):ボス、リブの形状は形成できていたが、角部にわずかながら欠けがあった。
△+(Very good):ボス、リブどちらか一方の形状は問題なく形成できたが、もう片方の形状形成がやや不十分であった。
△(Good):ボス、リブ双方の形成がやや不十分であった。
△−(Passed):ボス、リブ双方とも、完全体の半分位の形成具合であった。
×+(Less):ボス、リブどちらか一方の形成が半分位までであり、もう片方の形状がほぼ不完全な形成であった。
×(Bad):ボス、リブ双方とも、形成が不完全であった。
【0077】
3.層間せん断強度に類する評価
ウォータージェットを用いて薄肉成形体の水平部から試験片を切出し、シマヅ製曲げ試験機島津万能試験機AGS−X 5KNを用いて測定した。尚、支点間距離15mm試験速度2mmとし、下記式を用いて、比較例2を100とした相対値で記載した。
τ=(3P)/(4h(t
2))
P:層間せん断荷重(N)
h:試験片幅(mm)
t:試験片板厚(mm)
【0078】
[実施例・比較例共通]
本実施例や比較例で用いた炭素繊維及び熱可塑性樹脂は以下に示すものである。
・PAN系炭素繊維
・ポリアミド6(PA6)(融点225℃、熱分解温度(空気中)300℃)
【0079】
[実施例1]
(工程1)
炭素繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(繊維径7μm 繊維幅10mm 引張強度4000MPa)を使用し、炭素繊維を拡幅して20mm幅として使用した。
以下の工程1は、
図1で説明した前駆体の製造工程と、似た装置を使って行うこともできるため、
図1を参考にでき、
図1を使って説明する。
カット装置3には、ロータリーカッターを用いた。刃15の間隔は12mmとした。開繊装置5として、小孔を有した管21を用意し、コンプレッサー23を用いて圧縮空気を送気した。この時、小孔からの風速は、60m/secであった。
この管21をロータリーカッターの直下に配置し、さらに、その下部にはテーパ管37を溶接した。テーパ管37の側面より、熱可塑性樹脂をパウダー供給装置35から供給する。この熱可塑性樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030を冷凍粉砕し、更に、20メッシュ、及び30メッシュにて分級したパウダーを用いた。このとき、平均粒径は約1mmであった。
次に、テーパ管37出口の下方に、平面方向に移動可能であり且つ通気性を有する支持体31を設置し、支持体31の裏側よりブロワにて吸引を行った。装置を稼働し、炭素繊維目付1441g/m
2、ナイロン樹脂目付1704g/m
2である前駆体を得た。なお、この前駆体は、樹脂パウダー(P)用であって、
図1で説明した成形材料用の前駆体とは異なる。
この前駆体を260℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、厚みt=2.3mmの複合材料を得た。ここで得られた複合材料は大型低速プラスチック粉砕機を用いて細かく粉砕して粒材(R)を得た。
得られた粒材(R)と、熱可塑性樹脂(ポリアミド6)とを、100:217の重量割合で混合させて、東芝機械製TEM26S2軸押し出し機に投入し、シリンダ温度280℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練して炭素繊維の繊維体積含有率Vfが9.7%の樹脂ペレットを得た。この樹脂ペレットを、粉砕機で更に粉砕して樹脂パウダー(P)を得た。このとき、樹脂パウダー(P)の平均粒径は約1mmであり、形状は不定形状であった。
樹脂パウダー(P)に含まれる炭素繊維(A)の特性を、測定したところ、繊維長分布は、0.01mm以上1.1mm以下の範囲内であり、数平均繊維長Ln
Aは0.11mm、重量平均繊維長Lw
Aは0.22mmであった(Lw
A/Ln
A=2)。
【0080】
(工程2〜5)
炭素繊維(B)として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を拡幅して、繊維幅20mmとしたものを使用した。炭素繊維(B)のカット装置3には、ロータリーカッターを用いた。刃15のピッチは20mmとし、炭素繊維を繊維長20mmにカットするようにした。
開繊装置5として、径の異なるSUS304製のニップルを溶接し、二重構造の管21を製作した。内側の管に小孔を設け、外側の管との間にコンプレッサー23を用いて圧縮空気を送気した。この時、小孔からの風速は、450m/secであった。この管21をロータリーカッターの直下に配置し、さらに、その下部にはテーパ管37を溶接した。テーパ管37の側面からは、前記工程1で得られた樹脂パウダー(P)をパウダー供給装置35により供給した。
次に、テーパ管37出口の下方に、平面方向に移動可能な支持体31を設置し、支持体31の裏側よりブロワにて吸引を行った。装置を稼働し、前駆体33における炭素繊維全量の重量割合が45.8wt%(炭素繊維全量の目付が1880g/m
2、ナイロン樹脂目付2223g/m
2)、また炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合が10:90となるように調整して、炭素繊維(B)と樹脂パウダー(P)とを混合し、前駆体33を得た。
得られた前駆体33に含まれる炭素繊維の繊維長を測定して、0.01mm以上3mm未満の炭素繊維(A)と3mm以上100mm未満の炭素繊維(B)の重量割合を分析したところ10:90であり、炭素繊維(B)の繊維長は20mmと一定長であった。
炭素繊維(B)のカット方法を上述のようにロータリーカッターの刃のピッチを一定長としたために、前駆体33に含まれる炭素繊維(B)の長さを固定長とすることができた。したがって、重量平均繊維長Lw
B、数平均繊維長Ln
Bはともに20mmであり、Lw
B/Ln
Bは1.0であった。
【0081】
得られた前駆体33について、炭素繊維束(B1)の割合と、平均繊維数(N
B)を調べたところ、式(1)で定義される臨界単糸数は86本であり、炭素繊維束(B1)について、炭素繊維(B)全量に対する割合は85Vol%、炭素繊維(B1)の束内平均繊維数(N
B)は、750本であった。
得られた前駆体33を260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて20分間加熱し、板厚3.0mmの板状の成形材料39(
図4参照)を得た。得られた成形材料について超音波探傷試験を行ったところ、未含浸部やボイドは確認されなかった。
得られた板状の成形材料39の0度及び90度方向の引張り弾性率を測定したところ、弾性率の比Eδは1.03であり、繊維配向の差は殆ど無く、2次元方向において等方性が維持された材料を得ることができた。
更に、この成形材料39を500℃×1時間程度炉内にて加熱し、樹脂を除去した後、炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の割合、及び炭素繊維束(B1)の割合と、炭素繊維束(B1)に含まれる平均繊維数(N
B)を調べたところ、上記前駆体33の測定結果と差異は見られなかった。
上記成形材料39について、結果を表1に示す。また、機械物性は後述する比較例1との相対物性を示す。
また、成形材料39をNGKキルンテック製のIRオーブンを用いて300℃に加熱したものを120℃に設定した金型の水平部にチャージ率80%となる様に配置して5MPaの圧力で60秒間コールドプレスし、
図3に示すようなボス43及びリブ45を有する成形体41を得た。
【0082】
[実施例2]
炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合を20:80にしたこと以外は実施例1と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。
【0083】
[実施例3]
炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合を30:70にしたこと以外は実施例1と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例4]
炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合を40:60にしたこと以外は実施例1と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例5]
実施例の工程1において、得られた粒材(R)を溶融混練せず、樹脂パウダー(P)を得る工程を省いた。また、工程2以降では、樹脂パウダー(P)の代わりに粒材(R)を用いたこと以外は、実施例2と同様に成形材料を作成した。
粒材(R)に含まれる炭素繊維(A)の特性を測定したところ、繊維長分布は0.01以上2.3mm以下の範囲内であり、数平均繊維長Ln
Aは0.22mm、重量平均繊維長Lw
Aは0.55mmであった(Lw
A/Ln
A=2.5)。
結果を表1に示す。
【0086】
[実施例6]
炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合を50:50にしたこと以外は実施例5と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例1]
実施例1において、炭素繊維(B)を用いず、炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の含有割合を100:0になるように調整した以外は、実施例1と同様に成形材料を作成した。
この際、成形材料に含まれる炭素繊維全量は、実施例1と同じになるよう、炭素繊維(A)の含有割合は調整した。
炭素繊維(A)の特性及び得られた板状の成形材料の特性については実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例2]
実施例1の工程1を省き、工程2〜5のみで前駆体を作成することで、炭素繊維(A)を含まない前駆体を作成した。この際、成形材料に含まれる炭素繊維全量は、実施例1と同じになるよう、炭素繊維(B)の含有割合は調整した。
得られた前駆体に含まれる炭素繊維の繊維長を測定して、0.01mm以上3mm未満の炭素繊維(A)と3mm以上100mm未満の炭素繊維(B)の重量割合を分析したところ0:100であり、炭素繊維(B)の繊維長は20mmと一定長であった。重量平均繊維長Lw
B、数平均繊維長Ln
Bはともに20mmであり、Lw
B/Ln
Bは1.0であった。
得られた前駆体について、炭素繊維束(B1)の割合と、平均繊維数(N)を調べたところ、式(1)で定義される臨界単糸数は86本であり、炭素繊維束(B1)について、マットの繊維全量に対する割合は86Vol%、炭素繊維(B1)の束内平均繊維数は、1500本であった。
得られた前駆体は実施例1と同様にプレスして板厚3.0mmの板状の成形材料を得た。前駆体における炭素繊維(B)の繊維特性、及び成形材料の評価結果を表1に示す。
【0089】
[比較例3]
炭素繊維全量の繊維体積割合を28%に調整した以外は、比較例2と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。炭素繊維(B)のみの繊維体積割合でみると、比較例3は実施例2と一致する。
【0090】
[比較例4]
炭素繊維全量の繊維体積割合を40%に調整した以外は、比較例2と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。
【0091】
[比較例5]
炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表1に示したように調整した以外は、比較例2と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例7]
炭素繊維(A)について、Lw
A/Ln
Aを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0093】
[実施例8]
炭素繊維(A)について、Lw
A/Ln
Aを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0094】
[実施例9]
炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0095】
[実施例10]
炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0096】
[実施例11]
炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0097】
[実施例12]
炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0098】
[実施例13]
炭素繊維束(B)について、Lw
BとLn
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0099】
[実施例14]
炭素繊維束(B)について、Lw
BとLn
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0100】
[実施例15]
炭素繊維束(B)について、Lw
BとLn
Bと炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0101】
[実施例16]
炭素繊維束(B)について、Lw
BとLn
Bと炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0102】
[実施例17]
炭素繊維束(B)について、カット長を調整して、Lw
BとLn
Bとを表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0103】
[実施例18]
炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合を表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0104】
[実施例19]
炭素繊維(A)と炭素繊維(B)の重量割合を表2に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表2に示す。
【0105】
[比較例6]
炭素繊維(A)について、Lw
AとLn
Aを表3に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0106】
[比較例7]
炭素繊維(A)について、Lw
AとLn
Aを表3に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0107】
[比較例8]
炭素繊維(A)について、Lw
AとLn
Aと炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表3に示したように調整したこと以外は実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0108】
[実施例20]
炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表3に示したように調整した以外は、実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0109】
[比較例9]
Lw
AとLn
Aと炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表3に示したように調整した以外は、実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0110】
[比較例10]
Lw
AとLn
Aと炭素繊維束(B1)の割合と平均繊維数N
Bを表3に示したように調整した以外は、実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0111】
[比較例11]
炭素繊維のかわりにガラス繊維(日東紡株式会社製、E−ガラス)を用い、ガラス繊維について、表3に示したように調整した以外は、実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0112】
[比較例12]
炭素繊維のかわりにガラス繊維(日東紡株式会社製、E−ガラス)を用い、ガラス繊維について、表3に示したように調整した以外は、実施例2と同様に成形材料を作成した。結果を表3に示す。
【0113】
[理論加成則の確認計算]
比較例1と比較例2における曲げ強度をそれぞれSa、Sbとし、実施例における炭素繊維(A)の繊維全体に対する重量含有割合をqとして、qSa+(1−q)Sbを求めた。結果を表4、グラフを
図7に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】