(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
呼吸器の患者ケアは、医療におけるダイナミックな開発途上の分野であって、その必要は小児から老年者に及ぶ。そのような患者が患っている呼吸器の病気は、一時的なものも永続的なものも多種多様である。例えば、挿管された患者の処置の範囲には、以下のもの:通気、吸引、酸素化、サンプル採取、目視検査、インラインセンシング、圧力モニタリング、フラッシング(洗流し)、投薬、および/または洗浄が含まれ得る。これに関する問題の大半は、現状、患者における多種多様なニーズ、同時に実施されるものも含まれる複数の処置に対する適応を中心とし、そこに焦点があてられている。その患者において最も目的に適う複数の治療を容易に、効果的に、そして安全に行うための器材がないことが、依然として懸案の課題となっている。
【0003】
例えば、気腫の患者である成人および未熟児など、肺容量の小さい患者においては、問題の一つは蓄積した肺分泌物の除去である。分泌物除去プロセスの間にそのような患者に酸素を与えないのは好ましくない。人工気道、そのような患者の肺に空気(酸素および他のガス)を供給するために患者の呼吸器の一部に配置される気管内チューブに、呼吸器アクセスアセンブリを介して一時的に配置される吸引カテーテルを通して分泌物除去が行われる。
【0004】
呼吸器ケアを受けているこれらおよび他の患者において、挿管中に、呼吸器アクセスアセンブリに関する問題を含む問題が起こる場合がある。人工通気、吸引、吸い込み、および他の機能のために呼吸器アクセスアセンブリの使用を拡張することが安全ではない場合、人工呼吸器関連肺炎などの院内感染を引き起こすこともある。また、そのような呼吸器アクセスアセンブリの信頼性にも懸念がある。さらに、装置の交換および他の治療的処置のために人工呼吸器回路を解放する必要があることも問題となる。
【0005】
呼吸器アクセスアセンブリは、患者の医療的ケアの質を損なうことなく、迅速かつ容易に取り除かれ、交換される必要がある。呼吸器アクセスアセンブリに関する他の懸念材料として、呼吸器アクセスアセンブリの故障により、閉鎖系である呼吸器系が、開放された呼吸器系に気付かないうちに変換されてしまうことである。したがって、複数の目的のために安全で予想可能な閉鎖系アクセスを挿管された患者の呼吸器系に対して提供し、かつ閉鎖呼吸器系の不注意による損傷を低減または排除するための安全のための特徴を備えた、操作容易で、フェースセーフ機能付きの、閉鎖呼吸器アクセスアセンブリをもつことは望ましいことである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の呼吸器アクセスアセンブリの透視図であって、前記アセンブリの遠位側端部の気管内チューブに取り付けられた呼吸器マニホルド、フィルタおよび前記アセンブリの近位側端部に結合された吸引カテーテルアセンブリに結合された、使用中の呼吸器アクセスアセンブリを示す図。
【
図2】
図1の呼吸器アクセスアセンブリの分解斜視図。
【
図5A】開口内のフランジの周囲に形成されたOリングの側面図であって、そのH形状が示された図。
【
図5B】その周囲にOリングが形成され得る開口内のフランジの平面図。
【
図6】
図4の近位側ディスクの側面図であって、Oリングを別に示した図。
【
図7】
図6および
図7の近位側ディスクの近位側表面の平面図であって、ボタン、ばね、およびOリングが示された図。
【
図8】
図3の遠位側ディスクの近位側表面の平面図であって、その近位側表面上に配置されるのが望ましい封止を示す図。
【
図10A】
図1、
図2、
図4および
図6の近位側ディスクの近位側表面の平面図であって、押し込み位置(運動許容位置)にあるボタン、第1のポートをブロックするボタンのプランジャを示す図。
【
図10C】
図10Aの近位側ディスクの近位側表面の平面図であって、飛び出した位置(固定位置)にあるボタン、第1のポートから飛び出しているプランジャを示す図。
【
図11】本開示の呼吸器アクセスアセンブリ側面図であって、開放位置(第1の開放位置)にある近位側ディスクの第1のポートと軸線方向に位置合わせされた遠位側ディスクのポート示す図。
【
図12】本開示の呼吸器アクセスアセンブリ側面図であって、閉鎖位置(全てのポートが閉鎖される)にある近位側ディスクの第1のポートと第2のポートとの間の位置に配置された遠位側ディスクのポート示す図。
【
図13】本開示の呼吸器アクセスアセンブリ側面図であって、開放位置(第2の開放位置)にある近位側ディスクの第2のポートと軸線方向に位置合わせされた遠位側ディスクのポート示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
吸引用カテーテルは、よく知られており、多くの医療の用途のために広く市販されている。吸引は、「開放」または「閉鎖」システムを用いて行われる。開放システムでは、吸引カテーテルは、吸引カテーテルの近位側端部に結合された吸引力源を備えた柔軟なルーメンに挿入された柔軟なプラスチックチューブにすぎない。吸引カテーテルがルーメンを入れられる前に触れるいかなるものも滅菌状態で維持し、「滅菌野」が患者上に、またはそれに隣接して作りださなければならない。吸引カテーテルは、患者の分泌物で覆われることになるので、その使用後には慎重に取り扱われなければならない。これに対して、例えば本出願人による特許文献1に記載されているもののような「閉鎖」システムでは、使用前の吸引カテーテルの汚染を排除または最小限にするために、分泌物の吸引に使用されることがある装置は、概ね円筒形のプラスチックのバッグの中に包入される。これは、一般的には「閉鎖吸引カテーテル」と称され、Kimberly−Clark Corporationから(以前はBALLARD(登録商標)Medical Productsから)TRACH CARE(登録商標)の商標名で販売されている。
【0011】
患者が分泌物の人工的な除去を必要としているとき、閉鎖吸引カテーテルはプラスチックバッグの一端を通し、連結金具を通して、柔軟なルーメンに進められることができる。吸引カテーテルの反対側の(近位側)端部は、吸引力源に取り付けられる。吸引は、例えば、吸引カテーテルの近位側端部上の指で制御される弁を用いて行われ、分泌物が除去される。このように分泌物は吸引カテーテルチューブのルーメンに引き込まれて除去されるが、システムは閉鎖されたままの状態におかれる。
【0012】
その後、吸引カテーテルは、回路を閉鎖しておくために、柔軟なルーメンからプラスチックバッグへと引っ込められる。閉鎖吸引システムは、医療提供者が患者の分泌物からよりよく保護されるので、通常は医療提供者に好まれる。開放吸引システムでは必要となるように、患者の吸引のたびに滅菌野がつくられる必要はないので、閉鎖吸引システムは、その使用も簡単で迅速に行える。閉鎖吸引カテーテルは柔軟なルーメンの近位側端部に永久的に取り付けられるが、定期的な交換が可能となるように着脱可能に結合されてもよい。
【0013】
現時点での多くの呼吸器アクセスアセンブリの設計は、1つのポートだけを有するものであり得る。これらの設計では、他の仕事(例えば気管支鏡検査、気管支肺胞洗浄など)を行う必要があるとき、吸引カテーテルは取り外さなければならない。前述のように、そのような通気された患者上の吸引カテーテルを取り外すことによって閉鎖人工通気システムを開放すると、結果として感染症につながることがある。また、現時点での、多元アクセスポートマニホルドおよび/またはアセンブリの設計は安全ロックを含まない。特定の例では、そのような安全ロックが設けられていないため、マニホルドポートを通して吸引カテーテルを導入すると、結果としてカテーテルの一部が切断され、患者の肺のなかに吸引されることになり得る。これは結果として、気道閉塞、感染症、死亡にさえ至る重大な合併症につながることがある。呼吸器アクセスアセンブリに対して十分に封止がなされないと、終末呼気陽圧(PEEP)が損なわれることがあり、このことは、患者の肺での肺胞障害の原因ともなり得る通気の不足が生じ得る。
【0014】
本開示は、閉鎖通気システムを開放することなく多元アクセスを可能にする特徴を備えた呼吸器アクセスアセンブリについて記載するものであり、これは、吸引カテーテルの任意の部分の損失を防止する安全ロック機構を備えるとともに、改善された封止手段を備えている。
【0015】
本明細書に例示され、開示された実施形態は、実質的に類似する3種のアセンブリを提示する。第1および第2のアセンブリは、積み重ねられ、かつ位置合わせされたディスクを示す。第3の実施形態は、積み重ねられ、かつ位置合わせされたプレートを示す。3つの実施形態のすべては、発明範囲の限定を意図しない実施例である。
【0016】
ここで図面を参照すると、
図1〜
図13に示すように、回転式呼吸器アクセスポートアセンブリ10が提示されている。
図1〜
図3、
図6〜
図8、
図10A〜
図10D、
図11〜
図13に示すように、アセンブリ10は、遠位側ディスクまたはプレート12と近位側ディスクまたはプレート14とを含み、これらは、互いに積み重ねられ軸線方向に位置を合わせた形で配置されている。遠位側ディスクまたはプレート12は、少なくとも1つの傾斜したポート16を有し、ポート16の開口は傾斜したカフ18を通して延び出している(
図1〜
図3および
図8)。近位側ディスクまたはプレート14は、第1の傾斜したポート20および第2の傾斜したポート22を備えており、これらのポートの開口はそれぞれ第1および第2の傾斜したカフを通して延び出している(
図1、
図2、
図4、
図10A〜
図10D、
図11〜
図13)。遠位側ディスクまたはプレート12は、それが動く即ち回転するとき、そのポート16を近位側ディスクまたはプレート14の第1のポート20と軸線方向に位置合わせする位置を提供する(
図11)。或いは、遠位側ディスクまたはプレート12は、それが動く即ち回転するとき、そのポート16を近位側ディスクまたはプレート14の第2のポート22と軸線方向に位置合わせする位置を提供することもできる(
図13)。さらに別の形態では、遠位側ディスクまたはプレート12は、それが動く即ち回転するとき、そのポート16を第1のポート20にも第2のポート22にも位置合わせされない位置を提供することもできる。いずれの例においても、1組のポートが軸線方向に位置合わせされるとき、近位側ディスクまたはプレート14の反対側のポートは、遠位側ディスクまたはプレート12の一部によってブロックされることになる。この位置では、ポート16、20、22は、閉鎖位置にあるディスクまたはプレート12または14の一方によってブロックされ、いずれも位置合わせされていない(
図12)。
【0017】
遠位側ディスク12は、
図2、
図3および
図8に示すように、ディスク12の外縁部30に配置されたリップ28も備えるのが望ましい。リップ28は、リップ28の周囲に3箇所のノッチ、即ち第1のノッチ31、第2のノッチ32、および第3のノッチ33を含み得る。この3つのノッチ31、32、および33は、他の部材と協働して、ディスク12と14が着脱自在に固定される、3つの予め定められた位置を提供する。複数の傾斜部(集合的に34)も、リップ28上に第1のノッチ31、第2のノッチ32、および第3のノッチ33のそれぞれに隣接して設けることができる。傾斜部34は、曲げる力に対する機械的な安定性と強度を付与するものであることが望ましい。加えて、傾斜部34は、後に詳細に説明するように、ばねおよび/またはボタンを備えたプランジャのための間隙を提供し得る。溝38は、遠位側ディスク12の縁部30とリップ28の交差部42に隣接する、遠位側ディスク12の近位側表面40の少なくとも一部の上に設けるのが好ましい。溝38は、遠位側ディスク12の内側周辺部43の一部に沿って延びるのが望ましい。しかし、別形態として、ディスク12上に溝を形成しなくてもよい(図示せず)。リブ44が設けられるのが望ましく、これも遠位側ディスク12の内側周辺部43一部の周囲に延在する。或いは、リブの代わりに一対のストップタブを用いてもよい(図示せず)。後に詳述するように、これらの構成部品は、近位側ディスク14の構成部品と協働して、遠位側および近位側ディスク12および14が回転できるようにする。遠位側ディスク12の近位側表面40上には、柔軟なポリマー・エラストマー封止材48が設けられるのも望ましい。封止材を用いることで、遠位側ディスク12と近位側ディスク14との間での、閉鎖通気システムの封止状態が維持される。
【0018】
また、封止材48は、
図2および
図8に示すように、ディスク形状であるのが望ましく、遠位ディスク12の内側周辺部43の外周よりわずかに小さい外周を有する。封止材48は、その遠位側表面54上で実質的に平坦であるが、その近位側表面56において、封止材48はその外周部の周りに延在する周辺部リブ58を有する。同様に、封止材48は、そのような形態に限定しないが、少なくともポート16の形状に合わせた形につくられた当該封止材を貫通する開口62を有する。しかし、開口62は、少なくとも第1のポート20および第2のポート22にも実質的に形状を合わせたものであるのが望ましい。ポートリブ64は、封止材48の近位側表面56上の開口62の周囲に形成される。後に詳述するように、周辺部リブ58およびポートリブ64は、近位側ディスク14の遠位側表面65上の構成部品と協働して、それらの間に封止状態を形成する。封止材48が遠位側ディスク12の近位側表面40上の中央部に置かれるとき、周辺部リブ58、遠位側ディスク12の近位側表面40の一部、およびそのリップ28が協働して溝38を形成する(図示せず)ことが理解されよう。
【0019】
遠位側ディスク12は、その遠位側表面66上のポート16の周囲に形成されたカフ18を備える(
図1〜
図3)。カフ18は、人工気道の一部を形成する、またはそれに結合されたコネクタまたはマニホルドに着脱自在に結合するように構成されるのが望ましい。この結合は、例えば、摩擦的な回転、ルアーロック、連結タブ、ねじ状部品等によって形成され得る。
【0020】
近位側ディスク14(
図1、
図2、
図4、
図6、
図7、および
図10A〜
図10D)は、遠位側表面68と外側端部70とを備える。外側リップ72は、外側端部70に隣接するかその近傍に形成され、遠位側ディスク12のリップ28に協働して重なるように構成される。外側リップ72は2つ以上のノッチを有し、2つのノッチ(集合的に74)が形成されていることが望ましい。内側リブ76は、近位側ディスク14の遠位側表面68上の外側リップ72から内側に短い距離だけ離れた位置に形成される。内側リブ76は、外側リップ72の内側周辺部79の周りに完全に円を描くまでは延在していない。この短い距離が、遠位側ディスク12のリップ28を受容するべく構成された回転溝80を画定する。タブ81は、ストップタブ81として作用する内側リブ76上に設けられる。
【0021】
動作に際して、遠位側ディスク12のリップ28は、近位側ディスク14の内側リブ76と外側リップ72との間の溝80にはまる(
図8および
図10A〜
図10D)。近位側ディスク14のタブ81は、遠位側ディスク12の溝38の内部にそれと協働して適合し、遠位側ディスク12が溝38の規制する範囲内で近位側ディスク14に対して回転できるようにする。遠位側ディスク12のリブ44はストップ部としても働き、遠位側ディスク12の回転が止まらなくなるのを防止する。さらに、これらの部品は、回転するアクセスポート10を通した吸引カテーテルの位置のねじれを生じさせやすくする過剰回転を防止する。近位側ディスク14に戻ると、外周リブ82、83は、第1および第2のポート20、22の周辺部の周りに形成される。第1のポート20と第2のポート22との間に、概ねD字形状の部分84が設けられ、後に詳述するように、閉鎖位置を提供するために用いられる。1つの外周リブ82、83の間に延びそれらを結合するチャネル86が設けられてもよい。チャネルにより、第1および第2のポート20、22が、気体および流体が相互に流通できるように連通される。しかし、近位側ディスク12は、第1および第2のポート20、22の間のチャネルがない形態(図示せず)でも形成できることを理解されたい。開口88は、回転溝80の一部を通して形成される。開口88は、ボタンハウジング90内まで延び、ブロック部またはプランジャ92とボタン94を備えたアクチュエータまたはボタンアセンブリ91を少なくとも部分的に包入するように構成される(
図4、
図6、
図7A〜
図7D、および
図10A〜
図10D)。
【0022】
ボタンハウジング90は、近位側ディスク14の近位側表面96の一部から形成される。近位側表面96は、第1および第2のポート20、22をそれぞれ外囲する第1および第2のカフ24、24を備える。第1および第2のポート20、22並びにそれぞれに対応する第1および第2のカフ24、26は、前述のように、積み重ねられた遠位側ディスク12と近位側ディスク14の対してある角度で傾斜するように設けられる。
【0023】
ボタンハウジング90の少なくとも一部は、第1のポートの第1のカフ24と約90度の角度をもって交差するように形成され得る。前記ハウジング90は、例えば、ボタンアセンブリ91、ボタン94およびそれと一体的に形成されるか若しくは結合されたプランジャ92を収容するために半円筒状(即ち、例えば以下に限定されないが、概ねC字形状またはU字形状)に形成することができる(
図4、
図6、
図7、および
図10A〜
図10D)。ボタンハウジング90は、近位側ディスク14の外側リップ72の一部にフランジを有する側部開口100を備えるように構成されるのも好ましく、この開口は第1のカフ22を通して形成された開口と連通することになる。近位側ディスク14は、外側リップ72にノッチまたは凹み部99と有し、ボタン94の一部が、遠位側および近位側ディスク12、14にボタン94を保持するべく凹み部99に接触する。凹み部99は、第1のポート20の第1のカフ24における側部開口100と連通するように形成される。
【0024】
柔軟なポリマー・エラストマーOリング102が、側部開口100の内周部に隣接した位置に配置されるのが望ましい。Oリング102は、PEEP圧力損失に対するプランジャのための封止を提供するとともに、金属、プラスチックまたはそれらの任意の組合せから望ましくは構成されたものであり得るばね104のばね座領域を提供する。ばね104は、プランジャ92の上に配置され、Oリング102とボタン94との間に伸びて、ボタン94およびプランジャ92を外向きに付勢する。ばね104は、コイルばねを含むが、他のコイルばねでないばねや付勢機構を用いてもよい。
【0025】
驚いたことに、Oリング102を側部開口100の内周部に挿入することは、非常に時間がかかり負担になる作業であることが判明した。また、そのようにして挿入されたOリングは、アセンブリの完全に組み立てる間に緩むことがあり、一見確実に装着されているようにみえても、圧力損失の原因となることも判明した。これらの問題点に鑑みて、側部開口の内周部に形成される、オーバーモールドされたOリングが、装置の組み立て中にもその位置を保持し、かつ漏れに対して効果的な封止をなすことができることが判明した。
【0026】
オーバーモールドされたOリングを所定位置に形成するために、近位側ディスク14が、初めに1種以上のポリマーから形成される。これらの材料の例としては、以下に限定されないが、ポリカーボネート、アクリル等が挙げられる。近位側ディスク14が形成されるとき、ディスク14の一方の面から開口100の内周へと延びる、小さいチャネル85(直径約2〜3mm以下)がそこに含められる(
図10B)。プランジャ92の寸法および位置に合わせたインサートが側部開口100に配置され、それによりOリング102の所望の寸法に合った空所が形成される。そのインサートはまた、成形プロセス中に空気やガスが抜けるようにするが、溶融ポリマーは通過しないような通気孔を有する。そのチャネルを通してエラストマーポリマーを注入し、空所に充填して、Oリング102を所定の位置に形成する。漏れ防止をさらに確実にする必要がある場合は、オーバーモールドされたOリング102とボタン94との間に、追加のOリング(群)を手で挿入してもよいが、この処置は通常は必要とならない。
【0027】
近位側ディスク14の材料となる基板材料としてポリカーボネートを選択し、かつOリング102のためにポリカーボネートによく貼着する熱可塑性エラストマーを選択することで、マニホルドの組み立ての前およびその最中にOリング102を近位側ディスク14に取り付けたままにしておくこと、および最終的に組み立てられたときに漏れを最小または存在しないようにすることを確実にすることが助けられる。一般的に熱可塑性エラストマーは、使用時に十分に安定で、基板(例えばポリカーボネート)に貼着し、Oリングとして機能できるものである限り、いかなる種類のものでも使用することができる。適切な熱可塑性エラストマーとしては、イリノイ州McHenryのGLS Corp.製のVERSAFLEX(登録商標)1040−X OMであることが判明した。基板は、上述のようにポリカーボネート製がよく機能するが、種々のポリマー製のものでもよい。アクリル、ABS、およびXYDAR(登録商標)液晶ポリマーなどの他のポリマーも十分に機能する。よく適したポリカーボネートとしては、Sabic Innovative Plastics Holdings BVからSabic HPS2Rの表示で販売されているLEXAN(登録商標)材料が挙げられる。
【0028】
Oリング102は、側部開口100のフランジ101の両面の周囲に形成されるのが好ましい。この形状にOリングを形成するとOリングの所定の位置への維持が助けられる。オーバーモールドされたOリングであっても、フランジの一方の側にのみ取り付けられている場合には、極限状態では緩んでしまう可能性があるからである。フランジ101上のOリング102の側面図および断面図から、フランジ101の両面に形成されていた場合、Oリングが「H」形状にされることがわかる(
図5A)。加えて、フランジ101は完全に円形である必要はない。
図5Bは、ばねのための安定なプラットフォームを提供し、Oリングが接着する面積をより広げるフランジを示す。このようにフランジを「クローバーの葉」の形状とすることにより、ばねがフランジの座部に着座できるようにするが、ボタンを押したときにOリングを所定位置に維持するのを助ける。もちろん他の形状を採用してもよい。
【0029】
図9A〜
図9Dに示すように、ボタン94は、望ましくは、親指受け領域106、およびボタンハウジング90の形状に実質的に従っており、従って概ねC字形状またはU字形状である外側シェル108も備えていてもよい。ボタン94は、外側シェル108から短い距離だけ離隔した、C字形状またはU字形状の構成の内側シェル110も備える。
【0030】
プランジャ92は、親指受け領域106の内側表面(図示せず)に結合され、内側シェル110から短い距離だけ離隔するように配置される。ボタンハウジング90は、プランジャ94を、それがハウジング90から側部開口100内に入り込み、第1のポート22をその第1のカフ24にブロックするようなある位置に保持するために、重ねられる、すなわち外側シェル108および内側シェル110の間に配置されるのが望ましい(
図7および
図10A〜
図10D)。加えて、内側シェル110の外周端部113は、保持タブ114、ロックタブ116、および運動許容部118を備えており、運動許容部118は、ボタン92およびプランジャ94を、その両方を複数の予め定められた位置に着脱自在にロックするように、動くことを許容する。
【0031】
保持タブ14は、遠位側ディスク12および近位側ディスク14に対して結合された位置にボタン94を保持するべく構成されている(
図10A〜
図10D)。保持タブ14は、遠位側ディスク12のリップ28に接触し、ばね104がボタン94をディスク12および14から離れる向きに付勢していても、ボタン94を積み重ねられたディスク12および14から動いて離れないようにする。ロックタブ116は、回転ディスク12のリップ28上の第1のノッチ31、第2のノッチ32、または第3のノッチ33のそれぞれに収まり、接触するように構成される。ロックタブ116が、ノッチ31、32、または33を介してリップ28に接触するように配置されたとき、ロックタブ116は、遠位側ディスク12が近位側ディスク14に対して回転するのを防止するようにロックする。運動許容部118は、遠位側ディスク12のリップの下に延びるように構成される。この位置では、ロックタブ116が、遠位側ディスク12の内側周辺部43に対して配置される。したがって、ロックタブ116が遠位側ディスク12から外れて解放され、遠位側ディスク12を、近位側ディスク14の前述の制限範囲(すなわち約180以下)内で回転可能とする。ユーザがボタン94を内向きにディスク12、14に向かって押して、遠位側ディスク12が回転を開始するとき、運動許容部118は動くのを許容するのみである。このようにして、ロックタブ116は固定位置に配置され、ブロック部すなわちプランジャ92は、側部開口100を介して第1のポート20の第1のカフ24のなかに入り込み、第1のポート20を効果的にブロックし、吸引カテーテルがそれを通されるのを防止する。プランジャ92は、遠位側ディスク12が回転して第1のノッチ31、第2のノッチ32、および/または第3のノッチ33が運動許容部118と交差するまで、第1のポート20内に残っている。第1のノッチ31、第2のノッチ32、および/または第3のノッチ33は、外周端部113の外向きの動きを許容して、ばね付勢されたプランジャ92およびボタン94が遠位側ディスク12および近位側ディスク14の外側端部30、70から離れる方向に外向きに動くことを可能とし、もってロックタブ116がノッチ31、32、または33の1つの位置に外向きに動いて、遠位側ディスク12を固定、非可動位置にロックするのに十分な空間を提供する。この位置では、プランジャ92は、第1のポート20および/または第1のカフ24を通して開口から離れる方向に再び配置され、ボタンハウジング90のなかに動いて戻り、第1のポート20のブロックを解放する。
【0032】
遠位側ディスク12、その封止材48、近位側ディスク14、ばね104、Oリング102、ならびにボタンアセンブリ91は、一緒に協働して、アセンブリ10の3箇所の予め定められた位置を規定する。第1の位置は、
図11に示すように、第1のポート20および第1のカフ24と位置を合わせられたポート16とカフ18の開放位置(第1の開放位置)を規定し、位置合わせされたポート16、20およびカフ18、24をそれぞれ通して軸線方向の位置合わせ状態と連通状態を形成する。封止材48、および遠位側ディスク12上に配置されたそのそれぞれのリブ58、64は、分泌物を実質的にアセンブリ10内部および閉回路通気システムに封止して保持し、PEEPが維持され得るようにする。第1の位置では、封止材48と遠位側ディスク12の近位側表面40は第2のポート22も塞いでおり、この第2のポート22はカフ26を閉鎖するキャップ(図示せず)も有していてもよい。
【0033】
図12に示すように第2の位置は、遠位側ディスク12が第1のポート20と第2のポート22との間のある位置に回動して、第1及び第2のポート20、22に対するポート16の閉鎖位置を定めている。そして封止材48がすべてのポート16、20、22を塞ぐのを助ける。明らかに、この位置では、ポート16及び遠位側ディスク12のそのカフ18は、第1のポート20または第2のポート22のいずれかと軸線方向での位置がずれている。第1のカフ24および/または第2のカフ28は、各カフ24、26の上にかぶせてふさぐためのキャップ(図示せず)を備えていてもよい。或いは、1つのカフ24または26が、それに結合されて塞ぐ吸引カテーテルアセンブリまたは他のデバイスを備えていてもよい。
【0034】
図13に示すような第3の位置は、近位側ディスク14の第2のポート22および第2のカフ26と軸線方向に位置を合わせた、遠位側ディスク12のポート16およびカフ18の開放位置(第2の開放位置)を定めている。この位置では、ポート16、22及びカフ18、26を通しての軸線方向に位置が合わせられた状態および動作可能な連通状態が形成される。封止材48及び遠位側ディスク12上に位置するその各リブ58、64は、分泌物を実質的にアセンブリ10内部および閉回路通気システムに封止して保持し、PEEPが維持され得るようにする。この第31の位置(第2の開放位置)では、封止材48と遠位側ディスク12の近位側表面40は第1のポート20も塞いでおり、この第1のポート20は、塞ぐためのキャップ(図示せず)、または塞ぐために取り付けられた吸引カテーテルアセンブリまたは他のデバイスを備えていてもよい。
【0035】
本開示は、特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、本開示によって包含される発明主題は、これらの特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。逆に言えば、本開示の発明主題は、特許請求の範囲に記載の精神および範囲のなかに含まれ得る、あらゆる代替実施形態、改変物および均等物も包含するものである。