(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919610
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ベッド
(51)【国際特許分類】
A61G 7/00 20060101AFI20160428BHJP
A47C 21/04 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
A61G7/00
A47C21/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-234093(P2010-234093)
(22)【出願日】2010年10月18日
(65)【公開番号】特開2012-85762(P2012-85762A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】506423350
【氏名又は名称】岩淵 貞義
(74)【代理人】
【識別番号】100117732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 信彦
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 貞義
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−254984(JP,A)
【文献】
実開平07−027547(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/00
A47C 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の上半身を身体軸に実質的に平行に回転可能に支持する上半身受け部と、人体の左右の脚部をそれぞれ支持する脚受け部とを有し、前記左右の脚受け部はそれぞれ人体の脚部の股関節及び膝関節に対応する関節部を有し、前記各関節部においてそれぞれ屈曲可能に構成されてそれぞれ独立に動き得るように設けられていることを特徴とするベッド。
【請求項2】
上半身受け部は、長手方向に平行な2以上の部分に分割されるとともに各分割軸を介して連結されるか連続した面を構成し、各分割軸の周りに前記長手方向に平行な2以上の部分を屈折させない状態においては、その上に横臥した人体を第1の位置で支持し、各分割軸の周りに前記長手方向に平行な2以上の部分を屈折させた状態においては、その上に横臥した人体を第2の位置で支持し、第1の位置から第2の位置に変形することにより、その上に横臥した人体の上半身を回転させ得る請求項1に記載のベッド。
【請求項3】
上半身受け部は、少なくとも1の水平固定面とその左右における傾斜可能な面の3以上の部分に、長手方向に平行に分割されている請求項2に記載のベッド。
【請求項4】
人体を横臥させた状態で、上半身受け部による上半身の回転に追従して前記脚受け部を変形することにより人体の寝返りを支援する請求項1〜3のいずれかに記載のベッド。
【請求項5】
ベッドの前記構成部分の変形を人体に対し間接的に伝えるためのネット状またはクッション状部材をベッド上に有する請求項1〜4のいずれかに記載のベッド。
【請求項6】
上半身受け部の水平面に対する角度が変更可能に構成されており、上半身受け部を水平面に対し傾斜させたときのベッドの長さが、非傾斜状態におけるベッドの長さよりも短く、上半身受け部を前記一以上の分割軸周りにおいて前記屈折状態においたときのベッドの幅が、非屈折状態におけるベッドの幅よりも小さい、請求項2〜4のいずれかに記載の可変幅・可変長ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドに関するものであり、特に、寝返り補助機構を備えた介護用ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ベッドに寝た切りの身体障害者や老人等の要介護者の数が増大しているが、その介護は、介護士や看護士、家族等の介護者(以下、単に「介護者」という。)に頼ったものとなっている。介護者の労力上の負担は多大なものであり、この介護者の労力負担を軽減するため、各種介護用ベッドが提案されている。
【0003】
このような各種介護用ベッドにおいては、要介護者の褥瘡を防止したり、身体を拭いて清浄化するために、介護者が要介護者の身体向きを変える寝返り補助機構を備えたものも提案されている。
【0004】
例えば、特開平3−92158号公報や特開平6−304209号公報には、マットレスの内部に複数の人体支持部材を相互に間隔をあけて設け、これら複数の人体支持部材を交互に、別々の連結部材によって結合し、各連結部材には、それぞれ昇降手段と水平移動手段とを設け、各人体支持部材を任意方向に交互に移動させることができる介護用ベッドが記載されている。
【0005】
また、特表2000−506762号公報には、長手方向下部の側部におけるベッド底部が横接触エリアを形成するために曲げられ、ベッド底部が本質的に水平な位置と2つの側部が回動される位置との間を移動されるように構成された介護用ベッド装置の例が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−92158号公報
【特許文献2】特開平6−304209号公報
【特許文献3】特表2000−506762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの従来の介護用ベッドは基本的に身体軸周りの回転を補助するものであり、その際、介護者の労力上の負担軽減を図るものである。しかし、実際にベッド上で要介護者の身体を単純に回転させると、要介護者の身体が無理な姿勢になって首筋や腰周りに余計な負担が掛かったり、要介護者の身体の一方の側が他方の上に乗りかかって血流が遮られたりして、却って要介護者への身体的負担が大きくなるという問題があった。また、従来の介護用ベッドは占有面積が大きく家庭内での移動は困難であるため、要介護者を風呂や外出等のために搬送するのに多大な労力を要した。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、要介護者の寝返り等の姿勢の変更を補助する際、介護者の労力はもちろん、要介護者にも身体的負担の少ない介護用ベッドの提供を目的とするものである。また、家庭内での移動が可能なコンパクト化を実現するベッドの提供を目的とするものである。もっとも、これらのベッドは介護のみならず快適な睡眠を実現する健康者向けのベッドとしても有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は鋭意検討を行った結果、寝返り等の姿勢の変更の際には、上半身・下半身の姿勢の相対的関係に配慮すべきことを見出した。具体的には単純に要介護者の身体全体を一方の側に転がすのではなく、上半身を回転させた際にある程度、腰周りを大きく回転させると却って要介護者に負担が大きいこと、腰周りの適度な回動には、脚部の重心移動が重要であること、脚部の重心移動に際しては膝関節や股関節の自然な屈曲が重要であることを見出し、これらの身体移動のために適したベッド構成を案出して本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記の構成を有するベッドを提供する。
[1]人体の上半身を身体軸に実質的に平行に回転可能に支持する上半身受け部と、人体の左右の脚部をそれぞれ支持する脚受け部とを有し、前記左右の脚受け部がそれぞれ独立に動き得るように設けられていることを特徴とするベッド。
[2]上半身受け部は、長手方向に平行な2以上の部分に分割されるとともに各分割軸を介して連結されるか連続した面を構成し、各分割軸の周りに前記長手方向に平行な2以上の部分を屈折させない状態においては、その上に横臥した人体を第1の位置で支持し、各分割軸の周りに前記長手方向に平行な2以上の部分を屈折させた状態においては、、その上に横臥した人体を第2の位置で支持し、第1の位置から第2の位置に変形することにより、その上に横臥した人体の上半身を回転させ得る請求項1に記載のベッド。
[3]上半身受け部は、少なくとも1の水平固定面とその左右における傾斜可能な面の3以上の部分に、長手方向に平行に分割されている請求項2に記載のベッド。
[4]前記脚受け部はそれぞれ人体の脚部の関節に対応する少なくとも1の関節部を有し、前記関節部においてそれぞれ屈曲可能に構成されている請求項1〜3のいずれかに記載のベッド。
[5]人体を横臥させた状態で、上半身受け部による上半身の回転に追従して前記脚受け部を変形することにより人体の寝返りを支援する請求項1〜4のいずれかに記載のベッド。
[6]ベッドの前記構成部分の変形を人体に対し間接的に伝えるためのネット状またはクッション状部材をベッド上に有する請求項1〜5のいずれかに記載のベッド。
[7]上半身受け部の水平面に対する角度が変更可能に構成されており、上半身受け部を水平面に対し傾斜させたときのベッドの長さが、非傾斜状態におけるベッドの長さよりも短く、上半身受け部を前記一以上の分割軸周りにおいて前記屈折状態においたときのベッドの幅が、非屈折状態におけるベッドの幅よりも小さい、請求項2〜5のいずれかに記載の可変幅・可変長ベッド。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、介護者が要介護者の寝返りを容易に補助することができ、この際、介護者の労力はもちろん、要介護者にも身体的負担の少ない介護用ベッドが提供できる。また、家庭内での移動が可能なコンパクト化をも実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るベッドの一態様の上半身受け部の模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るベッドの別の態様の上半身受け部の模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るベッドの模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のベッドは、人体の上半身を身体軸に実質的に平行に回転可能に支持する上半身受け部と、人体の左右の脚部をそれぞれ支持する脚受け部とを有し、前記左右の脚受け部がそれぞれ独立に動き得るように設けられていることを特徴とする。
ここで、「人体の上半身を身体軸に実質的に平行に回転可能に支持する」とは、ベッド上に人体を、上半身を一の位置(例えば仰向け状態)から別の位置(例えば左右いずれかの体側を下にした状態)まで身体軸を中心に回転させつつ連続的または段階的に支持することを意味する。もっとも、身体を回転させる場合、必ずしも完全に身体軸を中心に回転させることは現実には困難であるし、実質的にはいわゆる「寝返り」が打てるかたちで回転支持できればよい。なお、分割軸はそこに軸支手段が存在するものでなくてもよい。具体的には後述する
図2Dの態様のように、交差する2平面の交差軸も含まれる。
【0014】
本発明には上記の目的を達成し得るすべての手法が含まれるが、好適実施他形態としては、上半身受け部が、長手方向に平行な2以上の部分に分割されるとともに各分割軸を介して連結され、各分割軸の周りに連続的または段階的に回転支持が可能な形態が含まれる。この場合、各部分は、板状部材または枠状部材に適当な支持部材(後述するエアマットなどのクッション)を固定したものである。分割軸は当技術分野において慣用される軸構造(例えば、リクライニングチェア等に用いられる軸構造)が用いられる。ひとつの例としては、一定間隔で鉤状または櫛状構造を設けたものである。これらの鉤状構造は中心軸となる棒状部材上で隣接部分の鉤状構造と係合し、軸回転した際にその位置を保持できるように蝶番構造を形成している。櫛状部材の場合、隣接部分の櫛状構造と係合し、係合部を軸として回転する。例えば、分割軸を構成する棒状部材に歯車様の突起を設け、鉤状構造にラッチ手段を設けてもよい。もっとも、これらの回転支持構造は一例であり、同等の機能を果たすものであれば任意に使用できる。
【0015】
図1〜2にこれらを模式的に示す。
図1Aに本発明の上半身受け部10の最も単純な構造の平面図を示す。上半身受け部10は左右の受け部1、2と分割軸3を含む。
図1B〜Dにその立面図を示す。2つの部分が連続して水平な状態では、全体として平坦なひとつの平面が構成される(第1の状態:
図1B)。ここで、一方の部分を水平に保ちつつ他方を分割軸の周りに回転させると、上半身受け部は全体として屈曲した状態(第2の状態:
図1C)になる。この第1の状態でベッド上に人体を横臥させて支持し、第1の状態から第2の状態に変形することにより、その上に横臥した人体の上半身を回転させる。この場合、屈曲状態を形成する際、典型的には、上述のように一方の部分を水平に保ったまま他方を分割軸周りに回転させるが(以下、第1態様という。)、同時に分割軸を沈み込ませて上半身受け部を非対称なV字型に屈曲させてもよい(
図1D。以下、第2態様という。)。第2態様の構成では、V字型の内部に人体が把握されるので人体をより安定的に回転させることができる。
【0016】
あるいは、上半身受け部は、少なくとも1の水平固定面とその左右における傾斜可能な面の3以上の部分に、長手方向に平行に分割してもよい(以下、第3態様という。)。前述の2分割の場合、前記第2態様では人体を安定的に回転させることができるが、人体が傾斜面で支持される。
図2Aに、1の水平固定面13とその左右における傾斜可能な面11、12の3つの部分に、連結部14、15を有する態様の平面図を示す。
図2B〜Cはこの態様に対応するひとつの形態の立面図であり、この場合、連結部14、15はそのまま分割軸に対応している。一方、
図2Dは別の形態の立面図であり、この場合、連結部14、15とは別に面11、12の交差する軸16が分割軸に対応している。後者の形態は例えば、水平固定面13を大きさの異なる2重の枠体で、また、面11、12をそれぞれコの字枠体で構成し、後者の開放端部(コの字型の端部分)を水平固定面13の2つの枠体間に連結して構成することができるが、その構成は任意である。
第3態様では人体の支持を水平面と傾斜面の組み合わせで行うことができる。また、予想外にも、この態様では人体の回転をより小さな労力で行うことができることがわかった。また、これらの態様では、ベッドの横幅は水平固定面13の幅まで縮小することができるため、狭い室内の移動が可能となる。また、いずれの態様においても、上半身受け部を垂直に近く立てることにより、本発明のベッドは椅子状の形状となり、ベッドに車輪等を備え付けることにより車椅子のように移動させることが可能となる。
【0017】
ここで、人体の回転のための駆動は手動で行うこともできるが、慣用の駆動手段を用いてもよい。このような慣用の手段としては、油圧、水圧、空気圧、ステッピングモーターなどの機械的手段による駆動が挙げられる。
【0018】
本発明のベッドは、人体の左右の脚部をそれぞれ支持する脚受け部とを有し、左右の脚受け部が独立に動き得るように設けられていることを特徴とする。かかる構成を採る結果、例えば、人体の上半身を左に横転させた場合において、その右下半身の重心は適宜制御可能であり、例えば、右下半身の重心を右上半身の重心とはずらすことにより身体全体は、下半身からの引っ張り力を生じさせ、これにより右上半身の全重量が左上半身に掛かって過度に圧迫することがない。
【0019】
また、脚受け部は、人体の脚部の関節に対応する少なくとも1の関節部を有し、前記関節部においてそれぞれ屈曲可能に構成する。具体的には、大腿骨関節、膝関節に相当する位置に関節部を設けることが好ましい。これにより、前記人体の回転の際、脚部に自然な屈曲を生じさせて、いわゆる「寝返り」を自然に打たせることができる。
脚受け部の各構成部材は、上半身受け部の構成部材と同様でよい。
【0020】
上述のように、ベッドの各構成部分は、マットのようなクッション状部材を備えたもので構成し得る。マット部材は空気や水等の流体、軟質ウレタンフォーム等の発泡性樹脂、ビーズや微細チューブ、繊維塊等を布地で包んで構成され、介護用ベッド1を構成する各部の動きと干渉することなく、かつ、要介護者とベッド本体との間に適当なクッション性を付与するものである。ベッドを構成する各部にこうしたマット部材を設けず、人体とベッド本体との間に布団やマットを敷くことでもある程度クッション性は実現できるが、本発明のベッドでは各部の動きが独立していることに大きな特徴があり、布団やマットを介在させると十分な機能が発揮できない場合が多い。このため、各部分にマット部材を固定しておくことが望ましい。固定は慣用のいかなる方法を採ってもよいが、衛生上、取り外し可能なように、マット部材の縁部を挟み込んで固定するクリップ手段を、ベッドを構成する各部の縁部に設けておくことが好ましい。
【0021】
また、上記のクッション状部材の代わりに、またはそれとともにネット状の部材をベッド上に設けて、ベッド本体の変形を人体に対し間接的に伝えることもできる。
【0022】
さらに本発明によれば、上半身受け部の水平面に対する角度が変更可能に構成されており、上半身受け部を水平面に対し傾斜させたときのベッドの長さが、非傾斜状態におけるベッドの長さよりも短く、上半身受け部を前記一以上の分割軸周りにおいて前記屈折状態においたときのベッドの幅が、非屈折状態におけるベッドの幅よりも小さい可変幅・可変長ベッドが提供される。これにより、家庭内においても、ベッドとして使用するとともに、上半身受け部を垂直に近く引き起こし、分割軸周りにおいて前記屈折状態におくことにより、車椅子状の形状とすることができる。このため、さらに、ベッド下部に車輪などを設けることにより、家庭内や病院内をそのまま移動させて、患者や要介護者をそのまま搬送することが可能となる。
【実施例】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の構成をより具体的に説明する。
図3は本発明の一実施形態に係るベッドを示す斜視図であり、このベッド1は、人体の上半身を支持する上半身受け部10と、左右の脚部をそれぞれ支持する脚受け部20及び30とを備えて構成されている。上半身受け部10は中央受け部13、右上半身受け部12、左上半身受け部11の3つの部分に分割されており、中央受け部と右上半身受け部は実質的に身体軸と平行な右分割軸18を介して連結され、中央受け部と左上半身受け部は実質的に身体軸と平行な左分割軸19を介して連結されている。
【0024】
なお、中央受け部13、右上半身受け部12、左上半身受け部11は、図では枠体として示すが、好ましくは、十分な強度と厚みを有する板状部材(または後述するエアマット構造部材)である。
【0025】
右分割軸18及び左分割軸19はそれぞれ身体軸(ベッドの長手方向の軸)と平行な直線として図示しているが、必要に応じ身体軸に対して一定の傾斜をもたせてもよい。また、
図1で中央受け部13、右上半身受け部12、左上半身受け部11は単一の部材として表しているが、それぞれ複数の区画に分割されていてもよい。例えば、中央受け部13を身体軸に直交する1以上の区画に分割し、それぞれに前述と同様の分割軸を設けて、手動または機械駆動によって上半身部分の傾斜を変えることができるようにする。右上半身受け部12、左上半身受け部11にも同様の分割構造を設けて、上半身受け部全体として傾斜を変えることができるようにしてもよいし、右上半身受け部12、左上半身受け部11については身体軸と平行な1以上の区画に分割し、人体の上半身を横転させる際により微細な制御ができるようにしてもよい。
【0026】
あるいは、中央受け部13、右上半身受け部12、左上半身受け部11のうち、少なくとも右上半身受け部12、左上半身受け部11はエアマット構造部材としてもよい。本明細書でエアマットとは、内部への空気圧を変化させることにより膨張・縮小することが可能な部材をいう。エアマット構造とする場合、分割軸は上記のような機械的部材ではなく、マットの仕切りとしてもよい。この場合、エアマットの膨張率等はその左右または前後での高さを変更することにより、板状部材を回転させるのと同等の効果をもたらすものであればよい。また、板状部材で説明したように、中央受け部13、右上半身受け部12、左上半身受け部11はそれぞれがさらに分割されていてもよく、例えば、エアマットを、身体軸と水平な細長いエアセルの並んだセル型のエアマットとをする。
【0027】
本発明では上記の構造を採ることにより、人体をベッド1に載せたときに上半身を適宜横転させることが可能となる。もっとも、この際、従来の介護用ベッドとは異なり、下半身も同時に横転させるのではないため、身体全体の重量が身体の一方の側に掛かることがない。
【0028】
そのための構成として、脚受け部にそれぞれ上半身受け部10との間に連結軸22、32を設け、左右の脚受け部20、30をこれらの連結軸を軸として回転可能であるように構成する。連結軸の構造は、上記において分割軸の構造として説明したものと同様である。
【0029】
本発明においては、さらに、前記左右の脚受け部20、30はそれぞれ少なくとも1の関節部を有し、前記関節部(
図1中、24、34として示す。)においてそれぞれ回転可能であるように構成することが好ましい。この関節部は、人工関節で用いるような頭部と頸部の組み合わせからなる棒状部材と前記頭部を受けいれるような関節類似構造としてもよい。
【0030】
特に、重要なのは、前述のように、人体の上半身、例えば右上半身を左側に横転させた際に、右脚及び/または左側の膝関節を屈曲させ得ることである。一般に健常者が寝返りを打つ際、単に身体が横転するのではなく、いずれかの脚部の膝関節が屈曲状態となる。これにより身体全体が過度に横転したり体側の一方を過度に圧迫することがなくなる。本発明では下半身重量を支持しつつ、このような機能を発揮することが可能である。
【0031】
以上、本発明の一実施態様を基にその構成の概要を説明したが、本発明は、様々に応用が可能である。例えば、要介護者は、高齢者・身体障害者のほか、骨折により身体の骨折箇所に過重が掛かることが望ましくない場合や、体重が過剰なため寝返りが困難な場合にも適用できる。また、上記では、左右の脚受け部を上半身受け部と直接連結する態様を示したが、その間に臀部受け部を設けてもよいし、さらに臀部受け部に排泄補助機構を設けてもよい。また、ベッドはベッド柵のような保護手段を備えていてもよい。