特許第5919614号(P5919614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5919614電気自動車用情報の処理装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919614
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】電気自動車用情報の処理装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20160428BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20160428BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20160428BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20160428BHJP
   G08G 1/137 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   G01C21/00 C
   G09B29/00 Z
   B60L3/00 S
   G08G1/00 D
   G08G1/137
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-114658(P2012-114658)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-242195(P2013-242195A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福永 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】棚田 昌一
(72)【発明者】
【氏名】中島 正浩
(72)【発明者】
【氏名】西村 茂樹
【審査官】 柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0246019(US,A1)
【文献】 特開2010−239849(JP,A)
【文献】 米国特許第06005494(US,A)
【文献】 特開2010−271205(JP,A)
【文献】 特開2011−059921(JP,A)
【文献】 特開2013−178661(JP,A)
【文献】 特開2012−113546(JP,A)
【文献】 特開2006−115623(JP,A)
【文献】 特開2011−237306(JP,A)
【文献】 特開平05−203456(JP,A)
【文献】 特開2008−107155(JP,A)
【文献】 特開2010−185333(JP,A)
【文献】 特開2012−083178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
B60L 3/00
G08G 1/00
G08G 1/137
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力を走行動力とする電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる情報を生成する情報生成部と、この情報を蓄積する記憶部とを備えている電気自動車用情報の処理装置であって、
前記情報生成部は、
道路リンクを走行する電気自動車からのプローブ情報に基づいて、当該道路リンクの走行による前記バッテリの消費電力量及び当該バッテリの電力消費に影響を与えている因子を取得する特定部と、
前記因子と、当該因子に応じて消費電力量を割り増し又は割り引きするための係数とが対応付けられた第1のデータベースから、前記特定部が取得した因子に対応する前記係数を抽出する抽出部と、
前記特定部が取得した前記消費電力量と前記抽出部が抽出した前記係数とに基づいて、前記因子に応じて割り増し又は割り引きする消費電力量を除いた前記道路リンクにおける基準消費電力量を求める電力コスト算出部と、
プローブ状態が取得されない道路リンクのために、前記因子に応じて割り増し又は割り引きする消費電力量を除いた基準消費電力量を推定する推定部と、
を有し、
前記記憶部は、道路リンクを分類の項目とする第2のデータベースを有し、求められた前記基準消費電力量を、前記項目に対応させて当該第2のデータベースに蓄積し、
前記推定部は、前記第2のデータベースに蓄積されている道路リンクの基準消費電力量を、当該道路リンクの距離で除算して単位距離当たりの基準消費電力量を算出すると共に、この単位距離当たりの基準消費電力量を、道路リンクの路面の勾配毎に集計して平均値を求め、この平均値を前記記憶部に記憶させ、
更に、前記推定部は、プローブ情報が取得されていない推定対象となる道路リンクの距離及び路面の勾配と、前記記憶部に記憶させた前記単位距離当たりの基準消費電力量の平均値とに基づいて、当該推定対象となる道路リンクの基準消費電力量を算出する
ことを特徴とする電気自動車用情報の処理装置。
【請求項2】
前記情報生成部は、更に、
基準となる電気自動車からのプローブ情報に基づいて、道路リンクを走行するために必要となる基準電力量を求める基準電力量取得部と、
前記バッテリの電力消費に影響を与える因子が前記基準となる電気自動車と相違する電気自動車からのプローブ情報に基づいて、前記道路リンクを走行するために必要となる基準外電力量を求める基準外電力量取得部と、
前記道路リンクにおける前記基準電力量と前記基準外電力量との比を、相違する前記因子の種類及び当該道路リンクの路面の勾配と対応付けて、求める修飾因子取得部と、
を有し、
この求められた比が、前記係数として、前記第1のデータベースに前記因子と対応付けられて蓄積されている請求項1に記載の電気自動車用情報の処理装置。
【請求項3】
バッテリの電力を走行動力とする電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる情報を生成する情報生成部と、この情報を蓄積する記憶部とを備えている電気自動車用情報の処理装置であって、
前記情報生成部は、
基準となる電気自動車からのプローブ情報に基づいて、道路リンクを走行するために必要となる基準電力量を求める基準電力量取得部と、
前記バッテリの電力消費に影響を与える因子が前記基準となる電気自動車と相違する電気自動車からのプローブ情報に基づいて、前記道路リンクを走行するために必要となる基準外電力量を求める基準外電力量取得部と、
前記道路リンクにおける前記基準電力量と前記基準外電力量との比を、相違する前記因子の種類及び当該道路リンクの路面の勾配と対応付けて、求める修飾因子取得部と、
を有し、
前記記憶部は、前記因子及び前記勾配を分類の項目とするデータベースを有し、求められた前記比を、これら項目に対応させて当該データベースに蓄積することを特徴とする電気自動車用情報の処理装置。
【請求項4】
前記因子は、電気自動車の車種、乗車人数、車載空調設備の動作状態、ヘッドライトの点灯状態及び渋滞の有無の内の少なくとも一つを含む請求項1〜のいずれか一項に記載の電気自動車用情報の処理装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1〜のいずれか一項に記載の電気自動車用情報の処理装置が備えている前記情報生成部として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
バッテリの電力を走行動力とする電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を、当該バッテリの電力消費に影響を与える因子を考慮して、計算するために用いられる情報を蓄積する記憶部を備えた電気自動車用情報の処理装置であって、
前記記憶部は、前記因子及び路面の勾配を分類の項目とする第1のデータベース、及び、道路リンクを分類の項目とする第2のデータベースを有し、
基準となる電気自動車が道路リンクを走行するために必要となる基準電力量と、前記基準となる電気自動車と前記因子が相違する電気自動車が当該道路リンクを走行するために必要となる基準外電力量と、の比が、前記第1のデータベースに前記項目に対応して蓄積されており、
道路リンクを走行するために必要となる電力量であって前記因子に応じて割り増し又は割り引きする電力量が除かれた基準消費電力量が、前第2のデータベースに前記項目に対応して蓄積されていることを特徴とする電気自動車用情報の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる電気自動車用情報を処理する処理装置及びコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車を目的地へ向かって走行させるに際し、その目的地までの経路をコンピュータに探索させる技術が既に知られている(特許文献1参照)。例えば、自動車を運転するドライバが車載装置に目的地を入力すると、この目的地と出発地(現在地)との情報が通信によってサーバ装置に送信され、このサーバ装置が、データベースに蓄積している道路リンクのリンクコストを用いて、所定の探索アルゴリズムにより出発地から目的地までの経路を探索する処理を実行する。そして、推奨経路が決定されると、その推奨経路の情報は車載装置に送信され、この情報を受けた車載装置は推奨経路をドライバに通知し、推奨経路に沿った経路案内を開始することが可能となる。
また、このような経路探索を行うシステムでは、更に、経由地を経由してから目的地に到達する経路を検索することも可能となっている。
【0003】
ここで、近年、電気自動車の開発が進められているが、現時点では、その航続距離は短い(200km未満)。したがって、電気自動車は、日帰りのドライブであったとしても、その途中で充電ステーションに立ち寄り、バッテリの充電を行わなければならないことがある。
この場合、電気自動車の経路探索のためには、経由地として充電ステーションを経由してから目的地に到達する経路を探索するシステムを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−60019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、充電ステーションを経由してから目的地に到達する経路の探索を行うためには、電気自動車のバッテリの残り電力量の範囲内で到達可能な充電ステーションを見つける必要がある。このようにして充電ステーションを見つけるためには、充電ステーションに到達するまでの道路(道路リンク)において消費されるバッテリの電力量を求める必要があり、そのために、経路探索を行うサーバ装置の記憶部には、電気自動車の走行に必要となる消費電力量を計算するために用いられる情報として、例えばバッテリの消費電力量等の情報を予め記憶させておく必要がある。
【0006】
そこで、本発明では、電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる有益な情報を蓄積する処理装置、及び、このような情報をコンピュータを用いて蓄積させるためのコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、バッテリの電力を走行動力とする電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる情報を生成する情報生成部と、この情報を蓄積する記憶部とを備えている電気自動車用情報の処理装置であって、前記情報生成部は、道路リンクを走行する電気自動車からのプローブ情報に基づいて、当該道路リンクの走行による前記バッテリの消費電力量及び当該バッテリの電力消費に影響を与えている因子を取得する特定部と、前記因子と、当該因子に応じて消費電力量を割り増し又は割り引きするための係数とが対応付けられた第1のデータベースから、前記特定部が取得した因子に対応する前記係数を抽出する抽出部と、前記特定部が取得した前記消費電力量と前記抽出部が抽出した前記係数とに基づいて、前記因子に応じて割り増し又は割り引きする消費電力量を除いた前記道路リンクにおける基準消費電力量を求める電力コスト算出部とを有し、前記記憶部は、道路リンクを分類の項目とする第2のデータベースを有し、求められた前記基準消費電力量を、前記項目に対応させて当該第2のデータベースに蓄積することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、道路リンクを分類の項目とし、この項目に対応させて基準消費電力量を蓄積した第2のデータベースが得られ、このデータベースの情報は、電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる有益な情報となる。例えば、このデータベースに、ある道路リンクに関して基準消費電力量が蓄積されている場合、このデータベースの情報を基礎として用い、他の電気自動車の前記因子が取得されると、その道路リンクを走行するために必要となる消費電力量を求めることが可能となる。
【0009】
(2)また、道路リンクによっては、プローブ情報が取得されずに、前記基準消費電力量が求められない道路リンクも存在する。そこで、前記情報生成部は、プローブ状態が取得されない道路リンクのために、前記因子に応じて割り増し又は割り引きする消費電力量を除いた基準消費電力量を推定する推定部を、更に有しているのが好ましい。
この場合、プローブ情報が得られていない道路リンクについて、基準消費電力量(推定値)を得ることが可能となり、これを第2のデータベースに蓄積することが可能となる。
【0010】
(3)また、前記(2)に記載の処理装置において、前記推定部は、前記第2のデータベースに蓄積されている道路リンクの基準消費電力量を、当該道路リンクの距離で除算して単位距離当たりの基準消費電力量を算出すると共に、この単位距離当たりの基準消費電力量を、道路リンクの路面の勾配毎に集計して平均値を求め、この平均値を前記記憶部に記憶させ、更に、前記推定部は、プローブ情報が取得されていない推定対象となる道路リンクの距離及び路面の勾配と、前記記憶部に記憶させた前記単位距離当たりの基準消費電力量の平均値とに基づいて、当該推定対象となる道路リンクの基準消費電力量を算出するのが好ましい。
この場合、プローブ情報に基づいて基準消費電力量が求められている道路リンクの情報に基づいて、プローブ情報が取得されない道路リンクの基準消費電力量を推定することが可能となる。
【0011】
(4)また、前記情報生成部は、更に、基準となる電気自動車からのプローブ情報に基づいて、道路リンクを走行するために必要となる基準電力量を求める基準電力量取得部と、前記バッテリの電力消費に影響を与える因子が前記基準となる電気自動車と相違する電気自動車からのプローブ情報に基づいて、前記道路リンクを走行するために必要となる基準外電力量を求める基準外電力量取得部と、前記道路リンクにおける前記基準電力量と前記基準外電力量との比を、相違する前記因子の種類及び当該道路リンクの路面の勾配と対応付けて、求める修飾因子取得部とを有し、この求められた比が、前記係数として、前記第1のデータベースに前記因子と対応付けられて蓄積されているのが好ましい。
この場合、第1のデータベースに蓄積されている係数は、実際に各道路リンクを走行する電気自動車からのプローブ情報に基づいて求められるので、その係数は実際に即した情報となる。
【0012】
(5)また、本発明は、バッテリの電力を走行動力とする電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる情報を生成する情報生成部と、この情報を蓄積する記憶部とを備えている電気自動車用情報の処理装置であって、前記情報生成部は、基準となる電気自動車からのプローブ情報に基づいて、道路リンクを走行するために必要となる基準電力量を求める基準電力量取得部と、前記バッテリの電力消費に影響を与える因子が前記基準となる電気自動車と相違する電気自動車からのプローブ情報に基づいて、前記道路リンクを走行するために必要となる基準外電力量を求める基準外電力量取得部と、前記道路リンクにおける前記基準電力量と前記基準外電力量との比を、相違する前記因子の種類及び当該道路リンクの路面の勾配と対応付けて、求める修飾因子取得部とを有し、前記記憶部は、前記因子及び前記勾配を分類の項目とするデータベースを有し、求められた前記比を、これら項目に対応させて当該データベースに蓄積することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、バッテリの電力消費に影響を与える因子の種類及び路面の勾配を分類の項目とし、これら項目に対応させて基準電力量と基準外電力量との比を蓄積したデータベースが得られ、このデータベースの情報は、電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる有益な情報となる。例えば、電気自動車が、ある道路リンクを走行するために必要となる電力量を算出(予測)するために、その道路リンクを走行する際の前記因子及びその道路リンクの路面の勾配の情報が取得されると、前記データベースに基づいて、前記因子及び路面の勾配を考慮して、その道路リンクを走行するための電力消費予測を行うことが可能となる。
【0014】
(6)また、前記各処理装置において、前記因子は、電気自動車の車種、乗車人数、車載空調設備の動作状態、ヘッドライトの点灯状態及び渋滞の有無の内の少なくとも一つを含むのが好ましい。
例えば、電気自動車の乗車人数が増えると、同じ勾配(上り勾配)を走行する場合であっても、バッテリの消費電力は変化する。そこで、前記因子に乗車人数が含まれることで、乗車人数を考慮した電力使用予測を行うことが可能となる。
【0015】
(7)また、本発明は、コンピュータを、前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の電気自動車用情報の処理装置が備えている前記情報生成部として機能させるためのコンピュータプログラムである。
本発明によれば、(1)〜(6)に記載の処理装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0016】
(8)また、本発明は、バッテリの電力を走行動力とする電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を、当該バッテリの電力消費に影響を与える因子を考慮して、計算するために用いられる情報を蓄積する記憶部を備えた電気自動車用情報の処理装置であって、前記記憶部は、道路リンクを分類の項目とするデータベースを有し、道路リンクを走行するために必要となる電力量であって前記因子に応じて割り増し又は割り引きする電力量が除かれた基準消費電力量が、前記項目に対応して前記データベースに蓄積されていることを特徴とする。
本発明によれば、前記データベースは、各道路リンクを走行するために要するバッテリの電力量を求めるための基準となる「基準消費電力量」が、道路リンク毎に蓄積されたものとなり、前記(1)に記載の処理装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0017】
(9)また、本発明は、バッテリの電力を走行動力とする電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を、当該バッテリの電力消費に影響を与える因子を考慮して、計算するために用いられる情報を蓄積する記憶部を備えた電気自動車用情報の処理装置であって、前記記憶部は、前記因子及び路面の勾配を分類の項目とするデータベースを有し、基準となる電気自動車が道路リンクを走行するために必要となる基準電力量と、前記基準となる電気自動車と前記因子が相違する電気自動車が当該道路リンクを走行するために必要となる基準外電力量との比が、前記項目に対応して前記データベースに蓄積されていることを特徴とする。
本発明によれば、前記データベースは、各道路リンクを走行するために要するバッテリの電力量を求めるための基準となる「基準消費電力量」に作用させる「係数」が、因子毎及び勾配毎に蓄積されたものとなり、前記(5)に記載の処理装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気自動車が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる有益な情報が、記憶部に蓄積される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の処理装置を備えている交通情報システムの一例を示すブロック図である。
図2】道路ネットワークデータベースの説明図である。
図3】交通情報データベースの説明図である。
図4】コスト修飾因子データベースの説明図である。
図5】勾配基準電力コストデータベースの説明図である。
図6】リンク電力コストデータベースの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔1. 交通情報システムについて〕
図1は、本発明の処理装置を備えている交通情報システムの一例を示すブロック図である。交通情報システムには、車両、車両に搭載されている車載装置3、車載装置3と無線通信する路側通信装置4、及び、路側通信装置4と通信可能であり各種情報を収集したり各種情報を生成したりするサーバ装置5が含まれている。
なお、車載装置3は、車両2に固定の装置以外に、例えばドライバ(搭乗者)が携帯しているスマートフォン等の携帯端末とすることができる。車載装置3が携帯端末の場合、路側通信装置4は、携帯端末と無線通信を行う基地局装置となる。
【0021】
車両は、充電可能なバッテリ7を有しており、このバッテリ7の電力を走行動力とする電気自動車2である。
車載装置3は、車載コンピュータからなり、この車載装置3を搭載している電気自動車2のプローブ情報(フローティングカー情報ともいう)を取得し、路側通信装置4を通じて、サーバ装置5へ送信する。さらに、サーバ装置5が生成した情報(後述する推奨経路の情報)は、路側通信装置4を通じて、車載装置3へ送信される。
【0022】
また、車載装置3は、ドライバ(搭乗者)の操作を受け付け各種の情報を入力する入力部3aと、現在位置の情報を取得可能な位置取得部3bとを有している。
入力部3aは、例えばドライバが操作するタッチパネルからなり、文字入力等により目的地が入力される。入力された目的地は目的地情報とされ、電気自動車2の識別情報(車両ID)と共にプローブ情報(送信情報i1)に含められ、サーバ装置5へ送信される。この送信情報i1は、サーバ装置5に対する推奨経路の探索要求信号となる。
位置取得部3bは、例えばGPS機能を有した装置からなり、現在位置の情報を取得する。取得した現在位置の情報はプローブ情報(送信情報i1)に含められ、サーバ装置5へ送信される。
【0023】
さらに、車載装置3は、プローブ情報を周期的に(数秒毎に)生成して送信するが、この周期毎の時刻の情報もプローブ情報に含められる。さらに、車載装置3は、時刻、現在位置の情報等の他、その車載装置3が搭載されている電気自動車2の乗車人数、プローブ情報の生成周期(送信周期)毎のバッテリ7の電力消費量、電気自動車2に搭載されている空調設備8(以下、エアコン8という)やヘッドライト9等の電気機器の作動(オン)又は停止(オフ)の作動情報を収集し、これら情報を車両IDと共にプローブ情報に含めて送信する。このプローブ情報に含められるバッテリ7の電量消費量の情報は、プローブ情報の生成周期(送信周期)間で走行等に費やしたバッテリ7の電力量である。
【0024】
ここで、乗車人数は、座席のシートベルトの着脱状態から推定することができる。つまり、電気自動車2の電子制御ユニット(ECU)6が、シートベルトの着脱の信号を監視し、車載装置3は、その監視結果を取得することで乗車人数を把握することができる。
また、バッテリ7の電力消費量、及び、電気自動車2に搭載されている電気機器の作動状態も電子制御ユニット6が管理することができ、この管理結果を車載装置3が取得する。なお、車載装置3が取得するバッテリ7の電力消費量の情報は、前記のとおり、プローブ情報の生成周期(送信周期)で消費した電力量の情報であるが、サーバ装置5の演算装置17(後述の情報生成部21)は、このプローブ情報の生成周期(送信周期)で消費した電力量の情報を、道路リンク毎に集計(積算)することにより、その道路リンクの走行に必要となった合計電力量(消費電力量)を求めることができる。
また、車載装置3は、バッテリ7における残り電力量の情報も取得可能であり、この情報もプローブ情報に含められる。
【0025】
路側通信装置4は各地域の道路等に多数設置されている。各路側通信装置4は、通信機及び通信制御機を備えており、車載装置3と無線通信可能であり、また、有線(又は無線)によりサーバ装置5と通信可能である。
【0026】
〔2. 処理装置について〕
サーバ装置5は、サーバコンピュータからなり、コンピュータプログラム及び各種情報を記憶しているハードディスク等からなる記憶装置15と、路側通信装置4と通信を行うための通信インタフェースからなる通信装置16と、演算処理を行う機能を有する演算装置17とを備えている。通信装置16は、車載装置3から送信されたプローブ情報(送信情報i1)を受信し、プローブ情報に含まれている各種の情報を演算装置17へ与える。
【0027】
サーバ装置5は、様々な機能を奏する複数の機能部を有しており、これら機能部のうちの一つが、経路探索及びそのための情報生成を行う処理装置1である。つまり、サーバ装置5が有する演算装置17は、CPU及び内部メモリ等を有するコンピュータからなり、このサーバ装置5を処理装置1として機能させるためのコンピュータプログラムが、記憶装置15にインストールされている。この処理装置1が備えている各機能(経路探索部20及び情報生成部21)は、前記コンピュータプログラムが演算装置17によって実行されることで発揮される。
【0028】
この処理装置1は、電気自動車2が走行すべき経路を探索する第1の機能と、この経路探索において、電気自動車2が走行するために必要となる消費電力量を計算するために用いられる電気自動車用情報を各種データベース(記憶装置15)に蓄積する第2の機能と、この電気自動車用情報を生成する第3の機能とを備えている。第1の機能は経路探索部20による。第3の機能は情報生成部21による。
以下、第2の機能及び第3の機能を先に説明し、その後、第1の機能を説明する。
【0029】
〔3. 第2の機能について〕
記憶装置15は、道路ネットワークデータベース15a、交通情報データベース15b、充電ステーション用データベース15c、コスト修飾因子データベース15d、勾配基準電力コストデータベース15e、及び、リンク電力コストデータベース15fを備えている。なお、これらデータベースは、テーブルとして表現することができる。
【0030】
道路ネットワークデータベース15aには、各地域の道路地図の地図情報(道路ネットワーク)が蓄積されている。地図情報は、例えば道路地図がメッシュ状に分割されており、ノードと道路リンクとの組み合わせからなる道路リンクの情報が含まれている。このデータベース15aは、図2に示すように、道路リンク毎にリンク番号(1〜5・・・)が設定されており、このリンク番号毎に、始端ノード、終端ノード、その道路リンクの距離(以下、リンク長ともいう)、その道路リンクの路面の勾配(以下、単に勾配ともいう)の情報が蓄積されている。また、地図情報には、各地域に設置されている電気自動車のバッテリを充電するための充電ステーション(充電設備)の情報が含まれている。このデータベース15aに含まれている情報は、変化しない情報(静的な情報)である。
【0031】
交通情報データベース15bには、道路リンク毎のリンクコスト(本実施形態では、旅行時間)の情報が蓄積されている。このデータベース15b中のリンクコストの情報は、図3に示すように、道路リンク(リンク番号)毎に蓄積されている。さらに、道路リンク毎のリンクコスト(旅行時間)は、時間帯毎にも区分されており、時間帯毎の旅行時間が反映されている。この旅行時間には、実測値と統計値との2種類が存在している。実測値は当日にその時間帯を走行した電気自動車(プローブ車両)から提供されたプローブ情報に基づく。つまり、ある道路リンクを1台の電気自動車が走行し、この電気自動車からプローブ情報が得られると、このプローブ情報に基づく旅行時間が実測値となる。
これに対して、統計値は所定期間(例えば1ヶ月)に走行した複数の電気自動車(プローブ車両)のプローブ情報に基づく。つまり、ある道路リンクを複数の電気自動車が走行し、これら電気自動車からプローブ情報が得られると、このプローブ情報に基づく旅行時間の平均値が統計値となる。
実測値及び統計値は新たな情報が得られると更新される。このデータベース15bには、経時的に変化する動的情報が記憶されている。
【0032】
また、この交通情報データベース15bに蓄積されている旅行時間の情報から旅行速度を求めることが可能となる。つまり、「旅行速度=リンク長/旅行時間」の演算が、情報生成部21によって行われる。そして、情報生成部21は、旅行速度と閾値とを比較し、旅行速度が閾値以下の場合「渋滞あり」と判定することができ、閾値を超える場合「渋滞なし」と判定することができる。なお、リンク長は、道路ネットワークデータベース15a(図2)に蓄積されており、情報生成部21は、このデータベース15aを参照する。
【0033】
充電ステーション用データベース15cには、各地域に存在している(前記道路地図に含まれている)充電ステーションとその属性情報を蓄積している。このデータベース15cには、充電ステーションの所在位置、充電ステーションでの滞在必要時間、充電ステーションにおける急速充電機能の有無、及び、充電ステーションの使用可能時間帯(営業時間)等を示す属性情報が、充電ステーション毎に蓄積されている。
【0034】
コスト修飾因子データベース15dには、図4に示すように、電気自動車のバッテリの消費電力に影響を与える因子、及び、勾配を分類の項目としており、これら項目に対応する係数が蓄積されている。本実施形態の前記因子としては、電気自動車の車種、乗車人数、エアコンの動作状態、ヘッドライトの点灯状態、及び、渋滞の有無である。
【0035】
このデータベース15dの係数の意義を説明するために、図4において、勾配が「5%」の場合に関して説明する。
車種k1の係数は「1.0」であるが、これと異なる車種k2の係数は「1.2」である。つまり、車種k2の係数「1.2」は、同じ勾配の道路リンクを走行する場合、車種k2は車種k1よりも1.2倍の電力が消費されることを意味している。
乗車人数が1人である場合の係数は「1.0」であるが、2人になると係数は「1.1」となる。つまり、この係数「1.1」は、同じ勾配の道路リンクを走行するにしても、乗車人数が2人の場合は、1人の場合よりも1.1倍の電力が消費されることを意味している。
エアコンを停止(オフ)している場合の係数は「1.0」であるが、作動(オン)させると係数は「1.2」となる。つまり、この係数「1.2」は、同じ勾配の道路リンクを走行するにしても、エアコンを作動させる場合は、停止させている場合よりも1.2倍の電力が消費されることを意味している。
ヘッドライトを消灯している場合の係数は「1.0」であるが、点灯させると係数は「1.1」となる。つまり、この係数「1.1」は、同じ勾配の道路リンクを走行するにしても、ヘッドライトを点灯する場合は、消灯する場合よりも1.1倍の電力が消費されることを意味している。
道路リンクが渋滞していない場合の係数は「1.0」であるが、渋滞していると係数は「1.5」となる。つまり、この係数「1.5」は、同じ勾配の道路リンクを走行するにしても、渋滞している場合は、渋滞していない場合よりも1.5倍の電力が消費されることを意味している。
【0036】
このように、各係数は、車種「k1」、乗車人数「1人」、エアコン「オフ」、ヘッドライト「オフ」、及び、渋滞「無し」を基準状態とした場合、各因子に応じて消費電力量を割り増しするための係数であると言える。
なお、本実施形態では、バッテリの消費電力が最小となる状態を基準状態としていることから、この基準状態となる因子以外の係数は1以上の値となる。なお、基準状態は、バッテリの消費電力が最小となる状態以外であってもよく、この場合、係数は、基準状態から割り引きするための値となる(つまり、1未満の値となる)。
【0037】
勾配基準電力コストデータベース15eには、図5に示すように、単位距離当たりの基準消費電力量が、勾配毎に蓄積されている。例えば、勾配が「5%」の道路リンクで消費される単位距離当たりの基準消費電力量が「0.15Wh」である。
【0038】
また、リンク電力コストデータベース15fでは、図6に示すように、道路リンクが分類の項目とされており、この項目に対応する基準消費電力量が蓄積されている。つまり、基準消費電力量が、道路リンク毎に蓄積されている。
例えば、リンク番号3の道路リンクの基準消費電力量は「8Wh」である。なお、図5の勾配基準電力コストデータベース15eは、図6のリンク電力コストデータベース15fの内部データベースとすることができる。
【0039】
〔4. 第3の機能について〕
〔4.1 コスト修飾因子データベース15dの構築〕
演算装置17が有する情報生成部21(図1参照)は、その機能部として、基準電力量取得部31と、基準外電力量取得部32と、修飾因子取得部33とを有しており、これら各機能部により、コスト修飾因子データベース15d(図4)を構築することができる。
なお、各道路リンクを、多数の電気自動車2(図1参照)が走行しており、各電気自動車2の車載装置3はプローブ情報を送信し、このプローブ情報を情報生成部21が取得し、以下の処理を行う。
【0040】
基準電力量取得部31は、各道路リンクを、以下に説明する「基準状態」で走行する電気自動車2からのプローブ情報を取得すると、そのプローブ情報に基づいて、各道路リンクの走行に必要な電力量(消費電力量)を求める。なお、プローブ情報には、車両IDが含まれていることから、この車両IDにより各電気自動車の電力量(消費電力量)を求めることができる。
前記「基準状態」とは、本実施形態では、車種が「k1」、乗車人数が「1人」、渋滞が「無」、エアコン8が「オフ」、ヘッドライト9が「オフ」である。この「基準状態」は、バッテリ7の電力消費に影響を与える複数種類の因子(車種、乗車人数、渋滞、エアコン8の作動状態、ヘッドライト9の点灯状態)それぞれにおいて、最も消費電力量が小さくなる条件である。
この「基準状態」で走行した電気自動車を、以下において「基準となる電気自動車」とも言う。そして、この「基準となる電気自動車」からのプローブ情報から求められた電力量を「基準電力量」と呼ぶ。なお、「基準状態」は、前記因子に関して他のパターンであってもよい。
【0041】
基準電力量取得部31による処理を具体的に説明する。前記のとおり、プローブ情報には、プローブ情報の生成周期(送信周期)で消費したバッテリ7の電力量の情報が含まれていることから、基準電力量取得部31は、この周期毎の電力量の情報を道路リンク毎に集計(積算)することにより、各道路リンクの走行に必要となった電力量(消費電力量)を求めることができる。この電力量は、前記「基準電力量」となる。
このように、基準電力量取得部31は、「基準となる電気自動車」からのプローブ情報に基づいて、各道路リンクを走行するために必要となる基準電力量を求める機能を有している。
【0042】
また、「基準となる電気自動車」からのプローブ情報には、車種「k1」、乗車人数「1人」、エアコン「オフ」、ヘッドライト「オフ」の情報が含まれていることから、基準電力量取得部31は、これらを直接的に認識することができる。渋滞に関しては、前記のとおり、演算を行う。つまり、取得したプローブ情報には、時刻の情報が含まれていることから、その時刻における旅行時間の情報を、交通情報データベース15b(図3)から取得する。そして、基準電力量取得部31は、「リンク長/旅行時間」の演算により旅行速度を算出し、この旅行速度と閾値とを比較し、旅行速度が閾値を超える場合「渋滞なし」と判定することができる。
【0043】
「基準となる電気自動車」以外の電気自動車2も、各道路リンクを走行している。この「基準となる電気自動車」以外の電気自動車2は、前記「基準状態」と相違する「基準外状態」で走行している。この「基準外状態」は「基準状態」と比較して、バッテリ7の電力消費に影響を与える複数種類の因子である、車種、乗車人数、渋滞の有無、エアコンの作動状態、ヘッドライトの点灯状態の内の、一種類のみが異なっている。
そこで、基準外電力量取得部32は、各道路リンクを「基準外状態」で走行する電気自動車2からのプローブ情報を取得すると、そのプローブ情報に基づいて、各道路リンクの走行に必要な電力量(消費電力量)を求める。なお、プローブ情報には、車両IDが含まれていることから、この車両IDにより各電気自動車の電力量(消費電力量)を求めることができる。
この「基準外状態」で走行する電気自動車2からのプローブ情報から求められた電力量を「基準外電力量」と呼ぶ。
【0044】
基準外電力量取得部32による処理を具体的に説明する。基準外電力量取得部32は、基準電力量取得部31と同様に、周期毎の電力量の情報を道路リンク毎に集計(積算)することにより、各道路リンクの走行に必要となった「基準外電力量」を求めることができる。さらに、基準外電力量取得部32は、「基準状態」と相違する一種類の因子を、プローブ情報に基づいて抽出することができる。
このように、基準外電力量取得部32は、バッテリ7の電力消費に影響を与える因子が「基準となる電気自動車」と相違する電気自動車2からのプローブ情報に基づいて、道路リンクを走行するために必要となる「基準外電力量」を求める機能を有している。
【0045】
ここで、道路リンク(リンク番号1)に関して、基準電力量取得部31により「基準電力量QA」が求められ、基準外電力量取得部32により「基準外電力量QB」が求められたとする。ただし、「基準電力量QA」は、「基準となる電気自動車」である車種「k1」に基づくものであり、「基準外電力量QB」は、これ以外の車種「k2」に基づくものである。
【0046】
そこで、修飾因子取得部33は、道路ネットワークデータベース15a(図2)を参照し、道路リンク(リンク番号1)の勾配「10%」の情報を取得し、この勾配と対応付けて、車種「k1」の「基準電力量QA」に対する車種「k2」の「基準外電力量QB」の比(割合)を求める。つまり、道路リンク(リンク番号1、勾配10%)に関する「基準電力量QA」と「基準外電力量QB」との比(QB/QA)を求める。
そして、この比(QB/QA)を、車種「k2」及び勾配「10%」の係数として、コスト修飾因子データベース15d(図4)に記憶させる。本実施形態では、この比(QB/QA)は「1.2」である。
【0047】
このように、修飾因子取得部33は、道路リンク(リンク番号1)における「基準電力量(QA)」と「基準外電力量(QB)」との比(QB/QA)を、相違する因子の種類(車種)及びその道路リンク(リンク番号1)の路面の勾配(10%)と対応付けて求める。そして、コスト修飾因子データベース15dは、因子の種類及び勾配を分類の項目としていることから、この求められた比(QB/QA)を、これら項目に対応させてデータベース15dに記憶させる。
【0048】
なお、本実施形態では、この道路リンク(リンク番号1)における「基準電力量」と「基準外電力量」とは、多くの電気自動車から取得され、前記比(QB/QA)も多数取得される。そこで、修飾因子取得部33は、これら多数を比(QB/QA)の値を、因子の種類毎及び勾配毎に集計し、統計値として平均値を求め、この平均値を、コスト修飾因子データベース15dに記憶させる。
また、前記説明では、因子として「車種」が異なる場合について説明したが、他の因子(乗車人数、エアコンの作動状態・・・)が異なる場合も、情報生成部21による処理は同様であり、比の値は、因子の種類毎に区分され、勾配毎に集計されて平均値が求められ、この平均値が、コスト修飾因子データベース15dに蓄積される。
以上より、図4に示すコスト修飾因子データベース15dが構築される。
【0049】
〔4.2 リンク電力コストデータベース15fの構築〕
演算装置17が有する情報生成部21(図1参照)は、その機能部として、特定部35と、抽出部36と、電力コスト算出部37と、推定部38とを有しており、これら機能部により、リンク電力コストデータベース15f(図6)を構築することができる。
なお、各道路リンクを、多数の電気自動車2(図1参照)が走行しており、各電気自動車2の車載装置3はプローブ情報を送信し、このプローブ情報を情報生成部21が取得し、以下の処理を行う。
【0050】
特定部35は、各道路リンクを走行する電気自動車2からのプローブ情報を取得すると、これらプローブ情報から、各電気自動車2が各道路リンクを走行した際に消費した電力量と、その走行によりバッテリ7の電力消費に影響を与える因子を特定する。
【0051】
すなわち、前記〔4.1 コスト修飾因子データベース15dの構築〕で説明した処理と同様に、プローブ情報には、プローブ情報の生成周期(送信周期)で消費したバッテリ7の電力量の情報が含まれていることから、特定部35は、この周期毎の情報を道路リンク毎に集計(積算)することにより、各道路リンクの走行に必要となった電力量(消費電力量)を求めることができる。この特定部35によって、道路リンク(リンク番号1〜5)それぞれに関して求められた電力量(消費電力量)を、Q1〜Q5とする。
【0052】
また、プローブ情報には、バッテリ7の電力消費に影響を与える因子として、電気自動車の車種、乗車人数、エアコンの作動状態、ヘッドライトの点灯状態の情報が含まれていることから、特定部35は、これらを直接的に認識することができる。渋滞に関しては、前記のとおり、演算を行う。つまり、取得したプローブ情報には、時刻の情報が含まれていることから、その時刻における旅行時間の情報を、交通情報データベース15b(図3)から取得する。そして、特定部35は、「リンク長/旅行時間」の演算により旅行速度を算出し、この旅行速度と閾値とを比較し、渋滞の有無を判定することができる。
【0053】
このように、特定部35は、道路リンク(リンク番号1〜5・・・)を走行する電気自動車からのプローブ情報に基づいて、その道路リンクの走行によるバッテリ7の消費電力量(Q1〜Q5・・・)を求めると共に、このプローブ情報に基づいて、その道路リンク(リンク番号1〜5・・・)の走行においてバッテリの電力消費に影響を与えている因子を特定する機能を有している。
【0054】
例えば、車種が「k2」、乗車人数が「2人」、エアコンが「オン」、ヘッドライトが「オフ」という状態で、道路リンク(リンク番号1〜5・・・)を走行している電気自動車からプローブ情報が取得されたとする。この場合、特定部35は、このプローブ情報を送信した電気自動車2の前記因子として、車種「k2」、乗車人数「2人」、エアコン「オン」、ヘッドライト「オフ」であることを特定することができる。
そして、渋滞の有無に関しては、特定部35は、プローブ情報が取得された時刻における道路リンク(リンク番号1〜5・・・)の旅行時間を、交通情報データベース15b(図3)を参照して取得し、この旅行時間に基づいて旅行速度を算出し、閾値と比較し、渋滞は「無し」と判定したとする。
【0055】
すると、抽出部36は、バッテリの電力消費に影響を与えている複数種類の因子と、これら各因子に応じて消費電力量を割り増し(又は割り引き)するための係数とが対応付けられたコスト修飾因子データベース15d(図4)から、特定部35が特定した因子に対応する係数を抽出する。なお、本実施形態では、このコスト修飾因子データベース15dには、前記のとおり、因子のみならず、勾配も分類の項目とされていることから、因子と勾配とから、対応する係数が抽出される。勾配は、道路ネットワークデータベース15a(図2)に蓄積されており、抽出部36は、このデータベース15aを参照し、対応する勾配の係数を抽出する。
【0056】
つまり、特定部35によれば、道路リンク(リンク番号1〜5)に関して、前記のとおり、車種「k2」、乗車人数「2人」、エアコン「オン」、ヘッドライト「オフ」、渋滞「無し」という因子が特定されていることから、抽出部36は、コスト修飾因子データベース15d(図4)を参照し、道路リンク(リンク番号1、勾配10%)に関して、車種「k2」に対応する係数「1.2」、乗車人数「2人」に対応する係数「1.1」、エアコン「オン」に対応する係数「1.2」、ヘッドライト「オフ」に対応する係数「1.0」、渋滞「無し」に対応する係数「1.0」を抽出する。なお、抽出部36は、他の道路リンク(リンク番号2〜5についても)同様に係数を抽出する。
【0057】
そして、電力コスト算出部37は、特定部35が求めた消費電力量と、抽出部36が抽出した係数とに基づいて、この因子に応じて割り増し(又は割り引き)する消費電力量を除いた道路リンクにおける基準消費電力量(基準電力コスト)を求める。
すなわち、道路リンク(リンク番号1)に関して説明すると、電力コスト算出部37は、特定部35が求めた消費電力量Q1と、抽出部36が抽出した係数(車種「k2」の係数「1.2」、乗車人数「2人」の係数「1.1」、エアコン「オン」の係数「1.2」、ヘッドライト「オフ」の係数「1.0」、渋滞「無し」の係数「1.0」)とに基づいて、これら因子に応じて割り増しする消費電力量を除いた道路リンクにおける基準消費電力量を算出する。具体的には、消費電力量Q1を、前記係数「1.2」「1.1」「1.2」「1.0」「1.0」で除算し、この算出結果を基準消費電力量(基準電力コスト)とする。
なお、本実施形態では、道路リンク(リンク番号1)では、多数の電気自動車2からのプローブ情報が取得されることから、それぞれに関して算出した基準消費電力量を集計し、その平均値を求め、その平均値(図6では18Wh)を基準消費電力量として、リンク電力コストデータベース15fに記憶させる。
【0058】
そして、電力コスト算出部37は、この処理を他の道路リンク(リンク番号2〜5)についても道路リンク毎に行い、求められた基準消費電力量を、道路リンク(リンク番号1〜5)を分類の項目とするリンク電力コストデータベース15fに、項目に対応させて蓄積する。
【0059】
なお、前記実施形態では、道路リンク(リンク番号1〜5)に関して、プローブ情報が取得される場合について説明したが、道路リンクによっては、プローブ情報が取得されずに、基準消費電力量が求められない道路リンクも存在する。つまり、この場合、図6のデータベース15fに空欄部分が生じる。
そこで、以下において、プローブ情報が取得されない道路リンクが存在する場合、その道路リンクの基準消費電力量を推定する前記推定部38の機能について説明する。なお、ここでは、プローブ情報が取得されない道路リンクを、リンク番号2の道路リンクとする。
【0060】
推定部38は、リンク電力コストデータベース15f(図6)に蓄積されている道路リンクの基準消費電力量として、例えば、リンク番号1の道路リンクの基準消費電力量(18Wh)を取得し、さらに、道路ネットワークデータベース15aを参照して、このリンク番号1の道路リンクのリンク長(150m)を取得する。
推定部38は、各データベースから取得した基準消費電力量(18Wh)をリンク長(150m)で除算し、単位距離当たりの基準消費電力量(0.12Wh)を算出する。また、推定部38は、他の道路リンクに関しても同様にして、単位距離当たりの基準消費電力量を算出する。
そして、推定部38は、算出した複数の単位距離当たりの基準消費電力量を、勾配毎に集計して平均値を求める。そして、この平均値を、勾配基準電力コストデータベース15e(図5参照)に蓄積する。例えば、勾配が10%の場合の単位距離当たりの基準消費電力量(平均値)が「0.20wh」と求められ、この平均値を、勾配基準電力コストデータベース15e(図5参照)に蓄積する。
【0061】
このように、推定部38は、リンク電力コストデータベース15f(図6)に蓄積されている道路リンクの基準消費電力量を、その道路リンクのリンク長で除算して単位距離当たりの基準消費電力量を算出する。さらに、算出した単位距離当たりの基準消費電力量を、道路リンクの路面の勾配毎に集計して平均値を求め、この平均値を勾配基準電力コストデータベース15e(図5)に蓄積させる。
【0062】
そして、前記のとおり、道路リンク(リンク番号2)では、プローブ情報が取得されないことから、推定部38は、道路ネットワークデータベース15a(図2)を参照して、この道路リンク(リンク番号2)のリンク長「200m」と、勾配「5%」を取得する。また、推定部38は、勾配基準電力コストデータベース15e(図5)を参照して、道路リンク(リンク番号2)の勾配「5%」に対応する単位距離当たりの基準消費電力量(0.15Wh)を取得する。
すると、推定部38は、道路リンク(リンク番号2)のリンク長「200m」と、単位距離当たりの基準消費電力量(0.15Wh)とを乗算する。この算出結果「30wh」を、道路リンク(リンク番号2)の基準消費電力量(推定値)とする。
【0063】
このように、推定部38は、プローブ情報が取得されていない推定対象となる道路リンク(リンク番号2)のために、この道路リンク(リンク番号2)のリンク長及び勾配と、勾配基準電力コストデータベース15e(図5)に蓄積されている単位距離当たりの基準消費電力量(平均値)とに基づいて、推定対象となる道路リンク(リンク番号2)の基準消費電力量を算出することができる。
そして、この算出結果が、道路リンク(リンク番号2)の基準消費電力量(推定値)となり、リンク電力コストデータベース15f(図6)に、項目(リンク番号2)に対応させて蓄積する。
【0064】
これにより、プローブ情報が取得されない道路リンクに関しても、基準消費電力量を求めることができ、リンク電力コストデータベース15f(図6)には、実測値と推定値とが含まれる。すなわち、図6に示すリンク電力コストデータベース15fが構築される。
【0065】
〔4.3 第3の機能による結果〕
以上のように、情報生成部21によれば、電気自動車用情報として、コスト修飾因子データベース15d(図4)、勾配基準電力コストデータベース15e(図5)及びリンク電力コストデータベース15f(図6)が構築される。
【0066】
コスト修飾因子データベース15d(図4)は、バッテリ7の電力消費に影響を与える複数種類の因子、及び、勾配を分類の項目とするデータベースである。そして、このデータベース15dには、「基準となる電気自動車」が道路リンクを走行するために必要となる基準電力量と、「基準となる電気自動車」と因子が相違する電気自動車がその道路リンクを走行するために必要となる基準外電力量との比が、各項目(因子、勾配)に対応して蓄積されている。
そして、リンク電力コストデータベース15f(図6)は、道路リンクを分類の項目とするデータベースである。そして、このデータベース15fには、道路リンクを走行するために必要となる電力量であって、バッテリ7の電力消費に影響を与える因子に応じて割り増し(又は割り引き)されていない消費電力量を除いた基準消費電力量が、項目(道路リンク)に対応して蓄積されている。
【0067】
すなわち、リンク電力コストデータベース15fは、各道路リンクを走行するために要するバッテリ7の電力量を求めるための基準となる「基準消費電力量」が、道路リンク毎に蓄積されたものとなり、コスト修飾因子データベース15dは、前記「基準消費電力量」に作用させる「係数」が、因子毎及び勾配毎に蓄積されたものとなる。
【0068】
これらコスト修飾因子データベース15d及びリンク電力コストデータベース15fを用いて行われる、経路探索のための各道路リンクにおける電力消費量の算出方法について説明する。
(具体例)
具体例として、電気自動車2が、10時05分に、道路リンク(リンク番号1)を走行する場合の、この道路リンク(リンク番号1)におけるバッテリ7の電力消費量の算出について説明する。
【0069】
電気自動車2の車載装置3から送信されたプローブ情報を、情報生成部21が取得すると、特定部35は、このプローブ情報から、この電気自動車2におけるバッテリ7の電力消費に影響を与える因子を特定する。さらに、特定部35は、交通情報データベース15b(図3)を参照し、10時05分の道路リンク(リンク番号1)の旅行時間「16秒」を取得し、バッテリ7の電力消費に影響を与える因子である、渋滞の有無も判定する。
そして、抽出部36は、コスト修飾因子データベース15d(図4)を参照し、特定した因子毎に対応する係数を抽出する。なお、ここでは、道路リンク(リンク番号1)の勾配10%に関する係数が抽出される。
【0070】
そして、電力コスト算出部37は、リンク電力コストデータベース15f(図6)を参照し、道路リンク(リンク番号1)の基準消費電力量「18Wh」を取得し、この基準消費電力量「18Wh」に、抽出部36によって抽出された各係数を乗算する。
この演算結果は、電気自動車2が10時05分に道路リンク(リンク番号1)を走行する場合に必要となる電力消費量となる。
【0071】
このように、リンク電力コストデータベース15fに、道路リンク(リンク番号1)に関して基準消費電力量が蓄積されていることから、このデータベース15fの情報を基礎として用い、さらに、道路リンク(リンク番号1)を走行する際の因子及びその道路リンクの勾配の情報が取得されると、コスト修飾因子データベース15d(図4)に基づいて、係数が抽出され、これら基準消費電力量と係数とに基づいて、電気自動車2がその道路リンク(リンク番号1)を走行するために必要となる消費電力量の予測を行うことが可能となる。
【0072】
〔5. 第1の機能について〕
図1において、前記のとおり、車載装置3から送信情報i1が送信され、処理装置1がこれを受信すると、経路探索部20は、出発地から経由地を経由して目的地まで電気自動車2が走行すべき推奨経路を、道路リンクのリンクコストを用いて探索する処理を開始する。なお、出発地は、送信情報i1に含まれている現在位置の情報に基づき、目的地は、この送信情報i1に含まれている目的地情報に基づく。なお、経由地は、推奨経路に含まれて、経路探索部20によって自動決定される。
そして経路探索部20は、推奨経路を決定すると、この推奨経路の情報を応答情報i2に含め、車載装置3へ送信する。車載装置3は、この応答情報i2を受けると、推奨経路をドライバに対して出力することができ、この推奨経路に沿った経路案内を実行することが可能となる。
本実施形態では、経由地は、電気自動車のバッテリ7に充電を行う充電ステーションであり、この経路探索部20によれば、電気自動車が充電ステーションを経由することにより目的地に到達することが可能となる推奨経路が得られる。
【0073】
〔6. 経路探索部の各機能について〕
経路探索部20は、ある地点(第1地点)から他の地点(第2地点)まで電気自動車2が走行すべき区間経路を、道路リンクのリンクコストを用いて所定の探索アルゴリズムにより探索する機能を有している。道路リンクのリンクコストは、交通情報データベース15b(図3)に蓄積されており、経路探索部20は、このデータベース15bを参照する。なお、経路探索部20は、第1探索部11及び第2探索部12からなる。
【0074】
また、経路探索部20は、経由地となる充電ステーション及びこの充電ステーションまでの区間経路を、航続可能範囲に基づいて求める。この航続可能範囲は、電気自動車2のバッテリ7の残り電力量に基づく。つまり、航続可能範囲は、起点(出発地又は充電ステーション)におけるバッテリ7の電力量から、「各道路リンクの走行に伴って消費される電力量」を差し引いた、残り電力量により決定される。つまり、例えば、残り電力量が所定の値(例えば20%)未満となるまでが航続可能範囲となる。
そして、前記「各道路リンクの走行に伴って消費される電力量」が、前記第2の機能によって生成されている各種データベース(図4図6)が用いられて算出され、その手法は、前記〔4.3 第3の機能による結果〕中の(具体例)で説明したとおりである。
【0075】
すなわち、各道路リンクを走行するために要する電気自動車2のバッテリ7の基準消費電力量や、バッテリ7の電量消費に影響を与える因子に応じた係数等の情報が、記憶装置15が有する各種のデータベース(図4図6)に蓄積されており、航続可能範囲は、これらデータベースに蓄積されている情報に基づいて算出される。そして、経路探索部20は、これらデータベースを参照しながら経路探索の処理を実行することで、航続可能範囲内の一又は複数の充電ステーション、及び、この充電ステーションまでの区間経路を求めることができる。
【0076】
また、前記探索アルゴリズムは、様々なアルゴリズムを採用可能であるが、本実施形態はダイクストラ法であり、経路探索部20は、道路リンクのリンクコストの総和が小さくなる(最小となる)区間経路を探すシミュレーションを行う。また、本実施形態ではリンクコストを旅行時間としていることから、処理装置1は、出発地から目的地まで、できるだけ旅行時間が短くなる推奨経路を決定することが可能となる。
【0077】
そして、経路探索部20によれば、充電ステーションまでの区間経路を求め、この区間経路に基づいて、出発地から出発し経由地を経由して到達することのできる目的地までの全経路を探索可能となり、複数の全経路が探索される場合がある。全経路が複数探索される場合、これら全経路の中から最適な全経路が、決定部13によって一つ選択され、この一つの全経路が推奨経路として決定される。なお、この決定部13は、経路探索部20の機能の一部である。
【0078】
前記実施形態では、バッテリ7の電力消費に影響を与える因子として、電気自動車の車種、乗車人数、車載空調設備の動作状態、ヘッドライトの点灯状態及び渋滞の有無の全てが含まれる場合を説明したが、その他の因子が更に含まれていてもよい。この因子は、電気自動車の車種、乗車人数、車載空調設備の動作状態、ヘッドライトの点灯状態及び渋滞の有無の内の少なくとも一つが含まれていればよい。
【0079】
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1:電気自動車用情報の処理装置 2:電気自動車 7:バッテリ 15:記憶装置(記憶部) 15d:コスト修飾因子データベース(第1のデータベース) 15e:勾配基準電力コストデータベース 15f:リンク電力コストデータベース(第2のデータベース) 21:情報生成部 31:基準電力量取得部 32:基準外電力量取得部 33:修飾因子取得部 35:特定部 36:抽出部 37:電力コスト算出部 38:推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6