特許第5919615号(P5919615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5919615走行経路特定システム、走行経路特定方法、走行経路特定装置、プログラム、及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919615
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】走行経路特定システム、走行経路特定方法、走行経路特定装置、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20160428BHJP
   G01S 19/49 20100101ALI20160428BHJP
   G09B 29/10 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   G01C21/30
   G01S19/49
   !G09B29/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-547010(P2014-547010)
(86)(22)【出願日】2013年11月13日
(86)【国際出願番号】JP2013080714
(87)【国際公開番号】WO2014077290
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-250126(P2012-250126)
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】日浦 亮太
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 義弘
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 潤一
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−190832(JP,A)
【文献】 特開2004−150819(JP,A)
【文献】 特開2011−220802(JP,A)
【文献】 特開2008−89309(JP,A)
【文献】 特開2011−232169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
G01S 19/49
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定システムであって、
電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部と、
前記マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部と、
電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、前記マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部と、
電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、前記マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部と
を備え、
前記走行経路特定部は、前記困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に前記第1の位置があると前記第1の位置判定部が判定して、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に前記第2の位置があると前記第2の位置判定部が判定した場合、前記困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ前記困難区域内の道路を、前記車両の走行経路として特定する
ことを特徴とする走行経路特定システム。
【請求項2】
前記第1の位置判定部は、前記困難区域の第1の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に前記第1の位置があるか否かを判定し、
前記第2の位置判定部は、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に前記第2の位置があるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行経路特定システム。
【請求項3】
前記第1の位置判定部は、前記困難区域の第1の端点に対応して設定された前記困難区域への進入用の範囲と、当該進入用の範囲よりも広く設定された前記困難区域からの退出用の範囲とのうち、前記進入用の範囲内に前記第1の位置があるか否かを判定し、
前記第2の位置判定部は、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された前記困難区域への進入用の範囲と、当該進入用の範囲よりも広く設定された前記困難区域からの退出用の範囲とのうち、前記退出用の範囲内に前記第2の位置があるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走行経路特定システム。
【請求項4】
電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定方法であって、
電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング段階と、
前記マップマッチング段階においてマップマッチングされて得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定段階と、
電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、前記マップマッチング段階においてその直前にマップマッチングされて得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定段階と、
電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、前記マップマッチング段階においてその直後にマップマッチングされて得られた第2の位置が、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定段階と
を備え、
前記走行経路特定段階においては、前記困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に前記第1の位置があると前記第1の位置判定段階において判定されて、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に前記第2の位置があると前記第2の位置判定段階において判定された場合、前記困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ前記困難区域内の道路を、前記車両の走行経路として特定する
ことを特徴とする走行経路特定方法。
【請求項5】
電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定装置であって、
電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部と、
前記マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部と、
電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、前記マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部と、
電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、前記マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部と
を備え、
前記走行経路特定部は、前記困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に前記第1の位置があると前記第1の位置判定部が判定して、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に前記第2の位置があると前記第2の位置判定部が判定した場合、前記困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ前記困難区域内の道路を、前記車両の走行経路として特定する
ことを特徴とする走行経路特定装置。
【請求項6】
電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定装置として、コンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部、
前記マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部、
電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、前記マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部、
電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、前記マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部
として機能させ、
前記走行経路特定部は、前記困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に前記第1の位置があると前記第1の位置判定部が判定して、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に前記第2の位置があると前記第2の位置判定部が判定した場合、前記困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ前記困難区域内の道路を、前記車両の走行経路として特定する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定装置として、コンピュータを機能させるプログラムを記録した記録媒体であって、
前記コンピュータを、
電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部、
前記マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部、
電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、前記マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部、
電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、前記マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部
として機能させ、
前記走行経路特定部は、前記困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に前記第1の位置があると前記第1の位置判定部が判定して、前記困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に前記第2の位置があると前記第2の位置判定部が判定した場合、前記困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ前記困難区域内の道路を、前記車両の走行経路として特定する
ことを特徴とするプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路特定システム、走行経路特定方法、走行経路特定装置、プログラム、及び記録媒体に関する。本願は、2012年11月14日に、日本に出願された特願2012−250126号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)を利用する道路課金システムは、車載器によって走行経路を特定して、その記録に基づいて課金額を決定して、自動的に課金を行うシステムである。
【0003】
ところで、GPSによる測位においては、トンネル等、GPS衛星からの電波を受信することができない環境下ではGPSによる測位ができなくなる。そこで、このような問題を解決する技術としては、様々なものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用者によって携帯され、又は移動体に搭載された移動端末が、課金エリアを通行するときに、料金支払のためのデータ処理を行う課金システムが記載されている。より具体的に説明すると、この課金システムは、移動物体の位置を検出するGPS測位装置を含む。また、この課金システムは、GPS測位装置を用いて、移動物体の対地位置を表す情報を生成するモニタ装置を含む。また、この課金システムは、対地位置を表す情報を用いて、対地位置が課金領域内であるか否かを判断し、対地位置が課金領域内であると判断した場合、移動物体に対して課金するためのデータ処理を行う課金処理装置を含む。そして、モニタ装置は、少なくともGPS測位不能の原因となる施設又は地形の絶対位置及び形状を含む簡易なデータを有し、GPS測位不能である場合は、GPS測位不能になる前に生成された対地位置を表す情報により、今回GPS測位不能の原因となった施設又は地形を簡易なデータの中から検出し、検出された施設又は地形の絶対位置を、対地位置を表す情報に替えて移動物体の現在の対地位置とする。このようにして、この課金システムによっては、信頼性が高い課金処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表WO2000/067207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10は、トンネルを介して接続されている道路の一例を示す。この例のトンネルTの端点P1には、道路R1が接続されている。また、トンネルTの端点P2には、道路R2が接続されている。また、トンネルTの端点P3には、道路R3が接続されている。そして、図中の矢印は、進行方向を示している。即ち、端点P1からトンネルT内に進入した車両は、端点P2、又は端点P3から退出することになる。
【0007】
このような道路を走行する場合、特許文献1に記載のシステムは、車両が端点P1からトンネルT内に進入してGPS測位不能になると、推測航法によって自位置を特定する。しかしながら、推測航法の精度は、車速センサーやジャイロの精度に依存しており、必ずしも精確に自位置を特定することができない場合がある。したがって、特許文献1に記載のシステムによっては、車両がトンネルT内において右折して、端点P3から道路R3に退出しているにも拘らず、端点P2から道路R2に退出する経路を辿って自位置を特定してしまう虞がある。その場合、特許文献1に記載のシステムは、車両が端点P3から道路R3に退出して、GPS測位可能になってから自位置を道路R3上に修正することになる。
【0008】
しかしながら、走行距離に応じた料金を課金する道路課金システムにおいては、特許文献1に記載のシステムのように、一旦特定された位置が修正されてしまうと、修正後の位置までに車両が走行した経路を特定し直して、その走行距離を算出し直さなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によると、電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定システムであって、電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部と、マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部と、電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部と、電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部とを備え、走行経路特定部は、困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると第1の位置判定部が判定して、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると第2の位置判定部が判定した場合、困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ困難区域内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0010】
第1の位置判定部は、困難区域の第1の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第1の位置があるか否かを判定し、第2の位置判定部は、困難区域の第2の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第2の位置があるか否かを判定してよい。
【0011】
第1の位置判定部は、困難区域の第1の端点に対応して設定された困難区域への進入用の範囲と、当該進入用の範囲よりも広く設定された困難区域からの退出用の範囲とのうち、進入用の範囲内に第1の位置があるか否かを判定し、第2の位置判定部は、困難区域の第2の端点に対応して設定された困難区域への進入用の範囲と、当該進入用の範囲よりも広く設定された困難区域からの退出用の範囲とのうち、退出用の範囲内に第2の位置があるか否かを判定してよい。
【0012】
本発明の第2の形態によると、電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定方法であって、電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング段階と、マップマッチング段階においてマップマッチングされて得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定段階と、電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、マップマッチング段階においてその直前にマップマッチングされて得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定段階と、電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、マップマッチング段階においてその直後にマップマッチングされて得られた第2の位置が、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定段階とを備え、走行経路特定段階においては、困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると第1の位置判定段階において判定されて、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると第2の位置判定段階において判定された場合、困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ困難区域内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0013】
本発明の第3の形態によると、電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定装置であって、電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部と、マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部と、電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部と、電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部とを備え、走行経路特定部は、困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると第1の位置判定部が判定して、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると第2の位置判定部が判定した場合、困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ困難区域内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0014】
本発明の第4の形態によると、電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定装置として、コンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータを、電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部、マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部、電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部、電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部として機能させ、走行経路特定部は、困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると第1の位置判定部が判定して、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると第2の位置判定部が判定した場合、困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ困難区域内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0015】
本発明の第5の形態によると、電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定装置として、コンピュータを機能させるプログラムを記録した記録媒体であって、コンピュータを、電波航法により測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部、マップマッチング部がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部、電波航法に利用する電波を受信することができなくなった場合に、マップマッチング部がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、電波航法に利用する電波を受信することが困難な区域として設定された困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第1の位置判定部、電波航法に利用する電波を再度受信することができるようになった場合に、マップマッチング部がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する第2の位置判定部として機能させ、走行経路特定部は、困難区域の第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると第1の位置判定部が判定して、困難区域の第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると第2の位置判定部が判定した場合、困難区域の第1の端点から第2の端点までを結ぶ困難区域内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、この発明によっては、困難区域内における測位位置に誤差が生じたまま走行経路を計算して誤った走行経路を特定することがなく、その走行経路を正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る走行経路特定システム100の利用環境の一例を示す図である。
図2】車載器110のブロック構成の一例を示す図である。
図3】車載器110の動作フローの一例を示す図である。
図4】マップマッチングして得られた位置の一例を示す図である。
図5】トンネルの端点に対応して設定された範囲の一例を示す図である。
図6】トンネルの端点に対応して設定された範囲の一例を示す図である。
図7】トンネルの端点に対応して設定された範囲の一例を示す図である。
図8】トンネルの端点に対応して設定された範囲の一例を示す図である。
図9】本実施形態に係る車載器110を構成するコンピュータ800のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】トンネルを介して接続されている道路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、一実施形態に係る走行経路特定システム100の利用環境の一例を示す。走行経路特定システム100は、GPSにより測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定するシステムである。ここで、GPSは、この発明における「電波航法」の一例であってもよい。
【0021】
走行経路特定システム100は、車載器110、及びGPS受信機130を備える。なお、車載器110は、この発明における「走行経路特定装置」の一例であってもよい。
【0022】
GPS受信機130は、電波航法と自律航法とを併用して自位置を測位する装置である。より具体的に説明すると、GPS受信機130は、GPSアンテナ、加速度計、及び角速度計を備える。ここで、GPSアンテナは、GPS衛星からの電波を受信するアンテナである。また、加速度計は、車両が移動する際の加速度変化を計測する計測器である。また、角速度計は、車両が移動する際の角速度変化を計測する計測器である。GPS受信機130は、例えば、車両のダッシュボードDの上等のような、GPSアンテナが遮蔽されない位置に設けられている。そして、GPS受信機130は、車載器110と電気的に接続されている。そして、GPS受信機130は、GPSによる電波航法と、加速度計、及び角速度計を用いた自律航法とを併用して自位置を測位する。そして、GPS受信機130は、その測位位置を示すデータを、車載器110へ出力する。
【0023】
車載器110は、GPSにより測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定して、その走行距離に応じて有料道路の通行料金を課金処理する装置である。より具体的に説明すると、車載器110は、例えば、車両のセンターコンソールCの側面等のような、運転の邪魔にならずに、ドライバーの手の届く位置に設けられている。そして、車載器110は、GPS受信機130と電気的に接続されている。そして、車載器110は、GPS受信機130から出力されたデータの入力を受け付けると、そのデータによって示される測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する。そして、車載器110は、特定した走行距離に応じて有料道路の通行料金を課金処理する。
【0024】
図2は、車載器110のブロック構成の一例を示す。車載器110は、測位データ入力受付部111、マップマッチング部112、第1の位置判定部113、第2の位置判定部114、走行経路特定部115、及び課金処理部116を有する。以下の説明においては、各構成要素の機能、及び動作を詳述する。
【0025】
測位データ入力受付部111は、GPS受信機から出力されたデータの入力を受け付ける。
【0026】
マップマッチング部112は、GPSにより測位された測位位置をマップマッチングする。
【0027】
第1の位置判定部113は、GPS衛星からの電波を受信することができなくなった場合に、マップマッチング部112がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、トンネルの第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する。例えば、第1の位置判定部113は、トンネルの第1の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第1の位置があるか否かを判定する。また、例えば、第1の位置判定部113は、トンネルの第1の端点に対応して設定されたトンネルへの進入用の範囲と、その進入用の範囲よりも広く設定されたトンネルからの退出用の範囲とのうち、進入用の範囲内に第1の位置があるか否かを判定する。なお、GPS衛星からの電波は、この発明における「電波航法に利用する電波」の一例であってもよい。また、トンネルは、この発明における「困難区域」の一例であってもよい。
【0028】
第2の位置判定部114は、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった場合に、マップマッチング部112がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、トンネルの第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する。例えば、第2の位置判定部114は、トンネルの第2の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第2の位置があるか否かを判定する。また、例えば、第2の位置判定部は、トンネルの第2の端点に対応して設定されたトンネルへの進入用の範囲と、その進入用の範囲よりも広く設定されたトンネルからの退出用の範囲とのうち、退出用の範囲内に第2の位置があるか否かを判定する。
【0029】
走行経路特定部115は、マップマッチング部112がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する。より具体的に説明すると、走行経路特定部115は、トンネルの第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると第1の位置判定部が判定して、トンネルの第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると第2の位置判定部が判定した場合、トンネルの第1の端点から第2の端点までを結ぶトンネル内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0030】
課金処理部116は、車両が課金エリア内を走行した場合に、その通行料金を課金処理する。
【0031】
図3は、車載器110の動作フローの一例を示す。この動作フローにおいては、車両がトンネル内を走行したときの処理について詳述する。なお、この動作フローの説明においては、図1図2、及び図4〜8を共に参照する。ここで、車載器110は、例えば、課金エリア内の有料道路を車両が走行した場合に、その走行経路を特定して、走行距離に応じた通行料金を課金処理する。しかしながら、車載器110の課金処理は、本発明に係る処理ではないので、その詳細な説明を省略する。
【0032】
車両の原動機が始動すると、GPS受信機130は、GPSを利用して自位置の測位を開始する。例えば、GPS受信機130は、所定時間置きに自位置を測位する。そして、GPS受信機130は、測位する度に、その測位結果の位置座標を示す測位データを、車載器110へ出力する。
【0033】
車載器110の測位データ入力受付部111は、GPS受信機130から出力された測位データの入力を受け付けると、そのデータを、マップマッチング部112へ送る。
【0034】
車載器110のマップマッチング部112は、測位データ入力受付部111から送られた測位データを受け取ると、その測位データによって示される位置座標を、デジタル地図にマップマッチングする。例えば、マップマッチング部112は、車両は道路を走行するものだという前提を持って、たとえ、測位結果の位置座標が道路以外の場所にあろうとも、強制的に道路の道に合わせ込む。例えば、測位された走行経路と、地図データとを照合して、位置が道路からずれている場合でも、車両位置を近くの道路上に補正する。
【0035】
ここで、GPS受信機130は、GPS衛星からの電波を受信することができなくなった場合(S101:Yes)、その旨を通知する第1の通知データを、車載器110へ出力する。なお、GPS衛星からの電波を受信することができない間、GPS受信機130は、測位処理を中断してもよいし、自律航法による測位処理を継続してもよい。
【0036】
車載器110の測位データ入力受付部111は、GPS受信機130から出力された第1の通知データの入力を受け付けると、その第1の通知データを、マップマッチング部112へ送る。
【0037】
車載器110のマップマッチング部112は、測位データ入力受付部111から送られた第1の通知データを受け取ると、その直前にマップマッチングして得られた位置座標に最も近いトンネルの端点の位置座標を、デジタル地図から読み出す。例えば、図4に示すように、第1の通知データを受け取る直前にマップマッチングして得られた位置が位置MM1である場合、マップマッチング部112は、位置MM1の位置座標に最も近いトンネルTの端点P1の位置座標を、デジタル地図から読み出す。そして、マップマッチング部112は、第1の通知データを受け取る直前にマップマッチングして得られた位置座標と、デジタル地図から読み出したトンネルの端点の位置座標とを示すデータを、第1の位置判定部113へ送る。また、マップマッチング部112は、デジタル地図から読み出したトンネルの端点の位置座標を示すデータを、走行経路特定部115へ送る。
【0038】
車載器110の第1の位置判定部113は、マップマッチング部112から送られたデータを受け取ると、そのデータによって示されるマップマッチングして得られた位置座標が、トンネルの端点の位置座標に対応して設定された範囲内(端点近傍)にあるか否かを、デジタル地図を用いて判定する(S102)。
【0039】
例えば、図5に示すように、トンネルTの各端点P1〜P3には、その端点の位置座標を中心とする所定半径の円の範囲AC1〜AC3がそれぞれ設定されているとする。その場合、第1の位置判定部113は、マップマッチングして得られた位置MM1の位置座標が、円の範囲AC1内にあるか否かを判定する。
【0040】
また、例えば、図6に示すように、トンネルTの各端点P1〜P3には、その端点の位置座標から所定距離の道路上の範囲AR1〜AR3がそれぞれ設定されているとする。その場合、第1の位置判定部113は、マップマッチングして得られた位置MM1の位置座標が、道路上の範囲AR1内にあるか否かを判定する。
【0041】
また、例えば、図7に示すように、二車線のトンネルTの端点P1には、その端点の位置座標を中心とする円の半径が異なる2つの範囲AC1a、AC1bが設定されているとする。同様に、トンネルTの端点P2には、その端点の位置座標を中心とする円の半径が異なる2つの範囲AC2a、AC2bが設定されているとする。ここで、円の半径が小さい範囲AC1a、AC2aは、GPS衛星からの電波を受信することができなくなった直前の位置の判定処理に用いる。一方、円の半径が大きい範囲AC1b、AC2bは、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった直後の位置の判定処理に用いる。これは、一般的に、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった直後のGPSの測位精度が悪いことを考慮した設定である。その場合、第1の位置判定部113は、マップマッチングして得られた位置MM1の位置座標が、円の半径の異なる2つの範囲AC1a、AC1bのうち、円の半径が小さい範囲AC1a内にあるか否かを判定する。
【0042】
また、例えば、図8に示すように、二車線のトンネルTの端点P1には、その端点の位置座標からの道路上の距離が異なる2つの範囲AR1a、AR1bが設定されているとする。同様に、トンネルTの端点P2には、その端点の位置座標からの道路上の距離が異なる2つの範囲AR2a、AR2bが設定されているとする。ここで、道路上の距離が短い範囲AR1a、AR2aは、GPS衛星からの電波を受信することができなくなった直前の位置の判定処理に用いる。一方、道路上の距離が長い範囲AR1b、AR2bは、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった直後の位置の判定処理に用いる。これは、上述したように、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった直後のGPSの測位精度が悪いことを考慮した設定である。その場合、第1の位置判定部113は、マップマッチングして得られた位置MM1の位置座標が、道路上の距離が異なる2つの範囲AR1a、AR1bのうち、道路上の距離が短い範囲AR1a内にあるか否かを判定する。
【0043】
そして、第1の位置判定部113は、このように判定した判定結果を示すデータを、走行経路特定部115へ送る。
【0044】
その後、車両がトンネルTを抜けると、GPS受信機130は、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになる(S103:Yes)。その場合、GPS受信機130は、その旨を通知する第2の通知データを、車載器110へ出力する。そして、GPS受信機130は、GPSを利用して自位置の測位を再開すると、測位する度に、その測位結果の位置座標を示す測位データを、車載器110へ出力する。
【0045】
車載器110の測位データ入力受付部111は、GPS受信機130から出力された第2の通知データの入力を受け付けると、その第2の通知データを、マップマッチング部112へ送る。また、測位データ入力受付部111は、GPS受信機130から出力された測位データの入力を受け付けると、その測位データを、マップマッチング部112へ送る。
【0046】
車載器110のマップマッチング部112は、測位データ入力受付部111から送られた第2の通知データを受け取った直後に、測位データを受け取ると、その測位データによって示される測位結果の位置座標をマップマッチングして得られた位置座標に最も近いトンネルの端点の位置座標を、デジタル地図から読み出す。例えば、図4に示すように、第2の通知データを受け取った直後にマップマッチングして得られた位置が位置MM2である場合、マップマッチング部112は、位置MM2の位置座標に最も近いトンネルTの端点P2の位置座標を、デジタル地図から読み出す。そして、マップマッチング部112は、第2の通知データを受け取った直後にマップマッチングして得られた位置座標と、デジタル地図から読み出したトンネルの端点の位置座標とを示すデータを、第2の位置判定部114へ送る。また、マップマッチング部112は、デジタル地図から読み出したトンネルの端点の位置座標を示すデータを、走行経路特定部115へ送る。
【0047】
車載器110の第2の位置判定部114は、マップマッチング部112から送られたデータを受け取ると、そのデータによって示されるマップマッチングして得られた位置座標が、トンネルの端点の位置座標に対応して設定された範囲内(端点近傍)にあるか否かを、デジタル地図を用いて判定する(S104)。
【0048】
例えば、図5に示すような設定の場合、第2の位置判定部114は、マップマッチングして得られた位置MM2の位置座標が、円の範囲AC2内にあるか否かを判定する。
【0049】
また、例えば、図6に示すような設定の場合、第2の位置判定部114は、マップマッチングして得られた位置MM2の位置座標が、道路上の範囲AR2内にあるか否かを判定する。
【0050】
また、例えば、図7に示すような設定の場合、第2の位置判定部114は、マップマッチングして得られた位置MM2の位置座標が、円の半径の異なる2つの範囲AC2a、AC2bのうち、円の半径が大きい範囲AC2b内にあるか否かを判定する。
【0051】
また、例えば、図8に示すような設定の場合、第2の位置判定部114は、マップマッチングして得られた位置MM2の位置座標が、道路上の距離が異なる2つの範囲AR2a、AR2bのうち、道路上の距離が長い範囲AR2b内にあるか否かを判定する。
【0052】
そして、第2の位置判定部114は、このように判定した判定結果を示すデータを、走行経路特定部115へ送る。
【0053】
車載器110の走行経路特定部115は、マップマッチング部112、第1の位置判定部113、及び第2の位置判定部114から送られたデータをそれぞれ受け取る。そして、走行経路特定部115は、第1の位置判定部113、及び第2の位置判定部114からそれぞれ受け取ったデータによって示される判定結果が、いずれも「マップマッチングして得られた位置座標が、トンネルの端点の位置座標に対応して設定された範囲内にある」との判定である場合、マップマッチング部112から最初に受け取ったデータによって示される位置座標にあるトンネルの端点から、マップマッチング部112から次に受け取ったデータによって示される位置座標にあるトンネルの端点までを結ぶトンネル内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0054】
以上、説明したように、車載器110は、GPSにより測位された測位位置をマップマッチングする。そして、車載器110は、マップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する。そして、車載器110は、GPS衛星からの電波を受信することができなくなった場合に、の直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、トンネルの第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する。そして、車載器110は、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった場合に、その直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、トンネルの第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを判定する。そして、車載器110は、トンネルの第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると判定して、トンネルの第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると判定した場合、トンネルの第1の端点から第2の端点までを結ぶトンネル内の道路を、車両の走行経路として特定する。
【0055】
このようにして、走行経路特定システム100によっては、車両がトンネル内を走行した場合に、1回の処理によって、その走行経路を正確に特定することができる。
【0056】
また、上述したように、車載器110は、トンネルの第1の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第1の位置があるか否かを判定する。そして、車載器110は、トンネルの第2の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第2の位置があるか否かを判定する。
【0057】
このようにして、走行経路特定システム100によっては、トンネルの端点に対応する範囲を設定するにあたり、マップマッチングするのに利用しているデジタル地図上の道路毎に設定を行うだけで、本システムによる処理に用いることができる。
【0058】
また、上述したように、車載器110は、トンネルの第1の端点に対応して設定されたトンネルへの進入用の範囲と、その進入用の範囲よりも広く設定されたトンネルからの退出用の範囲とのうち、進入用の範囲内に第1の位置があるか否かを判定する。そして、車載器110は、トンネルの第2の端点に対応して設定されたトンネルへの進入用の範囲と、その進入用の範囲よりも広く設定されたトンネルからの退出用の範囲とのうち、退出用の範囲内に第2の位置があるか否かを判定する。
【0059】
このようにして、走行経路特定システム100によっては、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった直後のGPSの測位精度が悪いことを踏まえて、柔軟に対応することができる。
【0060】
図9は、本実施形態に係る車載器110を構成するコンピュータ800のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ800は、ホストコントローラ801により相互に接続されるCPU(Central Processing Unit)802、RAM(Random Access Memory)803、グラフィックコントローラ804、及びディスプレイ805を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ806により相互に接続される通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ809を有する入出力部と、入出力コントローラ806に接続されるROM(Read Only Memory)810、フレキシブルディスクドライブ811、及び入出力チップ812を有するレガシー入出力部とを備える。
【0061】
ホストコントローラ801は、RAM803と、高い転送レートでRAM803をアクセスするCPU802、及びグラフィックコントローラ804とを接続する。CPU802は、ROM810、及びRAM803に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィックコントローラ804は、CPU802等がRAM803内に設けたフレームバッファ上に生成する画像データを取得し、ディスプレイ805上に表示させる。これに代えて、グラフィックコントローラ804は、CPU802等が生成する画像データを格納するフレームバッファを、内部に含んでもよい。
【0062】
入出力コントローラ806は、ホストコントローラ801と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROMドライブ809を接続する。ハードディスクドライブ808は、コンピュータ800内のCPU802が使用するプログラム、及びデータを格納する。CD−ROMドライブ809は、CD−ROM892からプログラム、又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供する。
【0063】
また、入出力コントローラ806には、ROM810と、フレキシブルディスクドライブ811、及び入出力チップ812の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM810は、コンピュータ800が起動時に実行するブートプログラム、及び/又はコンピュータ800のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスクドライブ811は、フレキシブルディスク893からプログラム、又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供する。入出力チップ812は、フレキシブルディスクドライブ811を入出力コントローラ806へと接続すると共に、例えばパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ806へと接続する。
【0064】
RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク893、CD−ROM892、又はIC(Integrated Circuit)カード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM803を介してコンピュータ800内のハードディスクドライブ808にインストールされ、CPU802において実行される。
【0065】
コンピュータ800にインストールされ、コンピュータ800を車載器110として機能させるプログラムは、コンピュータ800を、GPSにより測位された測位位置をマップマッチングするマップマッチング部112と、マップマッチング部112がマップマッチングして得られた位置の経時的変移に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定部115と、GPS衛星からの電波を受信することができなくなった場合に、マップマッチング部112がその直前にマップマッチングして得られた第1の位置が、トンネルTの第1の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを、ステップS102において判定する第1の位置判定部113と、GPS衛星からの電波を再度受信することができるようになった場合に、マップマッチング部112がその直後にマップマッチングして得られた第2の位置が、トンネルTの第2の端点に対応して設定された範囲内にあるか否かを、ステップS104において判定する第2の位置判定部114として機能させ、走行経路特定部115には、トンネルTの第1の端点に対応して設定された範囲内に第1の位置があると第1の位置判定部113が判定して、トンネルTの第2の端点に対応して設定された範囲内に第2の位置があると第2の位置判定部114が判定した場合、ステップS105において、トンネルTの第1の端点から第2の端点までを結ぶトンネルT内の道路を、車両の走行経路として特定するように機能させる。
【0066】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS102において、トンネルTの第1の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第1の位置があるか否かを判定する第1の位置判定部113と、ステップS104において、トンネルTの第2の端点に対応して設定された地図上の道路の範囲内に第2の位置があるか否かを判定する第2の位置判定部114として機能させてもよい。
【0067】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、トンネルTの第1の端点に対応して設定されたトンネルTへの進入用の範囲と、その進入用の範囲よりも広く設定されたトンネルTからの退出用の範囲とのうち、進入用の範囲内に第1の位置があるか否かを判定する第1の位置判定部113と、トンネルTの第2の端点に対応して設定されたトンネルTへの進入用の範囲と、その進入用の範囲よりも広く設定されたトンネルTからの退出用の範囲とのうち、退出用の範囲内に第2の位置があるか否かを判定する第2の位置判定部114として機能させてもよい。
【0068】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ800に読み込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である測位データ入力受付部111、マップマッチング部112、第1の位置判定部113、第2の位置判定部114、走行経路特定部115、及び課金処理部116として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ800の使用目的に応じた情報の演算、又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の車載器110が構築される。
【0069】
一例として、コンピュータ800と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU802は、RAM803上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェース807に対して通信処理を指示する。通信インターフェース807は、CPU802の制御を受けて、RAM803、ハードディスクドライブ808、フレキシブルディスク893、又はCD−ROM892等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェース807は、ダイレクトメモリアクセス方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU802が転送元の記憶装置、又は通信インターフェース807からデータを読み出し、転送先の通信インターフェース807、又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0070】
また、CPU802は、ハードディスクドライブ808、CD−ROM892、フレキシブルディスク893等の外部記憶装置に格納されたファイル、又はデータベース等の中から、全部、又は必要な部分をダイレクトメモリアクセス転送等によりRAM803へと読み込ませ、RAM803上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU802は、処理を終えたデータを、ダイレクトメモリアクセス転送等により外部記憶装置へと書き戻す。
【0071】
このような処理において、RAM803は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM803、及び外部記憶装置等をメモリ、記憶部、又は記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU802は、RAM803の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM803の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM803、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
【0072】
また、CPU802は、RAM803から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索、置換等を含む各種の処理を行い、RAM803へと書き戻す。例えば、CPU802は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数、又は定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、又は等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合、又は不成立であった場合に、異なる命令列へと分岐し、又はサブルーチンを呼び出す。
【0073】
また、CPU802は、記憶装置内のファイル、又はデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU802は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0074】
以上に示したプログラム、又はモジュールは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク893、CD−ROM892の他に、DVD(Digital Versatile Disk)、又はCD(Compact Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto−Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク、又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク、又はRAM等の記憶媒体を記録媒体として使用して、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ800に提供してもよい。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更、又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更、又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0076】
例えば、上記の実施形態においては、この発明における「困難区域」の一例として、トンネルについて説明した。この発明における「困難区域」の他の例としては、例えば、高架下、高層ビル街、樹木の間等であってもよい。
【0077】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示したシステム、方法、装置、プログラム、及び記録媒体における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、電波航法により測位された測位位置に基づいて、車両の走行経路を特定する走行経路特定システム、走行経路特定方法、走行経路特定装置、当該走行経路特定装置としてコンピュータを機能させるプログラム、並びに当該プログラムを記録した記録媒体に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100 走行経路特定システム
110 車載器
111 測位データ入力受付部
112 マップマッチング部
113 第1の位置判定部
114 第2の位置判定部
115 走行経路特定部
116 課金処理部
130 GPS受信機
800 コンピュータ
801 ホストコントローラ
802 CPU
803 RAM
804 グラフィックコントローラ
805 ディスプレイ
806 入出力コントローラ
807 通信インターフェース
808 ハードディスクドライブ
809 CD−ROMドライブ
810 ROM
811 フレキシブルディスクドライブ
812 入出力チップ
891 ネットワーク通信装置
892 CD−ROM
893 フレキシブルディスク
AC 範囲
AR 範囲
C センターコンソール
D ダッシュボード
MM マップマッチングして得られた位置
T トンネル
P 端点
R 道路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10