(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の配線具が採用された場合、電線は、基体の平坦な表面に沿って配置される。しかしながら、電線は、弾性を有するため、平坦な面に沿って配置されても、平坦な面から浮き上がった状態になりやすい。そのため、特許文献1に示される配線具が採用された場合、基体の表面に沿って配置された電線は、基体の表面から浮き上がって基体のリブと重なる状態になりやすい。特許文献1の配線具において、基体の表面から浮き上がった電線がリブと重なると、基体に対して被覆体を適切に重ねることができなくなる。
【0010】
また、電線がリブと重なることを避けるため、配線空間の両側で対向するリブの間隔が広げられると、電線が、振動によって広い配線空間内で変位し、電線と配線具との衝突による騒音が発生する。
【0011】
従って、特許文献1の配線具が採用された場合、電線がリブと重ならないように電線を基体に対して押さえ込みつつ配線するという煩雑な作業が必要となる。即ち、特許文献1の配線具は、煩雑な配線作業を要するという問題点を有している。
【0012】
また、特許文献1の配線具において、基体が平板状であるため、基体における十分な剛性を確保するために基体の厚みを大きくすることが必要である。即ち、特許文献1の配線具は、十分な剛性を確保するために要する体積及び重量が大きいという問題点も有している。
【0013】
また、従来の一般的なワイヤハーネスにおいては、図板などの大型の治具と、コルゲートチューブなどの多くの樹脂部材と、その樹脂部材に電線を固定するための多くの結束材と、多くの部材を電線に取り付けるための煩雑な作業とが必要となる。
【0014】
以上に示したように、従来の配線具及びワイヤハーネスは、電線を予め定められた形状で保持しつつ保護するために、多くの部品、それらを取り扱う煩雑な作業及び大がかりな道具を必要とするという問題点を有している。
【0015】
本発明は、電線を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具を備えるワイヤハーネスにおいて、配線具を電線に取り付けるための工数を簡素化でき、さらに、ワイヤハーネスを省スペース化及び軽量化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る配線具は、電線を予め定められた形状で保持する配線具であり、以下の各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、凹凸をなす板状に成形された部材からなる基体である。この基体は、配線部と対の第一傾斜段差部と枠部と電線固定部とを有する。配線部は、電線が配置される配線空間に面する部分である。対の第一傾斜段差部は、配線部の少なくとも一部の両側から配線空間の両側方へ末広がりに傾斜しつつ起立し、相互に対向する段差を形成する部分である。枠部は、配線部及び第一
傾斜段差部の外側に形成され基体の外縁部分を形成する部分である。電線固定部は、枠部の一部に形成され配線部から枠部へ亘って配置される電線が固定される部分である。
(2)第2の構成要素は、凹凸をなす板状に成形され基体における配線部を含む領域を覆う部材からなる被覆体である。この被覆体は、対向壁部と対の第二傾斜段差部とを有する。対向壁部は、基体における対の第一傾斜段差部の間に嵌り込み、配線部に対して配線空間を隔てて対向する部分である。対の第二傾斜段差部は、対向壁部の両側から対の第一傾斜段差部各々の表面に沿って傾斜しつつ起立し、相互に対向する段差を形成する部分である。
【0017】
また、本発明に係る配線具において、基体における対の第一傾斜段差部各々と枠部との境界部分が、被覆体側に凸の曲面を形成していることが考えられる。
【0018】
また、本発明に係る配線具において、基体における対の第一傾斜段差部各々と枠部との境界部分は湾曲面を形成していることが考えられる。
【0019】
また、本発明に係る配線具において、対の第一傾斜段差部の少なくとも一方とこれに連なる枠部の一部とが錐体状に形成されていることが考えられる。
【0020】
また、本発明に係る配線具において、基体及び被覆体が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていることが考えられる。
【0021】
また、本発明に係る配線具において、基体及び被覆体が、平板状の樹脂部材の真空成形により得られた部材であることが考えられる。
【0022】
また、本発明に係る配線具において、電線固定部が、以下に示される第一電線固定部を含むことが考えられる。第一電線固定部
は、枠部における電線が通る部分である電線通過部
と、枠部における電線通過部に隣接し、電線と電線通過部とを結束する結束材が通される貫通孔が形成された部分と、を有する部分である。
【0023】
また、本発明に係る配線具において、電線固定部が、以下に示される第二電線固定部を含むことが考えられる。第二電線固定部は、電線の端部に取り付けられたコネクタに形成された連結部と係り合ってコネクタを支持する部分である。
【0024】
また、本発明は、本発明に係る配線具と、その配線具が取り付けられた電線とを備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
また、本発明は、本発明に係る配線具と、その配線具が取り付けられた電線とを備えるワイヤハーネスの製造方法の発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明において、電線は、配線具を構成する基体及び被覆体の間に挟み込まれる。さらに、板状の基体において内側の配線部から外側の枠部に亘って配置された電線は、枠部における予め定められた位置に設けられた電線固定部で固定される。
【0026】
従って、本発明に係る配線具が取り付けられた電線において、電線固定部で固定された部分は一定の位置に保持され、さらに、電線固定部で固定された部分から外側に位置する部分の長さは一定の長さで保持される。即ち、電線の端部が接続相手に対して過不足なく届くように、電線の形状が配線具によって保持される。また、電線は、基体及び被覆体によって保護される。
【0027】
また、本発明に係る配線具において、配線空間の両側方へ末広がりに傾斜して起立して段差を形成する対の第一傾斜段差部が、基体における配線部の両側に形成されている。即ち、配線部及び対の第一傾斜段差部は、溝状の配線空間を形成しており、対の傾斜段差部の開口の幅は、配線部の幅よりも広い。そのため、電線を基体の配線部に配線する作業において、電線は、配線部から浮き上がって位置が多少ずれた場合でも、対の傾斜段差部の間の領域内に収まりやすい。
【0028】
さらに、基体の配線部を覆う被覆体には、基体における対の第一傾斜段差部の間に嵌り込む対向壁部と、対向壁部の両側から対の第一傾斜段差部各々の表面に沿って傾斜しつつ起立して段差を形成する第二傾斜段差部が形成されている。そのため、電線が配線部から浮き上がっていても、被覆体を基体に重ねて押し付けるだけで、電線は配線部と対向壁部との間の配線空間に収容される。即ち、配線部から浮き上がる電線を配線部に対して押さえ込みつつ電線を配線するという煩雑な作業は不要である。
【0029】
また、本発明に係る配線具において、基体の第一傾斜段差部及び被覆体の第二傾斜段背部は、凹凸をなす板状の基体及び被覆体の剛性を高める補強部として機能する。そのため、基体及び被覆体は、省スペース化及び軽量化のために厚みが比較的小さく形成されても高い剛性を確保することができる。
【0030】
以上に示したことから、本発明によれば、電線を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具を備えるワイヤハーネスにおいて、配線具を電線に取り付けるための工数を簡素化でき、さらに、ワイヤハーネスを省スペース化及び軽量化できる。
【0031】
ところで、本発明において、基体における対の第一傾斜段差部各々と枠部との境界部分が、平坦な面を形成している場合、その平坦な境界部分まで浮き上がった電線が、その平坦な境界部分と被覆体との間に挟み込まれ、配線空間へ円滑に収容されない事態が生じる恐れがある。
【0032】
一方、基体における対の第一傾斜段差部各々と枠部との境界部分が、被覆体側に凸の曲面を形成していれば、その境界部分まで浮き上がった電線は、被覆体で押されたときに対の第一傾斜段差部の間の配線空間へ収容されやすい。即ち、配線具を電線に適切に取り付けることがより容易となる。
【0033】
また、本発明において、基体における対の第一傾斜段差部各々と枠部との境界部分が屈曲した面を形成している場合、その境界部分まで浮き上がった電線が、屈曲した面の角部に引っ掛かり、配線空間へ円滑に収容されない事態が生じる恐れがある。
【0034】
一方、基体における対の第一傾斜段差部各々と枠部との境界部分が湾曲面を形成していれば、その境界部分まで浮き上がった電線は、被覆体で押されたときに湾曲面を滑って対の第一傾斜段差部の間の配線空間へ収容されやすい。即ち、配線具を電線に適切に取り付けることがより容易となる。
【0035】
また、本発明において、対の第一傾斜段差部の少なくとも一方とこれに連なる枠部の一部とが錐体状に形成されていれば、対の第一傾斜段差部各々と枠部との境界部分が、被覆体側に凸の曲面を形成している場合と同様に、浮き上がった電線は、被覆体で押されたときに、枠部とカバー部との間に挟み込まれることなく、対の第一傾斜段差部の間の配線空間へ収容されやすい。このような第一傾斜段差部は、配線部が分岐する部分への適用に適している。
【0036】
また、本発明において、基体及び被覆体が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていればなお好適である。この場合、部品点数が少なくなり、配線具を電線に取り付けるための工数がより簡素化される。
【0037】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。従って、本発明において、基体及び被覆体が、平板状の部材の真空成形により得られた部材であれば、製造工数及び製造コストが低減される。なお、特許文献1に示される平板状のリブを有する基体は、一般に、平板状の部材の真空成形によって得ることはできない。
【0038】
また、本発明において、基体の電線固定部が、結束材が通される貫通孔が形成された部分有する第一電線固定部であれば、電線の一部が、結束材によって予め定められた位置に固定される。貫通孔に通された結束材は、基体の枠
部から外れないため、結束材が基体の枠部から外れて電線の結束が緩むことが防止される。さらに、電線における結束材で固定された部分から末端側の部分の長さが、予め定められた長さで保持される。
【0039】
また、本発明において、基体の電線固定部が、電線端部のコネクタにおける連結部と係り合う第二電線固定部であれば、電線の端部のコネクタが、枠部における予め定められた位置に固定される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0042】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る配線具10及び本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス100の概略の構成について説明する。なお、
図5は、
図3に示されるD−D平面における断面図である。
【0043】
ワイヤハーネス100は、複数の電線9からなる電線群とその電線群に取り付けられた配線具10とを備える。ワイヤハーネス100は、例えば、車両における座席の下方のスペース、天井裏のスペース又はトランクルームなどに取り付けられ、周囲に存在する他の電線又は電装機器と接続される。そのため、ワイヤハーネス100が備える電線9は、絶縁電線と、その絶縁電線の端部に取り付けられたコネクタ91とからなるコネクタ付電線である。
【0044】
ワイヤハーネス100において、複数の電線9は、予め定められた形状に保持された状態で、配線具10によって一体化されている。そのため、ワイヤハーネス100は、クランプなどの固定具を用いて簡易に所定の位置に取り付け可能である。
【0045】
本実施形態において、配線具10は、板状の樹脂部材が真空成形されることにより得られる部材である。配線具10は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリアミド(PA)などの樹脂の部材である。
【0046】
図1に示されるように、配線具10は、ベース部1と、それに重ねられるカバー部2と、ベース部1とカバー部2とに連なってそれらを一体に接続する接続部3と、により構成されている。接続部3は、弾性的に曲げ変形可能な部分である。カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされる。なお、ベース部1及びカバー部2は、それぞれ基体及び被覆体の一例である。
【0047】
図3に示されるように、配線具10は、接続部3が曲がることによって接続部3の部分で折り返し、カバー部2がベース部1に重なる。ベース部1及びカバー部2は、それらの間に電線9を挟み込む状態で固着され、これにより、配線具10は、ベース部1とカバー部2との間に挟み込まれた電線9を予め定められた形状で保持する。
【0048】
<ベース部>
配線具10を構成するベース部1は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。前述したように、本実施形態におけるベース部1は、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。
図1及び
図2に示されるように、ベース部1は、配線部11と第一段差部12と第一枠部13とを有している。
【0049】
図2に示される斜視図のベース部1において、格子の網掛けが記された領域は、配線部11の領域であり、斜線の網掛けが記された領域は、第一枠部13の領域である。第一段差部12は、配線部11の外縁と第一枠部13の内縁とに連なって形成されている。
【0050】
ベース部1を構成する配線部11は、電線9が配置される配線空間90に面する板状の部分である。配線部11には、配線空間90を区分する仕切は形成されていない。但し、配線部11における比較的広く形成された部分には、補強用の複数の凸部111が形成されている。凸部111は、後述する第一段差部12の高さ以下の高さで形成されている。なお、配線部11は、ベース部1の底面を形成する底板部であるともいえる。
【0051】
配線部11に形成された凸部111は、配線部11の底面を形成する平板状の底板部の一部が成形されて配線空間90側へ盛り上がった中空の部分である。
図1に示される例では、凸部111の形状は、正六角錐がその底面に平行な面で切断されたときに底面から切断面に至る部分が形成する形状である。なお、凸部111の形状は、例えば円柱状などの他の形状であってもよい。
【0052】
ベース部1を構成する第一段差部12は、配線部11の外縁に沿って形成されるとともに配線部11から配線空間90の側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、配線部11の外縁は、第一段差部12の内縁に沿って形成されている。本実施形態における第一段差部12は、表面が配線部11の縁から末広がりに傾斜して形成されている。
【0053】
図1に示される例では、第一段差部12は、全体が一定の高さで形成されているわけではなく、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含む。例えば、
図1に示される背高段差部121は、第一段差部12の一部であり、他の部分よりも高く形成されている。但し、第一段差部12は、少なくとも配線部11の凸部111の高さ以上の高さで形成されている。
【0054】
ベース部1を構成する第一枠部13は、第一段差部12の外縁に沿って形成された部分であり、ベース部1の外縁部分をなす。第一枠部13は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。
図1に示される例では、第一枠部13は、平坦な部分と凹部及び凸部とが混在する形状で形成されている。
【0055】
また、
図1に示されるように、第一枠部13の一部には、電線結束部14、コネクタ支持部15及び仮留め用凹部16が形成されている。電線結束部14及びコネクタ支持部15は、配線部11から第一枠部13へ亘って配置される電線9が固定される部分である。
【0056】
なお、電線結束部14及びコネクタ支持部15は、電線固定部の一例である。電線結束部14及びコネクタ支持部15の詳細な説明、及びベース部1に形成された仮留め用凹部16についての説明は後に示す。
【0057】
また、ベース部1における第一枠部13の一部には、クランプ孔17が形成されている。このクランプ孔17は、配線具10が自動車のパネルなどの支持体に取り付けられる際にクランプが通される貫通孔である。クランプが、ベース部1のクランプ孔17と支持体に形成された取付孔とに通されることにより、配線具10は、支持体に固定される。
【0058】
<カバー部>
配線具10を構成するカバー部2は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。このカバー部2は、ベース部1における配線部11を含む領域を覆う部材である。前述したように、本実施形態におけるカバー部2は、ベース部1とともに、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。
図1及び
図2に示されるように、カバー2は、対向壁部21と第二段差部22と第二枠部23とを有している。さらに、カバー部2は、第二枠部23の一部及び第二枠部の外側に形成された複数の仮留め用凸部26も有している。
【0059】
図2に示される斜視図のカバー部2において、格子の網掛けが記された領域は、対向壁部21の領域であり、斜線の網掛けが記された領域は、第二枠部23の領域である。第二段差部22は、対向壁部21の外縁と第二枠部23の内縁とに連なって形成されている。
【0060】
なお、以下の説明において、カバー部2の構成要素の位置又は形状が、ベース部1と関連付けて説明される場合、カバー部2がベース部1に対して重ねられて組み合わされた状態を前提としている。
【0061】
図5に示されるように、カバー部2を構成する対向壁部21は、ベース部1の配線部11に対して配線空間90を隔てて対向する部分である。対向壁部21には、配線空間90を区分する仕切は形成されていない。本実施形態における対向壁部21は、その全体が平板状に形成されている。しかしながら、ベース部1における配線部11の凸部111と同様の凸部が、対向壁部21に形成されることも考えられる。
【0062】
カバー部2を構成する第二段差部22は、対向壁部21の外縁に沿って形成されるとともに対向壁部21からベース部1の反対側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、対向壁部21の外縁は、第二段差部22の内縁に沿って形成されている。本実施形態における第二段差部22は、表面が対向壁部21の縁から末広がりに傾斜して形成されている。
【0063】
図1に示される例では、第二段差部22は、全体が一定の高さで形成されている。しかしながら、第二段差部22が、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含むことも考えられる。
【0064】
カバー部2を構成する第二枠部23は、第二段差部22の外縁に沿って形成された部分であり、カバー部2の外縁部分をなす。第二枠部23は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。
図1に示される例では、第二枠部23の一部に、ベース部1側へ突出する凸部が形成されている。なお、カバー部2に形成された仮留め用凸部26についての説明は後に示す。
【0065】
<接続部>
接続部3は、直線状の溝を形成するように折り返して湾曲した板状に形成された部分である。このような形状で形成された接続部3は、それが形成する溝を開閉する方向において可撓性を有し、弾性的に曲げ変形可能に構成されている。
【0066】
接続部3が溝に沿って折り返されると、カバー部2が、ベース部1に対して予め定められた位置で重なる。
【0067】
<仮留め機構>
ベース部1における第一枠部13の一部には、仮留め用凹部16が形成されている。
図1に示される例では、5つの仮留め用凹部16が、第一枠部13における電線結束部14の近傍と、接続部3の近傍とに形成されている。仮留め用凹部16は、カバー部2側に開口する窪みを形成する部分である。
【0068】
一方、カバー部2における第二枠部23の一部及び第二枠部23の外側には、ベース部1の仮留め用凹部16に嵌り込む仮留め用凸部26が形成されている。
図1に示される例では、5つの仮留め用凸部26が、5つの仮留め用凹部16各々に対向する位置に形成されている。
【0069】
配線具10において、ベース部1の一部に形成された仮留め用凹部16及びカバー部2の一部に形成された仮留め用凸部26は、カバー部2をベース部1に対して留める仮留め機構を構成している。
【0070】
仮留め用凸部26の側面の外形は、わずかに圧縮した状態で仮留め用凹部16の内壁面に内接する形状で形成されている。これにより、仮留め用凸部26が、仮留め用凹部16へ押し入れられると、仮留め用凸部26の側面と仮留め用凹部16の内壁面との摩擦抵抗により、カバー部2は、ベース部1の配線部11を覆う状態でベース部1に対して留められる。
【0071】
以上に示したように、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26は、凸部と凹部との嵌め合い構造により、カバー部2をベース部1に対して配線部11を覆う状態で留める仮留め機構を構成している。
【0072】
なお、
図1に示される例では、仮留め用凹部16がベース部1側に設けられ、仮留め用凸部26がカバー部2側に設けられているが、その逆の構成も考えられる。即ち、仮留め用凹部16がカバー部2側に設けられ、仮留め用凸部26がベース部1側に設けられてもよい。また、ベース部1及びカバー部2の各々において、仮留め用凹部16と仮留め用凸部26とが混在してもよい。
【0073】
<電線収容の構造>
ここで、
図5及び
図6を参照しつつ、配線具10が電線9を配線空間90に収容する構造の詳細について説明する。
図6は、配線空間90に電線9が収容される前の配線具10の一部の断面図である。
図6は、カバー部2がベース部1に重ねられる前の状態を表す。また、
図6の断面図は、
図5の断面図と同様に
図3に示されるD−D平面における断面図である。
【0074】
図5及び
図6に示されるように、背高段差部121は、配線部11の両側で対をなして形成されている。これら対をなす背高段差部121は、配線部11の少なくとも一部の両側から配線空間90の両側方へ末広がりに傾斜しつつ起立し、相互に対向する段差を形成する。第一枠部13は、配線部11及び背高段差部121を含む第一段差部12の外側に形成され、ベース部1の外縁部分を形成している。
【0075】
配線部11及び対をなす背高段差部121は、溝状の配線空間90を形成している。また、対をなす背高段差部121は、末広がりに傾斜しつつ起立しているため、対をなす背高段差部121の開口の幅は、配線部11の幅よりも広い。なお、配線部11の両側で対をなす背高段差部121は、対の第一傾斜段差部の一例である。
【0076】
また、対をなす背高段差部121各々と第一枠部13との境界部分122は、角のない湾曲面を形成している。即ち、対をなす背高段差部121各々と第一枠部13との境界部分122は、角が丸められた状態となっている。
【0077】
一方、カバー部2の対向壁部21は、ベース部1における対をなす背高段差部121の間に嵌り込み、配線部11に対して配線空間90を隔てて対向する部分である。また、カバー部2の第二段差部22は、対向壁部21の両側で対をなして形成されている。対をなす第二段差部22は、対向壁部21の両側から、ベース部1において対をなす背高段差部121各々の表面に沿って傾斜しつつ起立し、相互に対向する段差を形成する部分である。なお、対向壁部21の両側で対をなす第二段差部22は、対の第二傾斜段差部の一例である。
【0078】
また、対向壁部21の両側で対をなす第二段差部22各々と第二枠部23との境界部分222も、ベース部1側の境界部分122に沿うように湾曲面を形成している。即ち、対をなす第二段差部22各々と第二枠部23との境界部分222は、角が丸められた状態となっている。
【0079】
図6に示されるように、電線9をベース部1の配線部11に配線する作業において、弾性を有する電線9は、配線部11から浮き上がって位置がずれやすい。しかしながら、対をなす背高段差部121の開口の幅が広いため、浮き上がった電線9は、対をなす背高段差部121の間の領域内に収まりやすい。
【0080】
また、カバー部2がベース部1に重ねられることにより、カバー部2における対向壁部21及びその両側で対をなす第二段差部22は、ベース部1において対をなす背高段差部121の間に嵌り込む。これにより、対向壁部21及びその両側で対をなす第二段差部22は、ベース部1において対をなす背高段差部121の間に存在する電線9を配線空間90内へ押し込む。そのため、電線9が配線部11から浮き上がっていても、カバー部2をベース部1に重ねて押し付けるだけで、電線9は配線部11と対向壁部21との間の配線空間90に収容される。
【0081】
<ワイヤハーネス>
次に、
図3及び
図4を参照しつつ、複数の電線9と、それら電線9を予め定められた形状に保持する配線具10とを備えたワイヤハーネス100について説明する。
【0082】
図3及び
図4に示されるように、ワイヤハーネス100において、複数の電線9の中間部分は、ベース部1の配線部11に配置されている。また、一部の電線9における端部のコネクタ91は、ベース部1のコネクタ支持部15に固定されている。従って、コネクタ支持部15に固定されたコネクタ91に繋がる電線9の中間部分は、ベース部1における配線部11から第一段差部12を通過して第一枠部13へ亘って配置されている。
【0083】
また、他の一部の電線9における端部のコネクタ91は、ベース部1の外側に配置され、そのコネクタ91に繋がる電線9の中間部分は、ベース部1における配線部11から第一段差部12と第一枠部13における電線結束部14の部分とを通過して第一枠部13の外側へ亘って配置されている。また、その電線9は、電線結束部14に対して結束ベルトにより固定されている。
【0084】
そして、
図3に示されるように、ベース部1及びカバー部2は、配線部11に配置された複数の電線9の中間部分を配線部11と対向壁部21との間に挟み込んで組み合わされた状態で固着されている。本実施の形態では、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26における相互に接触する部分が、超音波溶接などのスポット加熱の装置により溶着され、カバー部2がベース部1に対して固着されている。これにより、カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされた状態で保持されている。
【0085】
例えば、仮留め用凸部26が仮留め用凹部16に嵌め入れられたときに、仮留め用凹部16の底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触することが考えられる。この場合、
図3に示されるように、仮留め用凹部16の底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触する部分に溶着部6が形成される。
【0086】
<電線結束部>
次に、
図7及び
図8を参照しつつ、電線結束部14について説明する。
図7は、配線具10電線結束部14に電線9及び結束ベルト8が固定される様子を示す斜視図である。また、
図8は、電線9が固定された電線結束部14の正面図である。なお、
図7及び
図8において、電線9の端部は省略されて電線9の断面が示されている。
【0087】
図7に示されるように、本実施形態における電線結束部14は、第一枠部13における、電線通過部141と第一ベルト通過部1420と第二ベルト通過部1430とにより構成されている。電線通過部141は、第一枠部13における電線9が通る部分である。第一枠部13において、第一ベルト通過部1420は、電線通過部141に隣接し、第二ベルト通過部1430は、電線通過部141に対し第一ベルト通過部1420の側の反対側に隣接している。
【0088】
第一ベルト通過部1420は、結束ベルト8のベルト部81が貫通可能な貫通孔142が形成された部分である。この貫通孔142は、電線9と電線通過部141とを結束する結束ベルト8のベルト部81が通される孔である。従って、貫通孔142は、結束ベルト8のベルト部81が貫通可能な大きさで形成されている。なお、結束ベルト8は、結束材の一例であり、ベルト部81は、結束ベルト8における結束対象への巻き付け部である。
【0089】
また、第二ベルト通過部1430は、結束ベルト8のベルト部81の厚みよりも大きな幅で、第一枠部13における外縁から内側へ切れ込んで形成された切れ込み部143が形成された部分である。切れ込み部143は、第一枠部13における電線通過部141に対して貫通孔142が位置する側の反対側に隣接する部分に形成されている。
【0090】
貫通孔142及び切れ込み部143は、例えば、真空成形される前の平板状の樹脂部材に対するトムソン加工などによって形成される。
【0091】
図7に示される例では、切れ込み部143は、第一枠部13における外縁から内側へ切れ込んで形成されたスリット状の外側孔部1431と、外側孔部1431と連通し外側孔部1431の幅よりも広い幅の孔である内側孔部1432とにより構成されている。
【0092】
内側孔部1432は、貫通孔142に対して電線通過部141を挟んで対向する位置に形成され、外側孔部1431から電線通過部141側へ幅が拡がって形成されている。そのため、外側孔部1431における電線通過部141側の縁と内側孔部1432における電線通過部141側の縁との境界部分には、段差1433が形成されている。即ち、内側孔部1432は、外側孔部1431から電線通過部141側へ段差1433を経て幅が拡がって形成されている。
【0093】
結束ベルト8は、まず、切れ込み部143における外側孔部1431から内側孔部1432へ通される。その後、結束ベルト8は、先端が貫通孔142に通されるとともに、電線通過部141と電線通過部141に配置された電線9とに巻き付けられる。
【0094】
以上のようにして取り付けられた結束ベルト8は、
図8に示されるように、電線9と電線通過部141とを結束した状態で保持され、電線9は、電線結束部14の電線通過部141に固定される。なお、電線結束部14は、第一電線固定部の一例である。
【0095】
図7に示される電線結束部14において、貫通孔142の縁部及び切れ込み部143の段差1433の部分は、振動などによって電線9に対する結束ベルト8の位置が移動し、結束ベルト8が第一枠部13から外れることを防止する。そのため、電線9は、電線結束部14において安定的に強固に固定される。また、結束ベルト8の先端を貫通孔に挿入する作業の回数が1回で済み、2つの貫通孔に結束ベルト8を通す場合に比べ、結束作業の工数が軽減される。
【0096】
なお、配線具10に適用可能な電線結束部14の他の例としては、以下のような例も考えられる。他の例に係る電線結束部は、第一枠部13における電線通過部141と、第一枠部13における電線通過部141の両側に隣接する2つの貫通孔が形成された部分とを有する。この場合、2つの貫通孔は、電線9と電線通過部141とを結束する結束ベルト8が通される孔である。
【0097】
<コネクタ支持部>
次に、
図9から
図11を参照しつつ、コネクタ支持部15について説明する。
図9は、配線具10におけるコネクタ支持部15の斜視図である。
図10は、電線9の端部におけるコネクタ91の部分の斜視図である。
図11は、コネクタ91が固定されたコネクタ支持部15の正断面図である。
【0098】
ここで、コネクタ支持部15について説明する前に、コネクタ支持部15に固定されるコネクタ91の構造について説明する。
【0099】
図10に示されるように、電線9の端部のコネクタ91には、クランプなどの他の部材と連結される連結部92が形成されている。連結部92は、連結される相手側部材の一部が嵌り込む隙間を形成する平行な一対のガイドレール部921と、一対のガイドレール部921に架け渡された架設部922とを有する。
【0100】
また、架設部922におけるコネクタ91の本体の底面に対向する面には、コネクタ91の本体側に向かって突出する突起部923が形成されている。
【0101】
一対のガイドレール部921は、コネクタ91の外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された一対の平行な凸部を形成している。また、架設部922は、一対のガイドレール部921の間においてコネクタ91の外表面に対して間隔を空けて形成された梁部を形成している。また、突起部923は、架設部922からコネクタ91の外表面に向かって突起して形成された凸部を形成している。
【0102】
図10に示されるコネクタ91は、自動車に搭載されるワイヤハーネスにおいて広く用いられている。一般的には、連結部92に対する相手側部材は、連結部92における一対のガイドレール部921が形成する隙間に嵌り込む嵌入片を有する。また、その嵌入片には、その嵌入片が一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられたときに、連結部92の突起部923が嵌り込む孔が形成されている。嵌入片が一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられることにより、連結部92と相手側部材とは、連結した状態で保持される。
【0103】
一方、
図9に示されるように、本実施形態におけるコネクタ支持部15には、一対の平行凹部151と、それら一対の平行凹部151の間の部分である中間板部152とが形成されている。
【0104】
コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、ベース部1における第一枠部13の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成する部分である。より具体的には、第一枠部13の外縁から内側へ直線状に延びて形成された底板部1511と、その底板部1511の両側方において底板部1511に連なって形成された2つの側壁部1512とにより構成されている。側壁部1512は、底板部1511の両側方において底板部1511から起立する段差を形成している。一対の平行凹部151が形成する一対の溝には、コネクタ91の連結部92における一対のガイドレール部921が嵌め入れられる。
【0105】
また、コネクタ支持部15において、中間板部152は、一対の平行凹部151の間の板状の部分であり、コネクタ91の本端部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入される部分である。本実施形態においては、中間板部152は、平板状である。
【0106】
また、中間板部152には、中間板部152がコネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入されたときに、架設部922に形成された突起部923が嵌り込む孔153が形成されている。
【0107】
図11に示されるように、コネクタ91がコネクタ支持部15に固定された状態において、コネクタ91の連結部92における一対のガイドレール部921は、コネクタ支持部15における一対の平行凹部151に嵌め入れられている。さらに、コネクタ支持部15の中間板部152は、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入されており、連結部92の架設部922に形成された突起部923が、中間板部152に形成された孔153に嵌り込んでいる。
【0108】
コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、一対の平行凹部151の溝の長手方向に対して直交する方向におけるコネクタ91の動きを制限する。また、中間板部152は、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入されることにより、一対の平行凹部151の溝の深さ方向におけるコネクタ91の動きを制限する。さらに、中間板部152における孔153の縁部は、一対の平行凹部151の溝の長手方向におけるコネクタ91の動きを制限する。
【0109】
また、本実施形態においては、中間板部152の両側における一対の平行凹部151各々との境界部分に、内側へ切れ込んだ切れ込み部154が形成されている。これにより、中間板部152における第一枠部13の外縁側の端部は、片持ち梁状に張り出した庇部1521を形成している。
【0110】
図10に示されるコネクタ91の連結部92においては、一対のガイドレール部921各々と架設部922との間に、一対の平行凹部151の側壁部1512の一部が入り込む隙間924が形成されている。この場合、コネクタ支持部15において、切れ込み部154が形成されていることは必須ではない。
【0111】
本実施形態においては、中間板部152が、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間により深く挿入されるように、中間板部152の両側に切れ込み部154が形成されている。これにより、中間板部152が、架設部922に対してより安定した状態で引っ掛かり、コネクタ91がコネクタ支持部15から外れにくくなる。
【0112】
しかしながら、コネクタ91の連結部92に隙間924が形成されていない場合、コネクタ支持部15において、切れ込み部154が形成されていることが必要である。これにより、中間板部152をコネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入することが可能となる。
【0113】
また、
図10に示されるコネクタ91の連結部92においては、中間板部152よりも内側において一対の平行凹部151が形成する一対の溝を繋ぐ溝を形成する部分である内側凹部155がさらに形成されている。この内側凹部155は、凹凸をなす板状の部分であるコネクタ支持部15の剛性を高める効果、特に、コネクタ支持部15をねじるように作用する外力に対する剛性を高める効果を発揮する。
【0114】
以上に示したように、コネクタ91は、コネクタ支持部15によって支持され、第一枠部13の一部に固定される。即ち、コネクタ支持部15は、電線9の端部に取り付けられたコネクタ91の外表面に形成された連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。なお、コネクタ支持部15は、第二電線固定部の一例である。
【0115】
<他の実施例に係るコネクタ支持部>
次に、
図12を参照しつつ、配線具10に適用可能な他の実施例に係るコネクタ支持部18について説明する。
図12は、コネクタ支持部18及びコネクタ91の斜視図である。
【0116】
図12に示されるように、コネクタ支持部18は、コネクタ91の連結部92における一対のガイドレール部921の隙間に嵌り込む嵌入片181を有する。嵌入片181は、第一枠部13の縁部に形成された一対の切り込みの間の部分である。また、嵌入片181には、嵌入片181が一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられたときに、連結部92の突起部923が嵌り込む孔182が形成されている。
【0117】
嵌入片181が連結部92における一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられることにより、コネクタ91は、コネクタ支持部18に固定される。即ち、コネクタ支持部18は、電線9の端部に取り付けられたコネクタ91に形成された連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。なお、コネクタ支持部18は、第二電線固定部の一例である。
図12に示されるようなコネクタ支持部18が、配線具10に適用されてもよい。
【0118】
<効果>
ワイヤハーネス100において、電線9は、配線具10を構成するベース部1及びカバー部2の間に挟み込まれる。さらに、板状のベース部1において内側の配線部11から外側の第一枠部13に亘って配置された電線9は、第一枠部13における予め定められた位置に設けられた電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定される。
【0119】
従って、配線具10が取り付けられた電線9において、電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定された部分は一定の位置に保持され、さらに、電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定された部分から外側に位置する部分の長さは一定の長さで保持される。即ち、電線9の端部が接続相手に対して過不足なく届くように、電線9の形状が配線具10によって保持される。また、電線9は、ベース部1及びカバー部2によって保護される。
【0120】
また、配線具10において、配線部11及びその両側で対をなす背高段差部121は、溝状の配線空間90を形成しており、対をなす背高段差部121の開口の幅は、配線部11の幅よりも広い。そのため、電線9を配線部11に配線する作業において、電線9は、配線部11から浮き上がって位置が多少ずれた場合でも、対をなす背高段差部121の間の領域内に収まりやすい。
【0121】
さらに、配線具10において、電線9が配線部11から浮き上がっていても、カバー部2をベース部1に重ねて押し付けるだけで、電線9は配線部11と対向壁部21との間の配線空間90に収容される。即ち、配線部11から浮き上がる電線9を配線部11に対して押さえ込みつつ電線9を配線するという煩雑な作業は不要である。
【0122】
また、配線具10において、ベース部1における対をなす背高段差部121各々と第一枠部13との境界部分122が湾曲面を形成している。そのため、その境界部分122まで浮き上がった電線9は、カバー部2で押されたときに湾曲面を滑って対をなす背高段差部121の間の配線空間90へ収容されやすい。即ち、配線具10を電線9に適切に取り付けることがより容易となる。
【0123】
なお、対をなす背高段差部121各々と第一枠部13との境界部分が屈曲した面を形成している場合、その境界部分まで浮き上がった電線9が、屈曲した面の角部に引っ掛かり、配線空間90へ円滑に収容されない事態が生じる恐れがある。
【0124】
また、配線具において、背高段差部121を含む第一段差部12は、凹凸をなす板状のベース部1の剛性を高める補強部として機能する。同様に、第二段差部22は、凹凸をなす板状のカバー部2の剛性を高める補強部として機能する。そのため、ベース部1及びカバー部2は、省スペース化及び軽量化のために厚みが比較的小さく形成されても高い剛性を確保することができる。
【0125】
以上に示したことから、電線9を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具10を備えるワイヤハーネス100が採用されることにより、配線具10を電線9に取り付けるための工数を簡素化でき、さらに、ワイヤハーネス100を省スペース化及び軽量化できる。
【0126】
また、配線具10において、ベース部1及びカバー部2が、曲げ変形可能な接続部3と連なって一体に形成されている。そのため、部品点数が少なくなり、配線具10を電線9に取り付けるための工数がより簡素化される。
【0127】
また、配線具10において、配線部11の両側で対をなす背高段差部121は、末広がりに傾斜して起立し、対をなす背高段差部121の開口の幅が広く形成されている。そのため、
図6に示されるように、カバー部2が、接続部3を中心として回動し、カバー部2における対向壁部21が、円弧状の軌跡を経て配線空間90へ移動する途中において、対向壁部21は、背高段差部121に引っ掛かることなく円滑に配線空間90へ到達する。
【0128】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られた部材であるため、製造工数及び製造コストが低減される。
【0129】
また、配線具10において、電線結束部14の貫通孔142に通された結束ベルト8は、ベース部1の第一枠部13から外れないため、結束ベルト8がベース部1の第一枠部13から外れて電線9の結束が緩むことが防止される。また、電線9における結束ベルト8で固定された部分から末端側の部分の長さが、予め定められた長さで保持される。
【0130】
また、配線具10において、コネクタ支持部15,18は、電線9の端部のコネクタ91における連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。これにより、電線9の端部のコネクタ91は、ごく簡易な作業により第一枠部13における予め定められた位置に固定される。
【0131】
<第2実施形態>
次に、
図13から
図15を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る配線具10A及びそれを備えた第2実施形態に係るワイヤハーネス100Aについて説明する。配線具10Aは、
図1から
図11に示された配線具10と比較して、一部の構成要素の形状が若干異なる構成を有している。
図13から
図15において、
図1から
図11に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、配線具10Aにおける配線具10と異なる点についてのみ説明する。
【0132】
配線具10Aは、ベース部1Aとカバー部2と接続部3とにより構成されている。配線具10Aのカバー部2及び接続部3は、配線具10のカバー部2及び接続部3と同じ構造を有する。
【0133】
図13は、配線具10Aにおけるベース部1Aの一部の斜視図である。また、
図14は、配線具10Aと電線9とを備えるワイヤハーネス100Aの一部の断面図である。また、
図15は、配線空間90に電線9が収容される前の配線具10Aの一部の断面図である。
図14及び
図15の断面図は、
図13に示されるE−E平面における断面図である。なお、
図14及び
図15は、
図5及び
図6に対応する図である。
【0134】
配線具10Aのベース部1Aも、基本的には配線具10のベース部1と同じ構造を有する。
図13に示されるように、ベース部1Aには、配線部11の両側で対をなす背高段差部121が形成されている。
図13に示される例では、背高段差部121Aと背高段差部121Bとが配線部11の両側で対向して対をなし、背高段差部121Cと背高段差部121Dとが配線部11の両側で対向して対をなし、背高段差部121Aと背高段差部121Eとが配線部11の両側で対向して対をなしている。
【0135】
ベース部1Aにおいて、配線部11の両側で対をなす背高段差部121各々とその外側の第一枠部13との境界部分122Aは、不図示のカバー部2側に凸の曲面を形成している。
図13に示される例では、背高段差部121と第一枠部13との境界部分122Aは、カバー部2側に凸の湾曲面を形成するとともに、直線状の稜線を形成している。
【0136】
対をなす背高段差部121各々と第一枠部13との境界部分122Aが、凸の曲面を形成していれば、その境界部分122Aまで浮き上がった電線9は、カバー部2で押されたときに、カバー部2との間に挟み込まれることなく配線空間90へ収容されやすい。そのため、配線具10Aを電線9に適切に取り付けることがより容易となる。
【0137】
<第3実施形態>
次に、
図16を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る配線具10Bについて説明する。配線具10Bは、
図13から
図15に示される配線具10Aと比較して、一部の構成要素の形状が若干異なる構成を有している。
図16において、
図1から
図11及び
図13から
図15に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、配線具10Bにおける配線具10Aと異なる点についてのみ説明する。
【0138】
配線具10Bは、ベース部1Bとカバー部2と接続部3とにより構成されている。配線具10Bのカバー部2及び接続部3は、配線具10のカバー部2及び接続部3と同じ構造を有する。
図16は、配線具10Bにおけるベース部1Bの一部の斜視図である。
【0139】
配線具10Bのベース部1Bも、基本的には配線具10Aのベース部1Aと同じ構造を有する。
図16に示されるように、ベース部1Bには、配線部11の両側で対をなす背高段差部121が形成されている。
図16に示される例では、背高段差部121Aと背高段差部121Bとが配線部11の両側で対向して対をなし、背高段差部121Cと背高段差部121Dとが配線部11の両側で対向して対をなし、背高段差部121Aと背高段差部121Eとが配線部11の両側で対向して対をなしている。
【0140】
ベース部1Bにおいて、背高段差部121B及び背高段差部121Cとこれらに連なる第一枠部13の一部とが、錐体状に形成されている。
図16に示される例では、背高段差部121B及び背高段差部121Cとこれらに連なる第一枠部13の一部とが、四角錐状に形成されている。なお、背高段差部121B及び背高段差部121Cとこれらに連なる第一枠部13の一部とが、断面が四角形以外の多角形を形成する四角錐状以外の多角錐状、円錐状又は楕円錐状に形成されることも考えられる。
【0141】
図16に示されるように、背高段差部121から第一枠部13に亘る部分が錐体状に形成されていれば、背高段差部121と第一枠部13との境界部分122Aが凸の曲面を形成している場合と同様に、浮き上がった電線9は、カバー部2で押されたときに、第一枠部13とカバー部2との間に挟み込まれることなく配線空間90へ収容されやすい。このような錐体状の背高段差部121は、
図16に示されるように配線部11が分岐する部分への適用に適している。
【0142】
<その他>
配線具10,10A,10Bにおいて、対をなす背高段差部121が、末広がりに傾斜した平面を形成する場合の他、背高段差部121が、末広がりに傾斜した湾曲面を形成することも考えられる。
【0143】
また、以上に示された実施形態においては、ベース部1とカバー部2とは、接続部3を介して繋がって一体に形成されている。しかしながら、ベース部1とカバー部2とが別部材で構成されることも考えられる。
【0144】
また、配線具10のベース部1において、凸部111が形成されていない平坦な配線部11が採用されることも考えられる。また、ベース部1の配線部11に、格子状又は網目状に連なる凸部又は溝が形成されることも考えられる。そのような凸部又は溝も、配線部11の剛性を高める効果を奏する。
【0145】
また、ベース部1及びカバー部2が、樹脂の射出成形により得られる部材であることも考えられる。但し、配線具10は、上下方向(一次元方向)においてのみ凹凸をなす板状に成形された部材であり、板状の樹脂部材に対する真空成形によって容易に得られる部材である。従って、製造工数及び製造コストの面において、配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られる部材であることが望ましい。