特許第5919773号(P5919773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5919773-トロイダル型無段変速機 図000002
  • 特許5919773-トロイダル型無段変速機 図000003
  • 特許5919773-トロイダル型無段変速機 図000004
  • 特許5919773-トロイダル型無段変速機 図000005
  • 特許5919773-トロイダル型無段変速機 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919773
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】トロイダル型無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 37/02 20060101AFI20160428BHJP
   F16H 15/38 20060101ALI20160428BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
   F16H37/02 A
   F16H15/38
   F16H55/17 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-263636(P2011-263636)
(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公開番号】特開2013-117237(P2013-117237A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】大石 保徳
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−002489(JP,A)
【文献】 特開2011−112092(JP,A)
【文献】 特開2002−081519(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0028723(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0234823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 37/02
F16H 15/38
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力を受ける入力軸に結合され且つ入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクと、前記出力側ディスクと一体で回転する第1の出力歯車と、前記第1の出力歯車と噛合し、回転力を伝達する伝達軸と一体回転する第2の出力歯車とを備えるトロイダル型無段変速機において、
前記入力軸の軸方向から見て、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの両方と前記パワーローラとの接触点と、前記第1の出力歯車と前記第2の出力歯車との噛合部と、前記入力軸の中心軸とが1つの平面内に位置して配置されることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
ダブルキャビティ型であることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記出力歯車と前記出力側ディスクとが別体であることを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記出力歯車と前記出力側ディスクとが一体であることを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機は、図3および図4に示すように構成されている。図3に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車群4を構成する第1の出力歯車4Aが回転自在に支持されている。この第1の出力歯車4Aの中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
【0003】
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車群4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
【0004】
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図4参照)が回転自在に挟持されている。
【0005】
図3中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図3の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
【0006】
図4は、図3のA−A線に沿う断面図である。図4に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図4においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、パワーローラ11を支持する支持板部16の長手方向(図4の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
【0007】
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸(支持軸)23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、ラジアルニードル軸受99を介して各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
【0008】
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図4の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図3の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
【0009】
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図4で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0010】
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
【0012】
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図4の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
【0013】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車群4より取り出される。
【0014】
入力軸1と出力歯車群4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図4の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
【0015】
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車群4との間の変速比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車群4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0016】
ところで、上記構成のトロイダル型無段変速機において、出力歯車群4を構成する各出力歯車4A,4Bは、一般に、出力側ディスク3と一体的に回転するはすば歯車となっている。この理由は、トロイダル型無段変速機の運転時に、出力歯車4A,4Bの噛合部で発生する騒音(噛み合い音)を低減させるためである。このように出力歯車4A,4Bをはすば歯車としたことに伴って、トロイダル型無段変速機の運転時に、出力歯車4A,4Bの噛合部にスラスト力が発生する。そして、これらの第1および第2の出力歯車4A,4B(図3参照)同士の噛合部で発生したスラスト力(ギア反力)は、第1の出力歯車4Aのフランジ4aと第2の出力歯車4Bを固設した伝達軸98とを軸方向反対側に押圧する。この場合、第1の出力歯車4Aのみしか設けていないフランジ4aに関しては、前記スラスト力を相殺することができない。
【0017】
このため、従来は、ケーシング50に対してフランジ4aを回転自在に支持するための転がり軸受107として、ラジアル荷重の他スラスト荷重も支承できるものを使用していた。より具体的には、転がり軸受107としてアンギュラ型の玉軸受など(例えば、組み合わせアンギュラ軸受の構造や、スラスト・ラジアル軸受を組み合わせた構造)を使用し、第1の出力歯車4Aからフランジ4aに加わるスラスト力(このスラスト力は、出力側ディスク3を傾けようとするモーメントを発生させる)を支承自在としていた。
【0018】
ところが、フランジ4aに発生するスラスト力をそのままにして、転がり軸受107により、このスラスト力を支承する構造の場合には、トロイダル型無段変速機の運転時に転がり軸受107部分で発生する動トルク損失が大きくなる。このため、トロイダル型無段変速機の伝達効率が低下し、このトロイダル型無段変速機を組み込んだ自動車の動力性能がその分悪化する。また、転がり軸受107に余分なスラスト力が加わることは、この転がり軸受107の耐久性確保の面からも好ましくない。
【0019】
また、こうした問題に関連して、例えば特許文献1では、出力側ディスク3と一体回転する出力歯車4A,4Bをやまば歯車もしくは互いに傾斜方向が逆である一対のはすば歯車とすることにより、第1および第2の両出力歯車4A,4Bの噛合部分で発生するスラスト力を打ち消すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平9−89063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献1の構成では、別体のはすば歯車を一体化して使用する場合、部品点数が増加し、あるいは、組立工数が増加するという問題が生じる。また、前記一体化により、平歯車等に対して加工コストが大幅に増加するだけでなく、ねじれ方向の切替部近傍で正確な歯が切れないため有効歯幅が小さいことによる総歯幅の増加が懸念される。
【0022】
いずれにしても、フランジ4aに発生するスラスト力をそのままにして、転がり軸受107により、このスラスト力を支承することは、前述したように、トロイダル型無段変速機の運転時に転がり軸受107部分で発生する動トルク損失が大きくなり、それにより、トロイダル型無段変速機の伝達効率が低下し、このトロイダル型無段変速機を組み込んだ自動車の動力性能がその分悪化する。また、転がり軸受107に余分なスラスト力が加わることは、この転がり軸受107の耐久性確保の面からも好ましくない。更に、近年、軽量化やスペースの制限により、支持軸受の小型化が求められており、また、静粛性の観点から、はすば歯車のねじれ角を大きくとる傾向により、スラスト方向のギア反力が大きくなる懸念がある。そのため、現状では、軸受107に作用するスラスト力を軽減できる画期的な他の構造が求められる。
【0023】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、出力歯車の噛合部分で発生するスラスト力(ギア反力)が軸受に作用する度合いを減らして(軸受の負担を軽減して)、軸受の小型化を図ることができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を達成するために、本発明は、回転力を受ける入力軸に結合され且つ入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクと、前記出力側ディスクと一体で回転する第1の出力歯車と、前記第1の出力歯車と噛合し、回転力を伝達する伝達軸と一体回転する第2の出力歯車とを備えるトロイダル型無段変速機において、前記入力軸の軸方向から見て、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの両方と前記パワーローラとの接触点と、前記第1の出力歯車と前記第2の出力歯車との噛合部と、前記入力軸の中心軸とが1つの平面内に位置して配置されることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、入力軸の軸方向から見て、入力側ディスクおよび出力側ディスクの両方とパワーローラとの接触点と、第1の出力歯車と第2の出力歯車との噛合部と、入力軸の中心軸とが1つの平面内に位置して配置されるので、第1の出力歯車と第2の出力歯車との噛合部分で発生するスラスト力(ギア反力)の一部(スラスト力によるモーメントの一部)をディスクとパワーローラとの接触点で受けることができ、したがって出力側ディスクおよび出力歯車を回転可能に支持する軸受に作用するスラスト力を軽減できる。すなわち、前記軸受の負担を軽減でき、その結果、前記軸受の小型化を図ることができる。また、このような構成では、スラスト力がディスクとパワーローラとの接触点に対して垂直に作用するので、パワーローラが現状の位置から押し出されることなく、パワーローラの姿勢を安定的に保つことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のトロイダル型無段変速機によれば、入力軸の軸方向から見て、入力側ディスクおよび出力側ディスクの両方とパワーローラとの接触点と、第1の出力歯車と第2の出力歯車との噛合部と、入力軸の中心軸とを1つの平面内に配置して、前記接触点の位置と前記噛合部の位置とを規定したため、出力歯車の噛合部分で発生するスラスト力(ギア反力)が軸受に作用する度合いを減らして(軸受の負担を軽減して)、軸受の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の入力軸の軸方向から見た要部概略図であって、入力軸の軸方向に対して垂直な面内での各ポイント(出力歯車同士の噛合部、パワーローラとディスクとの接触点、および入力軸の中心軸線)の平面的な配置関係を示す図である。
図2】出力歯車と出力側ディスクとが一体を成す構造における図1の構成の適用を示す本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部断面図である。
図3】従来から知られているハーフトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
図4図3のA−A線に沿う断面図である。
図5】出力歯車同士の噛合部、パワーローラとディスクとの接触点、および入力軸の中心軸線の従来の配置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の特徴は、出力歯車の噛合部分で発生するスラスト力(ギア反力)が軸受に作用する度合いを減らす(軸受の負担を軽減する)ための構成にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図3および図4と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の入力軸1の中心軸O方向から見た要部概略図であって、入力軸1の中心軸O方向に対して垂直な面200内での各要素の平面的な配置関係を示す図である。図示のように、本実施形態に係るトロイダル型無段変速機では、入力軸1の中心軸O方向から見て、ディスク2,3とパワーローラ11との接触点P1と、第1の出力歯車4A(出力側ディスク3と一体回転:図1では、出力側ディスク3の外周に第1の出力歯車4Aが形成されるように示されている)と第2の出力歯車4Bとの噛合部P2と、入力軸1の中心軸Oとがそれぞれ、入力軸1と垂直な1つの平面200内に位置して配置されている。
【0030】
したがって、このような構成によれば、第1の出力歯車4Aと第2の出力歯車4Bとの噛合部P2で発生するスラスト力(ギア反力)Fの一部をディスク3(2)とパワーローラ11との接触点P1で受けることができ、したがって、出力側ディスク3および出力歯車4Aを回転可能に支持する軸受(例えば、前述した軸受107・・・図3参照)に作用するスラスト力を軽減でき、すなわち、軸受の負担を軽減でき、その結果、前記軸受の小型化を図ることができる。これに対し、図5に示される従来のように、ディスク2,3とパワーローラ11との接触点P1と、第1の出力歯車4Aと第2の出力歯車4Bとの噛合部P2と、入力軸1の中心軸Oとがそれぞれ入力軸1と垂直な1つの平面内に位置していないと、軸受107に大きなスラスト力Fが作用し、軸受107を強化して大型化しなければならなくなる。
【0031】
また、図1に示される本実施形態の構成では、スラスト力Fがディスク3とパワーローラ11との接触点P1に対して垂直に作用するため、パワーローラ11が現状の位置から押し出されることなく、パワーローラ11の姿勢を安定的に保つことができる。
【0032】
なお、図1に示される本発明の配置構成は、シングルキャビティ型に限らず、ダブルキャビティ型にも適用でき、その場合、図3に示されるように第1の出力歯車4Aと出力側ディスク3とが別体であってもよいが、図2に示されるように出力歯車4Aと出力側ディスク3とが一体であっても構わない。なお、図2においては、2つの出力側ディスク3,3も一体に形成されている。図2に示されるように、出力歯車4Aと出力側ディスク3とが一体の構造において、ディスク2,3とパワーローラ11との接触点P1と、第1の出力歯車4Aと第2の出力歯車4Bとの噛合部P2と、入力軸1の中心軸Oとをそれぞれ、入力軸1と垂直な1つの平面200内に位置させれば、前述した作用効果を得ることができる。
【0033】
なお、図2に示すトロイダル型無段変速機では、支持板部16がパワーローラ側に向かって凸になる円筒状凸面を有する支持梁部として形成されるとともに、この円筒状凸面に係合する円筒面状の凹部が外輪28の外側面に形成されており、これにより外輪28はパワーローラ11とともにトラニオン15に対して入力軸1の中心軸O方向に関する揺動変位が可能となっている。この外輪28は支持軸23と一体に形成されており、支持軸23はパワーローラ11の回転中心部を貫通してパワーローラ11を回転可能に支持している。この支持軸23は変位軸ではなく直線状の軸として形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機の他、トラニオンが無いフルトロイダル型無段変速機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 入力軸
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
4A 第1の出力歯車
4B 第2の出力歯車
11 パワーローラ
98 伝達軸
O 入力軸の中心軸
P1 接触点
P2 噛合部
図1
図2
図3
図4
図5