(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、線状低密度ポリエチレン(A)、帯電防止剤(B)及び酸化防止剤(C)を含有するポリエチレン樹脂組成物であって、帯電防止剤(B)は、エステル化合物(b1)、アミン化合物(b2)及び酸化合物(b3)の三成分からなり、酸化防止剤(C)は、同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する化合物からなり、前記ポリエチレン樹脂組成物を基準として、帯電防止剤(B)を0.05〜0.30重量%、酸化防止剤(C)を0.03〜0.25重量%含有することを特徴とする帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物およびそれよりなる帯電防止フィルムである。
以下、構成成分などの各要件について、詳細に説明する。
【0019】
I.帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物
1.線状低密度ポリエチレン(A)
本発明の帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物は、線状低密度ポリエチレン(A)(以下、「成分(A)」ともいう。)を含有することが必要である。
本明細書において、「線状低密度ポリエチレン」とは、密度が0.940g/cm
3以下の、いわゆるポリエチレンの主鎖が直鎖状であるエチレンの単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体を意味する。
本発明において、成分(A)としては、線状低密度ポリエチレンであれば使用することができるが、特に、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0020】
成分(A)の密度は、好ましくは0.860〜0.940g/cm
3、より好ましくは0.880〜0.940g/cm
3、さらに好ましくは、0.910〜0.936g/cm
3、特に好ましくは0.915〜0.931g/cm
3である。密度が0.860g/cm
3未満であるとフィルムの腰が十分ではないおそれがあり、0.940g/cm
3より大きいと柔軟性が失われるおそれがある。
なお、本明細書において、上記密度はJIS K7112に準じて、試験温度23℃で測定したものである。
【0021】
成分(A)のメルトフローレイト(MFR、190℃、21.18N荷重)は、好ましくは0.01〜50g/10分、好ましくは0.1〜30g/10分、より好ましくは1.0〜10g/10分の範囲である。該MFRが0.01g/10分未満であると加工性が悪化するおそれがあり、50g/10分より高いとと耐衝撃性や引張強度が低下する恐れが生じる。
なお、本明細書において、上記MFRはJIS K6922−2に準じて、条件D(温度190℃、荷重21.18N)で測定したものである。
【0022】
成分(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1〜8の範囲、より好ましくは2〜5の範囲である。分子量分布が1未満であると成形加工性に劣るおそれがあり、8より高いと耐衝撃性が劣り、透明性も不十分となるおそれがある。
なお、本明細書において、上記分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られたものであり、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行うものである。
【0023】
成分(A)がエチレン−α−オレフィン共重合体である場合、エチレン−α−オレフィン共重合体のコモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数4〜12、さらに好ましくは炭素数4〜8のα−オレフィンである。
具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。かかるエチレン・α−オレフィン共重合体の中でも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等が特に好ましい。
コモノマーとして用いられる上記α−オレフィンは、1種類に限らず、ターポリマーのように2種類以上用いた多元系共重合体でもよい。具体例としては、エチレン・プロピレン・1−ブテン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン3元共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンから誘導される構成単位を主成分とするものが好ましく、エチレン含有量が好ましくは50〜99重量%、より好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは70〜95重量%の範囲から選択される。従って、α−オレフィン含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲から選択される。
【0024】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、製造方法によって特に限定されず、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒(シングルサイト系触媒)等の触媒を用いて製造される。特に本発明は、従来LLDPEと称される、チーグラー系触媒を用いた線状低密度ポリエチレンを用いると、本発明の(B)成分と(C)成分の併用効果が顕著に現れる傾向があるため好ましい。
一方、メタロセン系触媒を使用する場合は、単一の反応で得られる重合体として結晶性分布が狭いものが得られるので、結晶性の異なる種々のエチレン・α−オレフィン共重合体のブレンドにより、上述した諸物性値を満足する組成物を得やすい利点がある。各成分に相当するエチレン−α−オレフィン共重合体は、数種類をブレンドしてもよく、多段重合で製造してもよい。
ここで、本明細書において、メタロセン系触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒を意味し、本発明においては公知のメタロセン系触媒はいずれも使用できる。
【0025】
成分(A)の重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、上記の触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm
2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合法、気相流動床法等が挙げられる。
係るエチレン−α−オレフィン共重合体としては、一般に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)又はメタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポン・ダウ社製「アフィニティー(登録商標)」、日本ポリエチレン社製「ノバテック(登録商標)LL」「カーネル(登録商標)」「ハーモレックス(登録商標)」、三井化学社製「エボリュー(登録商標)」、エクソン・モービル社製「エクシード(登録商標)」等が挙げられる。
【0026】
2.帯電防止剤(B)
本発明の帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物は、帯電防止剤(B)(以下、「成分(B)」ともいう。)を含有することが必要である。さらに、帯電防止剤(B)は、エステル化合物(b1)、アミン化合物(b2)及び酸化合物(b3)の三成分からなることが必要である。
【0027】
(1)エステル化合物(b1)
本発明において、帯電防止剤(B)に含有されるエステル化合物(b1)としては、通常帯電防止剤に使用されるものであれば使用することができるが、なかでも多価アルコールの脂肪酸エステルが好ましい。
前記多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられ、中でもグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の炭素数20以下、好適には10以下の多価アルコールに基づくものが好ましく、特にグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。
【0028】
これらのグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸との反応によって得ることができる。グリセリンと反応させる飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、ガドレン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、セラコレイン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸が挙げられる。グリセリンとの反応においては、1種又は2種以上の脂肪酸を用いることができる。
上記脂肪酸の炭素数は、ブロッキング性、帯電防止性等を勘案すると、8〜20であることが好ましく、12〜18であることがより好ましく、さらに好ましくは炭素数16〜18の脂肪酸である。
また、グリセリン脂肪酸エステルのエステル化度は、5〜50%が好ましく、より好ましくは15〜48%であり、さらに好ましくは25〜44%である。エステル化度が50%を超えると得られたフィルム同士が滑り過ぎとなるおそれがある。
好ましいグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、グリセリンモノステアレート及びグリセリンジステアレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート等、およびこれらの混合物が挙げられ、このなかでも特にグリセリンモノステアレートが好ましい。
【0029】
エステル化合物(b1)は、帯電防止剤(B)全体を基準として、10〜90重量%含有されることが好ましい。10重量%未満であると、帯電防止性が劣るおそれがあり、90重量%より多いと、ブロッキングするおそれがある。
帯電防止剤(B)がエステル化合物(b1)を含有することにより、たとえば、フィルムの滑り性が向上する、あるいはブロッキング性や粘着感が低減される上に、本発明の他の成分と併用されることにより、優れた帯電防止性能と耐変色性能とを兼ね備えるものとなると考えられる。
【0030】
(2)アミン化合物(b2)
本発明において、帯電防止剤(B)に含有されるアミン化合物(b2)としては、通常帯電防止剤に使用されるものであれば使用することができるが、なかでもポリオールアルキルアミンおよび/またはポリオキシアルキルアミンが好ましい。
前記ポリオールアルキルアミンおよび/またはポリオキシアルキルアミンとしては、例えば、下記一般式(3)で示されるアミン化合物が好ましく挙げられる。
R
1−N[(CH
2CH
2O)
nR
2]
2 (3)
(但し、R
1は炭素数5〜22の脂肪族炭化水素基を示し、n、mは1〜3の整数を示し、R
2はHまたはCOR
3(R
3は炭素数5〜22の脂肪族炭化水素基を示す。)を示す。)
【0031】
上記アミン化合物のR
1は、炭素数5〜22の脂肪族炭化水素基が用いられるが、より好ましくは炭素数12〜18のものである。炭素数が12未満の場合はフィルムがブロッキングし易くなるおそれがある。また、炭素数が18より大きい場合には、帯電防止性が低下するおそれがある。ここで、脂肪族炭化水素基としては、ラウリル基、ミリスチル基、バルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オレイル基等のアルケニル基、リノール基等のアルカジエニル基、リノレン基等のアルカトリエニル基、ステアロール基等のアルキニル基等が挙げられ、特にアルキル基が好適である。また、R
3は炭素数5〜22の脂肪族炭化水素基が用いられるが、上記と同様な理由で、炭素数12〜18のものが好適であり、さらにアルキル基が好適である。また、式(3)におけるnは1〜3のものが用いられるが、n=1のものが優れる傾向がある。
【0032】
アミン化合物(b2)としては、具体的には、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタンールアミン、リノールジエタノールアミン、リノレンジエタノールアミン、ステアロールジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンジステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノミリステート、ステアリルジエタノールアミンモノパルミテート、パルミチルジエタノールアミンモノパルミテート等、およびこれらの混合物が挙げられる。このなかでも特にステアリルジエタノールアミンが好ましい。
【0033】
アミン化合物(b2)は、帯電防止剤(B)全体を基準として、5〜45重量%含有されることが好ましい。5重量%未満であると、帯電防止性が劣るおそれがあり、45重量%より多いと、ブロッキングするおそれがある。
帯電防止剤(B)がアミン化合物(b2)を含有することにより、界面活性剤成分としてアミン化合物(b2)が作用し、優れた帯電防止性能と耐変色性能とを兼ね備えるものとなると考えられる。
【0034】
(3)酸化合物(b3)
本発明において、帯電防止剤(B)に含有される酸化合物(b3)としては、通常帯電防止剤に使用されるものであれば使用することができるが、なかでも、脂肪酸が好ましい。
【0035】
前記脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、ガドレン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、セラコレイン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸が挙げられる。なかでも、ステアリン酸が好ましく挙げられる。
【0036】
酸化合物(b3)は、帯電防止剤(B)全体を基準として、5〜45重量%含有されることが好ましい。5重量%未満であると、帯電防止性が劣るおそれがあり、45重量%より多いと、粉としてブリードアウトするおそれがある。
帯電防止剤(B)が酸化合物(b3)を含有することにより、フィルム表面で塩を形成するので、優れた帯電防止性能が得られるものと考えられる。
【0037】
(4)帯電防止剤(B)の製造、含有量
本発明に用いる帯電防止剤(B)は、上述したエステル化合物(b1)、アミン化合物(b2)及び酸化合物(b3)の三成分を含有し、特に、それぞれを特定の割合で配合することにより本発明の効果をより向上させることができる。
上記三成分の配合の方法としては、特に制限はなく通常行われる方法をとることができる。また、上記三成分を配合して製造した帯電防止剤(B)の形態も特に制限はなく、様々な形態に加工しても、性能低下が起こらない傾向があるため、所望により通常用いられる様々な形態を取ることができる。例えばフレーク形状、ペレット形状、樹脂に練り込んだマスターペレットとして加工することができる。
【0038】
成分(a)、成分(b)及び成分(c)が配合されたものである帯電防止剤(B)は、ポリエチレン樹脂組成物全体を基準として、0.05〜0.30重量%含有されることが必要である。好ましくは、0.07〜0.25重量%含有される。0.05重量%より少ないと帯電防止性能が劣るおそれがある。一方、0.30重量%より多いとフィルム表面に粉としてブリードアウトし、樹脂性能及びフィルム性能が劣るおそれがある。
【0039】
3.酸化防止剤(C)
本発明の帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物は、酸化防止剤(C)(以下、「成分(C)」ともいう。)を含有することが必要である。
本発明の酸化防止剤(C)としては、同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する化合物からなるものであることが必要である。
【0040】
同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する化合物としては、下記一般式(I)又は一般式(II)で示される化合物などが例示されるが、本発明の効果は具体例に示された化合物に限定されるものではない。
本明細書における「亜リン酸エステル構造」とは、亜リン酸:P(OH)
3の水素原子が炭化水素基に置換された構造のことをいう。また、本明細書における「ヒンダードフェノール構造」とは、フェノールの2,6位の水素原子が炭化水素基に置換された構造のことをいう。
【0043】
式(I)および式(II)中、R
1、R
2、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基を表す。ここで、炭素原子数1〜8のアルキル基の代表例としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、iso−オクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0044】
なかでも、R
1、R
4は、t−ブチル、t−ペンチル、t−オクチルなどのt−アルキル基であることが好ましい。R
2は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−ペンチルなどの炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、とりわけメチル、t−ブチル、t−ペンチルであることが好ましい。R5は、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−ペンチルなどの炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
【0045】
置換基R
3は、水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表すが、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば前記と同様のアルキル基が挙げられる。好ましくは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、より好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0046】
Xは単なる結合、もしくは−CHR
6−基(R
6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基を示す)を表す。ここで、Xは、単なる結合、メチレン基またはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、t−ブチルなどが置換したメチレン基であることが好ましく、特に単なる結合であることが好ましい。
【0047】
A
1、A
2は炭素数2〜8のアルキレン基を表す。また、A
3は単なる結合あるいは炭素数2〜8のアルキレン基を表す。アルキレン基の代表例としては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレンなどが挙げられる。
【0048】
一般式(I)で表わされる化合物の一例としては、6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(R
1、R
2、R
4:t−ブチル基、R
3:水素、R
5:メチル基、X:単なる結合、A
1:炭素数3のアルキレン基)が挙げられる。また、一般式(II)で表わされる化合物の一例としては6−{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エトキシ}−2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(R
1、R
2、R
4:t−ブチル基、R
3:水素、R
5:メチル基、X:単なる結合、A
2、A
3:炭素数2のアルキレン基)が挙げられる。
一般式(I)で示される化合物は、市販のものとしては、住友化学株式会社製の「スミライザー(登録商標)GP」が挙げられる。
酸化防止剤(C)は、上記化合物を単独でまたは二種類以上を併用して用いることができる。
【0049】
本発明における酸化防止剤(C)の配合量は、本発明のポリエチレン樹脂組成物全体を基準として、0.03〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.20重量%である。成分(C)の配合量が0.05重量%未満では酸化防止性能が不良となり成形時に樹脂が劣化するおそれがある。一方、成分(C)の配合量が0.25より多いと、フィルム表面に粉としてブリードアウトし、樹脂性能及びフィルム性能が劣るおそれがある。
【0050】
4.その他の成分
本発明の帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)以外に、必要に応じて、通常使用される中和剤、耐候剤、紫外線吸収剤、顔料、安定剤、その他の帯電防止剤、その他の酸化防止剤、防曇剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、防黴剤、結晶核剤、相溶剤、アンチブロッキング剤、発泡剤、無機電解質、フィラー、充填剤、香料等のその他の樹脂添加剤を配合することができる。
【0051】
5.帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物の製造
本発明の帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物は、通常行われる製造方法にて製造することができる。すなわち、本発明のポリエチレン樹脂組成物の成分を公知の方法でブレンドして製造することができる。具体的には、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合する方法、混合後さらに単軸押出機、多軸押出機等で溶融混練造粒する方法あるいはニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練造粒する方法を挙げることができる。また、必要に応じて、マスターバッチとして成形時に添加しても構わない。各成分及び添加剤の添加順序は、特に制限はない。
【0052】
II.帯電防止フィルム
本発明の帯電防止フィルムは、上記した本発明の帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物を成形してなるものである。該ポリエチレン樹脂組成物は、フィルム厚みが好ましくは20〜250μm、より好ましくは30〜200μmの場合に有効である。
成形方法としては、本発明のポリエチレン樹脂組成物は、通常の空冷インフレーション成形、空冷二段冷却インフレーション成形、水冷インフレーション成形、Tダイ成形等でフィルムに加工することができ、さらに、通常の方法により各用途、自動充填包装用フィルム等に加工することができる。
【0053】
III.用途
本発明の帯電防止フィルム用ポリエチレン樹脂組成物及びそれよりなる帯電防止フィルムは、優れた帯電防止性能と耐変色性能とを兼ね備えたものである。さらには、コロナ処理が施された後であっても、コロナ処理面の反対側の面である、内容物に接する面の帯電防止性能が劣ることがない。
したがって、自動充填包装用フィルム用途に好適であり、例えば、米袋、砂糖袋、重袋用などのフィルム用途に、好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下において、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例との対照において説明し、本発明の構成の要件の合理性と有意性を実証する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、各実施例及び比較例において用いた評価法、分析の各法および各成分は、以下の通りである。
【0055】
1.評価方法
(1)メルトフローレイト(MFR)
MFRは、JIS K 6922−2に準拠して測定した。
(2)密度
試験温度23℃で、JIS K7112に準拠して測定した。
【0056】
(3)表面固有抵抗
I)測定用試料の調整
試料である試験用フィルムを次の雰囲気中で調整した。
調整雰囲気−1:23℃50%の雰囲気で1日間状態調整
調整雰囲気−2:45℃のオーブン中で7日間状態調整
調整雰囲気−3:45℃のオーブン中で30日間状態調整
II)表面固有抵抗の測定
前記I)の雰囲気中で調整した試験用フィルムのコロナ処理面とその反対面の表面固有抵抗値を温度23℃、相対湿度50%の恒温恒室内でJEC6148に準拠して測定した。
(4)NOx変色
I)測定用試料の調整
試料である試験用フィルムの幅両端を裁断した20mのフィルムを筒状に巻き、両端をホースバンドによりトルク10Kg・cmで締付けて固定し測定用試料とした。
II)YI値とa値(初期値)の測定
前記I)で調整した試料端面の一方を測定面に決め、日本電色製カラーコンピューター(機種名:ZE2000)でYI値(黄色)とa値(赤)を測定し、この値を初期値とした。
III)YI値とa値(経時後)の測定
JIS L0855に準拠し、上記Iで調整した試料を密閉容器中に静置し500ppm濃度のNOxガスを充満させ23℃下7日間暴露した。
暴露期間終了後速やかに試料を取り出し、前記IIと同様の方法でYI値とa値を測定し、この値を経時値とした。
【0057】
2.各成分
(1)線状低密度ポリエチレン(A)
日本ポリエチレン社製「ノバテック(登録商標)LL:UF524」重合時の無添加グラニュール(製造時に採取した添加剤を配合していないポリエチレングラニュ−ル)、MFR(JIS K6922−2準拠):1.0g/10分、密度(JIS K7112準拠):0.923g/cm
3のエチレン・α−オレフィン共重合体を使用した。
【0058】
(2)帯電防止剤(B)
帯電防止剤(a)TS−9:エステル化合物としてグリセリンモノステアレートと、アミン化合物としてジエタノールアミンと、酸化合物として脂肪酸との混合物からなる帯電防止剤として、花王(株)製帯電防止剤、商品名「エレクトロストリッパー TS−9」を使用した。
帯電防止剤(b)MYP−171:エステル化合物としてグリセリンモノステアレートと、ジエタノールアミドとの混合物からなる帯電防止剤として、竹本油脂(株)製帯電防止剤、商品名「MYP−171」を使用した。
帯電防止剤(c)TS−7:エステル化合物としてグリセリンモノステアレートと、アミン化合物としてジエタノールアミンと、高級アルコールとの混合物からなる帯電防止剤として、花王(株)製帯電防止剤、商品名「エレクトロストリッパー TSー7」を使用した。
【0059】
(3)酸化防止剤(C)
酸化防止剤(a):同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する化合物からなる酸化防止剤として、住友化学社製リン系酸化防止剤、商品名「Sumilizer GP」を使用した。
酸化防止剤(b):同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する化合物ではない酸化防止剤として、BASFジャパン社製フェノール系酸化防止剤、商品名「Irganox 1076」を使用した。
酸化防止剤(c):同一分子内に亜リン酸エステル構造とヒンダードフェノール構造を有する化合物ではない酸化防止剤として、クラリアントジャパン社製リン系酸化防止剤、商品名「Sandostab P−EPQ」を使用した。
【0060】
3.実施例及び比較例
(実施例1及び比較例1〜4)
(1)樹脂組成物の調整
ベースとなる前記線状低密度ポリエチレングラニュールに表−1に示した所定量の添加剤を計量し、ヘンシェルミキサーにより3分間攪拌しポリエチレンと添加剤が均質混合されるよう調整した。(表中の数字は組成物中の各添加剤の重量%を示す)
(2)ペレット化
前記で調整した添加剤入りポリエチレングラニュールをフィルム成形機に供するため、押出機を使用し以下の条件で押出造粒を行いペレットを得た。
押出機:三菱化学エンジニアリング製MK40mmφ(単軸)
L/D:26
スクリュー圧縮比:2.0
押出機温度設定(℃)
シリンダ−1:180
シリンダ−2:190
押出機ダイ:190
ノズル:5mmφ(穴径)X5(穴数)
スクリーンメッシュ:なし
押出量:20Kg/Hr
ストランド冷却:水冷(常温)
ペレット化:三鈴エリー社製ペレタイザー
(3)フィルム成形
前記条件で得られたペレットを以下の条件でフィルム製膜し評価試料とした。
装置:三菱化学エンジニアリング製MK50mmφインフレ成形装置
L/D:24
スクリュー圧縮比:2.3(先端ミキシング)
ダイ:75mmφ(リップ:3mm)
押出機温度設定(℃)
シリンダ−1:180
シリンダ−2〜3:190
アダプター:190
ダイス−1〜2:190
フィルム冷却方式:エアーリング(二重スリット)
フィルム厚み:80μm
【0061】
【表1】
【0062】
4.評価
以下、本願実施例と比較例の説明を表−1に示すデータをもとに説明する。
本発明の必須構成要件における各規定を満たす、実施例1に示すものは、表面固有抵抗及びNOx変色のいずれも良好であり、好適な性能を有している。特に、コロナ処理が施されても、処理面と反対面の表面固有抵抗値は大きくならず、良好な帯電防止性を示すものとなっている。
一方、本発明の構成要件を満たさない比較例は、いずれも、帯電防止性能と、耐変色性能との両方共兼ね備えるものとなっていないことが確認された。
すなわち、比較例1〜3は、酸化防止剤が酸化防止剤(b)と酸化防止剤(c)の併用系であり、NOx変色の経時後のYI値とa値が実施例より大きく変化しており、耐変色性が好ましくない。
比較例2〜4は、帯電防止剤が帯電防止剤(b)又は帯電防止剤(c)に変更した系であり表面固有抵抗値が実施例より大きく、特に45℃のオーブンで保管すると、表面固有抵抗値が実施例より大きく帯電防止性能が好ましくない。
また、フィルムの表側に印刷するためにコロナ処理が施されると、帯電防止剤がコロナ処理面側に引かれ、比較例3と4のように反対面(内容物が入る側)の表面固有抵抗値が大きくなり、実施例のような良好な帯電防止性が得られない。
これらの比較例に比べて、本発明による樹脂組成物は、実施例に示すとおり、帯電防止性能と、耐変色性を両方とも兼ね備えるものであることが確認された。
以上における、実施例と各比較例の結果からして、本発明の構成と各要件の合理性と有意性が実証され、さらに本発明の従来技術に対する優位性も明らかにされている。