特許第5919863号(P5919863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919863
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】交通安全支援システム及び携帯通信端末
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20160428BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20160428BHJP
   H04W 4/04 20090101ALI20160428BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20160428BHJP
【FI】
   G08G1/16 A
   G08G1/005
   H04W4/04
   H04W64/00
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-28236(P2012-28236)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-164777(P2013-164777A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】奥山 和典
(72)【発明者】
【氏名】金子 富
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−169570(JP,A)
【文献】 特開2009−122079(JP,A)
【文献】 特開2005−352577(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0191583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/005
H04W 4/04
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載通信端末と共に交通安全支援システムの構成要素である、歩行者が携帯する携帯通信端末において、
当該携帯通信端末の位置情報である歩行者位置情報を間欠的に取得して管理する歩行者位置取得管理手段と、
車載通信端末及び他の携帯通信端末のうち少なくとも車載通信端末が該当する対象通信端末から到来した位置情報である周辺端末位置情報を取り込む周辺端末位置取得手段と、
当該携帯通信端末が車両内に存在するか否かを判定する車両内有無判定手段と、
上記車両内有無手段が車両内に存在すると判定したときに、同一車両に搭載されている対象通信端末を推定する車両搭載他端末推定手段と、
同一車両に搭載されている対象通信端末から取り込んだ周辺端末位置情報に、上記歩行者位置取得管理手段で管理している歩行者位置情報を補正する歩行者位置補正手段と
上記歩行者位置補正手段で補正した位置情報を上記歩行者位置情報として更新する更新手段と
を有することを特徴とする携帯通信端末。
【請求項2】
上記周辺端末位置取得手段は、到来電波の受信信号強度を併せて取得するものであり、
上記車両搭載他端末推定手段は、複数回到来した到来電波の受信信号強度の変動量が閾値以下であることを、同一車両に搭載されている対象通信端末と推定する1条件としていることを特徴とする請求項1に記載の携帯通信端末。
【請求項3】
上記車両搭載他端末推定手段は、最近の電波の到来回数が閾値以上であることを、同一車両に搭載されている対象通信端末と推定する1条件としていることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
上記車両搭載他端末推定手段は、今回の推定時の前の最近期間において、閾値回数以上対象通信端末と推定されたことを同一車両に搭載されている対象通信端末と推定する1条件としていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の携帯通信端末。
【請求項5】
上記車両内有無判定手段は、上記歩行者位置取得管理手段による最近所定期間の位置情報の取得有無に基づいて、当該携帯通信端末が車両内に存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の携帯通信端末。
【請求項6】
上記車両内有無判定手段が、当該携帯通信端末が車両内に存在すると判定したときに、当該携帯通信端末を省電力モードにすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の携帯通信端末。
【請求項7】
車両に搭載される車載通信端末と歩行者が携帯する携帯通信端末とを構成要素として含む交通安全支援システムにおいて、
上記携帯通信端末として、請求項1〜6のいずれかに記載の携帯通信端末を適用したことを特徴とする交通安全支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は交通安全支援システム及び携帯通信端末に関し、例えば、車両の乗降車時に携帯通信端末の通信制御や歩行者情報の取得を行うシステムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者や車両等の安全性を向上するため、車々間通信、歩車間通信、路車間通信を利用した交通安全支援システムが提案されている。例えば、歩行者等が所持する携帯通信端末及び車載通信端末間で位置情報を交換することで、接触又は衝突(以下、これらをまとめて衝突と呼ぶ)が発生する前に、衝突の危険を歩行者や運転手へ報知するシステムが既に提案されている。
【0003】
しかし、上述のようなシステムにおいては、車両の運転手及び同乗者も携帯通信端末を所持していればシステム上の歩行者であり、現実には発生しない車両と歩行者との衝突の誤報知がなされる場合があり、却って車両の円滑な走行に支障をきたす恐れがある。
【0004】
そのため、歩行者が所持する携帯通信端末の位置情報と車両の車載通信端末の位置情報の関係が所定の場合(例えば、軌跡が一致した場合)には、携帯通信端末を所持する歩行者が車両に乗車しているものとし、自車両及び他車両に対する衝突の誤報知を回避するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−9933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した誤報知回避のシステムにおいて、携帯通信端末の位置情報はGPSセンサから得られる情報であるため、以下に示すような課題がある。第1に、車両への乗車時においては、図1(a)に示すように、車両の屋根がGPS人工衛星からの信号の捕捉を妨げ、位置情報の取得動作が不安定になり、又は、位置情報の取得が不可能となり、携帯通信端末を所持する歩行者が車両に乗車していることを正しく判定できない恐れがある。第2に、車両からの降車時においては、図1(b)に示すように、GPSセンサからの信号に基づいて携帯通信端末の位置情報を取得できるようになるまでに時間がかかり、それまで交通安全支援システムとしての機能を果たさないという恐れがある。車両の降車時から、GPS人工衛星からの信号を捕捉し、位置情報を算出して位置情報を取得するまでの処理遅延時間は、周辺環境等の影響により数十秒必要となる可能性もある。
【0007】
屋内等の限られた場所では、路側通信装置等のインフラから提供される位置情報と、加速度センサ、角速度センサを併用することにより、GPSによる位置情報の取得機能を代替することも可能だが、屋外で適用するためには大規模なインフラ整備が必要となる。また、携帯電話で用いられる基地局をインフラとして利用することも可能だが、新たな通信機能が必要であり、また、基地局情報を集約するセンタヘ問い合わせるための処理遅延時間も再度問題となり、さらに、新たな通信機能が使用する周波数帯によっては、車々間通信、歩車間通信、路車間通信に対して電波干渉を引き起こす可能性がある。
【0008】
そのため、車両の運転手又は同乗者が所持する携帯通信端末が位置情報をタイムラグなく常時取得でき、車両の運転手又は同乗者が、車両に乗車している最中や車両から降車した直後に誤って報知するようなことを防止できる交通安全支援システム及び携帯通信端末が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、車両に搭載される車載通信端末と共に交通安全支援システムの構成要素である、歩行者が携帯する携帯通信端末において、(1)当該携帯通信端末の位置情報である歩行者位置情報を間欠的に取得して管理する歩行者位置取得管理手段と、(2)車載通信端末及び他の携帯通信端末のうち少なくとも車載通信端末が該当する対象通信端末から到来した位置情報である周辺端末位置情報を取り込む周辺端末位置取得手段と、(3)当該携帯通信端末が車両内に存在するか否かを判定する車両内有無判定手段と、(4)上記車両内有無手段が車両内に存在すると判定したときに、同一車両に搭載されている対象通信端末を推定する車両搭載他端末推定手段と、(5)同一車両に搭載されている対象通信端末から取り込んだ周辺端末位置情報に、上記歩行者位置取得管理手段で管理している歩行者位置情報を補正する歩行者位置補正手段と、(6)上記歩行者位置補正手段で補正した位置情報を上記歩行者位置情報として更新する更新手段とを有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明は、車両に搭載される車載通信端末と歩行者が携帯する携帯通信端末とを構成要素として含む交通安全支援システムにおいて、上記携帯通信端末として、第1の本発明の携帯通信端末を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の運転手や同乗者が所持する携帯通信端末も乗車中にも位置情報をタイムラグなく取得でき、乗車中や車両から降車した直後に誤って報知するようなことを防止できる交通安全支援システム及び携帯通信端末を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来システムの課題の説明図である。
図2】第1の実施形態に係る交通安全支援システムの基本的な構成要素を示す説明図である。
図3】第1の実施形態の通信端末の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態の携帯通信端末における状態遷移を示す状態遷移図である。
図5】第1の実施形態の携帯通信端末の省電力モード状態における処理を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態の携帯通信端末における受信パケット情報履歴の構成を示す説明図である。
図7】第1の実施形態の携帯通信端末における車両情報の構成を示す説明図である。
図8】第1の実施形態の携帯通信端末における乗車車両ID判定処理の詳細を示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態の携帯通信端末におけるモード判定処理(モード見直し処理)を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態の通信端末の構成を示すブロック図である。
図11】第2の実施形態の携帯通信端末における状態遷移を示す状態遷移図である。
図12】第2の実施形態の携帯通信端末の省電力モード状態における処理を示すフローチャートである。
図13】第2の実施形態の携帯通信端末における乗車車両ID判定処理の詳細を示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態の携帯通信端末における乗降車検知取込処理(乗降車見直し処理)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による交通安全支援システム、車載通信端末及び携帯通信端末の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(A−1)第1の実施形態の構成
図2は、第1の実施形態に係る交通安全支援システム1の基本的な構成要素を示す説明図である。
【0015】
第1の実施形態の交通安全支援システム1では、複数の歩行者にそれぞれ携帯通信端末2を携帯させると共に、複数の車両にもそれぞれ車載通信端末3を搭載させる。各歩行者の携帯通信端末2と各車両の車載通信端末3間の無線による歩車間通信で情報授受を行うと共に、各車両の車載通信端末3、3間の無線による車々間通信で情報授受を行うことで、歩行者、車両の安全を支援しようとしている。
【0016】
通信方式として、例えば、ブロードキャスト方式を採用し、その通信範囲としては、前後左右に200m程度の範囲を挙げることができる。通信対象数として、歩行者と車両を併せて100台程度を挙げることができる。
【0017】
第1の実施形態の交通安全支援システム1では、各通信端末2、3から、所持している歩行者、又は、搭載されている車両に関する情報を周期的に送信し、受信側の通信端末2、3において、必要な情報を選択して歩行者や運転者に衝突の注意喚起の情報提供等を行うものである。情報の送信周期としては、例えば、速度に応じた0.1秒〜1秒程度の可変周期を挙げることができる。送信される情報には、その歩行者又は車両の現在位置を示す位置情報の他、自己を特定する識別子等が含まれる。
【0018】
次に、携帯通信端末2及び車載通信端末3の構成について説明する。携帯通信端末2及び車載通信端末3(は、ハードウェア的には、図3に示すような同様な構成を有している。なお、以下の説明において、携帯通信端末2及び車載通信端末3を区別することなく、通信端末に言及する場合には符号「5」を用いる。
【0019】
図3において、通信端末5(2又は3)は、CPU10、記憶装置11、ROM12、RAM13、ディスプレイ14、スピーカ15、画像処理部16、音声処理部17、無線通信部18及びGPSセンサ19を有する。
【0020】
CPU10は、通信端末5全体の制御を司るプロセッサであり、特に、後述する処理を実行するものである。ROM12は、後述する各処理のプログラムの他、固定的なデータを記憶するメモリである。RAM13は、CPU10によって処理されるプログラムのワークエリアを有し、可変データ等を記憶する。これらのROM12及びRAM13として、他の記憶手段を採用しても良いことは勿論である。
【0021】
記憶装置11は、例えばハードディスクやCD−ROM等の記憶手段により構成され、道路情報等を含むデータベースを格納するものである。記憶装置11としては、カーナビゲーションシステムに用いられるものと同程度のものを適用できる。ここで、携帯通信端末2の場合、当該交通安全支援システム1の運用サービスによって、記憶装置11を省略することができる。
【0022】
ディスプレイ14は、各種情報を表示する表示器であり、画像処理部16を介してCPU10に接続されており、CPU10の命令により各種情報を表示する。ここで、携帯通信端末2の場合、当該交通安全支援システム1の運用サービスによっては(衝突の危険性などの報知を音声出力だけで行う運用サービスの場合)、ディスプレイ14及び画像処理部16を省略することが可能である。
【0023】
音声処理部17は、スピーカ15を介して、歩行者又は車両の乗員に合成音声等の音声により各種情報を提供するものである。音声処理部17は、他の車両や歩行者との衝突の報知を音声で行うために用いられる。ここで、携帯通信端末2の場合、当該交通安全支援システムの運用サービスによっては(衝突の危険性などの報知を表示出力だけで行う運用サービスの場合)、スピーカ15及び音声処理部17を省略することが可能である。
【0024】
GPSセンサ19は、GPS人工衛星から発信される電波を受信して当該通信端末2、3の現在位置を検出するものであり、CPU10に現在位置を提供する。この他の歩行者情報、車両情報や操作情報を取得するための各種センサ類を備えることができることは勿論である。
【0025】
無線通信部18は、他の通信端末2、3と無線の双方向通信を行うものである。無線通信部18は、他の通信端末2、3の送信した電波の受信信号強度(RSSI)を検出する回路を有する。
【0026】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の交通安全支援システム1の動作、特に、携帯通信端末2の動作(携帯通信端末2のCPU10が実行する処理)について説明する。
【0027】
図4は、第1の実施形態の携帯通信端末2における状態遷移を示す状態遷移図である。携帯通信端末2が取り得る状態は、「電源OFF」状態ST1、「初期設定」状態ST2、「省電力モード」状態ST3及び「歩行者モード」状態ST4である。
【0028】
電源OFF状態ST1からは、携帯通信端末2の電源ONにより初期設定状態ST2へ遷移し、また、初期設定状態ST2、省電力モード状態ST3又は歩行者モード状態ST4で電源OFF操作されることにより、電源OFF状態ST1に遷移する。
【0029】
初期設定状態ST2からは、初期設定動作の完了により省電力モード状態ST3へ遷移し、電源OFF操作により電源OFF状態ST1へ遷移する。また、省電力モード状態ST3又は歩行者モード状態ST4でリセット操作されることにより、初期設定状態ST2に遷移し、電源OFF状態ST1で電源ON操作されることにより、初期設定状態ST2に遷移する。
【0030】
省電力モード状態ST3からは、モード判定処理(後述する図9参照)や乗車車両IDの判定結果(後述する図8)による歩行者モードへという判定などにより歩行者モード状態ST4へ遷移し、電源OFF操作により電源OFF状態ST1へ遷移し、リセット操作により初期設定状態ST2に遷移する。また、歩行者モード状態ST4で省電力モード状態ST3へという判定がなされることにより、省電力モード状態ST3に遷移し、初期設定状態ST2で初期設定動作が完了することにより、省電力モード状態ST3へ遷移する。
【0031】
歩行者モード状態ST4からは、モード判定処理(後述する図9参照)による省電力モードへという判定により省電力モード状態ST3へ遷移し、電源OFF操作により電源OFF状態ST1へ遷移し、リセット操作により初期設定状態ST2に遷移する。また、省電力モード状態ST3で歩行者モードへという判定がなされることにより歩行者モード状態ST4へ遷移する。
【0032】
歩行者が当該携帯通信端末2の電源をONにすると、携帯通信端末2は電源OFF状態ST1から初期設定状態ST2に遷移し、CPU10は、無線通信部18などの初期設定を行い、また、GPSセンサ19から現在位置情報の取得を開始する。このような初期設定完了後に、省電力モード状態ST3へ遷移する。
【0033】
図5は、省電力モード状態ST3におけるCPU10の処理を示すフローチャートである。
【0034】
省電力モード状態ST3になると、まず始めに、CPU10は、少なくとも無線通信部18のうちの受信機能部の動作を開始し(S100)、当該携帯通信端末2の周辺に存在する携帯通信端末2及び車載通信端末3から送信されてくるパケットを受信する(S101)。そして、受信したパケットから得られるパケット情報に基づき車両情報を取得する(S102)。
【0035】
なお、この第1の実施形態の場合、省電力モード状態の間は送信機能部は停止させている。
【0036】
パケット情報には、上述したように、歩行者又は車両の現在位置を示す位置情報の他、自己を特定する識別子等(歩行者のこともあり得るが、以下、車両IDと呼ぶ)が含まれている。受信パケットについて検出した受信信号強度(RSSI値)をパケット情報に対応付けて、RAM13に記憶されている受信パケット情報履歴に追加し、この追加後の受信パケット情報履歴から車両情報を作成し、RAM13の車両情報を更新する。
【0037】
図6は、受信パケット情報履歴の構成を示し、図7は、車両情報の構成を示している。受信パケット情報履歴は、上述から分かるように、車両ID、受信信号強度(RSSI値)及び位置情報(GPS位置情報)を有する。なお、受信信号強度(RSSI値)は例えば8ビットで表現されるものであり、図6は上位4ビット及び下位4ビットをそれぞれ16進表記で示している。車両情報は、車両ID、サンプル数、受信信号強度(以下、受信電力と呼ぶこともある)の平均値、分散値、省電力モード中に乗車車両ID判定処理(図8)が実行された回数及び最新の位置情報を有する。車両情報のサンプル数を各車両IDにおいて1パケット受信ごとにカウントアップし、一定時間の間に得られた受信電力の平均値、分散値と、省電力モード中に乗車車両ID判定された回数と、最新のGPS位置情報を作成する。この受信機能部の動作を一定時間継続する(S103)。一定時間が経過すると、CPU10は、図8に詳細を示す乗車車両ID判定処理(S104)を開始する。上述した一定時間としては、乗車車両ID判定処理を行う上で十分な時間を設定する。
【0038】
図8は、乗車車両ID判定処理の詳細を示すフローチャートである。ここで、乗車車両ID判定とは、当該携帯通信端末2が車両に乗車している歩行者が所持しているものであって、乗車している車両の車載通信端末3又は他の乗車歩行者の携帯通信端末2の車両ID(以下、場合によって、乗車車両IDと呼ぶ)を判定する処理をいう。
【0039】
乗車車両ID判定処理においては、CPU10は、まず、図7に示す車両情報の各車両IDごとに、設定値(閾値)とサンプル数を比較し(S150)、設定値以上のサンプル数を満たす車両IDのみを抽出する(S151)。ここで、設定値は、統計手法解析の観点から電波伝搬特性の傾向を把握するためには少なくとも10〜20の範囲内の値とし、解析精度向上のためには50程度にすることが望ましい。
【0040】
次に、CPU10は、抽出された車両IDごとに、許容値(閾値)と図7に示す車両情報における分散値とを比較し(S151)、許容値以内の分散値を満たす車両IDのみ抽出する(S152)。ここで、許容値を、白色雑音に起因する受信電力の変動量や、携帯通信端末2の周辺の人体や物などの瞬時的な電波遮蔽物に起因する変動量等を考慮した値に設定することが望ましい。
【0041】
当該携帯通信端末2に対して、常に一定の位置関係にある他の携帯通信端末2や車載通信端末3から送信された受信パケットから検出した受信電力の変動量はほぼ一定であり、一方、当該携帯通信端末2に対して、時々刻々と位置関係が変化する他の携帯通信端末2や車載通信端末3から送信された受信パケットから検出した受信電力の変動量はマルチパスなどにより大きく変動する。そこで、受信電力の変動量がほぼ一定である車両IDを有する車載通信端末3や携帯通信端末2は、当該携帯通信端末2を所持している歩行者が乗車する車両の車載通信端末3、若しくは、当該携帯通信端末2を所持している歩行者が乗車する車両の他の歩行者(同乗者)が所持する他の携帯通信端末2であるとみなし、当該携帯通信端末2は、車両に乗車をしている歩行者のものと判定する(みなす)こととした。
【0042】
すなわち、ステップS151におけるサンプル数に基づく車両IDの抽出でも、ステップS153における受信電力の変動量に基づく車両IDの抽出でも、車両IDが抽出された場合には(ステップS150、S152で共に肯定結果)には、当該携帯通信端末2は、車両に乗車をしている歩行者のものと判定することとした。逆に、ステップS150のサンプル数の条件を満たす車両IDや、ステップS152の受信電力の変動量の条件を満たす車両IDが抽出できない場合には、当該携帯通信端末2の歩行者は、車両に乗車をしていないものと判定することとし(S154)、乗車車両ID判定の処理を終了してメインルーチン(図5)に戻る。
【0043】
許容値以内の分散値を満たす車両IDが抽出できたときには、CPU10は、抽出された車両IDが、省電力モード中に設定値回数以上、乗車車両IDと判定されたか否かを判定し(S155)、該当する車両IDは乗車車両IDである信頼性が高いものとして抽出する(S156)。その後、高い信頼性を有する乗車車両IDとして抽出されたものの中で、判定回数が最大値のものが1つか否かを判定し(S157)、1つであれば、今回の判定処理による乗車車両IDと決定し(S158)、メインルーチン(図5)に戻る。乗車車両IDとして決定したときには、図7の乗車車両IDと判定された回数を1インクリントする。
【0044】
省電力モードヘの移行初期においては信頼性を有する乗車車両IDが存在しない。CPU10は、高い信頼性を有する乗車車両IDとして抽出されたものがなかった場合(S155で否定結果)や、高い信頼性を有する乗車車両IDとして抽出された車両IDの最大判定回数のものが複数あった場合(S157で否定結果)には、受信電力の変動量に基づく車両IDの抽出処理(S153)で抽出されたその時点で有効な車両IDの中で、平均値が最大値を有する車両IDを乗車車両IDと判定すると共に、繰り返し乗車車両ID判定を要求し(S159)、メインルーチン(図5)に戻る。
【0045】
乗車車両IDの判定処理が終了すると、CPU10は、乗車車両IDの判定処理で判定された結果に応じて、当該携帯通信端末2のGPS位置情報を取得して更新する(S105)。例えば、乗車車両IDが得られていない場合には、GPSセンサ19が得た最新の位置情報に更新し、乗車車両IDが得られている場合(当該携帯通信端末2が乗車中の歩行者が所持しているものである場合)には、GPSセンサ19が位置情報を安定して得られるか否かで更新方法を切り替える。乗車車両IDが得られている場合でも、GPSセンサ19が位置情報を得ていると、GPSセンサ19が得た位置情報に更新し、GPSセンサ19が位置情報を得られないと、乗車中の車両の車両IDに対応付けられている最新のGPS位置情報(図7参照)に、当該携帯通信端末2のGPS位置情報を更新する。なお、乗車車両IDが得られている場合には、GPSセンサ19が位置情報を得られるか否かに拘わらず、乗車中の車両の車両IDに対応付けられている最新のGPS位置情報に、当該携帯通信端末2のGPS位置情報を更新するようにしても良い。
【0046】
また、CPU10は、乗車車両IDの判定処理で各種条件(S150、S152、S155、S157)に該当する乗車車両ID(S158による車両ID)があったか否かを判別し(S106)、該当する乗車車両IDがあれば、次に受信機能部の動作を再開する時刻を演算し、その時刻まで、受信機能部の動作を停止させる(S107)。再開する時刻は、現時刻から、予め定められた所定時間後の時刻とする。当該携帯通信端末2が所持している歩行者が乗車中の場合には、乗車している車両で衝突の監視を行っているために、当該携帯通信端末2の所持歩行者を衝突の監視対象から外すことができ、この期間で消費電力を抑えようとした。
【0047】
一方、乗車車両IDの判定処理で、各種条件に該当する乗車車両IDがないという結果が得られると、CPU10は、繰り返し乗車車両IDの判定要求(上述したS159参照)があるか否かを判別し(S108)、この判定要求があれば、次に受信機能部の動作を再開する時刻を演算し、その時刻まで、受信機能部の動作を停止させ(S107)、この判定要求がなければ歩行者モード状態ST4へ遷移させる。
【0048】
以上のようにして、省電力モード状態ST3の間は、送信機能部を常時停止させると共に、受信機能部を一定周期で間欠的に動作させることで、乗車中の歩行者が所持している携帯通信端末2の不要な電波発振による使用周波数帯の混雑を緩和し、バッテリ消費を抑制することができる。
【0049】
図9は、CPU10が、定期的に実行するモード判定処理(モード見直し処理)を示すフローチャートである。図9に示すモード判定処理は、初期設定が完了して省電力モード状態ST3に遷移してから電源OFF状態ST1に遷移するまでの期間、所定周期で繰り返し実行される。
【0050】
CPU10は、図9に示すモード判定処理を開始すると、GPSセンサ19から位置情報を取得しようとし(S200)、今回の取得動作を含めて、最近の一定時間、位置情報が取得不可能な状態になっているか否かを判別し(S201)、最近の一定時間以上、位置情報が取得不可能な状態になっていると、省電力モード状態ST3に設定し(S202;省電力モード状態ST3を継続する場合もあれば省電力モード状態ST3へ遷移する場合もある)、最近の一定時間内に位置情報が取得できた場合には、歩行者モード状態ST4に設定する(S203;歩行者モード状態ST4を継続する場合もあれば歩行者モード状態ST4へ遷移する場合もある)。ステップS201における判別は、最近の一定時間内に実行した取得動作がM回の場合、M回全ての取得動作で取得できた場合を、最近の一定時間内に位置情報が取得できたと捉えるようにしても良く、M回中N回以上位置情報が取得できた場合を、最近の一定時間内に位置情報が取得できたと捉えるようにしても良い。
【0051】
歩行者モード状態ST4は、当該携帯通信端末2を所持している歩行者が車両に乗車していない状態に対応しており、既存の交通安全支援システムと同様にして、車載通信端末3や他の携帯通信端末2やさらには路肩通信端末との通信を通じて、安全支援動作を実行するモードである。
【0052】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、歩行者が車両に乗車中のために、携帯通信端末2のGPSセンサ19によるGPS人工衛星からの信号受信が不安定又は不可能な場合であっても、乗車中の車両の車載通信端末3(若しくは同乗者の携帯通信端末)からGPS位置情報を取得し、当該携帯通信端末2のGPS位置情報として定期的に更新することができる。その結果、歩行者が車両を降車する場合において生じる、携帯通信端末2のGPSセンサ19の処理遅延時間(信号受信、捕捉、位置情報取得のための時間)の間でも、上述した他の通信端末から転送させたGPS位置情報を代替して適用することができ、歩行者が車両を降車したときに瞬時に歩行者を交通安全支援システム1へ復旧させることができる。
【0053】
また、省電力モード状態の間は、送信機能部を停止させると共に、受信機能部を一定周期で間欠動作させることで、歩行者の乗車中における携帯通信端末の不要な電波発振による使用周波数帯の混雑を緩和し、バッテリ消費を抑制することができる。
【0054】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による交通安全支援システム、車載通信端末及び携帯通信端末の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0055】
(B−1)第2の実施形態の構成
第1の実施形態では、省電力モードか歩行者モードかの判定(言い換えると、乗車中か否か)を、GPSセンサの取得情報と、周辺に存在する他の携帯通信端末及び車載通信端末から得られた車両情報に基づいて行っていた。この第2の実施形態では、乗降車の判定を行う追加機能部によって省電力モードか歩行者モードかの判定を行い、携帯通信端末のGPS位置情報の取得に至るまでの、CPUの各処理負荷を軽減すると共に、処理遅延時間を短縮しようとしたものである。
【0056】
図10は、第2の実施形態における各通信端末5A(携帯通信端末2又は車載通信端末3)の構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る上述した図3との同一、対応部分には同一符号を付して示している。
【0057】
図10において、第2の実施形態の各通信端末5A(2又は3)は、CPU10、記憶装置11、ROM12、RAM13、ディスプレイ14、スピーカ15、画像処理部16、音声処理部17、無線通信部18及びGPSセンサ19に加え、乗降車検知部20P又は20Bを有する。
【0058】
CPU10、記憶装置11、ROM12、RAM13、ディスプレイ14、スピーカ15、画像処理部16、音声処理部17、無線通信部18及びGPSセンサ19は、第1の実施形態のものとほぼ同様である。但し、CPU10が実行するプログラムが、第1の実施形態と多少異なっている。
【0059】
乗降車検知部20Pは携帯通信端末2に設けられた乗降車検知部を表しており、乗降車検知部20Bは車載通信端末3に設けられた乗降車検知部を表しており、2種類の乗降車検知部20P及び20Bが協働して、携帯通信端末2を所持している歩行者の乗降車を検知するものである。
【0060】
2種類の乗降車検知部20P及び20Bは、例えば、微弱無線通信機能を用いて歩行者の乗降車を検知する。例えば、車両内に微弱無線通信エリアを形成するように、車載通信端末3の乗降車検知部20Bを設けて、乗降車検知部20Bから一定周期で乗車認識IDを含むパケットを送信させる。携帯通信端末2の乗降車検知部20Pが受信したパケットから乗車認識IDを抽出できたときに、当該携帯通信端末2を所持する歩行者が乗車していると判定する。一方、携帯通信端末2の乗降車検知部20Pが、乗降車検知部20Bが送信したパケットを受信できなくなった場合、当該携帯通信端末2を所持する歩行者が微弱無線通信エリアの範囲外へ移動したと判定する(すなわち、当該携帯通信端末2を所持する歩行者が降車したと判定する)。
【0061】
ここで、乗車認識IDは、全ての車両において同一のものを用いるようにしても良く、乗降車検知部20B毎に固有なものを用いるようにしても良い。後者の場合であっても、携帯通信端末2の乗降車検知部20Pが乗車認識IDであることを認識できるような部分情報を含むようにする。また、提供されるサービスごとに乗車認識IDを割り当て、携帯通信端末2を制御できるようにしても良い。
【0062】
上記では、乗降車検知部20B及び20P間の微弱無線通信機能を利用して乗降車を検知するものを示したが、乗降車の検知方法は、これに限定されるものではない。例えば、携帯通信端末2を所持する歩行者が、乗車したり降車したりした際に所定操作することとし、その操作を受けて乗降車を検知しても良い。また例えば、携帯通信端末2が車両に設けられているコネクタに電気的に接続したか否かによって乗降車を検知しても良い。さらに例えば、周辺環境(例えば、エンジン音)をモニタする各種センサ類等の出力を利用して乗降車を検知するようにしても良い。
【0063】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態の交通安全支援システム1Aの動作、特に、携帯通信端末2の動作(携帯通信端末2のCPU10が実行する処理)について説明する。
【0064】
図11は、第2の実施形態の携帯通信端末2における状態遷移を示す状態遷移図である。第2の実施形態の携帯通信端末2は、初期設定が完了したときに省電力モード状態ST3ではなく歩行者モード状態ST4へ遷移する点、省電力モード状態ST3から歩行者モード状態ST4への遷移のトリガが乗降車検知部20Pによる降車の検知である点、歩行者モード状態ST4から省電力モード状態ST3への遷移のトリガが乗降車検知部20Pによる乗車の検知である点が、第1の実施形態と異なっている。
【0065】
歩行者が当該携帯通信端末2の電源をONにすると、携帯通信端末2は電源OFF状態ST1から初期設定状態ST2に遷移し、CPU10は、無線通信部18などの初期設定を行い、また、GPSセンサ19から現在位置情報の取得を開始する。このような初期設定の完了後に、歩行者モード状態ST4へ遷移する。さらに、乗降車検知部20Pが乗車認識IDを含むパケットを受信した場合には、省電力モード状態ST3へ遷移する。
【0066】
図12は、第2の実施形態のCPU10が実行する、省電力モード状態ST3における処理を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図5との同一、対応ステップには同一符号を付して示している。
【0067】
第2の実施形態も、受信機能部の動作を開始又は再開してから(S100)、GPSセンサ19から位置情報を取得するまで(S105)の動作は、第1の実施形態とほぼ同様である(但し、乗車車両IDの判定処理S104の詳細は異なっている)。
【0068】
位置情報を取得すると、CPU10は、乗降車検知部20Pが降車を検知したか否かを判別する(S111)。CPU10は、降車の検知がなされていないと(乗車のままであると)、次に受信機能部の動作を再開する時刻を演算し、その時刻まで、受信機能部の動作を停止させ(S107)、一方、降車の検知がなされていると、歩行者モード状態ST4へ遷移させる。
【0069】
上述したように、乗車車両IDの判定処理(S104)の詳細は、第1の実施形態と異なっている。図13は、第2の実施形態における乗車車両IDの判定処理(S104)の詳細を示すフローチャートである。
【0070】
第1の実施形態の場合、乗車車両IDの判定処理は、乗降車の判定処理の一部をも兼ねている処理であったが、第2の実施形態の場合、当該携帯通信端末2の乗降車検知部20Pが乗降車を検知するので、乗降車の検知にだけ必要な処理は不要である。なお、当該携帯通信端末2の所持歩行者と乗車している車両との衝突の危険を判断する必要はなく、他の車両が搭載の車載通信端末3と、当該携帯通信端末2の所持歩行者が乗車している車両搭載の車載通信端末3とを弁別する必要があり、そのため、第2の実施形態においても、乗車車両IDの判定処理は当然に必要な処理である。
【0071】
第2の実施形態においても、乗車車両IDを得る基本的な処理の流れは、第1の実施形態と同様である。すなわち、基本的には、S150−S151−S152−S153−S155−S156−S157−S158の流れで乗車車両IDを得ている。第2の実施形態では、基本的な処理の流れで乗車車両IDが得られない場合(S150、S152、S155又はS157で否定結果)には全て、その時点で有効な車両IDの中で、平均値が最大値を有する車両IDを乗車車両IDと判定し(S160)、メインルーチン(図12)に戻る。その時点で有効とは、それまでの各種の抽出処理で排除されずに残っているものをいう。
【0072】
図14は、CPU10が、定期的に実行する乗降車検知取込処理(乗降車見直し処理)を示すフローチャートである。図14に示す乗降車検知取込処理は、初期設定が完了して歩行者モード状態ST4に遷移してから電源OFF状態ST1に遷移するまでの期間、所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
CPU10は、図14に示す処理を定期的に開始し、乗降車検知部20Pから、受信パケットから抽出できた乗車認識IDを取得しようとする(S250)。そして。今回の取得動作を含めて、最近の一定時間、乗車認識IDが取得不可能な状態になっているか否かを判別し(S251)、最近の一定時間以上、乗車認識IDが取得不可能な状態になっていると降車に設定し(S253)、それ以外の場合には乗車に設定する(S252)。ステップS251における判別は、最近の一定時間内に実行した取得動作がM回の場合、M回全ての取得動作で取得できた場合を、最近の一定時間内に乗車認識IDが取得できたと捉えるようにしても良く、M回中N回以上乗車認識IDが取得できた場合を、最近の一定時間内に乗車認識IDが取得できたと捉えるようにしても良い。
【0074】
図10に示したように、歩行者モード状態ST4にあるときに乗車と検知された場合には省電力モード状態ST3へ遷移し、省電力モード状態ST3にあるときに降車と検知された場合には歩行者モード状態ST4へ遷移する。
【0075】
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によっても、携帯通信端末2が、乗車中の車両の車載通信端末3(若しくは同乗者の携帯通信端末)からGPS位置情報を取得し、当該携帯通信端末2のGPS位置情報として定期的に更新すると共に、乗車中においては、省電力モード状態にするようにしたので、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0076】
さらに、第2の実施形態によれば、乗降車検知部20を設けたので、携帯通信端末2における複雑な乗降車判定処理、乗車車両ID判定処理を軽減でき、処理遅延時間をより短くすることができる。
【0077】
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0078】
上記各実施形態では、歩行者が乗車中では携帯通信端末を省電力モード状態にするものを示したが、歩行者が乗車中でも携帯通信端末を通常の消費電力状態のままとするようにしても良い。
【0079】
上記各実施形態では、受信機能部の動作を停止させる期間が一定期間のものを示したが、動作の再開時刻を演算する際の携帯通信端末の速度(過去の位置情報の系列から算出する)に応じて、動作停止期間を変化させるようにしても良い。
【0080】
上記各実施形態では、乗車中でGPS位置情報を取得できない携帯通信端末は、車載通信端末だけでなく、他の携帯通信端末のGPS位置情報をも、自己の位置情報として取り込めるものを示したが、車載通信端末のGPS位置情報だけを自己の位置情報として取り込めるように限定しても良い。このような取込対象を利用者が設定可能としても良い。
【0081】
上記各実施形態では、受信電力の変動量を表すパラメータが分散であるものを示したが、標準偏差など、他の変動量を表す統計的パラメータを適用するようにしても良い。
【0082】
上記各実施形態では、受信電力の変動量が安定していることに基づいて、携帯通信端末の所持歩行者が乗車している車両に係る車載通信端末若しくは他の携帯通信端末を判定するものを示したが、位置情報に基づいて得た所定時間の軌跡の平行性に基づいて、携帯通信端末の所持歩行者が乗車している車両に係る車載通信端末若しくは他の携帯通信端末を判定するようにしても良い。
【0083】
上記各実施形態では、比較処理に適用する閾値が、相手が他の携帯通信端末でも車載通信端末でも同じものを示したが、相手が他の携帯通信端末と車載通信端末とで変えるようにしても良い。
【0084】
上記各実施形態においてCPUがプログラムを実行することで実現すると説明した機能のうち、ハードウェアで構成できるものは、ハードウェアで構成するようにしても良い。
【0085】
上記各実施形態では、位置情報を取得させる電波を放射している人工衛星が、GPS人工衛星であるものを示したが、他の人工衛星であっても、位置情報取得用の電波を放射している場合には、本発明で利用することができる。
【0086】
上記各実施形態では、携帯通信端末が搭載している位置情報の取得手段がGPSセンサであるものを示したが、乗車中の状態で位置情報が取得できない、若しくは、乗車中の状態で位置情報の取得安定性が極端に低下する他の取得手段を適用している場合には、本発明の技術思想を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1、1A…交通安全支援システム、2、2A…携帯通信端末、3、3A…車載通信端末、5、5A…通信端末、10…CPU、11…記憶装置、12…ROM、13…RAM、18…無線通信部、19…GPSセンサ、20、20P、20B…乗降車検知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14