(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2部材は、ダイアフラム(43)を有する金属ステム(40)であり、前記第1部材は、前記ダイアフラムにおける受圧面(43a)と反対の裏面(43b)上に配置されるセンサ素子(50)であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の接合部材。
前記成形工程において、前記フィラー(64)の体積分率が互いに異なる複数種類の前記造粒粉(70)を用いることを特徴とする請求項8に記載の接合部材の製造方法。
前記成形工程において、前記フィラー(64)の組成が互いに異なる複数種類の前記造粒粉(70)を用いることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の接合部材の製造方法。
前記成形工程では、前記ガラス成形体において、前記第1接合面(61)となる面から前記第2接合面(62)となる面にかけて、線膨張係数が連続的に変化するように、3種類以上の前記造粒粉(70)を積層配置して前記積層体とすることを特徴とする請求項8〜10いずれか1項に記載の接合部材の製造方法。
前記成形工程では、金型(80,82)に複数種類の前記造粒粉(70)を積層配置して積層体とした後、少なくとも前記積層体を積層方向において加圧するまでの間において、前記金型に振動又は遠心力を加えることを特徴とする請求項8〜11いずれか1項に記載の接合部材の製造方法。
前記第2部材は、ダイアフラム(43)を有する金属ステム(40)であり、前記第1部材は、前記ダイアフラムにおける受圧面(43a)と反対の裏面(43b)上に配置されるセンサ素子(50)であることを特徴とする請求項8〜12いずれか1項に記載の接合部材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイアフラムを有する金属ステムと、ダイアフラムにガラス接合された圧力検出用のセンサチップと、を有する圧力センサが知られている。この圧力センサは、ガラスペーストをダイアフラムにおける受圧面と反対の裏面に塗布し、その後、センサチップをガラスペースト上に載置する。そして、加熱によりペースト中のガラスフリットを再溶融させ、センサチップを金属ステムにガラス接合することで形成される。しかしながら、ガラスペーストは、温度や湿度等の外部雰囲気によって粘度等の物性が変化する。このため、塗布寸法が変動し、ひいてはセンサ素子の位置ずれ、傾きなどが生じるという問題がある。これに対し、特許文献1に記載の固体状の接合部材を用いると、上記した寸法の変動を抑制することができる。
【0005】
また、自動車の燃料噴射系(例えばコモンレール)における燃料パイプに取り付けられ、この燃料パイプ内の、気体又は気液混合からなる圧力媒体の圧力検出に用いられる圧力センサでは、ダイアフラムが200MPa以上の高圧を受ける。このため、強度、耐食性などの観点から、金属ステムの材料として、SUS430などのステンレス鋼が用いられる。しかしながら、ステンレス鋼を用いた金属ステムと、シリコンからなるセンサ素子との線膨張係数差が大きいため、従来の接合部材では、接合部材の剥離・破損、センサ素子の破損などが生じる。このように、接合部材を介して接合する第1部材と第2部材の線膨張係数が異なる場合、従来のガラス接合では、剥離などが生じるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、寸法精度を向上でき、且つ、線膨張係数が異なる2つの部材の接合に好適な接合部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
ガラス(63)を主成分として含み、
第1部材に接合される第1接合面(61)と、第1接合面と反対の面であり、線膨張係数が第1部材と異なる第2部材に接合される第2接合面(62)と、を有し、
第1部材と第2部材とを接合する固体状の接合部材であって、
線膨張係数を制御するために、ガラスに反応しないフィラー(64)を含み、
第1接合面(61)の線膨張係数は、第2部材の線膨張係数よりも第1部材の線膨張係数に近く、第2接合面(62)の線膨張係数は、第1部材の線膨張係数よりも第2部材の線膨張係数に近いことを特徴とする。
【0008】
本発明では、接合部材を固体状としているため、ガラスペーストに較べて、寸法精度を向上することができる。
【0009】
また、フィラー(64)を含むことによって、接合部材の線膨張係数が制御されている。具体的には、第1接合面(61)の線膨張係数が、第1部材の線膨張係数に近くなっており、第1接合面と第1部材との線膨張係数の差が小さい。このため、第1接合面と第1部材との線膨張係数の差に基づいてこの接合界面に生じる熱応力を低減することができる。また、第2接合面(62)の線膨張係数は、第2部材の線膨張係数に近くなっており、第2接合面と第2部材との線膨張係数の差が小さい。このため、第2接合面と第2部材との線膨張係数の差に基づいてこの接合界面に生じる熱応力を低減することができる。これにより、接合部材の剥離などを抑制することができる。
【0010】
例えば、請求項2に記載のように、
第1接合面(61)側と第2接合面(62)側とで、フィラー(64)の体積分率が異なる構成とすると良い。
【0011】
このように、体積分率、すなわち単位体積当りに占めるフィラー(64)の割合が異なる構成とすることで、第1接合面(61)の線膨張係数と第2接合面(62)の線膨張係数が異なる接合部材が得られる。また、体積分率が異なるだけなので、フィラー(64)の構成材料の種類を少なくすることもできる。
【0012】
例えば、請求項3に記載のように、第1接合面(61)側と第2接合面(62)側とで、フィラー(64)の単位体積当りの粒子数が異なる構成としても良い。また、請求項4に記載のように、第1接合面(61)側と第2接合面(62)側とで、フィラー(64)の粒度が異なる構成としても良い。なお、粒度は、平均粒子径とも言う。
【0013】
一方、請求項5に記載のように、
フィラー(64)として、組成が互いに異なるフィラー(64a,64b)を複数種類含み、
第1接合面(61)側と第2接合面(62)側とで、フィラー(64a,64b)の組成が異なる、若しくは、複数種類のフィラー(64a,64b)の混合比が異なる構成としても良い。
【0014】
このように、フィラー(64a,64b)の組成が異なる、若しくは、複数種類のフィラー(64a,64b)の混合比が異なる構成とすることで、第1接合面(61)の線膨張係数と第2接合面(62)の線膨張係数が異なる接合部材が得られる。
【0015】
請求項6に記載のように、
第1接合面(61)から第2接合面(62)にかけて、線膨張係数が連続的に変化した構成とすると良い。
【0016】
これによれば、第1接合面(61)の線膨張係数と第2接合面(62)の線膨張係数の差が大きくても、接合部材の内部に生じる熱応力を抑制することができる。
【0017】
上記した各発明に係る接合部材は、請求項7に記載のように、
第2部材としての、ダイアフラム(43)を有する金属ステム(40)と、第1部材としての、ダイアフラムにおける受圧面(43a)と反対の裏面(43b)上に配置されるセンサ素子(50)との接合に好適である。
【0018】
次に、請求項8に記載の発明は、
ガラス(63)を主成分として含み、
第1部材に接合される第1接合面(61)と、第1接合面と反対の面であり、線膨張係数が第1部材と異なる第2部材に接合される第2接合面(62)と、を有し、
第1部材と第2部材とを接合する固体状の接合部材の製造方法であって、
ガラス(63)を粉末状としたガラスフリット(65)と、線膨張係数を制御するための、ガラスフリットに反応しないフィラー(64)とを混合してなる混合粉と、バインダー(66)及び溶媒を混合してなるバインダー溶液とを混合して、ガラス混合溶液を調製する溶液調製工程(S10)と、
ガラス混合溶液を造粒・乾燥して、造粒粉(70)を
調製する造粒工程(S20)と、
造粒粉(70)に圧力を加えてガラス成形体を形成する成形工程(S30)と、
加熱により、ガラス成形体中のバインダー(66)を除去するとともに、ガラスフリットの一部を溶融させる加熱工程(S40)と、を備え、
溶液調製工程では、複数種類の混合粉を用いて、複数種類のガラス混合溶液を調製し、
造粒工程では、複数種類のガラス混合溶液を用いて、複数種類の造粒粉(70)を調製し、
成形工程では、ガラス成形体において、第1接合面(61)となる面の線膨張係数が、第2部材の線膨張係数よりも第1部材の線膨張係数に近く、第2接合面(62)となる面の線膨張係数が、第1部材の線膨張係数よりも第2部材の線膨張係数に近くなるように、複数種類の造粒粉(70)を積層配置して積層体とし、この積層体を積層方向において加圧することで、ガラス成形体を形成することを特徴とする。
【0019】
このように、混合粉を複数種類準備しておくことで、混合粉の種類に応じて複数種類の造粒粉(70)を調製することができる。そして、複数種類の造粒粉(70)を用いることで、第1接合面(61)と第2接合面(62)とで線膨張係数が異なる接合部材を得ることができる。すなわち、上記工程を経ることで、請求項1に記載の固体状の接合部材を得ることができる。本発明の作用効果は、請求項1に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【0020】
請求項9に記載のように、成形工程において、フィラー(64)の体積分率が互いに異なる複数種類の造粒粉(70)を用いても良い。また、請求項10に記載のように、成形工程において、フィラー(64)の組成が互いに異なる複数種類の造粒粉(70)を用いても良い。これら発明の作用効果は、それぞれ請求項2,5に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【0021】
請求項11に記載のように、
成形工程では、ガラス成形体において、第1接合面(61)となる面から第2接合面(62)となる面にかけて、線膨張係数が連続的に変化するように、3種類以上の造粒粉(70)を積層配置して積層体とすると良い。本発明の作用効果は、請求項6に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【0022】
請求項12に記載のように、
成形工程では、金型(80,82)に複数種類の造粒粉(70)を積層配置して積層体とした後、少なくとも積層体を積層方向において加圧するまでの間において、金型に振動又は遠心力を加えることが好ましい。
【0023】
これによれば、造粒粉(70)間の隙間に存在する空気を追い出して、造粒粉を密に充填することができる。すなわち、ガラス成形体、ひいては接合部材において、気孔空間であるボイドを低減することができる。また、例えば振動を印加すると、重い造粒粉(70)ほど金型(80,82)の下方に、軽い造粒粉(70)ほど金型(80,82)の上方に位置することとなる。このように、振動などを印加することで、複数種類の造粒粉(70)を、その重さによって確実に層別することもできる。
【0024】
上記各発明に係る接合部材の製造方法は、請求項13に記載のように、
ダイアフラム(43)を有する金属ステム(40)と、ダイアフラムにおける受圧面(43a)と反対の裏面(43b)上に配置されるセンサ素子(50)とを接合する接合部材の製造方法として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。以下に示す各実施形態では、接合部材が圧力センサに用いられる例を示す。
【0027】
(第1実施形態)
先ず、本実施形態に係る接合部材を備えた圧力センサについて、その概略を説明する。
【0028】
図1及び
図2に示す圧力センサ10は、自動車の燃料噴射系(例えばコモンレール)における図示しない燃料パイプに取り付けられ、この燃料パイプ内の被検出媒体、具体的には気体又は気液混合、の圧力を検出するものである。
【0029】
この圧力センサ10は、被取付部材としての測定用配管に取り付け可能なハウジング20と、ピン状のターミナル31がインサート成形等により一体化されたコネクタケース30と、を備えている。また、ハウジング20に固定された金属ステム40と、金属ステム40のダイアフラム43上に配置されたセンサチップ50と、金属ステム40にセンサチップ50を接合する接合部材60と、を備えている。
【0030】
ハウジング20は、例えば、ステンレス等の金属により、中空形状に形成されており、その下部の外周面には、測定用配管に締結可能な雄ねじ部21が形成されている。このハウジング20の上部には、周壁22に囲まれた開口部23が形成されている。また、ハウジング20の下面には、開口部23に連通する貫通孔24が形成されている。
【0031】
ハウジング20内には、略有底筒状に加工された金属ステム40が固定されている。この金属ステム40には、その一端側の端面中央に開口部41が形成されるとともに、この開口部41から他端側に延びる媒体導入通路42が形成されている。また、金属ステム40における媒体導入通路42の終端、すなわち開口部41と反対の他端部分は薄肉化されており、外力の印加によって変形可能なダイアフラム43が構成されている。また、金属ステム40のダイアフラム43側には、開口部41側に較べて外周径の大きい段部44が形成されている。
【0032】
このように形成される金属ステム40が、その段部44にて開口部23底面に環状に接触するとともに、開口部41が貫通孔24から露出するように、ハウジング20に取り付けられている。このため、ハウジング20を測定用配管に取り付けた状態で、測定用配管を流れる被検出媒体が、開口部41及び媒体導入通路42を介して、ダイアフラム43に導入される。
【0033】
金属ステム40を構成する金属材料としては、200MPa以上の高圧を受けることから、高強度であること、具体的には接合部材60よりもヤング率が大きいこと、が求められる。また、被検出媒体中に含まれる水分に対する耐食性を有することが求められる。このため、ステンレス鋼を採用することが好ましい。このステンレス鋼としては、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系などを採用することができる。さらには、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、析出硬化ステンレス鋼などを採用することもできる。なかでも、強度と耐食性に優れるSUS430、SUS630を採用することが好ましい。本実施形態では、SUS430を採用している。
【0034】
また、金属ステム40のダイアフラム43上、詳しくは、ダイアフラム43における受圧面43aと反対の裏面43b上に、接合部材60を介してセンサチップ50が固定されている。
【0035】
センサチップ50はシリコンからなり、図示しないゲージ抵抗が形成されている。ゲージ抵抗は、媒体導入通路42を介して導入された被検出媒体の圧力によってダイアフラム43が変位すると、この変位に応じて抵抗値が変化する。センサチップ50は、ゲージ抵抗の抵抗値変化を電気信号に変換して出力する検出部として機能するようになっている。
【0036】
また、金属ステム40の段部44上には、基板51が配置されている。この基板51は、センサチップ50及び接合部材60を取り囲むように環状をなしており、図示しない電子部品が実装されている。そして、基板51には、センサチップ50から入力される電気信号の処理を行うとともに、それに応じた出力信号を生成する信号処理回路などが構成されている。センサチップ50と基板51とは、ボンディングワイヤ52によって電気的に接続されている。なお、符号53は、ターミナル31と基板51の端子とを電気的に中継するリードである。符号54は、ハウジング20、コネクタケース30、及び金属ステム40からなる内部空間を気密に封止するための環状のシール材(例えばOリング)である。このシール材54は、コネクタケース30の下端部34の下端面とハウジング20の周壁22の内周面との間に配置されている。
【0037】
コネクタケース30は、合成樹脂など、ハウジング20よりも比熱が小さな材料を用いて形成されている。コネクタケース30の上部には、周壁32に囲まれた開口部33が形成されている。この開口部33内には、各ターミナル31の一端がそれぞれ突出しており、これにより、ターミナル31と外部機器との接続が可能となっている。一方、コネクタケース30の下端部34には、周壁32よりも外周径の大きい段部35が形成されている。また、下端部34の中央には、各ターミナル31の他端が露出されている。
【0038】
次に、接合部材60について、
図2及び
図3を用いて説明する。なお、金属ステム40が特許請求の範囲に記載の第2部材、センサチップ50が特許請求の範囲に記載の第1部材に相当する。また、センサチップ50は、特許請求の範囲に記載のセンサ素子に相当する。
【0039】
接合部材60は、金属ステム40とセンサチップ50を接合する前の状態で、ペースト状ではなく、固体状となっており、
図3に示すように、平板状に成形されている。この接合部材60は、センサチップ50に接合される第1接合面61と、第1接合面61と反対の面であり、金属ステム40に接合される第2接合面62と、を有している。本実施形態では、接合部材60の厚さが約100μmとなっている。
【0040】
接合部材60は、接合作用を提供するガラス63を主成分として含んでいる。ガラス63としては、センサチップ50の耐熱温度よりも低い温度で接合が可能な組成を採用することができる。例えば、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)、ホウ素(B)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、りん(P)などの成分を含有する無鉛ガラスを採用することができる、また、鉛(Pb)を含有する鉛ガラスを採用することもできる。本実施形態のガラス63は、後述する実施例で示すように、センサチップ50の耐熱温度470℃よりも低い400℃以下の低温で接合が可能な低融点組成となっている。
【0041】
また、接合部材60は、線膨張係数などを制御する(調整する)ために、ガラス63と反応しない粒子、すなわちフィラー64を有している。このフィラー64としては、コージェライトやリン酸ジルコン酸タングステン、アルミナ、シリカや鉄(Fe)、コバルト(Co)、タングステン(W)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、銀(Ag)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、セリウム(Ce)、ガリウム(Ga)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)の酸化物を使用することができる。なお、フィラー64の粒度は、0.1μmから50μmまで選択でき、主に接合部材60の厚みや被接合体(金属ステム40及びセンサチップ50)の表面粗さにより選択される。
【0042】
接合部材60において、第1接合面61の線膨張係数は、金属ステム40の線膨張係数よりもセンサチップ50の線膨張係数に近くなっている。一方、第2接合面62の線膨張係数は、センサチップ50の線膨張係数よりも金属ステム40の線膨張係数に近くなっている。なお、シリコンからなるセンサチップ50の線膨張係数は、例えば、30×10
−7/℃(25℃〜250℃)である。一方、SUS430からなる金属ステム40の線膨張係数は、例えば120×10
−7/℃(25℃〜250℃)である。
【0043】
本実施形態では、
図3に示すように、第1接合面61側と第2接合面62とで、フィラー64の体積分率、すなわち単位体積当りに占めるフィラー64の割合、が異なっている。具体的には、第1接合面61側と第2接合面62側とで、単位体積当りのフィラー64の粒子数が異なっており、第1接合面61側の表層のほうが、第2接合面62側の表層よりも、単位体積当りのフィラー64の粒子数が多くなっている。これにより、第1接合面61の線膨張係数はセンサチップ50の線膨張係数に近く、第2接合面62の線膨張係数は金属ステム40の線膨張係数に近くなっている。また、接合部材60の厚さ方向において、単位体積当りのフィラー64の粒子数は3段階で変化しており、第1接合面61から第2接合面62に近づくほど粒子数が減少している。これにより、接合部材60の線膨張係数は、連続的に変化している。本実施形態では、接合部材60が、後述する実施例のサンプル13に示す構成となっており、第1接合面61の線膨張係数が55×10
−7/℃(25℃〜250℃)、第2接合面62の線膨張係数が83×10
−7/℃(25℃〜250℃)となっている。
【0044】
次に、
図3に示す接合部材60の製造方法について、
図4〜
図7を用いて説明する。なお、
図5に示す符号65は、ガラスを粉末状としたガラスフリット、符号66はバインダー、符号70は造粒粉を示す。
【0045】
図4に示すように、先ず、ガラス混合溶液を調製する溶液調製工程を実施する(ステップ10)。この溶液調製工程は、混合粉を形成する工程(ステップ11)と、バインダー溶液を調製する工程(ステップ12)と、混合粉をバインダー溶液に混合・分散して、ガラス混合溶液を調製する工程(ステップ13)を含む。
【0046】
ステップ11では、所定の粒度を有するガラスフリット65と、所定の粒度を有するフィラー64とを、所定の比率で混合して、混合粉を調製する。このとき、フィラー64の体積分率が異なる混合粉を複数種類調製する。本実施形態では、ガラスフリット65及びフィラー64の組成、粒度を一定として、フィラー64の体積分率、具体的には単位体積当りのフィラー64の粒子数、が異なる混合粉を3種類形成する。なお、フィラー64の体積分率とは、混合粉(ガラスフリット65+フィラー64)に占めるフィラー64の体積の割合である。
【0047】
ステップ12では、バインダー66を、ガラス混合溶液中で例えば1〜20重量%となるように、溶媒に添加・溶解させて、バインダー溶液を調製する。なお、バインダー66は、ガラスフリット65同士、フィラー64同士、ガラスフリット65とフィラー64、を接着する接着材として機能する。
【0048】
ステップ13では、複数種類の混合粉を、バインダー溶液にそれぞれ混合・分散して、複数種類のガラス混合溶液を調製する。
【0049】
次いで、
調製したガラス混合溶液を用いて造粒粉を調製する造粒工程を実施する(ステップ20)。この造粒工程では、ガラス混合溶液を造粒・乾燥して、
図5に模式的に示す造粒粉70を
調製する。ここで、造粒粉70とは、噴霧乾燥法、混合攪拌乾燥法などにより、
図5に示すように、バインダー66を介して、ガラスフリット65及びフィラー64が集団となった略球状の粒子を指す。本実施形態では、ガラス混合溶液を乾燥空気中で噴霧乾燥することにより、造粒粉70を得る。また、この造粒工程では、上記した複数種類のガラス混合溶液を用いて、複数種類の造粒粉70をそれぞれ調製する。すなわち、単位体積当りのフィラー64の粒子数が異なる複数種類の造粒粉70を調製する。
【0050】
次いで、造粒粉70に圧力を加えてガラス成形体を形成する成形工程を実施する(ステップ30)。この成形工程では、複数種類の造粒粉70を積層配置して積層体とし、この積層体を積層方向において加圧する。このとき、成形により得られるガラス成形体において、第1接合面61となる面の線膨張係数がセンサチップ50の線膨張係数に近く、第2接合面62となる面の線膨張係数が金属ステム40の線膨張係数に近くなるように、複数種類の造粒粉70を順に積層する。さらには、第1接合面61となる面から第2接合面62となる面にかけて、線膨張係数が連続的に変化するように、3種類以上の造粒粉70を順に積層して積層体とする。
【0051】
本実施形態では、
図6に示すように、ガラス成形体を形成する金型が、円筒形状をなす筒状型80を有する。さらに、円柱形状をなし、一部が筒状型80の中空部81に挿入・配置される下型82と、円柱形状をなし、一部が下型82と反対から中空部81に挿入・配置される上型83と、を有する。そして、筒状型80の中空部81に下型82の一部を挿入・配置させた状態で、中空部81内に位置する下型82の一端面上に、3種類の造粒粉70を順に積層する。具体的には、
図7に示すように、下型82側から、単位体積当たりのフィラー64の粒子数が最も少ない造粒粉70からなる第3層73、フィラー64の粒子数が中間の造粒粉70からなる第2層72、フィラー64の粒子数が最も多い造粒粉70からなる第1層71の順で積層する。なお、造粒粉70の積層方向は、鉛直方向と一致している。また、本実施形態では、単位体積当りで、フィラー64よりもガラスフリット65のほうが重い。このため、3種類の造粒粉70の積層順を、フィラー64の粒子数が少なく、重たい造粒粉70を最下層である第3層73とし、フィラー64の粒子数が多く、軽い造粒粉70を最上層である第1層71とする。
【0052】
次いで、上型83の一部を中空部81内に挿入・配置する前に、
図7に白抜き矢印で示すように、金型80,82に振動を印加する。これにより、造粒粉70間の隙間に存在する空気が追い出され、造粒粉70が密に充填される。また、振動の印加により、比重の大きい、すなわち重い造粒粉70ほど下型82側に、比重の小さい、すなわち軽い造粒粉70ほど上型83側に位置することとなる。
【0053】
そして、振動印加後に、上型83の一部を中空部81内に挿入・配置し、図示しないパンチなどにより、上型83を下型82に近づく方向に押し込む。このようにして、積層体に200MPa程度の圧力を加えると、各層71〜73の界面でバインダー66同士が接着する。したがって、形状寸法を制御したガラス成形体を得ることができる。
【0054】
次いで、加熱により、ガラス成形体中のバインダー66を除去するとともに、ガラスフリット65の一部を溶融させる加熱工程を実施する(ステップ40)。この加熱工程では、ガラス成形体に対し、ガラスフリット65の軟化点以下の300℃で約30分間熱処理を行うことで、添加したバインダー66を除去する。また、溶融することで、隣り合う層のガラスフリット65同士、及び、同一層内のガラスフリット65同士が一部結合し、各層71〜73が一体化する。以上により、
図3に示す固体状の接合部材60を得ることができる。
【0055】
得られる接合部材60は、上記加熱工程を経ることで、適度な硬さ・強度があるため、ガラス成形体の状態よりも、取り扱いが容易となる。また、形が崩れることや、一部が欠ける現象を抑制することができる。また、単位体積当りのフィラー64の粒子数は、第1接合面61から第2接合面62にかけて大まかに3段階で変化し、第2接合面62側の表層において、フィラー64の粒子数が最も少なく、第1接合面61側の表層において、フィラー64の粒子数が最も多くなっている。そして、第1接合面61となる面から第2接合面62となる面にかけて、線膨張係数が連続的に変化している。
【0056】
そして、このようにして得た接合部材60を金属ステム40上に配置し、接合部材60上にセンサチップ50を配置する。その後、例えばセンサチップ50の耐熱温度よりも低い温度であってガラスフリット65が溶融する温度で所定時間の熱処理を行うことにより、上記した圧力センサ10を得ることができる。
【0057】
次に、本実施形態に係る接合部材60及びその製造方法の効果について説明する。
【0058】
本実施形態では、接合部材60を固体状としているため、ガラスペーストに較べて温度、湿度といった外部雰囲気の影響を受けにくく、これにより寸法精度を向上することができる。したがって、センサチップ50の位置ずれ、傾き等を抑制することができる。
【0059】
また、センサチップ50に接合される第1接合面61の線膨張係数を、金属ステム40よりもセンサチップ50の線膨張係数に近くし、これにより、第1接合面61とセンサチップ50との線膨張係数の差を小さくしている。このため、第1接合面61とセンサチップ50との線膨張係数の差に基づいて、この接合界面に生じる熱応力を低減することができる。一方、金属ステム40に接合される第2接合面62の線膨張係数を、センサチップ50よりも金属ステム40の線膨張係数に近くし、これにより、第2接合面62と金属ステム40との線膨張係数の差が小さくしている。このため、第2接合面62と金属ステム40との線膨張係数の差に基づいて、この接合界面に生じる熱応力を低減することができる。以上により、接合部材60の剥離などを抑制することができる。
【0060】
さらには、第1接合面61から第2接合面62にかけて、線膨張係数を連続的に変化させている。詳しくは、第1接合面61の線膨張係数が最も小さく、第2接合面62の線膨張係数が最も大きくなっている。そして、接合部材60の厚さ方向において、任意位置の線膨張係数は、該任意位置よりも第1接合面61に近い位置の線膨張係数以上となっている。このため、第1接合面61の線膨張係数と第2接合面62の線膨張係数の差が大きくても、接合部材60の内部に生じる熱応力を抑制することができる。
【0061】
以上により、本実施形態に係る接合部材60は、ダイアフラム43を有する金属ステム40とダイアフラム43における受圧面43aと反対の裏面43b上に配置されるセンサチップ50との接合に好適である。特に、200MPa以上の高圧を受けるためにステンレス鋼からなる金属ステム40と、シリコンからなるセンサチップ50との接合に好適である。
【0062】
なお、本実施形態では、接合部材60の第1接合面61側の表層と第2接合面62側の表層においてフィラー64の体積分率が異なることで、第1接合面61の線膨張係数と第2接合面62の線膨張係数が異なる接合部材60となっている。具体的には、第1接合面61側の表層及び第2接合面62側の表層における単位体積当りのフィラー64の粒子数が異なっている。また、第1接合面61から第2接合面62にかけて、線膨張係数を連続的に変化させている。詳しくは、フィラー64の粒子数が、第1接合面61の表層で最も多く、第2接合面62の表層で最も少なくなっている。そして、接合部材60の厚さ方向において、任意位置の粒子数は、該任意位置よりも第1接合面61に近い位置の粒子数以下となっている。このような構成は、複数種類の造粒粉70を用いることで形成することができる。このように、本実施形態では、フィラー64の粒子数、すなわち体積分率により、接合部材60の厚さ方向において接合部材60の線膨張係数が制御されている。このため、フィラー64の構成材料の種類を少なくすることもできる。
【0063】
また、本実施形態では、成形工程において、上型83の一部を筒状型80の中空部81内に挿入・配置する前に、金型80,82に振動を印加する。これにより、造粒粉70間の隙間に存在する空気が追い出され、造粒粉70を密に充填することができる。すなわち、ガラス成形体、ひいては接合部材60において、気孔空間であるボイドを低減することができる。また、振動の印加により、比重の大きい、すなわち重い造粒粉70ほど下型82側に、比重の小さい、すなわち軽い造粒粉70ほど上型83側に位置することとなる。これにより、複数種類の造粒粉70を、その重さによって、より確実に層別することもできる。
【0064】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した接合部材60、圧力センサ10、及びこれらの製造方法と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、接合部材60の第1接合面61側の表層と第2接合面62側の表層において、フィラー64の体積分率が互いに異なる構成とすることで、第1接合面61の線膨張係数と第2接合面62の線膨張係数の線膨張係数が異なる例を示した。また、接合部材60の厚さ方向においてフィラー64の体積分率が異なり、第1接合面61から第2接合面62にかけて、線膨張係数が連続的に変化している例を示した。
【0065】
これに対し、本実施形態では、
図8に示すように、第1接合面61と第2接合面62とにおいて、フィラー64の粒度、すなわち平均粒子径が互いに異なる構成とすることで、第1接合面61の線膨張係数と第2接合面62の線膨張係数が異なる点を特徴とする。さらには、接合部材60の厚さ方向においてフィラー64の粒度が異なり、第1接合面61から第2接合面62にかけて、線膨張係数が連続的に変化している点を特徴とする。
【0066】
図8に示す接合部材60において、フィラー64の粒度は、第1接合面61の表層で最も大きく、第2接合面62の表層で最も小さくなっている。そして、接合部材60の厚さ方向において、任意位置の粒度は、該任意位置よりも第1接合面61に近い位置の粒度以下となっている。
【0067】
このような接合部材60を採用しても、第1実施形態に示す接合部材60と同等の効果を奏することができる。なお、本実施形態の接合部材60は、後述する実施例のサンプル15に示す構成となっており、第1接合面61の線膨張係数が55×10
−7/℃(25℃〜250℃)、第2接合面62の線膨張係数が85×10
−7/℃(25℃〜250℃)となっている。
【0068】
なお、
図8に示す接合部材60は、基本的に第1実施形態に示す製造方法を用いて形成することができる。異なる点は、
図9に示すように、下型82側から、フィラー64の粒度が最も小さい造粒粉70からなる第3層73、フィラーの粒度が中間の造粒粉70からなる第2層72、フィラー64の粒度が最も大きい造粒粉70からなる第1層71の順で積層する点である。本実施形態でも、単位体積当りで、フィラー64よりもガラスフリット65のほうが重いため、造粒粉70の重さは、ガラスフリット65の体積分率が大きいほど、すなわちフィラー64の体積分率が小さいほど、重くなる。このため、3種類の造粒粉70の積層順を、フィラー64の粒度が小さい造粒粉70を最下層である第3層73とし、フィラー64の粒度が大きい造粒粉70を最上層である第1層71とする。それ以外の点については、第1実施形態と同様である。これにより、
図8に示す接合部材60を形成することができる。
【0069】
(第3実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した接合部材60、圧力センサ10、及びこれらの製造方法と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、接合部材60の厚さ方向においてフィラー64の体積分率が異なることで、第1接合面61の線膨張係数と第2接合面62の線膨張係数が異なる例を示した。また、第1接合面61から第2接合面62にかけて、線膨張係数が連続的に変化している例を示した。一方、第2実施形態では、接合部材60の厚さ方向においてフィラー64の粒度が異なることで、第1接合面61の線膨張係数と第2接合面62の線膨張係数が異なる例を示した。また、第1接合面61から第2接合面62にかけて、線膨張係数が連続的に変化している例を示した。
【0070】
これに対し、本実施形態では、
図10に示すように、接合部材60の第1接合面61側の表層と第2接合面62側の表層において、フィラー64の組成が互いに異なる構成とすることで、第1接合面61の線膨張係数と第2接合面62の線膨張係数の線膨張係数が異なる点を特徴とする。さらには、接合部材60の厚さ方向においてフィラー64の組成が異なり、第1接合面61から第2接合面62にかけて、線膨張係数が連続的に変化している点を特徴とする。
【0071】
図10に示す接合部材60において、第1接合面61の表層には、第1フィラー64aが配置され、第2接合面62の表層には、第1フィラー64aと組成が異なる第2フィラー64bが配置されている。そして、第1接合面61の表層と第2接合面62の表層の中間には、第1フィラー64aと第2フィラー64bが配置されている。このように、組成が異なる複数種類のフィラー64a,64bを用い、その混合比を接合部材60の厚さ方向で変えることで、接合部材60に表裏で異なる線膨張係数を付与している。また、厚さ方向において、接合部材60の線膨張係数が連続的に変化している。
【0072】
このような接合部材60を採用しても、第1実施形態に示す接合部材60と同様の効果を奏することができる。なお、本実施形態の接合部材60は、後述する実施例のサンプル17に示す構成となっており、第1接合面61の線膨張係数が55×10
−7/℃(25℃〜250℃)、第2接合面62の線膨張係数が84×10
−7/℃(25℃〜250℃)となっている。
【0073】
なお、
図10に示す接合部材60は、基本的に第1実施形態に示す製造方法を用いて形成することができる。異なる点は、
図11に示すように、下型82側から、第2フィラー64bのみを含む造粒粉70からなる第3層73、第1フィラー64a及び第2フィラー64bを含む造粒粉70からなる第2層72、第1フィラー64aのみを含む造粒粉70からなる第1層71の順で積層する点である。本実施形態では、第2フィラー64bのほうが第1フィラー64aよりも重いため、造粒粉70の重さは、第2フィラー64bの割合が高いほど重くなる。このため、3種類の造粒粉70の積層順を、第2フィラー64bのみを含む造粒粉70を最下層である第3層73とし、第1フィラー64aのみを含む造粒粉70を最上層である第1層71とする。それ以外の点については、第1実施形態と同様である。これにより、
図10に示す接合部材60を形成することができる。
【0074】
(実施例)
次に、具体的な実施例について説明する。
【0075】
(ガラスフリット65の形成方法)
ガラスフリット65(ガラス63)の原料としては、V
2O
5、P
2O
5、TeO
2、Fe
2O
3を用いる。また、ガラスフリット65の組成は、酸化物換算でVが50重量%、Pが15重量%、Teが25重量%、Feが10重量%となるようにする。上記した各酸化物を上記組成となるように調合・混合する。この原料をPtルツボに入れ、焼成炉で10℃/分の昇温し、900〜950℃で1時間保持して、ガラスを得た。そして、得られたガラスをPtルツボから取り出し、その後、粉砕処理により粒径20μm未満にまで粉砕する。次いで、ふるい通しを行って、粒度3μmのガラスフリット65を得た。
【0076】
(造粒粉70の調製方法)
図12にサンプル1〜11として示す調合比の通りに、フィラー64を準備し、各フィラー64と上記した粒度3μmのガラスフリット65とを混合して種々の混合粉を得た。なお、
図12において、第1フィラーは、リン酸ジルコン酸タングステン(Zr
2WP
2O
12)であり、第2フィラーは、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)である。また、ガラスフリット65及びフィラー64の粒度については、専用の粒度計で定量評価した。
【0077】
また、溶媒としてのブチルカルビレートアセテートに、バインダー66としてエチルセルロースを、ガラス混合溶液中で1重量%となるように添加・溶解し、バインダー溶液を得た。なお、溶媒は、ガラス混合溶液中で24重量%となるようにした。そして、各混合粉をバインダー溶液にそれぞれ混合・分散し、ガラス混合溶液を調製した。
【0078】
次いで、上記実施形態に示したように、各ガラス混合溶液を乾燥空気中で噴霧乾燥することにより、サンプル1〜11に示す11種類の造粒粉70を調製した。
【0079】
(接合部材60の調製方法)
図13に、サンプル12〜23として示す調合比の通りに、造粒粉70を準備し、順次金型80,82に充填した。なお、サンプル12〜17については、上記実施形態同様、造粒粉70を3層配置とし、第1層71を各実施形態同様、センサチップ50側の層とした。また、サンプル18〜23については、造粒粉23を2層配置とした。また、得られる接合部材60の厚さを約100μmとし、造粒粉70による各層の厚さをほぼ等しくした。
【0080】
そして、上記実施形態同様、金型80,82に振動を加えた後、積層体に200MPa程度の圧力を加えることで、形状寸法を制御したガラス成形体を得た。次いで、ガラス成形体に対し、軟化点以下の300℃で30分間熱処理を行うことにより、バインダー66を除去し、サンプル12〜23に示す11種類の接合部材60を得た。
【0081】
なお、各接合部材60の線膨張係数は、
図13に示す通りである。例えばサンプル13では、第1接合面61の線膨張係数が55×10
−7/℃(25℃〜250℃)、第2接合面62の線膨張係数が83×10
−7/℃(25℃〜250℃)となっている。また、
図13に示すように、第1実施形態の
図3に示す接合部材60は、サンプル13に対応しており、
図3では、サンプル13のSEM画像を模式化して図示している。同様に、第2実施形態の
図8に示す接合部材60は、サンプル15に対応しており、
図8では、サンプル15のSEM画像を模式化して図示している。同様に、第3実施形態の
図10に示す接合部材60は、サンプル17に対応しており、
図10では、サンプル17のSEM画像を模式化して図示している。
【0082】
(信頼性試験及びその結果について)
作成した接合部材60の各サンプル12〜23と、比較サンプル1,2の信頼性を、高温連続試験と冷熱サイクル試験により評価した。なお、評価に当たっては、各サンプルを接合部材60として用いた圧力センサ10で試験を行った。その際、金属ステム40上に各サンプル(接合部材60)を配置し、各サンプル上にセンサチップ50を配置した後に、420℃で20分間熱処理を行い、圧力センサ10を得た。
【0083】
なお、比較サンプル1は、
図12に示すサンプル3のみで厚さ100μmの接合部材60としたものである。すなわち、サンプル13に対し、その第2層に用いたサンプル3のみで接合部材60を構成したものである。また、比較サンプル2は、
図12に示すサンプル9のみで厚さ100μmの接合部材60としたものである。すなわち、サンプル17に対し、その第2層に用いたサンプル9のみで接合部材60を構成したものである。
【0084】
また、高温連続試験では、各サンプルを用いた圧力センサ10を、170℃で240時間保持し、接合部材60に剥離や亀裂が生じていないかを確認した。一方、冷熱サイクル試験では、各サンプルを用いた圧力センサ10を、170℃の温度環境に1時間保持した後に23℃の温度環境に10分間保持し、−40℃の温度環境に1時間保持した後に23℃の温度環境に10分間保持し、170℃の温度環境もどす試験工程を1サイクルとした。そして、これを200サイクル繰り返して、接合部材60に剥離や亀裂が生じていないかを確認した。
【0085】
図14に示すように、サンプル12〜23では、いずれの試験においても剥離、亀裂が確認されなかった。すなわち、試験後においても、金属ステム40にセンサチップ50が良好に接合されていた。このように、第1接合面61の線膨張係数を、金属ステム40よりもセンサチップ50の線膨張係数に近くし、第2接合面62の線膨張係数を、センサチップ50よりも金属ステム40の線膨張係数に近くしたサンプル12〜23では、剥離、亀裂が確認されなかった。
【0086】
一方、比較サンプル1では、高温連続試験において、20時間経過時点で剥離が確認された。また、冷熱サイクル試験において、10サイクル目で亀裂が確認された。また、比較サンプル2では、高温連続試験において、20時間経過時点で剥離が確認された。また、冷熱サイクル試験において、8サイクル目で亀裂が確認された。このように、線膨張係数をその厚み方向で等しくした比較サンプル1,2では、剥離や亀裂が生じた。
【0087】
以上の結果から、第1接合面61の線膨張係数を、金属ステム40よりもセンサチップ50の線膨張係数に近くし、第2接合面62の線膨張係数を、センサチップ50よりも金属ステム40の線膨張係数に近くすると、接続信頼性を向上できることが明らかとなった。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0089】
各実施形態に示した造粒粉70の層数は3層に限定されるものではない。例えば実施例に示したサンプル18〜23のように2層としても良い。また、4層以上としても良い。
【0090】
各実施形態では、上型83を筒状型80の中空部81に配置して、積層体を加圧する前に、筒状型80及び下型82に振動を印加する例を示した。しかしながら、振動に代えて、筒状型80及び下型82に遠心力を印加しても同様の効果を奏することができる。また、造粒粉70により積層体を形成した後、振動や遠心力を印加せずに、上型83を筒状型80の中空部81に配置して積層体を加圧し、ガラス成形体を形成しても良い。
【0091】
各実施形態では、接合部材60が、圧力センサ10を構成する金属ステム40とセンサチップ50の接合に用いられる例を示したが、その用途は上記例に限定されるものではない。線膨張係数が互いに異なる第1部材と第2部材とを接合する接合部材に対して、適用することができる。
【0092】
各実施形態では、ガラス63(ガラスフリット65)の組成を、接合部材60の厚さ方向において、同一とする例を示した。しかしながら、厚さ方向においてガラスフリット65の組成が異なる異ならせることで、接合部材60の第1接合面61と第2接合面62の線膨張係数を異ならせても良い。しかしながら、積層体の各層でガラスフリット65の組成を同一としたほうが、加熱工程において温度制御がしやすくなる。
【0093】
第1実施形態では、単位体積当たりのフィラー64の粒子数が異なる例を示した。また、第2実施形態では、フィラー64の粒度が異なる例を示した。また、第3実施形態では、フィラー64の組成及び混合比が異なる例を示した。しかしながら、フィラー64の粒子数、粒度、組成のうち、少なくとも2つを組み合わせることで、第1接合面61と第2接合面62の線膨張係数が異なった構成の接合部材60としても良い。
【0094】
各実施形態では、特に言及しなかったが、センサチップ50に、処理回路が集積された構成としても良い。