(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919923
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】打楽器用のペダル装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20160428BHJP
G10H 1/00 20060101ALI20160428BHJP
G10D 13/00 20060101ALI20160428BHJP
【FI】
G10H1/32 A
G10H1/00 A
G10D13/00 191
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-61999(P2012-61999)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-195655(P2013-195655A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆二
【審査官】
▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3059105(JP,B2)
【文献】
特開2007−017805(JP,A)
【文献】
実開昭55−022728(JP,U)
【文献】
米国特許第04744279(US,A)
【文献】
特開2012−037661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/00
G10H 1/00
G10H 1/34
G10H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に対して一端部が軸支され、踏み込み方向に操作されて回動するフットボードと、
前記フットボードの前記一端部から自由端部までの間において、前記ベース部と前記フットボードとの間に介在するよう配設され、前記フットボードを踏み上げ方向に付勢するコイルバネと、
前記フットボードの前記一端部から自由端部までの間において、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか一方に設けられ、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか他方に向かって突出した突部と、
前記フットボードの前記一端部から自由端部までの間において、前記いずれか他方に設けられ、前記突部に対向する対向部とを有し、
前記突部及び前記対向部は、前記コイルバネの内側領域に設けられ、前記フットボードの踏み込みの往行程において互いに当接するよう構成されたことを特徴とする打楽器用のペダル装置。
【請求項2】
ベース部と、
前記ベース部に対して一端部が軸支され、踏み込み方向に操作されて回動するフットボードと、
前記ベース部と前記フットボードとの間に介在するよう配設され、前記フットボードを踏み上げ方向に付勢するコイルバネと、
前記ベース部及び前記フットボードのいずれか一方に設けられ、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか他方に向かって突出した突部と、
前記いずれか他方に設けられ、前記突部に対向する対向部と、
前記コイルバネの内側領域において、前記突部と前記対向部との間に配設され、前記突部及び前記対向部の両者に押圧されて前記フットボードの動作を検出するための第2の検出手段とを有し、
前記突部及び前記対向部は、前記コイルバネの内側領域に設けられ、前記フットボードの踏み込みの往行程において互いに当接するよう構成されたことを特徴とする打楽器用のペダル装置。
【請求項3】
前記コイルバネは、前記フットボードの前記一端部から自由端部までの長手方向における中央位置を付勢するよう配設されたことを特徴とする請求項1または2記載の打楽器用のペダル装置。
【請求項4】
前記突部及び前記対向部が互いに当接することで、前記フットボードの踏み込みの往行程における回動終了位置が規制されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の打楽器用のペダル装置。
【請求項5】
前記コイルバネの外側領域には、前記フットボードに押圧されて前記フットボードの動作を検出するための第1の検出手段が配設され、前記フットボードの踏み込みの往行程において、前記突部と前記対向部とは、前記第1の検出手段が前記フットボードに押圧された後に当接し得ることを特徴とする請求項4記載の打楽器用のペダル装置。
【請求項6】
前記突部は、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか一方に一体に形成され、前記対向部は、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか他方に一体に形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の打楽器用のペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打楽器用のペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、打楽器用のペダル装置が知られている。下記特許文献1のペダル装置では、ベースプレートにフットボードが回動自在に軸支される。フットボードを踏み込むと、フットボードがセンサラバーを介してセンサパターンを押圧することで、フットボードの動作が検出される。そして、踏み込まれたフットボードの踏込力を解除すると、ベースプレートとフットボードとの間に介在するコイルバネによってフットボードが付勢されて初期位置に復帰する。
【0003】
センサラバーはフットボードの自由端部から押圧力を受け、踏み込み力を受けるとセンサラバーが変形する。仮に必要以上に強い踏み込み力を受けたとしても、センサラバーが発生させる反力によって、フットボードが一定以上に回動することはない。従って実質的に、アクチュエータであるセンサラバーが、過負荷時のフットボードの回動終了位置を規制するリミットストッパの機能を兼ねる。
【0004】
また、下記特許文献2のペダル装置では、フットボードの自由端部に、ベースプレートと当接するリミットストッパを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3059105号公報
【特許文献2】特開2008−145464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2のペダル装置では、リミットストッパとして機能する部材の位置は、フットボードの自由端部に相当する位置である。踏み込みされるときには、フットボードがベースプレートに軸支される位置と自由端部との2箇所で支持される、離間した2点支持の形となるため、踏み込み操作されるフットボードの長手方向中央付近が最も大きく撓もうとする。そこで、大きな変形を回避するために、フットボードを厚くしたり適切な材質・形状を選定したりして、曲げ剛性を高くしているのが通常である。
【0007】
また、リミットストッパがベースプレートに当接する部分は、奏者の指等の身体部分が入りやすい設計であるとすると、身体部分を挟むおそれがあり安全でない。従って、ケースの形状を工夫する等によって、何らかの防御用の構成を設ける必要がある。また仮に、フットボードの上記の離間した2点支持を回避するべく、リミットストッパを軸支部の近くに配置したとすると、リミットストッパの下に身体部分が不用意に入るおそれが高くなるため、安全確保のために一層工夫して設計する必要があり、設計も複雑化する。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な設計で、身体を挟むことを防止して安全性を高めることができる打楽器用のペダル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の打楽器用のペダル装置は、ベース部(11)と、前記ベース部に対して一端部(20a)が軸支され、踏み込み方向に操作されて回動するフットボード(20)と、
前記フットボードの前記一端部から自由端部までの間において、前記ベース部と前記フットボードとの間に介在するよう配設され、前記フットボードを踏み上げ方向に付勢するコイルバネ(16)と、
前記フットボードの前記一端部から自由端部までの間において、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか一方に設けられ、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか他方に向かって突出した突部(25、35)と、
前記フットボードの前記一端部から自由端部までの間において、前記いずれか他方に設けられ、前記突部に対向する対向部(11a、20c、25、35)とを有し、前記突部及び前記対向部は、前記コイルバネの内側領域に設けられ、前記フットボードの踏み込みの往行程において互いに当接するよう構成されたことを特徴とする。
上記目的を達成するために本発明の請求項2の打楽器用のペダル装置は、ベース部と、前記ベース部に対して一端部が軸支され、踏み込み方向に操作されて回動するフットボードと、前記ベース部と前記フットボードとの間に介在するよう配設され、前記フットボードを踏み上げ方向に付勢するコイルバネと、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか一方に設けられ、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか他方に向かって突出した突部と、前記いずれか他方に設けられ、前記突部に対向する対向部と、前記コイルバネの内側領域において、前記突部と前記対向部との間に配設され、前記突部及び前記対向部の両者に押圧されて前記フットボードの動作を検出するための第2の検出手段とを有し、前記突部及び前記対向部は、前記コイルバネの内側領域に設けられ、前記フットボードの踏み込みの往行程において互いに当接するよう構成されたことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記コイルバネは、前記フットボードの前記一端部から自由端部(20b)までの長手方向における中央位置を付勢するよう配設される(請求項
3)。
【0011】
好ましくは、前記突部及び前記対向部が互いに当接することで、前記フットボードの踏み込みの往行程における回動終了位置が規制される(請求項
4)。
【0012】
好ましくは、前記コイルバネの外側領域には、前記フットボードに押圧されて前記フットボードの動作を検出するための第1の検出手段(15)が配設され、前記フットボードの踏み込みの往行程において、前記突部と前記対向部とは、前記第1の検出手段が前記フットボードに押圧された後に当接し得る(請求項
5)。
【0014】
好ましくは、前記突部は、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか一方に一体に形成され、前記対向部は、前記ベース部及び前記フットボードのいずれか他方に一体に形成される(請求項6)。
【0015】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によれば、簡単な設計で、身体を挟むことを防止して安全性を高めることができる。
【0017】
請求項2によれば、踏み込みに対するフットボードの強度を効率よく高めることができる。
【0018】
請求項3によれば、ストッパとしての機構部分の安全性を高めることができる。
【0019】
請求項4によれば、過負荷時のリミットストッパとしての機構部分の安全性を高めることができる。
【0020】
請求項5によれば、ハイハットコントローラ用ペダルに好適である。
【0021】
請求項6によれば、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る打楽器用のペダル装置の模式的な上面図(図(a))、ペダル装置の非踏み込み状態、踏み込み状態を示す模式的な側面図(図(b)、(c))である。
【
図2】変形例の突部を採用するペダル装置の突部付近の模式的な断面図である。
【
図3】変形例の突部を採用するペダル装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係る打楽器用のペダル装置の模式的な上面図である。
図1(b)、(c)は、ペダル装置の非踏み込み状態、踏み込み状態を示す模式的な側面図であり、一部を断面で示している。
【0025】
このペダル装置は、例えば、打楽器としてのバスドラムに用いられるキックペダルに好適である。打楽器は電子打楽器であってもよい。このペダル装置は、床面24の上に設置されて、フットボード20の踏み込みにより演奏操作がされる。以降、ペダル装置の前後、上下方向は、水平な床面24に載置された状態を基準とし、
図1(b)の左側、上側が、それぞれ前側、上側とする。
【0026】
図1(a)〜(c)に示すように、ペダル装置は基台10を有し、基台10上に、板状のフットボード20が配設される。基台10は、床面24に水平なベース部11と、ベース部11から上方に突設されたカバー12とを有する。カバー12の後部天井下部に緩衝材でなるストッパ部13が配設される。
【0027】
基台10のベース部11の前部にはヒール19が設けられ、ヒール19に、左右方向(
図1(b)の奥行き方向)に沿って回動軸21が設けられる。回動軸21に、フットボード20の一端部である前端部20aが軸支されている。これにより、フットボード20は、回動軸21を中心に自由端部である後端部20bが上下方向(
図1(b)の時計及び反時計方向)に回動自在になっている。以降、回動方向については、後端部20bが時計方向に回動する方向を「踏み込み方向」、反時計方向に回動する方向(踏み込み方向の反対方向)を「踏み上げ方向」と呼称する。フットボード20の後端部20bの下部には、押し子22が前方に延設されると共に、規制片23が後方に延設される。
【0028】
ベース部11の前後方向中間部には、バネカバー部18が設けられる。バネカバー部18は、カバー12の一部として構成される。バネカバー部18には穴18aが形成されている。コイルバネ16が、穴18aを貫通して、ベース部11とフットボード20との間に介在するように配設される。コイルバネ16の下端がベース部11の上面に固定されると共に、コイルバネ16の上端がフットボード20の下面に固定されている。
【0029】
フットボード20の下面からは、リミットストッパとなる突部25がベース部11に向かって突出するよう設けられている。
図1(b)、(c)では、コイルバネ16は断面で示されており、突部25は、巻回されているコイルバネ16に囲まれるようにコイルバネ16の内側領域に配置される。コイルバネ16は、フットボード20の前端部20aから後端部20bまでの長手方向における中央位置で且つコイルバネ16の内側領域を付勢する。
【0030】
コイルバネ16が固定されるベース部11の上面のうちコイルバネ16の内側領域に相当する対向部11aに、非踏み込み状態において突部25の先端面が対向する。フットボード20が踏み込みされると、踏み込み強さによっては突部25の先端面が対向部11aに当接し、過負荷防止のためのリミットストッパとして突部25が機能する。突部25と対向部11aとは、コイルバネ16の内側領域で当接するので、コイルバネ16が簡易カバー(バカ除け)となり、演奏者の足や手の指等の身体部分が不用意に挟まれることが防止される。
【0031】
なお、当接の緩衝や消音のためには、突部25はゴム等の弾性部材で構成するか、先端面に弾性部材を固着するのがよく、対向部11aにも弾性部材を固着するのがよい。これらの固着する弾性部材としてはゴムシート、不織布やフェルト等が適している。
【0032】
図1(b)、(c)に示すように、ベース部11の後半部上面におけるコイルバネ16の外側領域には、アクチュエータ14と、センサパターンでなるセンサ15とが備えられる。アクチュエータ14は、ゴム等の弾性体で構成され、前端がベース部11に固定され、後半部が上方に湾曲して弧を描く形状に形成されている。
【0033】
フットボード20は、足を乗せていない非操作状態(非踏み込み状態)で且つ自由状態においては、コイルバネ16により上方に付勢されると共に、規制片23がストッパ部13に当接することで、
図1(a)に示すような回動位置に安定する。この回動位置がフットボード20の初期位置である。
【0034】
フットボード20が踏み込みされて押し子22によりアクチュエータ14の自由端(後端)が押圧されると、アクチュエータ14の円弧の曲率半径が大きくなるように変形する。アクチュエータ14がほぼ水平に近くなるまで押圧されると、それが通常演奏操作におけるフットボード20の一応の下限位置となる。コイルバネ16は、フットボード20を踏み上げ方向に常に付勢しており、踏み込みを解除するとフットボード20は初期位置に復帰する。
【0035】
アクチュエータ14が変形してセンサ15に接触すると、接触状態に応じた検出信号が出力される。その接触面積は、アクチュエータ14の変形が大きいほど、すなわち、フットボード20のベース部11に対する踏み込み方向への回動角度が大きいほど大きくなる。センサ15は、アクチュエータ14との接触面積が大きいほど電気抵抗値が小さくなるように構成される。その抵抗値の変化を把握することにより、フットボード20の位置や踏み込み強さが検出され、それらに応じて、発生する音の音量や音色等を変化させることができる。
【0036】
検出信号は、不図示のジャックを通じて出力され、出力された信号は、打撃演奏トリガ信号として不図示の信号処理部に送られ、打撃演奏データに変換されたり、リアルタイムに音響に変換されたりする。なお、センサ15の構成は問わず、アクチュエータ14からの押圧力によりフットボード20の動作(打撃の有無、位置、押圧強さ等)を検出できるものであればよい。例えば、メンブレンスイッチ、ピエゾセンサや圧力センサであってもよい。
【0037】
ところで、演奏時だけでなく演奏以外の時にも、センサ15での検出に必要な程度を超える強い力でフットボード20が踏み込まれる場合がある。あるいは予期せずに過大な力が加わる場合もあり得る。このような過負荷発生時の対策のために突部25が設けられている。すなわち、通常の力で演奏したときには、アクチュエータ14が相当に変形して反力を発生させるため、フットボード20の回動は止まる。そのとき、突部25の先端面は、対向部11aに近接するが当接していない。
【0038】
一方、フットボード20を通常の最大演奏荷重よりも十分に強い力で踏み込んだときは、フットボード20が上記した一応の下限位置を超えて回動し、突部25の先端面が対向部11aに当接する。これにより、フットボード20が大きく変形する前段階で、踏み込みの往行程における回動終了位置が規制され、過大な変形が回避される。
【0039】
通常の力で踏み込む通常演奏においては、フットボード20は、押し子22を介して反力を受ける。そのためフットボード20は、押し子22がある後端部20bと回動軸21がある前端部20aとの離間した2点で支持される形となる。一方、通常、足はフットボード20の長手方向中央付近を踏み込んでいる。従って、フットボード20の長手方向中央付近が最も大きく撓もうとする。
【0040】
ところが、踏み込み力が過大になれば、フットボード20の長手方向中央付近において突部25が対向部11aに当接するので、過負荷となる踏み込みに対するフットボード20の強度が高まることになる。しかも、アクチュエータ14やセンサ15に過大な負荷がかかることが回避され、これらの保護にもなる。
【0041】
本実施の形態によれば、突部25及び対向部11aはコイルバネ16の内側領域に設けられ、フットボード20の踏み込みの往行程においてコイルバネ16の内側領域で互いに当接するので、簡単な設計で、突部25と対向部11aとの間に身体を挟むことを防止することができる。特に、突部25は対向部11aに対し、センサ15がアクチュエータ14によって押圧された後に当接し得るリミットストッパとして機能するので、過負荷時のリミットストッパとしての機構部分の安全性を高めることができる。
【0042】
また、コイルバネ16は、フットボード20の長手方向における中央位置を付勢するので、踏み込みに対するフットボード20の強度を効率よく高めることができる。従って、フットボード20を厚くする等の剛性を高める必要性が緩和される。その結果、フットボード20の設計の自由度が高まり、コスト削減にも有利となる。
【0043】
ところで、
図2、
図3に示すように、各種の変形例が考えられる。
【0044】
図2(a)〜(c)は、変形例の突部を採用するペダル装置の突部付近の模式的な断面図である。まず、
図2(a)に示すように、コイルバネ16の内側領域において対向部11aにセンサ17を配設してもよい。センサ17は、突部25により押圧されて、フットボード20の動作を検出する。センサ17の構成は問わず、センサ15と同様であってもよい。また、センサ17を設ける場合は、センサ15を廃止してもよい。このようにセンサ17をフットボード20の長手方向における中央位置から突設された突部25で駆動する構成は、打楽器としてのハイハットシンバルに用いられるハイハットコントローラ用ペダルに好適である。
【0045】
図2(b)、(c)に示すように、突部25はフットボード20にだけ設けることは必須でない。ベース部11及びフットボード20のいずれか一方と他方とに、突部25に相当するものとそれが当接する部分とを設ければよい。
【0046】
例えば、
図2(b)に示すように、コイルバネ16の内側領域において、突部35をベース部11の上面からフットボード20に向かって突出するよう設ける。そして、踏み込みの往行程において、フットボード20の下面である対向部20cと突部35の先端面とが当接するように構成する。
図2(b)の構成であれば、フットボード20に突部が固定されていないので、フットボード20の操作感を従来のものと同じにすることができる。
【0047】
あるいは、
図2(c)に示すように、コイルバネ16の内側領域において、フットボード20の下面に突部25を設けると共にベース部11の上面に突部35を設け、突部25と突部35とが踏み込みの往行程において互いに当接するように構成してもよい。この場合、突部25、35のいずれか一方が他方と当接する対向部となる。
図2(c)の構成であれば、リミットストッパを上下に分けて設けたことになり、リミットストッパ自体を小さく設計することが容易となる。
【0048】
なお、
図2(a)に示したセンサ17は、突部と対向部とに押圧されるように両者間に配設すればよく、例えば
図2(b)、(c)の構成であれば、突部35の上端に配置してもよい。
【0049】
突部はベース部11やフットボード20と別体で構成して固着してもよいが、
図3に示すように一体に形成してもよい。
図3(a)、(b)は、変形例の突部を採用するペダル装置の模式的な断面図である。
【0050】
例えば、
図3(a)に示すように、フットボード20をシート20Aと樹脂部20Bとで構成し、樹脂部20Bを成形する際に突部25を一体に形成する。突部25を形成したために生じる空洞はシート20Aによって隠される。規制片23に相当する規制片123については、樹脂部20Bの成形時に一体に形成可能である。
【0051】
あるいは、
図3(b)に示すように、ベース部111を樹脂で構成し、その成形の際に突部35を一体に形成する。この構成では、バネカバー部18(
図1(b))に相当するバネカバー部118もベース部111に一体に形成することが可能である。さらには、ヒール19、カバー12にそれぞれ相当するヒール119、カバー112についても、ベース部111に一体に形成することが可能である。
【0052】
図3(a)、(b)に示すような構成により、ペダル装置の多くを占める部分の樹脂化が容易となり、
図3(b)の構成では一層それが顕著である。樹脂化が容易になることで任意の形状が可能になり、各種の部品の一体化により部品点数を削減でき、コストを削減することができる。コイルバネ16の固定具も樹脂化可能である。上述したようにフットボード20の設計の自由度が高まっていることから、樹脂化が容易であり、
図3(a)、(b)に示す構成の採用が現実的となる。
【0053】
なお、
図2(a)〜(c)、
図3(a)、(b)の構成においても、突部25、35の先端面とそれに当接する部分の少なくとも一方には、緩衝用に弾性部材を設けるのがよい。
【0054】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
11 ベース部、 11a、20c 対向部、 15 センサ(第1の検出手段)、 16 コイルバネ、 17 センサ(第2の検出手段)、 20 フットボード、 20a 前端部(一端部)、 20b 後端部(自由端部)、 25、35 突部