特許第5919968号(P5919968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919968
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】波長変換部材及び発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20160428BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20160428BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20160428BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20160428BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20160428BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20160428BHJP
   C03C 14/00 20060101ALN20160428BHJP
   C03C 4/12 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   F21S2/00 311
   H01L33/00 L
   C09K11/00 D
   H01S5/022
   H01L33/00 410
   F21V9/16 100
   !C03C14/00
   !C03C4/12
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-84429(P2012-84429)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-214426(P2013-214426A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西宮 隆史
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−129354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 7/00−7/22
F21V 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末が分散してなる波長変換層と、
前記波長変換層に接合された金属板と、
前記金属板の前記波長変換層とは反対側に前記波長変換層と重なるように接合されており、前記金属板よりも熱膨張係数が低い低熱膨張材とを備え
前記低熱膨張材は、対向する一対の端面を有し、
前記金属板は、前記低熱膨張材の一対の端面のそれぞれの少なくとも一部を覆うように設けられている、波長変換部材。
【請求項2】
前記金属板は、前記低熱膨張材の各端面に接合されている、請求項に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記低熱膨張材は、前記一対の端面が前記波長変換層とは反対側に向かって近づくように設けられている、請求項またはに記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記金属板が、前記波長変換層よりも大面積に設けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末が分散してなる波長変換層と、
前記波長変換層に接合された金属板と、
前記金属板の前記波長変換層とは反対側に前記波長変換層と重なるように接合されており、前記金属板よりも熱膨張係数が低い低熱膨張材とを備え
前記金属板が、前記波長変換層よりも大面積に設けられており、かつ、前記金属板の端部が、前記低熱膨張材の端部より外側に位置するように設けられている、波長変換部材。
【請求項6】
前記低熱膨張材が前記波長変換層よりも大面積に設けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記低熱膨張材が前記金属板よりも厚い、請求項1〜のいずれか一項に記載の波長変換部材。
【請求項8】
ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末が分散してなる波長変換層と、
前記波長変換層に接合された金属板と、
前記金属板の前記波長変換層とは反対側に前記波長変換層と重なるように接合されており、前記金属板よりも熱膨張係数が低い低熱膨張材とを備える波長変換部材を製造する方法であって
前記波長変換層と前記金属板とを拡散接合により接合する、波長変換部材の製造方法
【請求項9】
ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末が分散してなる波長変換層と、
前記波長変換層に接合された金属板と、
前記金属板の前記波長変換層とは反対側に前記波長変換層と重なるように接合されており、前記金属板よりも熱膨張係数が低い低熱膨張材とを備える波長変換部材を製造する方法であって
前記金属板と前記低熱膨張材とを拡散接合により接合する、波長変換部材の製造方法
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の波長変換部材と、
前記波長変換部材に前記無機蛍光体の励起波長の光を照射する光源と、
を備える、発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換部材及び発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1などにおいて、ガラスマトリクス中に無機蛍光体を分散させた波長変換層が提案されている。この波長変換層では、媒質及び蛍光体の両方が無機材料からなる。従って、この波長変換層は、耐熱性や耐候性に優れているという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−258308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばプロジェクタの光源などとして使用するような場合には、励起光源側に蛍光を出射させたい場合がある。このような場合には、波長変換層の裏面側に反射板を固定することが考えられる。
【0005】
波長変換層と反射板とを固定する方法としては、例えば、樹脂接着剤を用いて波長変換層と反射板とを固定する方法が考えられる。しかしながら、この場合、励起光によって樹脂接着層が劣化し、接着強度が低くなり、波長変換層が反射板から脱落する虞がある。また、樹脂接着層が着色し、励起光に対する樹脂接着層の透過率が低くなり、波長変換層の発光効率が低くなる虞がある。従って、波長変換層と反射板とが樹脂接着層により接着された波長変換部材は、耐久性が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、優れた耐久性を有する波長変換部材を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る波長変換部材は、波長変換層と、金属板と、低熱膨張材とを備える。波長変換層は、ガラスマトリクス中に無機蛍光体粉末が分散してなる。金属板は、波長変換層に接合されている。低熱膨張材は、金属板の波長変換層とは反対側に波長変換層と重なるように接合されている。低熱膨張材は、金属板よりも熱膨張係数が低い。
【0008】
低熱膨張材は、対向する一対の端面を有し、金属板は、低熱膨張材の一対の端面のそれぞれの少なくとも一部を覆うように設けられていることが好ましい。その場合、金属板は、低熱膨張材の各端面に接合されていることがより好ましい。また、低熱膨張材は、一対の端面が波長変換層とは反対側に向かって近づくように設けられていることがより好ましい。
【0009】
低熱膨張材が波長変換層よりも大面積に設けられていることが好ましい。
【0010】
低熱膨張材が金属板よりも厚いことが好ましい。
【0011】
波長変換層と金属板とが拡散接合されていることが好ましい。
【0012】
金属板と低熱膨張材とが拡散接合されていることが好ましい。
【0013】
金属板が、波長変換層よりも大面積に設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る発光デバイスは、本発明に係る波長変換部材と、光源とを備える。光源は、波長変換部材に無機蛍光体の励起波長の光を照射する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた耐久性を有する波長変換部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る波長変換部材の略図的断面図である。
図2】第1の実施形態における発光デバイスの略図的断面図である。
図3】第2の実施形態に係る波長変換部材の略図的断面図である。
図4】第3の実施形態に係る波長変換部材の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0018】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る波長変換部材の略図的断面図である。
【0020】
図1に示されるように、波長変換部材1は、波長変換層20を備える。
【0021】
波長変換層20は、ガラスマトリクスと、ガラスマトリクス中に分散した無機蛍光体とを含む。具体的には、波長変換層20は、ガラス粉末と無機蛍光体の粉末とを含む混合粉末の焼結体からなる。波長変換層20を構成しているガラスマトリクスと無機蛍光体との両方が無機材料である。従って、波長変換層20は、優れた耐熱性を有する。
【0022】
無機蛍光体は、例えば、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、塩化物蛍光体、酸塩化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体、カルコゲン化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩化物蛍光体、ガーネット系化合物蛍光体から選ばれた1種以上からなるものとすることができる。
【0023】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると青色の蛍光を発する無機蛍光体の具体例としては、例えば、Sr(POCl:Eu2+、(Sr,Ba)MgAl1017:Eu2+などが挙げられる。
【0024】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると緑色の蛍光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体の具体例としては、例えば、SrAl:Eu2+、SrGa:Eu2+などが挙げられる。
【0025】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の蛍光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体の具体例としては、例えば、SrAl:Eu2+、SrGa:Eu2+などが挙げられる。
【0026】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると黄色の蛍光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無蛍光体の具体例としては、例えば、ZnS:Eu2+などが挙げられる。
【0027】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の蛍光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無機蛍光体の具体例としては、例えば、Y(Al,Gd)12:Ce2+などが挙げられる。
【0028】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると赤色の蛍光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体の具体例としては、例えば、GdGa12:Cr3+、CaGa:Mn2+などが挙げられる。
【0029】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の蛍光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体の具体例としては、例えば、MgTiO:Mn4+、KSiF:Mn4+などが挙げられる。
【0030】
無機蛍光体の平均粒子径(D50)は、特に限定されない。無機蛍光体の平均粒子径(D50)は、例えば、1μm〜50μm程度であることが好ましく、5μm〜25μm程度であることがより好ましい。無機蛍光体の平均粒子径(D50)が大きすぎると、発光色が不均一になる場合がある。一方、無機蛍光体の平均粒子径(D50)が小さすぎると、発光強度が低下する場合がある。
【0031】
波長変換層20における無機蛍光体の含有量は、特に限定されない。波長変換層20における無機蛍光体の含有量は、得ようとする蛍光の強度等に応じて適宜設定することができる。波長変換層20における無機蛍光体の含有量は、例えば、10体積%〜80体積%であることが好ましく、20体積%〜75体積%であることがより好ましく、30体積%〜70体積%であることがさらに好ましい。波長変換層20における無機蛍光体の含有量が少なすぎると、得られる蛍光の光強度が低くなってしまう場合がある。波長変換層20における無機蛍光体の含有量が多すぎると、波長変換層20の強度が低くなる場合がある。また、波長変換層20において励起光や蛍光が散乱しやすくなりすぎるため、蛍光の出射効率が低くなる場合がある。
【0032】
波長変換層20のガラスマトリクスは、無機蛍光体の分散媒として好適なものである限りにおいて特に限定されない。波長変換層20のガラスマトリクスは、例えば、硼珪酸塩系ガラス、SnO−P系ガラスなどのリン酸塩系ガラスなどにより構成されていてもよい。
【0033】
波長変換層20のガラスマトリクスの軟化点は、250℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜850℃であることがより好ましい。
【0034】
波長変換層20のガラスマトリクスの屈折率(nd)は、1.45〜2.00であることが好ましく、1.5〜1.85であることがより好ましい。
【0035】
波長変換層20の厚みは、励起光が確実に無機蛍光体に吸収されるような厚みである範囲において、薄い方が好ましい。波長変換層20が厚すぎると、波長変換層20における光の散乱や吸収が大きくなりすぎ、蛍光の出射効率が低くなってしまう場合があるためである。具体的には、波長変換層20の厚みは、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。波長変換層20の厚みの下限値は、通常、0.03mm程度である。
【0036】
波長変換層20の熱膨張係数は、例えば、30×10−7/K〜120×10−7/K程度であることが好ましく、70×10−7/K〜100×10−7/K程度であることがより好ましい。
【0037】
波長変換層20には、金属板10が接合されている。金属板10は、反射板としての機能を有する。従って、金属板10は、光反射率の高い金属からなることが好ましい。また、金属板10は、波長変換層20を放熱させる機能を兼ね備えていることが好ましい。従って、金属板10は、熱伝導率の高い金属からなることが好ましい。このような観点から、金属板10は、例えば、Al、Ni、Au及びAgからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属からなることが好ましい。
【0038】
金属板10は、一般的に、波長変換層20よりも大きな熱膨張係数を有する。
【0039】
金属板10による波長変換層20の放熱をより促進する観点からは、金属板10が、波長変換層20よりも大面積に設けられていることが好ましい。金属板10の面積は、波長変換層20の面積の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。
【0040】
金属板10の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm〜1.0mm程度であることが好ましく、0.2mm〜0.5mm程度であることがより好ましい。
【0041】
波長変換層20と金属板10とは、直接接合されていることが好ましい。具体的には、波長変換層20と金属板10とは、拡散接合されていることが好ましい。拡散接合の具体例としては、例えば、陽極接合等が挙げられる。
【0042】
波長変換部材1は、低熱膨張材30をさらに備える。低熱膨張材30は、金属板10の波長変換層20とは反対側に波長変換層20と重なるように接合されている。低熱膨張材30の少なくとも一部は、波長変換層20と金属板10を介して対向している。
【0043】
低熱膨張材30は、金属板10よりも低い熱膨張係数を有する。例えば、低熱膨張材30の熱膨張係数が、金属板10の熱膨張係数よりも60×10−7/K以上低いことが好ましく、100×10−7/K以上低いことがより好ましい。具体的には、低熱膨張材30の熱膨張係数は、30×10−7/K〜120×10−7/Kの範囲にあることが好ましく、70×10−7/K〜100×10−7/Kの範囲にあることがより好ましい。
【0044】
低熱膨張材30は、例えば、ガラスやセラミックスにより構成することができる。なお、本発明において、「ガラス」には、結晶化ガラスが含まれるものとする。
【0045】
波長変換部材1の温度が変化した際の金属板10の波長変換層20に対する相対的な伸縮をより効果的に抑制する観点からは、低熱膨張材30の厚みは、金属板10の厚みよりも大きいことが好ましく、金属板10の厚みの2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。
【0046】
金属板10は、低熱膨張材30の対向する一対の端面30a、30bのそれぞれの少なくとも一部を覆うように設けられていることが好ましい。
【0047】
低熱膨張材30は、金属板10の少なくとも波長変換層20が設けられている部分に接合されている。本実施形態では、金属板10は、低熱膨張材30の波長変換層20と対向する面に接合されていると共に、各端面30a、30bにも接合されている。金属板10と低熱膨張材30とは、直接接合されていることが好ましい。具体的には、金属板10と低熱膨張材30とは、拡散接合されていることが好ましい。拡散接合の具体例としては、例えば、陽極接合等が挙げられる。
【0048】
図2は、波長変換部材1を用いた発光デバイス2の略図的断面図である。
【0049】
発光デバイス2は、波長変換部材1と、光源50とを備えている。光源50は、無機蛍光体の励起波長を含む光L1を出射する。光L1は、ビームスプリッタ40によって波長変換部材1に導かれる。光L1は、波長変換層20に入射する。これにより波長変換層20に含まれる無機蛍光体から蛍光が出射する。また、波長変換層20を透過した光L1は、金属板10によって波長変換層20側に反射され、波長変換層20に再入射する。この再入射光も無機蛍光体によって蛍光に変換される。
【0050】
波長変換層20において生じた蛍光L2は、ビームスプリッタ40を透過して発光デバイス2から出射する。
【0051】
発光デバイス2は、種々の光学装置に好適に適用される。なかでも、発光デバイス2は、高強度の光源を要するプロジェクタにより好適に用いられ、さらには、光源としてLD(Laser Diode)またはLED(Light Emitting Diode)を用いたプロジェクタにさらに好適に用いられる。光源の出力が高い場合は、光源からの光によって樹脂接着層が劣化しやすいため、樹脂接着剤が用いられておらず、光劣化し難い波長変換部材1を用いることが特に好適であるためである。
【0052】
ところで、プロジェクタ等に用いられる発光デバイスにおいては、光源の出力が高い。このため、光源からの光照射と共に波長変換部材の温度が上昇しやすい。
【0053】
ここで、低熱膨張材が設けられておらず、波長変換層と反射板とにより構成された波長変換部材を用いた場合は、波長変換層と反射板との熱膨張率が大きく異なると、波長変換層と反射板との熱膨張量の差に起因して波長変換層と反射板とが剥離してしまう場合がある。波長変換層と反射板との剥離を抑制するためには、例えば波長変換層の熱膨張係数と近い、低い熱膨張係数を有する反射板を用いる必要がある。しかしながら、低い熱膨張係数を有する反射板は、一般的に光反射率が低い。従って、優れた耐久性と優れた出力特性とを両立することは困難である。
【0054】
それに対して波長変換部材1では、金属板10に接合された低熱膨張材30が設けられている。このため、波長変換部材1の温度が変化した際の金属板10の波長変換層20に対する相対的な伸縮が低熱膨張材30によって阻害される。よって、波長変換層20とは熱膨張係数が大きく異なるものの、高い光反射率を有する金属板により金属板10を構成した場合であっても、金属板10と波長変換層20とが剥離しにくい。従って、優れた耐久性と、優れた出力特性の両立を図り得る。また、波長変換部材1の反りも抑制することができる。
【0055】
さらに、波長変換部材1では、金属板10が低熱膨張材30の対向する一対の端面30a、30bを覆うように設けられている。従って、波長変換部材1の温度が変化した際の金属板10の波長変換層20に対する相対的な伸縮が低熱膨張材30によってより効果的に阻害される。また、金属板10が各端面30a、30bに接合されている。従って、波長変換部材1の温度が変化した際の金属板10の波長変換層20に対する相対的な伸縮が低熱膨張材30によってさらに効果的に阻害される。よって、さらに優れた耐久性を実現することができる。
【0056】
また、波長変換部材1では、波長変換層20及び低熱膨張材30のそれぞれと金属板10とが直接接合されている。このため、金属板10の接合に、光劣化しやすい樹脂接着剤等を要さない。また、波長変換部材1では、波長変換層20と金属板10とが直接接合されているため、波長変換層20と金属板10との間の熱伝導性が高い。従って、波長変換層20の放熱効率が改善されている。
【0057】
波長変換層20の少なくとも一方の主面の上に、反射抑制膜等の機能膜等が設けられていてもよい。
【0058】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0059】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る波長変換部材の略図的断面図である。本実施形態に係る波長変換部材は、低熱膨張材30の端面30a、30bが波長変換層20とは反対側に向かって近づくように設けられている点で、第1の実施形態に係る波長変換部材1と異なる。本実施形態に係る波長変換部材では、低熱膨張材30の端面30a、30bが波長変換層20とは反対側に向かって近づくように設けられているため、金属板10の伸縮が低熱膨張材30によってさらに効果的に阻害される。従って、さらに優れた耐久性を実現し得る。
【0060】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る波長変換部材の略図的断面図である。第1の実施形態では、金属板10が低熱膨張材30の端面30a、30bを覆うように設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。
【0061】
例えば、図4に示される波長変換部材のように、金属板10は平板状であってもよい。このような場合であっても、優れた耐久性と優れた出力特性の両立を図り得る。
【0062】
また、本実施形態の波長変換部材では、低熱膨張材30が波長変換層20よりも大面積に設けられている。このため、波長変換部材1の温度が変化した際の金属板10の波長変換層20に対する相対的な伸縮が低熱膨張材30によってより効果的に阻害される。従って、優れた耐久性を実現することができる。
【0063】
(変形例)
第1及び第2の実施形態において、低熱膨張材30が、端面30a、30bで金属板10により嵌合固定されている場合は、金属板10と低熱膨張材30は、必ずしも接合されている必要はない。
【符号の説明】
【0064】
1…波長変換部材
2…発光デバイス
10…金属板
20…波長変換層
30…低熱膨張材
30a、30b…端面
40…ビームスプリッタ
50…光源
図1
図2
図3
図4