特許第5919999号(P5919999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5919999
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】ステータ、回転電機、および電動車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/06 20060101AFI20160428BHJP
【FI】
   H02K1/06 B
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-104400(P2012-104400)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-233046(P2013-233046A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 雅史
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
(72)【発明者】
【氏名】中井 英雄
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106002(JP,A)
【文献】 特開2010−246367(JP,A)
【文献】 特開昭56−083255(JP,A)
【文献】 特開2009−303378(JP,A)
【文献】 特開2009−136046(JP,A)
【文献】 特開2006−254619(JP,A)
【文献】 特開2011−217443(JP,A)
【文献】 特開2007−185012(JP,A)
【文献】 特許第4788769(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状コアと、
前記環状コアにトロイダル巻きされたコイルと、
前記環状コアから延びるティースと、
を備え、
前記ティースは、前記環状コアから第1方向に延びる第1ティース部を有し、
前記ティースは、前記環状コアから第2方向に延びる第2ティース部を有し、
前記第2ティース部の前記環状コアからの長さは、前記第1ティース部の前記環状コアからの長さよりも短く、
前記環状コアと前記ティースとの接触面積は、前記第1ティース部の前記第1方向に直交する断面積よりも大きく、
前記第1方向は、前記環状コアの内側に向かう方向であり、前記第2方向は、前記第方向とは異なる方向であり、
前記第2ティース部は、前記第1ティース部と隣接し、前記第1ティース部と前記環状コアとの境界から前記第2方向に、前記第1ティース部に対して突出する、
回転電機に用いられるステータ。
【請求項2】
環状コアと、
前記環状コアにトロイダル巻きされたコイルと、
前記環状コアから延びるティースと、
を備え、
前記ティースは、前記環状コアから第1方向に延びる第1ティース部を有し、
前記ティースは、前記環状コアから第2方向に延びる第2ティース部を有し、
前記第2ティース部の前記環状コアからの長さは、前記第1ティース部の前記環状コアからの長さよりも短く、
前記環状コアと前記ティースとの接触面積は、前記第1ティース部の前記第1方向に直交する断面積よりも大きく、
前記第1方向は、前記第2方向とは異なる方向であり、
前記第2ティース部は、前記第1ティース部と隣接しており、
前記ティースは、前記環状コアから第3方向に延びる第3ティース部を有し、
前記第2ティース部の前記環状コアからの長さは、前記第3ティース部の前記環状コアからの長さよりも短く、
前記第2ティース部は、前記第1ティース部および前記第3ティース部の間に設けられ、
前記第2ティース部は、前記第3ティース部と隣接している、ステータ。
【請求項3】
前記環状コアのトロイダル方向における前記第1ティース部の位置は、前記トロイダル方向における前記第3ティース部の位置と等しく、
前記環状コアのポロイダル方向における前記第1ティースの位置は、前記ポロイダル方向における前記第3ティース部の位置と異なり、
前記第1方向は、前記環状コアの表面に直交する方向であり、
前記第3方向は、前記環状コアの表面に直交する方向である、
請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記第1方向は、前記第3方向と直交する方向である請求項2または請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記第2ティース部の先端は、前記環状コアに向かって凹んでいる、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
前記ティースは、前記環状コアのトロイダル方向に複数設けられ、前記ティースは、前記トロイダル巻きされたコイルの間に設けられた、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項7】
ロータと、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のステータと、
を備え、
前記第1方向は、前記環状コアから前記ロータに向かう方向である、
回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータ、回転電機、および回転電機を備える電動車両に関し、特に、ステータの磁気特性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車、電気機関車等の電動車両や、産業用工作機械、産業用ロボット、昇降機等の動力機械には、電動機または発電機として動作する回転電機が用いられている。回転電機は、シャフトと共に回転するロータ、およびロータとの間で電磁力を作用するステータを備える。ロータには、円柱形状に形成され側面に磁極が配置されたものがある。これに対応するステータは、ロータの側面を囲み、ロータの磁極との間で電磁気的な作用を及ぼし合う。
【0003】
回転電機が電動機として用いられる場合、ステータは、ロータの側面の周りに回転磁界を発生し、ロータは回転磁界に応じてトルクを発生し回転する。また、回転電機が発電機として用いられる場合、ロータはシャフトから与えられたトルクによって回転し、ステータは、ロータの磁極に基づく回転磁界によって誘導起電力を発生する。
【0004】
以下の特許文献1および2には回転電機が記載されている。これらの特許文献に記載されている回転電機のステータは、磁性体で形成された環状のコアと、コアによって貫かれた複数のトロイダルコイルを備える。複数のトロイダルコイルは、コアの形状に沿って環状に配置されている。各トロイダルコイルは、コアの周りを周回させた導線を有し、導線が形成する環がコアによって貫かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−136046号公報
【特許文献2】特開2010−226808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に示されている回転電機においては、ステータを構成するコア等の部材に磁性体が用いられている。このような磁性部材は、その形状によっては、外部から与える磁界を大きくしても、磁性部材内の磁束密度が増加しないという磁気飽和が生じ易くなる。ステータにおいて磁気飽和が生じると、電動機の場合にはトルクが減少し、発電機の場合には発電電力が減少するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、回転電機に設けられるステータの磁気飽和を生じ難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、環状コアと、前記環状コアにトロイダル巻きされたコイルと、前記環状コアから延びるティースと、を備え、前記ティースは、前記環状コアから第1方向に延びる第1ティース部を有し、前記ティースは、前記環状コアから第2方向に延びる第2ティース部を有し、前記第2ティース部の前記環状コアからの長さは、前記第1ティース部の前記環状コアからの長さよりも短く、前記環状コアと前記ティースとの接触面積は、前記第1ティース部の前記第1方向に直交する断面積よりも大きく、前記第1方向は、前記環状コアの内側に向かう方向であり、前記第2方向は、前記第方向とは異なる方向であり、前記第2ティース部は、前記第1ティース部と隣接し、前記第1ティース部と前記環状コアとの境界から前記第2方向に、前記第1ティース部に対して突出する、回転電機に用いられる。
【0009】
また、本発明は、環状コアと、前記環状コアにトロイダル巻きされたコイルと、前記環状コアから延びるティースと、を備え、前記ティースは、前記環状コアから第1方向に延びる第1ティース部を有し、前記ティースは、前記環状コアから第2方向に延びる第2ティース部を有し、前記第2ティース部の前記環状コアからの長さは、前記第1ティース部の前記環状コアからの長さよりも短く、前記環状コアと前記ティースとの接触面積は、前記第1ティース部の前記第1方向に直交する断面積よりも大きく、前記第1方向は、前記第2方向とは異なる方向であり、前記第2ティース部は、前記第1ティース部と隣接しており、前記ティースは、前記環状コアから第3方向に延びる第3ティース部を有し、前記第2ティース部の前記環状コアからの長さは、前記第3ティース部の前記環状コアからの長さよりも短く、前記第2ティース部は、前記第1ティース部および前記第3ティース部の間に設けられ、前記第2ティース部は、前記第3ティース部と隣接している。
【0010】
また、本発明に係るステータは、望ましくは、前記環状コアのトロイダル方向における前記第1ティース部の位置は、前記トロイダル方向における前記第3ティース部の位置と等しく、前記環状コアのポロイダル方向における前記第1ティースの位置は、前記ポロイダル方向における前記第3ティース部の位置と異なり、前記第1方向は、前記環状コアの表面に直交する方向であり、前記第3方向は、前記環状コアの表面に直交する方向である。
【0011】
また、本発明に係るステータは、望ましくは、前記第1方向は、前記第3方向と直交する方向である。
【0012】
また、本発明に係るステータは、望ましくは、前記第2ティース部の先端は、前記環状コア部に向かって凹んでいる。
【0013】
また、本発明に係るステータは、前記ティースは、前記環状コアのトロイダル方向に複数設けられ、前記ティースは、前記トロイダル巻きされたコイルの間に設けられる。
【0014】
また、本発明に係る回転電機は、ロータと、前記ステータと、を備え、前記第1方向は、前記環状コアから前記ロータに向かう方向である。
【0015】
また、本発明に係る車両は前記回転電機を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転電機に設けられるステータの磁気飽和を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る回転電機の断面図である。
図2】ラジアルロータの一部およびステータの一部を示す斜視図である。
図3】ステータの断面を示す図である。
図4】ステータの断面を示す図である。
図5】第2実施形態に係る回転電機の断面図である。
図6】ラジアルロータ、ステータ、および磁石ホルダのそれぞれの一部、ならびに、永久磁石を示す斜視図である。
図7】ラジアルロータ、ステータ、および磁石ホルダのそれぞれの一部、ならびに、永久磁石を分解して示した図である。
図8】ステータの断面を示す図である。
図9】ステータの断面を示す図である。
図10】ステータの断面を示す図である。
図11】ステータの断面を示す図である。
図12】トルク向上率のシミュレーション結果を示す図である。
図13】トルク向上率のシミュレーション結果を示す図である。
図14】第3実施形態に係る回転電機の断面図である。
図15】ステータの断面を示す図である。
図16】ステータの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には本発明の第1実施形態に係る回転電機の断面図が模式的に示されている。図1においては、左方向がx軸の正方向として、上方向がy軸の正方向として定義されている。この回転電機は、筐体10に固定されたステータ12と、シャフト14と共に回転するラジアルロータ16との間の電磁気的な作用により、電動機または発電機として動作する。
【0019】
ラジアルロータ16は、円柱形状に形成されたロータコア18、およびロータコア18の内部においてx軸方向に延びる永久磁石20を備える。ロータコア18の中心軸の位置には、ロータコア18を貫くシャフト14が固定されている。図1には、2つの永久磁石20が描かれているが、ラジアルロータ16の内部には、ロータコア18の側面形状に沿って複数の永久磁石20が配置されている。筐体10は、筒状の胴体部10A、および胴体部10Aを両側から塞ぐシャフト受け部10Bを備える。筐体10は、ラジアルロータ16およびステータ12を収納する。シャフト14は、両側のシャフト受け部10Bに開けられたシャフト穴を貫通し、各シャフト受け部10Bによって回転自在に支持されている。
【0020】
図2は、ラジアルロータ16の一部およびステータ12の一部を示す斜視図である。図2においては、上方向がx軸の正方向として、右方向がy軸の正方向として定義されている。ラジアルロータ16は、例えば、外周側に開いたV字(ハの字)を描くよう配置された帯状の永久磁石20を備える。ラジアルロータ16には、V字状に配置された2つの永久磁石20を1つの永久磁石対20Pとして、複数の永久磁石対20Pがロータの側面形状に沿って配置されている。永久磁石対20Pをなす2つの永久磁石20のそれぞれの磁力線の方向は、V字の内側方向または外側方向に揃えられ、隣接する永久磁石対20Pは互いに磁力線Hrが逆向きとなるように配置されている。このような構成によって、ラジアルロータ16の側面には、外周方向に沿ってS極、N極、S極、・・・というように、N極およびS極の磁極が交互に現れ、ラジアルロータ16の側面は筒形状の磁極配置面をなす。なお、ここでは、2つの永久磁石をV字状に配置した永久磁石対20Pを用いた例について説明した。各永久磁石の配置はこれに限られず、ラジアルロータ16の側面に適切な磁極が現れる配置であればよい。
【0021】
ステータ12は、ラジアルロータ16の側面を環状に囲むステータコア22、および、ステータコア22に固定された複数のトロイダルコイル24を備える。図3には、周方向にステータ12を見た断面が示されている。図3の上下方向は、回転電機のシャフト14の長手方向(x軸方向)に対応し、左方向および右方向は、それぞれ、ステータ12の外側方向および内側方向に対応する。以下の説明におけるその他のステータの断面図についても同様に方向が定義される。
【0022】
ステータコア22は、ラジアルロータ16の側面を環状に囲む環状コア26、および、環状コア26からラジアルロータ16の方向に延びてトロイダルコイル24から突出するラジアルティース部28を備え、磁性体で形成されている。環状コア26については、環状(トーラス状)の中空部を囲む方向が、トロイダル方向Tとして定義されている。また、トロイダル方向Tに垂直な断面内で周回する方向がポロイダル方向Pとして定義されている。
【0023】
ステータコア22は、さらに、ラジアルティース部28と環状コア26との境界から上方向に突出する矩形状の追加ティース部30U、および、ラジアルティース部28と環状コア26との境界から下方向に突出する矩形状の追加ティース部30Lを備える。追加ティース部30Uおよび30Lのそれぞれの長さは、望ましくは、ラジアルティース部28が環状コア26から延びる長さよりも短くする。
【0024】
ラジアルティース部28、追加ティース部30Uおよび30Lによって、ステータコア22のティース31が形成される。ティース31は、環状コア26から突出した部位全体であり、トロイダルコイル24の導線が巻かれていない部位である。トロイダルコイル24は、環状コア26の周りをポロイダル方向に周回させてトロイダル巻きされた導線を有し、導線が形成する環が環状コア26によって貫かれている。
【0025】
図3に示されるラジアルティース部28、追加ティース部30U、追加ティース部30Lおよびトロイダルコイル24の個々の構成によって、ステータ12が備える複数のトロイダルコイル24は、環状コア26のトロイダル方向に配置される。そして、隣接するトロイダルコイル24の間には、ティース31が設けられ、ラジアルティース部28の先端縁がラジアルロータ16の側面に対向する。
【0026】
このような構成によれば、トロイダルコイル24に鎖交する磁束は各ティース部に集中する。これによって、図3に示されるように、環状コア26を通ってトロイダルコイル24を貫き、ラジアルティース部28を通ってその先端縁からラジアルロータ16に向かう磁力線Hs、または、その逆向きの磁力線で表される磁束が大きくなる。ラジアルティース部28とラジアルロータ16との間の磁束の作用により、回転電機は電動機または発電機として動作する。
【0027】
回転電機が電動機として動作する場合、各トロイダルコイル24に流れる電流の位相の制御によって、ラジアルロータ16の側面の周りに回転磁界が発生する。これによって、ステータ12とラジアルロータ16の磁極との間に電磁力が作用し、ラジアルロータ16およびシャフト14にトルクが発生する。また、回転電機が発電機として動作する場合、シャフト14およびラジアルロータ16の回転によってステータ12の内側に生じた回転磁界に基づいて、各トロイダルコイル24に誘導起電力が発生し、各トロイダルコイル24から引き出された導線から交流電力が得られる。
【0028】
一般に、環状コアに複数のティースが接合され、隣接するティースの間にコイルの導線が設けられるステータでは、ティースと環状コアとの境界断面において磁気飽和が生じ易い。本実施形態に係るステータ12によれば、次に説明する原理に基づき磁気飽和が生じ難くなる。
【0029】
本実施形態に係るステータ12においては、ティース31と環状コア26との接触面積が、ラジアルティース部28と環状コア26との接触面積よりも大きくなる。すなわち、ラジアルティース部28が環状コア26と接する区間K1における接触面積をS1とし、追加ティース部30Uおよび追加ティース部30Lのそれぞれが環状コア26とが接する区間K2における接触面積をS2とした場合、ティース31の接触面積は、S1+2・S2となる。したがって、ティース31の接触面積は、ラジアルティース部28の接触面積2・S2よりも大きくなる。別の観点からは、ラジアルティース部28と環状コア26との境界断面を通る磁路に加えて、追加コア部30Uおよび30Lを通る磁路が形成され、ラジアルティース部28と環状コア26との境界断面に磁束が集中することが回避されるといえる。また、ラジアルティース28から環状コア26に至る磁路の磁気抵抗は減少する。これによって、ラジアルティース部28に磁束が集中することが回避され、ティース31における磁気飽和が生じ難くなる。
【0030】
より一般的には、本実施形態の構成および技術的思想は次のように説明される。ステータ12が備えるティース31は、第1ティース部としてラジアルティース部28を備え、第2ティース部として追加ティース部30Uおよび30Lを備える。ラジアルティース部28が環状コア26から延びる方向を第1方向として、ラジアルティース部28に隣接する追加ティース部30Uおよび30Lは、第1方向とは異なる方向に延びる。各追加ティース部の長さは、望ましくは、ラジアルティース部28が環状コア26から延びる長さよりも短くする。この構成によって、ティース31と環状コア26との接触面積は、ラジアルティース部28と環状コア26との接触面積(第1方向に直交する方向のラジアルティース部28の断面積)よりも大きくなる。これによって、第1ティース部としてのラジアルティース部28に磁束が集中することが回避され、ティース31における磁気飽和が生じ難くなる。なお、追加ティース部30Uおよび30Lは両方を備えている必要はなく、いずれか一方のみを備えていれば磁気飽和が生じ難くなるという効果が得られる。
【0031】
なお、上記では、環状コア26を通ってトロイダルコイル24を貫き、ラジアルティース部28を通ってその先端縁からラジアルロータ16に向かう磁力線Hs、または、その逆向きの磁力線について説明した。このような磁力線によって表される磁束の他、ステータ12には、環状コア26を通ってトロイダルコイル24を貫き、ラジアルティース部28を通らずにラジアルロータ16から反れた方向に向かう磁力線、または、その逆向きの磁力線によって表される磁束が生じることがある。このような漏れ磁束は、ラジアルロータ16に物理的な作用をもたらさない。そのため、漏れ磁束は、回転電機を電動機として用いる場合にはトルクの減少の原因となり、発電機として用いる場合には、発電電力の減少の原因となる。
【0032】
本実施形態に係るステータ12においては、追加ティース部30Uおよび30Lが上下方向に突出しているため、漏れ磁束が生じることがある。そこで、図4に示されるように、追加ティース部30Uおよび30Lの形状は、角を凹ませた形状としてもよい。各追加ティース部を凹ませる形状は、例えば、弧状とする。このように追加ティース部30Uおよび30Lの形状を、外形を凹ませた欠損部分を有する形状とすることで、図3に示される形状に比べて、環状コア26から上下方向へ向かう磁束、および、上下方向から環状コア26に向かう磁束が低減され、漏れ磁束が低減される。
【0033】
なお、ステータ12においては、必ずしも総てのトロイダルコイル24の間にこれらの追加ティース部を備えていなくてもよい。さらに、追加ティース部の形状は矩形に限られず、その他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。
【0034】
図5には本発明の第2実施形態に係る回転電機の断面図が模式的に示されている。この 回転電機では、円柱形状のラジアルロータ16に加えて、円板形状の2つのアキシャルロータ32Aおよび32Bが用いられている。ラジアルロータ16は、第1実施形態に係る回転電機のラジアルロータ16と同様の構成を有する。図1図4に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
2つのアキシャルロータ32Aおよび32Bは、ラジアルロータ16の両端を挟む位置に、ラジアルロータ16の側面に対して板面が垂直になる向きに配置されている。アキシャルロータ32Aおよび32Bのそれぞれの中心には、ラジアルロータ16と共通のシャフト14が貫き固定され、アキシャルロータ32Aおよび32Bは、シャフト14およびラジアルロータ16と共に回転する。アキシャルロータ32Aおよび32Bは、円板部材34、磁性体で形成された磁石ホルダ36、および永久磁石38を備える。磁石ホルダ36は、円板部材34のラジアルロータ16側の板面に固定され、ラジアルロータ16側に永久磁石38を保持する。
【0036】
図6は、ラジアルロータ16、ステータ40、および磁石ホルダ36のそれぞれの一部、ならびに、永久磁石38を示す斜視図である。また、図7は、これらの部材の分解斜視図である。ステータ40は、ラジアルロータ16の側面を環状に囲むステータコア42、および、ステータコア42に固定された複数のトロイダルコイル24を備える。磁石ホルダ36は環状に形成され、ステータ40の上下においてステータ40に対向する。上側の磁石ホルダ36には、周方向に沿ってN極およびS極が下向きに交互に現れるよう、複数の永久磁石38が固定されている。下側の磁石ホルダ36には、周方向に沿ってN極およびS極が上向きに交互に現れるよう、複数の永久磁石38が固定されている。
【0037】
図8には、トロイダル方向にステータ40を見た断面が示されている。ステータコア42は、環状コア26、ラジアルティース部28、アキシャルティース部44Uおよび44Lを備え、磁性体で形成されている。環状コア26は環状に形成され、ラジアルロータ16の側面を囲む。ラジアルティース部28は、環状コア26からラジアルロータ16の方向に延びてトロイダルコイル24から突出する。また、アキシャルティース部44Uは、環状コア26から上側の磁石ホルダ36の方向に延びてトロイダルコイル24から突出し、アキシャルティース部44Lは、環状コア26から下側の磁石ホルダ36の方向に延びてトロイダルコイル24から突出する。
【0038】
ステータコア42は、アキシャルティース部44Uと環状コア26との境界からステータ40の外側に突出する矩形状の外側追加ティース部46U、および、アキシャルティース部44Lと環状コア26との境界からステータ40の外側に突出する矩形状の外側追加ティース部46Lを備える。外側追加ティース部46Uおよび46Lのそれぞれの長さは、望ましくは、アキシャルティース部44Uおよび44Lのそれぞれが環状コア26から延びる長さよりも短くする。
【0039】
ステータコア42は、さらに、アキシャルティース部44Uとラジアルティース部28とが形成する角に充填され、環状コア26から張り出した充填追加ティース部48Uを備える。図8に示される例では、充填追加ティース部48Uにおける、アキシャルティース部44Uとラジアルティース部28との間の縁は直線である。同様に、ステータコア42は、アキシャルティース部44Lとラジアルティース部28とが形成する角に充填され、環状コア26から張り出した充填追加ティース部48Lを備える。図8に示される例では、充填追加ティース部48Lにおける、アキシャルティース部44Lとラジアルティース部28との間の縁は直線である。充填追加ティース部48Uおよび48Lのそれぞれが、環状コア26から張り出す距離は、望ましくは、アキシャルティース部44U、44L、およびラジアルティース部28のそれぞれの長さよりも小さくする。
【0040】
アキシャルティース部44U、44L、およびラジアルティース部28、外側追加ティース部46U、46L、充填追加ティース部48Uおよび48Lによって、ステータコア42のティース47が形成される。ティース47は、環状コア26から突出した部位全体であり、トロイダルコイル24の導線が巻かれていない部位である。
【0041】
このような構成によれば、トロイダルコイル24に鎖交する磁束は、各ティース部に集中する。これによって、環状コア26を通ってトロイダルコイル24を貫き、ラジアルティース部28を通ってその先端縁からラジアルロータ16に向かう磁力線Hs1、または、その逆向きの磁力線で表される磁束が大きくなる。また、環状コア26を通ってトロイダルコイル24を貫き、各アキシャルティース部を通って各先端縁から各アキシャルロータに向かう磁力線Hs2、または、その逆向きの磁力線で表される磁束が大きくなる。
【0042】
ラジアルティース部28とラジアルロータ16との間の磁束の作用、および、各アキシャルティース部と各アキシャルロータとの間の磁束の作用により、回転電機は電動機または発電機として動作する。
【0043】
回転電機が電動機として動作する場合、各トロイダルコイル24に流れる電流の位相の制御によって、ラジアルロータ16の側面の周りに回転磁界が発生し、ステータ40とラジアルロータ16の磁極との間に電磁力が作用する。同時に、アキシャルロータ32Aおよび32Bの磁石ホルダ36に沿って回転磁界が発生し、ステータ40とアキシャルロータ32Aおよび32Bの磁極との間に電磁力が作用する。これによって、ラジアルロータ16、アキシャルロータ32A、32Bおよびシャフト14にトルクが発生する。
【0044】
また、回転電機が発電機として動作する場合、シャフト14およびラジアルロータ16の回転によってステータ40の内側に生じた回転磁界に基づいて、さらに、シャフト14、アキシャルロータ32Aおよび32Bの回転によってステータ40の上下に生じた回転磁界に基づいて、各トロイダルコイル24に誘導起電力が発生し、各トロイダルコイル24から引き出された導線から交流電力が得られる。
【0045】
本実施形態に係るステータ40においては、充填追加ティース部48Uおよび48Lを備える。これによって、ラジアルティース部28と環状コア26との境界断面を通る磁路に加えて、充填追加ティース部48Uを通る磁路および充填追加ティース部48Lを通る磁路が形成され、ラジアルティース部28と環状コア26との境界断面に磁束が集中することが回避される。すなわち、ラジアルティース部28から環状コア26に至る磁路の磁気抵抗が減少する。これによって、ラジアルティース部28と環状コア26との境界断面における磁気飽和が生じ難くなる。
【0046】
また、本実施形態に係るステータ40においては、充填追加ティース部48Uおよび48Lの他、外側追加ティース部46Uおよび外側追加ティース部46Lを備える。これによって、アキシャルティース部44Uと環状コア26との境界断面を通る磁路に加えて、外側追加ティース部46Uを通る磁路および充填追加ティース部48Uを通る磁路が形成され、アキシャルティース部44Uと環状コア26との境界断面に磁束が集中することが回避される。すなわち、アキシャルティース部44Uから環状コア26に至る磁路の磁気抵抗が減少する。これによって、アキシャルティース部44Uと環状コア26との境界断面における磁気飽和が生じ難くなる。同様の原理に基づき、外側追加ティース部46Lおよび充填追加ティース部48Lの作用により、アキシャルティース部44Lと環状コア26との境界断面における磁気飽和が生じ難くなる。
【0047】
より一般的には、本実施形態の構成および技術的思想は次のように説明される。ステータコア42が備えるティース47は、第1ティース部としてラジアルティース部28を備え、第2ティース部として充填追加ティース部48Uおよび48Lを備える。さらに、ティース47は、第3ティース部としてアキシャルティース部44Uおよび44Lを備える。ラジアルティース部28が環状コア26から延びる方向を第1方向として、ラジアルティース部28およびアキシャルティース部44Uの間にある充填追加ティース部48Uは、第1方向とは異なる方向に環状コア26から延びる。同様に、ラジアルティース部28およびアキシャルティース部44Lの間にある充填追加ティース部48Lは、第1方向とは異なる方向に環状コア26から延びる。各充填追加ティース部が環状コア26から延びる長さは、望ましくは、ラジアルティース部28が環状コア26から延びる長さ、および、各アキシャルティース部が環状コア26から延びる長さよりも短くする。この構成によって、第1ティース部と環状コア26との接触断面、および、第2ティース部と環状コア26との接触断面の他、第3ティース部に磁路が形成され、第1ティース部に磁束が集中することが回避される。これによって、ティース47における磁気飽和が生じ難くなる。
【0048】
また、図8に示されるティース47およびトロイダルコイル24の個々の構成によって、ステータコア42が備える複数のトロイダルコイル24は、環状コア26のトロイダル方向に配置される。そして、隣接するトロイダルコイル24の間には、ティース47が設けられる。すなわち、隣接するトロイダルコイル24の間における、第1ティース部としてのラジアルティース部28と、第3ティース部としての各アキシャルティース部とは、環状コア26のトロイダル方向における等しい位置にある。そして、ラジアルティース部28の位置と、各アキシャルティース部との位置は、ラジアルロータ16および各アキシャルロータの位置に基づいており、環状コア26のポロイダル方向におけるこれらのティース部の位置は異なっている。図8の例では、ラジアルティース部28と各アキシャルロータとは、互いに直交するよう配置されている。
【0049】
なお、本実施形態においては、図9(a)に示されるように、外側追加ティース部を備えず、充填追加ティース部48Uおよび48Lのみを備える構成としてもよい。また、図9(b)に示されるように、充填追加ティース部48Uおよび48Lを、トロイダルコイル24を塞ぐ形状としてもよいし、図9(c)に示されるように矩形としてもよい。さらに、図9(d)に示されるように、充填追加ティース部48Uおよび48Lを凹ませた形状としてもよい。充填追加ティース部48Uおよび48Lを凹ませる形状は、例えば、弧状とする。
【0050】
図9(a)〜(d)に示された形状では、外側追加ティース部を備えていない。これによって、トロイダルコイル24からステータ40の外側への漏れ磁束が抑制される。また、図9(d)に示された形状では、図9(a)〜(c)に示された形状に比べて、トロイダルコイル24から内側斜め上方向および内側斜め下方向への漏れ磁束が減少する。図9(a)〜(d)に示されたステータ40によれば、図8に示されたステータ40に比べて、外側方向への漏れ磁束による回転電機の性能劣化が抑制される。
【0051】
本実施形態においては、図10(a)に示されるように、充填追加ティース部を備えず、外側追加ティース部46Uおよび46Lのみを備える構成としてもよい。また、図10(b)に示されるように、外側追加ティース部46Uおよび46Lの角を凹ませた形状としてもよい。外側追加ティース部46Uおよび46Lを凹ませる形状は、例えば、弧状とする。
【0052】
図10(a)および10(b)に示された形状では、充填追加ティース部を備えていないため、トロイダルコイル24から内側斜め上方向および内側斜め下方向への漏れ磁束が抑制される。また、図10(b)に示された形状では、図10(a)に示された形状に比べて、トロイダルコイル24から外側方向への漏れ磁束が減少する。図10(a)および(b)に示されたステータによれば、図8に示されたステータに比べて、内側斜め上方向および内側斜め下方向への漏れ磁束による回転電機の性能劣化が抑制される。
【0053】
なお、磁気飽和および漏れ磁束の両者の影響を抑制する形状として、図11に示されるように、外側追加ティース部46Uおよび46L、ならびに、充填追加ティース部48Uおよび48Lを備え、各追加ティース部の角を凹ませた形状を採用してもよい。
【0054】
図12には、回転電機を電動機として動作させた場合のトルク向上率のシミュレーション結果が示されている。この表では、充填追加ティース部および外側追加ティース部のいずれも備えていないステータ(追加ティース部なし)、図9(d)のステータ(充填追加ティース部のみ)、図10(b)のステータ(外側追加ティース部のみ)、および、図11のステータ(充填追加ティース部および外側追加ティース部を備えるステータ)について、トルク向上率が示されている。トルクは、ラジアルロータのトルク、アキシャルロータのトルク、および全トルクに分類されている。ただし、追加ティース部を備えていないステータのトルク向上率を0%とし、充填追加ティース部および外側追加ティース部を備えるステータの全トルクについてのトルク向上率を100%としている。
【0055】
ラジアルロータのトルクについては、充填追加ティース部のみの場合、充填追加ティース部および外側追加ティース部を備える場合、外側追加ティース部のみの場合の順にトルクが大きい。また、 アキシャルロータのトルクについては、充填追加ティース部および外側追加ティース部を備える場合、外側追加ティース部のみの場合、充填追加ティース部のみの場合の順にトルクが大きい。そして、全トルクについては、充填追加ティース部および外側追加ティース部を備える場合、充填追加ティース部のみの場合、外側追加ティース部のみの場合の順にトルクが大きい。
【0056】
この順位は、充填追加ティース部および外側追加ティース部による次のような作用に基づくものである。すなわち、充填追加ティース部は、ラジアルティース部と環状コアとの境界断面、および、アキシャルティース部と環状コアとの境界断面における磁気飽和を抑制する一方で、内側斜め上方向および内側斜め下方向への漏れ磁束を増加させる。また、外側追加ティース部は、アキシャルティース部と環状コアとの境界断面における磁気飽和を抑制する一方で、外側方向への漏れ磁束を増加させる。これらの作用の組み合わせによるトルクの増減によって、表に示される例のように、トルクの大小関係が定まる。
【0057】
図13には、トルク向上率についての別のシミュレーション結果が示されている。グラフに付されている符号(a)〜(f)は、それぞれ、図13(a)〜(f)に示されたステータの形状に対応する。図13(a)および(b)に示されるステータは、充填追加ティース部を備える。図13(a)の充填追加ティース部は、その縁をアキシャルティース部とラジアルティース部を結ぶ直線としたものである。この直線は、アキシャルティース部の内側の縁の中点と、ラジアルティース部の上側の縁の中点とを結んでいる。図13(b)の追加ティース部は、矩形状に形成されたものである。この矩形は、アキシャルティース部の内側の縁の中点から内側に延びた辺と、ラジアルティース部の横方向の各縁の中点から上下に延びた辺からなる。
【0058】
図13(c)〜(e)に示されるステータは、外側追加ティース部を備える。図13(e)に示されるステータは、外側追加ティース部の外側の端をトロイダルコイルの外周に揃えたものである。図13(c)に示されるステータは、外側追加ティース部の外側方向への長さを、図13(e)の外側追加ティース部の長さの1/3としたものである。図13(d)に示されるステータは、外側追加ティース部の外側方向への長さを、図13(e)の外側追加ティース部の長さの2/3としたものである。
【0059】
図13(f)に示されるステータは、充填追加ティース部として図13(a)と同様の形状を有するものを採用し、外側追加ティース部として、図13(c)と同様の形状を有するものを採用したものである。図13(g)に示されるステータは、外側追加ティース部および充填追加ティース部のいずれも備えていないものである。なお、以下の説明では、図13(a)〜(g)に示されたステータを、それぞれ、ステータ(a)〜(g)と称する。
【0060】
図13のグラフにおいては、ステータ(g)についてのトルク向上率を0%とし、ステータ(f)についてのトルク向上率を100%としている。グラフに示されているように、ステータ(b)に比べてステータ(a)の方がトルクが大きい。その理由は、ステータ(a)の方がステータ(b)よりも、内側斜め上方向および内側斜め下方向への漏れ磁束が小さいためであると考えられる。また、ステータ(c)に比べてステータ(b)の方がトルクが大きい。その理由は、ステータ(b)における充填追加ティース部の効果が、ステータ(c)における外側追加ティース部の効果を上回ったためであると考えられる。また、ステータ(c)、(d)、(e)の順にトルクが大きい。その理由は、ステータ(c)、(d)、(e)の順に外側方向への漏れ磁束が小さいためであると考えられる。
【0061】
さらに、ステータ(a)〜(d)および(f)のいずれも、ステータ(g)に比べてトルクが大きい。その理由は、外側追加ティース部または充填追加ティース部によって、磁気飽和が抑制されているためであると考えられる。また、ステータ(e)はステータ(g)に比べてトルクが小さい。その理由は、外側方向への漏れ磁束が増加するためであると考えられる。ステータ(f)は、外側追加ティース部および充填追加ティース部の両者の効果が得られる形状であり、ステータ(a)〜(f)の中で最もトルクが大きい。
【0062】
なお、外側追加ティース部および充填追加ティース部は、必ずしも総てを備えていなくてもよい。また、必ずしも総てのトロイダルコイル24の間にこれらの追加ティース部を備えていなくてもよい。さらに、外側追加ティース部の形状は矩形に限られず、その他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。また、充填追加ティース部の縁は、直線に限られず任意の曲線であってもよい。
【0063】
また、上記では、2つのアキシャルロータを用いる回転電機について説明したが、回転電機はいずれか一方のアキシャルロータを用いる構成としてもよい。この場合、ステータは、一方向のみにアキシャルティース部を設けた構成とすればよい。
【0064】
図14には本発明の第3実施形態に係る回転電機の断面図が模式的に示されている。この回転電機では、円柱形状のラジアルロータ16に加えて、円筒容器形状のシリンダロータ50が用いられている。ラジアルロータ16は、第1実施形態に係る回転電機のラジアルロータ16と同様の構成を有する。図1図4に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
シリンダロータ50は、側壁部材52、円板部材54、磁石ホルダ56、および永久磁石58を備える。側壁部材52は円筒形状に形成されており、一方の開口が円板部材54によって塞がれている。側壁部材52および円板部材54は、非磁性体で形成されている。側壁部材52の内側の壁面には、壁面に沿った環形状を有する磁石ホルダ56が固定されている。磁石ホルダ56には、その周方向に沿ってN極およびS極が交互にシリンダロータ50の内側に向けられるよう、複数の永久磁石58が保持されている。シリンダロータ50は、ステータ60およびラジアルロータ16を覆い、磁石ホルダ56に保持された永久磁石58は、ステータ60の外周に対向する。円板部材54の中心には、ラジアルロータ16と共通のシャフト14が貫き固定され、シリンダロータ50は、シャフト14およびラジアルロータ16と共に回転する。
【0066】
図15には、ステータ60のトロイダル方向を見た断面が示されている。本実施形態に係るステータ60は、図1図4に示される第1実施形態のステータ12に対し、外側に延びてトロイダルコイル24から突出する外側ラジアルティース部64Bを追加したものである。ステータコア62は、環状コア26、内側ラジアルティース部64Aおよび外側ラジアルティース部64Bを備え、磁性体で形成されている。環状コア26は、環状に形成され、ラジアルロータ16の側面を囲む。内側ラジアルティース部64Aは、環状コア26からラジアルロータ16の方向に延びてトロイダルコイル24から突出し、外側ラジアルティース部64Bは、環状コア26からシリンダロータ50の磁石ホルダ56の方向に延びてトロイダルコイル24から突出する。
【0067】
ステータコア62は、内側ラジアルティース部64Aと環状コア26との境界から上下に突出する矩形状の追加ティース部66Aを備える。また、ステータコア62は、外側ラジアルティース部64Bと環状コア26との境界から上下方向に突出する矩形状の追加ティース部66Bを備える。
【0068】
このような構成によれば、トロイダルコイル24に鎖交する磁束は、内側ラジアルティース部64Aおよび外側ラジアルティース部64Bに集中する。これによって、環状コア26を通ってトロイダルコイル24を貫き、内側ラジアルティース部64Aを通ってその先端縁からラジアルロータ16に向かう磁力線Hs3、または、その逆向きの磁力線で表される磁束が大きくなる。同様に、環状コア26を通ってトロイダルコイル24を貫き、外側ラジアルティース部64Bを通ってその先端縁からシリンダロータ50に向かう磁力線Hs4、または、その逆向きの磁力線で表される磁束が大きくなる。
【0069】
内側ラジアルティース部64Aとラジアルロータ16との間の磁束の作用、および、外側ラジアルティース部64Bとシリンダロータ50との間の磁束の作用により、回転電機は電動機または発電機として動作する。
【0070】
回転電機が電動機として動作する場合、各トロイダルコイル24に流れる電流の位相の制御によって、ラジアルロータ16の側面の周りに回転磁界が発生し、ステータ60とラジアルロータ16の磁極との間に電磁力が作用する。同時に、シリンダロータ50の磁石ホルダ56に沿って回転磁界が発生し、ステータ60とシリンダロータ50の磁極との間に電磁力が作用する。これによって、ラジアルロータ16、シリンダロータ50およびシャフト14にトルクが発生する。
【0071】
また、回転電機が発電機として動作する場合、シャフト14およびラジアルロータ16
の回転によってステータ60の内側に生じた回転磁界に基づいて、さらに、シャフト14およびシリンダロータ50の回転によってステータ60の外側に生じた回転磁界に基づいて、各トロイダルコイル24に誘導起電力が発生し、各トロイダルコイル24から引き出された導線から交流電力が得られる。
【0072】
本実施形態に係るステータ60においては、追加ティース部66Aを備える。これによって、内側ラジアルティース部64Aと環状コア26との境界断面を通る磁路に加えて、追加ティース部66Aを通る磁路が形成され、内側ラジアルティース部64Aと環状コア26との境界断面に磁束が集中することが回避される。すなわち、内側ラジアルティース部64Aから環状コア26に至る磁路の磁気抵抗が減少する。これによって、内側ラジアルティース部64Aと環状コア26との境界断面における磁気飽和が生じ難くなる。同様の原理に基づき、追加ティース部66Bの作用により、外側ラジアルティース部64Bと環状コア26との境界断面における磁気飽和が生じ難くなる。
【0073】
なお、ここでは、矩形の追加ティース部66Aおよび66Bについて説明したが、図16に示されるように、これらの追加ティース部は角を凹ませた形状としてもよい。追加ティース部66Aおよび66Bを凹ませる形状は、例えば、弧状とする。このような形状によれば、図16の上下方向の漏れ磁束が低減される。
【0074】
また、追加ティース部66Aおよび66Bは、これらの総てを備えていなくてもよい。そして、必ずしも総てのトロイダルコイル24の間にこれらの追加ティース部を備えていなくてもよい。さらに、追加ティース部の形状は矩形に限られず、その他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。
【0075】
上記では、第1実施形態として、ラジアル面(回転軸に直交する方向においてティースの先端が対向する磁極配置面)を1面とした回転電機を取り上げた。また、第2実施形態として、ラジアル面を1面とし、アキシャル面(回転軸方向においてティースの先端が対向する磁極配置面)を2面とした回転電機を取り上げた。そして、第3実施形態として、ラジアル面を2面とした回転電機を取り上げた。
【0076】
このような構成の他、アキシャル面を1面とした構成、アキシャル面を2面とした構成等も可能である。アキシャル面を1面とする場合、図5に示される回転電機において、ロータ16を用いず、さらに、アキシャルロータ32Aおよび32Bのうちいずれか一方を用いないものとする。そして、ステータコアにおいては、1方向にアキシャルティース部が延びるティースを設ければよい。また、アキシャル面を2面とする場合、図5に示される回転電機において、ロータ16を用いないものとする。そして、ステータコアにおいては、2方向にアキシャルティース部が延びるティースを設ければよい。
【0077】
より一般的に本発明は、2つのアキシャル面、および、2つのラジアル面のうち少なくとも1つを任意に採用した回転電機に対して用いることが可能である。ティースには、ロータの磁極配置面の方向に延びるティース部を備えるものを用いればよい。
【0078】
上述の各実施形態に係る回転電機では、角が丸められた矩形の形状のトロイダルコイルが採用されているが、トロイダルコイルは環状のその他の形状のものを採用してもよい。例えば、ティースが延びる方向に辺を有する多角形の形状のトロイダルコイルを採用してもよい。
【0079】
また、上記の各実施形態に係る回転電機では、ティース部と環状コアとの境界から、環状コアのトロイダル方向に垂直な面内で突出した追加ティース部が用いられている。このような平坦な追加ティース部の他、ティースとトロイダルコイルとの間に隙間がある場合には、ティースの厚み方向に突出させた立体的な追加ティース部を採用してもよい。
【0080】
本発明に係る回転電機は、ハイブリッド自動車、電気自動車等の電動車両に用いてもよい。一般に、電動車両は、繰り返して充放電が可能な二次電池、および電力制御回路が搭載される。回転電機は、例えば、駆動用の電動機および二次電池充電用の発電機として用いられる。この場合、電力制御回路は、運転操作および車両の走行状態に応じて、二次電池から回転電機に供給される駆動電力を制御し、または、回転電機から二次電池に供給される発電電力を制御して二次電池を充電する。
【符号の説明】
【0081】
10 筐体、12,40,60 ステータ、14 シャフト、16 ラジアルロータ、18 ロータコア、20,38,58 永久磁石、22,42,62 ステータコア、24 トロイダルコイル、26 環状コア、28 ラジアルティース部、31,47 ティース、30U,30L,66A,66B 追加ティース部、32A,32B アキシャルロータ、34,54 円板部材、36,56 磁石ホルダ、44U,44L アキシャルティース部、46U,46L 外側追加ティース部、48U,48L 充填追加ティース部、50 シリンダロータ、52 側壁部材、64A 内側ラジアルティース部、64B 外側ラジアルティース部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16