(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気回路に接続される通電用部材(12)と、燃料と主酸化剤とが混合されたガス発生剤(41)が収容された収容部(37)を有し、上記ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によって上記通電用部材(12)による電気回路の接続状態が切り換わるように、上記収容部(37)のガス発生剤(41)を燃焼させて燃焼ガスを噴出させるガス発生器(35)とを備えた回路切換装置であって、
上記燃料の燃焼時に、上記燃料へ供給される酸素供給量が、該燃料が完全燃焼するための酸素要求量よりも多くなるように、補助酸化剤(40)を備えている
ことを特徴とする回路切換装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
〈発明の実施形態1〉
図1〜
図5に示すように、本実施形態1では、本発明に係る回路切換装置は、ガス発生剤(41)の燃焼により大量に発生した高温のガス(燃焼ガス)の圧力によってブレード(作動部材)(30)を前進させて通電用部材であるハーネス(12)を切断することによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断する切断装置に構成されている。
【0027】
上記回路切換装置(10)は、
図1及び
図5に示すように、ケース(11)を備え、該ケース(11)の内部に、ストッパ(23)と内筒(24)とブレード(30)とガス発生器(35)とが収容されている。
【0028】
なお、
図1は回路切換装置(10)の平面断面図であり、
図2は
図1のII−II線に沿う側面断面図であり、以下では説明の便宜上、
図2における左右方向の左側を「前側」、右側を「後側」と称し、
図2における上下方向の上側を「上側」、下側を「下側」と称して説明する。また、
図2における紙面に直交する方向の手前側を「左側」、奥側を「右側」と称して説明する。
【0029】
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、上記ケース(11)は、箱状に形成された樹脂ケース(20)と筒状に形成された金属ケース(27)とを備えている。該金属ケース(27)の前側部分は樹脂ケース(20)内の後述する挿通孔(21)に収容されている。
【0030】
上記樹脂ケース(20)は、例えばPC(ポリカーボネート)等の樹脂によって形成されている。上記樹脂ケース(20)を構成する樹脂材料は、これに限られず、プラスチック等を含む樹脂材料であればよい。また、上記樹脂ケース(20)は、略直方体形状に形成された土台部(13)と、該土台部(13)の下面(13a)及び後面(13b)以外の面を一体的に覆うカバー部(14)とを有している。
【0031】
上記土台部(13)は、上面(13c)に断面が半円形状の溝(21a)が形成されている。該溝(21a)は、土台部(13)の後面(13b)から前面(13d)に向かって延び、後面(13b)のみに開口するように構成されている。
【0032】
上記カバー部(14)は、土台部(13)の上面(13c)、前面(13d)、左面(13e)及び右面(13f)を覆うように構成されている。カバー部(14)の土台部(13)の上面(13c)との対向面(14a)には、土台部(13)の溝(21a)に対応する溝(21b)が形成されている。該溝(21b)は、カバー部(14)の後面(14b)から前面(14c)に向かって延び、後面(14b)のみに開口するように構成されている。
【0033】
このような構成により、樹脂ケース(20)の内部には、上記土台部(13)の溝(21a)と上記カバー部(14)の溝(21b)とによって、樹脂ケース(20)の後端面に開口する略円柱形状の挿通孔(21)が形成される。該挿通孔(21)には、前端から後端に向かって、上記ストッパ(23)、内筒(24)及び金属ケース(27)の前側部分が収容されている。
【0034】
また、樹脂ケース(20)には、ハーネス(12)を設置するための設置孔(22)が土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。該設置孔(22)は、挿通孔(21)の軸心を含む鉛直面に関して対称な形状に形成されている。具体的には、設置孔(22)は、挿通孔(21)の前後方向の中央部から左右方向にそれぞれ延びた後、後方向きに折れ曲がり、その後さらに下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面(13a)まで延びている。また、設置孔(22)は、挿通孔(21)から左右方向に延びて後方に折れ曲がったところまでが幅の狭い幅狭部(22a)に構成され、その後下方向きに延びる部分は幅狭部(22a)よりも幅の広い幅広部(22b)に構成されている。
【0035】
上記設置孔(22)に設置されるハーネス(12)は長板状に形成され、
図3、
図5及び
図6に示すように、略U字形状に折り曲げ形成された幅狭部(12a)と、該幅狭部(12a)の両端にそれぞれ連続する2つの幅広部(12b)とを有している。2つの幅広部(12b)は、それぞれ略L字状の板状片となるように構成されている。ハーネス(12)の一部は、上記樹脂ケース(20)の設置孔(22)において、幅狭部(12a)が設置孔(22)の幅狭部(22a)に位置し、幅広部(12b)の一部が設置孔(22)の幅広部(22b)に位置するように設置されている。
【0036】
また、
図1に示すように、樹脂ケース(20)には、挿通孔(21)と設置孔(22)とを連通する排出通路(28)が土台部(13)とカバー部(14)とに跨って形成されている。該排出通路(28)は、後述するガス発生器(35)によってブレード(30)を前進させるために生成された燃焼ガスを排出する排ガス路(43)の一部を構成する。排出通路(28)は、一端が設置孔(22)の幅狭部(22a)の後方側において挿通孔(21)に連通し、他端が設置孔(22)の幅広部(22b)に連通するように形成されている。
【0037】
さらに、樹脂ケース(20)には、挿通孔(21)の前端から空気を排出するための排気孔(29)が形成されている。該排気孔(29)は、挿通孔(21)の前端の中央部から前方に向かって延びた後、下方向きに折れ曲がって土台部(13)の下面(13a)まで延びている。
【0038】
上記ストッパ(23)は、前進したブレード(30)を受け止めて停止させるためのものである。ストッパ(23)は、挿通孔(21)の前端部に配置され、樹脂材料によって有底円筒形状に形成されている。具体的には、ストッパ(23)は、円板状の底部(23a)と円筒状の筒部(23b)とを有し、挿通孔(21)の前端部において底部(23a)が筒部(23b)よりも前方に位置するように配置されている。底部(23a)の中央部には、上記樹脂ケース(20)の排気孔(29)に連通する孔(23c)が形成されている。
【0039】
上記内筒(24)は、挿通孔(21)において上記ストッパ(23)の後方に配置されて、ハーネス(12)を支持するためのものである。内筒(24)は、第1内筒部材(25)と第2内筒部材(26)とで構成され、両部材(25,26)でハーネス(12)を挟持している。
【0040】
上記第1内筒部材(25)は、セラミックスによって略円筒状に形成され、挿通孔(21)のストッパ(23)の後方において、ストッパ(23)と同軸となるように配置されている。第1内筒部材(25)は、ブレード(30)が挿通可能な内径に構成されている。
【0041】
上記第2内筒部材(26)は、樹脂材料によって略円筒状に形成され、挿通孔(21)の第1内筒部材(25)の後方において、第1内筒部材(25)と同軸となるように配置されている。第2内筒部材(26)は、内径が第1内筒部材(25)の内径と概ね等しくなるように構成されている。また、第2内筒部材(26)は、後側部分が前側部分よりも肉薄に構成されて外径が小さくなっている。第2内筒部材(26)の前側部分には、ハーネス(12)を挿通するための2つの切り欠き(26a)が形成されている。2つの切り欠き(26a)は、上記樹脂ケース(20)の設置孔(22)に対応する位置に形成されている。各切り欠き(26a)は、第2内筒部材(26)の外周縁から内周縁に向かって延び、断面がハーネス(12)の矩形断面よりも僅かに大きな矩形断面となるように形成されている。また、第2内筒部材(26)の肉薄の後側部分の外周面には、環状の溝が形成され、該溝にはOリング(26b)が設置されている。
【0042】
このように、内筒(24)では、絶縁部材である第1内筒部材(25)、及び第2内筒部材(26)がハーネス(12)を両側から挟み込むことで、ハーネス(12)を支持している。
【0043】
上記金属ケース(27)は、金属材料によって略円筒状に形成され、前側部分が挿通孔(21)に収容される一方、後側部分は樹脂ケース(20)から露出している。金属ケース(27)の前側部分は、挿通孔(21)の第2内筒部材(26)の後方において、第2内筒部材(26)と同軸となるように配置されている。また、金属ケース(27)は、前端部が第2内筒部材(26)の肉薄の後側部分に外嵌されている。第2内筒部材(26)の後側部分と該後側部分に外嵌された金属ケース(27)の前端部との間は、上記Oリング(26b)によってシールされている。また、金属ケース(27)の前端部には貫通孔(27a)が形成されている。該貫通孔(27a)は、上記樹脂ケース(20)の排出通路(28)と対応する位置に形成され、金属ケース(27)の前端部と第2内筒部材(26)の後端面との間の隙間に連通している。金属ケース(27)の前側部分であって上記前端部以外の部分は、内径が第2内筒部材(26)の内径と概ね等しくなるように構成されている。
【0044】
以上のように、挿通孔(21)に収容されたストッパ(23)、内筒(24)及び金属ケース(27)によって、その内部に略円柱状の通路(17)が形成され、該円柱通路(17)が本発明に係るブレード(30)が前進する直線状の通路を構成している。つまり、本実施形態では、ケース(11)、ストッパ(23)及び内筒(24)が、内部に直線状の通路が形成されたケース部材を構成する。また、上記円柱通路(17)は、前端部はストッパ(23)の底部(23a)によって閉塞される一方、後端部は上記金属ケース(27)の内部に収容されたガス発生器(35)によって閉塞されている。上記円柱通路(17)には、上記設置孔(22)に収容されたハーネス(12)の幅狭部(12a)の一部が露出すると共に、該露出部分と上記ガス発生器(35)との間にブレード(30)が収容されている。
【0045】
上記ガス発生器(35)は、ブレード(30)を前進させてハーネス(12)を切断させるための高温の燃焼ガスを大量に発生させるものである。ガス発生器(35)は、ガス発生剤(41)が収容された収容部(37)と、該収容部(37)のガス発生剤(41)に点火する点火部(38)と、収容部(37)と点火部(38)とを保持して上記円柱通路(17)の後端部を閉塞する閉塞部材(39)とを備えている。本実施形態では、収容部(37)及び点火部(38)は、一体に形成されて閉塞部材(39)に固定されている。
【0046】
上記収容部(37)は、箱状に形成され、ガス発生剤(41)が収容されている。ガス発生剤(41)は、燃料と、酸化剤(以下では、ガス発生剤(41)の酸化剤を「主酸化剤」と称する。)とによって構成されている。具体的には、本実施形態1では、燃料としてジルコニウムとニトロセルロースとが用いられ、主酸化剤として過塩素酸カリウムが用いられている。なお、ニトロセルロースは、結合剤を兼ねている。本実施形態1では、これらの物質は、ジルコニウム65%、ニトロセルロース5%、過塩素酸カリウム30%の質量比率となるように配合されて結合剤(本実施形態では、燃料の一部であるニトロセルロース)によってペレット状に成形されている。なお、本実施形態では、結合剤が燃料の一部としての効果を有しているが、結合剤は燃料としての効果を有さないものであってもよい。また、結合剤は、酸化剤としての効果を有するものであってもよい。
【0047】
上記点火部(38)は、雷管によって構成されている。点火部(38)は、起爆薬等を有する前端部が上記収容部(37)の後端部に固定され、点火を指令する電気信号を受けると、収容部(37)内に収容されたガス発生剤(41)に点火する。
【0048】
上記閉塞部材(39)は、略円筒状に形成されて筒部(39a)と、該筒部(39a)の中途部を閉塞する閉塞部(39b)とを有している。筒部(39a)及び閉塞部(39b)は、金属材料によって一体に形成されている。筒部(39a)は、金属ケース(27)に内嵌されている。一方、閉塞部(39b)は、上記収容部(37)及び点火部(38)を保持すると共に、上記円柱通路(17)内のブレード(30)の後方を閉塞している。閉塞部(39b)は、上記収容部(37)の前端部が上記噴出空間(36)に露出するように、収容部(37)及び点火部(38)を保持している。また、閉塞部(39b)は、ブレード(30)との間に該ブレード(30)の背面に圧力を作用させるための噴出空間(36)を形成している。
【0049】
このような構成により、点火部(38)によって収容部(37)内のガス発生剤(41)に点火されると、該ガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して噴出空間(36)内に噴出される。このように大量の燃焼ガスが噴出空間(36)内に噴出されると、噴出空間(36)内の圧力が上昇し、ブレード(30)が前進する。
【0050】
上記ブレード(30)は、燃焼ガスの圧力により、上記円柱通路(17)内を前進してハーネス(12)を切断するためのものである。ブレード(30)は、
図6及び
図7に示すように、金属材料(例えば、鋼材)によって形成された切断部(31)と、該切断部(31)を取り付けるプッシャー(32)とを備えている。
【0051】
上記プッシャー(32)は、ブレード(30)を保持すると共に、上記噴出空間(36)に噴出されたガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力を受けて切断部(31)を前進させるものである。プッシャー(32)は、樹脂材料によって略円柱状に形成され、上記円柱通路(17)のガス発生器(35)の前方に収容されている。プッシャー(32)は、後述する切断部(31)よりも僅かに大径に形成され、絶縁部を構成している。
【0052】
上記切断部(31)は、プッシャー(32)の前端部に取り付けられ、刃部(31a)と、該刃部(31a)と一体に形成された一対のガイド部(31b,31b)とを有している。刃部(31a)は、肉厚の円板状の部材によって構成され、前面の上下方向中央部が後方に凹んだ形状に構成されている。一方、一対のガイド部(31b,31b)は、上記刃部(31a)の前面の上端部と下端部とから前方に突出する突起によって構成されている。一対のガイド部(31b,31b)は、刃部(31a)の前面からハーネス(12)を避けて該ハーネス(12)よりも前方に突出している。各ガイド部(31b,31b)の内面はハーネス(12)の側面に沿う形状に形成される一方、外面は円柱通路(17)を形成する壁面に沿う形状に形成されている。また、刃部(31a)の前面の外縁部であって一対のガイド部(31b,31b)によって挟まれる部分が、ハーネス(12)を切断する刃先部に構成されている。
【0053】
−補助酸化剤−
上記ガス発生剤(41)は、燃焼によって燃料の殆どがガス化するが、燃焼の条件によっては残渣が発生する場合がある。そこで、本実施形態1では、ガス発生剤(41)の燃料の燃焼時に、該燃料の燃焼が促進されるように、補助酸化剤(40)を設けている。
【0054】
本実施形態1では、補助酸化剤(40)は、結合剤によってペレット状に成形され、噴出空間(36)内に設けられている。補助酸化剤(40)として、ガス発生剤(41)の主酸化剤と同じ過塩素酸カリウムが用いられている。補助酸化剤(40)は、ガス発生剤(41)の燃料が燃焼する際に、該燃料へ供給される計算上の酸素量(酸素供給量)が、該燃料が完全燃焼するために必要になる計算上の酸素量(酸素要求量)よりも多くなるような分量だけ設けられている。つまり、ガス発生剤(41)及び補助酸化剤(40)を合わせたものを回路切換装置(10)で使用する火薬と称すると、補助酸化剤(40)は、回路切換装置(10)で使用する火薬の計算上の酸素バランスが正の値になるような分量だけ設けられている。
【0055】
ここで、酸素バランスとは、回路切換装置(10)で使用する火薬が含む酸素量について、火薬の燃料成分が完全燃焼するために必要となる計算上の酸素量に対する過不足を示すものであり、酸素が過剰である場合には正の値、酸素が不足する場合には負の値となるものである。
【0056】
本実施形態1では、上述のように、補助酸化剤(40)が、回路切換装置(10)で使用する火薬の計算上の酸素バランスが正の値になるような分量だけ設けられている。そのため、回路切換装置(10)では、火薬の酸素供給量が酸素要求量よりも多くなり、燃料の燃焼が促進されて、燃料が完全燃焼する又は完全燃焼に近い状態となる。具体的には、本実施形態1では、回路切換装置(10)で使用する火薬における各物質の質量比率が、ジルコニウム40%、ニトロセルロース5%、過塩素酸カリウム55%となるような分量だけ、補助酸化剤(40)が設けられている。
【0057】
−回路切換装置の動作−
本実施形態1の回路切換装置(10)は、例えば工場などの電気機器のハーネス(12)が第1内筒部材(25)と第2内筒部材(26)との間を通るように、設置孔(22)に挿通されて設置される。ハーネス(12)は、第1内筒部材(25)及び第2内筒部材(26)に挟まれて支持される。
【0058】
上記回路切換装置(10)は、点火部(38)が火災報知器や地震警報機などに接続された状態で設置される。点火部(38)には、火災報知器が火災を感知したときや、地震警報機が地震を感知したときに、警告信号が入力される。警告信号が入力されると、点火部(38)は収容部(37)内のガス発生剤(41)に点火して該ガス発生剤(41)を燃焼させる。
【0059】
図8(A)〜(C)に示すように、ガス発生剤(41)に点火されると、ガス発生剤(41)中の燃料に主酸化剤から酸素が供給されて燃料が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して噴出空間(36)に噴出される。これにより、噴出空間(36)の圧力が上昇し、ブレード(30)には前方への推力が与えられる。
【0060】
噴出空間(36)の圧力が上昇してブレード(30)が前進すると、切断部(31)の刃部(31a)がハーネス(12)を瞬時に切断する(
図8(A)及び(B)参照)。また、ブレード(30)は、ハーネス(12)を切断した後、さらに前進してストッパ(23)の底部(23a)に当接して停止する(
図8(C)参照)。
【0061】
上記ブレード(30)は、停止位置においてプッシャー(32)がハーネス(12)の切断箇所に接触するように構成されている。そのため、切断されたハーネス(12)が切断部(31)を介して再び通電されることが阻止される。
【0062】
また、上記ブレード(30)の前進後、ブレード(30)の後方の噴出空間(36)に充満する燃焼ガスは、金属ケース(27)の前端部と第2内筒部材(26)の後端面との間の隙間、金属ケース(27)の貫通孔(27a)、樹脂ケース(20)の排出通路(28)及び設置孔(22)によって構成される排ガス路(43)を通って回路切換装置(10)の外部へ排出される(
図1参照)。
【0063】
しかしながら、一部の燃焼ガスは、円柱通路(17)のブレード(30)の隙間等を通ってハーネス(12)の切断部分に到達する。また、ガス発生剤(41)は、燃焼によって燃料の殆どがガス化して燃焼ガスとなるが、燃焼の条件によっては残渣が発生する場合がある。そのため、残渣が、燃焼ガスと共にハーネス(12)の切断部分に至り、ハーネス(12)の2つの切断片の間に電気通路を形成して絶縁性能が維持できなくなるおそれがある。
【0064】
本実施形態1では、燃料の燃焼時に、燃料へ供給される酸素の供給量が、燃料が完全燃焼するために要求される酸素の要求量よりも多くなるように、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。そのため、噴出空間(36)に噴出されたガス発生剤(41)の燃焼ガスに、補助酸化剤(40)から酸素がさらに供給され、燃料の燃焼が促進される。これにより、燃料が完全燃焼する又は完全燃焼に近い状態となり、煤等の導電性を有する残渣が生じ難くなる。よって、ハーネス(12)の2つの切断片の間に残渣が至ったとしても、少量であってその間に電気通路が形成されないため、絶縁性能が維持される。
【0065】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1によれば、ガス発生剤(41)の燃料の燃焼時に、燃料へ供給される酸素の供給量が、燃料が完全燃焼するために要求される酸素の要求量よりも多くなるように、補助酸化剤(40)を回路切換装置(10)に設けることとした。そのため、回路切換装置(10)においてガス発生剤(41)の燃料の燃焼を促進させることができる。よって、煤等の導電性を有する残渣を生じ難くすることができる。つまり、酸化剤の量を増大させて残渣の発生を抑制することにより、ハーネス(12)の2つの切断片の間に至る残渣の量を低減することができる。よって、ハーネス(12)の2つの切断片の間に残渣が至ったとしても、少量であってその間に電気通路が形成されない。従って、回路切換装置(10)において、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0066】
また、実施形態1によれば、補助酸化剤(40)を、噴出空間(36)に設けることとした。そのため、新たな配合比率のガス発生剤を製作することなく、従来の回路切換装置(10)を組み立てる際に、噴出空間(36)に酸化剤を設けるだけで、安価に且つ容易に補助酸化剤(40)を設けた回路切換装置(10)を製作することができる。
【0067】
また、実施形態1によれば、高圧の燃焼ガスを排ガス路(43)によって回路切換装置(10)の外部へ排出することができるため、回路切換装置(10)の破裂等の危険性を低減することができる。また、煤等の導電性を有する残渣の少ない燃焼ガスが回路切換装置(10)の外部へ排出されるため、回路切換装置(10)の周囲に設けられた電気回路に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0068】
〈発明の実施形態2〉
実施形態2は、実施形態1の回路切換装置(10)において、補助酸化剤(40)を設ける位置を変更したものである。
【0069】
実施形態2では、補助酸化剤(40)は、噴出空間(36)ではなく、収容部(37)の内部に収容されている。具体的には、補助酸化剤(40)は、収容部(37)のガス発生剤(41)よりも前方、即ち、点火部(38)側ではなく、噴出空間(36)側に設けられている。
【0070】
このような構成により、収容部(37)では、まず、点火部(38)側のガス発生剤(41)が点火部(38)によって点火されて燃焼し、燃焼ガスを生じる。該燃焼ガスは、補助酸化剤(40)を巻き込みながら噴出空間(36)に噴出される。このとき、ガス発生剤(41)の燃焼ガスに補助酸化剤(40)から酸素が供給され、燃料の燃焼が促進される。これにより、残渣が発生し難くなる。
【0071】
このように、実施形態2によれば、収容部(37)の内部において、後方の点火部(38)側にガス発生剤(41)を収容し、その前方の噴出空間(36)側に補助酸化剤(40)を収容することとした。そのため、従来の回路切換装置において、収容部(37)にガス発生剤(41)を収容する際に、その前方に補助酸化剤(40)を設けるだけで、容易に補助酸化剤(40)を設けた回路切換装置(10)を製作することができる。また、点火部(38)にはガス発生剤(41)のみが接触し、補助酸化剤(40)は接触していないため、着火性を損なうことなく補助酸化剤(40)を設けることができる。
【0072】
〈発明の実施形態3〉
実施形態3は、実施形態1の回路切換装置(10)において、補助酸化剤(40)を設ける位置を変更したものである。
【0073】
実施形態3では、補助酸化剤(40)は、収容部(37)において、ガス発生剤(41)に混ぜ込まれている。具体的には、補助酸化剤(40)は、ガス発生剤(41)と混ぜ合わされた後、収容部(37)に充填される。
【0074】
このような構成により、点火部(38)によって収容部(37)のガス発生剤(41)に点火されると、収容部(37)では、酸化剤過多の状態で燃料が燃焼する。これにより、燃料の燃焼が促進され、残渣が発生し難くなる。
【0075】
このように、実施形態3によれば、補助酸化剤(40)をガス発生剤(41)に混ぜ込んで収容部(37)の内部に収容することとした。そのため、収容部(37)において、酸化剤過多の状態で燃料を燃焼させることができる。よって、燃料の燃焼をより促進させることができ、残渣の発生をより確実に抑制することができる。
【0076】
〈発明の実施形態4〉
実施形態4は、実施形態1の回路切換装置(10)のようにブレード(作動部材)(30)を用いることなく、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)を切断させることによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断するように構成したものである。以下、
図11(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0077】
具体的には、実施形態4の回路切換装置(10)は、樹脂材料からなるケース(ケース部材)(18)を備えている。ケース(18)は、樹脂材料によって略有底円筒形状に形成され、内部には略円柱状の通路(17)が形成されている。ハーネス(12)は、通路(17)を横断するように設けられ、ケース(18)に保持されている。
【0078】
上記円柱通路(17)のハーネス(12)よりも後方にガス発生器(35)が収容されている。ガス発生器(35)は、実施形態1と同様に、収容部(37)と、点火部(38)と、閉塞部材(39)とを備えている。収容部(37)及び点火部(38)の構成は、実施形態1と同様である。閉塞部材(39)は、金属材料によって略有底円筒形状に形成されて円柱通路(17)の後端部を閉塞している。また、閉塞部材(39)は、ハーネス(12)と間隔を空けて配置されて該ハーネス(12)との間に噴出空間(36)を形成している。閉塞部材(39)は、収容部(37)の前端部が噴出空間(36)に露出するように収容部(37)及び点火部(38)を保持している。
【0079】
また、実施形態4では、燃料の燃焼時に、燃料へ供給される酸素の供給量が、燃料が完全燃焼するために要求される酸素の要求量よりも多くなるように、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。
【0080】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して前方のハーネス(12)に向かって噴出空間(36)内に噴出されると、この燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)が切断される(
図11(B)参照)。これにより、ハーネス(12)による電気回路における電気的接続が切断される。
【0081】
また、本実施形態4では、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。そのため、噴出空間(36)に噴出されたガス発生剤(41)の燃焼ガスに、補助酸化剤(40)から酸素がさらに供給され、燃料の燃焼が促進される。これにより、煤等の導電性を有する残渣が生じ難くなる。よって、ハーネス(12)の2つの切断片の間に残渣が至ったとしても、少量であってその間に電気通路が形成されないため、絶縁性能が維持される。このように、実施形態4の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0082】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。
【0083】
〈発明の実施形態5〉
実施形態5は、実施形態4の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものである。以下、
図12(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0084】
具体的には、実施形態5では、ハーネス(12)と収容部(37)との間に噴出空間(36)が形成されていない。つまり、ハーネス(12)は、背面が収容部(37)の前端部に接触するようにケース(18)に保持されている。また、実施形態5では、実施形態2と同様に、補助酸化剤(40)が収容部(37)のガス発生剤(41)よりも前方に設けられている。その他の構成は、実施形態4と同様である。
【0085】
このような構成によっても、実施形態4と同様に、ガス発生剤(41)の高温の燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)が切断される(
図12(B)参照)。また、実施形態2と同様に、着火性が損なわれることなくガス発生剤(41)が燃焼し、燃焼ガスに補助酸化剤(40)から酸素が供給されて燃料の燃焼が促進される。よって、実施形態5の回路切換装置(10)によっても、燃料の燃焼が促進され、残渣が発生し難くなるため、回路切換装置(10)作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0086】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態3のように、収容部(37)内においてガス発生剤(41)と混ぜ合わされていてもよい。
【0087】
〈発明の実施形態6〉
実施形態6は、実施形態4の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものであり、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)の一部を変形させることによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断するように構成されている。以下、
図13(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0088】
具体的には、実施形態6では、ハーネス(12)が、折り曲げられた金属板からなる第1部材(12c)及び第2部材(12d)によって構成されている。第1部材(12c)は、ケース(18)の筒部を貫通し、内部において前方へ向かって折り曲げられて略L字状に形成され、ケース(18)に保持されている。一方、第2部材(12d)は、第1部材(12c)の逆側においてケース(18)の筒部を貫通し、内部において前方へ向かって折り曲げられたL字部(12e)と、該L字部(12e)の前端部から第1部材(12c)へ向かって側方に延びる横断部(12f)と、該横断部(12f)の第1部材(12c)側端部から後方へ向かって延びて該第1部材(12c)に接触する接触部(12g)とを有している。このように、ハーネス(12)は、第1部材(12c)と第2部材(12d)の接触部(12g)とが接触した状態において通電するように構成されている。その他の構成は、実施形態4と同様である。
【0089】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して噴出空間(36)に噴出されると、この燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)の第2部材(12d)が前方へ開くように変形する(
図13(B)参照)。具体的には、第2部材(12d)のケース(18)に保持されていない接触部(12g)側が、ケース(18)に保持されたL字部(12e)を基点として回動するように変形する。これにより、第2部材(12d)が第1部材(12c)に接触する接触位置から第1部材(12c)に接触しない非接触位置に移動する。つまり、ハーネス(12)による電気回路における電気的接続が切断される。
【0090】
また、実施形態6においても、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。よって、実施形態6の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0091】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。
【0092】
〈発明の実施形態7〉
実施形態7は、実施形態6の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものである。以下、
図14(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0093】
具体的には、実施形態7では、ハーネス(12)と収容部(37)との間に噴出空間(36)が形成されていない。つまり、ハーネス(12)の第2部材(12d)は、横断部(12f)の背面が収容部(37)の前端部に接触するようにケース(18)に保持されている。また、実施形態7では、実施形態2と同様に、補助酸化剤(40)が、収容部(37)のガス発生剤(41)よりも前方に設けられている。その他の構成は、実施形態6と同様である。
【0094】
このような構成によっても、実施形態6と同様に、ガス発生剤(41)の高温の燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)の第2部材(12d)が前方へ開くように変形する(
図14(B)参照)。これにより、第2部材(12d)が第1部材(12c)に接触する接触位置から第1部材(12c)に接触しない非接触位置に移動する。また、実施形態2と同様に、着火性が損なわれることなくガス発生剤(41)が燃焼し、燃焼ガスに補助酸化剤(40)から酸素が供給されて燃料の燃焼が促進される。よって、実施形態7の回路切換装置(10)によっても、燃料の燃焼が促進され、残渣が発生し難くなるため、回路切換装置(10)作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0095】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態3のように、収容部(37)内においてガス発生剤(41)と混ぜ合わされていてもよい。
【0096】
〈発明の実施形態8〉
実施形態8は、実施形態4の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものであり、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)の一部分を移動させることによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断するように構成されている。以下、
図15(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0097】
具体的には、実施形態8では、ハーネス(12)が、第1部材(12h)と第2部材(12i)と第3部材(12j)とによって構成されている。第1部材(12h)及び第2部材(12i)は、それぞれケース(18)の筒部を貫通し、内部において前方へ向かって折り曲げられて略L字状に形成され、ケース(18)に保持されている。一方、第3部材(12j)は、第1部材(12h)に接触する第1接触部(12k)と、第2部材(12i)に接触する第2接触部(12l)と、第1接触部(12k)と第2接触部(12l)とを連結する横断部(12m)とを有し、略U字状に形成されている。このように、ハーネス(12)は、第1部材(12h)と第2部材(12i)とが第3部材(12j)を介して接触した状態において通電するように構成されている。その他の構成は、実施形態4と同様である。
【0098】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して噴出空間(36)に噴出されると、この燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)の第3部材(12j)が前方へ移動する(
図15(B)参照)。これにより、第3部材(12j)が第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触する接触位置から第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触しない非接触位置に移動する。つまり、ハーネス(12)による電気回路における電気的接続が切断される。
【0099】
また、実施形態8においても、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。よって、実施形態8の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0100】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。
【0101】
〈発明の実施形態9〉
実施形態9は、実施形態8の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものである。以下、
図16(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0102】
具体的には、実施形態9では、ハーネス(12)と収容部(37)との間に噴出空間(36)が形成されていない。つまり、ハーネス(12)の第3部材(12j)は、横断部(12m)の背面が収容部(37)の前端部に接触するようにケース(18)に保持されている。また、実施形態9では、実施形態2と同様に、補助酸化剤(40)が、収容部(37)のガス発生剤(41)よりも前方に設けられている。その他の構成は、実施形態8と同様である。
【0103】
このような構成によっても、実施形態8と同様に、ガス発生剤(41)の高温の燃焼ガスの圧力によってハーネス(12)の第3部材(12j)が前方へ移動する(
図16(B)参照)。これにより、第3部材(12j)が第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触する接触位置から第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触しない非接触位置に移動する。また、実施形態2と同様に、着火性が損なわれることなくガス発生剤(41)が燃焼し、燃焼ガスに補助酸化剤(40)から酸素が供給されて燃料の燃焼が促進される。よって、実施形態9の回路切換装置(10)によっても、燃料の燃焼が促進され、残渣が発生し難くなるため、回路切換装置(10)作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0104】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態3のように、収容部(37)内においてガス発生剤(41)と混ぜ合わされていてもよい。
【0105】
〈発明の実施形態10〉
実施形態10は、実施形態6の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものであり、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によってピストン部材(作動部材)(33)を前進させてハーネス(12)の一部を変形させることによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断するように構成されている。以下、
図17(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0106】
具体的には、実施形態10では、円柱通路(17)のハーネス(12)の後方にピストン部材(33)が設けられている。ピストン部材(33)は、樹脂材料によって後側が略円柱形状に形成され、前側が略円錐台形状に形成されている。本実施形態では、ガス発生器(35)は、円柱通路(17)のピストン部材(33)の後方を閉塞し、ピストン部材(33)の背面との間に収容部(37)のガス発生剤(41)の燃焼ガスが噴出される噴出空間(36)を形成するように設けられている。その他の構成は、実施形態6と同様である。
【0107】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して噴出空間(36)に噴出されると、噴出空間(36)の圧力が上昇する。これにより、ピストン部材(33)が前進し、ハーネス(12)の第2部材(12d)を前方へ開くように変形させる(
図17(B)参照)。具体的には、第2部材(12d)のケース(18)に保持されていない接触部(12g)側が、ケース(18)に保持されたL字部(12e)を基点として回動するように変形する。これにより、第2部材(12d)が第1部材(12c)に接触する接触位置から第1部材(12c)に接触しない非接触位置に移動する。つまり、ハーネス(12)による電気回路における電気的接続が切断される。
【0108】
また、実施形態10においても、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。よって、実施形態10の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0109】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。
【0110】
〈発明の実施形態11〉
実施形態11は、実施形態10の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものである。以下、
図18(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0111】
具体的には、実施形態11では、ピストン部材(33)と収容部(37)との間に噴出空間(36)が形成されていない。つまり、ピストン部材(33)は、背面が収容部(37)の前端部に接触するようにケース(18)に保持されている。また、実施形態11では、実施形態2と同様に、補助酸化剤(40)が、収容部(37)のガス発生剤(41)よりも前方に設けられている。その他の構成は、実施形態10と同様である。
【0112】
このような構成によっても、実施形態10と同様に、ガス発生剤(41)の高温の燃焼ガスの圧力によってピストン部材(33)が前進し、ハーネス(12)の第2部材(12d)を前方へ開くように変形させる(
図18(B)参照)。これにより、第2部材(12d)が第1部材(12c)に接触する接触位置から第1部材(12c)に接触しない非接触位置に移動する。また、実施形態2と同様に、着火性が損なわれることなくガス発生剤(41)が燃焼し、燃焼ガスに補助酸化剤(40)から酸素が供給されて燃料の燃焼が促進される。よって、実施形態11の回路切換装置(10)によっても、燃料の燃焼が促進され、残渣が発生し難くなるため、回路切換装置(10)作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0113】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態3のように、収容部(37)内においてガス発生剤(41)と混ぜ合わされていてもよい。
【0114】
〈発明の実施形態12〉
実施形態12は、実施形態8の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものであり、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によってピストン部材(作動部材)(33)を前進させてハーネス(12)の一部分を移動させることによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断するように構成されている。以下、
図19(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0115】
具体的には、実施形態12では、円柱通路(17)のハーネス(12)の後方にピストン部材(33)が設けられている。ピストン部材(33)は、樹脂材料によって後側が略円柱形状に形成され、前側が略円錐台形状に形成されている。本実施形態では、ガス発生器(35)は、円柱通路(17)のピストン部材(33)の後方を閉塞し、ピストン部材(33)の背面との間に収容部(37)のガス発生剤(41)の燃焼ガスが噴出される噴出空間(36)を形成するように設けられている。その他の構成は、実施形態8と同様である。
【0116】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して噴出空間(36)に噴出されると、噴出空間(36)の圧力が上昇する。これにより、ピストン部材(33)が前進し、ハーネス(12)の第3部材(12j)を前方へ移動させる(
図19(B)参照)。これにより、第3部材(12j)が第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触する接触位置から第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触しない非接触位置に移動する。つまり、ハーネス(12)による電気回路における電気的接続が切断される。
【0117】
また、実施形態12においても、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。よって、実施形態12の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0118】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。
【0119】
〈発明の実施形態13〉
実施形態13は、実施形態12の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものである。以下、
図20(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0120】
具体的には、実施形態13では、ピストン部材(33)と収容部(37)との間に噴出空間(36)が形成されていない。つまり、ピストン部材(33)は、背面が収容部(37)の前端部に接触するようにケース(18)に保持されている。また、実施形態13では、実施形態2と同様に、補助酸化剤(40)が、収容部(37)のガス発生剤(41)よりも前方に設けられている。その他の構成は、実施形態12と同様である。
【0121】
このような構成によっても、実施形態12と同様に、ガス発生剤(41)の高温の燃焼ガスの圧力によってピストン部材(33)が前進し、ハーネス(12)の第3部材(12j)を前方へ移動させる(
図20(B)参照)。これにより、第3部材(12j)が第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触する接触位置から第1部材(12h)及び第2部材(12i)に接触しない非接触位置に移動する。また、実施形態2と同様に、着火性が損なわれることなくガス発生剤(41)が燃焼し、燃焼ガスに補助酸化剤(40)から酸素が供給されて燃料の燃焼が促進される。よって、実施形態13の回路切換装置(10)によっても、燃料の燃焼が促進され、残渣が発生し難くなるため、回路切換装置(10)作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0122】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態3のように、収容部(37)内においてガス発生剤(41)と混ぜ合わされていてもよい。
【0123】
〈発明の実施形態14〉
実施形態14は、実施形態6の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものであり、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によってピストン部材(作動部材)(34)を前進させてハーネス(12)を分離させることによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断するように構成されている。以下、
図21(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0124】
具体的には、実施形態14では、ハーネス(12)の形状が実施形態6と異なる。本実施形態においても、ハーネス(12)は、第1部材(12n)と第2部材(12o)とを備えている。第1部材(12n)及び第2部材(12o)は、円柱通路(17)の中心軸を通る所定の面(
図21の紙面に垂直な面)に関して対称な形状に形成されている。また、第1部材(12n)及び第2部材(12o)は、ケース(18)の筒部を貫通して内部において前方へ向かって折り曲げられたL字部(12p)と、該L字部(12p)の前端部から左右方向の中央へ向かって延び、中央へ向かう程前方に位置する傾斜部(12q)と、該傾斜部(12q)の前端部から前方へ真っ直ぐ延びる接触部(12r)とをそれぞれ有し、それぞれの接触部(12r)が接触するように構成されている。ハーネス(12)は、第1部材(12n)及び第2部材(12o)の各接触部(12r)が接触した状態において通電するように構成されている。
【0125】
また、実施形態14では、円柱通路(17)のハーネス(12)の後方にピストン部材(34)が設けられている。ピストン部材(34)は、樹脂材料によって後側が略円柱形状に形成され、前側が略円錐形状に形成されている。ピストン部材(34)の前側部分の中央部は、周囲の部分よりも前方へ突き出た突出部(34a)に形成されている。突出部(34a)は略円錐形状に形成され、中心がハーネス(12)の第1部材(12n)及び第2部材(12o)の接触面の下方に位置するように設けられている。本実施形態では、ガス発生器(35)は、円柱通路(17)のピストン部材(34)の後方を閉塞し、ピストン部材(34)の背面との間に収容部(37)のガス発生剤(41)の燃焼ガスが噴出される噴出空間(36)を形成するように設けられている。その他の構成は、実施形態6と同様である。
【0126】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して噴出空間(36)に噴出されると、噴出空間(36)の圧力が上昇する。これにより、ピストン部材(34)が前進し、該ピストン部材(34)の突出部(34a)がハーネス(12)の第1部材(12n)及び第2部材(12o)の各接触面の間(各接触部(12r)の対向面間)に入り込むことによって第1部材(12n)と第2部材(12o)とを離間させる(
図21(B)参照)。つまり、第1部材(12n)と第2部材(12o)とが、互いに接触する接触位置から互いに接触しない非接触位置に移動する。これにより、ハーネス(12)による電気回路における電気的接続が切断される。
【0127】
また、実施形態14においても、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。よって、実施形態14の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0128】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。
【0129】
〈発明の実施形態15〉
実施形態15は、実施形態14の回路切換装置(10)の構成を一部変更したものである。以下、
図22(A)及び(B)の上方を前方、下方を後方として説明する。
【0130】
具体的には、実施形態14では、ピストン部材(34)と収容部(37)との間に噴出空間(36)が形成されていない。つまり、ピストン部材(34)は、背面が収容部(37)の前端部に接触するようにケース(18)に保持されている。また、実施形態15では、実施形態2と同様に、補助酸化剤(40)が、収容部(37)のガス発生剤(41)よりも前方に設けられている。その他の構成は、実施形態14と同様である。
【0131】
このような構成によっても、実施形態14と同様に、ガス発生剤(41)の高温の燃焼ガスの圧力によってピストン部材(34)が前進し、該ピストン部材(34)の突出部(34a)がハーネス(12)の第1部材(12n)及び第2部材(12o)の各接触面の間(各接触部(12r)の対向面間)に入り込んで第1部材(12n)と第2部材(12o)とを離間させる(
図22(B)参照)。また、実施形態2と同様に、着火性が損なわれることなくガス発生剤(41)が燃焼し、燃焼ガスに補助酸化剤(40)から酸素が供給されて燃料の燃焼が促進される。よって、実施形態15の回路切換装置(10)によっても、燃料の燃焼が促進され、残渣が発生し難くなるため、回路切換装置(10)作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0132】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態3のように、収容部(37)内においてガス発生剤(41)と混ぜ合わされていてもよい。
【0133】
〈発明の実施形態16〉
図23(A)及び(B)に示すように、実施形態16では、回路切換装置(10)は、円筒状のソケット部材(19a)と、これに嵌合する円柱状のプラグ部材(19b)とを備え、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によってプラグ部材(19b)をソケット部材(19a)から押し出して通電用部材(12)である両部材(19a,19b)の導通部を離間させることによって、電気回路(図示省略)の電気的接続を切断するように構成されている。
【0134】
本実施形態では、ソケット部材(19a)とプラグ部材(19b)とは、いずれも全体が金属などの導体で形成され、ソケット部材(19a)にプラグ部材(19b)が嵌合した状態で両部材(19a,19b)が電気的に接続されるように構成されている。つまり、ソケット部材(19a)とプラグ部材(19b)は、どちらも全体が導通部として構成されている。ソケット部材(19a)及びプラグ部材(19b)の導通部(本実施形態では全体)は、電気回路(図示省略)の2つの端子にそれぞれ接続され、本発明に係る通電用部材(12)を構成する。ソケット部材(19a)は、底部と筒部とが一体に形成され、筒部にプラグ部材(19b)が嵌り込むように構成されている。
【0135】
ソケット部材(19a)の底部には、内面において開口する凹部が形成され、該凹部にはガス発生剤(41)が収容された収容部(37)と点火部(38)とが嵌め込まれている。プラグ部材(19b)は、収容部(37)との間に該収容部(37)に収容されたガス発生剤(41)の燃焼ガスが噴出される噴出空間(36)が形成されるようにソケット部材(19a)の筒部に嵌め込まれている。つまり、ソケット部材(19a)は、ガス発生剤(41)が収容された収容部(37)を有し、ソケット部材(19a)及びプラグ部材(19b)が離れる方向にプラグ部材(19b)が移動するように、収容部(37)のガス発生剤(41)を燃焼させて燃焼ガスをソケット部材(19a)の内底面とプラグ部材(19b)の底面との間の噴出空間(36)に噴出させるガス発生器(35)に構成されている。
【0136】
また、実施形態16においても、燃料の燃焼時に、燃料へ供給される酸素の供給量が、燃料が完全燃焼するために要求される酸素の要求量よりも多くなるように、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。
【0137】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生してプラグ部材(19b)に向かって噴出空間(36)内に噴出されると、噴出空間(36)の圧力が上昇し、プラグ部材(19b)がソケット部材(19a)から押し出される(
図23(B)参照)。これにより、ソケット部材(19a)及びプラグ部材(19b)が接続される電気回路における電気的接続が切断される。
【0138】
また、本実施形態16では、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。そのため、噴出空間(36)に噴出されたガス発生剤(41)の燃焼ガスに、補助酸化剤(40)から酸素がさらに供給され、燃料の燃焼が促進される。これにより、煤等の導電性を有する残渣が生じ難くなる。よって、離間したソケット部材(19a)とプラグ部材(19b)との間(絶縁部間)に残渣が至ったとしても、少量であってその間に電気通路が形成されないため、絶縁性能が維持される。このように、実施形態16の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0139】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。
【0140】
また、ソケット部材(19a)とプラグ部材(19b)とは、一部が金属などの導体で形成され、ソケット部材(19a)にプラグ部材(19b)が嵌合した状態で両部材(19a,19b)の導通部同士が電気的に接続されるように構成されていてもよい。
【0141】
また、プラグ部材(19b)の底面に凹部が形成され、該凹部に収容部(37)と点火部(38)とが嵌め込まれていてもよい。このとき、プラグ部材(19b)は、ガス発生剤(41)が収容された収容部(37)を有し、ソケット部材(19a)及びプラグ部材(19b)の導通部同士が離れる方向にプラグ部材(19b)が移動するように、収容部(37)のガス発生剤(41)を燃焼させて燃焼ガスをソケット部材(19a)の内底面とプラグ部材(19b)の底面との間の噴出空間(36)に噴出させるガス発生器(35)により構成される。
【0142】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。また、補助酸化剤(40)を収容部(37)内に収容し、プラグ部材(19b)の底面をソケット部材(19a)の内底面に接触するように設けて、噴出空間(36)を形成しないように構成してもよい。
【0143】
〈発明の実施形態17〉
実施形態17は、実施形態1の回路切換装置(10)の構成を変更したものであり、ガス発生剤(41)の燃焼ガスの圧力によって通電用部材(12)の一部分を移動させることによって、通電用部材(12)による電気回路(図示省略)の接続状態を切り換えるように構成されている。以下、
図24(A)及び(B)の上方を後方、下方を前方として説明する。
【0144】
具体的には、実施形態17では、回路切換装置(10)は、樹脂材料からなるケース(ケース部材)(18)を備えている。ケース(18)は、樹脂材料によって略有底円筒形状に形成され、内部には略円柱状の通路(17)が形成されている。
【0145】
また、実施形態17では、通電用部材(12)は、第1〜第3部材(12s〜12u)と、円柱形状の接続部材(12v)とによって構成されている。第1〜第3部材(12s〜12u)は、それぞれ金属板によって構成され、第1部材(12s)は、ケース(18)の筒部の一方側において該筒部を貫通し、第2及び第3部材(12t,12u)は、ケース(18)の筒部の他方側において該筒部を貫通している。第1〜第3部材(12s〜12u)は、それぞれ内側端部が略円柱状の通路(17)に臨むようにケース(18)に保持されている。第3部材(12u)は、第2部材(12t)よりも前方に設けられている。第1部材(12s)は、第2部材(12t)よりも前方で且つ第3部材(12u)よりも後方に設けられている。
【0146】
接続部材(12v)は、ケース(18)の筒部の内部に形成された通路(17)と略同径の円柱形状に形成され、通路(17)内に設けられている。また、接続部材(12v)は、通路(17)内の初期位置において第1部材(12s)及び第2部材(12t)の内側端部に接触して両部材(12s,12t)を電気的に接続する一方、前進した前進位置において第1部材(12s)及び第3部材(12u)の内側端部に接触して両部材(12s,12u)を電気的に接続するように構成されている。つまり、通電用部材(12)は、接続部材(12v)が初期位置から前方位置に移動することによって、第1部材(12s)と第2部材(12t)との電気的接続を切断する一方、第1部材(12s)と第3部材(12u)とを電気的に接続して電気回路の接続状態を切り換える。
【0147】
上記円柱通路(17)の通電用部材(12)の接続部材(12v)よりも後方にガス発生器(35)が収容されている。ガス発生器(35)は、実施形態1と同様に、収容部(37)と、点火部(38)と、閉塞部材(39)とを備えている。収容部(37)及び点火部(38)の構成は、実施形態1と同様である。閉塞部材(39)は、金属材料によって略有底円筒形状に形成されて円柱通路(17)の後端部を閉塞している。また、閉塞部材(39)は、通電用部材(12)の接続部材(12v)と間隔を空けて配置されて該接続部材(12v)との間に噴出空間(36)を形成している。閉塞部材(39)は、収容部(37)の前端部が噴出空間(36)に露出するように収容部(37)及び点火部(38)を保持している。
【0148】
また、実施形態17では、燃料の燃焼時に、燃料へ供給される酸素の供給量が、燃料が完全燃焼するために要求される酸素の要求量よりも多くなるように、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。
【0149】
このような構成により、収容部(37)のガス発生剤(41)が燃焼し、高温の燃焼ガスが大量に発生して前方の通電用部材(12)の接続部材(12v)に向かって噴出空間(36)内に噴出されると、この燃焼ガスの圧力によって通電用部材(12)の接続部材(12v)が前進し、初期位置から前方位置へ移動する(
図24(B)参照)。これにより、第1部材(12s)と第2部材(12t)との電気的接続が切断される一方、第1部材(12s)と第3部材(12u)とが電気的に接続される。即ち、通電用部材(12)による電気回路の接続状態が切り換わる。
【0150】
また、本実施形態17では、噴出空間(36)に補助酸化剤(40)が設けられている。そのため、噴出空間(36)に噴出されたガス発生剤(41)の燃焼ガスに、補助酸化剤(40)から酸素がさらに供給され、燃料の燃焼が促進される。これにより、煤等の導電性を有する残渣が生じ難くなる。よって、回路切換装置(10)作動後の電気的接続が切断された電気切断部分(本実施形態17では、第1部材(12s)と第2部材(12t)との間)に残渣が至ったとしても、少量であって電気通路が形成されないため、絶縁性能が維持される。このように、実施形態17の回路切換装置(10)であっても、作動後の電気切断部分における絶縁性能の低下を抑制することができる。また、導電性を有する残渣の発生を抑制することにより、本来絶縁されている第2部材(12t)と第3部材(12u)との間にも残渣によって電気通路が形成されることがない。よって、第2部材(12t)と第3部材(12u)との間の絶縁性能の低下も抑制することができる。
【0151】
なお、補助酸化剤(40)は、実施形態2や実施形態3のように、収容部(37)内に収容されていてもよい。また、補助酸化剤(40)を収容部(37)内に収容し、閉塞部材(39)を通電用部材(12)の接続部材(12v)のすぐ後方に設けて、噴出空間(36)を形成しないように構成してもよい。
【0152】
〈発明の実施形態18〉
次に、本実施形態18について説明する。
図25に示すように、本実施形態18は、実施形態1の回路切換装置(10)を備えたブレーカ(50)である。このブレーカ(50)は、樹脂製のケーシング(図示省略)に設けられた負荷側端子(55)及び電源側端子(54)と、負荷側端子(55)と電源側端子(54)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(51)とを備えている。
【0153】
上記端子間部材(51)は、負荷側端子(55)に接続された固定接触子(52)と、電源側端子(54)に接続された可動接触子(53)とを備えている。可動接触子(53)は、固定接触子(52)に接触する接触位置と、固定接触子(52)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(53)が接触位置に移動すると、可動接触子(53)の可動接点(53a)が固定接触子(52)の固定接点(52a)に接触する。
【0154】
さらに、ブレーカ(50)は、可動接触子(53)を手動で動かすためのリンク機構(58)と、異常電流時に可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すためのトリップ機構(56)と、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離すように可動接触子(53)を付勢する付勢バネ(60)とを備えている。リンク機構(58)は、ケーシングに取り付けられ、手動レバー(57)の操作によって可動接触子(53)を接触位置と非接触位置との間で移動させることができるように構成されている。トリップ機構(56)は、バイメタルによって構成され、可動接触子(53)と電源側端子(54)とを接続している。トリップ機構(56)は、過電流時(異常電流時)に熱変形し、その熱変形によってリンク機構(58)を動かして、可動接触子(53)を固定接触子(52)から引き離す。可動接触子(53)が固定接触子(52)から引き離されると、ブレーカ(50)は通電不能になる。
【0155】
さらに、ブレーカ(50)は、上述の回路切換装置(10)と、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着したことを検出する溶着検出部(65)とを備えている。なお、回路切換装置には、実施形態1と異なる何れの実施形態の回路切換装置を用いてもよい。
【0156】
上記回路切換装置(10)は、端子間部材(51)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、回路切換装置(10)は、端子間部材(51)の裏側(
図25における下側)に設けられている。
【0157】
上記溶着検出部(65)は、例えば端子間部材(51)に接続され、端子間部材(51)の電流値に基づいて可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着しているか否かを検出するように構成されている。溶着検出部(65)には、回路切換装置(10)の点火部(38)が接続されている。溶着検出部(65)は、可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、点火部(38)を作動させるように構成されている。
【0158】
本実施形態18では、溶着検出部(65)が可動接点(53a)と固定接点(52a)とが溶着していると判定すると、点火部(38)が作動して収容部(37)に収容されたガス発生剤(41)が燃焼し、噴出空間(36)内に燃焼ガスが噴出される。これにより、噴出空間(36)内の圧力が上昇し、ブレード(30)が前進する。ブレード(30)は、端子間部材(51)を切断(破断)した後に、プッシャー(32)が端子間部材(51)の切断面に接触する状態で停止する。このため、端子間部材(51)の切断面の間が絶縁され、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間が通電不能になる。
【0159】
−実施形態18の効果−
本実施形態18では、回路切換装置(10)によって、電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着した場合であっても、回路切換装置(10)によって電源側端子(54)と負荷側端子(55)の間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0160】
〈発明の実施形態19〉
次に、本実施形態19について説明する。
図26に示すように、本実施形態19は、実施形態1の回路切換装置(10)を備えた接触器である。この接触器(70)は、
図26に示すように、樹脂製のケーシング(86)に設けられた負荷側端子(75)及び電源側端子(74)と、負荷側端子(75)と電源側端子(74)とを接続するためのハーネス(12)により構成された端子間部材(71)とを備えている。
【0161】
上記端子間部材(71)は、負荷側端子(75)に接続された第1固定接触子(68)と、電源側端子(74)に接続された第2固定接触子(69)と、後述する可動鉄心(81)に連結された可動接触子(73)とを備えている。上記可動接触子(73)は、一対の固定接触子(68,69)に接触する接触位置と、一対の固定接触子(68,69)から離れた非接触位置との間で移動可能に設けられている。可動接触子(73)が接触位置に移動すると、可動接触子(73)の一端の可動接点(73a)が第1固定接触子(68)の第1固定接点(68a)に接触すると共に、可動接触子(73)の他端の可動接点(73b)が第2固定接触子(69)の第2固定接点(69a)に接触する。
【0162】
さらに、接触器(70)は、可動接触子(73)を接触位置と非接触位置の間で動かすための移動機構(76)を備えている。この移動機構(76)は、可動鉄心(81)と固定鉄心(82)と励磁コイル(83)と巻枠(84)とを備えている。固定鉄心(82)はケーシング(86)の底面に固定されている。可動鉄心(81)は、固定鉄心(82)の上側に対面するように設けられている。励磁コイル(83)は巻枠(84)に巻かれている。可動鉄心(81)と巻枠(84)との間には、非通電時に可動鉄心(81)と固定鉄心(82)とを離間させるための一対の復帰バネ(79)が設けられている。
【0163】
上記移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)が通電されると、固定鉄心(82)が励磁されて可動鉄心(81)を引き寄せるように構成されている。可動鉄心(81)から固定鉄心(82)が離れると、接触器(70)は通電状態になる。一方、移動機構(76)は、外部からの信号によって励磁コイル(83)の通電が停止されると、復帰バネ(79)によって可動鉄心(81)が固定鉄心(82)から離れるように構成されている。可動鉄心(81)が固定鉄心(82)に引き寄せられると、接触器(70)は非通電状態になる。
【0164】
さらに、接触器(70)は、上述の回路切換装置(10)と、上記実施形態18と同様の構成の溶着検出部(65)とを備えている。なお、回路切換装置には、実施形態1と異なる何れの実施形態の回路切換装置を用いてもよい。
【0165】
上記回路切換装置(10)は、端子間部材(71)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、回路切換装置(10)は、前進する前のブレード(30)の切断部(31)が可動接触子(73)の前面に対面するように設けられている。
【0166】
本実施形態19では、溶着検出部(65)が可動接点(73a,73b)と固定接点(68a,69a)とが溶着していると判断すると、点火部(38)が作動して収容部(37)に収容されたガス発生剤(41)が燃焼し、ブレード(30)が前進する。ブレード(30)は、可動接触子(73)を切断する。この状態では、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が可動接触子(73)の切断面に接触するまで前進する。
【0167】
−実施形態19の効果−
本実施形態19では、回路切換装置(10)によって、電源側端子(74)と負荷側端子(75)の間を強制的に通電不能にすることが可能である。このため、例えば可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着した場合であっても、回路切換装置(10)によって電源側端子(74)と負荷側端子(75)との間を強制的に通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。
【0168】
〈発明の実施形態20〉
次に、本実施形態20について説明する。
図27に示すように、本実施形態20は、実施形態1の回路切換装置(10)を備えた電気回路遮断器(90)である。この電気回路遮断器(90)は、実施形態18と同様のブレーカ(50)と、実施形態19と同様の接触器(70)と、樹脂製のケーシング(91)とを備えている。なお、ブレーカ(50)と接触器(70)についての説明は省略する。
【0169】
上記ケーシング(91)には、ブレーカ(50)が配置されたブレーカ配置室(88)と、接触器(70)が配置された接触器配置室(89)が障壁を挟んで形成されている。また、ケーシング(91)には、負荷側端子(95)及び電源側端子(94)と、ブレーカ(50)と接触器(70)と接続する接続用部材(92)とが設けられている。接続用部材(92)は、ハーネス(12)により構成されている。
【0170】
上記負荷側端子(95)は、接触器(70)の第1固定接触子(68)に接続されている。電源側端子(94)は、ブレーカ(50)の可動接触子(53)に接続されている。また、接続用部材(92)の一端は、接触器(70)の第2固定接触子(69)に接続されている。接続用部材(92)の他端は、ブレーカ(50)の固定接触子(52)に接続されている。
【0171】
さらに、電気回路遮断器(90)は、上述の回路切換装置(10)と、上記実施形態18と同様の溶着検出部(65)とを備えている。なお、回路切換装置には、実施形態1と異なる何れの実施形態の回路切換装置を用いてもよい。
【0172】
上記回路切換装置(10)は、接続用部材(92)を切断可能な位置に設けられている。具体的に、回路切換装置(10)は、前進する前のブレード(30)の切断部(31)が接続用部材(92)の前面に対面するよう設けられている。
【0173】
本実施形態20では、ブレーカ(50)において可動接触子(53)と固定接触子(52)が溶着していると判定したり、接触器(70)において可動接触子(73)と固定接触子(68,69)が溶着していると判定した場合に、溶着検出部(65)が点火部(38)を作動させることによって収容部(37)に収容されたガス発生剤(41)を燃焼してブレード(30)が前進し、ブレード(30)は、接続用部材(92)を切断(破断)する。この状態では、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触している。つまり、ブレード(30)は、プッシャー(32)が接続用部材(92)の切断面に接触するまで前進する。
【0174】
−実施形態20の効果−
本実施形態20では、回路切換装置(10)によって接続用部材(92)を切断して、電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることが可能である。このため、例えばブレーカ(50)や接触器(70)で溶着が生じた場合であっても、回路切換装置(10)によって電源側端子(94)と負荷側端子(95)の間を通電不能にすることで、負荷側の機器の故障を防止することができる。
【0175】
〈その他の実施形態〉
上記各実施形態では、補助酸化剤(40)は、ガス発生剤(41)の主酸化剤と同じ過塩素酸カリウムを用いていたが、異なる材料であってもよい。例えば、補助酸化剤(40)は、過塩素酸アンモニウムであってもよい。また、補助酸化剤(40)は、複数の材料を用いることとしてもよく、結合剤によって成形されていなくてもよい。また、ガス発生剤(41)の主酸化剤も、上述の過塩素酸カリウムに限られず、例えば、過塩素酸アンモニウムであってもよい。さらに、燃料(燃料の一部としての効果を有する結合剤を含む)も上述のジルコニウムやニトロセルロースに限られない。
【0176】
上記各実施形態では、ガス発生剤(41)及び補助酸化剤(40)は、それぞれ結合剤によってペレット状に成形されていたが、ガス発生剤(41)及び補助酸化剤(40)の形状はこれに限られず、いかなる形状、例えば粉状であってもよい。
【0177】
また、実施形態3では、ガス発生剤(41)をペレット状に成形したものに、補助酸化剤(40)をペレット状に成形したものを混ぜ込んで収容部(37)に収容していたが、予め、ガス発生剤(41)と補助酸化剤(40)とを混ぜ合わせたものを結合剤によってペレット状に成形して収容部(37)に収容することとしてもよい。
【0178】
また、上記各実施形態では、補助酸化剤(40)は、噴出空間(36)か収容部(37)のいずれかに設けられていたが、補助酸化剤(40)は、噴出空間(36)と収容部(37)の両方に設けることとしてもよい。
【0179】
また、上記各実施形態では、ガス発生器(35)は、点火を指令する電気信号を受けた点火部(38)によってガス発生剤(41)に点火して該ガス発生剤(41)を燃焼させていたが、点火部(38)の他、周囲又は通電用部材(12)から伝達された熱エネルギによってガス発生剤(41)を発火させて燃焼させるように構成されていてもよい。このようにガス発生器(35)を構成すると、例えば、火災の際に、回路切換装置(10)の周囲の空気温度の上昇に伴ってガス発生器(35)の温度が上昇することにより、ガス発生剤(41)が発火して燃焼する。つまり、火災の際に、回路切換装置(10)を安全装置として作動させることができる。また、通電用部材(12)に規格以上の大電流が流れた際には、通電用部材(12)の温度が上昇し、その熱が直接的に又はブレード等の作動部材(30,33,34)を介して間接的にガス発生器(35)に伝達されることにより、ガス発生剤(41)が発火して燃焼する。つまり、規格以上の大電流が流れた際に、回路切換装置(10)を電気用ヒューズのように作動させることができる。
【0180】
また、上記各実施形態において、通電用部材(12)を、所定の温度になると溶ける可溶材料によって構成することとしてもよい。このように構成すると、通電用部材(12)が接続された電気回路に過電流が流れた場合に通電用部材(12)が溶けて電気回路を切断する電気用ヒューズとして作用する一方、緊急時には点火部(38)を用いてガス発生剤(41)を作動させて電気回路を切断することができる。
【0181】
また、実施形態1乃至3において、ブレード(30)の切断部(31)の構成及び材料は上記各実施形態のものに限られない。例えば、切断部(31)は刃部(31a)のみを備えてガイド部(31b,31b)を備えていないものであってもよい。また、例えば、切断部(31)は、金属ではなくセラミックスや樹脂等によって構成されていてもよい。
【0182】
また、実施形態1乃至5において、ハーネス(12)の切断部分の断面積を他の部分の断面積よりも小さくしたり、切断部分に切り込みを入れてもよい。このようにハーネス(12)を構成することにより、ハーネス(12)が切断され易くなる。
【0183】
また、実施形態4乃至17において、実施形態1乃至3のような燃焼ガスを外部へ排出するための排ガス路(43)を形成することとしてももちろんよい。また、実施形態1乃至3では、ガス発生剤(41)の作動前に、排ガス路(43)はブレード(30)によって閉塞され、噴出空間(36)が外部と遮断されていたが、排ガス路(43)は、ガス発生剤(41)の作動前に噴出空間(36)と外部とを遮断しないものであってもよい。
【0184】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。