(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記多角形の辺に対応する前記側壁面のうち、少なくとも2つは結晶学的に見て前記化合物半導体の等価な面を含むように形成されている、請求項2に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
  以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。また、本明細書中においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
 
【0021】
  まず、本発明の一実施の形態について説明する。はじめに、
図1を参照して、実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1の構造について説明する。MOSFET1は、化合物半導体からなり、主表面10Aを有する基板10と、ゲート絶縁膜20と、ゲート電極30と、層間絶縁膜40と、オーミック電極50と、ソースパッド電極60と、ドレイン電極70と、ドレインパッド電極80とを備えている。基板10は、ベース基板11と、半導体層12とを含み、半導体層12にはドリフト領域13と、ボディ領域14と、ソース領域15と、高濃度第2導電型領域16とが形成されている。また、基板10には、主表面10A側に開口し、第1の側壁面17Aおよび第1の底壁面17Bを有する複数の第1の凹部17(
図11参照)が形成されている。さらに、基板10には、主表面10A側に開口し、第2の側壁面18Aおよび第2の底壁面18Bを有する第2の凹部18(
図11参照)が形成されている。
 
【0022】
  ベース基板11は、たとえば炭化珪素からなり、N(窒素)などのn型不純物を含むことにより導電型がn型(第1導電型)となっている。ドリフト領域13は、ベース基板11の主表面11A上に形成されている。ドリフト領域13は、ベース基板11と同様に、たとえばN(窒素)などのn型不純物を含むことにより導電型がn型となっており、その濃度はベース基板11よりも低くなっている。
 
【0023】
  ボディ領域14は、ドリフト領域13上(ベース基板11側とは反対側)に接して形成されている。ボディ領域14は、たとえばAl(アルミニウム)やB(ホウ素)などのp型不純物を含むことにより導電型がp型(第2導電型)となっている。ボディ領域14は、基板10の厚み方向に沿った断面(つまり
図1における紙面に平行な面)で見て、第1の凹部17の第1の側壁面17Aにおいて露出しており、第1の凹部17を挟んで対向するように配置されている。なお、ボディ領域14は、ソース領域15から見て主表面10Aとは反対側に配置されている。
 
【0024】
  ソース領域15は、ボディ領域14上(ドリフト領域13側とは反対側)に接して形成されている。ソース領域15は、たとえばP(リン)などのn型不純物を含むことにより、ベース基板11およびドリフト領域13と同様に導電型がn型(第1導電型)となっている。また、ソース領域15に含まれるn型不純物の濃度は、ドリフト領域13よりも高くなっている。ソース領域15は、基板10の厚み方向に沿った断面で見て、第1の凹部17の第1の側壁面17Aにおいて露出しており、第1の凹部17を挟んで対向するように配置されている。
 
【0025】
  高濃度第2導電型領域16は、ボディ領域14およびドリフト領域13に接触しつつ、半導体層12内において第1の凹部17よりも深い領域にまで延在するように形成されている。具体的には、高濃度第2導電型領域16は、オーミック電極50に接触し、ボディ領域14を貫通しつつ、ドリフト領域13との接触面(つまり高濃度第2導電型領域16の底面16B)が第1の凹部17の第1の底壁面17Bよりも主表面10Aから離れた位置に配置されている。また、高濃度第2導電型領域16は、ボディ領域14と同様に、たとえばAl(アルミニウム)などのp型不純物を含むことにより導電型がp型となっており、その濃度はボディ領域14よりも高くなっている。
 
【0026】
  第1の凹部17は、ソース領域15およびボディ領域14を貫通しつつ、ドリフト領域13に達するように形成されている。具体的には、第1の凹部17は、第1の底壁面17Bが高濃度第2導電型領域16の底面16Bよりもオーミック電極50側に位置するように形成されている。また、第1の凹部17は、
図1に示すように第1の側壁面17Aと第1の底壁面17Bとのなす角θが90°よりも大きくなるように形成されている。言い換えれば、第1の凹部17は、第1の側壁面17Aと基板10の主表面10Aとのなす角が90°よりも大きくなるように形成されている。
 
【0027】
  第2の凹部18は、ソース領域15を貫通しつつ、ボディ領域14に達するように形成されている。具体的には、高濃度第2導電型領域16は、第2の凹部18の第2の底壁面18Bからドレイン電極70に向かって伸びるように形成されている。また、
図1に示すように第2の側壁面18Aと第2の底壁面18Bとのなす角は90°程度である。第2の凹部18の第2の側壁面18Aにおいてソース領域15が露出している。
 
【0028】
  次に、
図2および
図3を参照して、第1の凹部17および第2の凹部18の形状について説明する。
図2および
図3に示すように、第1の凹部17および第2の凹部18の平面形状はたとえば六角形である。第1の凹部17の第1の側壁面17Aには、ソース領域15、ボディ領域14およびドリフト領域13が露出している。第2の凹部18の壁面にはソース領域15が露出しており、第2の凹部の18の第2の底壁面18Bにはボディ領域14が露出している。
 
【0029】
  図3(A)を参照して、ソース領域15の平面構造について説明する。ここで、
図3(A)および
図3(B)は基板10の主表面10Aに垂直な方向で見た同じ視野の平面図である。
図3(A)において、ソース領域15の構造を説明するために、ソース領域15の主表面10Aに露出している部分は斜線で示されている。
図3(B)は、セルの構造を説明するための図であるため、ソース領域15は斜線で示されていない。
図3(A)に示すように、第1の凹部17を挟んで対向するソース領域15同士は、平面的に見て、ある1つの第1の凹部17と、当該ある1つ第1の凹部17と隣り合う他の第1の凹部17とに挟まれる領域において互いに接続されている。言い換えれば、ソース領域15は、平面的に見て第1の凹部17を取り囲むように設けられている。また、ソース領域15に接してボディ領域14が形成されている。それゆえ、第1の凹部17を挟んで対向するボディ領域14同士は、平面的に見て、ある1つの第1の凹部17と、当該ある1つ第1の凹部17と隣り合う他の第1の凹部17とに挟まれる領域において互いに接続されている。言い換えれば、ボディ領域14は、平面的に見て第1の凹部17を取り囲むように設けられている。
 
【0030】
  図3(B)を参照して、セルの構造について説明する。
図3(B)に示すように、MOSFET1は、6つの頂点25を繋いだ仮想の六角形のセル18Cを有している。仮想の六角形のセル18Cの各辺に接して、別の六角形のセル17Cが配置されている。セル18Cの中央部分には第2の凹部18が形成されており、セル17Cの中央部分には第1の凹部17が形成されている。セル18Cを取り囲む各頂点25は、2つのセル17Cの頂点の各々と1つのセル18Cの頂点とが重なった点である。
図3(A)および
図3(B)を参照すると、ソース領域15は、当該仮想の六角形のセル18Cおよびセル17Cの各頂点を含むように形成されている。
 
【0031】
  また第1の凹部17は第2の凹部18を囲むように複数配置されている。実施の形態のMOSFET1において、第1の凹部17は、第2の凹部18を囲むように、一点鎖線で示された仮想の六角形Hの各辺上に配置されている。また、
図1を参照すると、第1の凹部17内にゲート電極30が形成され、第2の凹部18内にオーミック電極50が形成されている。つまり、実施の形態のMOSFET1において、オーミック電極50を有する1つのセル18Cの周りにゲート電極30を有する6つのセル17Cが形成されている。そして、1つのセル18Cと当該セル18Cの周りに配置された6つのセル17Cとを1つのユニットとすると、実施の形態のMOSFET1は、複数のユニットが隙間なく配置されている形状を有している。なお、オーミック電極50を有するセル18Cは、ソース領域15に電流を供給するためのコンタクトセルとして機能する。ゲート電極30を有するセル17Cは、チャネルを通じてソース領域15からドリフト領域13に電流を流すためのチャネルセルとして機能する。
 
【0032】
  図4および
図5を参照して、第1の凹部17の形状について説明する。
  
図4(A)および
図4(B)に示すように、チャネルセル17Cに形成された第1の凹部17は平面的に閉じた形状を有している。第1の凹部17の形状は平面的に見て六角形である。当該平面形状が六角形の第1の凹部17は、六角形の各辺に対応する6つの第1の側壁面17A1〜17A6により形成されている。当該6つの第1の側壁面のうち隣接する2つの第1の側壁面(たとえば第1の側壁面17A1と第1の側壁面17A6)により形成される角度θ1〜θ6の各々は180°よりも大きい。本実施の形態の場合、隣接する2つの第1の側壁面により形成される角度θ1〜θ6の各々は240°である。
 
【0033】
  また六角形の各辺に対応する6つの第1の側壁面17A1〜17A6のうち、少なくとも2つの側壁面は、結晶学的に見て化合物半導体の等価な面を含むように形成されている。具体的には、当該少なくとも2つの第1の側壁面17Aが、化合物半導体を形成する原子の分極方向(たとえば炭化珪素の場合はc軸方向)に対して、等価な結晶軸方向に傾いた面となっている。
 
【0034】
  また、
図4(A)に示すように、第1の凹部17内の任意の位置xから見て、第1の側壁面17A1〜17A6は全方位において外向きに凸形状となっている。言い換えれば、隣接する2つの第1の側壁面17Aにより挟まれる角度は、第1の凹部17内の任意の位置xから見ると180°よりも小さくなる。
 
【0035】
  図5(A)および
図5(B)に示すように、チャネルセル17Cに形成された第1の凹部17の形状は平面的に見て四角形である。当該平面形状が四角形の第1の凹部17は、4つの第1の側壁面17A1〜17A4により形成されている。当該4つの第1の側壁面のうち隣接する2つの第1の側壁面(たとえば第1の側壁面17A1と第1の側壁面17A4)により形成される角度θ1〜θ4の各々は180°よりも大きい。本実施の形態の場合、隣接する2つの第1の側壁面により形成される角度θ1〜θ4の各々は270°である。また、
図5(A)に示すように、第1の凹部17内の任意の位置xから見て、第1の側壁面17A1〜17A4は全方位において外向きに凸形状となっている。
 
【0036】
  なお、第1の凹部17の形状は平面的に見て閉じた形状を有していればよく、たとえば三角形、多角形または円形であっても構わない。また、第1の凹部17の形状は直線部と曲線部とが繋がって平面的に見て閉じた形状でもあっても構わない。好ましくは、第1の凹部17の形状は平面的に見て正六角形である。
 
【0037】
  再び
図1を参照して、ゲート絶縁膜20は、たとえばSiO
2(二酸化珪素)からなり、第1の凹部17の第1の側壁面17Aおよび第1の底壁面17B、ならびに基板10の主表面10A上に接触して配置されている。
 
【0038】
  ゲート電極30は、たとえば不純物が添加されたポリシリコンなどの導電体からなっており、第1の凹部17内を充填するようにゲート絶縁膜20上に接触して配置されている。
 
【0039】
  層間絶縁膜40は、たとえばSiO
2(二酸化珪素)からなっており、ゲート電極30上に接触して配置されている。具体的には、層間絶縁膜40は、ゲート電極30をオーミック電極50に対して電気的に絶縁している。
 
【0040】
  オーミック電極50は、基板10の主表面10A、ソース領域15、ボディ領域14および高濃度第2導電型領域16に接触して形成されている。具体的には、オーミック電極50は、ソース領域15に対してオーミック接触することができる材料、たとえばNixSiy(ニッケルシリサイド)、TixSiy(チタンシリサイド)、AlxSiy(アルミシリサイド)およびTixAlySiz(チタンアルミシリサイド)などからなり、ソース領域15に対して電気的に接続されている。また、オーミック電極50は、第2の凹部18の第2の側壁面18A上および第2の底壁面18B上に接して設けられている。
 
【0041】
  ドレイン電極70は、ベース基板11の主表面11Aとは反対側の主表面11B上に接触して形成されている。ドレイン電極70は、たとえばオーミック電極50と同様の材料からなっており、ベース基板11に対して電気的に接続されている。
 
【0042】
  ソースパッド電極60は、層間絶縁膜40およびオーミック電極50上に接触して配置されている。具体的には、ソースパッド電極60は、たとえばAl(アルミニウム)などの導電体からなり、オーミック電極50を介してソース領域15と電気的に接続されている。
 
【0043】
  ドレインパッド電極80は、ドレイン電極70上に接触して配置されている。具体的には、ドレインパッド電極80は、ソースパッド電極60と同様にたとえばAl(アルミニウム)などの導電体からなり、ドレイン電極70を介してベース基板11に電気的に接続されている。
 
【0044】
  次に、MOSFET1における第1の凹部17の第1の側壁面17Aの構造について説明する。
 
【0045】
  チャネル面CH(
図1参照)を含む第1の側壁面17Aが特殊面を有することで、チャネル面CHも特殊面を有し得る。
図15に示すように、特殊面を有する第1の側壁面17Aは、面S1(第1の面)を含む。面S1は面方位{0−33−8}を有し、好ましくは面方位(0−33−8)を有する。好ましくは第1の側壁面17Aは面S1を微視的に含む。好ましくは第1の側壁面17Aはさらに面S2(第2の面)を微視的に含む。面S2は面方位{0−11−1}を有し、好ましくは面方位(0−11−1)を有する。ここで「微視的」とは、原子間隔の2倍程度の寸法を少なくとも考慮する程度に詳細に、ということを意味する。このように微視的な構造の観察方法としては、たとえばTEM(Transmission  Electron  Microscope)を用いることができる。
 
【0046】
  好ましくは第1の側壁面17Aは複合面SRを有する。複合面SRは、面S1およびS2が周期的に繰り返されることによって構成されている。このような周期的構造は、たとえば、TEMまたはAFM(Atomic  Force  Microscopy)により観察し得る。複合面SRは面方位{0−11−2}を有し、好ましくは面方位(0−11−2)を有する。この場合、複合面SRは{000−1}面に対して巨視的に62°のオフ角を有する。ここで「巨視的」とは、原子間隔程度の寸法を有する微細構造を無視することを意味する。このように巨視的なオフ角の測定としては、たとえば、一般的なX線回折を用いた方法を用い得る。好ましくは、チャネル面CH上においてキャリアが流れる方向であるチャネル方向CDは、上述した周期的繰り返しが行われる方向に沿っている。
 
【0047】
  次に、複合面SRの詳細な構造について説明する。
  一般に、ポリタイプ4Hの炭化珪素単結晶を(000−1)面から見ると、
図16に示すように、Si原子(またはC原子)は、A層の原子(図中の実線)と、この下に位置するB層の原子(図中の破線)と、この下に位置するC層の原子(図中の一点鎖線)と、この下に位置するB層の原子(図示せず)とが繰り返し設けられている。つまり4つの層ABCBを1周期としてABCBABCBABCB・・・のような周期的な積層構造が設けられている。
 
【0048】
  図17に示すように、(11−20)面(
図16の線XVII−XVIIの断面)において、上述した1周期を構成する4つの層ABCBの各層の原子は、(0−11−2)面に完全に沿うようには配列されていない。
図17においてはB層の原子の位置を通るように(0−11−2)面が示されており、この場合、A層およびB層の各々の原子は(0−11−2)面からずれていることがわかる。このため、炭化珪素単結晶の表面の巨視的な面方位、すなわち原子レベルの構造を無視した場合の面方位が(0−11−2)に限定されたとしても、この表面は、微視的には様々な構造をとり得る。
 
【0049】
  図18に示すように、複合面SRは、面方位(0−33−8)を有する面S1と、面S1につながりかつ面S1の面方位と異なる面方位を有する面S2とが交互に設けられることによって構成されている。面S1および面S2の各々の長さは、Si原子(またはC原子)の原子間隔の2倍である。なお面S1および面S2が平均化された面は、(0−11−2)面(
図17)に対応する。
 
【0050】
  図19に示すように、複合面SRを(01−10)面から見て単結晶構造は、部分的に見て立方晶と等価な構造(面S1の部分)を周期的に含んでいる。具体的には複合面SRは、上述した立方晶と等価な構造における面方位(001)を有する面S1と、面S1につながりかつ面S1の面方位と異なる面方位を有する面S2とが交互に設けられることによって構成されている。このように、立方晶と等価な構造における面方位(001)を有する面(
図19においては面S1)と、この面につながりかつこの面方位と異なる面方位を有する面(
図19においては面S2)とによって表面を構成することは4H以外のポリタイプにおいても可能である。ポリタイプは、たとえば6Hまたは15Rであってもよい。
 
【0051】
  次に
図20を参照して、第1の側壁面17Aの結晶面と、チャネル面CHの移動度MBとの関係について説明する。
図20のグラフにおいて、横軸は、チャネル面CHを有する第1の側壁面17Aの巨視的な面方位と(000−1)面とのなす角度D1を示し、縦軸は移動度MBを示す。プロット群CMは第1の側壁面17Aが熱エッチングによる特殊面として仕上げられた場合に対応し、プロット群MCはそのような熱エッチングがなされない場合に対応する。
 
【0052】
  プロット群MCにおける移動度MBは、チャネル面CHの表面の巨視的な面方位が(0−33−8)のときに最大となった。この理由は、熱エッチングが行われない場合、すなわち、チャネル表面の微視的な構造が特に制御されない場合においては、巨視的な面方位が(0−33−8)とされることによって、微視的な面方位(0−33−8)、つまり原子レベルまで考慮した場合の面方位(0−33−8)が形成される割合が確率的に高くなったためと考えられる。
 
【0053】
  一方、プロット群CMにおける移動度MBは、チャネル面CHの表面の巨視的な面方位が(0−11−2)のとき(矢印EX)に最大となった。この理由は、
図18および
図19に示すように、面方位(0−33−8)を有する多数の面S1が面S2を介して規則正しく稠密に配置されることで、チャネル面CHの表面において微視的な面方位(0−33−8)が占める割合が高くなったためと考えられる。
 
【0054】
  なお移動度MBは複合面SR上において方位依存性を有する。
図21に示すグラフにおいて、横軸はチャネル方向と<0−11−2>方向との間の角度D2を示し、縦軸はチャネル面CHの移動度MB(任意単位)を示す。破線はグラフを見やすくするために補助的に付してある。このグラフから、チャネル移動度MBを大きくするには、チャネル方向CD(
図15)が有する角度D2は、0°以上60°以下であることが好ましく、ほぼ0°であることがより好ましいことがわかった。
 
【0055】
  図22に示すように、第1の側壁面17Aは複合面SRに加えてさらに面S3(第3の面)を含んでもよい。この場合、第1の側壁面17Aの{000−1}面に対するオフ角は、理想的な複合面SRのオフ角である62°からずれる。このずれは小さいことが好ましく、±10°の範囲内であることが好ましい。このような角度範囲に含まれる表面としては、たとえば、巨視的な面方位が{0−33−8}面となる表面がある。より好ましくは、第1の側壁面17Aの(000−1)面に対するオフ角は、理想的な複合面SRのオフ角である62°からずれる。このずれは小さいことが好ましく、±10°の範囲内であることが好ましい。このような角度範囲に含まれる表面としては、たとえば、巨視的な面方位が(0−33−8)面となる表面がある。
 
【0056】
  より具体的には第1の側壁面17Aは、面S3および複合面SRが周期的に繰り返されることによって構成された複合面SQを含んでもよい。このような周期的構造は、たとえば、TEMまたはAFM(Atomic  Force  Microscopy)により観察し得る。
 
【0057】
  次に、本発明の一実施の形態に係る半導体装置としてのMOSFET1の動作について説明する。
図1を参照して、ゲート電極30に印加された電圧が閾値電圧未満の状態、すなわちオフ状態では、オーミック電極50とドレイン電極70との間に電圧が印加されても、ボディ領域14とドリフト領域13との間に形成されるpn接合が逆バイアスとなり、非導通状態となる。一方、ゲート電極30に閾値電圧以上の電圧が印加されると、ボディ領域14において第1の凹部17の第1の側壁面17Aに沿うようにキャリアが蓄積し、反転層が形成される。その結果、ソース領域15とドリフト領域13とが電気的に接続され、オーミック電極50とドレイン電極70との間に電流が流れる。以上のようにして、MOSFET1は動作する。
 
【0058】
  次に、本発明の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法について、
図6〜
図14を参照して説明する。本発明の一実施の形態に係る半導体装置の製造方法においては、上記半導体装置としてのMOSFET1を製造することができる。
図6を参照して、まず、工程(S10)として、基板準備工程が実施される。この工程(S10)では、以下に説明する工程(S11)および工程(S12)が実施されることにより、炭化珪素からなる基板10が準備される。
 
【0059】
  まず、工程(S11)として、ベース基板準備工程が実施される。この工程(S11)では、たとえば4H−SiCからなるインゴット(図示しない)をスライスすることにより、
図7に示すように炭化珪素からなるベース基板11が準備される。
 
【0060】
  次に、工程(S12)として、エピタキシャル成長層形成工程が実施される。この工程(S12)では、
図7を参照して、エピタキシャル成長により、ベース基板11の主表面11A上に半導体層12が形成される。このようにして、ベース基板11と半導体層12とを含み、主表面10Aを有する基板10が準備される。なお、上記ベース基板11および半導体層12は、化合物半導体からなっていればよく炭化珪素に限られない。上記ベース基板11および半導体層12は、たとえば窒化ガリウムからなっていてもよい。
 
【0061】
  次に、工程(S21)として、イオン注入工程が実施される。この工程(S21)では、
図8を参照して、まず、たとえばAl(アルミニウム)イオンが、半導体層12内に注入されることにより、p型のボディ領域14が形成される。次に、たとえばP(リン)イオンが、半導体層12内において、上記Alイオンの注入深さよりも浅く注入されることにより、導電型がn型のソース領域15が形成される。また、半導体層12において、ボディ領域14およびソース領域15のいずれも形成されない領域は、ドリフト領域13となる。このようにして、
図8に示すように、基板10の主表面10Aを含むn型のソース領域15と、ソース領域15に接触するp型のボディ領域14と、ボディ領域14に接触するn型のドリフト領域13とが形成される。
 
【0062】
  次に、工程(S30)として、第1の凹部形成工程が実施される。この工程(S30)では、
図9および
図10を参照して、主表面10A側に開口する第1の凹部17が基板10に形成される。具体的には、
図9を参照して、まず、たとえばP−CVD(Plasma−Chemical  Vapor  Deposition)法により、基板10の主表面10Aのうち第1の凹部17を形成すべき領域に開口を有し、SiO
2(二酸化珪素)からなるマスク90が形成される。次に、たとえばSF
6(六フッ化硫黄)ガスおよび酸素を含む雰囲気中において、誘導接合型反応性イオンエッチング(ICP−RIE:Inductive  Coupled  Plasma  Reactive  Ion  Etching)などにより、基板10のエッチングを進行させる。次に、
図10を参照して、たとえば塩素などのハロゲン系ガスおよび酸素を含む雰囲気中において熱エッチングが施される。そして、上記エッチング処理が完了した後にマスク90が除去される。このようにして、ソース領域15、ボディ領域14およびドリフト領域13が露出する第1の側壁面17A、および第1の底壁面17Bを有する第1の凹部17が基板10に形成される。
 
【0063】
  次に、工程(S40)として、第2の凹部形成工程が実施される。この工程(S40)では、
図11を参照して、たとえばICP−RIEなどにより、基板10のエッチングを進行させることにより、主表面10A側に開口し、第2の側壁面18Aと第2の底壁面18Bとを有する第2の凹部18が形成される。
 
【0064】
  次に、工程(S41)として、高濃度第2導電型領域形成工程が実施される。この工程(S41)では、
図11を参照して、たとえばAl(アルミニウム)イオンが、半導体層12内の第2の凹部18の第2の底壁面18Bを含む領域に注入されることにより、第1の凹部17よりも深い領域にまで延在するp型の高濃度第2導電型領域16が形成される。
 
【0065】
  次に、工程(S42)として、活性化アニール工程が実施される。この工程(S42)では、基板10を加熱することにより、上記工程(S21)および(S41)において導入された不純物が活性化され、不純物が導入された領域において所望のキャリアが生成する。
 
【0066】
  次に、工程(S50)として、ゲート絶縁膜形成工程が実施される。この工程(S50)では、
図12を参照して、たとえば酸素を含む雰囲気中において基板10を加熱することにより、基板10の主表面10A、第1の凹部17の第1の側壁面17Aおよび第1の底壁面17B、ならびに第2の凹部18の第2の側壁面18Aおよび第2の底壁面18B上に接触するように、SiO
2(二酸化珪素)からなるゲート絶縁膜20が形成される。
 
【0067】
  次に、工程(S60)として、ゲート電極形成工程が実施される。この工程(S60)では、
図13を参照して、たとえばLP(Low  Pressure)CVD法により、第1の凹部17内を充填するように不純物が添加されたポリシリコン膜が形成される。これにより、ゲート絶縁膜20上に接触するゲート電極30が配置される。
 
【0068】
  次に、工程(S70)として、オーミック電極形成工程が実施される。この工程(S70)では、まず、オーミック電極50を形成すべき領域において、ゲート絶縁膜20が除去され、ソース領域15、ボディ領域14および高濃度第2導電型領域16が露出した領域が形成される。そして、当該領域にたとえばNiからなる金属膜が形成される。一方、ベース基板11の主表面11Aとは反対側の主表面11B上に、同様にNiからなる金属膜が形成される。そして、上記金属膜が加熱されることにより、上記金属膜の少なくとも一部がシリサイド化され、基板10に対して電気的に接続されたオーミック電極50およびドレイン電極70が形成される。
 
【0069】
  次に、工程(S80)として、層間絶縁膜形成工程が実施される。この工程(S80)では、
図14を参照して、ゲート絶縁膜20およびゲート電極30上に層間絶縁膜40が形成される。
 
【0070】
  次に、工程(S90)として、パッド電極形成工程が実施される。この工程(S90)では、
図1を参照して、たとえば蒸着法により、Al(アルミニウム)などの導電体からなるソースパッド電極60が、オーミック電極50および層間絶縁膜40を覆うように形成される。また、ドレイン電極70上において、ソースパッド電極60と同様に、たとえば蒸着法によりAl(アルミニウム)などの導電体からなるドレインパッド電極80が形成される。上記工程(S10)〜(S90)が実施されることによりMOSFET1が製造され、実施の形態に係る半導体装置の製造方法が完了する。
 
【0071】
  次に、本発明の一実施の形態に係る半導体装置の作用効果について説明する。
  本発明の一実施の形態に係るMOSFET1によれば、第1の凹部17は、平面的に見て閉じた形状を有しており、第1の凹部17内の任意の位置からみて、第1の側壁面17Aは全方向において外向きに凸形状となっている。これにより、第1の凹部17を形成する第1の側壁面17Aのうち隣接する2つの第1の側壁面17Aの角度は180°よりも大きくなる。それゆえ、当該隣接する2つの第1の側壁面17Aの境界部における電界強度を緩和することにより、MOSFET1の耐圧を向上することができる。
 
【0072】
  また、本発明の一実施の形態のMOSFET1の第1の凹部17は、平面的に見て六角形である。これにより、高い集積度でセルを形成することができる。
 
【0073】
  さらに、本発明の一実施の形態のMOSFET1において、六角形の辺に対応する第1の側壁面17Aのうち、少なくとも2つは結晶学的に見て等価な面を含むように形成されている。結晶学的に等価な面は極性が同じである。それゆえ、ゲート電極30に電圧を印加する場合における、各々の第1の側壁面17Aに対する電界強度に偏りを抑制することにより、局所的に耐圧が弱くなる部分が発生することを抑制することができる。
 
【0074】
  上記の半導体装置において好ましくは、第1の凹部17は第1の底壁面17Bを有し、第1の底壁面17Bと第1の側壁面17Aとがなす角度は90°よりも大きい。これにより、第1の凹部17の第1の底壁面17Bと第1の側壁面17Aとの境界部における電界集中を緩和することができる。
 
【0075】
  さらに、本発明の一実施の形態のMOSFET1の第1の凹部17は第1の底壁面17Bを有し、第1の底壁面17Bと第1の側壁面17Aとがなす角度は90°よりも大きい。これにより、第1の凹部17の第1の底壁面17Bと第1の側壁面17Aとの境界部における電界集中を緩和することができる。
 
【0076】
  さらに、本発明の一実施の形態のMOSFET1の第1の凹部17の第1の側壁面17Aは、面方位{0−33−8}を有する第1の面S1を含む。これにより、第1の側壁面17Aにおけるチャネル抵抗を低減可能である。よってオン抵抗を低減することができる。
 
【0077】
  さらに、本発明の一実施の形態のMOSFET1の第1の凹部17の第1の側壁面17Aは、第1の面S1を微視的に含み、第1の側壁面17Aはさらに、面方位{0−11−1}を有する第2の面S2を微視的に含む。これにより、第1の側壁面17Aにおけるチャネル抵抗をより低減可能である。よってオン抵抗をより低減することができる。
 
【0078】
  さらに、本発明の一実施の形態のMOSFET1の第1の凹部17の第1の側壁面17Aの第1の面S1および第2の面S2は、面方位{0−11−2}を有する複合面を含む。これにより、第1の側壁面17Aにおけるチャネル抵抗をより低減可能である。よってオン抵抗をより低減することができる。
 
【0079】
  さらに、本発明の一実施の形態のMOSFET1の基板10の第1の凹部17の第1の側壁面17Aは、{000−1}面に対して、巨視的に62°±10°のオフ角を有する。これにより、第1の側壁面17Aにおけるチャネル抵抗をより低減可能である。よってオン抵抗をより低減することができる。
 
【0080】
  今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。