特許第5920100号(P5920100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920100光ファイバの巻取り方法および巻取り装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920100
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】光ファイバの巻取り方法および巻取り装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20160428BHJP
   H05F 3/00 20060101ALI20160428BHJP
   C03B 37/12 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   G02B6/46
   H05F3/00
   !C03B37/12 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-176072(P2012-176072)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-35420(P2014-35420A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠幸
【審査官】 河原 正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−206662(JP,A)
【文献】 特開2005−041713(JP,A)
【文献】 特開2008−135377(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3048869(JP,U)
【文献】 特開2013−018562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/46− 6/54
G02B 6/02
H05F 3/00− 3/06
C03B 37/12
B65H 54/00−54/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の噴出口が間隔をあけて設けられた棒状の静電除去器の前記噴出口からイオン化空気を噴出させ、胴部の両端に鍔部を有するボビンを回転させ、前記ボビンに前記静電除去器の前記噴出口から噴出されるイオン化空気を噴き付けながら前記胴部に光ファイバを巻取る光ファイバの巻取り方法であって、
前記静電除去器を前記ボビンの回転軸と平行に配置し、前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記静電除去器を前記ボビンの回転軸と直交する軸線を中心に回動させて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかを配置させて前記光ファイバを巻取ることを特徴とする光ファイバの巻取り方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバの巻取り方法であって、
前記静電除去器の長手方向の片端部分を回動可能に支持し、前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記片端部分の支持箇所を中心に前記静電除去器を回動させて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかを配置させることを特徴とする光ファイバの巻取り方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光ファイバの巻取り方法であって、
前記静電除去器の長手方向の中央部分を回動可能に支持し、前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記中央部分の支持箇所を中心に前記静電除去器を回動させて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかを配置させることを特徴とする光ファイバの巻取り方法。
【請求項4】
胴部の両端に鍔部を有するボビンを回転させて前記胴部に光ファイバを巻取らせる駆動部と、
間隔をあけて配置された複数の噴出口からイオン化空気を噴出させて前記ボビンへ噴き付ける棒状の静電除去器と、
前記静電除去器を前記ボビンの回転軸と平行に配置するとともに前記ボビンの回転軸と直交する軸線を中心に回動可能に支持する支持部と、を備え、
前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記静電除去器が前記支持部による支持箇所で回動されて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかが配置されることを特徴とする光ファイバの巻取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを巻取る巻取り方法および巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パスラインに沿って連続的に送られてくる光ファイバ素線を巻取る際に、パスラインに沿って巻取りボビン(リール)の上流側やボビン近傍に配設した静電除去器により、光ファイバ素線および巻取りボビンの静電気を除去することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−357136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の技術のように、静電除去器を用いてボビンや光ファイバ素線に帯電している静電気を除電すれば、巻飛びなどの巻取り異常を抑えて再巻替えをなくすことができる。
ところで、静電除去器は、イオン化空気を噴出する噴出口が一定の間隔に配置されているものが多く、この場合、ボビンのサイズによっては適切にボビンの両端にある鍔際にイオン化空気を当てることができないことがある。光ファイバ素線で覆われる胴部とは異なり、ボビンの鍔部はトラバースのターン毎に光ファイバ素線と接触することで帯電しやすく、鍔部の除電が不十分であると、鍔部へ光ファイバ素線が引き寄せられ、巻取り異常が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、ボビンサイズに関わりなくボビンの除電を良好に行い、巻取り異常などの不具合なく円滑にボビンへ光ファイバを巻取ることが可能な光ファイバの巻取り方法および巻取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の光ファイバの巻取り方法は、複数の噴出口が間隔をあけて設けられた棒状の静電除去器の前記噴出口からイオン化空気を噴出させ、胴部の両端に鍔部を有するボビンを回転させ、前記ボビンに前記静電除去器の前記噴出口から噴出されるイオン化空気を噴き付けながら前記胴部に光ファイバを巻取る光ファイバの巻取り方法であって、
前記静電除去器を前記ボビンの回転軸と平行に配置し、前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記静電除去器を前記ボビンの回転軸と直交する軸線を中心に回動させて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかを配置させて前記光ファイバを巻取ることを特徴とする。
【0007】
本発明の光ファイバの巻取り方法において、前記静電除去器の長手方向の片端部分を回動可能に支持し、前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記片端部分の支持箇所を中心に前記静電除去器を回動させて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかを配置させることが好ましい。
または、前記静電除去器の長手方向の中央部分を回動可能に支持し、前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記中央部分の支持箇所を中心に前記静電除去器を回動させて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかを配置させることが好ましい。
【0008】
本発明の光ファイバの巻取り装置は、胴部の両端に鍔部を有するボビンを回転させて前記胴部に光ファイバを巻取らせる駆動部と、
間隔をあけて配置された複数の噴出口からイオン化空気を噴出させて前記ボビンへ噴き付ける棒状の静電除去器と、
前記静電除去器を前記ボビンの回転軸と平行に配置するとともに前記ボビンの回転軸と直交する軸線を中心に回動可能に支持する支持部と、を備え、
前記ボビンの回転軸方向の幅に応じて前記静電除去器が前記支持部による支持箇所で回動されて前記ボビンの両端部に対応する位置に前記噴出口の何れかが配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボビンの回転軸方向の幅に応じて静電除去器を回動させてボビンの両端部に対応する位置に噴出口の何れかを配置させるので、トラバースのターン毎に光ファイバ素線と接触することで帯電しやすいボビンの鍔部にも、確実にイオン化空気を噴き付けることができる。これにより、ボビンの胴部やこのボビンの胴部に巻付けられる光ファイバだけでなく、ボビンの鍔部における静電気も確実に除去することができる。したがって、静電気による巻飛びなどの巻異常を確実に防止しつつ、光ファイバをボビンの胴部へ円滑に巻取ることができる。また、ボビンの変更時にボビンサイズが変わっても、ボビンサイズに合わせて静電除去器の位置を合わせる作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用される巻替え装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る巻取り装置の例を示す平面図である。
図3図2の巻取り装置の一部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図4図2の巻取り装置の一部を示す図であり、ボビンサイズが変更された状態を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図5図2の巻取り装置の一部を示す図であり、静電除去器が回動された状態を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図6】他の実施形態に係る巻取り装置の一部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図7】他の実施形態に係る巻取り装置の一部を示す図であり、静電除去器が回動された状態を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る光ファイバの巻取り方法および巻取り装置の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る巻取り装置を備えた巻替え装置について説明する。なお、以下の実施形態では巻替え装置を例示して説明するが、本発明は、光ファイバ素線を着色して巻取る着色装置に対しても適用可能である。
【0012】
図1に示すように、巻替え装置11は、光ファイバ素線(光ファイバ)1を指示された長さに分割しながら巻替えるものであり、光ファイバ素線1は繰り出しボビン12に巻かれている。光ファイバ素線1は、石英系ガラスのコアおよびクラッドからなるガラスファイバの周囲に樹脂を被覆したものであり、繰り出しボビン12から繰り出された光ファイバ素線1は、ガイドローラ13,16を介してキャプスタンローラ17へ案内される。そして、光ファイバ素線1はキャプスタンローラ17を経て、所定の線速で引き取られ、その後、ダンサローラ18およびローラ19を介して、ボビン20に巻取られる。
【0013】
次に、ボビン20へ光ファイバ素線1を巻取らせる巻取り装置について説明する。
図2に示すように、巻取り装置21は、回転駆動される駆動軸(駆動部)22を備え、駆動軸22には、ボビン20が装着される。ボビン20は駆動軸22に固定され、例えば、図2の右側から見て時計方向に回転される。ボビン20は、筒状の胴部20aと、この胴部20aの両端に設けられた鍔部20b,20cとを有するもので、胴部20aに光ファイバ素線1を巻取る。
【0014】
駆動軸22によって回転されるボビン20に対して、光ファイバ素線1を案内するローラ19は、ボビン20の回転軸方向へ往復移動される。これにより、光ファイバ素線1が、ボビン20の軸方向へ往復移動されながらボビン20の胴部20aに巻取られる。つまり、この巻取り装置21は、ボビン20の回転軸方向位置を固定し、光ファイバ素線1を往復移動させる方式(ローラトラバース方式)で光ファイバ素線1をボビン20の胴部20aに巻取らせる。
【0015】
巻取り装置21は、棒状の静電除去器51を備えており、この静電除去器51は、ボビン20の回転軸方向に沿って、ボビンの回転軸と平行に配置されている。この静電除去器51は、バー本体52と、このバー本体52の長手方向に沿って一定の間隔をあけて設けられた複数の噴出口53a,53b,53c,53dとを有している。静電除去器51は、これらの噴出口53a,53b,53c,53dから、+または−にイオン化したイオン化空気を噴出する。
【0016】
静電除去器51は、除電対象物である光ファイバ素線1およびボビン20の帯電状態をモニタリングする機能を持つものであることが好ましい。モニタリング機能を持つことにより、除電に適した+または−の何れかにイオン化させたイオン化空気のみを噴出させることも可能になり、より除電効果を高めることもできる。
【0017】
この静電除去器51は、カバー61に取り付けられており、このカバー61には、回動軸(支持部)62が固定されている。回動軸62は、ボビン20の回転軸に直交する方向に沿って延在されており、カバー61は、ボビン20の回転軸に直交する回動軸62の軸線Xを中心に回動可能とされている。そして、このカバー61とともに、カバー61に取り付けられた静電除去器51も、回動軸62の軸線Xを中心に回動される。
【0018】
回動軸62が固定された静電除去器51の固定位置は、静電除去器51の長手方向の片端部分とされている。具体的には、静電除去器51の片端側の噴出口53aに対応する位置とされている。
また、この片端側の噴出口53aは、駆動軸22に装着されるボビン20の一方側の鍔部20bに対応した位置に配置されている。
【0019】
巻取り装置21によって異なるサイズのボビンへ光ファイバ素線を巻取る場合について説明する。
図3(a),(b)に示すように、駆動軸22にボビン20Lを装着すると、一方側の鍔部20bが静電除去器51の片端側の噴出口53aに対応する位置に配置される。また、このボビン20Lでは、他方側の鍔部20cが静電除去器51の片端から3つ目の噴出口53cに対応する位置に配置される。
【0020】
このようにボビン20Lを駆動軸22に装着して光ファイバ素線1の巻始端をボビン20Lの鍔部20b等に係止させた後、巻取り装置21を作動させると、駆動軸22が回転することでボビン20Lが回転し、胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取りが開始される。また、ボビン20Lに対して、光ファイバ素線1を案内するローラ19(図2参照)がボビン20Lの回転軸方向へ往復移動(トラバース)する。これにより、光ファイバ素線1は、ボビン20の回転軸方向へ往復移動されながらボビン20Lの胴部20aに巻取られる。
【0021】
このボビン20Lの胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取り時に、静電除去器51の各噴射口53a,53b,53c,53dからイオン化空気を噴出してボビン20Lへ噴き付ける。すると、ボビン20Lの胴部20aに巻付けられる光ファイバ素線1は、その巻付け箇所に噴き付けられるイオン化空気によって静電気が除去される。また、ボビン20Lの各鍔部20b,20cには、静電除去器51の噴射口53a,53cが対応する位置に配置されているので、これらの噴射口53a,53cから噴出されるイオン化空気によって各鍔部20b,20cにおける静電気も確実に除去される。
【0022】
これにより、ボビン20Lの静電気を良好に除去することができ、静電気による巻飛びなどの巻異常を確実に防止しつつ、光ファイバ素線1をボビン20Lの胴部20aへ円滑に巻取ることができる。
【0023】
次に、ボビン20Lとは回転軸方向の幅が異なる小型のボビン20Sへ光ファイバ素線1を巻取る場合について説明する。
図4(a),(b)に示すように、駆動軸22にボビン20Sを装着すると、一方側の鍔部20bが静電除去器51の片端側の噴出口53aに対応する位置に配置される。このボビン20Sは、軸方向の長さがボビン20Lより小さい小型のボビンである。そして、この例では、ボビン20Sの片端位置をボビン20Lの片端位置に合わせるように配置される。このため、ボビン20Sの他方側の鍔部20cは、静電除去器51の片端から2つ目の噴出口53bと3つ目の噴出口53cとの間に配置される。
【0024】
したがって、この状態で静電除去器51の各噴出口53a,53b,53c,53dからイオン化空気を噴出させても、他方側の鍔部20cにイオン化空気が適切に噴き付けられない。鍔部20b,20cは、ローラ19のトラバースがターンする毎に光ファイバ素線1と接触することで帯電しやすいため、鍔部20cの除電が不十分であると、鍔部20cへ光ファイバ素線1が引き寄せられ、巻取り異常が生じるおそれがある。
【0025】
このような場合、図5(a),(b)に示すように、静電除去器51を、回動軸62の軸線Xを中心に回動させる。すると、静電除去器51の噴出口53b,53c,53dの位置が、軸線Xを中心として円弧状に移動し、噴出口53cが他方側の鍔部20cに対応する位置に配置される。
【0026】
このようにボビン20Sを駆動軸22に装着して静電除去器51を位置合わせしたら、光ファイバ素線1の巻始端をボビン20Sの鍔部20b等に係止させた後、巻取り装置21を作動させる。すると、駆動軸22が回転することでボビン20Sが回転し、ボビン胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取りが開始される。また、ボビン20Sに対して、光ファイバ素線1を案内するローラ19(図2参照)がボビン20Sの回転軸方向へ往復移動する。これにより、光ファイバ素線1は、ボビン20Sの回転軸方向へ往復移動されながらボビン20Sの胴部20aに巻取られる。
【0027】
このボビン20Sの胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取り時に、静電除去器51の各噴射口53a,53b,53c,53dからイオン化空気を噴出してボビン20Sへ噴き付ける。すると、ボビン20Sの胴部20aに巻付けられる光ファイバ素線1は、その巻付け箇所に噴き付けられるイオン化空気によって静電気が除去される。また、ボビン20Sの各鍔部20bには、静電除去器51の噴射口53a,53cが対応する位置に配置されているので、これらの噴射口53a,53cから噴出されるイオン化空気によって各鍔部20bにおける静電気も確実に除去される。
【0028】
これにより、ボビン20Sの静電気を良好に除去することができ、静電気による巻飛びなどの巻異常を確実に防止しつつ、光ファイバ素線1をボビン20Sの胴部20aへ円滑に巻取ることができる。
【0029】
このように、上記実施形態によれば、ボビン20の回転軸方向の幅に応じて静電除去器51を回動させてボビン20の両端部に対応する位置に噴出口53a,53b,53c,53dの何れかを配置させるので、ローラ19のトラバースがターンする毎に光ファイバ素線1と接触することで帯電しやすいボビン20の鍔部20b,20cにも確実にイオン化空気を噴き付けることができる。これにより、ボビン20の胴部20aやこのボビン20の胴部20aに巻付けられる光ファイバ素線1だけでなく、ボビン20の鍔部20b,20cにおける静電気も確実に除去することができる。したがって、静電気による巻飛びなどの巻異常を確実に防止しつつ、光ファイバ素線1をボビン20の胴部20aへ円滑に巻取ることができる。また、使用するボビン20を例えばボビン20Lからサイズ(ボビン幅)の異なるボビン20Sに変更しても、そのボビンサイズに合わせて静電除去器51の位置を合わせる作業を円滑に行うことができる。
【0030】
次に、他の実施形態の例について説明する。
図6(a),(b)に示すように、この巻取り装置21Aでは、棒状の静電除去器51の長手方向の中央部分が回動軸によって回動可能に支持されており、両端が自由端とされている。そして、この中央位置でボビン20の回転軸と直交する回動軸62の軸線Xを中心に静電除去器51を回動させることで、静電除去器51は、噴出口53a,53b,53c,53dの位置が、軸線Xを中心として円弧状に移動する。巻取り装置21Aは、回動軸(軸線X)の位置以外は、図2から図5に示した巻取り装置21と同様の構成である。
【0031】
この巻取り装置21Aによって異なるサイズのボビンへ光ファイバ素線を巻取る場合について説明する。
図6(a),(b)に示すように、駆動軸22にボビン20Lを装着すると、両方の鍔部20b,20cが静電除去器51の噴出口53a,53dに対応する位置にそれぞれ配置される。
【0032】
このようにボビン20Lを駆動軸22に装着して光ファイバ素線1の巻始端をボビン20Lの鍔部20b等に係止させた後、巻取り装置21Aを作動させると、駆動軸22が回転することでボビン20Lが回転し、胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取りが開始される。また、ボビン20Lに対して、光ファイバ素線1を案内するローラ19(図2参照)がボビン20Lの回転軸方向へ往復移動する。これにより、光ファイバ素線1は、ボビン20の回転軸方向へ往復移動されながらボビン20Lの胴部20aに巻取られる。
【0033】
このボビン20Lの胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取り時に、静電除去器51の各噴射口53a,53b,53c,53dからイオン化空気を噴出してボビン20Lへ噴き付ける。すると、ボビン20Lの胴部20aに巻付けられる光ファイバ素線1は、その巻付け箇所に噴き付けられるイオン化空気によって静電気が除去される。また、ボビン20Lの各鍔部20b,20cには、静電除去器51の噴射口53a,53dが対応する位置に配置されているので、これらの噴射口53a,53dから噴出されるイオン化空気によって各鍔部20b,20cにおける静電気も確実に除去される。
【0034】
これにより、ボビン20Lの静電気を良好に除去することができ、静電気による巻飛びなどの巻異常を確実に防止しつつ、光ファイバ素線1をボビン20Lの胴部20aへ円滑に巻取ることができる。
【0035】
次に、ボビン20Lとは回転軸方向の幅が異なる小型のボビン20Sへ光ファイバ素線1を巻取る場合について説明する。この例では、ボビン20Sの中心位置がボビン20Lの中心位置と合うように配置される。
図6の状態で、回転軸方向の長さがボビン20Lより小さい小型のボビン20Sを、回転軸方向の中央位置をボビン20Lと同様の中央位置に合わせて駆動軸22に装着すると、ボビン20Sの鍔部20bは静電除去器51の噴出口53a,53bの間に配置され、ボビン20Sの鍔部20cは静電除去器51の噴出口53c,53dの間に配置される。
【0036】
したがって、その状態で静電除去器51の各噴出口53a,53b,53c,53dからイオン化空気を噴出させても、両方の鍔部20b,20cにイオン化空気が円滑に噴き付けられない。鍔部20b,20cは、ローラ19のトラバースがターンする毎に光ファイバ素線1と接触することで帯電しやすいため、鍔部20b,20cの除電が不十分であると、鍔部20b,20cへ光ファイバ素線1が引き寄せられ、巻取り異常が生じるおそれがある。
【0037】
このような場合、図7(a),(b)に示すように、静電除去器51を、長手方向の中央にある軸線Xを中心に回動させる。すると、静電除去器51の噴出口53a,53b,53c,53dの位置が、軸線Xを中心として円弧状に移動し、噴出口53a,53dがそれぞれの鍔部20b,20cに対応する位置に配置される。
【0038】
このようにボビン20Sを駆動軸22に装着して静電除去器51を位置合わせしたら、光ファイバ素線1の巻始端をボビン20Sの鍔部20b等に係止させた後、巻取り装置21を作動させる。すると、駆動軸22が回転することでボビン20Sが回転し、ボビン胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取りが開始される。また、ボビン20Sに対して、光ファイバ素線1を案内するローラ19(図2参照)がボビン20Sの回転軸方向へ往復移動する。これにより、光ファイバ素線1は、ボビン20Sの回転軸方向へ往復移動されながらボビン20Sの胴部20aに巻取られる。
【0039】
このボビン20Sの胴部20aへの光ファイバ素線1の巻取り時に、静電除去器51の各噴射口53a,53b,53c,53dからイオン化空気を噴出してボビン20Sへ噴き付ける。すると、ボビン20Sの胴部20aに巻付けられる光ファイバ素線1は、その巻付け箇所に噴き付けられるイオン化空気によって静電気が除去される。また、ボビン20Sの各鍔部20b,20cには、静電除去器51の噴射口53a,53dが対応する位置に配置されているので、これらの噴射口53a,53dから噴出されるイオン化空気によって各鍔部20b,20cにおける静電気も確実に除去される。
【0040】
これにより、ボビン20Sの静電気を良好に除去することができ、静電気による巻飛びなどの巻異常を確実に防止しつつ、光ファイバ素線1をボビン20Sの胴部20aへ円滑に巻取ることができる。
【0041】
このように、図6および図7に示した巻取り装置21Aにおいても、ボビン20の回転軸方向の幅に応じて静電除去器51を回動させてボビン20の両端部に対応する位置に噴出口53a,53b,53c,53dの何れかを配置させるので、トラバースのターン毎に光ファイバ素線1と接触することで帯電しやすい鍔部20b,20cにも確実にイオン化空気を噴き付けることができる。これにより、図2から図5に示した巻取り装置21と同様に、光ファイバ素線1をボビン20の胴部20aへ円滑に巻取ることができ、ボビンサイズに合わせて静電除去器51の位置を合わせる作業も円滑に行うことができる。
【0042】
なお、上記の巻取り装置21,21Aにおいて、ボビン20の帯電状態をモニタリングする機能を有する静電除去器51を使用する場合には、ボビン20の静電気帯電量が最小になるように静電除去器51の回動角度を自動調整することもできる。このような制御により、巻異常の発生をより効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0043】
ボビンサイズ(ボビンの回転軸方向の幅)の異なる3種類のボビンを用意し、図1に示す巻替え装置11にセットして、光ファイバ素線の巻替えを行った。巻取り装置は図2から図5に示した巻取り装置21を用い、ボビンの鍔部の間隔に合わせて静電除去器51を回動させて、ボビンの両端部に対応する位置に噴出口53a,53b,53c,53dの何れかを配置させた。ボビンサイズ(ここでは鍔部の間隔を示す)と静電除去器51の回動角度(ボビンの回転軸に対する角度)は、次に示す通りである。
【0044】
ボビンA:鍔部の間隔95mm、回動角度37.7°
ボビンB:鍔部の間隔120mm、回動角度0°
ボビンC:鍔部の間隔150mm、回動角度33.6°
なお、隣接する噴出口53a,53b,53c,53d同士の間隔は60mmである。
【0045】
ボビンA,B,Cのそれぞれに対して巻取りを行った結果、巻き不良により再度巻替えが必要となる割合(再巻き率)は、それぞれ5%程度であった。
これに対して、ボビンA,B,Cを用い、ボビンの鍔部の間隔に合わせて静電除去器51を回動させなかった場合は、ボビンBの再巻き率は5%程度であったものの、ボビンA,Cの再巻き率が10%程度となった。
すなわち、ボビンの鍔部の間隔に合わせてボビンの両端部に対応する位置に噴出口を配置させることで、再巻き率を減少(本例では半減)させることができることが判った。
なお、図6および図7に示した巻取り装置21Aを用いて静電除去器51の中央部分を回動させた場合も、ボビンの再巻き率は、ボビンの回転軸方向の幅に合わせて回動させなかった場合に比べて半減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1:光ファイバ素線(光ファイバ)、11:巻替え装置、20,20L,20S:ボビン、20a:胴部、20b,20c:鍔部、21,21A:巻取り装置、22:駆動軸(駆動部)、51:静電除去器、53a,53b,53c,53d:噴出口、62:回動軸(支持部)、X:軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7