(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回路部(28)は、前記ベース(22)に対する垂直方向において、前記ベース(22)から離れた位置で前記基板(24)に実装されていることを特徴とする請求項1に記載の車載用アンテナ装置。
前記回路部(28)と前記筐体(30)との間に、空気よりも熱伝導率が高い材料からなる熱伝導部材(32)が介在されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。
前記筐体(30)は、少なくとも前記回路部(28)と対向する部分に、他の部分よりも厚肉の厚肉部(30a)を有することを特徴とする請求項4〜6いずれか1項に記載の車載用アンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アンテナ装置では、使用電波の周波数が高くなるほど、伝送ケーブルでの損失、すなわち伝送損失が問題となる。特に、車々間通信や路車間通信に用いられるアンテナ装置では、使用電波の周波数が例えば5.9GHz帯と高く、伝送損失が問題となる。そこで、ベースに立設される基板にアンテナ素子部を形成し、この基板に、無線通信回路の少なくとも一部をなす回路部を実装することで、回路部をアンテナ素子部に近づけ、伝送損失を抑制することが考えられる。
【0005】
このように回路部を基板に実装すると、特許文献1に記載のようなアンテナ装置では、筐体内部に回路部が配置されることとなる。したがって、回路部自身の発熱により、内部空間に熱がこもり、回路部から放熱が十分になされず、回路部の性能が低下する虞がある。
【0006】
特にアンテナ装置が車両ルーフに配置される場合には、太陽の輻射熱がルーフを介してベースに伝達される。したがって、ベースの熱が、基板を介して回路部に伝達されたり、空間に放熱されるため、回路部の性能が低下しやすい。しかしながら、筐体は車両外郭をなすため、冷却ファンを取り付けたり、通気用の孔部を形成することは、意匠の点で好ましいものではない。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、使用電波の周波数が高い車載用アンテナ装置において、筐体の意匠を確保しつつ、回路部の性能低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る車載用アンテナ装置は、車両(10)のルーフ(11)に取り付けられるベース(22)と、アンテナ素子部(26)を有し、ベース(22)に立設された基板(24)と、アンテナ素子部(26)と電気的に接続される無線通信回路の少なくとも一部をなし、基板(24)に実装された回路部(28)と、樹脂材料を用いて形成され、車両外郭の突起部をなす筐体(30)と、を備え、基板(24)及び回路部(28)は、ベース(22)と
筐体(30)とにより形成される空間に収容されており、回路部(28)と筐体(30)との間には、ベース(22)を介さずに、空気よりも熱伝導率が高い熱伝達経路が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、回路部(28)が基板(26)に実装されている、換言すればアンテナ素子部(26)の近くに回路部(28)が配置されているため、使用電波の周波数が高くても、伝送損失を抑制することができる。したがって、例えば数GHzを使用電波の周波数とする車載用アンテナ装置として好適である。
【0010】
そして、回路部(28)と
筐体(30)との間には、ベース(22)を介さずに、空気よりも熱伝導率の高い熱伝達経路が形成されている。このため、
筐体(30)とベース(22)により形成される空間に回路部(28)が配置されながらも、回路部(28)の生じる熱を、
筐体(30)に逃がすことができる。また、ルーフ(11)から、基板(24)を介して回路部(28)に伝達される太陽輻射熱を、
筐体(30)に逃がすことができる。したがって、筐体(30)の意匠を確保しつつ、温度上昇によって回路部(28)の性能が低下するのを抑制することができる。なお、立設とは、基板(24)の板厚方向が、ベース(22)に対する垂直方向と異なるように、基板(24)がベース(22)に配置された状態を指す。
【0011】
また、本発明のさらなる特徴は、回路部(28)が、ベース(22)に対する垂直方向において、ベース(22)から離れた位置で基板(24)に実装されていることにある。
【0012】
このように、回路部(28)をベース(22)から離れた位置とすることで、回路部(28)に伝達される太陽輻射熱を低減することができる。すなわち、温度上昇によって回路部(28)の性能が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。なお、各実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る車載用アンテナ装置20は、車両10のルーフ11に取り付けられる。このような車載用アンテナ装置20は、シャークフィン型のアンテナ装置として知られている。以下、車載用アンテナ装置20を、単にアンテナ装置20と示す。
【0016】
アンテナ装置20は、要部として、
図2及び
図3に示すように、ベース22と、ベース22に立設された基板24と、基板24に実装された回路部28と、樹脂材料を用いて形成され、車両外郭の突起部をなす筐体30と、を備えている。
【0017】
ベース22は、基板24を車両10に固定するための基台であり、図示しない取付部材を介してルーフ11に取り付けられている。このベース22は、平板状をなしており、ルーフ11に対して略平行に配置される。また、ベース22が金属材料を用いて形成され、取付部材を介してルーフ11と電気的に接続される場合、ベース22は地板として機能する。地板として用いるか否かは、アンテナ装置20の用途に応じて適宜選択される。
【0018】
基板24は、アンテナ素子部26を有している。本実施形態では、アンテナ素子部26として、例えば5.9GHz帯を使用電波の周波数とする車々間通信用のアンテナが形成されている。
【0019】
この基板24は、所謂プリント基板であり、プリント基板を構成する配線パターンの一部としてアンテナ素子部26が形成されている。基板24は、電気絶縁材料からなる基材を有しており、例えば基材における少なくとも一方の表面に、配線パターンとしてアンテナ素子部26が配置されている。本実施形態では、基材の一面に配置された銅箔がパターニングされて、アンテナ素子部26が形成されている。また、アンテナ素子部26が、モノポール構造のアンテナエレメント26aと、アンテナエレメント26aの一端に連結され、グランドとして機能する幅広部26bと、を有している。そして、基板24はベース22に立設されている。なお、立設とは、基板24の板厚方向が、ベース22に対する垂直方向と異なるように、基板24がベース22に配置された状態を指す。ベース22に対する垂直方向は、換言すればベース22の厚み方向である。本実施形態では、基板24におけるアンテナ素子部26の形成面と、ベース22における基板24の配置面とが略直交するように、図示しない固定部材によって、基板24がベース22に固定されている。換言すれば、基板24の板厚方向とベース22の厚み方向が略直交するように、基板24がベース22に固定されている。
【0020】
回路部28は、基板24に実装されている。この回路部28は、アンテナ素子部26と電気的に接続され、アンテナ素子部26を介して外部と無線通信を行う無線通信回路の少なくとも一部をなすものである。本実施形態では、回路部28として、送信信号を増幅するパワーアンプを含んでいる。そして、この回路部28は、アンテナ素子部26の幅広部26bに電気的且つ機械的に接続されている。それ以外にも、回路部28として、パワーアンプとともに、受信信号を増幅するローノイズアンプを含んでも良い。さらには、パワーアンプ、ローノイズアンプに加え、給電ラインを送信側及び受信側のいずれかに切り替えるスイッチを含んでも良い。また、パワーアンプ、ローノイズアンプ、スイッチに加え、送信側のバンドパスフィルタ、受信側のバンドパスフィルタを含む構成としても良い。さらには、無線通信回路全体を含む構成としても良い。
【0021】
この回路部28としては、プリント基板に電子部品が実装されてなる回路基板、半導体チップなどの電子部品がパッケージ化されたもの、回路が1つの半導体チップに集積されたもの、を採用することができる。本実施形態では、回路部28としてモールドパッケージを採用している。
【0022】
筐体30は、樹脂材料を用いて形成され、車両外郭の突起部をなしている。本実施形態では、筐体30とベース22とにより形成される空間に、回路部28の実装された基板24が収容されている。また、
筐体30は、ルーフ11の突起部をなすように、所謂シャークフィン状に形成されている。本実施形態に係る筐体30は、
図3に示すように、基板24が配置された領域において、基板24の板厚方向に沿う開口幅が、ベース22の厚み方向においてベース22から離れるほど狭くなっている。換言すれば、ベース22の厚み方向において、ベース22から遠ざかるほど、基板24の板厚方向において、基板24と筺体30との距離が近くなっている。
【0023】
また、筐体30は、厚肉部30aを有している。この厚肉部30aは、
筐体30の他の部分よりも厚肉とされた部分であり、少なくとも回路部28との対向部分に形成されている。本実施形態では、
図2に破線で示すように、回路部28に対応して、
筐体30に、厚肉部30aが形成されている。また、基板24におけるアンテナ素子部26の形成面の反対の面側にも、回路部28に対応して、
筐体30に、厚肉部30aが形成されている。すなわち、互いに対向するように、凸状の一対の厚肉部30aが形成されている。そして、一対の厚肉部30aに対して、回路部28の実装された基板24が圧入され、一方の厚肉部30aに回路部28が接触している。また、他方の厚肉部30aに、基板24における回路部28の実装部位の裏面部位が接触している。
【0024】
次に、アンテナ装置20の作用効果について説明する。
【0025】
本実施形態では、回路部28が、アンテナ素子部26を有する基板24に実装されている。換言すればアンテナ素子部26の近くに回路部28が配置されている。このため、使用電波の周波数が数GHzと高くても、伝送損失を抑制することができる。したがって、車々間通信や路車間通信に用いられるアンテナ装置20として好適である。
【0026】
このように基板24に回路部28を実装しただけでは、回路部28と筐体30との間に存在する空気層を介して、回路部28の生じた熱、例えばパワーアンプの生じた熱が、筐体30に伝達される。また、ルーフ11が太陽の輻射熱を受け、その熱がベース22に伝達される。そして、ベース22に伝達された熱は、基板24を介して回路部28に伝達される。また、ベース22から、ベース22と
筐体30とにより形成される空間に放熱される。このため、回路部28の温度が上昇しやく、空間に熱がこもりやすい。したがって、回路部28から
筐体30への放熱効率が低く、回路部28の温度上昇により、回路部28の性能が低下する虞がある。
【0027】
これに対し、本実施形態では、回路部28と
筐体30との間に、ベース22を介すことなく、空気よりも熱伝導率の高い熱伝達経路が形成されている。詳しくは、回路部28が
筐体30の厚肉部30aに直接的に接触し、これにより、回路部28と筐体30との間に、熱伝達経路が形成されている。このため、
筐体30とベース22により形成される空間に回路部28が配置されながらも、回路部28の生じる熱を、
筐体30に逃がすことができる。また、ルーフ11から、ベース22及び基板24を介して回路部28に伝達される太陽輻射熱を、
筐体30に逃がすことができる。そして、走行時の気流により、筐体30を冷却することができる。したがって、冷却ファンの取り付けや、通気用の孔部を形成することなく、すなわち、筐体30の意匠を損なうこと無く、温度上昇によって回路部28の性能が低下するのを抑制することができる。
【0028】
特に本実施形態では、回路部28における基板24と反対の面が、
筐体30の厚肉部30aに接触している。したがって、回路部28の熱を、筐体30に直接放熱することができる。また、筐体30が厚肉部30aを有しているため、筐体30と回路部28との距離が近くなり、放熱させやすい。なお、本実施形態では、基板24における回路部28の実装部位の裏面部位にも厚肉部30aが接触している。このため、回路部28の熱を、基板24を介して反対側の厚肉部30a側に放熱することもできる。
【0029】
本発明者は、上記効果について、熱流動解析を用いたシミュレーションにより確認した。その際、外気温は45℃、ルーフ11の温度は120℃とした。また、
図4に示すように、回路部28と厚肉部30aとのクリアランス及び、基板24における回路部28の実装部位の裏面部位と対向する厚肉部30aとのクリアランスを、互いに等しいL1とした。
図5は、クリアランスL1と、回路部28の温度との関係を示している。クリアランスL1がゼロ、すなわち、回路部28及び基板24における回路部28の実装部位の裏面部位に、対応する厚肉部30aがそれぞれ接触した状態で、回路部28の温度は約70℃であった。また、クリアランスL1が長くなるほど、回路部28の温度は高くなり、例えばクリアランスL1が0.5mmで、回路部28の温度は約78℃であった。そして、厚肉部30aなしの状態で、
図5に破線で示すように、回路部28の温度は約90℃であった。この結果からも、回路部28が
筐体30の厚肉部30aに直接的に接触し、これにより、回路部28と筐体30との間に、熱伝達経路が形成されることで、回路部28の温度を低下させることができることが明らかとなった。換言すれば、回路部28の性能が低下するのを抑制することができることが明らかとなった。
【0030】
また、本実施形態では、回路部28が、ベース22に対する垂直方向において、ベース22から離れた位置で基板24に実装されている。このように、回路部28をベース22から離れた位置とすることで、回路部28に伝達される太陽輻射熱を低減することができる。すなわち、温度上昇によって回路部28の性能が低下するのを抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態では、回路部28が、無線通信回路の中で最も発熱量が大きいパワーアンプを含んでいる。しかしながら、上記したように、回路部28と筐体30との間に、空気よりも熱伝導率の高い熱伝達経路が形成されているため、パワーアンプを含みながらも、回路部28の性能低下を抑制することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、
筐体30のうち、回路部28及び基板24における回路部28の実装部位の裏面部位、に対向して厚肉部30aを設ける例を示した。しかしながら、厚肉部30aの形成範囲は上記例に限定されるものではない。例えば
図6に示す第1変形例のように、一対の厚肉部30aが、ベース22に対する
筐体30の突出先端まで、所定の対向距離を保持しつつ延設された構成としても良い。
【0033】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示したアンテナ装置20と共通する部分についての説明は割愛する。
【0034】
本実施形態の特徴は、
図7に例示するように、回路部28と筐体30との間に、空気よりも熱伝導率が高い材料からなる熱伝導部材32が介在され、これにより、熱伝達経路が形成されていることにある。特に
図7に示す例では、熱伝導部材32として、弾性部材である、ゴム製の環状部材を採用している。そして、熱伝導部材32としての環状部材は、回路部28及び基板24における回路部28の実装部位の裏面部位に接触するように配置され、例えば接着固定されている。
【0035】
このように、回路部28と筐体30との間に、熱伝導部材32を介在させることで、空気を介して回路部28の熱を
筐体30に放熱するよりも、放熱性を向上することができる。また、熱伝導部材32が、上記したゴム製の環状部材のように、弾性部材を含むようにすると、
筐体30に組み付ける際に、環状部材が弾性変形するため、
筐体30との間に熱伝達経路を形成しつつ組み付けがしやすい。
【0036】
なお、熱伝導部材32は、上記例に限定されるものではない。Cuなどの金属からなる部材、ゴムからなる部材、樹脂からなる部材、ゲルからなる部材など、空気よりも熱伝導率の高い材料からなる部材を少なくとも1種類含むものであれば良い。例えば
図8に示す第2変形例では、筐体30の厚肉部30aと回路部28の間に、熱伝導部材32として放熱ゲルが介在されている。同様に、基板24における回路部28の実装部位の裏面部位と厚肉部30aの間にも、熱伝導部材32として放熱ゲルが介在されている。
【0037】
(第3実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示したアンテナ装置20と共通する部分についての説明は割愛する。
【0038】
本実施形態の特徴は、
図9及び
図10に例示するように、基板24としてフレキシブル基板を採用している。また、筐体30は、基板24を内面に沿って配置させるガイド部34を有している。そして、基板24における回路部28の実装面と反対の面のうち、少なくとも回路部28の実装部位の裏面部位が、筐体30の内面に接触している。なお、
図9に示す符号36は、コネクタである。
【0039】
このように、基板24としてフレキシブル基板を採用すると、筐体30の厚肉部30aを設けること無く、基板24における回路部28の実装部位の裏面部位を
筐体30の内面に接触させることができる。これにより、回路部28と
筐体30との間に、基板24を介した熱伝達経路が形成される。したがって、筐体30の意匠を確保しつつ、温度上昇によって回路部28の性能が低下するのを抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0041】
アンテナ素子部26は上記例に限定されるものではない。
【0042】
上記実施形態では、回路部28が、ベース22から離れた位置で基板24に実装される例を示した。しかしながら、回路部28は基板24に実装されていればよく、ベース22に対する位置は上記例に限定されるものではない。例えばベース22に接触しても良い。しかしながら、離れて設けたほうが良いのは、上記したとおりである。
【0043】
上記実施形態では、回路部28が基板24の一面にのみ実装される例を示した。しかしながら、基板24の両面に回路部28が実装された構成を採用することもできる。
【0044】
上記実施形態では、筐体30の厚肉部30aに回路部28が接触する例を示した。しかしながら、筐体30における回路部28との接触部位は厚肉部30aに限定されるものではない。
筐体30における厚肉部30a以外の部分に、回路部28が接触する構成としても良い。さらには、厚肉部30aを有さない筐体30、すなわち均一厚さをなす
筐体30に対し、回路部28が接触する構成としても良い。
【0045】
上記実施形態では、アンテナ素子部26として、例えば5.9GHz帯を使用電波の周波数とする車々間通信用のアンテナが形成される例を示した。しかしながら、アンテナ素子部26の使用電波の周波数、用途は上記例に限定されるものではない。