特許第5920126号(P5920126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5920126時間スロットの割り当て方法及び道路交通システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5920126
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月18日
(54)【発明の名称】時間スロットの割り当て方法及び道路交通システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20160428BHJP
   H04W 4/04 20090101ALI20160428BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20160428BHJP
   H04J 3/00 20060101ALN20160428BHJP
【FI】
   G08G1/09 F
   H04W4/04 111
   H04W72/04 131
   !H04J3/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-195402(P2012-195402)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-52733(P2014-52733A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】浦山 博史
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−223195(JP,A)
【文献】 特開2010−028637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
H04J 3/00− 3/26
H04L 5/22− 5/26
H04W 4/04−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重複しない複数の異なる時間スロットから一つ以上の時間スロットを、対象エリアに含まれる複数の路側通信機それぞれに割り当てる時間スロットの割り当て方法であって、
前記対象エリアには、複数の時間スロットを無線通信に使うことが許される第一路側通信機と、無線通信に使うことが許される時間スロットの数が前記第一路側通信機よりも少ない第二路側通信機と、が含まれており、
前記第一路側通信機が行う無線通信により干渉が生じないように、前記第一路側通信機に対して先に時間スロット割り当て、次に、前記第一路側通信機および前記第二路側通信機それぞれが行う無線通信により干渉が生じないように、前記第二路側通信機に時間スロットを割り当てることを特徴とする時間スロットの割り当て方法。
【請求項2】
前記複数の異なる時間スロットの内の二つ以上の時間スロットを、複数の前記第一路側通信機で共用させる割り当てを行う請求項1に記載の時間スロットの割り当て方法。
【請求項3】
前記第一路側通信機は、交通量に応じて信号制御が行われる交通信号機が設置されている重要交差点に設けられる路側通信機である請求項1又は2に記載の時間スロットの割り当て方法。
【請求項4】
前記第一路側通信機は、交通事故が多発する交差点に設けられる路側通信機である請求項1〜3のいずれか一項に記載の時間スロットの割り当て方法。
【請求項5】
前記第二路側通信機が使用することを許される時間スロットの数は1つである請求項1〜4のいずれか一項に記載の時間スロットの割り当て方法。
【請求項6】
前記対象エリア内の複数の前記第一路側通信機には、相互間の無線通信で干渉が生じない配置で設けられている第一路側通信機の組みが含まれている請求項1〜5のいずれか一項に記載の時間スロットの割り当て方法。
【請求項7】
互いに重複しない複数の異なる時間スロットから一つ以上の時間スロットが、対象エリアに含まれる複数の路側通信機それぞれに割り当てられ、これら複数の路側通信機それぞれが、自機に割り当てられた少なくとも一つの時間スロットで無線通信を行う道路交通システムであって、
前記対象エリアには、複数の時間スロットを無線通信に使うことが許される第一路側通信機と、無線通信に使うことが許される時間スロットの数が前記第一路側通信機よりも少ない第二路側通信機と、が含まれており、
互いに重複しない複数の異なる時間スロットには、複数の前記第一路側通信機が共用し、かつ、前記第二路側通信機が共用していない第一の共用時間スロットと、前記第一路側通信機と前記第二路側通信機とが共用している第二の共用時間スロットと、が含まれており、
前記第二の共用時間スロットの数は前記第一の共用時間スロットの数よりも少ないことを特徴とする道路交通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)に含まれる複数の路側通信機に対して時間スロットを割り当てる方法、及び、複数の路側通信機それぞれが自機に割り当てられた時間スロットで無線通信を行う道路交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を車両が受信し、或いは車両同士で情報交換を行い、これらの情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。また、上記のような高度道路交通システムを想定した無線通信の仕様が策定されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、隣接する路側通信機同士の無線通信(路路間通信)も検討されている。例えば、交差点の周辺車両の情報や交通信号機等の情報を隣接する路側通信機が路路間通信により情報交換を行うことで、高度な信号制御や広範なエリアへの情報提供が可能となる。(例えば、非特許文献2参照)。
かかる高度道路交通システムは、主として、インフラ側の無線通信装置である複数の路側通信機と、各車両に搭載される無線通信装置である複数の車載通信機とによって構成される。
【0003】
この場合、通信主体間で行う通信の組み合わせには、路側通信機と車載通信機とが行う路車(又は車路)間通信、及び、車載通信機同士が行う車車間通信の他に、路側通信機同士が行う路路間通信が含まれる。つまり、路側通信機は、路車間通信と路路間通信とを行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】一般社団法人電波産業会、”700MHz帯高度道路交通システム ARIB−STDT109 1.0版“,[online]、平成24年2月14日、[平成24年7月10日検索]、インターネット<http://www.arib.or.jp/tyosakenkyu/kikaku_tushin/tsushin_kikaku_number.html>
【非特許文献2】総務省、”VHF/UHF帯に導入を計画又は想定している具体的システムの提案募集の結果“における社団法人新交通管理システム協会の”安全・安心ITSの路側機間及び路車間通信システム”,[online]、平成18年6月6日、[平成24年8月20日検索]、インターネット<http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060606_1_056.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記高度道路交通システムにおいては、車車間通信をはじめ、路車間通信及び路路間通信を含め、これらの各通信の共存を図るに当たって、限られた周波数帯域内で車車間、路車間及び路路間の各通信を行うために、無線リソースを時間領域で分割して路側通信機の送信専用の時間帯である時間スロットを設ける、時分割多重(TDMA:Time Division Multiple Access)によるマルチアクセス方式が採用されている。
【0007】
上記TDMAによるマルチアクセス方式において、路側通信機の送信専用の時間スロットは、通常、1つの無線フレーム内で複数設定される。つまり、1つの無線フレーム内には、異なる時間帯に設定された(つまり、互いに重複しない)複数の時間スロットが含まれている。このように、1つの無線フレーム内に複数の時間スロットを設けるとともに、これら時間スロットを各路側通信機に割り当てることで、複数の路側通信機それぞれに対して無線リソースを割り当てることができる。
【0008】
ここで、路側通信機は、通常、道路上の交差点等に設置されるが、隣接する路側通信機同士の距離が比較的近い場合には、一方の路側通信機が情報伝達を行いたいエリア(サービスエリア)において、他方の路側通信機の送信信号が干渉源となり、前記サービスエリアに存在する車載通信機側で、前記一方の路側通信機の送信信号を精度よく取得することが困難となる。
このため、少なくとも干渉が生じる位置関係にある路側通信機の間では、1つの無線フレーム内で異なる時間帯に設定された異なる時間スロットが割り当てられる。これによって、干渉が防止される。
【0009】
しかし、1つの無線フレームが含むことのできる時間スロットの数には限度がある。例えば、非特許文献2の場合、時間スロットの数は最大16である。
また、スロット数は限度内であっても路側通信機が路車間通信や路路間通信のために使用する時間スロットを必要最小限とし、車載通信機の車車間通信のための時間リソースを多く確保することが望ましい。
このため、上記高度道路交通システムを実際の道路上に適用するためには、無線リソースの節約の観点から、干渉が生じる位置関係にある路側通信機同士に対しては互いに異なる時間スロットを割り当てるという制限を加えつつ、時間スロットの必要数をより少なくすることができる割り当てを行うことが求められる。つまり、効率の良い割り当てを行い、時間スロットの必要数をできるだけ少なくすることが求められる。
【0010】
そこで、本発明は、対象エリアの路側通信機によって使用される時間スロットの必要数をできるだけ少なく抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、互いに重複しない複数の異なる時間スロットから一つ以上の時間スロットを、対象エリアに含まれる複数の路側通信機それぞれに割り当てる時間スロットの割り当て方法であって、前記対象エリアには、複数の時間スロットを無線通信に使うことが許される第一路側通信機と、無線通信に使うことが許される時間スロットの数が前記第一路側通信機よりも少ない第二路側通信機とが含まれており、路側通信機が行う無線通信により干渉が生じないように、前記第一路側通信機に対する時間スロットの割り当てを、前記第二路側通信機よりも優先して行うことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、第一路側通信機は、複数の時間スロットを使うことが許される路側通信機であり、第二路側通信機は、無線通信に使うことが許される時間スロットの数が第一路側通信機よりも少ない路側通信機であり、前記のような第一路側通信機に対する時間スロットの割り当てを、第二路側通信機よりも優先して行うことにより、複数の第一路側通信機が複数の時間スロットを共用するような割り当てが行いやすくなり、複数の第一路側通信機に割り当てられる時間スロットの全数をできるだけ少なくすることができる。この結果、対象エリアの路側通信機によって使用される時間スロットの必要数をできるだけ少なく抑えることが可能となる。
【0013】
(2)特に、前記複数の異なる時間スロットの内の二つ以上の時間スロットを、複数の前記第一路側通信機で共用させる割り当てを行うのが好ましく、これにより、複数の第一路側通信機に割り当てられる時間スロットの全数をできるだけ少なくすることができ、第一路側通信機に割り当てられる時間スロットの数を必要限度とすることが可能となる。
【0014】
(3)また、交通量に応じて信号制御(例えばスプリットが決定される信号制御)が行われる交通信号機が設置されているような交通量が多く、緻密な信号制御が必要となる重要交差点では、例えば信号制御のために様々な情報が必要とされ、処理すべき情報のデータ長が大きくなる。そこで、前記第一路側通信機は、交通量に応じて信号制御が行われる交通信号機が設置されている重要交差点に設けられる路側通信機であるのが好ましい。これにより、重要交差点に設けられる第一路側通信機に対して、優先的に時間スロットが割り当てられる。
【0015】
(4)また、交通事故が多発する交差点では、交通安全のために様々な情報が必要とされ、処理すべき情報のデータ長が大きくなる。そこで、前記第一路側通信機は、交通事故が多発する交差点に設けられる路側通信機であるのが好ましい。これにより、交通事故が多発する交差点に設けられる第一路側通信機に対して、優先的に時間スロットが割り当てられる。なお、交通事故が多発する交差点とは、例えば、一般社団法人日本損害保険協会によって提供されている「全国交通事故多発交差点マップ」<http://www.sonpo.or.jp/protection/kousaten/kousatenmap22/>に挙げられている交差点である。
【0016】
(5)また、前記第二路側通信機が使用することを許される時間スロットの数は1つであるのが好ましく、この場合、2つ以上の時間スロットを使用することが許される路側通信機が、第一路側通信機となる。
【0017】
(6)また、前記対象エリア内の複数の前記第一路側通信機には、相互間の無線通信で干渉が生じない配置で設けられている第一路側通信機の組みが含まれているのが好ましい。
この場合、相互間の無線通信で干渉が生じない配置で設けられている第一路側通信機の組みに対して、複数の時間スロットを共用させる割り当てを行うことができ、複数の第一路側通信機に割り当てられる時間スロットの全数をできるだけ少なくすることができる。
【0018】
(7)また、本発明は、互いに重複しない複数の異なる時間スロットから一つ以上の時間スロットが、対象エリアに含まれる複数の路側通信機それぞれに割り当てられ、これら複数の路側通信機それぞれが、自機に割り当てられた少なくとも一つの時間スロットで無線通信を行う道路交通システムであって、前記対象エリアには、複数の時間スロットを無線通信に使うことが許される第一路側通信機と、無線通信に使うことが許される時間スロットの数が前記第一路側通信機よりも少ない第二路側通信機とが含まれており、互いに重複しない複数の異なる時間スロットには、複数の前記第一路側通信機が共用している共用時間スロットが含まれており、前記共用時間スロットの数は、前記第一路側通信機と前記第二路側通信機とが共用している時間スロットの数よりも多いことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、互いに重複しない複数の異なる時間スロットには、複数の第一路側通信機が共用している共用時間スロットが含まれており、対象エリア内で、この共用時間スロットの数は、第一路側通信機と第二路側通信機とが共用する時間スロットの数よりも多い。このため、複数の第一路側通信機に割り当てられる時間スロットの全数をできるだけ少なくすることができ、この結果、対象エリアの路側通信機によって使用される時間スロットの必要数をできるだけ少なく抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の第一路側通信機に割り当てられる時間スロットの全数をできるだけ少なくすることができ、この結果、対象エリアの路側通信機によって使用される時間スロットの必要数をできるだけ少なく抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】道路交通システムの全体構成を示す概略図である。
図2】路側通信機と車載通信機の内部構成を示すブロック図である。
図3】路車間通信の時間スロットの一例を示す概念図である。
図4】時間スロットの割り当て方法を示すフローチャートである。
図5】対象エリアを設定するためのエリア内の道路形状を示した図である。
図6】本実施形態の対象エリア内における道路及び設置位置のモデルを示す図である。
図7】重要交差点用の路側通信機に対して、時間スロットの割り当てを行った結果を示している。
図8】一般交差点用の路側通信機に対して、時間スロットの割り当てを行った結果を示している。
図9】従来の割り当て方法により時間スロットの割り当てを行った場合の説明図である。
図10】本実施形態に係る割り当て方法と、従来の割り当て方法とを比較した表である。
図11】1無線フレーム内の路車間通信の時間スロットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔1. 適用対象となるシステムの全体構成〕
図1は、道路交通システムの全体構成を示す概略図である。このシステムは、高度道路交通システム(ITS)を構成しており、交通信号機1、路側通信機(路上通信装置)2、車載通信機3、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、車両感知器6aやカメラ6b等よりなる路側センサ6を含む。
【0023】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点J1〜J12それぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアに含まれる各交差点の交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。したがって、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置されていてもよい。
【0024】
路側センサ6は、所定の交差点に流入する車両台数をカウントしたり、所定の交差点に接近する車両を検知したりする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。本実施形態の路側センサ6には、直下を通行する車両5を超音波等により感知する車両感知器6a、及び、道路の交通状況を時系列に撮影するカメラ6bが含まれており、車両感知器6aによる感知情報S4、カメラ6bによる画像データS5は、近くの交差点に設置されている路側通信機2に収集され、さらに、この路側通信機2から通信回線7を介して中央装置4に送信される。なお、車両感知器6aは他の型式のものであってもよい。
【0025】
〔2. 中央装置〕
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有しており、この制御部は、路側通信機2、路側センサ6からの各種の情報の収集、処理(演算)、記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
具体的には、中央装置4の制御部は、自身のネットワークに属する交差点の交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うことができる。
【0026】
また、中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有しており、この通信部は、信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する信号制御指令S1や、渋滞情報等を含む交通情報S2を所定時間ごとに交通信号機1及び路側通信機2に送信している。さらに、中央装置4は、道路の形状や勾配等を示す道路線形情報S7を各路側通信機2に送信している。
【0027】
また、中央装置4の通信部は、各交差点に対応する路側通信機2を通じて、その路側通信機2が車載通信機3から受信した車両5の現在位置等を含む車両情報(プローブ情報)S3、車両感知器6aを車両が通過した時に生じるパルス信号よりなる車両感知器6aの感知情報S4、及び、カメラ6bが撮影した道路のデジタル情報よりなる画像データS5等を受信しており、中央装置4の制御部は、これらの各種情報に基づいて前記系統制御や広域制御を実行する。
なお、本実施形態では、カメラ6bは、全ての交差点のために設置されておらず、後述の重要交差点(又はその近傍)に設置されている。つまり、交差点には、カメラ6bが設置されている交差点、カメラ6bは設置されていないが車両感知器6aが設置されている交差点、車両感知器6a及びカメラ6bが共に設置されていない交差点等が存在する。
【0028】
〔3. 無線通信の方式等〕
この道路交通システムを構成する、複数の交差点それぞれに設置された複数の路側通信機2は、その周囲を走行する車両の車載通信機3との間で無線通信(路車(車路)間通信)が可能である。また、各路側通信機2は、自己の送信波が到達する所定範囲内に位置する他の路側通信機2とも無線通信(路路間通信)が可能である。
また、同じく道路交通システムを構成する車載通信機3は、路側通信機2との間で無線通信を行うとともに、キャリアセンス方式で他の車載通信機3と無線通信(車車間通信)が可能である。
【0029】
このように、本実施形態のITSでは、車載通信機3同士の通信(車車間通信)と、路側通信機2と車載通信機3との間の通信(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)と、路側通信機2同士の通信(路路間通信)とが含まれており、これらの各通信に無線通信が用いられている。
【0030】
路側通信機2には、自身が無線送信するための専用の時間スロット(図3のスロットSL1)がTDMA方式で割り当てられており、この時間スロット以外の時間帯(図3のスロットSL2)では無線送信を行わない。すなわち、無線リソースが時間領域で分割されており、これによって、路側通信機2専用の時間スロットが設定される。なお、時間スロットを、単にスロットと呼ぶこともある。
【0031】
路側通信機2専用の時間スロットSL1以外の時間帯(時間スロットSL2)は、車載通信機3のためのキャリアセンス方式による送信時間として開放されている。
路側通信機2及び車載通信機3は、同一周波数帯を通信に用いるが、上記のように路側通信機2と車載通信機3の送信時間帯が区別されていることで、路側通信機2による送信信号と、車載通信機3による送信信号との衝突を回避できる。
【0032】
路側通信機2及び車載通信機3は、送信信号の受信に関しては特に制限されない。したがって、路側通信機2は、車載通信機3の送信信号を受信できる他、他の路側通信機2の送信信号も受信できる。また、車載通信機3は、路側通信機2及び他の車載通信機3の送信信号も受信できる。
【0033】
なお、路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために、他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
【0034】
〔4. 路側通信機〕
図2は、路側通信機2と車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、無線通信のためのアンテナ20が接続された無線通信部(送受信部)21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、これらの通信制御を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。
【0035】
記憶部24は、制御部23が実行する送信制御方法を実現するためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機ID、後述するスロット情報S6、道路線形情報S7等を記憶している。
制御部23は、有線通信部22が受信した中央装置4からの交通情報S2、道路線形情報S7や自機が配置されている交差点の交通信号機1からの信号灯色に関する信号情報S8等を、いったん記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21を介してブロードキャスト送信する機能を有している。
また、制御部23は、無線通信部21が受信した車両情報S3を、いったん記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22を介して中央装置4に転送するとともに、無線通信部21を介してブロードキャスト送信する機能も有している。
【0036】
さらに、制御部23は、前記の交通情報S2、道路線形情報S7や信号情報S8を送信する際に、少なくとも自機が使用する時間スロットの割当情報であるスロット情報S6を無線ヘッダ情報として付加して、ブロードキャスト送信する機能も有している。なお、スロット情報S6は、中央装置4によって、後述する時間スロットの割り当て方法に基づいて生成され、この生成されたスロット情報S6が外部へ送信される。
【0037】
〔5. 時間スロットの内容〕
図3は、路車間通信の時間スロットの一例を示す概念図である。図3に示すように、路車間通信においては、時間軸方向に並べて配置される無線フレームが用いられている。
この無線フレームの1単位は、その時間軸方向の長さが、例えば100ミリ秒に設定されており、路側通信機2専用の時間スロットSL1と、その他の時間スロットSL2とを含んで構成されている。図3では、時間スロットSL1と時間スロットSL2とは、1無線フレーム内に時間軸方向に交互に、それぞれ16個配置されている。なお、この数は限定されるものではない。そして、スロット番号0〜15は、無線フレーム毎で同じように繰り返される。
【0038】
時間スロットSL1は、路側通信機2に割り当てられる時間スロットであり、この時間帯においては、路側通信機2による無線送信が許容される。一方、時間スロットSL2は、車載通信機3用の時間スロットであり、この時間帯は車載通信機3による無線送信用として開放するため、路側通信機2は時間スロットSL2では無線送信を行わない。
時間スロットSL1には、それぞれスロット番号i(図3では、i=0〜15)が付されている。
【0039】
対象エリア内の複数の路側通信機2それぞれには、後に説明する割り当て方法により、1無線フレームに含まれる複数の時間スロットSL1の内の少なくとも一つが割り当てられる。各路側通信機2は、スロット番号iによっていずれの時間スロットが自機に割り当てられるかを識別することができる。つまり、スロット情報S6には、スロット番号iと、そのスロット番号iが割り当てられている路側通信機2を特定するための特定情報とが関連付けられた関連情報が含まれている。したがって、スロット情報S6を受信した各通信機(各路側通信機2)は、この情報によって路側通信機2の時間スロットの割り当てを認識することができる。
【0040】
また、後に説明する割り当て方法によれば、同じ時間スロットSL1に、複数の路側通信機2を重複して割り当てることがある。この場合、重複して時間スロットSL1が割り当てられる路側通信機2同士では、互いの情報伝達を行いたいエリア(サービスエリア)は重複せず、かつ、位置関係は、十分離れていることを要する。
路側通信機2同士のサービスエリアが重複する場合、あるいは、前記サービスエリアが重複しないが、前記路側通信機2同士の位置関係が距離的に近い場合には、互いに異なる時間スロットが割り当てられる。これは、路側通信機2各々のサービスエリアにおいて、他の路側通信機2の送信信号による干渉を防止するためである。
【0041】
つまり、互いに干渉を生じさせるおそれのある位置関係にある路側通信機2同士は、異なる時間スロットSL1が割り当てられる。図3に示すように、例えば、路側通信機2−1と2−2とが、互いに干渉を生じさせるおそれのある位置関係にある場合、路側通信機2−1には、スロット番号i=1の時間スロットSL1が割り当てられ、路側通信機2−2には、スロット番号i=2の時間スロットSL1が割り当てられる。
このように、異なる時間スロットSL1が割り当てられているので、干渉を生じさせるおそれのある位置関係にあるとしても、干渉を防止できる。
【0042】
以上のように、前記割り当て方法によれば、TDMA方式による時間軸方向に設定された複数の時間スロットSL1それぞれが、路側通信機2に割り当てられる。
【0043】
〔6. 車載通信機〕
図2において、車載通信機3は、無線通信のためのアンテナ30に接続された通信部(送受信部)31と、この通信部31に対する通信制御を行うプロセッサ等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。
記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのコンピュータプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
【0044】
制御部32は、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせるものである。したがって、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0045】
また、車載通信機3は、路側通信機2からスロット情報S6を受信すると、スロット情報S6に記された路側通信機2専用の時間スロット(図3の時間スロットSL1)以外の時間帯(図3の時間スロットSL2)を利用して、キャリアセンス方式による無線送信を行う。
また、制御部32は、車両5(車載通信機3)の現時の位置、方向及び速度等を含む車両情報(プローブ情報)S3を、通信部31を介して外部にブロードキャスト送信する。
さらに、制御部32は、路側通信機2から送信される、交通情報S2、道路線形情報S7、及び信号情報S8を受信するとともに、他の車両5(車載通信機3)から送信される車両情報S3を受信し、これら各情報に基づいて、右直衝突や出合い頭衝突等を回避する安全運転支援制御を行う機能を有している。
【0046】
〔7. 時間スロットの割り当てについて〕
前記のとおり、後に説明する割り当て方法では、隣接する路側通信機2間に十分な距離があることで互いのサービスエリアが重複しない場合、互いに干渉を与えることはないので、このような関係の路側通信機2間では、時間スロットSL1の割り当てに特別な制限はない。しかし、隣接する路側通信機2間のサービスエリアが互いに重複する場合、あるいは、前記サービスエリアは重複しないが、前記路側通信機2同士の位置関係が距離的に近い場合、両路側通信機2それぞれに同一(同じスロット番号)の時間スロットSL1が割り当てられると、サービスエリアの重複する部分で干渉が生じるので、このような位置関係にある路側通信機2間では、異なる(異なるスロット番号の)時間スロットSL1を割り当てる。
【0047】
ここで、図3に示すように、1つの無線フレーム内に設定することができる時間スロットSL1の数には限度がある。このため、上記システムを実際の道路上に適用する際には、上述したように、干渉が生じる位置関係にある路側通信機2同士に対しては互いに異なる時間スロットを割り当てるという制限を加えつつ、対象エリア内の各路側通信機2に割り当てる時間スロットの必要数をより少なくすることができる割り当てを行うのが望ましい。つまり、時間スロットの必要数をできるだけ少なくするのが望ましく、これを実現するために、以下の割り当て方法が行われる。
【0048】
〔7.1 割り当て方法〕
以下、本発明の割り当て方法の一実施形態を説明する。上記システムを所定のエリアに適用する際に、このシステムの対象エリアに含まれる複数の路側通信機2それぞれに対して、1つの無線フレーム中に存在する互いに重複しない複数の異なる時間スロットSL1から一つ以上の時間スロットが割り当てられる。図4は、この割り当て方法を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す割り当て方法は、以下に説明する時間スロットの割り当てを行うためのコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータによって実行される。このコンピュータは、例えば中央装置4のコンピュータとすることができる。
【0049】
〔7.1.1 設置候補点の設定、及び対象エリアの決定〕
本方法では、まず、上記システムを適用するエリアの道路形状を特定し、路側通信機2を設置するための設置候補点を設定する(図4のステップST1)。
図5は、対象エリアを設定するためのエリア内の道路形状を示した図である。なお、図5において、紙面上方向を北方向としており、また、道路Eの一部を省略して記載している。例えば、図5に示すエリアM内に設けられている道路Eの形状から、路側通信機2の設置位置V(設置候補点)を設定する。設置位置Vは、基本的に交差点に設定されるが、その他として、交差点ではないが、信号等が設けられている地点等にも設定される場合がある。
【0050】
次に、このエリアM内から、時間スロットの割り当ての対象とする対象エリアPを決定する(図4のステップST2)。本実施形態では、図5に示す交差点が比較的密に存在するエリアM全体を、対象エリアPとした場合について述べる。
対象エリアP内では、図5中の一点鎖線に示すように、道路形状を、ほぼ格子状に近似することができ、設置位置Vを、格子状である道路の交点(交差点)としている。
【0051】
図5中、縦方向の一点鎖線と横方向の一点鎖線とが交差しているにも関わらず設置位置Vとして設定されていない地点VSが存在するが、この地点VSは、他の設置位置Vから推定することができる推定設置位置と言え、これについても設置位置Vとして取り扱う。
推定設置位置としての地点VSは、道路Eの対応する箇所にたまたま交差点や信号機が設置されていない場合等が考えられ、将来的に道路が設置されて交差点となったり、信号機が設置されたりする可能性がある。
これにより、現状、路側通信機2が設置される可能性は低いが、将来設置される可能性のある位置についても、時間スロットの割当について考慮することができる。
【0052】
図6は、前記対象エリアP内における道路E及び設置位置Vのモデルを示す図である。対象エリアP内の道路E及び設置位置Vは、格子状に近似される。
【0053】
〔7.1.2 道路E、設置候補点Vである交差点について〕
ここで、設置位置Vである交差点について説明する。本実施形態の設置位置Vである交差点には、下記に定義する「重要交差点」と、下記に定義する「一般交差点」とが存在する。
・重要交差点:次の(A)と(B)とのうちの一方又は双方に該当する交差点である。
(A)交通事故が多発する交差点。
(B)車両の交通量が多くボトルネックになることが多い交差点。
・一般交差点:次の(C)と(D)とのうちの一方又は双方に該当する交差点である。
(C)交通事故の発生が重要交差点よりも少ない交差点。
(D)重要交差点に比べて従道路の交通量が少ない交差点。
【0054】
なお、前記(A)に関して、交通事故が多発する交差点とは、例えば、一般社団法人日本損害保険協会によって提供されている「全国交通事故多発交差点マップ」<http://www.sonpo.or.jp/protection/kousaten/kousatenmap22/>に挙げられている交差点である。
また、前記(B)に関して、一般に、幹線・準幹線道路相互の交差点が重要交差点に該当する。重要交差点は、都市部では4〜5交差点に一つの間隔で存在している。そして、一般交差点は、重要交差点の周囲の(隣りの)交差点である。
【0055】
また、重要交差点は、車線数が多い幹線・準幹線道路相互の交差点であり、本実施形態では、この重要交差点に繋がる道路が有する複数の車線毎に車両感知器6aが設置されており、これら車両感知器6aそれぞれが取得した感知情報S4を、重要交差点に設置されている路側通信機2が収集する。
また、この重要交差点では、例えば右直事故防止のため、その重要交差点の上流側の道路を撮像領域とするカメラ6bが設置されており、このカメラ6bが取得した画像データを、重要交差点に設置されている路側通信機2が収集する。しかも、重要交差点では、このようなカメラ6bが複数台設置されている場合がある。
【0056】
これに対して、本実施形態の一般交差点は、重要交差点を構成する道路よりも車線数の少ない道路が交差している交差点である。また、一般交差点の場合、車両感知器6aが設置されている場合と、設置されていない場合とがある。さらに、本実施形態では、一般交差点には、カメラ6bは設置されていない。
【0057】
〔7.1.3 割り当てられる時間スロットの数について〕
したがって、重要交差点に設置される路側通信機2(以下、この路側通信機2の符号を2Aとすることもある)には、数多くの情報が収集され、データ量の大きな情報(ダウンリンクデータ)を扱う必要があり、この路側通信機2Aは、自機に割り当てられた時間スロットSL1で送信する(ダウンリンク送信する)。
そして、このような路側通信機2Aには、1つの無線フレーム中で、時間スロットSL1が複数割り当てられる。本実施形態では、路側通信機2Aそれぞれには、1つの無線フレーム中で、2つの時間スロットSL1が割り当てられる。例えば、ある路側通信機2A(図7の左上に存在する路側通信機2A−1)には、図11の1無線フレーム内の時間スロットSL1の説明図に示すように、フレーム番号i=2とi=13との時間スロットSL1が割り当てられる。なお、図11では、各時間スロットSL1の下に、その時間スロットSL1が割り当てられている路側通信機を示している。
これにより、この路側通信機2A−1は、1つの無線フレームにおいて、2つの時間スロットSL1に収まるデータ量の情報を送信することが可能となり、このような情報を、1つの無線フレームにおいて、フレーム番号i=2の時間スロットSL1と、フレーム番号i=13の時間スロットSL1とに分けて送信する。
【0058】
これに対して、一般交差点に設置される路側通信機2(以下、この路側通信機2の符号を2Bとすることもある)には、さほど多くの情報が収集されず、この路側通信機2Bは、重要交差点よりも小さなデータ量の情報(ダウンリンクデータ)を、自機に割り当てられた時間スロットSL1で送信する(ダウンリンク送信する)。
【0059】
本実施形態では、路側通信機2Bそれぞれには、1つの無線フレーム中で、1つのみの時間スロットSL1が割り当てられる。つまり、1つの無線フレーム中で、一般交差点用の路側通信機2Bが使用することを許される時間スロットの数は1つである。例えば、ある1つの路側通信機2B−1(図8の左上参照)には、図11において、フレーム番号i=4の時間スロットSL1が割り当てられる。
これにより、この路側通信機2B−1は、1つの無線フレーム中で、この1つの時間スロットSL1に収まるデータ量の情報を、フレーム番号i=4の時間スロットSL1で送信することが可能となる。
【0060】
以上のように、重要交差点に設置される路側通信機2Aと、一般交差点に設置される路側通信機2Bとで、扱うデータ量が異なり、送信する情報のデータ長が異なる。そして、対象エリアPには、無線通信に使うことが許される時間スロットSL1の数が異なる複数の路側通信機が含まれている。すなわち、対象エリアPには、重要交差点用の複数の路側通信機(第一路側通信機)2Aと、一般交差点用の複数の路側通信機(第二路側通信機)2が含まれており、各路側通信機2Aには、複数の(図11では2つの)時間スロットSL1を無線通信に使うことが許されており、各路側通信機2Bには、重要交差点用の路側通信機2Aよりも少ない数(図11では1つ)の時間スロットを、無線通信に使うことが許されている。
【0061】
なお、重要交差点を、その交差点に設置されている交通信号機1による信号制御の観点から定義すると、例えば、信号制御パラメータの一つであるスプリットが決定される信号制御が行われる交通信号機1が設置されている交差点を、重要交差点と定義することもできる。
そして、一般交差点を、その交差点に設置されている交通信号機1による信号制御の観点から定義すると、例えば、重要交差点に設置されている交通信号機1に従属して信号制御が行われる(スプリットが計算される)交差点である。
また、一般交差点は、例えば単に横断歩行者の青信号の時間を確保すればよいような交差点と定義することもできる。
【0062】
〔7.1.4 時間スロットの割り当ての順番〕
図4に示す割り当て方法の説明に戻る。
前記のとおり、対象エリアPには、複数の路側通信機2(2A,2B)が設置されており、これら路側通信機2(2A,2B)それぞれに対して時間スロットの割り当てを行うが、本発明の割り当て方法では、その割り当てを行う際に、どの路側通信機2を先に割り当てるかについての優先順位が設定されている。
つまり、重要交差点用の路側通信機2Aそれぞれに対して、先に、時間スロットの割り当てを行い(図4のST3)、その後、一般交差点用の路側通信機2Bそれぞれに対して、時間スロットの割り当てを行う(図4のST4)。
【0063】
具体的に説明すると、重要交差点用の路側通信機2A間で干渉関係を計算し、路側通信機2Aのみに関して互いに干渉しないようにして時間スロットの割り当てを行う(図4のST3)。その後、重要交差点用の路側通信機2Aで使用される時間スロットに干渉を与えないように、かつ、一般交差点用の路側通信機2B間で干渉関係を計算し、互いに干渉しないようにして時間スロットの割り当てを行う(図4のST4)。なお、図4のST3及びST4における干渉関係の計算及び時間スロットの割り当て処理についての具体的な方法は、様々な方法を採用することができる。
【0064】
図7は、重要交差点用の路側通信機2Aに対して、時間スロットの割り当て(図4のST3)を行った結果を示している。本実施形態では、重要交差点はJ1〜J9であり、これら重要交差点J1〜J9それぞれに路側通信機2A−1〜2A−9が設置されている。
そして、図7において、重要交差点J1〜J9それぞれの丸内の数字は、各重要交差点に設置されている路側通信機2A−1〜2A−9それぞれに対して割り当てられている時間スロットSL1のスロット番号iを示している。本実施形態では、路側通信機2A−1〜2A−9に対して、1無線フレーム毎に、スロット番号i=0〜2,11〜13のうち2つの時間スロットSL1が割り当てられている。
【0065】
なお、この割り当ては、路側通信機2Aが行う無線通信により干渉が生じないようにして行われる。つまり、南北方向、又は、東西方向で隣り合う、重要交差点用の路側通信機2Aに対しては、異なる時間スロットが割り当てられている。これは、前記一組の路側通信機2A,2Aが、干渉を生じさせるおそれのある位置関係にあるとしても、干渉が生じるのを防止するためである。
【0066】
ここで、図7に示すように、対象エリアP内には、複数の重要交差点用の路側通信機2A−1〜2A−9が存在しているが、これら路側通信機2A−1〜2A−9には、干渉を生じさせるおそれのある位置関係になく、相互間の無線通信で干渉が生じない配置で設けられている路側通信機2Aの組みが含まれている。つまり、図7の場合、例えば、路側通信機2A−1と、路側通信機2A−5と、路側通信機2A−9とは、干渉を生じさせるおそれのある位置関係になく、相互間の無線通信で干渉が生じない配置で設けられている。
【0067】
そこで、これら路側通信機2A−1と、路側通信機2A−5と、路側通信機2A−9との組みに対して、同じ時間スロットのペア(スロット番号i=2,13)の割り当てがされる。この他に、3つの路側通信機2A−2,2A−6,2A−7に対して、スロット番号i=0,11の時間スロットが割り当てられ、3つの路側通信機2A−3,2A−4,2A−8に対して、スロット番号i=1,12の時間スロットが割り当てられている。
なお、本実施形態では、図7のように、i=0〜15の時間スロットのうち、二つの時間スロットからなる時間スロットのペアを、3ペア分使用して(スロット番号iが、0と11,1と12,2と13のペア)、複数の路側通信機2Aで共用させる割り当てを行ったが、i=0〜15の複数の時間スロットの内の二つ以上の時間スロットからなる時間スロットの組みを、複数の路側通信機2Aで共用させる割り当てが行われればよい。
【0068】
そして、このように重要交差点用の路側通信機2Aに対して時間スロットの割り当てを行ってから、一般交差点用の路側通信機2Bそれぞれに対して時間スロットの割り当て(図4のSt4)を行う。この割り当ての結果を図8に示している。
なお、対象エリアPには、多くの一般交差点が含まれるが、本実施形態では、路側通信機2Bが設けられる一般交差点は、重要交差点の東西南北一つ隣りの交差点である。路側通信機2Bが設置される一般交差点は、J11〜J46であり、これら一般交差点J11〜J46それぞれに一般交差点用の路側通信機2B−1〜2B−36が設置される。
そして、図8において、一般交差点J11〜J46ぞれぞれの丸内の数字は、一般交差点用の路側通信機2B−1〜2B−36それぞれに対して割り当てられているスロット番号iを示している。一般交差点用の路側通信機2B−1〜2B−36それぞれに対して、スロット番号3〜10の時間スロットが割り当てられている。
【0069】
なお、この割り当ては、路側通信機2A及び路側通信機2Bが行う無線通信により干渉が生じないようにして行われる。つまり、南北方向、又は、東西方向で隣り合う、路側通信機2A,2Bに対しては、異なる時間スロットが割り当てられている。これは、隣り合う一組の路側通信機2A,2Bが、干渉を生じさせるおそれのある位置関係にあっても、干渉を防止するためである。
【0070】
そして、本実施形態では、重要交差点用の路側通信機2Aに対して割り当てていない時間スロットを、一般交差点用の路側通信機2Bに対して割り当てている。
また、一つの時間スロットを、複数の一般交差点用の路側通信機2Bで共用させる割り当てが行われている。すなわち、例えば、一般交差点J14,J19,J27,J34,J35,J42それぞれに設置されている路側通信機2B−4,2B−9,2B−17,2B−24,2B−25,2B−32に対して、スロット番号i=3の時間スロットが割り当てられている(図8図11参照)。
【0071】
〔7.2 本実施形態に係る割り当て方法と、従来の割り当て方法との比較〕
前記実施形態のような、重要交差点用の路側通信機2Aに対する時間スロットの割り当てを、一般交差点用の路側通信機2Bよりも優先して先に行うのではなく、重要交差点用と一般交差点用とを区別しないで、単に、路側通信機2A,2Bが行う無線通信により干渉が生じないという制限に基づいて、時間スロットの割り当てを行った場合(従来の割り当て方法)の例について説明する。なお、対象エリアPの構成(重要交差点の配置等)については、図7と同じである。
【0072】
図9は、このような従来の割り当て方法により時間スロットの割り当てを行った場合の説明図である。この図9は、本実施形態により割り当てられた場合の説明図である図8に相当する図である。図9の各交差点の丸内の数字は、各交差点に設置されている路側通信機2A,2Bに対して割り当てられたスロット番号iを示している。
【0073】
図9に示すように、重要交差点J1〜J9に設置されている路側通信機2A−1〜2A−9には、スロット番号i=0〜6,11〜17の時間スロットが割り当てられている。そして、一般交差点に設置されている路側通信機には、スロット番号i=0〜10の時間スロットが割り当てられている。
【0074】
図10は、本実施形態に係る割り当て方法と、従来の割り当て方法とを比較した表である。本実施形態に係る方法と、従来の方法とに関して、対象エリアPに割り当てられている時間スロットのペアの数は、ともに「11」であり、同じである。
しかし、本実施形態に係る方法の場合、重要交差点の路側通信機2Aに割り当てられている時間スロットのペアは、スロット番号i=(0,11),(1,12),(2,13)であり、その数は「3」であるのに対して、従来の方法の場合、スロット番号i=(0,11),(1,12),(2,13),(3,14),(4,15),(5,16),(6,17)であり、その数は「7」である。
【0075】
すると、既に説明したように(図11参照)、重要交差点用の路側通信機2A(2A−1〜2A−9)それぞれには2つの時間スロットが割り当てられ、一般交差点用の路側通信機2B(2B−1〜2B−36)それぞれには1つの時間スロットが割り当てられることから、以下の計算のとおり、対象エリアP全体で必要となる時間スロットの数は、本発明に係る方法の場合「14」であるのに対し、従来の方法の場合「18」となる。
すなわち、本実施形態の方法の場合の対象エリアP全体で必要となる時間スロットの数は、「3」×2(スロット)+(「11」−「3」)×1(スロット)=「14」となるが、従来の方法の場合の対象エリアP全体で必要となる時間スロットの数は、「7」×2(スロット)+(「11」−「7」)×1(スロット)=「18」
となる。
【0076】
このように、本実施形態に係る割り当て方法の場合、対象エリアP全体の時間スロットの数は「14」で済むのに対して、従来の割り当て方法の場合、対象エリアP全体の時間スロットの数は「18」となり、本実施形態に係る割り当て方法によれば、必要となる時間スロットの数を少なくすることができる。
なお、前記従来の方法の場合、1無線フレーム中で必要となる時間スロットの数が「18」となるが、これは、図3に示したように、1無線フレーム中の時間スロットの数「16」を超えてしまう。これに対して、本実施形態の方法の場合、1無線フレーム中の時間スロットの数「16」よりも少なくすることができ、時間スロットに余裕を生じさせることができる。
【0077】
以上のように、本実施形態に係る割り当て方法は、重要交差点用の路側通信機2A(第一路側通信機)に対する時間スロットの割り当てを、一般交差点用の路側通信機2B(第二路側通信機)よりも優先して行い、これら割り当て処理それぞれでは、路側通信機が行う無線通信により干渉が生じないようにしている。
【0078】
また、本実施形態に係る割り当て方法は、各交差点において路側通信機2が処理すべき情報(送信すべき情報)のデータ量の違いを考慮した時間スロットの割り当て方法であり、データ量が比較的多い重要交差点用の路側通信機2Aに対する時間スロットの割り当てを、データ量が比較的少ない一般交差点用の路側通信機2Bよりも優先して行う。特に、本実施形態では、スロット番号i=(0,11),(1,12),(2,13)の時間スロットのペアを複数の重要交差点用の路側通信機2Aで共用させる割り当てを行う。
【0079】
これにより、図7に示すように、複数の重要交差点用の路側通信機2Aが、同じ時間スロットを共用する割り当てが行いやすくなり、複数の重要交差点用の路側通信機2Aに割り当てられる時間スロットの全数をできるだけ少なくすることができる。図7の場合、複数の重要交差点用の路側通信機2Aに割り当てられる時間スロットは、スロット番号i=(0,11),(1,12),(2,13)の3ペア(時間スロットの数は「6」)となり、対象エリアP全体の時間スロットの割り当て数は「14」で済む。このように、対象エリアPの路側通信機2によって使用される時間スロットの必要数をできるだけ少なく抑えることが可能となる。
【0080】
また、本実施形態において、交通量に応じて信号制御(例えばスプリットが決定される信号制御)が行われる交通信号機1が設置されている重要交差点では、例えば信号制御のために様々な情報が必要とされ、このような多くの情報を路側通信機2が周囲に無線送信するためには、データ長が大きくなる。そこで、このような交通量に応じて信号制御が行われる(スプリットが決定される)交通信号機1が設置されている重要交差点に設けられる路側通信機2Aに対して、複数の時間スロットが割り当てられ、このような路側通信機2Aに対して、優先的に時間スロットが割り当てられる。
【0081】
また、交通事故が多発する交差点では、交通安全のために様々な情報が必要とされる。例えば、右直事故を防止するために交差点手前にカメラ6bが設置されており、しかも、各車線にカメラ6bが設置されているような場合、この交差点に設置される路側通信機には、多くの画像データS5が収集され、この画像データS5の情報を周囲に無線送信する必要がある。つまり、このような多くの情報を路側通信機2が周囲に無線送信するためには、その路側通信機2が送信すべき情報のデータ長が大きくなる。
そこで、このような交通事故が多発する交差点は重要交差点に設けられる路側通信機2Aに対して、複数の時間スロットが割り当てられ、このような路側通信機2Aに対して、優先的に時間スロットが割り当てられる。なお、交通事故が多発する交差点とは、例えば、一般社団法人日本損害保険協会によって提供されている「全国交通事故多発交差点マップ」<http://www.sonpo.or.jp/protection/kousaten/kousatenmap22/>に挙げられている交差点である。
【0082】
〔8. 道路交通システム〕
以上のような割り当て方法によって、互いに重複しない複数の異なる時間スロットSL1から一つ以上の時間スロットが、対象エリアPに含まれる複数の路側通信機2(2A,2B)それぞれに割り当てられることにより、これら路側通信機2(2A,2B)それぞれは、自機に割り当てられた少なくとも一つの時間スロットSL1で無線通信を行う道路交通システムが構成される。
【0083】
そして、この道路交通システムの各対象エリアPには、無線通信に使うことが許される時間スロットの数が異なる複数の路側通信機2(2A,2B)が含まれている。つまり、対象エリアPには、重要交差点用の路側通信機2Aと、一般交差点用の路側通信機2Bとが含まれている。そして、重要交差点用の路側通信機2A(2A−1〜2A−9)それぞれは、図11に示すように、1つの無線フレーム内において、2つの時間スロットSL1を無線通信に使うことが許されている。例えば、路側通信機2A−1は、スロット番号i=2の時間スロットSL1と、スロット番号i=13の時間スロットSL1とを無線通信に使いことが許されている。
これに対して、一般交差点用の路側通信機2B(2B−1〜2B−36)それぞれは、無線通信に使うことが許される時間スロットの数が、重要交差点用の路側通信機2Aそれぞれが使うことの許容される時間スロットの数よりも少なく、その数は1つである。
【0084】
そして、1無線フレーム中に存在する互いに重複しない複数の異なる時間スロットSL1には、複数の重要交差点用の路側通信機2Aが共用している共用時間スロットが含まれており、図11の場合、共用時間スロットのスロット番号は、i=0,1,2,11,12,13である。つまり、共用時間スロットの数Naは「6」である(Na=6)。
【0085】
ここで、時間スロットの割り当てによっては、重要交差点用の路側通信機2Aと、一般交差点用の路側通信機2Bとが共用している時間スロットが含まれていることもあるが、図11に示す実施形態の場合、このような重要交差点用の路側通信機2Aと一般交差点用の路側通信機2Bとが共用している時間スロットの数Nbはゼロである(Nb=0)。
【0086】
以上より、前記実施形態の割り当て方法によって構成された道路交通システムでは、対象エリアP内で、複数の重要交差点用の路側通信機2Aが共用している共用時間スロットの数(Na=6)は、重要交差点用の路側通信機2Aと一般交差点用の路側通信機2Bとが共用する時間スロットの数(Nb=0)よりも多い。
このため、複数の重要交差点用の路側通信機2Aに割り当てられる時間スロットの全数は、共用時間スロットの数Naと同数の「6」であり、この数をできるだけ少なくすることができる。そして、この共用時間スロット以外の時間スロットSL1を、一般交差点用の路側通信機2Bに割り当てることが可能となる。
また、図10で説明したように、このように時間スロットSL1が割り当てられた道路交通システムによれば、対象エリアPの路側通信機によって使用される時間スロットSL1の必要数をできるだけ少なく抑えることが可能となる。図10の場合、「14」の時間スロットSL1で済む。
【0087】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
前記実施形態では、需要交差点用の路側通信機2Aに対して、2つの時間スロットを割り当てる場合について説明したが、その数は2つに限らず、3つ又は4つ以上であってもよく、また、路側通信機2Aによってその数が異なっていてもよい。そして、路側通信機2Aによって時間スロットの割り当て数が異なる場合、その数が大きい路側通信機2Aを先に優先して、時間スロットの割り当てが行われるのが好ましい。
【0088】
また、前記実施形態では、重要交差点のためにカメラ6bが設置され、この画像データS5を需要交差点用の路側通信機2Aが処理し、送信する必要があるため、路側通信機2Aではデータ量が多くなる場合を説明したが、需要交差点用の路側通信機2Aは、この他に、環境系の情報として、エコドライブのための情報、安全系の情報として、信号見落とし防止のための情報や、右直事故防止用の情報や、歩行者見落とし防止用の情報が処理され送信される。
これに対して、一般交差点用の路側通信機2Bでは、環境系の情報として、エコドライブのための情報や、グリーンウェーブ支援のための情報が処理され送信されてもよく、安全系として、信号見落とし防止のための情報が処理され送信されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
2:路側通信機 2A:重要交差点用の路側通信機(第一路側通信機) 2B:一般交差点用の路側通信機(第二路側通信機) SL1:時間スロット P:対象エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11